JP3929134B2 - 折板屋根の採光用屋根部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属折板を屋根材として構成される折板屋根において、採光部を形成するために用いられる採光用屋根部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工場や倉庫の屋根、学校の体育館や公共の体育施設等の屋根として、金属折板を用いて構成する折板屋根が多く採用されている。
【0003】
上記従来の折板屋根の構造は、例えば図8に示すように、折板屋根(11)の金属折板(13)の谷部(13v)と、その両側縁に傾斜部(13s)を、さらにその先端に山部(13p)を有するほぼ台形状の断面形状に折り曲げ加工された金属折板(13)を、互いに平行に配置し、山部(13p)において連結する構造とされており、さらにそれらの連結形式により、図8(イ)の重ね形式のもの、図8(ロ)の馳折形式のもの、及び図8(ハ)の嵌合形式のもの等に分類されるものである。
【0004】
この種の屋根構造において、自然光を取入れるためには、例えば図8(ロ)で示される前記馳折形式の折板屋根(11)で例示すると、図9のように、金属折板(13)を透光性合成樹脂板(14)に置換えて、採光部(L)を形成するのが一般的である。採光用の部材には、金属折板(13)と概ね同形状に折曲げ加工された透光性合成樹脂板(14)が適用され、折板屋根(11)の所定箇所において金属折板(13)に置換えられた構造が採用される。このような構造の折板屋根の公知例としては、例えば特開平4−189960号公報を挙げることができる。
【0005】
前記採光部(L)における透光性合成樹脂板(14)は、図8(イ)に示す連結形式の場合には、図10(イ)のように、厚さにおいて異なる以外は金属折板(13)と同形状のものが適用され、その周囲が金属折板(13)に重なり合うように葺設施工されるが、図8(ロ)及び(ハ)に示す連結形式の場合には、この連結手段を透光性合成樹脂板(14)に直接採用することはできないので、例えば図10(ロ)及び(ハ)に示すように、金属折板(13)の馳折連結部(13b)及び嵌合連結部(13c)を覆い隠すための連結部カバー(14b)及び(14c)を有するものが適用され、その周囲が金属折板(13)に重なり合うように葺設施工される。
【0006】
このような従来の折板屋根(11)の採光部(L)にあっては、金属折板(13)と透光性合成樹脂板(14)との重ね合わせ部の水密性を高めるために、透光性合成樹脂板(14)として、特にその両側縁(14e)が隣接する金属折板(13)の傾斜部(13s)にまで延長された、重ねしろの大きいものが必要とされる。
【0007】
ところが、上記従来の折板屋根では、前述のとおり、透光性合成樹脂板(14)と金属折板(13)との重ねしろの面積が左右に広くとられるから、透光に無効な部分の割合が大きくなり、透光性合成樹脂板(14)の材料に大きな無駄を生じ、さらに前記の馳折形式や嵌合形式による折板屋根では、連結部を覆う連結部カバー(14b)(14c)の部分にも材料を多く使用することになって、材料コストを高める結果となっている。その上、特に前記連結部カバー(14b)(14c)の両端部では、金属折板(13)との間の水密性を確保するための厳密な防水処理を必要とするから、葺設施工が極めて繁雑である。
【0008】
さらに、透光性合成樹脂板(14)を固定する際には、一般に、透光性合成樹脂板(14)の露出部分にボルト・ナットのような固定金具を直接取り付けて露出状態で固定することは、環境条件による材料破壊の防止、水密性の確保等の点で好ましくないので、従来の折板屋根では、透光性合成樹脂板(14)の固定を確実にするために、図9で示すように、折板屋根(11)の波方向に平行して隣接する金属折板(13)の馳折連結部(13b)に両端を固定した押さえ材(15a)により、透光性合成樹脂板(14)を上から押さえて固定したり、透光性合成樹脂板(14)の両側縁(14e)を押さえ材(15b)を介して固定する手段が採られるが、いずれも外観体裁が悪くなり、また葺設作業も非常に繁雑となって施工コストをさらに引き上げる結果となