JP3631728B2 - セラミックヒータ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の空燃比検知センサ加熱用ヒータや気化器用ヒータ、半田ごて用ヒータなどに使用するセラミックヒータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、空燃比センサ加熱用ヒータ等の自動車用のヒータとして図3(a)に示すようなセラミックヒータ21が多用されており、例えば、アルミナを主成分とするセラミック体22中に、W、Re、Mo等の高融点金属からなる発熱抵抗体23を内蔵し、電極パッド24を介してリード部材27が通電されている(特開昭63−9860号、63−58479号公報等参照)。
【0003】
上記円柱状のセラミックヒータを製造する場合は、図3(b)に示すようにセラミック芯材20とセラミックシート28を用意し、セラミックシート28の一方面にW、Re、Mo等の高融点金属のペーストを印刷して発熱抵抗体23と電極引出部23aを形成した後、これらを形成した面が内側となるようにセラミックシート28を上記セラミック芯材30の周囲に巻付け、全体を焼成一体化することによりセラミックヒータ11としていた。
【0004】
セラミックシート28上には、発熱抵抗体23に電極引出部23aが接続され、該電極引出部23aの末端にスルーホールが形成され裏面の電極パッド24と該電極引出部23aが接続されている。スルーホールには、必要に応じて導体ペーストが注入される。
【0005】
そして、図4に示す電極パッド部周辺の部分断面図のように、セラミックヒータ21は側面に露出した電極パッド24の表面にはNiからなるメッキ層25が形成され、該メッキ層25の表面にロウ材26を介してリード部材27が接合され、このリード部材27から通電することにより発熱抵抗体23が発熱する仕組みである。
【0006】
また、上記ロウ材26の酸化や硫化を防止するため、ロウ材26の表面にはNiからなるメッキ層25が形成されており、メッキ層25を形成した後の熱処理やリード部材27をロウ付けする際の熱処理は、ロウ材26が酸化しないように還元雰囲気で熱処理していた。
【0007】
しかし、還元雰囲気中で熱処理を施した場合、水蒸気を含まないため熱処理後のセラミック体22の表面に黒ずんだ汚れ等が付着し、この付着物は洗浄しても完全に除去することが難しいため、外観不良や、酸素センサ内部に用いるセラミックヒータの場合には、使用中にこの付着物が剥離し、酸素センサ内部に形成されているPt電極と反応してセンサ特性を劣化させる恐れがあった。
【0008】
この問題に対応するため、水蒸気を含有した還元雰囲気中で熱処理を施すことによって、H2O−H2の化学平衡における乖離酸素分圧によってセラミックヒータ21に付着したカーボン残さを燃焼除去することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水蒸気を含有した還元雰囲気中で熱処理を施した場合、上記電極パッド28の表面に形成するメッキ層25およびリード部材27の表面には、ガラス31が析出してくる。このガラス31は、セラミック体22から沁み出してきたものと考えられる。
【0010】
また、リード部材27は、不純物としてSiを含んでおり、これがロウ付けの熱処理中に酸化して表面に析出してガラスが生成してきたものと考えられる。このようにして電極パッド24上に形成したメッキ層25の表面に析出してくるガラスが多くなると、電極パッド24にリード部材27をロウ付けする際に、リード部材27のロウ付け強度を低下させるという欠点を有する。
【0011】
例えば、図4に示すようにロウ付け部の端部にガラス31があると、リード部材27に引張応力が掛かった際に、そこが起点となってリード部材27が剥離するという問題があった。
【0012】
また、リード部材27の表面に析出してくるガラス31が大きくなると、ロウ付け部の界面に大きなガラス31ができた場合に、リード部材27とロウ材26の界面にメッキ層25を形成できない部分ができ、この部分に部分電池ができてNi等からなるメッキ層25およびリード部材27、ロウ材25中の金属が腐食し、リード部材27の引張強度が低下するという課題があった。
【0013】
