JP3934990B2 - セラミックヒータおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の空燃比検知センサ加熱用ヒータや気化器用ヒータ、半田ごて用ヒータなどに使用するセラミックヒータ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、空燃比センサ加熱用ヒータ等の自動車用のヒータとして図3(a)に示すようなセラミックヒータ21が多用されており、例えば、アルミナを主成分とするセラミック体22中に、W、Re、Mo等の高融点金属からなる発熱抵抗体23を内蔵し、電極パッド24を介してリード部材27が接合されている(特開平5−34313号、特開平5−161955号公報等参照)。
【0003】
上記円柱状のセラミックヒータを製造する場合は、図3(b)に示すようにセラミック芯材30とセラミックシート28を用意し、セラミックシート28の一方面にW、Re、Mo等の高融点金属のペーストを印刷して発熱抵抗体23と電極引出部23aを形成した後、これらを形成した面が内側となるようにセラミックシート28を上記セラミック芯材30の周囲に巻付け、全体を焼成一体化することによりセラミックヒータ11としていた。
【0004】
セラミックシート28上には、発熱抵抗体23に電極引出部23aが接続され、該電極引出部23aの末端にスルーホール(不図示、以下同じ)が形成され裏面の電極パッド24と該電極引出部23aが接続されている。スルーホールには、必要に応じて導体ペーストが注入される。
【0005】
そして、図3(c)に示す電極パッド部周辺の部分断面図のように、セラミックヒータ21は側面に露出した電極パッド24の表面にはNiからなるメッキ層25が形成され、該メッキ層25の表面にロウ材26を介してリード部材27が接合され、このリード部材27から通電することにより発熱抵抗体23が発熱する仕組みである。
【0006】
また、上記ロウ材26の酸化や硫化を防止するため、ロウ材26の表面にはNiからなるメッキ層25が形成されており、メッキ層25を形成した後の熱処理やリード部材27をロウ付けする際の熱処理は、ロウ材26が酸化しないように還元雰囲気で熱処理していた。
【0007】
しかし、還元雰囲気中で熱処理を施した場合、水蒸気を含まないため熱処理後のセラミック体22の表面に黒ずんだ汚れ等が付着し、この付着物は洗浄しても完全に除去することが難しいため、外観不良や、酸素センサ内部に用いるセラミックヒータの場合には、使用中にこの付着物が剥離し、酸素センサ内部に形成されているPt電極と反応してセンサ特性を劣化させる恐れがあった。
【0008】
この問題に対応するため、水蒸気を含有した還元雰囲気中で熱処理を施すことによって、H2O−H2の化学平衡における乖離酸素分圧によってセラミックヒータ21に付着したカーボン残さを燃焼除去することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水蒸気を含有した還元雰囲気中で熱処理を施した場合、上記電極パッド24の表面に形成するメッキ層25およびロウ材26の表面にはガラス粒子が析出してくる。
【0010】
このガラス粒子は、セラミック体22およびロウ材25、リード部材26に含まれる不純物であるSiがリード部材26から沁み出してきて酸化したもの、即ち、ロウ材中の酸素と珪素の相互拡散において、ロウ材中の珪素の拡散速度がロウ材中の酸素の拡散速度より大きいため、ロウ材の表面に珪素の酸化物が析出するものと考えられる。また、ロウ材26に不純物として含むSiがロウ付け処理の際に水蒸気を含有した還元雰囲気中で熱処理を施すので、還元雰囲気中の平衡酸素分圧によりSiが酸化して表面に析出してガラスが生成してきたとも考えられる。
【0011】
このようにしてロウ材26の表面に析出してくるガラスが多くなると、ロウ材26の表面に形成するメッキ層25がロウ材26の表面全体を覆うことができなくなり、使用中の熱サイクルによりガラスとメッキの間に隙間が生成し、この隙間から空気が拡散することによりロウ材26が酸化してロウ材26の接着強度が劣化し、リード部材27のロウ付け強度を低下させるという欠点を有していた。