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、上記のような問題を解決し、両側縁山部に接合部を有する折板屋根材を葺設施工される折板屋根用の採光用屋根部材の構造を、予め少なくとも下半部を透光性合成樹脂板から、また上半部を金属接合板からそれぞれ構成し、これらを接合一体化した構造のものとして、通常の折板屋根と同等の葺設施工に従って容易に、かつ外観品質に優れた採光部を形成することができ、しかも透光性合成樹脂板の折り曲げ加工における工数が大幅に削減できるとともに、該透光性合成樹脂板の材料としての無駄が少なく、施工コスト及び材料コストを著しく低減することができる、折板屋根の採光用屋根部材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明の折板屋根の採光用屋根部材は、両側縁山部に接合部を有する折板屋根材を葺設施工される折板屋根用の採光用屋根部材であって、
谷部の両側縁に立上がった斜行部を有する透光性合成樹脂板と、斜行帯板部の上端に連結部を有する金属接合板とよりなり、前記斜行部の上縁と前記斜行帯板部の下縁とが重ね合わされて、前記透光性合成樹脂板と前記金属接合板とが接合一体化されていることを特徴とする折板屋根の採光用屋根部材を要旨とする。
【0011】
また、この発明の好ましい実施態様は、請求項1に記載の採光用屋根部材であって、透光性合成樹脂板は、その斜行部の上縁から前記金属接合板の連結部に至るまで前記金属接合板の裏面に沿う状態で延長されて、その端部に前記連結部の連結壁と接面する立上り部を有する折板屋根の採光用屋根部材である。
【0012】
さらに、この発明の好ましい別の実施態様は、請求項1または請求項2に記載の採光用屋根部材であって、金属接合板の斜行帯板部の下縁において、裏面側に折曲げ縁部が形成されており、該折曲げ縁部に透光性合成樹脂板の斜行部の上縁が、前記折曲げ縁部に接合部材を介して接合一体化されている折板屋根の採光用屋根部材である。
【0013】
さらにまた、この発明の好ましいまた別の実施態様は、請求項1に記載の採光用屋根部材であって、金属接合板の斜行帯板部の下縁とその裏面側に設けられた壁部とにより嵌挿用溝が形成されており、該嵌挿用溝に透光性合成樹脂板の斜行部の上縁が嵌挿され、前記壁部に接合部材を介して接合一体化されている折板屋根の採光用屋根部材である。
【0014】
さらにまた、この発明の好ましいさらに別の実施態様は、請求項1ないし4のいずれか1に記載の採光用屋根部材であって、長さ方向に複数分割され、互いの連接端部が摺動自在に嵌合された状態に連接された複数体の金属接合板の下縁と、1体の透光性合成樹脂板の斜行部の上縁とが重ね合わされている、折板屋根の採光用屋根部材である。
【0015】
この発明において用いられる透光性合成樹脂板としては、透光性を有し、折り曲げ加工性に優れ、屋外における耐久性の高い合成樹脂からなるものであればどのような合成樹脂板も適用可能である。例えばポリカーボネート板、アクリル板、ポリ塩化ビニル板等であり、またこれら透光性合成樹脂板の表面に紫外線吸収能を有するアクリル系、弗素系等の耐光性ないし耐候性フィルムを積層形成したものが好適に適用できる。そして、これらの透光性合成樹脂板は、通常その厚さが1.0〜5.0mmの範囲のものが好適に用いられ、一般公知の折曲げ加工手段により、葺設施工の対象となる折板屋根の形状に対応させて折曲げ成形されたものが用いられる。
【0016】
また、この発明において適用される折板屋根の金属折板は、高耐候性圧延鋼材、亜鉛鉄板、溶融アルミニウムめっき鋼板、冷間圧延ステンレス鋼板等の鋼板類からなり、厚さ0.5mm以上の板を、V字、U字またはこれに近い、接合部を有する断面形状に折り曲げたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明による折板屋根の採光用屋根部材の実施形態を、図面に従って説明する。なお、以下の説明は、馳折形式の連結形式による構造の折板屋根に適用する場合を主体に行うものとする。
【0018】
図1において、(1)は、複数の金属折板(2)が梁(B)上に平行に配置された、透光部(L)を有する折板屋根であり、この発明の採光用屋根部材(3)が透光部(L)の部分に適用され、それぞれ金属折板(2)の山部(2a)において互いに連結されることにより葺設施工されるものである。
