JP4370828B2 - 溶鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶銑を転炉内で酸素吹錬して溶鋼を製造する方法に関し、詳しくは、転炉内に存在するスラグの酸化度を低減することの可能な溶鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶銑から溶鋼を製造するための転炉精錬においては、上吹き酸素又は底吹き酸素により、主たる目的を溶銑の脱炭とする酸化精錬が行なわれている。この転炉精錬においては、溶銑の脱燐や脱硫を目的とした溶銑予備処理技術の近年の発展に伴い、脱燐処理の必要性が少なくなり、その結果、転炉精錬で必要とする媒溶剤が減少し、転炉精錬における生成スラグ量が大幅に低減した。例えば、溶銑予備処理によって製品の燐濃度レベルまで溶銑の燐濃度を低減した場合には、転炉精錬で必要とする媒溶剤は溶鋼トン当たり10kg(以下、「kg/t」と記す)以下となり、生成スラグ量はおよそ20kg/t以下まで低減する。尚、転炉を用いて溶銑予備処理を行なう場合もあるが、本発明で云う転炉精錬とは、主たる目的を溶銑の脱炭反応とした酸化精錬のことである。
【0003】
このように少ないスラグ量の下での転炉精錬では、例えばMn鉱石の溶融還元のように、有用成分のスラグへの移行が抑制され、溶鋼への高い歩留りを得ることが可能であり、従って、溶鋼へのMn添加方法は、従来行われていた転炉精錬後に高価なフェロマンガン等の合金鉄を添加する方法に代わって、安価なMn鉱石を当該精錬中に添加して溶融還元を行う方法が一般的になっている。
【0004】
ここで、転炉精錬の酸素吹錬末期においては、炉内の鉄浴中の炭素濃度の低下に起因する脱炭速度の低下に伴って、鉄浴への酸素供給速度(以下「送酸速度」と記す)を低位に調整して酸素効率の低下を抑制するが、送酸速度を脱炭速度に同期して制御することは困難であるため、脱炭速度の低下に伴って必然的に発生する余剰酸素により、或いは、鉄浴中炭素濃度の低下に伴って必然的に増加する溶存酸素により、鉄浴が酸化される。酸化された鉄(酸化鉄)はスラグに移行するため、スラグ中のT.Fe(T.Feとはスラグ中の全ての鉄酸化物の鉄分の合計値)が増加する。尚、転炉精錬では、炉内に装入された溶銑は脱炭されて最終的には溶鋼になり、転炉内で溶銑から溶鋼に変わるが、本発明では転炉内に存在する溶銑及び溶鋼をまとめて「鉄浴」と称す。
【0005】
スラグ中のT.Fe濃度の増加は、鉄歩留りの低下をもたらすのみならず、前述したMn等の溶鋼溶製の上で必要な成分の過剰な酸化をもたらすので、鉄歩留りの向上並びに必要成分の過剰な酸化を抑制するためには、スラグ中のT.Fe濃度を極力低位に抑えることが重要になる。
【0006】
スラグ中のT.Fe濃度を低位に抑える手段として、例えば特許文献1には、溶銑予備処理によって脱燐処理を施した溶銑を転炉に装入し、酸素吹錬初期にMn鉱石を添加した転炉精錬において、鉄浴中の炭素濃度が0.5mass%以下になった酸素吹錬末期に、粒径5mm以下のコークス粉をスラグ中に1.5〜5.0kg/t吹き込む方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−283817号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、酸素吹錬の末期にコークス等の炭材を添加する方法では、酸素吹錬末期においては迅速な反応が要求されることから、炭材を細粒化すると同時に、炭材をスラグ中に吹き込む必要があり、そのため、炭材供給設備が複雑になり設備費が高価になる上に、特に、スラグ量が少ない場合には溶鋼と炭材との直接接触によって溶鋼の加炭が生じるため、酸素吹錬時間の延長、或いは酸素吹錬終点時の溶鋼中炭素濃度調整の困難化と云った問題点が発生する。
【0009】
このように、転炉精錬においては種々の問題点があり、これらの状況に対処した新たなスラグ中T.Fe濃度の制御技術の確立が急務となっていた。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶銑を転炉精錬して溶鋼を製造する際に、特別の設備を必要とせず且つ転炉精錬を阻害することなく、酸素吹錬で生成するスラグ中のT.Fe濃度を低位に抑えることが可能な溶鋼の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討・研究を行った。以下に、検討・研究結果を説明する。
【0012】
酸素吹錬中の転炉内挙動は、その反応挙動の違いから、高炭素域(通常、C>0.6mass%)と低炭素域(通常、C≦0.6mass%)とに大別される。高炭素域では、供給される酸素のほぼ全量が脱炭に費やされ、脱炭反応は酸素の供給律速であり、高い送酸速度で酸素吹錬が行われる。一方、低炭素域では、酸素の供給律速から鉄浴中の炭素の移動律速に変わり、供給した酸素の一部は鉄の酸化にも費やされるので、鉄の酸化を抑制して脱炭酸素効率を高めるために送酸速度を低減させている。
