JP3934993B2 - セラミックヒータ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の空燃比検知センサ加熱用ヒータや気化器用ヒータ、半田ごて用ヒータなどに使用するセラミックヒータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、空燃比センサ加熱用ヒータ等の自動車用のヒータとして図3(a)に示すようなセラミックヒータ21が多用されており、例えば、アルミナを主成分とするセラミック体22中に、W、Re、Mo等の高融点金属からなる発熱抵抗体23を内蔵し、電極パッド24を介してリード部材27が接合されている(特開平5−34313号、特開平5−161955号公報等参照)。
【0003】
上記円柱状のセラミックヒータを製造する場合は、図3(b)に示すようにセラミック芯材30とセラミックシート28を用意し、セラミックシート28の一方面にW、Re、Mo等の高融点金属のペーストを印刷して発熱抵抗体23と電極引出部23aを形成した後、これらを形成した面が内側となるようにセラミックシート28を上記セラミック芯材30の周囲に巻付け、全体を焼成一体化することによりセラミックヒータ21としていた。
【0004】
セラミックシート28上には、発熱抵抗体23に電極引出部23aが接続され、該電極引出部23aの末端にスルーホール(不図示、以下同じ)が形成され裏面の電極パッド24と該電極引出部23aが接続されている。スルーホールには、必要に応じて導体ペーストが注入される。
【0005】
そして、図3(c)に示す電極パッド24部周辺の部分断面図のように、セラミックヒータ21は側面に露出した電極パッド24の表面にはNiからなるメッキ層25が形成され、該メッキ層25の表面にロウ材26を介してリード部材27が接合され、このリード部材27から通電することにより発熱抵抗体23が発熱する仕組みである。
【0006】
また、上記ロウ材26の酸化や硫化を防止するため、ロウ材26の表面にはNiからなるメッキ層25が形成されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、排気ガス規制が厳しくなるにつれ、酸素センサを早く作動させて、早く燃料と空気の比率(空燃比)を理想的な混合比に調整しなければならない。そこで、酸素センサの立ち上がり時間を短くするためにセラミックヒータ21により酸素センサを加熱するシステムが実施されている。
【0008】
特に、最近は、この立ち上がり時間をさらに短くするために、セラミックヒータ21の使用温度を高くする傾向にある。一方、エンジン制御のエレクトロニクス化により、エンジン周辺のスペースが手狭になる傾向にあり、このため酸素センサが小型化する傾向にあり、セラミックヒータ21の全長方向の距離が短くなる傾向にある。
【0009】
このように、セラミックヒータ21の全長方向の距離が短くなると、図3(a)に示すように、本来、電極パッド24は、発熱抵抗体23からの熱伝導の影響を受けて温度が上がり、加熱冷却の温度サイクルによりロウ付け強度が劣化しないようにするためには、できる限り発熱抵抗体23から離して配置させることが好ましいが、上記小型化により次第に発熱抵抗体23と近接してくることとなる。
【0010】
ここで、セラミックヒータ21をなすセラミック体28の熱膨張率は、材質がアルミナの場合7〜8×10-6/℃であるのに対し、リード部材27を電極パッド24に接合するロウ材26の熱膨張率は15〜22×10-6/℃と大きいため、セラミックヒータ21使用中に電極パッド24付近の温度が高くなればなるほど、この熱膨張率の差によって生じる熱応力の変化幅が大きくなり、これにより、ロウ付け部が疲労し、リード部材27の接合強度が低下することが問題となってきた。
【0011】
そこで、電極パッド24に関して、高い耐熱特性の材料を選択することも考えられるが、そのような材料を選択するのも困難であり、仮に選択出来たとしても、高価で製造コストも上がってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みて案出されたものであり、電極パッドの温度が高くなったとしても、電極パッドの耐熱特性を向上させるとともに、使用中の熱サイクルによるリード部材の接合強度を向上させたセラミックヒータを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックヒータは、 