【0019】
図2は、この発明の採光用屋根部材の第1の実施形態を示すものである。採光用屋根部材(3)は、透光性合成樹脂板(4)と金属接合板(5)とから構成される。前記透光性合成樹脂板(4)は、谷部(r)とその両側縁に立上がった斜行部(4s)とを有するほぼ台形状の断面形状に折曲げ加工されたものであり、また金属接合板(5)は、斜行帯板部(5s)の上端に連結部(5b)(5c)を有する左右一対の金属接合板(5)とから構成されるものである。透光性合成樹脂板(4)と金属接合板(5)とは、左右の前記斜行部(4s)の上縁と左右の前記斜行帯板部(5s)の下縁とが、前者を下側にして重ね合わされるとともに、前記斜行帯板部(5s)の裏面側に、例えば溶接固定されたボルトとこれに対応するナットからなる接合部材(f1)を透光性合成樹脂板(4)の接合孔(g1)を通して接合一体化された構造とされる。なお、接合部材(f1)は、ボルト・ナット形式にものに限定されることはない。
【0020】
上記の構造による採光用屋根部材(3)においては、接合部材(f1)は外部に露出されず、外観品質を低下させない。
【0021】
なお、採光用屋根部材(3)は、その有効高さ(h)を、葺設施工される折板屋根(1)の金属折板(2)とほぼ同等の高さとされ、その葺設施工は、金属折板(2)の山部(2a)において、通常の金属屋根材と同様に、採光用屋根部材(3)の連結部(5b)及び(5c)と、これに隣接する連結部(2c)及び(2b)とが互いに馳折形式により連結される。
【0022】
また、葺設施工される折板屋根(1)の金属折板(2)の連結形式が、重ね形式や嵌合形式のように、前記馳折形式と異なる場合でも、図3により概念的に示すように、重ね形式では図3(イ)のように、嵌合形式では図3(ロ)のように、その異なる連結形式に対応した連結部の形状を採用することができるのはいうまでもなく、連結の形式を除いては、前記馳折形式と同様の構造とすればよい。
【0023】
この発明においては、前記採光用屋根部材(3)は、透光性合成樹脂板(4)と金属接合板(5)との接合を、図2に示す第1の実施形態のものとするほか、図4に示すような変形した形態の採光用屋根部材(3´)とすることもできる。以下、この発明の採光用屋根部材の第2の実施形態について述べる。
【0024】
すなわち、図4において、採光用屋根部材(3´)は、谷部(r)とその両側縁に立上がった斜行部(4s)とを有する、ほぼ台形状の断面形状に折曲げ加工され、その斜行部(4s)の上縁から前記金属接合板(5)の連結部(5b)(5c)に至るまで前記金属接合板(5)の裏面に沿う状態で延長されて、その端部に前記連結部(5b)(5c)と接面する立上り部(4a)を有する透光性合成樹脂板(4´)と、斜行帯板部(5s)の上端に連結部(5b)(5c)を有する、前記金属接合板(5)とから構成されるのであり、左右の前記斜行部(4s)の上縁と左右の前記斜行帯板部(5s)の下縁とが、前者を下側にして重ね合わされるとともに、前記斜行帯板部(5s)の裏面側に、例えば溶接固定されたボルトとこれに対応するナットからなる接合部材(f1)を透光性合成樹脂板(4´)の接合孔(g2)を通して接合一体化した構造とされるものである。
【0025】
なおこの場合、採光用屋根部材(3´)の葺設施工は、折板屋根(1)の山部(2a)において、前記金属折板(2)の連結部(2b)(2c)と前記金属接合板(5)の連結部(5c)(5b)との間に、採光用屋根部材(3´)の立上り部(4a)を挟み込む状態にして、通常の金属屋根材と同様に、採光用屋根部材(3´)の連結部(5b)及び(5c)と、これに隣接する連結部(2c)及び(2b)とが互いに馳折形式により連結される。
【0026】
上記の構造による採光用屋根部材(3´)においては、外観品質が第1の実施形態による採光用屋根部材(3)と同様であり、しかも透光性合成樹脂板(4´)と金属接合板(5)とが接合され、かつ山部(2a)において連結固定されるから、葺設施工がより強固に、またより確実になる。
【0027】