特に、自動車用に使用するセラミックヒータについては、高い信頼性が要求されるため、1000本中1本でも上記のような不良が発生することは好ましくない。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックヒータは、セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を介してリード部材をロウ付けしてなるセラミックヒータであって、上記メッキ層の表面に析出するガラスの最大径が100μm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のセラミックヒータは、セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を介してリード部材をロウ付けしてなるセラミックヒータであって、上記メッキ層及び/またはリード部材の表面に析出するガラスの面積が電極パッドの面積に対して10%以下とすることを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明のセラミックヒータの製造方法は、上記電極パッドの表面にメッキ層を形成するとともに、650〜5350Paの水蒸気を含む還元雰囲気中400〜1000℃で熱処理を施した後、ロウ材を介してリード部材をロウ付けすることを特徴とするものである。
【0017】
本発明のセラミックヒータによれば、セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を介してリード部材をロウ付けしてなり、上記メッキ層の表面に析出するガラスの最大径が100μm以下であることから、ロウ付け部にロウ材のメニスカスが形成されリード部材を強固に取着でき、耐久性の高いセラミックヒータを得ることができる。
【0018】
また、本発明のセラミックヒータによれば、セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を介してリード部材をロウ付けしてなり、上記メッキ層及び/またはリード部材の表面に析出するガラスの面積が電極パッドの面積に対して10%以下とすることから、ロウ付け部にロウ材のメニスカスが形成されリード部材を強固に取着でき、耐久性の高いセラミックヒータを得ることができる。
【0019】
さらに、本発明のセラミックヒータの製造方法によれば、上記電極パッドの表面にメッキ層を形成するとともに、650〜5350Paの水蒸気を含む還元雰囲気中400〜1000℃で熱処理を施した後、ロウ材を介してリード部材をロウ付けすることから、メッキ層の熱処理中にガラスが析出するのを防止するとともに、セラミックヒータの表面に付着物が生成することを防止することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセラミックヒータの実施形態を図面に基いて説明する。
【0021】
図1は、本発明のセラミックヒータの一実施形態を示すものであり、図1(a)はセラミックヒータ1の部分切り欠き斜視図であり、(b)は、そのセラミック体2部分の展開図である。
【0022】
本発明のセラミックヒータ1は、図1(a)に示すようにセラミック体2中に発熱抵抗体3を内蔵し、該発熱抵抗体3に通電する電極パッド4を上記セラミック体2の表面に備え、上記電極パッド4の表面にメッキ層5を形成するとともに、ロウ材6を介してリード部材7を取着してなり、同図(b)に示すようにセラミックシート8の表面に、発熱抵抗体3と電極引出部3aが形成され、さらに、その裏面側に形成される電極パッド4との間をスルーホールで接合した構造となっている。こうして準備されたセラミックシート8をセラミック芯材10に発熱抵抗体3が内側になるように密着焼成することによって発熱抵抗体3を内蔵したセラミック体2を得ることができる。
【0023】
上記セラミック体2は、アルミナ質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス等の各種セラミックスからなり、特に、アルミナセラミックスからなることが好ましく、例えば、Al2O3を88〜95重量%、SiO2を2〜7重量%、CaOを0.5〜3重量%、MgOを0.5〜3重量%、ZrO2を1〜3重量%からなるアルミナセラミックスを用いることが好ましい。Al2O3含有量は88重量%未満となると、ガラス質が多くなるため通電時のマイグレーションが大きくなる恐れがある。一方、Al2O3含有量を95重量%を超えると、セラミック体2中に内蔵された発熱抵抗体4の金属層内に拡散するガラス量が減少し、セラミックヒータ1の耐久性が劣化する恐れがある。
【0024】
