JP3924781B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体の製造方法に係り、特に、低ノイズかつ高密度の塗布型磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体の高密度化には、テープ状の媒体では、一般的には、テープ長を長くして(テープ厚さを薄くして) 体積記録密度を上げる手法や、トラック幅を狭めて面積記録密度を上げる手法が、多くのシステムで使われてきた。
【0003】
その結果、テープ厚さが薄くなるに伴い、テープのエッジ強度不足が問題になっており、従来品より高強度で、高価な材質の支持体を使わざるを得ない状況になってきている。また、近年採用されている狭トラック幅化に対応すべく、サーボ技術が開発されているが、この技術は特にリニア系システムでは難しく、開発コストも莫大になる。
【0004】
上記の手法以外に、高密度化の手法として、線記録密度を上げる手法があるが、短波長記録化に伴うC/N(キャリア出力/ノイズ比)の低下が著しく、この手法の採用は見合わせられていた。
【0005】
ところで、高密度化の手法として、最近、高感度のMRヘッドを再生ヘッドとして採用するシステムが増えている。この場合、磁気記録媒体に対して、媒体ノイズの低減と磁性層の極薄層化が要求されている。この媒体ノイズを下げる手法として、微粒でかつ均一な分布の磁性体を使用し、調液の際に磁性体を均一に分散させることが考えられる。
【0006】
従来の調液方法として、オープンニーダーや連続ニーダー等による混練処理や、混練した液をサンドミル等の分散機で分散処理する方法があるが、微粒子の磁性体を使用した場合には、凝集体をなくすことが難しかった。また、磁性粉末、結合剤樹脂、溶剤、その他の必要成分とともに超音波処理する方法があるが、微粒子の磁性体を使用した場合には、凝集体を十分に解砕することが難しかった(たとえば、特許文献1参照。)。
【0007】
一方、塗布直前の磁性液に超音波処理を施す方法もあるが、微粒子の磁性体では、やはり凝集体を十分に解砕することが難しかった(たとえば、特許文献2参照。)。
【0008】
このような従来の調液法に使用される装置として、超音波分散装置が紹介されている(たとえば、非特許文献1参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−153074号公報
【0010】
【特許文献2】
特開平8−138241号公報
【0011】
【非特許文献1】
池田 著(雑誌)「超音波 TECHNO」、1998年10月号(1998年9月5日発刊)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の調液法では磁性体と結合剤との初期接触が混練機等によって実施される。この際、凝集した磁性体粉末と高濃度の結合剤溶液とを高い剪断力をかけながら混合するため、微粒子の磁性体を使用した場合は、磁性体の濡れ性が低下して、磁性体の分散性が低下したり、混練で形成された磁性体の凝集が分散後においても解砕できなかったりする問題が発生した。また、磁性体の凝集はノイズ源になるばかりか、極薄の磁性層塗布におけるスジ等の欠陥起因にもなるという問題があった。更に、バリウムフェライト等の磁性体では、粉体作成時にコンタミ等の異物の混入を生じ易い。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決し、低ノイズの高密度塗布型磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、非磁性の支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性塗料が塗設されてなる磁気記録媒体の製造方法において、前記磁性塗料は、前記強磁性粉末と溶剤とからなる液Aと、前記結合剤の溶液Bとを含み、前記液Aを超音波印加により分散処理し、次いで濾過し、濾過後の液Aと前記溶液Bと混合することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、強磁性粉末と溶剤とからなる液Aを超音波印加により分散処理し、次いで濾過し、濾過後の液Aと、結合剤の溶液Bと混合するので、強磁性粉末の粗大な凝集粒子や粗大な異物を除去した状態で液Aと溶液Bとを混合できる。これにより、結合剤の吸着が均一となる強磁性粉末の液が得られる。その結果、低ノイズの高密度塗布型磁気記録媒体に好適な磁性塗料が得られる。