このように、この発明の採光用屋根部材は、透光性合成樹脂板と金属接合板とが、前記透光性合成樹脂板の斜行部の上縁と前記金属接合板の斜行帯板部の下縁とが、互いに接合一体化された構造のものであるが、この接合構造においては、図2〜4に示す態様のほか、例えば図5(イ)〜(ハ)に示すように、変形した別態様の構造を採用することもできる。
【0028】
すなわち、第1の変形態様は、図5(イ)に示すように、金属接合板(5)の斜行帯板部(5s)の下縁において、その端部を裏面側にUターン状に折曲げて縁部(5t)を形成し、前記縁部(5t)に接合部材(f2)を締付け固定または溶接固定し、前記各実施形態と同様にして接合一体化するものである。
【0029】
また、第2の変形態様は、図5(ロ)に示すように、金属接合板(5)の斜行帯板部(5s)の下縁において、その裏面側に壁部(5u)を形成し、嵌挿用溝部(5w)を形成し、前記透光性合成樹脂板(4)の斜行部(4s)の上縁を嵌挿して、これを例えば前記壁部(5u)の固定用孔(5g)に合わせて溶接固定した固定ナットとこれに対応するボルトからなる接合部材(f3)を透光性合成樹脂板(4)の接合孔(g1)を通して接合一体化した構造とされる。
【0030】
さらに、第3の変形態様として、図5(ハ)に示すように、この発明の前記第2の実施形態の採光用屋根部材(3´)の透光性合成樹脂板(4´)と金属接合板(5)に対して、前記図5(イ)に示した、接合部材(f2)による接合一体化の構造を、そのまま適用した変形態様とすることができる。
【0031】
なお、上記の各変形態様では、いずれにおいても金属接合板(5)の外面に取付けるものではないから、溶接等の劣化による金属接合板(5)の外観品質の低下を招くことがない。
【0032】
一般に、金属と熱可塑性合成樹脂の熱膨脹係数は異なるから、熱変化によって膨脹伸縮の量に大きな差が生じることは周知の事項である。透光性合成樹脂板を採光用屋根部材として用いた折板屋根においても例外ではなく、例えばボルト・ナット等の接合部材により金属折板と透光性合成樹脂板とが2か所以上で接合される場合は、少なくとも透光性合成樹脂板の接合孔は、該板の伸縮の大きい方向へ長い長孔とされ、両板の伸縮の差による金属屋根材の折れ現象や透光性合成樹脂板のクラック現象等を防止する手段が講じられている。
【0033】
この発明においては、このような熱膨脹伸縮による弊害を防止するために、図2〜5に示した採光用屋根部材の金属接合板について、変形した別態様の構造を採用することができる。
【0034】
すなわち、第4の変形態様は、図6に示すように、1体の透光性合成樹脂板(4)の両側に、長さ方向に複数分割され、互いの連接端部(5v)が摺動自在に嵌合された状態に連接された複数体の金属接合板(5)の下縁と、1体の透光性合成樹脂板(4)の斜行部(4s)の上縁とが重ね合わされた構造とする。この場合、透光性合成樹脂板(4)の接合孔(g1)は、長さ方向へ長い長孔状のものとする。
【0035】
この発明の採光用屋根部材は、合成樹脂板から折曲げ成形して得られた谷部の両側縁に立上がった斜行部を有する透光性合成樹脂板と、金属板から折曲げ成形して得られた斜行帯板部の上端に連結部を有する金属接合板とを、前記斜行部の上縁と前記斜行帯板部の下縁とを重ね合わせて接合一体化するものであるから、採光用屋根部材の製作を、葺設施工に先だって予め工場の生産工程において実施することができる。
【0036】
ここで、折板屋根の透光部における、この発明の採光用屋根部材の葺設施工を、施工方法が馳折形式の場合について説明する。なお、図7(イ)は第1の実施形態による採光用屋根部材(3)を用いた場合、また図7(ロ)は第2の実施形態による採光用屋根部材(3´)を用いた場合、さらに図7(ハ)は第2の実施形態による採光用屋根部材(3´)を複数個用いた場合をそれぞれ示す。
【0037】
まず、図1のように、タイトフレーム(F)が屋根の梁(B)上に固定されたのち、金属折板(2)が透光部(L)を残して、通常の手段により葺設施工される。
【0038】