また、上記セラミック体1は、例えば外径が2〜20mm、長さが40〜200mm程度の円柱状で、自動車の空燃比センサ加熱用のセラミックヒータ1としては、外径が2〜4mm、長さが40〜65mmとすることが好ましい。
【0025】
上記セラミック体2には発熱抵抗体3が内蔵されており、W、Mo、Re等の高融点金属を主成分とするものであり、図1(c)に示すように発熱抵抗体3のパターンに欠陥3bが生じた場合、その欠陥部分の幅tがパターン幅Tの1/2以下とすることが好ましい。これは、上記欠陥の幅tがパターン幅Tの1/2を超えると、この部分で局部発熱し、発熱抵抗体3の抵抗値が大きくなり耐久性が劣化するためである。
【0026】
このような欠陥が発生する原因は、発熱抵抗体3をプリント形成する時に、プリント製版にゴミが付着したためパターンが欠けてしまったり、異物が混入し焼成時に焼失したりすることにより発生するものと思われる。プリントや密着工程で、生のセラミックグリーンシート3を取り扱う工程があるが、この工程の清浄度を向上させるとともに、万一の欠陥の発生に関して、上記寸法以上の欠陥を取り除くための検査工程の整備が重要である。
【0027】
また、自動車用のヒータとして用いる場合には、上記発熱抵抗体3の発熱長さが3〜15mmとなるようにすることが好ましい。この発熱長さが3mmより短くなると、通電時の昇温を早くすることができるが、セラミックヒータ1の耐久性を低下させる。一方、15mmより長くすると昇温速度が遅くなり、昇温速度を早くしようとするとセラミックヒータ1の消費電力が大きくなる。
【0028】
なお、上記発熱長さとは、図1(b)で示す発熱抵抗体3における往復パターンの部分の長さfを示す。この発熱長さfは、用途により種々選択されるものである。
【0029】
さらに、上記発熱抵抗体3の両端部には電極引出部3aが形成されており、図2の部分拡大図のように、発熱抵抗体3の端部に形成された電極引出部3aにはスルーホール9を介して発熱抵抗体3に通電するための電極パッド4が形成されている。
【0030】
上記電極パッド4の表面にはメッキ層5が形成されるとともに、その表面にロウ材6を介してリード部材7がロウ付けされ、上記メッキ層5は、ロウ材6の流れを良くし、ロウ付け強度を向上させる作用をなし、Ni、Cr、もしくはこれらを主成分とする複合材料等からなり、1〜5μmの厚みで形成される。
【0031】
本発明では、図2(a)に示すように上記メッキ層5の表面に析出するガラス11の最大径hが100μm以下であることが重要である。図2(b)は、そのX−X断面図であり、(c)はそのY−Y断面図である。
【0032】
上記メッキ層5の表面には、詳細を後述するように製造工程においてメッキ層5を形成した後、還元雰囲気中で熱処理を施す。この熱処理によってメッキ層5及び/またはリード部材7の表面には、ガラス11が析出してくる。このガラス11はセラミック体2から沁み出してきたものと考えられる。また、リード部材7には不純物としてSiを含んでおり、これがロウ付けの熱処理中に酸化して表面に析出し、ガラス11が生成してきたものと考えられる。
【0033】
そこで、メッキ層5やリード部材7の表面に析出するガラス11の最大径を100μm以下にすることにより、電極パッド4にリード部材7を接合するロウ材6の接合部にガラス11が析出してもリード部材7のロウ付け強度に悪影響を及ぼすことはなく、リード部材7のロウ付け部のロウ材6のメニスカス端部付近に大きさが100μmを超えるガラス11があると、ガラス11がロウ材6を弾いてロウ材6のメニスカスが形成されない部分ができるため、リード部材7に引張強度が掛かった際にガラス11の部分が欠陥として作用し、ロウ付け強度が低下してしまう。
【0034】
また、上記ガラス11の最大径を30μm以下、特に10μm以下とすることがさらに好ましく、リード部材7の引張強度をさらに向上させることができる。
【0035】
また、上記メッキ層5及び/またはリード部材7の表面に析出するガラス11の面積が電極パッド4の面積に対して10%以下とすることが重要である。
【0036】
上記ガラス11の面積が電極バッド4の面積に対して10%以下とすることによって、メッキ層5及び/またはリード部材7に生成するガラス11によってロウ材6にメニスカスが形成され、ロウ付け強度が大きく耐久性の高いセラミックヒータ1を得ることができる。
【0037】
上記面積比が10%を超えると、ガラス11の表面ではロウ材6が濡れないため、実質的にロウ付け面積が小さくなり、ロウ付け部の耐久性が劣化する。
【0038】
なお、上記面積比を5%以下とすることがより好ましく、使用中の熱サイクルによるリード部材7の引張強度の低下を抑制することが可能となる。
