JP3922763B2 - 熱履歴表示インク組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱履歴表示可能なインク組成物に関する。さらに詳しくは一定温度条件下での経時時間を高い再現性で表示できるとともに、画像の鮮明性が優れ、インクジェットなどの記録方法に有用なインク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
缶ジュース類(例えば、缶入りのコーヒー、缶入りのウーロン茶、缶入りのスープなど)は、冬期には、自動販売機中のホットベンダーで暖められて販売されている。このように、缶ジュースは保温された状態で長期間(例えば、2〜4週間程度)保存されていると、ジュースの品質が低下し、クレームの対象になることが多々あった。缶ジュースを保温するとグルコースが生じるため、缶ジュースの熱履歴は、缶内部のグルコースの増加量により判別している。しかし、このような分析は公的機関に依頼しているため、時間や費用がかかり、クレームへの対応が遅れるという問題を有していた。また、PL法施行のため、缶ジュースの熱履歴に対する経時時間表示方法として、一般的に分かるような方法の必要性が重視されている。
【0003】
従来、経時時間表示方法としては、電子供与性呈色有機化合物を用いる記録方法が広く採用されている。このような記録方法におけるインク組成物としては、例えば、特開昭60−124681号、特開昭62−179640号、特開平7−109423号などに開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のインク組成物を用いると、缶上に形成された印字がクレーター状となりやすく、塗膜厚を均一にすることが困難であり、さらに、経時時間の表示時間(変色・消色のスピード)にばらつきが生じるという問題を有していた。
【0005】
また、流通段階などにおける熱履歴を検知することなく、一定温度条件下での経時時間を表示することは困難であるという問題を有していた。
このように現在に至るまで缶製品(缶ジュースや缶詰など)において、ホットベンダーなどの一定温度条件下での保温の経時時間を高い再現性で表示できるとともに、鮮明性が優れた画像を形成できるインク組成物は特に開示されておらず、缶ジュース(清涼飲料水など)の製造メーカーは、缶内部のグルコースの量による方法を用いて、缶ジュースの加熱履歴を判別する方法を採用しなければならないのが現状である。
【0006】
本発明の課題は、一定温度条件下における熱履歴の経時時間を高い再現性で表示でき、かつ鮮明な画像を形成できるインク組成物を提供する点にある。
本発明の他の課題は、前記優れた特性とともに、高い接着性を有する印字を形成できるインク組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる問題を解決しようと鋭意検討した結果、インク組成物を電子供与性化合物、電子受容性化合物、溶剤及びシリコーンオイルで構成すると、一定温度条件下における熱履歴の経時時間を高い再現性で表示でき、かつ鮮明な画像を形成できるインク組成物が得られることを見いだし本発明を完成させるに至った。請求項1の発明は電子供与性化合物、電子受容性化合物、溶剤及びシリコーンオイルを含有するインク組成物である。
【0008】
本発明のインク組成物は、シリコーンオイルを含有するため、被印字物に対するインクのなじみを低下させ、いわゆる一種のはじき状態を形成できる。そのため、インクが被印字物上で収縮し、均一かつ同経の印字が可能であり、形成画像の変色・消色のスピードを一定にできるとともに、印字成形性を向上できる。本発明はシリコーンオイルのこのような性質を利用したインク組成物である。
【0009】
シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイルから選択された少なくとも一種などを用いることができる。シリコーンオイルの含有量は、インク組成物全量に対して0.01〜10重量%である。請求項2の発明は、シリコーンオイルがアミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイルから選択された少なくとも一種である請求項1記載のインク組成物である。また、請求項3の発明は、シリコーンオイルの含有量が0.01〜10重量%である請求項1又は2記載のインク組成物である。
【0010】
なお、電子供与性化合物は着色剤として機能する。電子供与性化合物(以下、着色剤と称する場合がある)としては、トリフェニルメタンフタリド類、フルオラン類、ローダミンラクタム類、ロイコオーラミン類、スピロピラン類などを用いることができる。電子受容性化合物は、電子供与性化合物に対する顕色剤として機能する。電子受容性化合物(以下、顕色剤と称する場合がある)としては、モノフェノール類、ジフェノール類、トリフェノール類などが使用できる。
【0011】
溶剤は着色剤の呈色を抑える減感剤としての機能も有している。溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類などを用いることができる。
【0012】
また、前記成分に油溶性樹脂(以下、単に樹脂と称する場合がある)を加えると、被印刷物に対する接着性を向上できるとともに、インク組成物の粘度を調整することができる。樹脂としては、例えば、脂肪族炭化水素系樹脂、芳香族炭化水素系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ系樹脂、ケトン系樹脂などを用いることができる。請求項4の発明は、さらに、油溶性樹脂を含有する請求項1及至3のいずれかの項に記載のインク組成物である。