ついで、図7(イ)に示すように、採光用屋根部材(3)を、金属折板(2)に隣接して平行状態に配置し、金属折板(2)の連結部(2c)(2b)と採光用屋根部材(3)上端の連結部(5b)(5c)とを、タイトフレーム(F)に固定された吊り子(H)の上部を挟み込むように重ね合わせたのち、前記連結部(2b)及び連結部(5b)と吊り子(H)の先端を、前記連結部(2c)及び(5c)に沿って左横方向へ折曲げし、さらに前記連結部(2c)及び(5c)の内側方向へ折曲げして、前記連結部(5c)及び連結部(2c)の先端を包み込むように仮締め(j)し、再び連結部(5c)及び連結部(2c)とともに下方向へ折曲げをして馳折りにより一体的に固着し、金属折板(2)と採光用屋根部材(3)とを横方向に連結する。
【0039】
さらに、上記横方向の連結と同時に、金属折板(2)の端部と採光用屋根部材(3)の両端部とを、馳折りにより縦方向に連結する。この場合、屋根勾配が小さい場合は、両端の連結部分において、金属折板(2)の連結部(2b)(2c)が採光用屋根部材(3)の連結部(5b)(5c)の内側となるように馳折りして固着する。また、屋根勾配が大きい場合は、下手側は前記のとおりとし、上手側は金属折板(2)の連結部(2b)(2c)が採光用屋根部材(3)の連結部(5b)(5c)の外側となるように馳折りして固着する。
【0040】
つぎに、図7(ロ)においては、第2の実施形態の透光性合成樹脂板(4´)の立上り端部(4a)が、図7(イ)における前記採光用屋根部材(3)上端の連結部(5c)及び(5b)と前記吊り子(H)の上部との間に挟み込まれ重ね合わせられた以外は、前記第1の実施形態の採光用屋根部材(3)による場合と全く同様にして葺設施工される。
【0041】
さらに、図7(ハ)においては、左右に隣接する採光用屋根部材(3´)を、図7(ロ)で示した前記第2の実施形態の採光用屋根部材(3´)と金属折板(2)とを連結する場合の、金属折板(2)を採光用屋根部材(3´)に置き替えて、左右に採光用屋根部材(3´)を隣接させ、吊り子(H)先端の両側に互いに隣接する透光性合成樹脂板(4´)の立上り端部(4a)を配した以外は、前記第2の実施形態の採光用屋根部材(3´)による場合と全く同様にして葺設施工される。
【0042】
なお、この発明の採光用屋根部材の上記葺設施工は、折板屋根の構造が、上記馳折形式のほか、重ね形式、嵌合形式のものについても、同様に実施することができる。
【0043】
なおまた、この発明の採光用屋根部材の上記葺設施工においては、従来の透光屋根材と同様に、金属接合板と透光性合成樹脂板との接合部分、金属折板と採光用屋根部材との連結部分等の水密性を要する部分には、従来の葺設施工に用いられると同様の各種シーリング部材を適用することができる。
【0044】
以下、この発明の実施例を、図面とともに説明する。なお、実施例はいずれも屋根構造が馳折形式の折板屋根の葺設施工に適用された場合を示す。
【0045】
実施例1
図2に示す採光用屋根部材(3)の透光性合成樹脂板(4)として、表面に厚さ0.05mmのアクリル系耐光フィルムを設けた厚さ1.5mmのポリカーボネートシートを用意し、前記アクリル系耐光フィルム面を上側にして、図2に示すように、谷部(r)の幅200mm、斜行部(4s)の長さ187mm、立上り角度(θ)を123度に折曲げ成形した、長さ4mの折板状の透光性合成樹脂板(4)を用意した。
【0046】
一方、金属接合板(5)として、厚さ0.7mmの鋼板を用い、先端に各連結部(5b)と(5c)を有し、前記透光性合成樹脂板(4)に対応するように折曲げ加工され斜行帯板部(5s)を有する、長さが前記透光性合成樹脂板(4)とほぼ等しくされた、左右の金属接合板(5)をそれぞれ用意した。
【0047】
ついで、図2に示すとおりに、上記の金属接合板(5)の左右斜行部(4s)裏面に、その長さ方向所定位置において、接合部材(f1)の複数本のボルトを溶接固定するとともに、透光性合成樹脂板(4)の斜行部(4s)に、前記ボルトに対応する長孔状の接合孔(g1)を設けたのち、前記接合孔(g1)に前記ボルトを通して、接合部材(f1)のナットを締めて、両者を接合一体化して採光用屋根部材(3)を得た。
【0048】
上記で得られた採光用屋根部材(3)は、施工現場に搬入し、金属折板(2)と同様にして、梁(B)上のタイトフレーム(F)に固定された左右の吊り子(H)の上部を、連結部(5b)と(2c)の間、連結部(5c)(2b)の間に挟み込むように重ね合わせたのち、前記連結部とともに馳折りして、図7(イ)に示す態様で、隣接する左右の金属折板(2)(2)とを横方向に連結し、さらに金属折板(2)の端部と採光用屋根部材(3)の両端部とを、馳折りにより縦方向に連結して、葺設施工を完了した。
