JP3927088B2 - ふっ素ゴム成形体及びその製造方法 - Google Patents

ふっ素ゴム成形体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低放出ガス及び低溶出金属の両特性を兼備し、特に半導体製造装置等のクリーン環境用に好適なふっ素ゴム成形体に関する。また、本発明は前記ふっ素ゴム成形体を得るための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クリーン環境で使用される、ゴムOリング等のゴム製のシール材料には、外部を汚染しないための低放出ガス、低溶出金属等の特性が求められる。ここでいうクリーン環境とは、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器、医療部品等である。特に、半導体製造装置用ゴム材料には、低放出ガス性や低溶出金属性の他に、耐薬品性、耐プラズマ性が求められる。そのため、耐薬品性に優れたふっ素系のゴム成形体が多く使用されている。
【0003】
本出願人も先に、クリーン環境用として、低金属含有量のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体からなる未架橋の予備成形体を電離性放射線照射により架橋してなるふっ素ゴム成形体を出願している(特願2001−293888号)。しかし、寸法精度の良い予備成形体を得るには、押出し成形の場合には低速での押出しが要求され、金型成形の場合でも金型から取り出す際に冷却が必要となり、手間と時間を要している。更には、予備成形体の組成や電離性放射線の照射条件によっては、得られる架橋物の寸法にバラツキが出ることがあり、精度良く成形体にすることが出来ないことがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決し、特に半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器用、食品貯蔵器用、医療部品等のクリーン環境に好適で、効率的な生産、寸法精度にも優れたふっ素ゴム成形体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の凝固剤で凝固され、かつ、金属含有量を低く抑えたテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体に過酸化物による架橋を施すことが効果的であることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、酢酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウムにより凝固されたテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を過酸化物で架橋してなり、かつ金属成分の含有量が、金属元素に基づく量で5000ppm以下であることを特徴とするふっ素ゴム成形体である。好ましくは、これらの過酸化物架橋された成形体に電離性放射線照射、更には超純水による洗浄及び加熱処理を施してなるふっ素ゴム成形体である。
【0007】
これらのふっ素ゴム成形体は、100℃の温度に30分間保持された際の放出ガス量が3ppm以下という優れた低ガス放出性を有する。
【0008】
また、本発明は、酢酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウムにより凝固され、かつ、金属成分の含有量が、金属元素に基づく量で5000ppm以下に調整されたテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体と、過酸化物架橋剤、または、過酸化物架橋剤及び架橋助剤とを含む混合物を加熱成形して架橋体とする、好ましくはこの架橋体に電離性放射線を照射する、更に好ましくは超純水による洗浄の後、150℃以上の温度で加熱処理を施すことを特徴とするふっ素ゴム成形体の製造方法である。
【0009】
更に、本発明は、上記のふっ素ゴム成形体からなることを特徴とする、半導体製造装置用、半導体搬送装置用、食品製造装置用、食品移送器用、食品貯蔵器用または医療部品用の各ゴム材料である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
成形原料となるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、後述される処理により、金属成分の含有量が、金属元素に基づく量で5000ppm以下に抑えられ、かつ過酸化物架橋が容易になっている。
【0012】
本発明においてテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体とは、テトラフルオロエチレンとプロピレンを主成分とする共重合体である。例として旭硝子(株)製の「アフラス」等が挙げられるが、これに限定されない。また、テトラフルオロエチレンとプロピレンの他、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の第三成分を共重合したポリマーであってもよく、あるいはヨウ素、臭素等の過酸化物架橋サイトを有していても良い。
【0013】
テトラフルオロエチレンとプロピレンのモル比の合計は、全モノマーモル比合計の60%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上である。また、テトラフルオロエチレン:プロピレンのモル比は、好ましくは40:60〜65:35、より好ましくは50:50〜60:40である。