【0013】
本発明のインク組成物は、インクジェット用のインク組成物として好適に使用できる。請求項5は請求項1及至4のいずれかの項にインク組成物をインクジェット用として用いたインク組成物である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(インク組成物)
本発明のインク組成物は、電子供与性化合物、電子受容性化合物、溶剤及びシリコーンオイルを含有している。
【0015】
本発明のインク組成物において、電子供与性化合物は、電子受容性化合物と組み合わせて用いられ、電子供与性化合物は着色剤として機能し、電子受容性化合物は顕色剤として機能する。また、溶剤は着色剤(電子供与性化合物)が発色するのを抑制している。すなわち、着色剤は、顕色剤(電子受容性化合物)との反応により発色することができるが、本発明のインク組成物は溶剤を含んでいるため、インク組成物中では、着色剤の発色が抑えられており、印刷後溶剤が揮発又は蒸発することにより着色剤が発色できる。従って、本発明のインク組成物は印刷後、直ちに(例えば、数秒程度で)発色し、一定温度に維持すると、変色・消色を開始し始める。すなわち、スタート機能を有しており、一定温度の条件下に放置すると、その熱履歴を検知し始める。なお、前記着色剤と顕色剤との反応は不可逆である。また、顕色剤の種類や量により検知期間を調整できる。
【0016】
また、本発明のインク組成物はシリコーンオイルを含有しているため、前記変色・消色は、経時時間に対するばらつきが少なく、高い再現性で熱履歴の経時時間を表示できる。さらに、本発明のインク組成物による塗膜は、前述のようにインクが被印刷物上で収縮するため、図1に示すように、膜厚が均一又はほぼ均一であるとともに、同径又はほぼ同経であり、印字成形性を向上できる。そのため、発色濃度が高く、鮮明な画像(印字)を形成できる。なお、図1はシリコーンオイルを含有するインク組成物による本発明のインク組成物を用いた場合の塗膜の状態を示す図であり、図2はシリコーンオイルを含有しないインク組成物を用いた場合の塗膜の状態を示す図である。なお、図1及び図2において、1は印字の塗膜を示し、2は金属の塗面を示す。
【0017】
図1では、シリコーンオイルを含有しているインク組成物を用いているため、インクと塗面(被印刷面)とのなじみが低く、インクは塗面との接触面積が低くなるように、被印刷面上で収縮する。そのため、印字の塗膜1の膜厚は均一又はほぼ均一であり、同径又はほぼ同径の円を形成する。なお、塗膜1の直径は、約0.7mmである。従って、発色濃度にむらがなく、高い発色濃度を有する鮮明な画像が形成されている。
【0018】
一方、図2では、シリコーンオイル非含有インク組成物を用いているため、印字の塗膜1は、不均一な膜厚を有するとともに、外辺部又は周辺部が滲みだしている。そのため、印字の塗膜1の発色濃度は中心部1aが薄く、その中心部1aでは被印刷面の金属面が見えており、また、外辺部1bは濃く、塗膜全体として発色濃度にむらが生じている。従って、塗膜の発色に濃淡ができ、鮮明な画像を形成できない。
【0019】
さらに、前記成分に樹脂を含有させると、接着性を改善できるとともに、インク組成物の粘度を調整できる。
【0020】
(電子供与性化合物)
電子供与性化合物(着色剤)としては、呈色性を有する電子供与性有機化合物であれば特に限定されない。このような着色剤としては、トリフェニルメタンフタリド類、フルオラン類、ローダミンラクタム類(例えば、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロロアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタムなど)、ロイコオーラミン類(例えば、ベンゾイルロイコメチレンブルーなど)、スピロピラン類(例えば、6´−クロロ−8´−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6´−ブロモ−3´−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピランなど)を用いることができる。着色剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
着色剤としては、トリフェニルメタンフタリド類、フルオラン類を好適に用いることができる。具体的には、トリフェニルメタンフタリド類としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロロフタリド、3−(2´−ヒドロキシ−4´−ジメチルアミノフェニル)−3−(2´−メトキシ−5´−クロロフェニル)フタリド、3−(2´−ヒドロキシ−4´−ジメチルアミノフェニル)−3−(2´−メトキシ−5´−ニトロフェニル)フタリド、3−(2´−ヒドロキシ−4´−ジエチルアミノフェニル)−3−(2´−メトキシ−5´−メチルフェニル)フタリド、3−(2´−メトキシ−4´−ジメチルアミノフェニル)−3−(2´−ヒドロキシ−4´−クロロ−5´−メチルフェニル)フタリドなどが例示できる。
【0022】