【0049】
上記の採光用屋根部材(3)の葺設施工は、金属折板(2)の葺設施工と全く同様に実施することができた。また、折板屋根(1)の外観は、透光部(L)においても、金属折板(2)部分と同様に外観品質の高いものであった。
【0050】
実施例2
図4に示す採光用屋根部材(3´)の透光性合成樹脂板(4´)として、斜行部(4s)の上縁が金属接合板(5)の裏面に沿うように延長されて立上り部(4a)が形成された形状に折曲げ成形した以外は、実施例1と同様の透光性合成樹脂板(4´)を用意した。
【0051】
一方、金属接合板(5)として、実施例1において用意したものとほぼ同様の金属接合板(5)を用意した。
【0052】
ついで、図4に示すとおりに、前記実施例1と同様にして、透光性合成樹脂板(4´)と金属接合板(5)とを接合一体化して採光用屋根部材(3´)を得た。
【0053】
上記で得られた採光用屋根部材(3´)は、施工現場に搬入し、左右の吊り子(H)の上部を、透光性合成樹脂板(4´)の立上り部(4a)と連結部(2b)の間、立上り部(4a)と連結部(2c)との間に挟み込むように重ね合わせた以外は実施例1と同様にして、周囲に隣接する金属折板(2)と、横方向および縦方向に連結して、葺設施工を完了した。
【0054】
上記の採光用屋根部材(3)の葺設施工は、実施例1と全く同様に実施することができた。また、折板屋根(1)の外観は、透光部(L)においても、金属折板(2)部分と同様に外観品質の高いものであった。さらに、実施例1と比較すると、透光性合成樹脂板(4)と金属接合板(5)のみの接合よりも、立上り部(4a)を有するこの実施例の場合の接合が、より強固であった。
【0055】
実施例3
図2に示す採光用屋根部材(3)の透光性合成樹脂板(4)として、実施例1と同様の透光性合成樹脂板(4)を用意した。
【0056】
一方、金属接合板(5)として、長さが2.3mである以外は、実施例1と同様の形状からなる、左右の金属接合板(5)を各2個用意した。
【0057】
ついで、図6に示すように、金属接合板(5)を、連結端部(5v)において約30cmの重なり長さで嵌合したのち、実施例1と同様にして、透光性合成樹脂板(4)と金属接合板(5)を接合一体化して採光用屋根部材(3)を得た。
【0058】
上記で得られた採光用屋根部材(3)を、実施例1と同様にして、施工現場に搬入し、金属折板(2)とともに葺設施工を行った。
【0059】
上記の採光用屋根部材(3)の葺設施工は、実施例1と全く同様に実施することができた。また、折板屋根(1)の外観は、透光部(L)においても、金属折板(2)部分と同様に外観品質の高いものであった。さらに、外気温度の変化で生じた採光用屋根部材(3)の膨脹伸縮によっても、採光用屋根部材(3)の亀裂や金属接合板(5)の折れ等は発生しなかった。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、この発明の採光用屋根部材は、両側縁山部に馳折接合部を有する折板屋根材を葺設施工される馳折屋根用の採光用屋根部材であって、
谷部の両側縁に立上がった斜行部を有する透光性合成樹脂板と、斜行帯板部の上端に連結部を有する金属接合板とよりなり、前記斜行部の上縁と前記斜行帯板部の下縁とが重ね合わされて、前記透光性合成樹脂板と前記金属接合板とが接合一体化されているものであるから、通常の折板屋根の葺設施工と同時の工程で、同様の取付け手段により、採光部位の葺設施工を極めて容易に、かつ確実に行うことができるという効果がある。
【0061】
また、この発明では、透光性合成樹脂板の斜行部の上縁を、金属接合板の裏面に沿う状態で延長し、その端部に立上り部を形成し、この立上り部とともに屋根部材を連結するものであるから、透光部における葺設施工をより強固に、より確実にできるという効果がある。
【0062】
さらに、この発明においては、葺設施工をされた採光用屋根部材は、透光性合成樹脂板と金属接合板との重ね合わせ部分に接合部材が露出せず、さらに透光性合成樹脂板を固定する押さえ部材等を要しないから、外観体裁が良好であるという外観品質上の利点がある。