【0013】
しかしながら、前述したように、酸素吹錬末期におけるスラグ中のT.Fe濃度は過酸化状態、即ち平衡値と比較して高位に推移している。この現象は、スラグ量が少ないほど顕著であり、スラグ量が25kg/t以下、特に10kg/t以下になると、過酸化状態はより一層顕著になる。このようなスラグ中のT.Fe濃度の上昇は、鉄歩留まりの低下を来たし、更には、例えばMnのような溶鋼に必要な成分の過剰酸化によるスラグへの移行を促進させるため、スラグ中のT.Fe濃度を低位に抑制することが重要になる。
【0014】
プラスチックは炭素及び水素を主成分としており、加熱されると熱分解して還元性の炭化水素系ガスを発生するので、この炭化水素系ガスを利用してスラグ中の鉄酸化物を還元することによって、コークス等の炭材と同様にスラグ中のT.Fe濃度を低位に抑制可能である、との想定に基づき、本発明者等は、スラグ発生量の少ない、予備処理溶銑を用いた転炉精錬において、酸素吹錬中に転炉内に廃プラスチックを添加し、酸素吹錬末期のスラグ中のT.Feの挙動について試験・調査した。
【0015】
この転炉精錬では、転炉精錬前の溶銑中燐濃度を0.010〜0.018mass%に調整して、媒溶剤として転炉内に添加する生石灰の量を10kg/t以下に抑え、転炉内のスラグ量を20kg/t以下の条件に統一した。又、酸素吹錬終了時の溶鋼中炭素濃度の目標値を0.05mass%とし、酸素吹錬終了時の溶鋼温度の目標値を1650℃とした。
【0016】
添加したプラスチックとしては、平均断面径が30〜50mm、長さが30〜100mmである、廃プラスチックを熱間押出し成形した円柱状成形体を用い、転炉の炉口から炉内に投入した。プラスチックの添加方法は、以下に記す3つの水準で行った。
【0017】
水準1:プラスチックの投入時期を、酸素吹錬終了の60秒〜90秒前になった時点から酸素吹錬終了の30秒前〜酸素吹錬終了までの期間とし、この期間は連続的にプラスチックを投入した。
【0018】
水準2:酸素吹錬終了の60秒前になった時点に一括して所定量のプラスチックを投入した。投入時間は最大15秒間程度であった。
【0019】
水準3:吹錬終了終了の30秒前になった時点に一括して所定量のプラスチックを投入した。投入時間は最大15秒間程度であった。
【0020】
尚、酸素吹錬の総所要時間が10〜13分であるのに対して、鉄浴中の炭素濃度が0.2mass%から0.1mass%になるまでの所要時間は約30秒、0.1mass%から0.05mass%になるまでの所要時間は約30秒であった。この所要時間は転炉の容量に拘わらずおよそ同等である。これは、溶鋼トン当たりの送酸速度が転炉の容量に拘わらず同等水準であるためと思われる。
【0021】
酸素吹錬終了後、転炉内からスラグの分析用試料を採取し、スラグ中のT.Fe濃度を分析した。図1に、プラスチックを添加しないが、その他の条件を水準1〜3と同一とした従来の酸素吹錬の平均値データを基準値とし、この基準値と比較した場合のT.Fe濃度の低減量を水準1〜3で区別して示す。
【0022】
図1に示すように、連続的に投入した水準1では、スラグ中のT.Fe濃度を低減することができ、プラスチックを0.5kg/t以上添加すると安定した低減効果が得られることが分かった。
【0023】
これに対して一括添加した水準2及び水準3では、T.Feの低減効果が極めて少ないことが分かった。水準2では、酸素吹錬が終了する以前にプラスチックの熱分解が終了し、酸素吹錬によって鉄浴が酸化され、スラグ中のT.Fe濃度が再び上昇するためであり、水準3では、スラグとプラスチックとの反応時間が十分でない上に、プラスチックの熱分解が集中して生じるため、還元効率が低下するためと思われる。
【0024】
以上の結果から、少なくとも酸素吹錬終了の60秒前の時点から酸素吹錬終了の30秒前までの期間にプラスチックを連続的に転炉内に添加することで、スラグ中のT.Fe濃度を低減することが可能であるとの知見が得られた。
【0025】
又、スラグ中のT.Feを低減する目的で、酸素吹錬終了後にプラスチックを転炉内に添加し、スラグ中のT.Fe濃度の挙動を調査する試験も実施した。この試験では、使用したプラスチックの形状、使用した溶銑の燐濃度、転炉内への生石灰の添加量、酸素吹錬終了時の溶鋼中炭素濃度及び吹錬終了時の溶鋼温度の目標値等は、前述した酸素吹錬中にプラスチックを添加した試験と同一とし、プラスチックを酸素吹錬終了後に転炉炉口から転炉内に投入した。プラスチックの添加量は0.5kg/tの一定量とし、プラスチックの投入後、転炉炉底に設置した底吹き羽口から撹拌用ガスとしてArガスを吹き込み、溶鋼及びスラグを攪拌した。この場合に攪拌用ガス吹き込み時間を30秒〜120秒の範囲で変更した。
【0026】
その結果、攪拌用ガス吹き込み時間即ち攪拌時間を、1分間以上確保することで、スラグ中のT.Fe濃度を安定して低減することが可能であるとの知見が得られた。攪拌時間が1分未満の場合には、プラスチックとスラグとの反応が十分に進行しないため、スラグ中のT.Fe濃度が安定して低減しない。