フルオラン類には、例えば、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−P−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、2−{N−(3−トリフルオロメチルフェニル)アミノ}−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−アミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチル−5−クロロ−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−{N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ}−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4´−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−メシチジノ−4´,5´−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2´,5´−ジメチルアニリノ)フルオランなどが例示できる。
【0023】
本発明において、着色剤の使用量は、インク組成物全量に対して0.1〜10重量%である。着色剤の使用量が多すぎると着色剤が析出し、また、地発色が残りやすく、変色・消色による終点の視認が困難である。一方、少なすぎると発色性が低く、濃度変化・色相変化が視認しにくく好ましくない。着色剤の使用量は、前記範囲の中でも、0.5〜5重量%が好ましい。
【0024】
(電子受容性化合物)
電子受容性化合物(顕色剤)としては、例えば、フェノール性水酸基を1又は2以上有する化合物を使用でき、例えば、モノフェノール類、ジフェノール類、トリフェノール類などが例示できる。顕色剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
モノフェノール類には、例えば、モノヒドロキシフェニル系化合物(例えば、4−ヒドロキシベンゾフェノン、p−ヒドロキシジフェニル、4−ヒドロキシジフェニルアミン、p−クミルフェノール、p−フェノールスルホンアミド、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸メチル、4−ヒドロキシフェニルメチルケトンなど)、フェニルカルボン酸系化合物(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルなどのオキシ安息香酸エステル、2−ヒドロキシフタル酸ジメチルエステル、2−ヒドロキシフタル酸ジフェニルエステルなどのオキシフタル酸エステル、4´−ヒドロキシサリチル酸アニリド、5−ベンジルサリチル酸アニリドなど)、モノヒドロキシナフタレン系化合物(例えば、α−ナフトール、β−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトールなどのオキシナフタレン、1−オキシ−2−ナフトエ酸、2−オキシ−3−ナフトエ酸などのオキシナフトエ酸、2−アセトナフトン、ヒドロキシナフタレンスルホン酸など)などが含まれる。
【0026】
ジフェノール類としては、例えば、ビスフェノール系化合物、ジヒドロキシナフタレン系化合物(例えば、1,3−ジオキシナフタレン、1,4−ジオキシナフタレンなどのジオキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレンモノプロピルエーテルなどのジオキシナフタレンアルキルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレンモノベンジルエーテルなどのジオキシナフタレンアリールエーテルなど)などが挙げられる。
【0027】
ビスフェノール系化合物には、例えば、式(1a)〜(1f)で表される化合物などが含まれる。
【0028】
【化1】
Figure 0003922763
(式中、R1 、R2 は同一又は異なって、アルキル基を示す。R3 はアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基であり、R4 はアルキレン基である。nは1〜10の整数である)
【0029】
式(1a)〜(1f)において、アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)が含まれる。アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン基などの炭素数1〜10程度のアルキレン基が例示できる。シクロアルキレン基には、例えば、シクロヘキシレン基などが含まれ、アリーレン基には、例えば、フェニレン基などが含まれる。また、nは1〜10の整数である。
【0030】
より具体的には、ビスフェノール系化合物としては、例えば、メチレンビスフェノール、4,4´−エチリデンビスフェノール、4,4´−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノールなどが例示できる。
【0031】
トリフェノール類としては、例えば、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸−C1-18アルキルエステル化合物などを使用できる。
【0032】