【0016】
すなわち、磁性体の微粒子化に伴い、磁性体の表面積は増大する。そのため、強磁性粉末はより原料作製時に凝集した形態をとりやすくなっている。この磁性体の凝集は空気を内在した形をとっているが、磁性体の表面積が大きいため、結合剤溶液と初期接触した際に瞬時に脱泡することが難しく、磁性体表面の濡れが十分になされない状態になる。
【0017】
一般に圧密等の造粒により、粉体間の脱気を進め、溶液接触時の濡れ性を高める手法があるが、微粒子磁性体で圧密処理すると、その後の磁性塗料の分散処理でも解砕しづらい凝集を形成する問題がある。
【0018】
本発明の磁性塗料の調製法を使えば、強磁性粉末を溶剤に浸漬させた状態で超音波分散処理することにより、磁性体凝集中の脱気、及び、超音波のキャビテーションによる磁性体凝集の解砕の双方が同時に行えるため、二次凝集のサイズが小さく、かつ磁性体表面が溶剤に覆われて濡れ性が高まった液状態を作ることができる。
【0019】
更に、強磁性粉末の粗大な凝集粒子や粗大な異物を濾過により除去できる。これにより、強磁性粉末の粒度分布を好ましい状態に維持できる。
【0020】
この状態の液Aに結合剤の溶液Bを混合することにより、磁性体と結合剤との初期接触を均一にできるようになる。その結果、分散処理後に凝集ブツが少なく、磁気的に磁性体同士が結合していない磁性塗料を作製することができる。
【0021】
本発明において、前記超音波印加による分散処理は、超音波印加部の近傍にフィルタが配されるクロスフロー式の超音波分散濾過装置によることが好ましい。このような超音波分散濾過装置であれば、超音波分散処理直後に濾過がなされる。その結果、強磁性粉末の粒度分布を好ましい状態に維持でき、本発明の効果がより確実に発揮できるからである。
【0022】
また、本発明において、前記液Aと溶液Bとの混合後に、更に分散処理を行うことが好ましい。このように、混合後に、更に分散処理を行えば、本発明の効果がより確実に発揮できるからである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明に係る磁気記録媒体の製造方法に使用される磁性塗料の製造装置10の好ましい形態について詳説する。図1は、磁性塗料の製造装置10の全体構成図であり、図2は、このうち超音波分散濾過系12に使用される超音波分散濾過装置40の詳細断面図である。
【0024】
各種塗布液の調液に使用される装置として、超音波分散装置が紹介されている(たとえば、非特許文献1参照。)。
【0025】
磁性塗料の製造装置10は、上流より、A液供給系である超音波分散濾過系12、B液供給系14、混合攪拌系16、サンドミル分散系18、及び、磁性塗布液作製系20とより構成される。なお、A液供給系である超音波分散濾過系12とB液供給系14とは並行して設けられ、混合攪拌系16で合流するように配管される。
【0026】
液Aを供給するA液供給系である超音波分散濾過系12は、液槽と液供給手段と超音波分散濾過装置等より構成される。すなわち、超音波分散濾過系12においては、液槽21と、液槽21からの給液配管23Aと、給液ポンプ24と、超音波分散濾過装置40と、給液ポンプ24と超音波分散濾過装置40との間の配管23B内の圧力を検出する圧力計22と、超音波分散濾過装置40から混合攪拌系16へA液を供給する給液配管23Cと、超音波分散濾過装置40からの戻り液を液槽21へと戻す戻り配管23Dとより構成される。
【0027】
超音波分散濾過系12において、クロスフロー式の超音波分散濾過装置40が採用されている。このクロスフロー式とは、濾過装置(フィルタ)において、デッドエンド式と対比して説明される方式である。すなわち、一般的に使用されるカートリッジフィルタ等は、液供給口と液排出口があるのみで、バイパスが設けられていないデッドエンド式である。これに対し、クロスフロー式とは、液供給口と液排出口と、更に戻り液配管が設けられ、濾過しきれない液が戻り液配管を経て再度液供給口に供給される方式のものである。