【0027】
ところで、酸素吹錬中にMn鉱石を転炉内に添加すると、プラスチック又はプラスチック含有物質によってスラグを還元するとは云えども、Mn鉱石を添加しない場合に比較してスラグ中のMnO濃度が上昇する。スラグ中のMnO濃度が上昇すると、スラグは低融点化されて粘性が低下するため、転炉から取鍋への溶鋼の出鋼時に、出鋼流に巻き込まれて取鍋内に流出されるスラグ量が、従来のMn鉱石を添加しない場合に比較して増大する。
【0028】
通常、溶鋼は、出鋼時或いは出鋼後に金属Alやフェロシリコン等の強脱酸剤によって脱酸処理され、酸素吹錬によって増加した溶鋼中溶存酸素が低減される。特に、高い清浄性を要求される鋼種では、金属Alによる脱酸処理が行われており、溶鋼中溶存酸素は実質的にゼロまで低減される。このように、溶鋼は脱酸処理され、溶鋼中の溶存酸素量は減少するが、スラグ中に多量のMnOが含まれている場合には、MnはAlやSiよりも酸素との親和力が小さいため、脱酸処理後にスラグ中のMnOが溶鋼中のAlやSiによって還元される反応が継続して発生し、溶鋼中には反応生成物であるAl23 やSiO2 が生成し、清浄性の高い溶鋼を得ることができない。
【0029】
そのため、この問題を解決すべく、Mn鉱石を添加した転炉精錬においてもスラグ流出量を低減することを検討した。その結果、スラグの流出抑制には、スラグの炉内での固化が有効であること、即ち炉内スラグの固相率を上昇させることが有効であることが判明した。
【0030】
そこで、転炉脱炭精錬におけるスラグ組成の範囲において、T.Fe濃度及びMnO濃度を変化させ、T.Fe濃度及びMnO濃度とスラグ固相率との関係を、汎用の熱力学計算ソフトを使用して算出・検討した。計算に当たっては、スラグの温度を1650〜1700℃、スラグの塩基度(CaO/SiO2 )を2〜4、スラグ中のMgO濃度を5〜15mass%とした。計算結果を図2に示す。
【0031】
計算過程で固相率に及ぼすT.Fe及びMnOの影響はほぼ同等であることが分かったため、図2に示すように、指標としてT.Fe+MnOを用いた。又、固相率にはインデックスを用い、スラグ流出の抑制効果が現れる固相率インデックスを100とした。即ち、T.Fe+MnOが10mass%以下の組成のスラグではスラグ流出は抑制されており、従って、この範囲は固相率インデックスを100とした。スラグの固相率インデックスは、T.Fe+MnOの上昇に伴って減少し即ちスラグは流出し易くなり、T.Fe+MnOが約20mass%の位置を境界として、固相率インデックスの傾斜が変化することが分かった。
【0032】
図2に示す結果に基づき、実炉試験を実施した。酸素吹錬終了後、CaOを主成分とする生石灰をスラグ固化用の精錬剤として転炉内に添加し、固化用精錬剤の添加量を変更して出鋼時のスラグの流出量を測定した。スラグ流出量の測定方法は、取鍋内に流出したスラグの厚みを測定し、スラグ厚みの測定値に基づいて流出量を換算する方法、又は、転炉内スラグに所定量のトレーサー元素を添加し、取鍋内スラグのトレーサー元素の濃度に基づいて流出量を換算する方法を用いた。
【0033】
固化用精錬剤の添加量が同一であっても炉内のスラグ量によって固相率に及ぼす精錬剤の影響が異なるため、炉内スラグ量に対する精錬剤添加量の比(精錬剤添加量/炉内スラグ量)を操作因子として、図2に示す固相率の近似直線にのっとり近似させた結果、図3に示すように、スラグ流出抑制効果の有無の境界線が求められた。即ち、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、下記の(1)式を満たす範囲内でスラグを固化するためのCaOを主成分とする精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、下記の(2)式を満たす範囲内で前記精錬剤を転炉内に添加することで、添加した精錬剤によって転炉内のスラグを固化させ、スラグの流出量を低減可能であることが分かった。但し、(1)式及び(2)式において、Wcはスラグを固化するための精錬剤の添加量(kg)、Wsは転炉内の推定スラグ量(kg)であり、図3に示す境界線が(1)式及び(2)式によって表される。
【0034】
【数1】
Figure 0004370828
【0035】
【数2】
Figure 0004370828
【0036】
