JP3921968B2 - 位置検出方法及び位置検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マークを撮影して得た画像データを画像認識処理することにより位置を検出する位置検出方法及び位置検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の位置検出方法として、例えば一定間隔を開けたカメラ2台を使って同一の物体を認識し、それぞれの画像上での物体の2次元座標を利用して実際の物体の3次元座標を求める手法(ステレオカメラ)が知られている。しかし、この手法ではカメラを2台使用しており、処理系も複雑になるので、高コストになってしまう。
【0003】
また特開平11−85385号公報には、複数の発光体を設置して、複数の発光体の点灯を認識して位置を検出する装置が開示されている。しかし、この位置検出方法では、これらの発光体をタイミングをずらして発光させたりしなければならず、こちらも複雑なシステムになってしまう。また発光体を利用するので明るい場所では位置検出をすることができない。また発光体ではなく黒点などの点を表示しておけば、明るい場所でも検出することはできるが、点であると、ある程度距離が離れるとその点を認識するのが困難となり、比較的近距離での位置検出にしか使用できない。
【0004】
さらに丸や四角などの図形のパターンをマークに使い、パターンマッチングによりマークを認識して位置を検出する手法も知られている。すなわち、所定の図形のマークをパターンマッチングにより認識し、画面上におけるマークの位置座標と大きさを求めて、これらの値を基に幾何学的な相似関係からマークとカメラとの相対位置座標を計算する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マークとカメラの距離の違いによって画面上におけるマークの大きさが異なるため、マークがどんな大きさであっても認識されるようにするため、大きさの異なる多数のテンプレートを用意する必要があった。例えば図19に示すように、マーク90が丸形「●」のパターンであるとき、撮影されたマーク90が遠近の違いにより大きさがまちまちであっても、それがマーク90であると確実に認識されるように、同図に示すように種々の大きさの多数のテンプレート91を用意しておく必要があった。そして、種々の大きさのテンプレート91の1つずつについてパターンマッチング処理を行い、画像データ中にテンプレート91と一致したパターンがあると、その位置からマーク90の位置を算出するとともに、その一致したテンプレート91の大きさからマーク90の大きさを認識する。しかし、このようなスケール処理は、多数のテンプレート91を用意するとともに、テンプレート91の1つずつについてパターンマッチング処理をする必要があるため、マークを認識するまでにかなり長い処理時間がかかるという問題があった。
【0006】
例えば米国特許5586620号には、フォークリフトなどの産業車両の分野において、フォークを高所で位置合わせする操作を支援する目的で、キャリッジにフォーク前方を撮影するカメラを取り付け、カメラで撮影した画像を運転席から表示装置の画面を通して見られるようにした技術が開示されている。
【0007】
このような技術にさらに位置検出機能を追加することも考えられる。すなわち、例えば棚やパレットに位置検出用のマークを設け、フォーク前方を撮影した画像データを画像認識処理することでマークの位置および大きさを算出し、これらの算出値を基に求めたフォークの目標位置に対するずれ量などの情報を、数値表示や音声アナウンスなどで運転者に知らせる技術を導入する。
【0008】
この場合、フォークを上昇させるときにカメラも一緒に移動しながら撮影され、画面上で動いてゆくマークを位置検出することになる。しかし、スケール処理に時間がかかり位置検出結果が遅れるタイムラグが生じると、フォークとマークの現実の位置関係と、画像処理上の位置関係がずれてしまう。このような画像処理上の位置関係が現実のものとずれることが原因で、フォークの位置合わせを的確に支援できなくなるという問題が発生する。このため、マークの位置をほぼリアルタイムに検出できるようにするため、スケール処理など処理時間の長くかかる技術を用いなくても、マークを認識できる画像処理技術が必要であった。
【0009】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、マークの認識処理速度を速くすることができ、位置の検出時間を短くすることができる位置検出方法及び位置検出装置を提供することにある。
【0010】
第2の目的は、第1の目的を達成するとともに、撮影位置とマークとの実座標系における相対位置を効率よく検出することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、マークをカメラで撮影して得た画像データをパターンマッチング処理することで、前記マークのパターンを画像認識して位置を割り出す位置検出方法であって、前記マークは、連続的に拡大しても常にそのパターンの模様の中に元のサイズのパターンが一つだけ含まれるよう、一点を中心に放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンをもつとともに、各々の放射中心間の距離が既知の値に定められた2つの前記パターンを有しており、前記2つのパターンを画像認識して該パターンの各々の放射中心点と該二点間の距離とを算出して、これらの値を基に撮影画面上における前記マークの位置と大きさを割り出すことを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、撮影距離の違いなどにより撮影されたマークの大きさが変わっても、そのパターンの中にはテンプレートと同サイズのパターンが含まれるので、パターンマッチング処理するときに用いるテンプレートが少なく済む。