【0028】
図2において、超音波分散濾過装置40の液槽42は円筒状の容器であり、下端部に液排出口32が接続されている。そして、左側面上部には配管30(液供給口)が接続されており、右側面上部には配管34(液バイパス口)が接続されている。また、液槽42内の下部にはフィルタ36が設けられており、このフィルタ36を通過した液のみが液排出口32より流出できるようになっており、それ以外の液は配管34(液バイパス口)より流出されるようになっている。
【0029】
超音波分散濾過装置40の液槽42の上端部は、後述する振動子44のフランジ50により塞がれて密閉容器を形成する。この液槽42の内部には円柱状の振動子44が配置され、液槽42内部を通過する液体に超音波が印加できるようになっている。なお、フランジ50は振動子44と一体に形成されている。
【0030】
振動子44の上端部にはコンバータ46が固着されており、コンバータ46にはパワーサプライ48より給電がなされる。したがって、超音波分散濾過装置40が起動されると、コンバータ46により超音波振動が励起され、振動子44により液槽42内に超音波が印加される。
【0031】
このような構成の超音波分散濾過装置40が採用されることにより、液槽42内に流入した液A(強磁性粉末と溶剤とからなる)は超音波印加により分散処理され、超音波印加部近傍のフィルタ36により濾過され、フィルタ36を通過した液のみが液排出口32より流出され次工程(混合攪拌系16)へ送られる。
【0032】
図2において、超音波印加により分散処理された一次粒子P1、P1…はフィルタ36を通過しており、凝集粒子PGや異物Cはフィルタ36を通過できず、配管34より再度循環される。
【0033】
以上に記載したようなフロー型の超音波分散濾過装置40としては、たとえば、日本精機製作所製のフロー型超音波分散機、商品名:US−1200TCVPを改造して使用できる。この装置の仕様は、周波数が20KHz、MAX振幅が30μm、定格出力が1200W、超音波照射部の直径が50mm、等である。配管30、32、34の内径は14mmとした。
【0034】
フィルタ36としては、たとえば、ステンレス鋼の繊維を焼結させて作成したもので、直径が80mm、厚さが1.5mm、公称濾過性能が0.3μmのものを使用できる。
【0035】
なお、本発明において、クロスフロー式の超音波分散濾過装置は必須の構成ではなく、超音波分散装置とデッドエンド式のフィルタ(一般的なカートリッジフィルタ等)との組み合わせであってもよい。すなわち、強磁性粉末と溶剤とからなる液Aを超音波印加により分散処理し、次いで濾過すれば粗大な凝集粒子は除去できる。
【0036】
ただし、デッドエンド式のフィルタでは、フィルタの目詰まりにより液流量が制限されたり、フィルタの交換頻度が高かったりするので、クロスフロー式の超音波分散濾過装置を採用するのが好ましい。特に、図2に示されるような、超音波照射部の近傍にフィルタが配されるクロスフロー式の超音波分散濾過装置は、凝集粒子が解砕されつつ濾過されるので好ましい。
【0037】
図1において、溶液Bを供給するB液供給系14は、液槽と液供給手段等より構成される。すなわち、B液供給系14においては、液槽25と、液槽25内に先端が配されるスターラ26と、液槽25からの給液配管27と給液ポンプ28とより構成される。
【0038】
上記のA液供給系である超音波分散濾過系12とB液供給系14とに使用される各種構成部材は、公知の各種部材が使用できる。ただし、磁気記録媒体の磁性塗料という液の性質より、コンタミネーションを生じず、腐食が生じない材質のものを採用することが好ましい。
【0039】
超音波分散濾過系12とB液供給系14との下流に配される混合攪拌系16は、A液と溶液Bとを混合攪拌する機能を有するもので、本実施の態様ではディゾルバー型攪拌機が採用されている。このディゾルバー型攪拌機は、公知のものが採用できることより、詳細な説明は省略する。
【0040】
ただし、混合攪拌系16は、ディゾルバー型攪拌機に限定されるものではなく、A液と溶液Bとを混合攪拌する機能を有するものであれば、薄層旋回型高速攪拌機(たとえば、特許第3072467号に記載のもの)、超音波分散機(たとえば、日本精機製作所製のフロー型超音波分散機、商品名:US−1200TCVP)等、各種の攪拌機等が採用できる。