本発明において、顕色剤としては、ジフェノール類、特にビスフェノール系化合物が好適に使用される。顕色剤の使用量は、インク組成物全量に対して0.2〜40重量%である。顕色剤の使用量が多すぎると顕色剤が析出し、地発色が残存して終点の確認が困難である。一方、少なすぎると発色濃度が低く、濃度変化・色相変化を視認しにくい。顕色剤は、前記使用量の範囲の中でも1〜25重量%が好ましい。
【0033】
なお、本発明では、顕色剤の種類や含有量により検知期間を調整することができる。
【0034】
(溶剤)
溶剤としては、前記着色剤、顕色剤を溶解させることができ、揮発性を有する溶媒であれば、特に制限なく使用できる。なお、下記樹脂を使用する場合、さらに樹脂を溶解させることができる溶媒を用いるのが好ましい。また、溶剤は、呈色を抑える減感剤としても機能することができる。溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類などを用いることができる。溶剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
脂肪族炭化水素類としては、例えば、ガソリン、石油、ベンジン、ミネラルスピリット、石油ナフタ、V.M.&P.ナフタなどが例示でき、芳香族炭化水素類には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、p−シメン、デカリン、テトラリンなどが含まれる。また、ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。
【0036】
アルコール類には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、2−エチルブチルアルコール、メチルアミルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどの脂肪族アルコール類、シクロヘキサノールなどの脂環族アルコール類、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール類などが含まれる。
【0037】
ケトン類には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、メチルジプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類、メチルシクロヘキサンノンなどの脂環族ケトン類、メジシルケトン、アセトニトリルアセトンなどが含まれ、エステル類としては、例えば、酢酸エステル類、プロピオン酸エステル類、酪酸エステル類、ギ酸エステル類などが例示できる。エーテル類には、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルカルビトール、ジエチルセロソルブなどが含まれる。
【0038】
また、アルコールエステル類(例えば、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、オキシプロピオン酸エチル、オキシマレイン酸ジエチルなど)、ケトンアルコール類(例えば、アセトニルメタノール、ジアセトンアルコール、ジヒドロキシルアセトン、ピルビルアルコールなど)、エーテルアルコール類(例えば、グリシドール、グリコールエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンジルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、ケトンエーテル類(例えば、アセタールエチルエーテル、アセトニルメタノールエチルエーテル、メチルエトオキシエチルエーテルなど)、ケトンエステル類(例えば、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチルなど)、エステルエーテル類(例えば、酢酸セロソルブ、酢酸メチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、酢酸メチルカルビトール、酢酸ブチルカルビトール、酢酸3−メトキシブチルなど)などが使用できる。
【0039】
溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、アルコール類を好適に使用できる。なお、芳香族炭化水素類はアルコール類との混合溶媒として用いる場合が多い。溶剤の使用量は、インク組成物全量に対して20〜99.2重量%である。溶剤の使用量が多すぎると粘度が低下して好ましくない。一方、少なすぎると固形分の析出や粘度の上昇を招くため好ましくない。溶剤の好適な使用量は、30〜95重量%である。
【0040】
(シリコーンオイル)
本発明のインク組成物の特色は、前記成分(着色剤、顕色剤、溶剤)と、シリコーンオイルとを組み合わせている点にある。そのため、インク組成物は、画像の鮮明性を改善できるとともに、一定温度下における経時時間を高い再現性で表示できる。
【0041】