【0014】
上記のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、例えばテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体のラテックスから製造することが出来る。ここで、ラテックスとはポリマーが乳化して水に分散した状態の懸濁液である。テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体のラテックスとしては、市販されているものを使用することができる。また、当該共重合体をモノマー原料から乳化重合で合成する際の、中間生成物のラテックスを使用しても良い。例えば、特公昭61−8086号に紹介されている、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体の中間生成物のラテックスをそのまま使用することもできる。また、固形のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を水に分散させてラテックスとしたものを用いても良い。上記ラテックスに、他ポリマーのラテックス、例えばふっ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン共重合体のラテックス、ふっ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン−テトラフロロエチレン共重合体のラテックス、NBRラテックス、SBRラテックス等をブレンドしても良い。このブレンドラテックスから、共凝固析出したゴムは、各ゴム相が微細かつ均一に分散する利点を有する。
【0015】
低不純物化のために、上記のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体のラテックスを、先ず、酢酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウムにより凝固させる。これらの凝固剤で凝固させることにより、不純物、特に金属成分を殆ど含有しないテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体が得られる。
【0016】
凝固剤溶液の濃度と使用量は、ラテックスから共重合体を凝固分離できる必要最小量で十分であるが、ラテックスの濃度、凝固剤の種類等に応じて適宜変更可能である。溶液に用いる溶媒にも特に制限はなく、アルコール、水−エタノール混合溶媒、水−アセトン混合溶媒等を使用することが出来る。凝固剤として酢酸やメチルエチルケトン等の液体を用いる場合には、別途に溶媒を使用する必要もない。しかしながら無機非金属塩を使用する場合には、水溶液とするのが好ましい。濃度にも特に制限はなく、酢酸やメチルエチルケトン等を100%の濃度で使用しても良い。但し、無機非金属塩溶媒の濃度は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%程度とする。ラテックス100質量部に対する凝固剤(溶液)の使用量は、好ましくは200〜1000質量部、より好ましくは250〜500質量部程度とする。尚、ラテックスと凝固剤(溶液)の添加順序は任意に選定できる。例えば、ラテックスに凝固剤水溶液を添加してもよく、ラテックスと凝固剤溶液を同時に混合してもよい。通常は、凝固剤溶液にラテックスを添加する方法が好ましくは採用される。
【0017】
混合方法にも、特に制限はない。例えば、プロペラミキサー、タービンミキサー、バドルミキサー、往復回転式ミキサー、パイプラインミキサー、渦巻きポンプ、アンカーミキサー、ゲートミキサー、リボンミキサー、ホモミキサー、超音波ミキサー、高圧式ホモジナイザー等のミキサーによって混合することができる。凝固は通常室温で行われるが、凝固時の温度は限定されない。
【0018】
凝固分離した固形分は、その後水洗を行う。水洗方法の例としては、ミキサーに凝固分離した固形分と水とを投入し水洗するバッチ式の水洗、フィルター上で流水しながらの水洗が挙げられるが、これらに限定されない。洗浄水の温度は、好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜50℃である。また、洗浄水の電気伝導率は、好ましくは0.055〜200μS/cm、より好ましくは0.055〜20μS/cm程度とする。特に0.055〜2μS/cmが好ましい。そして、充分洗浄した固形分を、しかる後に例えば100〜150℃に保たれた熱風乾燥機にて乾燥処理することにより、低不純物のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体が得られる。尚、乾燥方式はこれに限定されない。
【0019】
こうして得られるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、不純物、特に金属成分の残存量が極めて少ない。金属元素に基づく量で、その含有量は5000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは200ppm以下である。より好ましい態様においては、鉄分、アルカリ金属分の含有量が低く、何れも元素重量で換算して500ppm以下、特に100ppm以下となる。さらに好ましい態様においては、燐または燐化合物、カルシウムまたはカルシウム化合物、アルミニウムまたはアルミニウム化合物の何れの含有量も元素重量で換算して500ppm以下となる。
【0020】