このため、画像認識の処理速度が速くなり、位置検出の処理時間が短縮される。また、既知の距離だけ離れた2つのパターンの位置(放射中心点)とその距離が分かるため、これらの値を基にマークの位置と大きさを求めることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、マークをカメラで撮影して得た画像データをパターンマッチング処理することで、前記マークのパターンを画像認識して位置を割り出す位置検出方法であって、前記マークは、連続的に拡大しても常にそのパターンの模様の中に元のサイズのパターンが一つだけ含まれるよう、一点を中心に放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンをもつとともに、各々の放射中心間の距離が既知の値に定められた2つの前記パターンを有しており、前記2つのパターンを画像認識して該パターンの各々の放射中心点と該二点間の距離とを算出して、これらの値を基に前記カメラと前記マークの相対位置を算出することを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、撮影距離の違いなどにより撮影されたマークの大きさが変わっても、そのパターンの中にはテンプレートと同サイズのパターンが含まれるので、パターンマッチング処理するときに用いるテンプレートが少なく済む。このため、画像認識の処理速度が速くなり、位置検出の処理時間が短縮される。また、既知の距離だけ離れた2つのパターンの位置(放射中心点)とその距離が分かるため、これらの値を基にカメラとマークの実座標系における相対位置が算出される
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の位置検出方法において、前記マークは、一点を中心に放射状に真っ直ぐ延びる3本以上の境界線のみによって色分けされたパターンをもつことを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、請求項1又は2の発明の作用に加え、境界線が2本の場合に比べてマーク以外のものをパターンと認識する誤認識が減る
【0020】
請求項に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出方法において、前記2つのパターンは、同一の模様であることを要旨とする。
この発明によれば、2つのパターンを認識するのにテンプレートが1つで済む。
【0021】
請求項に記載の発明は、請求項のいずれか一項に記載の位置検出方法において、前記パターンは、4本以上の偶数本の前記境界線によって前記一点を中心とする周方向に交互に濃淡で色分けされていることを要旨とする。
【0022】
この発明によれば、パターンがさほど単純ではない模様であることと、濃淡で比較的コントラストがはっきりしたパターンなので、パターン以外のものをパターンと認識する誤認識や、パターンをパターンとして認識できない認識漏れが減る。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載の位置検出方法において、前記パターンマッチング処理で用いられるテンプレートは、前記画像データ上に映し出されるマークが認識されなければならない最小サイズにあるときのそのパターンサイズ以下のサイズに設定されていることを要旨とする。
【0024】
この発明によれば、認識されなければならないサイズのマークのパターンは全て認識可能となる
【0030】
請求項に記載の発明は、位置検出対象に設けられるとともに2つのパターンを有するマークを撮影する撮影手段と、一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンからなるテンプレートを記憶する記憶手段と、前記マークを撮影手段で撮影して得た画像データを前記テンプレートを用いたパターンマッチング処理することで前記マークの2つのパターンを画像認識する画像認識手段と、前記認識された2つのパターンの各々の放射中心点と両二点間の距離とを算出して前記マークの位置と大きさを割り出す位置演算手段とを備えたことを要旨とする。
【0031】
この発明によれば、パターンマッチング処理する場合、マークにはテンプレートと同じパターンを有するものが使用される。撮影距離の違いによって撮影されたマークの大きさが変わっても、そのマークの各パターン中にはテンプレートと同じ大きさのパターンが含まれるため、パターンマッチング処理に必要なテンプレートの数が少なく済む。従って、パターンマッチング処理時間が短く済む。また、マークの2つのパターンの放射中心点と両二点間距離とが求められ、これらの値を基にマークの位置と大きさが割り出される。
【0032】
請求項に記載の発明は、位置検出対象に設けられるとともに2つのパターンを有するマークを撮影する撮影手段と、一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンからなるテンプレートを記憶する記憶手段と、前記マークを撮影手段で撮影して得た画像データを前記テンプレートを用いたパターンマッチング処理することで前記マークの2つのパターンを画像認識する画像認識手段と、前記認識された2つのパターンの各々の放射中心点と両二点間の距離とを算出して前記マークと撮影位置との相対位置を割り出す位置演算手段とを備えたことを要旨とする。