【0041】
混合攪拌系16の下流の配されるサンドミル分散系18は、液槽70と、液槽70内に先端が配されるスターラ72と、液槽70からの給液配管74と給液ポンプ76と、サンドミル分散機78と、サンドミル分散機78から液槽70への戻り配管80とより構成される。
【0042】
このサンドミル分散系18において、混合攪拌系16より流入した液は、サンドミル分散機78により繰り返し循環されるとともに、その一部が下流の磁性塗布液作製系20に供給されるような構成となっている。
【0043】
このサンドミル分散系18は、液Aと溶液Bとの混合液の強磁性粉末を更に分散させることを目的とするもので、これに使用される各種構成部材は、公知の各種部材が使用できる。ただし、磁気記録媒体の磁性塗料という液の性質より、コンタミネーションを生じず、腐食が生じない材質のものを採用することが好ましい。
【0044】
サンドミル分散系18の下流の配される磁性塗布液作製系20は、液槽82と、液槽82内に先端が配されるスターラ84と、液槽82からの給液配管86と、フィルタ88と、フィルタ88からの配管90とより構成される。また、液槽82では、潤滑剤及び溶剤よりなるC液と、添加剤溶液(カーボンブラックと研磨剤よりなる)であるD液が新たに加えられるようになっている。
【0045】
この磁性塗布液作製系20において、磁性塗料は最終的に調合され、フィルタ88を経ることにより、異物が除去され、磁性塗料として塗布工程に供給されることとなる。
【0046】
以下、磁性塗料の製造装置10を使用した磁性塗料の製造について説明する。本発明に使用される強磁性粉末としては、各種の材料が使用できるが、強磁性粉末が六方晶フェライトである場合は、板径が35nm以下、板比が2以上のものが、強磁性粉末が強磁性金属粉末である場合は、長軸長が60nm以下、軸比が2以上のものが、好ましく使用できる。この強磁性粉末のパーティクルサイズとしては、平均一次粒子体積が10000nm3 以下のものが、好ましく使用できる。
【0047】
液Aにおいて、強磁性粉末を浸漬する溶剤は、シキロへキサノンを含む溶液が好ましい。シキロヘキサノンの含有率は全溶剤量の30〜100重量%であることが好ましい。シキロヘキサノン以外の溶液としては、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸ブチル等を使用することが好ましい。
【0048】
磁性塗料の製造装置10によって処理する前に、強磁性粉末と溶剤とからなる液Aに超音波印加による分散処理することで、より効果が得られる。超音波印加による分散処理は、バッチ式処理形態、フロー式処理形態のいずれの処理形態でもよい。すなわち、溶剤に浸漬させた強磁性粉末に超音波分散処理で発生するキャビテイ(空洞)をより多く、より均一に当てられるように液濃度や超音波分散での周波数、照射面積、循環回数等を設定すればよい。
【0049】
液Aの液濃度は、5〜80重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、25〜50重量%が更に好ましい。液濃度の上限は浸透しやすさから規定され、液濃度の下限は超音波分散の効率により規定される。
【0050】
磁性塗料の製造装置10による処理前の液Aの超音波分散処理を、バッチ処理で行なう場合の条件について述べる。超音波の周波数は10〜1000KHzが好ましく採用できる。発生するキャビティの数の点では高周波が好ましく、発生するキャビティの破裂力の点からは低周波が好ましい。この点より、異なる周波数の超音波分散処理を併用することにより、より効果的に凝集した磁性体を解砕できる。
【0051】
単一の周波数で超音波分散処理をする場合は、周波数10〜40KHzで所定時間(消費電力)をかけることにより磁性体の解砕が可能である。周波数20KHzと40kHzとを比較した場合は、40kHzの方が超音波の照射面積を広げられる余地が大きく、かつ、液中のキャビティの生成破裂数が多い点で好ましい。周波数40kHzのバッチ型超音波分散機としては、市販の各種超音波洗浄機等を使用できる。メーカー等は特に限定されない。