本発明は、上記検討・研究結果に基づいてなされたものであり、第1の発明に係る溶鋼の製造方法は、溶銑を転炉内で酸素吹錬して溶鋼を製造する方法において、当該酸素吹錬中、Mn鉱石を転炉内に供給し、少なくとも酸素吹錬終了の60秒前から30秒前までの期間には、プラスチック純分で溶鋼トン当たり0.5kg以上のプラスチック又はプラスチック含有物質を、連続して転炉内に供給するか、又は、プラスチック又はプラスチック含有物質からガスが発生している期間内で断続的に転炉内に供給し、供給したプラスチック又はプラスチック含有物質によって転炉内のスラグを還元し、還元後、還元したスラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度に応じ、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、上記の(1)式を満たす範囲内で、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトのうちの1種以上からなる精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、上記の(2)式を満たす範囲内で、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトのうちの1種以上からなる精錬剤を転炉内に添加し、添加した精錬剤によって転炉内のスラグを固化させることを特徴とするものである。
【0038】
の発明に係る溶鋼の製造方法は、第1の発明において、前記溶銑は、溶銑予備処理にて脱燐処理された溶銑であることを特徴とするものである。
【0039】
の発明に係る溶鋼の製造方法は、第の発明において、前記転炉内のスラグ量を、溶鋼トン当たり50kg以下に調整することを特徴とするものである。
【0041】
の発明に係る溶鋼の製造方法は、第1ないし第の発明の何れかにおいて、前記プラスチック又はプラスチック含有物質を、転炉内に配置された上吹きランスから搬送用ガスと共に吹き込むことを特徴とするものである。
【0042】
の発明に係る溶鋼の製造方法は、第1ないし第の発明の何れかにおいて、前記プラスチック含有物質は、プラスチックと金属又は金属酸化物とを含有する熱間押出し成形体又は成形ブリケットであり、50mass%以上のプラスチックを含有していることを特徴とするものである。
【0046】
上記説明のように、本発明に係る溶鋼の製造方法では、炉内スラグの還元剤としてプラスチック又はプラスチック含有物質を利用する。
【0047】
転炉内のスラグの密度は3000kg/m3 程度であり、スラグが転炉内でフォーミングした状態では、見掛け密度は1000〜2000kg/m3 程度に低下する。一方、プラスチックの密度は900〜1100kg/m3 であり、フォーミング状態のスラグの見掛け密度と同等レベルか、若干小さい程度である。そのため、スラグに添加されたプラスチックはスラグ中に埋没することはあってもスラグと溶鋼との境界に集まることがなく、そのため、プラスチックと溶鋼とは直接接触することが極めて少なく、プラスチックによる溶鋼の加炭は無視できる程度に抑制されるので、加炭に伴う酸素吹錬の延長を必要とすることがない。即ち、転炉精錬を阻害することなく、スラグ中のT.Fe濃度を低位に抑えることが可能となる。プラスチックに金属、金属酸化物等を混合して、見掛け密度を調整することで、スラグの還元効率は高くなる。
【0048】
又、プラスチックは溶融スラグのような高温下では熱分解してガス化するため、このガスによってスラグを攪拌し、スラグの還元を促進させる効果も有する。更に、プラスチック又はプラスチック含有物質は、転炉炉口から炉内に投入することができるので、従前慣用の転炉設備が備えている炉上の副原料投入装置を利用して添加可能であり、特別の添加装置を設置する必要がない。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0050】
高炉から出銑された溶銑を溶銑鍋やトーピードカー等の溶銑保持・搬送用容器で受銑し、次工程の脱炭精錬を行う転炉に搬送する。この搬送途中で、溶銑に対して脱硫処理や脱燐処理等の溶銑予備処理を施すことが好ましい。近年、溶銑の予備処理を転炉で行う場合もあるので、搬送途中に限らず転炉で予備処理を行ってもよい。溶銑に対して予備処理を施すことにより、転炉における発生スラグ量の低減や転炉生産性の向上、更にはMn鉱石の溶融還元によるフェロマンガン使用量の削減等々による合理化効果が発生し、予備処置を施すことによるコスト増にまさるコスト削減を達成することができる。
【0051】
転炉精錬は、必要に応じて少量の生石灰等を媒溶剤として用い、酸素を上吹き又は底吹きして溶銑の脱炭酸素吹錬を行う。又、この脱炭酸素吹錬では、溶鋼のMn成分源として、Mn鉱石を転炉内に添加して酸素吹錬することが好ましい。Mn鉱石を使用することにより、フェロマンガン等の高価な合金鉄の使用料を削減することが達成される。この場合、Mn鉱石の還元歩留まりを向上させると同時に、前述した、予備処置を施すことによるコスト増にまさるコスト削減を達成させるため、媒溶剤の添加量を調整して、炉内のスラグ量を50kg/t以下、望ましくは20kg/t以下とすることが好ましい。生石灰の添加量に換算すれば、25kg/t以下、望ましくは10kg/t以下に相当する。
【0052】
この酸素吹錬の末期に、スラグを還元するためのプラスチック又はプラスチック含有物質を転炉内に添加する。
【0053】