シリコーンオイルとしては、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイルなどを用いることができる。好ましいシリコーンオイルには、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが含まれる。アミノ変性シリコーンオイルは、例えば、信越化学工業社から商品名:KF−880が市販されている。また、カルボキシ変性シリコーンオイルは、例えば、商品名:TSF−4770(東芝シリコーン社製)として入手でき、ポリエーテル変性シリコーンオイルは、例えば、商品名:グラノール115(共栄社製)として入手できる。また、シリコーンオイルの使用量は、インク組成物全量に対して0.01〜10重量%である。シリコーンオイルの使用量が多すぎると膜表面へのブリード(滲出)が生じるため好ましくない。一方、少なすぎると印字成形性が低く、印字がクレーター状に形成されるとともに、変色・消色の速度にばらつきがみられ、経時時間の再現性が低くなり好ましくない。シリコーンオイル使用量は、前記使用量の範囲の中でも0.2〜4重量%が好ましい。
【0042】
(油溶性樹脂)
前記成分(着色剤、顕色剤、溶剤、シリコーンオイル)に樹脂を加えると、被印刷物に対するインクの接着性(密着性)を向上でき、また、インク組成物の粘度を調整できる。樹脂としては、特に制限されないが、中性〜酸性の樹脂が好ましく、例えば、脂肪族炭化水素系樹脂、芳香族炭化水素系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、ケトン系樹脂などを用いることができる。樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
脂肪族炭化水素系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレンなどのポリオレフィンや、石油樹脂、テルペン樹脂、クロマンインデン樹脂、スチロール樹脂などが例示できる。芳香族炭化水素系樹脂には、例えば、キシレン樹脂、トルエン樹脂、アルキルベンゼン樹脂などが含まれ、日本石油化学(株)から日石ポリマー120などが市販されている。
【0044】
フェノール樹脂としては、慣用のフェノールを用いることができ、例えば、ロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名:タマノール353)、アルキルフェノール樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名:タマノール100s)などが例示できる。
【0045】
アクリル系樹脂には、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどが含まれる。アミノ系樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂などが使用できる。
【0046】
好ましい樹脂には、芳香族炭化水素系樹脂、フェノール系樹脂が含まれ、特にフェノール系樹脂が最適に使用される。樹脂の使用量は、インク組成物全量に対して0.2〜50重量%である。樹脂の含有量が多すぎるとゲル化する場合があり、一方、少なすぎると被印刷物との密着性が低い。樹脂の好適な使用量は、1〜40重量%である。
【0047】
なお、本発明のインク組成物には、必要に応じて、例えば、染料(顔料)、充填剤、レベリング剤、粘度調整剤、構造粘性付与剤、乾燥性付与剤などの添加剤などを添加することができる。
【0048】
(製造方法)
本発明のインク組成物は、前記成分(着色剤、顕色剤、溶剤、シリコーンオイル、必要に応じて樹脂や添加剤など)を混合することにより調製できる。好ましい調製方法としては、溶剤に着色剤、顕色剤、必要に応じて樹脂を加えて溶解させた後、シリコーンオイルを加える方法が例示できる。
【0049】
本発明のインク組成物は、缶製品(例えば、缶ジュースや缶詰製品など)の表面(外面)に印刷すると、一定温度条件下における缶製品の熱履歴を検知できる。そのため、ホットベンダーなどの一定温度(例えば、50〜70℃程度)で保温されている缶製品の熱履歴の経時時間を、一般の消費者であっても容易に視認できる。従って、インク組成物は缶製品の熱履歴を検知するのに有用である。また、インク組成物はレトルトなどの殺菌処理のインジケーターとしても利用できる。
【0050】
なお、本発明のインク組成物は一定温度(例えば、約60℃程度)での熱履歴を検知するため、缶製品などのラベルに使用した場合、流通段階などにおける熱(例えば、室温以上50℃未満、好ましくは室温〜40℃)の影響をほとんど受けない。すなわち、流通段階では変色・消色することはほとんどない。
【0051】
インク組成物は、インクジェット記録方法、万年筆などのペンによる記録方法などの慣用の記録方法により印刷することができる。特に、本発明のインク組成物はインクジェット記録方法により容易に印刷することができるので、極めて有用である。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(原料)
原料として、以下の電子供与性化合物(着色剤)、電子受容性化合物(顕色剤)、油溶性樹脂、溶剤、シリコーンオイルを用いた。
(着色剤)
着色剤1:3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルフタリド
着色剤2:2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン
(顕色剤)
顕色剤1:メチレンビスフェノール
顕色剤2:4,4´−エチリデンビスフェノール
顕色剤3:4,4´−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール
(油溶性樹脂)
樹脂1:ロジン変性フェノール樹脂(商品名:タマノール353、荒川工業社製)