【0052】
なお、超音波分散処理を行なう際に、超音波の照射面積より小さい径を有するガラス製、プラスチック製等の密閉容器に処理前の液Aを入れて、超音波照射部の上に配することが好ましい。又、超音波の照射面積より大きい径を有する容器に処理液Aを入れる場合は、スターラで攪拌することがより好ましい。
【0053】
磁性塗料の製造装置10による処理前の液Aの超音波分散処理を、フロー(循環) 処理で行なう場合の条件について述べる。フロー処理用の市販の超音波分散機の周波数は20kHz前後が一般的である。したがって、液Aの循環回数を確保することにより液中のキャビティの生成破裂数を確保し、凝集した磁性体の解砕を促進することが好ましい。又、磁性体の沈降対策として高液量で処理することが好ましい。
【0054】
超音波分散機としては、たとえば、日本精機製作所製のフロー型超音波分散機、商品名:US−1200TCVPが使用できる。この装置の仕様は、既述したので省略する。この超音波分散機は、超音波の照射ゾーンが直径50mmの円状であり、照射面積を大きく確保できる点でより好ましい。
【0055】
図1のB液供給系14において、結合剤の溶液Bの濃度は、液粘度がビスメトロンで10Pa・s(100P)以下とするのが好ましく、1Pa・s(10P)以下とするのがより好ましく、0.1Pa・s(1P)以下とするのが最も好ましい。
【0056】
混合攪拌系16において、溶液Bと液Aとを混合する際の、溶液Bの磁性体に対する結合剤比率は100重量部に対して0.5〜30重量部とするのが好ましく、2〜15重量部とするのがより好ましい。また、膜強度確保の点、分散性確保の点等より、必要な結合剤は分散進度に伴い途中で添加していくことが、分散効率を高めることができるので好ましい。
【0057】
磁性塗料の製造装置10による磁性塗料の処理速度は、装置のサイズ、各液の濃度、各液の組成等によりそれぞれ異なるが、たとえば、混合攪拌系16において、液Aと溶液Bとをそれぞれ流量500g/分で混合できる。
【0058】
磁性塗料の製造装置10によって得られた磁性塗料による磁気記録媒体の製造は、公知の各種製法が採用できる。たとえば、磁性塗料の塗布手段としては、アプリケーション系では、ローラ塗布方法、ディップ塗布方法、ファウンテン塗布方法等が、計量系では、エアーナイフ塗布方法、ブレード塗布方法、バー塗布方法等が採用できる。また、アプリケーション系と計量系とを同一の部分で担当するものとして、エクストルージョン塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法等が採用できる。
【0059】
製造される磁気記録媒体の磁性層の厚さは、乾膜で0.02〜3μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、磁性層と非磁性支持体との間に非磁性粉末と結合剤を主体とした非磁性層を設けた層構成とするのが好ましい。特に、磁性層を薄層とする構成では、凝集した磁性体の解砕による塗布スジの低減が可能になるので、短波長領域でのC/N低下を抑制して媒体性能を向上させるだけでなく、生産性を向上できるというメリットもある。
【0060】
以上、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0061】
たとえば、本実施形態の例では、超音波分散濾過装置40が1台採用されているが、複数台の超音波分散濾過装置40、40…を直列に設ける形態でもよい。
【0062】
【実施例】
次に、本発明の実施例を、比較例と対比して説明する。なお、以下の各例において、「部」の表示は「重量部」 を意味する。
【0063】
以下の各例は、磁性層と非磁性支持体との間に非磁性粉末と結合剤を主体とした非磁性中間層を設けた層構成を採用した。
【0064】
そして、本発明の実施例である例1は、図1に示される構成の磁性塗料の製造装置10で強磁性粉末と溶剤とからなる液Aと、結合剤の溶液Bとを超音波印加により分散処理し、次いで液Aを濾過し、しかる後に溶液Bと混合し、その後に更に分散処理がなされた磁性塗料を使用した例である。
【0065】