【0012】
例えば、図4(a)(b)に示すように、Ag−Cu系のロウ材26の表面にガラス31があると、セラミックヒータ使用中の熱サイクルにより、ロウ材26の中に存在するCuのような酸化しやすい成分が酸化し始め、Cuの酸化物からなる針状の結晶26aが表面に析出するような反応がおこり、これがロウ材26の内部まで浸透し、そこが起点となってリード部材27が剥離するという問題があった。
【0013】
最近は、自動車の排気ガスに関する規制が厳しくなり、空燃比制御用に使用する酸素センサの立ち上がり速度を早くする必要が生じ、このためセラミックヒータの立ち上がり特性を早くすることが必要となった。このため、セラミックヒータの使用温度が高くなったため、このような問題が顕著になった。
【0014】
特に、自動車用に使用するセラミックヒータについては、高い信頼性が要求されるため、1000本中1本でも上記のような不良が発生することは好ましくない。
【0015】
本発明は上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、本発明の目的は、セラミックヒータの電極パッドから酸化するのを抑制するとともに、ロウ材の接合強度を向上させることで耐久性が良好なセラミックヒータを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックヒータは、発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドが形成されており、水蒸気を含有した還元雰囲気中において前記電極パッドにSiを含有したロウ材層により金属製のリード部材を接合するとともに、少なくとも前記ロウ材層の表面にメッキ層が形成されたセラミックヒータにおいて、
SiO 2 を主成分とし、前記ロウ材層の表面に析出するガラス粒子を、前記メッキ層から突出しないように最大径を100μm以下としたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のセラミックヒータの製造方法は、発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドを形成する工程と、該電極パッドにSiを含有したロウ材を介して金属製のリード部材を接合する接合工程と、前記ロウ材の表面にメッキ層を形成するメッキ工程と、を備えるセラミックヒータの製造方法において、前記接合工程を、水蒸気を含む還元雰囲気中で行うことにより、ロウ材層の表面にSiO 2 を主成分とするガラス粒子を析出させ、前記メッキ工程を行う前に、摩擦部材により前記ロウ材層の表面のSiO 2 を主成分とするガラス粒子を除去する摩擦工程を施すことにより、前記ロウ材層の表面に析出するガラス粒子の最大径を100μm以下とすることを特徴とするものである。
【0018】
また、上記製造方法において、前記電極パッドとリード部材とを接合する還元雰囲気中の水蒸気分圧を670〜5360Paとすることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセラミックヒータの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明のセラミックヒータの一実施形態を示すものであり、図1(a)はセラミックヒータ1の部分切り欠き斜視図であり、(b)は、そのセラミック体2部分の展開図である。
【0022】
本発明のセラミックヒータ1は、図1(a)に示すようにセラミック体2中に発熱抵抗体3を内蔵し、発熱抵抗体3に通電する電極パッド4をセラミック体2の表面に備え、電極パッド4にメッキ層5を形成するとともに、ロウ材層6を介してリード部材7が接合されている。また、セラミック体2は、同図(b)に示すようにセラミックシート8の表面に、発熱抵抗体3と電極引出部3aが形成され、さらに、その裏面側に形成される電極パッド4との間をスルーホール9で接合した構造となっている。こうして、セラミック体2は準備されたセラミックシート8をセラミック芯材10に発熱抵抗体3が内側になるように密着焼成することによって発熱抵抗体3を内蔵することになる。