発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドを形成し、該電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合してなるセラミックヒータにおいて、前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面クラックを発生させて複数の溝部形成したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のセラミックヒータは、前記セラミック体を円柱状に形成するとともに、前記リード部材は前記セラミック体の全長方向に略平行に接合され、かつ、前記電極パッドの溝部は前記リード部材に対して略平行に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のセラミックヒータの製造方法は、発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドを形成し、該電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合するセラミックヒータの製造方法において、前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面にクラックを発生させる工程を備えていることを特徴とする。
また、本発明のセラミックヒータの製造方法は、 発熱抵抗体のパターンが形成されたセラミックシートの表面に前記発熱抵抗体に接続される電極パッド用の生成形体のパターンを形成し、焼成した後、前記電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合する方法において、前記生成形体の可撓性を調整することにより前記焼成前に前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面にクラックを発生させることを特徴とする。
【0016】
本発明のセラミックヒータの製造方法は、セラミックシートの表面に発熱抵抗体のパターンを形成し、前記セラミックシートの裏面に前記発熱抵抗体に接続される電極パッド用の生成形体のパターンを形成した後、このセラミックシートを、前記発熱抵抗体のパターンが内側になるように円柱状のセラミック芯材の周囲に巻回し、焼成した後、前記電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合する方法において、前記生成形体の可撓性を調整することにより前記巻回時に前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面にクラックを発生させることを特徴とする。
【0017】
このような改良を実施することにより、溝部との実質的な接触面積が向上し、電極パッドにロウ材を接合するリード部材の接合強度を向上させ、耐久性良好なセラミックヒータを得ることが出来るものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセラミックヒータの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明のセラミックヒータの一実施形態を示すものであり、図1(a)はセラミックヒータ1の部分切り欠き斜視図であり、(b)は、そのセラミック体2部分の展開図である。
【0020】
本発明のセラミックヒータ1は、図1(a)に示すようにセラミック体2中に発熱抵抗体3を内蔵し、該発熱抵抗体3に通電する電極パッド4を上記セラミック体2の表面に備え、上記電極パッド4にメッキ層5を形成するとともに、ロウ材6を介してリード部材7が接合されている。また、セラミック体2は同図(b)に示すようにセラミックシート8の表面に、発熱抵抗体3と電極引出部3aが形成され、さらに、その裏面側に形成される電極パッド4との間をスルーホール(不図示)で接合した構造となっている。こうして準備されたセラミックシート8をセラミック芯材10に発熱抵抗体3が内側になるように密着焼成することによって発熱抵抗体3を内蔵したセラミックヒータ1を得ることができる。
【0021】
また、上記セラミックシート8は、アルミナ質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス等の各種セラミックスからなり、特に、Al23を88〜95重量%、SiO2を2〜7重量%、CaOを0.5〜3重量%、MgOを0.5〜3重量%、ZrO2を1〜3重量%からなるアルミナ質セラミックスを用いることが好ましい。Al23含有量は88重量%未満となると、ガラス質が多くなるため通電時のマイグレーションが大きくなる恐れがある。一方、Al23含有量が95重量%を超えると、セラミック体2中に内蔵された発熱抵抗体4の金属層内に拡散するガラス量が減少し、セラミックヒータ1の耐久性が劣化する恐れがある。
【0022】
また、セラミック体2は、例えば外径が2〜20mm、長さが40〜200mm程度の円柱状で、自動車の空燃比センサ加熱用のセラミックヒータ1としては、外径が2〜4mm、長さが40〜65mmとすることが好ましい。
【0023】