スラグ中のT.Fe濃度は、脱炭反応が炭素の移動律速になる低炭素域(通常、C≦0.6mass%)になると増加し始め、特に、鉄浴中の炭素濃度が0.2mass%まで脱炭された以降から急激に増加するため、プラスチック又はプラスチック含有物質を、鉄浴中の炭素濃度が0.2mass%になった以降に添加し始め、実質的に連続して炉内に供給する。
【0054】
この場合、プラスチック又はプラスチック含有物質を酸素吹錬の終了まで転炉内に継続して供給することが好ましく、特に、酸素吹錬終了時の鉄浴中炭素濃度が0.05mass%以下になるようなT.Fe濃度の高いスラグ下の精錬においては酸素吹錬終了近傍のT.Fe濃度の上昇が大きいため、プラスチック添加の効果を最大化するために、酸素吹錬の終了まで転炉内に継続して供給することが好ましい。但し、プラスチックの熱伝導度は小さく、添加するプラスチックのサイズにもよるが、プラスチックの粒径が50mm程度であれば、炉内に添加された後も30秒間程度は炉内に存在してガスを発生し続け、スラグを還元し続けるので、少なくとも酸素吹錬終了の30秒前までの期間は、プラスチック又はプラスチック含有物質を転炉内に継続して供給する。
【0055】
即ち、少なくとも、鉄浴中の炭素濃度が0.2mass%になった以降から酸素吹錬終了の30秒前までの期間には、プラスチック又はプラスチック含有物質を転炉内に実質的に連続して供給する。鉄浴中の炭素濃度が0.2mass%になる時点は、通常の転炉精錬では酸素吹錬終了のおよそ60秒前の時点からであり、従って、これは、通常の転炉精錬においては、酸素吹錬終了のおよそ60秒前の時点から酸素吹錬終了のおよそ30秒前の時点までの期間に相当する。酸素吹錬終点時の鉄浴中炭素濃度が0.2mass%以下の範囲でばらついたとしても、ほぼこの時間帯にプラスチック又はプラスチック含有物質を供給すれば、同様の効果が得られる。
【0056】
前述したように、プラスチック又はプラスチック含有物質は瞬時に熱分解してガス化する訳ではないので、必ずしも連続して供給する必要はなく、プラスチック又はプラスチック含有物質からガスが発生している期間内であれば、断続的に供給してもよい。この観点から、本発明に示す「実質的に連続して供給する」とは、プラスチック又はプラスチック含有物質からガスが発生している期間内で断続的に供給する場合も含むものとする。酸素吹錬終了の60秒前から30秒前までの期間におけるプラスチック又はプラスチック含有物質の添加量は、スラグを安定して還元するために、プラスチック純分で0.5kg/t以上とすることが好ましい。
【0057】
尚、酸素吹錬終了の60秒前よりも早い時期からプラスチック又はプラスチック含有物質を転炉内に投入してもよいが、この時期にはスラグ中のT.Fe濃度は低く、添加したプラスチック又はプラスチック含有物質は、供給される酸素によって燃焼するのみで、スラグの温度を上昇させる効果はあるものの、スラグの還元には寄与しない。又、酸素吹錬終了の60秒前よりも早い時期から添加する場合には、酸素吹錬終了の60秒前から酸素吹錬終了の30秒前までの期間にプラスチック純分で0.5kg/t以上の添加量が確保されるように、全体の添加量を調整することが好ましい。
【0058】
使用するプラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等ほとんどの炭素及び水素を主体とするプラスチックを挙げることができ、2種類以上のプラスチックを混合して使用することも可能である。又、製品プラスチックであっても廃プラスチックでもよく、必要に応じてこれらを粉状或いは成形体に加工したものを用いることができるが、コスト面及び産業廃棄物の有効利用を図る観点から廃プラスチックを利用することが好ましい。但し、硫黄、燐、窒素等を多量に含む場合には溶鋼汚染源となり好ましくなく、珪素、アルミニウム等を多量に含む場合にもスラグの増大につながるため好ましくない。従って、炭素及び水素を主体とするプラスチックとしては、これらの少ないものを選択する。
【0059】
尚、ここでの廃プラスチックとは、工場等での製造・加工時に生じる屑や不良品を含み、更に、一般家庭から発生する所謂ゴミとしての廃棄物たるプラスチック類であり、その性質上プラスチック以外の異物(金属、紙、その他の無機物及び有機物)が付着或いは混入しているプラスチック類を含むものである。
【0060】
添加するプラスチック及びプラスチック含有物質の形状に制約はないが、転炉炉口から落下させて添加する場合には、転炉から発生するガスによる飛散を最小限にするために、形状を球体換算した際に平均粒径が20mm以上となるように成形加工することが好ましい。又、密度は大きいほど飛散が少なくなるため、鉄鉱石、Mn鉱石等の鉱石類や、合金鉄、鉄ダスト等の金属酸化物、生石灰、石灰石、ドロマイト等の副原料を混合して成形加工することが好ましい。但し、プラスチックの効果を得るために、成形体のプラスチック含有量を50mass%以上とすることが好ましい。成形体としては、熱間押出し成形法による押出し成形体や、圧縮成形法による成形ブリケットが適当である。一方、粒径が10mm以下の細粒のプラスチックを添加する場合には、飛散して添加歩留まりが低下する恐れがあるので、吹き込みランス等を用いて搬送用ガスと共に添加することが好ましい。又、プラスチックの粒径が1mm以下の粉体の場合には、熱分解速度が上昇し、瞬時にガス化するので、このような粉体で添加する場合には、前述した所定の期間中は連続して添加する必要がある。