【0023】
また、セラミック体2のセラミックシート8は、アルミナ質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス等の各種セラミックスからなり、特に、アルミナセラミックスからなることが好ましく、例えば、Al2O3を88〜95重量%、SiO2を2〜7重量%、CaOを0.5〜3重量%、MgOを0.5〜3重量%、ZrO2を1〜3重量%からなるアルミナセラミックスを用いることが好ましい。Al2O3含有量は88重量%未満となると、ガラス質が多くなるため通電時のマイグレーションが大きくなる恐れがある。一方、Al2O3含有量を95重量%を超えると、セラミック体2中に内蔵された発熱抵抗体4の金属層内に拡散するガラス量が減少し、セラミックヒータ1の耐久性が劣化する恐れがある。
【0024】
また、上記セラミックヒータ1は、例えば外径が2〜20mm、長さが40〜200mm程度の円柱状で、自動車の空燃比センサ加熱用に用いる場合には、外径が2〜4mm、長さが40〜65mmとすることが好ましい。
【0025】
上記発熱抵抗体3は、W、Mo、Re等の高融点金属を主成分とするものであり、図1(c)に示すように発熱抵抗体3のパターンに欠陥bが生じた場合、その欠陥部分の幅tがパターン幅Tの1/2以下とすることが好ましい。これは、上記欠陥の幅tがパターン幅Tの1/2を越えると、この部分で局部発熱し、発熱抵抗体3の抵抗値が大きくなり耐久性が劣化するためである。
【0026】
このような欠陥が発生する原因は、発熱抵抗体3をプリント形成する時に、プリント製版にゴミが付着したためパターンが欠けてしまったり、異物が混入し焼成時に焼失したりすることにより発生するものと思われる。プリントや密着工程で、生のセラミックグリーンシート3を取り扱う工程があるが、この工程の清浄度を向上させるとともに、万一の欠陥の発生に関して、上記寸法以上の欠陥を取り除くための検査工程の整備が重要である。
【0027】
また、自動車用のヒータとして用いる場合には、上記発熱抵抗体3の発熱長さが3〜15mmとなるようにすることが好ましい。この発熱長さが3mmより短くなると、通電時の昇温を早くすることができるが、セラミックヒータ1の耐久性を低下させる。一方、15mmより長くすると昇温速度が遅くなり、昇温速度を早くしようとするとセラミックヒータ1の消費電力が大きくなる。
なお、上記発熱長さとは、図1(b)で示す発熱抵抗体3における往復パターンの部分の長さfを示す。この発熱長さfは、用途により種々選択されるものである。
【0028】
さらに、上記発熱抵抗体3の両端部には電極引出部3aが形成されており、図2の部分拡大図のように、発熱抵抗体3の端部に形成された電極引出部3aにはスルーホール9を介して発熱抵抗体3に通電するための上記電極パッド4に接続されている。
【0029】
電極パッド4はスルーホール9のセラミック体2上に形成し、その材質は、W、Mo、Re等の高融点金属を主成分とするメタライズ層からなり、その表面にメッキ層5を形成しても良い。電極パッド4にメッキ層5を形成することにより、ロウ材層6の流れを良くし、ロウ付け強度を向上させる作用をなす。メッキ層5の材質としては、Ni、Cr、もしくはこれらを主成分とする複合材料等からなり、1〜5μmの厚みで形成される。
【0030】
次にロウ材層6構造について、図2を用いて説明する。(a)は、本発明のセラミックヒータ1のロウ付構造を示す斜視図であり、(b)は、そのロウ材層6の表面部分を拡大した部分拡大図であり、(c)はガラス粒子11がロウ材層6の表面に付着した状態を示す断面図である。
【0031】
ロウ材層6は、その材料としてAg−Cu、Au−Cu、Ag、Cu、Au等を主成分とし、必要に応じてバインダとなる樹脂や活性金属であるTi、Mo、V等の金属を含有するロウ材が用いられ、水蒸気を含有する還元雰囲気中で硬化させて形成されている。
【0032】
本発明では、図2(b)に示すように上記ロウ材層6の表面に析出するガラス粒子11の最大径hが100μm以下であることが重要である。