発熱抵抗体3は、発熱が起こる屈曲部3bと電極パッド4から通電する電極引出部3aからなり、この電極引出部3aからセラミックシート8の厚み方向に貫通したスルーホール9を介して電極パッド4に接続されている。発熱抵抗体3の材料としては、W、Mo、Re等の高融点金属を主成分とするものであり、図1(a)に示すように、屈曲部3bと電極引出部3aが出来る限り離れるようにセラミック体2の両端部側に位置するように配置するのが好ましい。この理由は、セラミックヒータ1の小型化に伴って、セラミック体2の全長方向の距離が短くなってきたとしても、充分、屈曲部3bから発熱による熱が電極パッド24に伝わるのを緩和させるためである。
【0024】
更に、図1(c)に示すように発熱抵抗体3のパターンに欠陥bが生じた場合、その欠陥部分の幅tがパターン幅Tの1/2以下とすることが好ましい。これは、上記欠陥の幅tがパターン幅Tの1/2を越えると、この部分で局部発熱し、発熱抵抗体3の抵抗値が大きくなり耐久性が劣化するためである。このような欠陥が発生する原因は、発熱抵抗体3をプリント形成する時に、プリント製版にゴミが付着したためパターンが欠けてしまったり、異物が混入し焼成時に焼失したりすることにより発生するものと思われる。プリントや密着工程で、生のセラミックグリーンシート3を取り扱う工程があるが、この工程の清浄度を向上させるとともに、万一の欠陥の発生に関して、上記寸法以上の欠陥を取り除くための検査工程の整備が重要である。
【0025】
また、自動車用のヒータとして用いる場合には、上記発熱抵抗体3の発熱長さが3〜15mmとなるようにすることが好ましい。この発熱長さが3mmより短くなると、通電時の昇温を早くすることができるが、セラミックヒータ1の耐久性を低下させる。一方、15mmより長くすると昇温速度が遅くなり、昇温速度を早くしようとするとセラミックヒータ1の消費電力が大きくなる。
【0026】
なお、上記発熱長さとは、図1(b)で示す発熱抵抗体3における往復パターンの部分の長さfを示す。この発熱長さfは、用途により種々選択されるものである。
【0027】
電極パッド4は、W、Mo、Re等の高融点金属を可塑剤や有機溶剤等により分散させた導電性ペーストを焼き付け等により形成したメタライズ層からなり、その表面にメッキ層5を形成しても良い。電極パッド4にメッキ層5を形成することにより、ロウ材6の流れを良くし、ロウ材6で接合する強度を向上させる作用をなす。メッキ層5の材質としては、Ni、Cr、若しくは、これらを主成分とする複合材料等からなり、1〜5μmの厚みで形成される。
【0028】
また、図2は電極パッド4の拡大図である。図2に示したように、電極パッド4には溝部4aが形成されている。この溝部4aを形成することにより、ロウ材6が溝部8に入り込み、実質なロウ材6の接合面積が増えるために接合強度を向上させ、リード部材7を接合するロウ材6の引張強度を向上させることができる。特に、電極パッド4に熱サイクルが加わった後にリード部材7の接合強度が低下するのを抑制できる。
【0029】
溝部4aを形成する電極パッド4上の領域としては、リード部材7と対向する領域が好ましい。これにより、接合強度を更に向上させることができる。
【0030】
電極パッド4に形成する溝部4aの方向は限定するものではないが、特に、セラミックヒータ1の全長方向に対して平行に形成することが好ましい。リード部材7に働く応力は、図2(b)の矢印に示すように、リード部材7を電極パッド4から垂直に引っ張る応力となる。この応力に対して、電極パッド4に溝4aを形成して電極パッド4の表面積を大きくすることにより、引張応力を緩和することができるからである。
【0031】
また、更に好ましくは、上記溝部4aの間隔gを0.1〜1.5mmとする。この間隔gが0.1mmより小さいと、リード部材7による引張応力を支える電極パッド4の幅が狭いため使用中の熱サイクルによりリード部材7の引張強度が劣化しやすくなり、リード部材7に作用する力を電極パッド4で支えるのが難しくなり、引張強度が低下するので好ましくない。
【0032】
また、上記溝部4aの間隔gが1.5mmを越えると、リード線7に対向する電極パッド4の領域の面積を上げる効果が小さくなるので、接合強度も下がるため好ましくない。
【0033】
更に、電極パッド8の厚みは80μm以下とすることが好ましい。80μmを超えると電極パッド8を構成する導電性粒子とセラミック体2の熱膨張差による応力が大きくなるので、使用中の熱サイクルにより疲労して電極パッド4のメタライズ強度が低下するためである。また、電極パッド8の厚みが10μm未満では、電極パッド8中の導電性粒子のモザイク構造が十分形成されず、このため磁器中から拡散するガラスの拡散による強化も不充分となり、リード部材7の引張強度が弱くなってしまうので好ましくない。
【0034】
溝部4aの形成は、電極パッド4をセラミック体2にプリントする際に、そのパターンを形成する製版に溝8aとなる部分を形成することにより形成することが好ましい。
【0035】