【0039】
また、上記ガラスの最大径は、1000倍の電子顕微鏡写真によって例えば1mm2の部分を確認して最大径を測定することができ、また、ガラス11の面積は、メッキ層5の電子顕微鏡写真を撮影し、そのガラス部分を着色して(着色しなくても判ります。)画像解析装置を用いて着色部の比率を求めることにより算出することができる。
【0040】
ここで、上記上記メッキ層5及び/またはリード部材7の表面に析出するガラス11の析出を減少させるためには、セラミック体2の電極引出部3aに接続した電極パッド4にリード部材7を取着する製造工程において熱処理の条件を制御することによって成すことができる。
【0041】
具体的には、上記発熱抵抗体3を内蔵したセラミック体2に電極パッド4を形成した後、その表面にメッキ層5を形成するとともに、650〜5350Paの水蒸気を含む還元雰囲気中、400〜1000℃で熱処理を施す。
【0042】
上記熱処理における水蒸気分圧は、金属表面のガラス11との濡れ性に影響を及ぼすため、熱処理時の水蒸気分圧を650〜5350Paに調整することによって、ロウ付けの熱処理中にセラミックヒータ1の表面に付着物が生成することを防止するとともに、ロウ付け強度が大きく耐久性の高いセラミックヒータ1を得ることができる。
上記水蒸気分圧が650Paより低くなると、セラミック体2の表面に有機物と推察できる付着物が熱処理後に残り、洗浄しても除去することができず外観を損ねるとともに、セラミックヒータ1を酸素センサ加熱用に用いる場合、付着物が使用中の振動や熱サイクルによりセラミックヒータ1の表面から剥離して、酸素センサのPt電極と反応し、センサ特性を劣化させてしまう恐れがある。一方、5350Paを超えると、メッキ層5上へのガラス11の析出量が増加し、セラミックヒータのロウ付け部の耐久性が劣化しやすい。
【0043】
また、上記水蒸気分圧は650〜2340Paとすることがより好ましい。
【0044】
さらに、上記熱処理における温度を400〜1000℃とすることによって、メッキ層5上に生成するガラスの最大径を100μm以下とすることができ、リード部材7を強固にロウ付けすることができる。上記熱処理温度が400℃未満となると、電極パッド4に対するメッキ層5の固着強度が低くなり、組み立て加工時にメッキ層5が剥離する恐れがある。一方、1000℃を超えると、メッキ層5上に生成するガラスの最大径が100μmを超えるようになるので、好ましくない。
【0045】
上記メッキ層5に熱処理を施した後、メッキ層5の表面にロウ材6を形成する。
【0046】
上記ロウ材6は、Au、Cu、Au−Cu、Au−Ni、Ag、Ag−Cu系のロウ材が用いられ、Au−CuロウとしてはAu含有量が25〜95重量%、Au−NiロウとしてはAu含有量が50〜95重量%とすると、ロウ付け温度を1000℃程度に設定でき、ロウ付け後の残留応力を低減することができる。
【0047】
また、セラミックヒータ1を湿度が高い雰囲気中で使用する場合、Au系、Cu系のロウ材6を用いることによってマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0048】
さらに、図2(a)に示すように電極パッド4の端部からロウ材6の端部までの距離kが少なくとも0.2mm以上とすることが好ましい。
【0049】
上記距離kが0.2mm未満であると、電極パッド4の端部がロウ材6の収縮時に引っ張られて剥離しやすくなり、ロウ付け強度が低下するので、好ましくない。
【0050】
上記ロウ材6の表面にロウ付けされたリード部材7は、耐熱性が良好なNi系、Fe−Ni系合金等を使用することが好ましく、発熱抵抗体3からの熱伝達により、使用中にリード部材7の温度が上昇し、劣化するのを有効に防止することができる。
【0051】
また、リード部材7の材質としてNiやFe−Ni合金を使用する場合、その平均結晶粒径を400μm以下とすることが好ましい。上記平均粒径が400μmを超えると、使用時の振動および熱サイクルにより、ロウ付け部近傍のリード部材7が疲労し、クラックが発生しやすい。他の材質についても、例えばリード部材7を形成する材質の結晶粒径がリード部材7の厚みより大きくなると、ロウ材6とリード部材7の境界付近の粒界に応力が集中してクラックが発生しやすい。
【0052】
なお、ロウ付けの際の熱処理は、試料間のバラツキを小さくするためには、ロウ材6の融点より十分余裕をとった高めの温度で熱処理する必要があるが、リード部材7の平均結晶粒径を400μm以下と小さくするためには、ロウ付けの際の温度をできるだけ下げ、処理時間を短くすればよい。