【0033】
上記ロウ材層6の表面には、詳細を後述するように、製造工程においてリード部材7を電極パッド4に水蒸気を含有する還元雰囲気中でロウ付けする。本発明では、このロウ付けの際に、ロウ材層6中に不純物として含有されるSiやSiを主成分とするその他の金属酸化物等がロウ材層6の表面に析出してくる。これらを本発明でいうガラス粒子11と呼ぶ。このガラス粒子11は、主としてSiO2からなり透明で非晶質であり、ロウ材11の色々な部分の表面に楕円状若しくは略ドーム状の形状で析出してくる。
【0034】
このガラス粒子11の最大径hを100μm以下にすることにより、ロウ材層6の表面にガラス粒子11が析出してもロウ材層6の上に形成するメッキ層5に生成する欠陥の発生を抑制し、これにより使用中の熱サイクルによるロウ材層6の酸化を防止することを鋭意検討の結果、本願発明者が見い出したものである。ここで、ガラス粒子11の最大径とは、形状が楕円状である場合には長径をいい、略ドーム状である場合は、ガラス粒子11を真上から見た場合の投影図における長径をいう。
【0035】
ガラス粒子11の最大径hが100μmを越えると図2(c)に示すようにメッキ層5からガラス粒子11が突出し、使用中の熱サイクルによりガラス粒子11のメッキ層5の間に隙間が発生し、この隙間から空気が拡散してロウ材層6が酸化し、リード部材7の引張強度を低下させてしまうので好ましくない。さらに好ましくは、ガラス粒子11の最大径hを30μm以下、特に10μm以下にすることが好ましくリード部材7の引張強度の耐久性を向上させることができる。
【0036】
上記ガラス粒子11の最大径hの測定方法としては、金属顕微鏡、メジャースコープ、電子顕微鏡等の装置を使用して、任意のエリアを観察することにより測定することができる。なお、精度を高めるためにも、測定エリアを複数増やすことが好ましい。
【0037】
上記ロウ材層6としては、Au、Cu、Au−Cu、Au−Ni、Ag、Ag−Cu系のロウ材により形成され、Au−CuロウはAu含有量が25〜95重量%、Au−NiロウとしてはAu含有量が50〜95重量%とすると、ロウ付け温度を1000℃程度に設定でき、ロウ付け後の残留応力を低減することができる。これにより、熱サイクルにおいてロウ材層6とセラミック体2の熱膨張差に起因する疲労が生じてもロウ付け強度の低下を抑制することができる。
【0038】
次にロウ材層6の表面に形成するメッキ層5はロウ材層6の酸化を防止するために用いられる。なお、本発明ではロウ材層6にメッキ層5を形成することを記載しているが、このメッキ層5の形成とともに、リード部材7を露出させている場合にはリード部材7全体もメッキ処理させることはいうまでもない。
【0039】
リード部材7は、耐熱性が良好なNi系、Fe−Ni系合金等の金属製の部材を使用することが好ましい。これにより、発熱抵抗体3からの熱伝達により、使用中にリード部材7の温度が上昇し、劣化するのを有効に防止することができる。また、リード部材7の材質としてNiやFe−Ni合金を使用する場合、その平均結晶粒径を400μm以下とすることが好ましい。上記平均粒径が400μmを越えると、使用時の振動および熱サイクルにより、ロウ付け部近傍のリード部材7が疲労し、クラックが発生しやすい。他の材質についても、例えばリード部材7を形成する材質の結晶粒径がリード部材7の厚みより大きくなると、ロウ材層6とリード部材7の境界付近の粒界に応力が集中してクラックが発生しやすい。
【0040】
なお、後述するように、ロウ付けの際の熱処理は、試料間のバラツキを小さくするためにロウ材層6の融点より十分余裕をとった高めの温度で熱処理する必要があるが、リード部材7の平均結晶粒径を400μm以下と小さくするためには、ロウ付けの際の温度をできるだけ下げ、処理時間を短くすればよい。
【0041】
次に本発明のセラミックヒータの製造方法について説明する。
【0042】
まず、アルミナを主成分とし、焼結助剤としてSiO2、CaO、MgO、ZrO2を合計量で4〜12重量%含有するセラミックスラリーを成形したセラミックシート8を準備する。