なお、溝部4aは電極パッド4表面に入るクラックを利用しても良い。このクラックによる溝部4aの形成方法としては、電極パッド4を形成する時に、電極パッド4のバインダを硬めに調整し、円柱状に形成されたセラミック体2の周囲にセラミックシート8を周回密着する際に、電極パッド4の表面にセラミック体2の全長方向に略平行にクラックが入るものである。これは、電極パッド4用の導電性ペースト中に添加する可塑剤の量を減少させることによって、電極パッド4生成形体の可撓性を減少させることにより調整することができる。
クラックの方向については、必ずしもセラミック体2の全長方向に平行なクラックを形成しなくても良い。
【0036】
また、電極パッド4を構成する高融点金属からなる導電性粒子の平均粒径は1〜5μmとすることが好ましい。1μmより小さいと電極パッド4の焼成収縮がセラミック体2の焼成収縮より大きくなるのでセラミック芯材との収縮差により電極パッド4に焼成時にクラックが入り、使用中の熱サイクルによりクラックが進展してリード部材7の剥離強度が低下するので、好ましくない。また、上記導電性粒子の平均粒径が5μmより大きいと導電性粒子同志の焼結が不充分となり、リード部材7の引張強度が低下してしまうので好ましくない。
【0037】
メッキ層5は、リード部材7を電極パッド4の表面にロウ材6で接合する際に、ロウ材6の流れを良くし、接合強度を増すために形成される。膜厚としては1〜5μmが好ましい。メッキ層5の材質としては、Ni、Cr、若しくはこれらを主成分とする複合材料を使用することができる。
【0038】
ロウ材6としては、その材質をAu、Cu、Au−Cu、Au−Ni、Ag、Ag−Cu系のものが使用される。Au−Cuを用いたロウ材6としては、Au含有量が25〜95重量%としAu−NiロウとしてはAu含有量が50〜95重量%とすると、ロウ材6で接合する温度を1000℃程度に設定でき、ロウ材6で接合後の残留応力を低減できるので好ましい。また、湿度が高い雰囲気中で使用する場合、Au系、Cu系のロウ材6を用いた方がマイグレーションを発生しにくくなるので好ましい。
【0039】
また、ロウ材6の表面には、更に、メッキ層5を形成すると腐食からロウ材6を保護するために好ましい。
【0040】
更に、電極パッド4の端部からロウ材6の端部までの距離が少なくとも0.2mm以上あるようにすることが好ましい。前記距離が0.2mm未満であると、電極パッド4の端部がロウ材の収縮時に引っ張られて剥離しやすくなり、ロウ材6で接合する強度が低下するので、好ましくない。
【0041】
また、図2に示す電極パッド4に形成されるスルーホール9の位置とロウ材6の端部6aとの距離を少なくとも0.2mm以上にすると、良好なロウ材6で接合する強度を維持することができる。これにより、メッキ層5の表面に形成したロウ材6が固化する際に大きく収縮し、電極パッド4を剥がしてしまうというような不具合を防止できるからである。
【0042】
リード部材7は、線状、平板状に形成され、材質として耐熱性が良好なNi系、Fe−Ni系合金等の金属製の材料を使用することが好ましい。これにより、発熱抵抗体3からの熱伝達により、リード部材7の温度が上昇して劣化するのを有効に防止することができる。また、リード部材7の材質としてNiやFe−Ni合金を使用する場合は、その平均結晶粒径を400μm以下とすることが好ましい。上記平均粒径が400μmを越えると、使用時の振動および熱サイクルによりロウ付け部近傍のリード部材7が疲労し、ロウ材6とリード部材7の接合界面付近にクラックが発生しやすい。他の材質についても、例えばリード部材7を形成する材質の平均結晶粒径がリード部材7の厚みより大きくなると、ロウ材6とリード部材7の境界付近の粒界に応力が集中してクラックが発生しやすいので好ましくない。
【0043】
なお、ロウ材6で接合するの際の熱処理は、試料間のバラツキを小さくするためには、ロウ材6の融点より十分余裕をとった高めの温度で熱処理する必要があるが、リード部材7の平均結晶粒径を400μm以下と小さくするためには、ロウ材6で接合するの際の温度をできるだけ下げ、処理時間を短くすればよい。
【0044】
次に、図1(b)の展開斜視図を用いて、本発明に用いられるセラミックヒータ1の製造方法を説明する。
【0045】
まず、セラミックシート8に電極引出部3aと電極パッド4を接続するためのスルーホール9を作製し、スル-ホール9の中にW、Mo、Re等の高融点金属からなる導電性粒子を主成分とする導体を充填し、その後セラミックシート8の表面に、発熱抵抗体3と電極引出部3aを形成する。
【0046】
そして、その裏面側にプリントや転写等の手法を用いて電極パッド4を形成する。こうして準備したセラミックシート8をセラミック芯材10の表面に、発熱抵抗体3が内側になるように積層密着したのち1500〜1650℃の還元雰囲気中で焼成することによりセラミック体2を形成する。
【0047】
そしてさらに、電極パッド4の表面に電界メッキ法や無電界メッキ法によりメッキ層5を形成した後、メッキ層5上にリード部材7をロウ材6で接合し、接合したリード部材7とロウ材6の全領域にメッキ層5を形成することでセラミックヒータ1が形成される。