上記のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、過酸化物によって精度良く効率的に架橋し得るが、凝固後に特定条件の熱処理に付すことにより、更に過酸化物による架橋が促進されるようになる。これは、熱処理によって、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体に部分的に脱ふっ酸反応等が起こり、ゲル化と同時に二重結合が生成し、これが架橋サイトとして働くことによるものと推察される。また、この熱処理により、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体中の低分子量成分も同時に除去され、低放出ガス化も期待される。
【0022】
本発明のふっ素ゴム成形体を得るには、上記のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を過酸化物による架橋を行う。当業者であれば常識の範囲内であるが、過酸化物架橋では電離性放射線架橋のような予備成形が不要であり、また、金型成形後に寸法精度良く取り出すための冷却工程を要さず、時間的ロスが少ない。また、配合や成形加工条件が一定であれば収縮率も一定し、安定した寸法精度で生産が可能である。更に、成形体の精度や機械的強度も架橋剤、架橋助剤等の配合量により制御可能であるという利点を有する。特に、上記した特定量のゲル成分を含むテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、過酸化物架橋が容易であり、その架橋物は高強度等の優れた物性を示す。
【0023】
過酸化物架橋剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
また、架橋助剤等を併用しても良い。架橋助剤としては、例えば、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム、ラウリルメタアクリレート、エチレングリコールアクリルレート、トリエチレングリコールジメタアクリルレート、テトラエチレングリコールジメタクリルレート、ポリエチレングリコールジメタクリルレート、トリメチロールプロペントリメタアクリルレート、メチロールメタアクリルレート、ジアリールフマレート、ジアリールフタレート、テトラアリールオキシエタン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、無水マレイン酸、イタコン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1,2−ポリブタジエン等が挙げられ、特にトリアリルイソシアヌレートが望ましい。これらをゴム重量100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは1〜10質量部配合することにより、高い強度のふっ素ゴム成形体が得られる。
【0027】
発明のふっ素ゴム成形体には、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の有機充填剤、あるいは綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル等の補強用繊維を配合しても良い。複数の充填剤を併用することも可能である。これら配合物を含有させることにより、本発明のふっ素ゴム成形体の強度、硬度を高めることが出来る。
【0028】
上記の過酸化物架橋剤を用いて架橋形成を行うには、通常のふっ素ゴムの架橋成形法に準じることができる。即ち、上記のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体、過酸化物架橋剤、架橋助剤及び必要に応じて配合される各種の充填剤を混合してなる成形材料を所定の成形型に入れ、熱プレスすればよい。成形条件は、成形材料の組成や用途に応じて適宜設定される。また、ふっ素ゴムの架橋では一般に、プレス成形等による一次架橋の他に、オーブン等による二次架橋が行われるが、本発明も同様に行うことができる。二次架橋は通常、温度150〜280℃の温度で、1〜50時間程度行われ、本発明における上記熱処理条件と近い。それ故、ふっ素ゴム成形体に対し、十分に二次架橋を行うことで過酸化物の残渣が放出ガスとなることが抑制される。
【0029】
また、上記のふっ素ゴム成形体に電離放射線による架橋を付加することにより架橋度が増し、低ガス放出性及び低溶出金属性の向上に加えて、耐薬品性も良好となる。この電離放射線架橋は、架橋剤や受酸剤を必要としないことから、架橋剤や受酸剤由来の金属塩や金属酸化物等の汚染源を含有せず、更には架橋に際して着色することもないため、追加の架橋方法として好適である。
【0030】
電離放射線の種類としては、直接または間接に空気を電離する能力を持つ電磁波または粒子線であれば何れも本発明に適用可能であり、例えばα線、β線、γ線、重陽子線、陽子線、中性子線、X線、電子線が挙げられるが、これらに限定されない。これら放射線を組み合わせて使用しても良い。本発明においては、特にγ線が好適に使用される。γ線は、透過力が高いためふっ素ゴム成形体が均一に架橋される。また、γ線を照射する場合は、真空または不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。酸素雰囲気中では、架橋構造が分解する場合があり、好ましくない。
【0031】
電離放射線をふっ素ゴム成形体に照射した場合、架橋構造の更なる架橋と分解とが同時に起こる。照射量が多すぎる場合は、分解が優勢となり物性が低下するおそれがある。照射量が少なすぎる場合は、更なる架橋の効果が得られない。そのため、本発明においては、電離放射線の照射量はある適当な範囲であることが好ましく、照射総量は、好ましくは10〜500kGy、より好ましくは30〜350kGy、さらに好ましくは60〜300kGyである。電離放射線の線量を上記範囲とすることで、物性の良好なふっ素ゴム成形体が得られる。