これに対し、比較例である例2は、強磁性粉末として板径26nm、板比3のバリウムフェライトを使用して、磁性液の調液に際してオープンニーダーにより強磁性粉末と結合剤溶液を接触させ、混練して液を作製した上で、分散処理がなされた磁性塗料を使用した例である。
【0066】
比較例である例3は、例1(実施例)と異なり、事前の超音波分散処理及び超音波印加による分散濾過処理をすることはせず、強磁性粉末と溶剤とからなる液Aと、結合剤の溶液Bとをディゾルバー型攪拌機により周速18m/秒で30分攪拌混合し、分散処理がなされた磁性塗料を使用した例である。
【0067】
以下、例1〜例3の各構成について、共通する部分は一括して、それぞれ異なる部分は個別に説明する。
【0068】
(1)非磁牲中間層の構成(例1〜例3で共通)
非磁性粉体 α−Fe2 O3 80部
平均長軸長 0.1μm
BET法による比表面積 48m2 /g
pH8、 Fe2 O3 含有量 90パーセント以上
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面処理剤Al2 O3
カーボンブラック 20部
平均一次粒子径 16μm
DBP吸油量 80ml/100g
pH 8.0
BET法による比表面積 250m2 /g
揮発分 1.5%
塩化ビニル共重合体 8部
日本ゼオン社製MR−110
ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI
=0.9/2.6/1
−SO3 Na基 1×10-4eq/g含有 Tg 65℃
フェニルホスホン酸 3部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 150部
シクロヘキサノン 100部
上記の非磁性中間層の塗料は、ステアリン酸とブチルステアレートを除く各成分をオープンニーダーで混練したのち、横型循環タイプのピン型サンドミル分散機(2Lタイプ)に小径ジルコニアビーズ(径0.5mm) をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が12m/秒で、流量0.5kg/分で分散滞留時間が60分になるよう分散処理した。
【0069】
分散した液にポリイソシアネートを3部加え、更にステアリン酸とブチルステアレートを1部ずつ添加し、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンで溶解した液(メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=36部:24部)を添加攪拌して、固形分濃度28%、溶剤比率がメチルエチルケトン:シクロヘキサノン=6:4である非磁性塗布液を作製した。この非磁性塗布液は1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し調整した。
【0070】
(2)磁性層の構成(磁性液と添加剤溶液とを示す。他は省略する)
a)添加剤ペースト液(添加剤溶液)(例1〜例3で共通)
α−アルミナ( 粒子サイズ0.18μm) 4.5部
カーボンブラック( 粒子サイズ0.10μm) 0.5部
MR110 0.45部
シクロヘキサノン 9.2部
添加剤ペースト液は、カーボンブラック:アルミナ:MR110:シクロヘキサノン=5:45:4.5:50.5の比率とし、このペースト液を磁性液とは別にフロー型の超音波分散機(1200W、周波数2 0KHz、照射部面の直径50mm、照射部とホルダーとの間隔3mm、振幅30μm)を用いて流量300g/分で2パス処理した。
【0071】
b)磁性液(例1〜例3の間で相違する)
[例1]
強磁性粉末 100部
板径26nm、板比3、平均一次粒子体積3805nm3
SBET 60m2 /g、pH7.9
Hc187856A/m(2360 Oe)
σs 49A・m2 /kg
真比重5.1g/ml、見かけ比重0.7g/ml
MR110 10部
メチルエチルケトン 20部
シクロヘキサノン 170部