【0053】
本発明のセラミックヒータ1は、上述の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。
【0054】
【実施例】
(実施例1)
先ず、図1に示すようなセラミックヒータ試料を得るため、セラミック体としてAl2O3を主成分とし、SiO2、CaO、MgO、ZrO2を合計10重量%以内になるように調整したセラミックシートに、W−Reからなる発熱抵抗体とWからなる電極引出部をプリントした。また、セラミックシートの裏面には電極パッドをプリントした。発熱抵抗体は、発熱長さ5mmで4往復のパターンとなるように作製した。
【0055】
そして、Wからなる電極引出部の末端には、スルーホールを形成し、ここにペーストを注入することにより電極パッドと電極引出部間の導通をとった。スルーホールの位置は、ロウ付けを実施した場合にロウ付け部の内側に入るように形成した。
【0056】
次いで、発熱抵抗体の表面にセラミックシートと略同一の成分からなるコート層を形成して充分乾燥した後、さらに上記セラミックシートと略同一の組成のセラミックスを分散させた密着液を塗布して、こうして準備したセラミックシートをセラミック芯材の周囲に密着し、1500〜1600℃で焼成した。
【0057】
さらに、上記電極パッドの表面にNiからなる厚み3μmのメッキ層を形成し、表1に示す如く温度で、H2−N2ガスからなる還元雰囲気中で熱処理した後、Ag−Cuからなるロウ材を用いて、850℃でNiからなる直径0.8mmのリード部材を還元雰囲気中でロウ付けし、さらに表面にNiからなる3μmのメッキ層を端部に形成して700〜800℃で熱処理した。
【0058】
このメッキ層5の熱処理およびロウ付けの際の、H2−N2ガスを温度調整した水の中をくぐらせて、H2−N2ガス中の水蒸気分圧を露点の調整により650Pa以下(1℃)、1226.6Pa(12℃)、2053.2Pa(18℃)、2639.8Pa(21℃)、3359.7Pa(26℃)、3999.7Pa(29℃)、4759.6Pa(32℃)、5626.2Pa(35℃)と調整することにより、ガス中の水蒸気圧を調整した。
【0059】
また、比較例としてメッキ層5を形成した後、熱処理を施さずにリード部材7をロウ付けした試料を準備した。
【0060】
そして、得られたセラミックヒータ試料のリード部材のロウ付け強度を500個づつ評価し、その平均値を確認した。測定はセラミックヒータの側面から垂直方向にリード部材を引っ張って、リード部材から断線もしくは剥離する時の強度を測定した。
【0061】
そして、各試料10個の熱処理後のガラスの大きさを1000倍の電子顕微鏡写真によって1mm2確認し、各ガラスの最大径を測定した後、その平均値を算出した。
【0062】
また、各試料の電極パッド周辺を1000倍の電子顕微鏡写真によって確認し、ガラス部分に着色し、画像解析装置を用いて着色部の比率を求めることによって電極パッドの面積(20mm2)に対するガラスの面積の割合を算出した。
【0063】
さらに、各試料10個づつを550℃の恒温層に500時間放置し、その後のロウ付け部付近のメッキ層の変化を観察することによってロウ付け部の高温における耐久性の加速試験を行った。上記メッキ層にロウ材のCuの酸化物が析出した生成物が発生したものは×、メッキ層に一部に変色域がみられたものを△とし、酸化のような変化の見られないものを○とした。
【0064】
また、各試料を400℃の恒温槽に5分間入れて温度が安定した後強制急冷し、さらに恒温槽に入れる耐久試験を2000サイクル実施し、その後のリード部材の引張り強度を各ロット10本測定してその平均値をデータとした。評価は、10本の引張り強度の平均値が50Nを超えるものは◎、20〜50Nのものは○、10〜20Nのものは△、10N未満のものは×とした。このテストは、使用中の熱サイクルの加速試験に相当する。
【0065】
これらの結果を、表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から明らかなように、熱処理の際の水蒸気分圧、温度の条件によって析出するガラスの最大径、量に違いがあり、析出したガラスの最大径が100μmを超える試料(No.9、13)は、リード部材の引張り強度が74N(ニュートン)、67Nと小さく、高温中での耐久試験でもメッキ層に変色が見られた。また、熱サイクル試験でも同様に引張り強度が大きく低下した。