【0048】
【実施例】
(実験例1)
Al23を主成分とし、SiO2、CaO、MgO、ZrO2を合計10重量%になるように調整した乾燥後のセラミックシート8を準備し、この表面に発熱抵抗体3を形成した。具体的には、W−Reを用い発熱長さ5mmで4往復のパターンとなるように形成する屈曲部23bとWからなる電極引出部3aとをプリントした。
【0049】
次に、セラミックシート8の裏面に電極パッド4をプリント形成した。そして、Wからなる電極引出部3aの末端にスルーホール9を形成し、ここにWを有機溶剤および可塑剤に分散させた導電性ペーストを注入する事により電極パッド4と電極引出部3a間の導通をとった。
【0050】
スルーホール9の位置は電極パッド4上に形成した。そして、発熱抵抗体3の表面にセラミックシート8と略同一の成分からなるコート層を形成して充分乾燥した後、さらに前記セラミックシート8と略同一の組成のセラミックスを分散させた積層液を塗布して、こうして準備したセラミックシート8をセラミック芯材2の周囲に巻回し、1500〜1600℃で焼成することにより、セラミック体2を得た。
【0051】
この時、予め、電極パッド4に溝部4aが形成できるように加工した雌型を有するプリント製版を用いて、以下の表1に示すように電極パッド4の表面に、溝部4aを0.05〜2.0mmの間隔で形成したものであって、セラミック体2の周方向に形成した資料1及び全長方向に平行に形成した資料No.2〜7と、クラックを形成した資料No.9とを準備した。
【0052】
資料No.9のクラックとしては、電極パッド4を形成するインク用に、バインダとしてエチルセルロースを、可塑剤としてDBPを重量比で10:1となるようにして調整し、さらに溶剤を添加して粘度調整したものを準備し、更にミックシート8上にプリント形成し、このようにして準備したセラミックシート8をセラミック芯材10の周囲に周回密着して形成した。
【0053】
このようにして生じさせたクラックを双眼顕微鏡にて観察すると、複数のクラックが全長方向に略平行に生じていた。
【0054】
また、比較例として溝部4aを形成しないNo.8を作製して、これとの耐久性の変化を確認した。
【0055】
但し、この時、全資料(1〜9)の電極パッド4の厚みは30μmに統一した。
【0056】
【表1】
Figure 0003934993
【0057】
その後、電極パッド4上に無電界メッキ法によりNiからなるメッキ層5を形成し、リード部材7をロウ材6によりメッキ層5上に接合し、さらに、これらの上に無電界メッキ法によりNiからなるメッキ層5を形成した。このようにしてセラミックヒータ1を作製した。
【0058】
このセラミックヒータ1のそれぞれに600℃×200時間の連続耐久テストをした後、電極パッド4の温度を常温から400℃間を3分加熱、3分冷却の評価を行い、連続耐久テスト3000回後のリード部材7の引張強度をプッシュプールゲージにて測定し、耐久テスト前のリード部材7における引張強度と比較した。なお、評価基準としては、リード部材7の引張強度が30N以上であるものは◎、20N以上30N未満のものは○、10N以上20N未満のものは△、10N未満のものは×とした。
【0059】
これらの結果を、表1に示した。
【0060】
【表2】
Figure 0003934993
【0061】
表2から判るように、溝部4aを形成しなかったNo.8は、耐久テスト後の引張強度が20N以下と低くなった。これに対し、溝部4aを形成したNo.1〜7は、20N以上の引張強度を示した。特に、全長方向に平行に形成した溝部4aの間隔を0.1〜1.5mmとしたNo.2〜6は、耐久テスト後のリード部材7の引張強度が30〜50Nと高くなることが判った。
【0062】
(実験例2)
セラミックヒータ1に形成する電極パッド4の厚みを10〜80μmと変化させる以外は実験例1の資料No.4と同様の構成にしてリード部材7の耐久テスト後の引張強度を調査した。
【0063】
評価基準としては、リード部材7の引張強度が30N以上であるものは◎、20N以上30N未満のものは○、10N以上20N未満のものは△、10N未満のものは×とした。
【0064】
これらの結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
Figure 0003934993
【0066】
表3から判るように、何れも10N未満のものは無かったが、電極パッド4の厚みが10μmのNo.10は、耐久テスト後のリード部材7の引張強度が26Nと低くなっていた。このNo.10は、電極パッド4の厚みが薄いため、引張強度が弱まっているものと推察した。
【0067】
また、厚みが80μmのNo.16は、引張強度が28Nと低くなっていた。このNo.16は、電極パッド4の厚みが60μを越えるため、Wを主成分とする電極パッド4とセラミック体2の熱膨張差が、引張強度を低下させたものと推察した。