【0043】
セラミックシート8の一方の主面に発熱抵抗体3および電極引出部3aをプリントもしくは転写等の手法を用いて形成し、電極引出部3aの裏面にあたるセラミックシート8の他方の主面に電極パッド4を同じくプリントもしくは転写等の手法により形成する。
【0044】
次に、電極引出部3aと電極パッド4との間にスルーホール9を形成し、該スル−ホール9にW、Mo、Reの少なくとも1種類を主成分とする導電材料を充填するか、もしくはスルーホール9の内側面に塗布することにより、電極引出部3aと電極パッド6が電気的に接続できるようにする。
【0045】
その後、発熱抵抗体3および電極引出部3aの上にセラミックシート8とほぼ同等の組成からなるコート層を形成した後、セラミックシート8をセラミック芯材10の周囲に周回密着して筒状の生成形体を成形する。こうして得られた生成形体を1500〜1650℃の還元雰囲気中で焼成してセラミック体2とする。
【0046】
その後、電極パッド4の表面に電界メッキ法や無電界メッキ法によりNi、Cr等の金属からなるメッキ層を形成する。次に、Ag−Cuを主成分とするロウ材を用い、電極パッド4とリード部材7とを水蒸気を含有した還元雰囲気中で接合する。その際、本発明の特徴であるロウ材層6の表面に最大径100μm以上のガラス11が析出する。このガラス粒子11は、ロウ材の表面に物理的に付着しているだけであるために、ガラス粒子11を摩擦部材によりロウ材層6表面に当接させて除去することができる。摩擦部材としては、ロウ材層6の表面を1〜300μm程度の平均粒径の樹脂製ビーズやガラスビーズから成るサンドブラストや、樹脂製の弾性体が用いられる。
【0047】
摩擦部材として用いる樹脂製の弾性体としては、ポリブタジェンゴム、ブタジェンスチレンゴム、ブタジェナクリロニトリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、フッ素ゴムシリコンゴム等、色々なものを使用することができる。また、これらのゴムに、微粒のシリカやアルミナのようなセラミックスを分散させたものを用いると、さらに、ガラス粒子11の除去が容易になる。
【0048】
更に、摩擦部材で摺擦後にロウ材層6表面をフッ酸水溶液中に浸漬してガラスを除去することも可能である。
【0049】
次に、このようにして形成したロウ材層6の表面にNi、Cr等の金属から成るメッキ層5を形成する。その後、水蒸気を含有した還元雰囲気中で熱処理することでセラミックヒータが完成する。
【0050】
なお、本発明ではメッキ層5を形成する前にロウ材層6の表面を摺擦する工程を用いたがこれに限定されず、ロウ材層6の形成する雰囲気を調整することでもロウ材層6表面に析出するガラス粒子の最大径が100μm以下とすることができる。
【0051】
具体的には、セラミック体2の表面に電極パッド4を形成した後、670〜5360Paの水蒸気を含む還元雰囲気中で、それぞれのロウ材層6に適した温度でロウ付けすれば上記と同様の効果が得られる。なお、ロウ付け温度は具体的には、Ag−Cuロウであれば770〜870℃、Au−Cuロウであれば950〜1050℃、Agロウであれば1000〜1100℃でロウ付け処理を行う。
【0052】
上記熱処理における水蒸気分圧は、金属表面のガラス粒子11との濡れ性に影響を及ぼすため、熱処理時の水蒸気分圧を670〜5360Paに調整することによって、ロウ付けの熱処理中にセラミックヒータ1の表面に付着物が生成することを防止するとともに、ロウ付け強度が大きく耐久性の高いセラミックヒータ1を得ることができる。
【0053】
上記水蒸気分圧が670Paより低くなると、セラミック体2の表面に有機物と推察できる付着物が熱処理後に残り、洗浄しても除去することができず外観を損ねるとともに、セラミックヒータ1を酸素センサ加熱用に用いる場合、付着物が使用中の振動や熱サイクルによりセラミックヒータ1の表面から剥離して、酸素センサのPt電極と反応し、センサ特性を劣化させてしまう恐れがある。一方、5360Paを越えると、ロウ材層6上へ析出するガラス粒子11の最大径hが大きくなり、ロウ材層6の上に形成するメッキ層5にガラス粒子11上で欠陥が生成し、セラミックヒータ1使用中の熱サイクルによりガラス粒子11とメッキ層5との間に隙間が発生し、この隙間を空気が拡散してロウ材層6が酸化し、セラミックヒータ1のロウ付け部の耐久性が劣化しやすくなる。