【0068】
これに対し、ガラスの最大径が100μm以下の試料(No.1〜8、10〜12、14)は、リード部材の引張り強度が101N以上であり、高温中での耐久試験でもメッキ層に変色はなく、熱サイクル試験においても同様に引張り強度が低下することはなく高い値を保持できた。
【0069】
特に、ガラスの最大粒径が30μm以下の試料(No.1〜8、11)は、リード部材の引張り強度が130N以上と高くなり、さらにガラスの最大粒径が8μm以下の試料(No.1〜7)は、リード部材の引張り強度が160N以上と非常に高いものであった。
【0070】
これらガラスの最大径が8μm以下の試料(No.1〜7)は、熱処理における水蒸気分圧が650〜5350Pa、熱処理温度が400〜1000℃であることが判った。
【0071】
【発明の効果】
本発明のセラミックヒータによれば、セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を介してリード部材をロウ付けしてなり、上記メッキ層の表面に析出するガラスの最大径が100μm以下であることから、ロウ付け部にロウ材のメニスカスが形成されリード部材を強固に取着でき、耐久性の高いセラミックヒータを得ることができる。
【0072】
また、本発明のセラミックヒータによれば、セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を介してリード部材をロウ付けしてな及び/またはリード部材の表面に析出するガラスの面積が電極パッドの面積に対り、上記メッキ層して10%以下とすることから、ロウ付け部にロウ材のメニスカスが形成されリード部材を強固に取着でき、耐久性の高いセラミックヒータを得ることができる。
【0073】
さらに、本発明のセラミックヒータの製造方法によれば、上記電極パッドの表面にメッキ層を形成するとともに、650〜5350Paの水蒸気を含む還元雰囲気中400〜1000℃で熱処理を施した後、ロウ材を介してリード部材をロウ付けすることから、メッキ層の熱処理中にガラスが析出するのを防止するとともに、セラミックヒータの表面に付着物が生成することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のセラミックヒータを示す斜視図であり、(b)はその展開斜視図、(c)は同図(b)の発熱抵抗体の欠陥を示す拡大平面図である。
【図2】(a)は本発明のセラミックヒータの電極パッド周辺を示す平面図であり、(b)はそのX−X線における断面図、(c)はそのY−Y線における断面図である。
【図3】(a)は従来のセラミックヒータを示す斜視図であり、(b)はその展開斜視図、(c)は同図(a)の電極パッド周辺を示す断面図である。
【符号の説明】
1:セラミックヒータ
2:セラミック体
3:発熱抵抗体
3a:電極引出部
4:電極パッド
5:メッキ層
6:ロウ材
7:リード部材
8:セラミックシート
9:スルーホール
10:セラミック芯材
11:ガラス
Claims (3)
- セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を形成し、ロウ材を介してリード部材を取着してなるセラミックヒータであって、上記メッキ層及び/またはリード部材の表面に析出するガラスの最大径が100μm以下であることを特徴とするセラミックヒータ。
- セラミック体中に発熱抵抗体を内蔵し、該発熱抵抗体に通電する電極パッドを上記セラミック体の表面に備え、上記電極パッドの表面にメッキ層を介してリード部材をロウ付けしてなるセラミックヒータであって、上記メッキ層及び/またはリード部材の表面に析出するガラスの面積が電極パッドの面積に対して10%以下であることを特徴とするセラミックヒータ。
- 上記電極パッドの表面にメッキ層を形成するとともに、650〜5350Paの水蒸気を含む還元雰囲気中400〜1000℃で熱処理を施した後、ロウ材を介してリード部材をロウ付けすることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックヒータの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002123128A JP3631728B2 (ja) | 2002-04-24 | 2002-04-24 | セラミックヒータ及びその製造方法 |
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