【0068】
これに対し、上記厚みを20〜60μmとしたNo.11〜15は耐久テスト後の引張強度が30N以上と良好な引張強度を示した。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドを形成し、該電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合してなるセラミックヒータにおいて、少なくとも、前記電極パッドのリード部材と対向する領域にクラックを発生させて複数の溝部を形成したために、接合面積が向上して電極パッドにロウ材で接合したリード部材が耐久後に剥離することなく、耐久性良好なセラミックヒータを提供できるものである。
【0070】
また、前記セラミック体を円柱状に形成するとともに、前記リード部材は前記セラミック体の全長方向に略平行に接合され、かつ、前記電極パッドの溝部は前記リード部材に対して略平行に形成したために、リード部材に働く剥離応力に対する接合長さが増加して電極パッドにロウ材で接合したリード部材が耐久後に剥離することなく、耐久性良好なセラミックヒータを提供できるものである。
【0072】
また、前記溝部同士の間隔を0.1〜1.5mmとすることにより、使用中の熱サイクルに対して、リード部材の引張強度低下を抑制できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明のセラミックヒータの斜視図であり、(b)はその展開斜視図であり、(c)は、発熱抵抗体パターンの拡大図である。
【図2】(a)は、本発明のセラミックヒータの電極パッドの拡大図であり、(b)はリード部材に作用する応力を示す模式図である。
【図3】(a)は、従来のセラミックヒータの斜視図であり、(b)はその展開斜視図であり、(c)はそのリード部材ロウ付け部の断面図である。
【符号の説明】
1:セラミックヒータ
2:セラミック体
3:発熱抵抗体
4:電極パッド
5:メッキ層
6:ロウ材
7:リード部材
8:セラミックシート
10:セラミック芯材

Claims (6)

  1. 発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドを形成し、該電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合してなるセラミックヒータにおいて、前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面クラックを発生させて複数の溝部形成したことを特徴とするセラミックヒータ。
  2. 前記セラミック体を円柱状に形成するとともに、前記リード部材は前記セラミック体の全長方向に略平行に接合され、かつ、前記溝部は前記リード部材に対して略平行に形成されていることを特徴とする請求項1記載のセラミックヒータ。
  3. 発熱抵抗体を内蔵して成るセラミック体の表面に、前記発熱抵抗体に接続した電極パッドを形成し、該電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合するセラミックヒータの製造方法において、前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面にクラックを発生させる工程を備えていることを特徴とするセラミックヒータの製造方法。
  4. 発熱抵抗体のパターンが形成されたセラミックシートの表面に前記発熱抵抗体に接続される電極パッド用の生成形体のパターンを形成し、焼成した後、前記電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合するセラミックヒータの製造方法において、前記生成形体の可撓性を調整することにより前記焼成前に前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面にクラックを発生させることを特徴とするセラミックヒータの製造方法。
  5. セラミックシートの表面に発熱抵抗体のパターンを形成し、前記セラミックシートの裏面に前記発熱抵抗体に接続される電極パッド用の生成形体のパターンを形成した後、このセラミックシートを、前記発熱抵抗体のパターンが内側になるように円柱状のセラミック芯材の周囲に巻回し、焼成した後、前記電極パッドにロウ材を介してリード部材を接合するセラミックヒータの製造方法において、前記生成形体の可撓性を調整することにより前記巻回時に前記電極パッドにおける前記ロウ材との接合面にクラックを発生させることを特徴とするセラミックヒータの製造方法。
  6. 前記生成形体に含有される導電性粒子の平均粒径が1〜5μmであることを特徴とする請求項4又は5に記載のセラミックヒータの製造方法。
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