【0061】
添加方法については特に制約はなく、上記のように、プラスチック及びプラスチック含有物質の形状に応じて、転炉炉口からの落下による添加や、吹き込みランスによる吹き込み添加を単独或いは組み合わせて行えばよい。吹き込みランスによる添加の場合には、スラグへの添加が効率良く行われることは云うまでもなく、更に、吹き込みランスを用いて火点に供給すれば、火点への供給酸素の一部がプラスチックの燃焼に使われるため、高い酸素動圧を維持しつつ脱炭用酸素の低流量化を図ることが可能となり、この高い酸素動圧を維持した脱炭用酸素の低流量化によるスラグ中T.Feの低減効果も同時に得ることができる。
【0062】
添加されたプラスチック及びプラスチック含有物質は、炉内の高温雰囲気により炭化水素系ガスに熱分解し、還元性ガスとしてスラグ中のT.Feの還元に寄与する。又、発生したガスによってスラグは攪拌され、スラグの還元反応が促進される。更に、プラスチック及びプラスチック含有物質は、主にスラグの表面でガス化するので、溶鋼中への加炭は最小限に抑えられ、その結果、酸素吹錬時間の延長は生じず、プラスチック又はプラスチック含有物質を添加したことを考慮せずに、従来通りの酸素吹錬の終点制御が可能となる。この場合、プラスチックの熱分解による温度降下が懸念されたが、酸素吹錬中の添加においては、ガスの燃焼熱が生じることから、大きな温度降下は生じないことを確認している。
【0063】
一方、プラスチック又はプラスチック含有物質を、酸素吹錬中には添加せず、酸素吹錬終了後に転炉内に添加し、添加後に1分間以上の底吹き羽口からの攪拌ガス吹き込みによる攪拌処理を施すことで、酸素吹錬中にプラスチック又はプラスチック含有物質を添加した場合と同等に、スラグ中のT.Fe濃度を低下させることができる。撹拌用ガスとしてはArガス等の不活性ガスを用い、その吹き込み量は還元反応を円滑に行わせる観点から、0.1Nm3 /t以上確保することが好ましい。但し、この場合には、プラスチック又はプラスチック含有物質を酸素吹錬終了後に添加するので、転炉精錬時間が延長し、前述した酸素吹錬中に添加する場合に比較して転炉の生産性が低下することを考慮する必要がある。
【0064】
本発明においては、プラスチック又はプラスチック含有物質によって炉内のスラグを還元した後から出鋼までの期間に、炉内スラグのT.Fe濃度及びMnO濃度に応じて、転炉内にスラグを固化するための精錬剤を投入し、スラグの流出を抑制することが好ましい。即ち、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、上記の(1)式を満たす範囲内でスラグ固化用の精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、上記の(2)式を満たす範囲内でスラグ固化用の精錬剤を転炉内に添加することが好ましい。
【0065】
(1)式及び(2)式を算出する際に、スラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度は、炉内からスラグを採取し、採取したスラグを分析することで求めることができる。又、多数のスラグの分析値データと、送酸量、酸素吹錬終点の鉄浴中炭素濃度、終点温度、Mn鉱石添加量等の転炉操業条件とを照らし合わせ、両者の相関を解析することで、転炉操業条件からもスラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度を推定することができる。推定スラグ量Wsは、スラグのCaO分析値と媒溶剤として添加した生石灰中のCaO純分量とのマスバランスから求めることができる。又、媒溶剤として添加した生石灰中のCaO純分量と、送酸量、酸素吹錬終点の鉄浴中炭素濃度、終点温度、Mn鉱石添加量等の転炉操業条件とを照らし合わせ、両者の相関を解析することで、転炉操業条件からも推定スラグ量Wsを推定することができる。
【0066】
スラグを固化するための精錬剤としては、安価であり、又、転炉炉体耐火物を損傷させないことから、CaO又はCaCO3 を主成分とする精錬剤を用いることが好ましい。特に、CaCO3 を主成分とする精錬剤は炉内で加熱されると熱分解し、この熱分解の際に多量の熱を奪うので、スラグの固化に一層効果を発揮させる。CaO又はCaCO3 を主成分とする安価な精錬剤としては、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトがあり、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0067】
スラグ固化用の精錬剤を添加した場合には、転炉内スラグの取鍋への流出が抑制され、スラグと溶鋼中の脱酸元素との反応が抑制されるため、清浄性の高い溶鋼を溶製することができる。又、取鍋内のスラグ量が少ないので、スラグを無害化するためのスラグ改質に使用する金属AlやAlドロス等の使用量を削減することも可能となる。