【0054】
また、上記水蒸気分圧は、670〜4000Pa以下、さらには670〜2400Paとすることがより好ましい。
【0055】
従来はロウ付け処理において、上記のように還元性ガスに加湿することを行っていなかったが、本発明のように水蒸気を含有する還元雰囲気中で行う熱処理は、セラミックヒータ1の表面に有機物が残っていた場合、ロウ付けの熱処理と併せて除去できるため有効である。また、ロウ材層6の表面に析出するガラス粒子11の最大径hを100μm以下とすることにより、使用中の熱サイクルによりロウ材層6が酸化してリード部材7の引張強度が減少するような問題を防止することができる。
【0056】
また、セラミックヒータ1を湿度が高い雰囲気中で使用する場合、Au系、Cu系のロウ材層6を用いることによってマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0057】
一方、100μm以上のガラス粒子11の析出を防止する手法として、ロウ材層6中の不純物であるSiの量を減らすことも可能である。
【0058】
なお、このような水蒸気分圧を規定する方法、Si量を減少させる方法等の処理に、上述のようなロウ材層6の表面を摺擦する処理を加えることで、更に、析出するガラス粒子の最大径を小さくすることが可能となる。
【0059】
さらに、図2(a)に示すように電極パッド4の端部からロウ材層6の端部までの距離kが少なくとも0.2mm以上とすることが好ましい。
【0060】
上記距離kが0.2mm未満であると、電極パッド4の端部がロウ材層6の収縮時に引っ張られて剥離しやすくなり、ロウ付け強度が低下するので、好ましくない。
【0061】
なお、本発明のセラミックヒータ1は、上述の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。
【0062】
【実施例】
(実施例1)
先ず、図1に示すようなセラミックヒータ試料を得るため、セラミック体2としてAl2O3を主成分とし、SiO2、CaO、MgO、ZrO2を合計10重量%以内になるように調整したセラミックシート8に、W−Reからなる発熱抵抗体3とWからなる電極引出部3aをプリントした。また、セラミックシート8の裏面には電極パッド4をプリントした。発熱抵抗体3は、発熱長さ5mmで4往復のパターンとなるように作製した。
【0063】
そして、Wからなる電極引出部3aの末端には、スルーホールを形成し、ここにペーストを注入することにより電極パッド4と電極引出部3a間の導通をとった。スルーホールの位置は、ロウ付けを実施した場合にロウ付け部の内側に入るように形成した。
【0064】
次いで、発熱抵抗体3の表面にセラミックシート8と略同一の成分からなるコート層を形成して充分乾燥した後、さらに上記セラミックシート8と略同一の組成のセラミックスを分散させた密着液を塗布して、こうして準備したセラミックシート8をセラミック芯材10の周囲に密着し、1500〜1600℃で焼成した。
【0065】
さらに、上記電極パッド4の表面にNiからなる厚み3μmのメッキ層5を形成し、2640Paの水蒸気分圧を有するH2−N2ガスからなる還元雰囲気中700〜800℃で熱処理した後、Ag−Cuからなるロウ材層6を用いて、Niからなる直径0.8mmのリード部材7を還元雰囲気中830℃でロウ付けし、さらにその表面にNiからなる3μmのメッキ層5を端部に形成して700℃で熱処理した。
【0066】
このメッキ層5のロウ付け処理の際、H2−N2ガスを温度調整した水の中をくぐらせて、H2−N2ガス中の水蒸気分圧を露点の調整により670Pa以下(1℃:資料No.1)、1230Pa(12℃:資料No.2)、2060Pa(18℃:資料No.3)、2640Pa(21℃:資料No.4)、3360Pa(26℃:資料No.5)、4000Pa(29℃:資料No.6)、4760Pa(32℃:資料No.7)、5630Pa(35℃:資料No.8)と調整することにより、H2−N2ガス中の水蒸気圧を調整した。