【0063】
さらにまた、この発明においては、透光性合成樹脂板として、従来のように馳折接合部に対応する部分を特殊な断面形状に成形する必要がなく、透光性合成樹脂板の折板形状を単純化できるとともに、金属接合板との重ね合わせ部分の面積を比較的小さくすることができるから、一方で水密性を従来のものと遜色なく発揮差せつつ、成形加工コストや材料コストを大幅に低減することができるという大きな利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の採光用屋根部材の折板屋根における葺設施工の実施状態を示す斜視図である。
【図2】 この発明の採光用屋根部材の実施形態を示し、図1のA−A線断面図である。
【図3】 図2に示す採光用屋根部材の実施態様を示す断面図であり、図(イ)(ロ)は各別の実施態様を示す。
【図4】 採光用屋根部材の他の実施形態を示す概念図である。
【図5】 採光用屋根部材の透光性合成樹脂板と金属折板の接合の実施態様を示す部分断面図であり、図5(イ)(ロ)は図2に示す採光用屋根部材に関する図面、図5(ハ)は図4に示す採光用屋根部材に関する図面である。
【図6】 採光用屋根部材の金属折板の実施態様を示す部分斜視図である。
【図7】 採光用屋根部材の葺設施工の状態を示す部分断面図であり、図7(イ)は図2に示す実施形態の採光用屋根部材に関する図面、図7(ロ)(ハ)は図4に示す実施形態の採光用屋根部材に関する図面である。
【図8】 従来の折板屋根の連結構造を示す概念図であり、図8(イ)(ロ)(ハ)は、それぞれ連結形式を説明するための図面である。
【図9】 従来の採光用屋根部材の折板屋根における葺設施工の実施状態を示す斜視図である。
【図10】 従来の採光用屋根部材の葺設施工を説明するための概念図であり、図10(イ)(ロ)(ハ)は、図8(イ)(ロ)(ハ)に対応する。
【符号の説明】
1…折板屋根
2…金属折板
2a…山部
2b、2c…連結部
3、3´…採光用屋根部材
4、4´…透光性合成樹脂板
4a…立上り部
4s…斜行部
5…金属接合板
5b、5c…連結部
5s…斜行帯板部
5t…折曲げ縁部
5u…壁部
5v…連接端部
5w…嵌挿用溝
f1、f2、f3…接合部材
g1、g2…接合孔
r…谷部
B…梁
F…タイトフレーム
H…吊り子
L…透光部

Claims (3)

  1. 両側縁山部に接合部を有する折板屋根材を葺設施工される折板屋根用の採光用屋根部材であって、
    谷部の両側縁に立上がった斜行部を有する透光性合成樹脂板と、斜行帯板部の上端に連結部を有する金属接合板とよりなり、前記斜行部の上縁と前記斜行帯板部の下縁とが重ね合わされて、前記透光性合成樹脂板と前記金属接合板とが接合一体化されると共に、
    前記透光性合成樹脂板は、その斜行部の上縁から前記金属接合板の連結部に至るまで前記金属接合板の裏面に沿う状態で延長されて、その端部に前記連結部の連結壁と接面する立上り部を有するものとなされていることを特徴とする折板屋根の採光用屋根部材。
  2. 両側縁山部に接合部を有する折板屋根材を葺設施工される折板屋根用の採光用屋根部材であって、
    谷部の両側縁に立上がった斜行部を有する透光性合成樹脂板と、斜行帯板部の上端に連結部を有する金属接合板とよりなり、
    前記金属接合板の斜行帯板部の下縁において、裏面側に折曲げ縁部が形成されており、該折曲げ縁部に透光性合成樹脂板の斜行部の上縁が、前記折曲げ縁部に接合部材を介して接合一体化されていることを特徴とする折板屋根の採光用屋根部材。
  3. 両側縁山部に接合部を有する折板屋根材を葺設施工される折板屋根用の採光用屋根部材であって、
    谷部の両側縁に立上がった斜行部を有する透光性合成樹脂板と、斜行帯板部の上端に連結部を有する金属接合板とよりなり、
    前記金属接合板の斜行帯板部の下縁とその裏面側に設けられた壁部とにより嵌挿用溝部が形成されており、該嵌挿用溝部に透光性合成樹脂板の斜行部の上縁が嵌挿され、前記壁部に接合部材を介して接合一体化されていることを特徴とする折板屋根の採光用屋根部材。
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