【0032】
また、上記のふっ素ゴム成形体を純水により洗浄する。または、150℃以上の温度にて加熱する。もしくは、洗浄と加熱とを併用することにより、更なる放出ガス低減が見込める。尚、加熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0033】
純水洗浄自体は公知である。使用する純水は、微粒子、金属イオン、生菌、有機物、溶存酸素等を高度に除去した純水であり、電気伝導率は、好ましくは0.055〜200μS/cm、より好ましくは0.055〜20μS/cm程度とする。特に0.055〜2μS/cmが好ましい。また、洗浄方法も特に限定されず、例としては純水にふっ素ゴム成形体を浸漬する方法、ふっ素ゴム成形体に純水を噴霧する方法、ふっ素ゴム成形体を純水の蒸気に暴露する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。しかし、本発明において、水温及び浸漬時間は50℃以上の純水中に10秒以上浸漬する手法を採ることが好ましい。より好ましくは80℃以上で30秒間〜24時間、特に好ましくは90℃以上で1分間〜2時間とする。より高温・長時間の浸漬によって、ふっ素ゴム成形体からの放出ガスを更に減じることが出来る。
【0034】
上記のふっ素ゴム成形体は、十分に低いガス放出性と低溶出金属性とを有する。具体的には、100℃の温度に30分間保持された際の放出ガス量が3ppm以下と、放出ガスが低減されている。
【0035】
本発明のふっ素ゴム成形体は、放出ガス量及び金属成分量が低減されていることに加え、耐熱性、耐薬品性の他、耐プラズマ性にも優れる。そのため、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器、医療部品等、クリーン環境用に好適である。例えば半導体製造分野では、ウェット洗浄装置、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマCVD装置、イオン注入装置、スパッタリング装置等の半導体製造装置、及びこれらの装置の付属機器であるウエハ搬送機器等に使用できる。医療分野ではチューブやゴム栓、食品分野では熱交換器用ガスケット等に使用できる。本発明はまた、上記ふっ素ゴム成形体からなる半導体製造装置または半導体搬送装置用ゴム材料;食品製造装置、食品移送器または食品貯蔵器用ゴム材料;医療部品用ゴム材料をも包含する。
【0036】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
内容積100mLのステンレス製オートクレーブに、40gのイオン交換水、5gの第三級ブタノール、0.5gのC8F17COONH4、1gのNa2HPO4・12H2O、0.1gのNaOHを仕込み、少量の水に溶解した過硫酸アンモニウム0.5gを加えた。液体窒素で冷却した後、予め調製した0.0075gのFeSO4・7H2O、0.009gのEDTA(エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩・2H2O、以下同じ)、および0.04gのCH2(OH)SO2Naを含む水溶液5gを加え、オートクレーブ内を脱気した。かくして得られた触媒含有水性媒体は、pH9.1であった。
【0038】
C2F4/C3H6のモル比を85/15に調整したテトラフロロエチレンとプロピレンとの混合ガス8.2gを、上記触媒含有水性媒体を貯留したオートクレーブ内に仕込み、25℃に調整した恒温槽内でオートクレーブ振蘯することにより共重合反応を実施した。その結果、共重合反応速度120g/L・hrでC2F4/C3H6含有モル比55/45、分子量13.3万のテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体ラテックスが得られた。
【0039】
このラテックスに対し5倍量の酢酸アンモニウム水溶液(濃度10質量%)を凝固槽に投入し、攪拌下に上記ラテックスを滴下した。この操作により、ラテックスは凝固分離し、凝固分離した固形分を水洗、乾燥した。かくして得られた生ゴムは、乳化剤やその他の重合副資材をほとんど含まなかった。
【0040】
次に、この生ゴムをギアオーブンにて300℃、8時間の熱処理を行った。また、以下の架橋成形を試行した。
【0041】
得られたテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体(表1:TFE/P)100質量部、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン(表1:架橋剤「パーブチルP」;日本油脂(株)製)1質量部、トリアリルイソシヌレート(表1:架橋助剤「TAIC」;日本化成(株)製)2質量部を二軸ロールによって練り込んだ。これを150℃の熱プレスで100mm×100mm×2mmのシート状に成形した(一次架橋)。このシートを更に、ギアオーブンに入れ、200℃、4時間二次架橋した。
【0042】
得られたゴムシートを90〜95℃の純水(比抵抗値約18MΩ・cm)500mL中に10分間浸漬した。この間、上記精製度の純水を100mL/分で流水し続けた。浸漬後、ゴムシートを取り出して窒素(純度99.9998%)置換したオーブン中で200℃、12時間保持した。この間、上記純度の窒素を5L/分流し続けた。こうして得られたサンプルについて以下の評価を行った。