【0067】
そして、各試料No.1〜8のセラミックヒータについて、ロウ付け後のガラス粒子11の大きさを1000倍の電子顕微鏡写真によって5mm2確認し、各ガラス粒子11の最大径hを測定した後、その平均値を算出した。
【0068】
また、ロウ材層6の表面にメッキ層5を形成した後、各試料を400℃の恒温槽に5分間入れて温度が安定した後強制急冷し、さらに恒温槽に入れる熱サイクル試験を2000サイクル実施し、さらに、550℃の恒温層に500時間放置するという耐久試験を実施し、その後、ロウ材層6表面のメッキ層5の変化を観察した。
【0069】
上記メッキ層5にロウ材層6のCuの酸化物が析出した生成物が発生したものは×、メッキ層5に一部に変色域がみられたものを△とし、酸化のような変化の見られないものを○とした。
【0070】
このテストは、使用中の熱サイクルの加速試験に相当する。
【0071】
また、耐久試験後の試料のリード部材7の引張強度を測定した。リード部材7をセラミック体2の表面から垂直に引っ張るモードで評価した。各ロット10本づつ測定し、その平均値をデータとした。
【0072】
これらの結果を、表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1から明らかなように、熱処理の際の水蒸気分圧、温度の条件によって析出するガラスの最大径、量に違いがあり、析出したガラスの最大径hが100μmを超える試料(No.8)は、上記熱処理および熱サイクル試験後に、メッキ層5の表面に酸化物が生成した。また、耐久試験後のリード部材7の引張強度を測定したところ、酸化の程度のひどいサンプルは10N以下と張強度が大きく低下した。
【0075】
これに対し、ガラス粒子11の最大径hが100μm以下の試料(No.1〜7)は、耐久試験後のリード部材の引張り強度が30N以上あり、耐久試験後の外観検査でメッキ層5に酸化物の生成は確認できなかった。ガラス粒子11の最大径hが50〜100μmであるNo.7、8はガラス粒子11の周辺にメッキ層5の変色がみられるものがあったが、引張強度への影響はないものと判断した。
【0076】
また、No.1は、メッキ表面に、付着物が残っているものがあり、別途外観に問題はあるものの、ロウ材表面にはCu析出物は見いだされず耐久性試験も良好であった。
【0077】
(実施例2)
ここでは、リード部材7をロウ材層6により電極パッド4にロウ付けした後、ロウ材層6表面に析出したガラス粒子11を各手法で除去し、その後にロウ材層6の表面にNiからなるメッキ層5を形成し、実施例1と同様の方法でロウ付け部の熱サイクル試験および熱処理におけるロウ付け部の観察を実施した。
【0078】
ガラス粒子11の除去方法として、ロウ付け後のロウ材層6の表面を平均粒径10μmのアクリルビーズ、平均粒径15μmのガラスビーズ、平均粒径1.8μmのアルミナを用いてロウ材層6の表面をサンドブラストし、ロウ付け部を水中に漬けて超音波洗浄した後、ロウ材層6の表面に4μmのNiメッキを施したサンプルを各100個準備した。
【0079】
また、ロウ付け後のセラミックヒータ1を10%のフッ酸溶液に10分間浸漬し、水洗、超音波洗浄した後、ロウ材層6の表面に4μmのNiメッキを施したサンプルを100個準備した。
【0080】
また、ロウ付け後のセラミクヒータ1の表面を樹脂製の弾性体であるブタジェンスチレンゴムにより擦ることにより、ロウ材層6の表面に付着している最大径100μm以下のガラス粒子11を除去し、ロウ付け部を水中に漬けて超音波洗浄した後、ロウ材層6の表面に4μmのNiメッキを施したサンプルを各100個準備した。
【0081】
これらのサンプルを実施例1と同様な方法で、熱サイクル、及び熱処理した後、ロウ付け部の外観の変化を調べた。
【0082】
その結果、全てのロットについて、ロウ材層6の表面に、ロウ材層6にCuの酸化物が生成するようなサンプルはなかった。