実施例の磁性塗布液作製は、液Aとして、強磁性粉末:シクロヘキサノン=100部:150部の比率になるように配合して行なった。前攪拌として、内径50mmの円筒状容器(底面はフラット、厚さ2mm、素材はガラス、高さ100mm、蓋付き)に液A(混合液)を100g入れ、BRANSON社製の超音波洗浄機、型番:BRANSONIC220(仕様:125W、照射面の直径50mmで発振部が2箇所、周波数40KHz)に水を張りながら、上記混合液を入れた円筒状容器を配して処理した。超音波洗浄機の発振部の真上に円筒状容器を配し、溶剤浸漬後(混合後)1分以内に超音波処理を実施した。超音波処理時間は30分とした。
【0072】
その後、この混合液を、図1に示される磁性塗料の製造装置10のA液供給系である超音波分散濾過系12の液槽21内に入れ、超音波分散濾過装置40により処理した。その際、流量を1kg/分とし、図2に示される液供給口(配管30)内と液バイパス口(配管34)内との圧力差が196kPa(2kg/cm2 )になるように調整して処理した。
【0073】
別途、溶液Bとして、ディゾルバー型攪拌機により作製した、MR110:シクロヘキサノン:メチルエチルケトン=10:20:20(液固形分濃度20%)の結合剤溶液を図1に示される磁性塗料の製造装置10のB液供給系14の液槽25内に入れ、スターラ26で攪拌して待機させておき、これを混合攪拌系16に供給して液Aと混合させた。
【0074】
混合攪拌系16(ディゾルバー型攪拌機)における液Aと溶液Bとの攪拌混合は、周速18m/秒で30分とした。
【0075】
その後、サンドミル分散系18において、この混合液を構型循環タイプ(2Lタイプ)のピン型サンドミル分散機78で処理した。処理条件は、小径ジルコニアビーズ(径0.5mm) をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、流量0.5kg/分で分散滞留時間が30分になるようにして分散処理した。
【0076】
[例2]
比較例として、強磁性粉末として板径26nm、板比3のバリウムフェライトを使用して、磁性液の調液に際してオープンニーダーにより強磁性粉末と結合剤溶液を接触させ、混練して液を作製した上で、分散処理を行なった。強磁性粉末の調合比率は例1と同様である。
【0077】
より詳細には、強磁性粉末、結合剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンをオープンニーダーで混練したのち、横型循環タイブのピン型サンドミル分散機(2Lタイプ)に小径ジルコニアビーズ(径0.5mm) をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、流量0.5kg/分で分散滞留時間が30分になるようにして分散処理した。
【0078】
[例3]
比較例として、事前の超音波分散処理及び超音波印加による分散濾過処理をすることはせず、強磁性粉末と溶剤とからなる液Aと、結合剤の溶液Bとをディゾルバー型攪拌機により周速18m/秒で30分攪拌混合し、分散処理を行なった。強磁性粉末の調合比率は例1と同様である。
【0079】
次に、図1に示される磁性塗布液作製系20において、上記例1〜例3の磁性液と既述の添加剤ペースト液とを混合して磁性塗料を作成する工程について説明する。
【0080】
磁性塗布液作製系20の液槽82に磁性塗布液と添加剤ペースト液を入れ、スターラ84により混合、攪拌し、更にステアリン酸0.5部とブチルステアレート1.5部をメチルエチルケトン50部とシクロヘキサノン30部で溶解した液を添加、攪拌して磁性塗布(磁性塗料)を作製した。磁性塗布液は1μmの平均孔径を有するフィルター88を用いて濾過し調整した。
【0081】
磁気記録媒体としての磁気テープは、以下の工程で製造した。非磁性の支持体として、厚さ5.2μmでAFMの粗さスペクトルで波長4.3μmの粗さ成分強度が0.03nm2 のポリエステルナフタレートを使用した。
【0082】
非磁性層塗布液の乾燥後の厚さが1.5μmになるように、更にその直後に、その上に磁性層の乾燥後の厚さが0.1μmになるように、この支持体上に同時重層塗布を行なった。非磁性層と磁性層の両層がまだ湿潤状態にあるうちに3000Gの磁力をもつコバルト磁石と1500Gの磁力をもつソレノイドにより配向させて乾燥させた後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダー装置で、温度85°C、線圧力350kg/cm、速度50m/分の条件で処理を行い、6.35mmの幅にスリット処理して磁気テープを製造した。