【0068】
尚、スラグの還元剤としてはプラスチックが最適であるが、炭化水素系ガスを揮発成分として含有する物質であれば使用可能であり、例えば、揮発成分の多い一般炭でもスラグ中T.Fe濃度の低減効果が得られる。一般炭に揮発分が15mass%以上含有されていればスラグ中T.Feの低減効果が発現し、揮発分が30mass%以上の場合には、プラスチックと同等の効果が得られる。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例(実施例1〜9)を比較例(比較例1〜8)と共に説明する。
【0070】
容量が260トンで、酸素を上吹きし、撹拌用ガスを底吹きする、上底吹き複合吹錬用転炉内に、約260トンの溶銑を装入して脱炭吹錬を行った。用いた溶銑は、溶銑予備処理設備にて脱硫処理及び脱燐処理が施された溶銑であり、溶銑の成分は、Si濃度が0.07mass%以下、S濃度が0.01mass%以下、P濃度が0.008〜0.015mass%に統一した。転炉内には石灰系媒溶剤を添加し、50kg/t以下のスラグを生成させた。スラグ分析値から求められたスラグの塩基度(CaO/SiO2 )は3.0〜4.0で、スラグ量はCaOバランスによって求めた。又、酸素吹錬の初期に炉内にMn鉱石を添加した。
【0071】
転炉炉底に設置した羽口から、鉄浴の攪拌を目的として攪拌用Arガス又は窒素ガスを毎分10〜25Nm3 程度吹き込んだ。酸素供給は上吹きランスで行い、酸素吹錬の初期から脱炭最盛期にかけての送酸速度を60000Nm3 /hr、脱炭速度の遅くなる酸素吹錬末期では30000Nm3 /hrとし、ランス高さ等の吹錬パターンは何れの場合も極力同一に調整した。酸素吹錬の終了時は、鉄浴中炭素濃度が0.05mass%になった時点とし、その時の鉄浴の目標温度を1650℃とした。
【0072】
用いたプラスチックは、プラスチック含有量が60〜90mass%で、廃プラスチックを鉄鉱石、Mn鉱石、鉄ダスト等と混合し、熱間押出し成形法により、平均断面径が30〜50mm、長さが30〜100mmに成形した円柱状成形体と、廃プラスチックを平均直径5mm以下に破砕した細粒体であり、成形体は転炉炉口から投入添加し、細粒体は上吹きランスからArガスを搬送用ガスとしてスラグに吹き付け添加(実施例7)した。実施例1〜7及び比較例3〜6では、酸素吹錬中にプラスチック成形体又は細粒体を転炉内に添加し、実施例8,9及び比較例7,8では酸素吹錬終了後にプラスチック成形体を転炉内に添加し、添加後、炉底の羽口からArガスを吹き込んで鉄浴を攪拌した。比較例1,2は、プラスチックの代わりに炭材を酸素吹錬中に転炉内に添加した。
【0073】
スラグ中のT.Fe濃度は、実施例1〜7及び比較例1〜6では酸素吹錬終了時に炉内のスラグを採取し、実施例8,9及び比較例7,8では炉底の羽口からの攪拌ガス吹き込み終了時に炉内のスラグを採取し、スラグを分析して求めた。スラグが還元されることによるスラグ中T.Fe濃度の低減量(mass%)は、プラスチック及び炭材等の還元剤を添加しないこと以外は上記の条件と同一の転炉精錬におけるスラグ中のT.Fe濃度を基準として、その差をT.Fe濃度の低減量とした。表1に、実施例1〜9及び比較例1〜8の操業条件及び操業結果を示す。尚、表1に示す添加量は、プラスチック純分及び炭材中炭素純分の添加量である。
【0074】
【表1】
Figure 0004370828
【0075】
表1に示すように、本発明の実施例では安定してスラグ中のT.Fe濃度をおよそ3mass%以上低減することができたが、比較例では高々2mass%程度しか低減できず、本発明方法の優位性が確認できた。又、プラスチックを添加しても酸素吹錬の終点制御には何ら影響を及ぼさず、従来と同一の終点制御を行うことができた。
【0076】
実施例1及び実施例6では、酸素吹錬終了後、転炉内にスラグ固化用の石灰石を投入して転炉スラグの固化を図り、取鍋へのスラグ排出量の削減を図った。
【0077】
実施例1では、プラスチックを添加して還元した後のスラグ組成は、T.Fe濃度が10.2mass%、MnO濃度が13.5mass%であり、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が23.7mass%となり、20mass%を越えたので、前述した(2)式を用いて石灰石の添加量(Wc)を算出した。その結果、Wc(kg)≧269kgが得られ、270kgの石灰石を添加した。
【0078】
一方、実施例6では、プラスチックを添加して還元した後のスラグ組成は、T.Fe濃度が8.1mass%、MnO濃度が6.8mass%であり、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が14.9mass%となり、20mass%以下であったので、前述した(1)式を用いて石灰石の添加量(Wc)を算出した。その結果、Wc(kg)≧287kgが得られ、290kgの石灰石を添加した。