【0083】
上記のように、物理的、化学的な手法で、ロウ材層6表面に生成するガラス6を除去することにより、ロウ材層6の表面のメッキ5に欠陥が生成することを防止し、電極パッド部が400℃以上に加熱されるような厳しい条件でも、耐久性良好なセラミックヒータを得ることができることが判った。
【0084】
【発明の効果】
本発明のセラミックヒータの構成によれば、ロウ材層の表面に形成するメッキ層に欠陥が生成することを抑制できるため、使用中の熱サイクルにより、電極パッドとリード部材とを接合するロウ材層が酸化することを防止しでき、耐久性の高いセラミックヒータを得ることができる。
【0085】
また、本発明のセラミックヒータの製造方法によれば、ロウ材の表面にメッキ層を形成する前に、ロウ材表面を摺擦するために、その表面に析出するガラスを除去できるために、欠陥のないメッキ層を形成することができ、それにより、耐久性の高いセラミックヒータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のセラミックヒータを示す斜視図であり、(b)はその展開斜視図、(c)は同図(b)の発熱抵抗体の欠陥を示す部分拡大図である。
【図2】(a)は本発明のセラミックヒータに用いられる電極パッド周辺の斜視図であり、(b)はそのロウ材表面の拡大図であり、(c)はその断面図である。
【図3】(a)は従来のセラミックヒータを示す斜視図であり、(b)はその展開斜視図であり、(c)はその電極パッド部分の断面図である。
【図4】(a)は従来のセラミックヒータに用いるロウ材の酸化する様子を示す拡大図、(b)はその電極パッド周辺の斜視図である。
【符号の説明】
1:セラミックヒータ
2:セラミック体
3:発熱抵抗体
3a:電極引出部
4:電極パッド
5:メッキ層
6:ロウ材
7:リード部材
8:セラミックシート
9:スルーホール
10:セラミック芯材
11:ガラス
Claims (6)
- 発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドが形成されており、水蒸気を含有した還元雰囲気中において前記電極パッドにSiを含有したロウ材層により金属製のリード部材を接合するとともに、少なくとも前記ロウ材層の表面にメッキ層が形成されたセラミックヒータにおいて、
SiO 2 を主成分とし、前記ロウ材層の表面に析出するガラス粒子を、前記メッキ層から突出しないように最大径を100μm以下としたことを特徴とするセラミックヒータ。 - 前記電極パッドの表面には、下地メッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックヒータ。
- 発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドを形成する工程と、
該電極パッドにSiを含有したロウ材を介して金属製のリード部材を接合する接合工程と、
前記ロウ材の表面にメッキ層を形成するメッキ工程と、
を備えるセラミックヒータの製造方法において、
前記接合工程を、水蒸気を含む還元雰囲気中で行うことにより、ロウ材層の表面にSiO 2 を主成分とするガラス粒子を析出させ、
前記メッキ工程を行う前に、摩擦部材により前記ロウ材層の表面のSiO 2 を主成分とするガラス粒子を除去する摩擦工程を施すことにより、前記ロウ材層の表面に析出するガラス粒子の最大径を100μm以下とすることを特徴とするセラミックヒータの製造方法。 - 前記摩擦工程の後、さらに前記ロウ材層表面をフッ酸水溶液に浸漬する工程を備えることを特徴とする請求項3に記載のセラミックヒータの製造方法。
- 前記摩擦部材が、サンドブラスト又は樹脂製の弾性体であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセラミックヒータの製造方法。
- 前記還元雰囲気中の水蒸気分圧が670〜5360Paであることを特徴とする請求項3乃至5に記載のセラミックヒータの製造方法。
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