樹脂2:アルキルフェノール樹脂(商品名:タマノール100s、荒川工業社製)
(溶剤)
エタノール
エーテル:プロピレングリコールモノメチルエーテル
トルエン
MIBK:メチルイソブチルケトン
(シリコーンオイル)
シリコーン1:ポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:グラノール115、共栄社化学社製)
シリコーン2:カルボキシ変性シリコーンオイル(商品名:TSF−4770、東芝シリコーン社製)
シリコーン3:アミノ変性シリコーンオイル(商品名:KF−880、信越化学社製)
(その他)
染料1:油溶性黄色染料(商品名:スピロンエローC−GNH、保土ヶ谷化学社製)
染料2:油溶性赤色染料(商品名:オイルレッドTR−71、中央合成社製)
塩化リチウム
【0053】
(試験方法)
インク組成物を以下の試験により評価した。
【0054】
(色差保持率試験)
加熱履歴表示及びスタート機能をテスト前後の変色を、JIS Z 8729に準じて、L*a*b*表色系にて、下記式(1)を用いた色差保持率により評価する。完全に変消色したときのL*a*b*における明度L*をL1,赤方向の色度a*をa1,黄方向の色度b*をb1とし、テスト前の塗膜のL*a*b*のL*をLs,a*をas,b*をbsとし、テスト後の塗膜のL*a*b*のL*をLt,a*をat,b*をbtとして、テスト前後の変色色差保持率を下記式(1)を用いて求める。なお、色差保持率は高いほど、変色が少ない。
【式1】
Figure 0003922763
【0055】
(鮮明性)
印字の鮮明性を目視で判断する。なお、判断基準は下記の通りである。
○:印字の鮮明性が良
×:印字の鮮明性が不良
【0056】
(接着性試験)
被印刷物に印刷された塗膜にセロテープを張り付けて引っ張り、塗膜の剥離の有無を評価する。評価基準は以下の通りである。
○:剥離しない
×:剥離する
【0057】
(実施例1)
表1に示す割合の溶剤に着色剤、顕色剤、樹脂を添加し溶解させた後、シリコーンオイルなどの助剤を添加して攪拌し、インク組成物を調製した。
このインク組成物をインク化した後、インパルスジェット(ユニオンコーポレーション社製)を用いて、缶の底蓋に印字し、表2に示す保存条件において、スタート機能、検知機能を色差保持率により評価し、その結果を表2に示す。また、印字の鮮明性および缶表面とインクとの接着性を評価し、表3に示す結果を得た。
(実施例2〜4及び比較例1)
表1に示す組成のインク組成物を実施例1と同様にして調製し、スタート機能、検知機能、印字の鮮明性、接着性を評価し、表2及び表3に示す結果を得た。
(実施例5)
表1に示す組成のインク組成物を実施例1と同様にして調製した。このインク組成物を、荷電型ジェットプリンター(FX-2632、日立製作所製)を用いる以外は実施例1と同様にしてスタート機能、検知機能、印字の鮮明性、接着性を評価した。その結果を表2及び表3に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0003922763
【0059】
【表2】
Figure 0003922763
【0060】
【表3】
Figure 0003922763
【0061】
表2及び表3より、実施例のインク組成物は、一定温度(60℃)において変色・消色する塗膜(印字)を形成でき、その変色・消色のスピードの再現性が高い。また、印字の鮮明性が優れている。さらに、高い接着性を有している。
なお、比較例1では、塗膜の色は中央部が薄く、外辺部が濃くなっており、変色・消色のスピードの再現性にばらつきがみられる。特に、塗膜中央部の変色のスピードは速い。
【0062】
【発明の効果】
本発明のインク組成物は着色剤、顕色剤、溶剤、シリコーンオイルで構成されているため、このインク組成物により形成された印字は、一定温度条件下における熱履歴の経時時間を高い再現性で表示できるとともに、鮮明な画像を形成できる。また、前記成分と樹脂とを組み合わせると、前記特性とともに、接着性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シリコーンオイルを含有する本発明のインク組成物による塗膜の状態を示す図である。
【図2】 シリコーンオイルを含有しないインク組成物による塗膜の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 印字の塗膜
1a 印字の塗膜の中央部
1b 印字の塗膜の外辺部
2 金属の塗面

Claims (4)

  1. 電子供与性化合物、電子受容性化合物、溶剤及びシリコーンオイルを含有するインクジェット用熱履歴表示インク組成物。
  2. シリコーンオイルがアミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイルから選択された少なくとも一種である請求項1記載のインクジェット用熱履歴表示インク組成物。
  3. シリコーンオイルを0.01〜10重量%含有する請求項1又は2記載のインクジェット用熱履歴表示インク組成物。
  4. さらに、油溶性樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれかの項に記載のインクジェット用熱履歴表示インク組成物。
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