【0079】
転炉から取鍋に出鋼した後、取鍋内のスラグ厚みを測定し、この測定値から取鍋内のスラグ量を求めた。取鍋内のスラグ量は、実施例1及び実施例6では1.5kg/t程度であったが、石灰石を添加しないその他の実施例では、取鍋内のスラグ量は2.5〜3.0kg/tであり、実施例1及び実施例6では大幅に取鍋内のスラグ量が低減されていた。
【0080】
この結果から、スラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度に応じて、(1)式及び(2)式に基づいて石灰石を転炉内に添加することで、取鍋へのスラグ排出量を大幅に削減可能であることが分かった。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、溶銑を転炉内で酸素吹錬して溶鋼を製造する際に、プラスチック又はプラスチック含有物質によってスラグを効率良く還元することが可能となり、スラグ中のT.Fe濃度を低位に抑えることが達成される。又、プラスチック又はプラスチック含有物質は、転炉設備に備えられた従前の副原料投入装置を利用して添加することができるため、特別の添加装置を設置する必要がない上に、溶鋼への加炭量も極めて少なく、転炉精錬を阻害することがない。その結果、鉄歩留まりの向上、有効成分の過剰酸化の防止、転炉操業の安定化等が達成され、工業上極めて有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸素吹錬末期にプラスチックを添加したときのスラグ中T.Feの低減量を水準1〜3で比較して示す図である。
【図2】スラグの固相率に及ぼすスラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度の影響を示す図である。
【図3】スラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度と精錬剤の添加量とを因子として、スラグ流出抑制効果の有無の境界線を示す図である。

Claims (5)

  1. 溶銑を転炉内で酸素吹錬して溶鋼を製造する方法において、当該酸素吹錬中、Mn鉱石を転炉内に供給し、少なくとも酸素吹錬終了の60秒前から30秒前までの期間には、プラスチック純分で溶鋼トン当たり0.5kg以上のプラスチック又はプラスチック含有物質を、連続して転炉内に供給するか、又は、プラスチック又はプラスチック含有物質からガスが発生している期間内で断続的に転炉内に供給し、供給したプラスチック又はプラスチック含有物質によって転炉内のスラグを還元し、還元後、還元したスラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度に応じ、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、下記の(1)式を満たす範囲内で、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトのうちの1種以上からなる精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、下記の(2)式を満たす範囲内で、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトのうちの1種以上からなる精錬剤を転炉内に添加し、添加した精錬剤によって転炉内のスラグを固化させることを特徴とする、溶鋼の製造方法。
    Wc×100 ≧ 0.5×Ws×[T.Fe(mass%)+MnO(mass%)−10] …(1)
    Wc×100 ≧ 0.2×Ws×[T.Fe(mass%)+MnO(mass%)+ 5] …(2)
    但し、(1)式及び(2)式において、Wcはスラグを固化するための精錬剤の添加量(kg)、Wsは転炉内の推定スラグ量(kg)である。
  2. 前記溶銑は、溶銑予備処理にて脱燐処理された溶銑であることを特徴とする、請求項1に記載の溶鋼の製造方法。
  3. 前記転炉内のスラグ量を、溶鋼トン当たり50kg以下に調整することを特徴とする、請求項2に記載の溶鋼の製造方法。
  4. 前記プラスチック又はプラスチック含有物質を、転炉内に配置された上吹きランスから搬送用ガスと共に吹き込むことを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の溶鋼の製造方法。
  5. 前記プラスチック含有物質は、プラスチックと金属又は金属酸化物とを含有する熱間押出し成形体又は成形ブリケットであり、50mass%以上のプラスチックを含有していることを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の溶鋼の製造方法。
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