【0043】
(評価項目と方法)
含有金属元素の定性、定量分析:架橋成形体1gを白金坩堝に量り取り、バーナーで加熱分解し、残渣に30質量%塩酸10mLを加え、加熱溶解し、水で50mLに定容した。かくして得られた溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により含有金属の定性、定量分析を行った。
○放出ガスの定性、定量分析:パージ&トラップ−ガスクロマトグラフ質量分析法にて、加熱条件は100℃、30分間とし、パージガスとしてはHeを使用した。定量は標準物質としてn−デカンを使用した。
○硬さ:JIS K 6253 に準拠した。
○引張強さ、断時伸び、100%伸び時の引張応力:JIS K 6251 に準拠した。ダンベルは3号とした。
○圧縮永久歪み:JIS K 6262 に準拠した。条件は200℃、70時間とした。
結果を表1に示す。
【0044】
(実施例2)
実施例1に記したゴムシートに、更に120kGyのγ線照射を行った。その他は実施例1と同様の洗浄、熱処理を行い、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例3)
実施例1の架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)に代えて、トリメチロールプロパントリメタクリレート(表1:架橋助剤「TMTP」;三菱レイヨン(株)製)を用いた以外は実施例1と同様な操作でゴムシートを得た。そして、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(比較例1)
市販品のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体(旭硝子(株)製「アフラス100H」)に、実施例1と同一配合にて架橋剤及び架橋助剤を添加して同一架橋方法にてゴムシートを得て同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003927088
【0048】
表1に示すように、本発明に従う各実施例のゴムシートは、比較例1のゴムシートに比べて金属含有量が大幅に減少している。また、放出ガス量についても、実施例1及び実施例2のゴムシートでは大幅に低減している。これに対し、比較例1のゴムシートは、特にナトリウム、カルシウム、鉄が多く含まれている。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金属含有量及び放出ガス量が少なく、特に半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器用、食品貯蔵器用、医療部品等のクリーン環境に好適で、寸法精度にも優れたふっ素ゴム成形体が容易に提供される。

Claims (11)

  1. 酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウムにより凝固されたテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を過酸化物で架橋してなり、かつ金属成分の含有量が、金属元素に基づく量で5000ppm以下であることを特徴とする、ふっ素ゴム成形体。
  2. 更に、電離性放射線照射による架橋が施されていることを特徴とする、請求項1記載のふっ素ゴム成形体。
  3. 更に、超純水による洗浄の後、150℃以上の温度で加熱処理されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のふっ素ゴム成形体。
  4. 架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートが、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量部に対して0.1〜20質量部配合されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のふっ素ゴム成形体。
  5. 100℃の温度に30分間保持された際の放出ガス量が3ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のふっ素ゴム成形体。
  6. 酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウムにより凝固され、かつ、金属成分の含有量が、金属元素に基づく量で5000ppm以下に調整されたテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体と、過酸化物架橋剤、または、過酸化物架橋剤及び架橋助剤を含む混合物を、加熱成形して架橋体とすることを特徴とするふっ素ゴム成形体の製造方法。
  7. 架橋体に、更に電離性放射線を照射することを特徴とする請求項6記載のふっ素ゴム成形体の製造方法。
  8. 更に、超純水による洗浄の後、150℃以上の温度で加熱処理を施すことを特徴とする請求項6または7記載のふっ素ゴム成形体の製造方法。
  9. 請求項1〜5の何れか一項に記載のふっ素ゴム成形体からなることを特徴とする、半導体製造装置用または半導体搬送装置用ゴム材料。
  10. 請求項1〜5の何れか一項に記載のふっ素ゴム成形体からなることを特徴とする、食品製造装置用、食品移送器用または食品貯蔵器用ゴム材料。
  11. 請求項1〜5の何れか一項に記載のふっ素ゴム成形体からなることを特徴とする、医療部品用ゴム材料。
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