【0083】
この例1〜例3の磁気テープの評価(ブツの数)を以下のように実施した。ブツの数は、所定面積あたりの斑点状凝集ブツの数を光学顕微鏡によりカウントして評価した。500倍の視野で40視野分の数を合計してブツ数とした。なお、500倍の視野で40視野分の面積は0.884mm2 に該当する。
【0084】
例1(本発明の実施例)では、ブツ数は1個であった。これに対し比較例である例2、例3では、ブツ数はそれぞれ722個、5個であった。
【0085】
以上、本発明の実施例と比較例とを比較した場合、例1(本発明の実施例)は例2(比較例)に比べて、磁性層表面を光学顕微鏡で観察した際の斑点状の凝集ブツの個数が少なく、本発明の効果が確認できる。
【0086】
例3(比較例)は、例2(比較例)に比べてブツの個数が少ないが、本発明の実施例と比べると明らかに劣ることが解る。
【0087】
[例4]
例2(比較例)に対して、磁性塗布液を作製後、フロー型超音波分散機(商品名:US−1200TCVP)を用いて、作動深さ3mm、照射時間6秒で超音波処理を行い、その10分後に支持体上に塗布し、磁気テープを製造した。磁性層表面を光学顕微鏡で観察した際の斑点状の凝集ブツの個数は22個であり、例2(比較例)よりは優れているものの、例1(本発明の実施例)に比べて劣った。
【0088】
[例5]
例3(比較例)に対して、強磁性粉末と溶剤とからなる液Aと、結合剤の溶液Bとをディゾルバー型攪拌機で攪拌混合し、次いで、フロー型超音波分散機(商品名:US−1200TCVP)を用いて照射時間3秒で超音波処理を行い、その後サンドミル分散機で例1と同様に処理して磁性塗布液を作製し、磁気テープを製造した。磁性層表面を光学顕微鏡で観察した際の斑点状の凝集ブツの個数は4個であり、例2(比較例)、例4(比較例)よりは優れており、例3(比較例)と同程度のレベルであるが、例1(本発明の実施例)に比べて劣った。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、強磁性粉末と溶剤とからなる液Aを超音波印加により分散処理し、次いで濾過し、その後に結合剤の溶液Bと混合するので、強磁性粉末の粗大な凝集粒子や粗大な異物を除去した状態で液Aと溶液Bとを混合できる。これにより、結合剤の吸着が均一となる強磁性粉末の液が得られる。その結果、低ノイズの高密度塗布型磁気記録媒体に好適な磁性塗料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に使用される磁性塗料の製造装置の全体構成図
【図2】超音波分散濾過系に使用される超音波分散濾過装置の詳細断面図
【符号の説明】
10…磁性塗料の製造装置、12…超音波分散濾過系(A液供給系)、14…B液供給系、16…混合攪拌系、18…サンドミル分散系、20…磁性塗布液作製系、40…超音波分散濾過装置、C…異物、P1…一次粒子、PG…凝集粒子
Claims (3)
- 非磁性の支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性塗料が塗設されてなる磁気記録媒体の製造方法において、
前記磁性塗料は、前記強磁性粉末と溶剤とからなる液Aと、前記結合剤の溶液Bとを含み、
前記液Aを超音波印加により分散処理し、次いで濾過し、濾過後の液Aと前記溶液Bと混合することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - 前記超音波印加による分散処理は、クロスフロー式の超音波分散濾過装置により行うと共に、該超音波分散濾過装置は超音波印加部の近傍にフィルタが配されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記液Aと溶液Bとの混合後に、更に分散処理を行う請求項1又は2のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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