【0033】
この発明によれば、パターンマッチング処理する場合、マークにはテンプレートと同じパターンを有するものが使用される。撮影距離の違いによって撮影されたマークの大きさが変わっても、そのマークの各パターン中にはテンプレートと同じ大きさのパターンが含まれるため、パターンマッチング処理に必要なテンプレートの数が少なく済む。従って、パターンマッチング処理時間が短く済む。また、マークの2つのパターンの放射中心点と両二点間距離とが求められ、これらの値を基にマークと撮影位置との相対位置が割り出される。
【0034】
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の位置検出装置において、前記2つのパターンは、同一のパターンであることを要旨とする。
【0035】
この発明によれば、2つのパターンを1つのテンプレートで認識することが可能になる。
請求項1に記載の発明は、請求項のいずれか一項に記載の位置検出装置において、前記パターンは、4本以上の偶数本の前記境界線によって前記一点を中心とする周方向に交互に濃淡で色分けされていることを要旨とする。なお、ここでいう「濃淡」とは、淡色には白が含まれ、濃色には黒が含まれる。以下の請求項も同様である。
【0036】
この発明によれば、パターンがさほど単純ではない模様であるので、パターン以外のものをパターンと認識する誤認識が減る。また濃淡の色分けによってコントラストがはっきりするので、マークのパターンを認識できない認識漏れが減る。
【0037】
請求項1に記載の発明は、請求項1に記載の位置検出装置において、前記濃淡の色分けは、黒と白の色分けであることを要旨とする。
この発明によれば、黒と白の色分けによってコントラストがはっきりするので、マークのパターンを認識できない認識漏れが一層減る。
【0038】
請求項1に記載の発明は、請求項〜1のいずれか一項に記載の位置検出装置において、前記マークが位置検出対象に設けられた状態において、前記パターンは水平線に対し斜めに延びている境界線を有することを要旨とする。
【0039】
この発明によれば、境界線が水平線に対し斜めに走るため、縦と横のみに走る場合に比べ、パターン以外のものをパターンと認識するの誤認識が減る。
請求項1に記載の発明は、請求項〜1のいずれか一項に記載の位置検出装置において、前記テンプレートは、前記画像データ上に映し出されるマークが認識されなければならない最小サイズにあるときのそのパターンサイズ以下のサイズに設定されている。
【0040】
この発明によれば、認識されなければならないサイズのマークのパターンは全て認識可能となる
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をフォークリフトの位置検出装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
【0055】
図1に示すように、産業車両としてのリーチ型フォークリフトトラック(以下、フォークリフトという)1は、荷役具としてのフォーク2を用いて荷役作業をするために使用される。このフォークリフト1では、車体3の前部から前方へ延出する左右一対のリーチレグ4の先端部に左右の前輪(従動輪)5がそれぞれ取付けられており、後輪である駆動操舵輪6は、車体3に配備されたバッテリ7を電源として駆動される走行用モータ8の動力により走行駆動される。車体3の後部右部分には立席タイプの運転席9が設けられ、ハンドル10を操作することで駆動操舵輪6は操舵される。
【0056】
車体3の前側には、荷役装置(マスト装置)11がリーチシリンダ12の駆動により左右のリーチレグ4に沿って前後方向に移動(リーチ動作)可能に装備されている。荷役装置11は多段式(本例では3段式)マスト13と、左右一対のリフトシリンダ14(片側のみ図示)とを備え、荷役用のキャリッジ15はリフトシリンダ14が駆動されることによりスライド伸縮するマスト13に沿って昇降する。フォーク2は例えば最高約6メートルまで上昇する。
【0057】
フォークリフト1には、高所(高揚高範囲)におけるフォーク2の位置合わせ操作を支援する荷役操作支援装置(フォーク位置決め操作支援装置)20が設けられている。荷役操作支援装置20は、キャリッジ15を構成するサイドシフタ16の前面中央部に縦長に延びた状態に組付けられたカメラ昇降装置21を備える。カメラ昇降装置21は、キャリッジ15の前面中央部に組付けられたハウジング22内に格納される格納位置と、ハウジング22の下端から突出する下降位置間を昇降する昇降式のカメラユニット23を備えている。カメラユニット23はその下端部に撮影手段としてのCCDカメラ24を内蔵し、撮影部(レンズ部)24Aからフォーク前方の荷役作業エリアの撮影が可能となっている。また格納位置からでも、ハウジング22の前面下部に形成された撮影窓22Aを通してフォーク2の前方の荷役作業エリアをカメラ24によって撮影できるようになっている。つまりカメラ24によって格納位置と下降位置の二位置からフォーク2の正面(前方)を撮影できる。サイドシフタ16は左右に移動可能となっており、そのサイドシフト時はフォーク2とともにカメラ昇降装置21も一緒に左右にシフトするようになっている。
【0058】
また、ルーフ27には運転席9に立つ運転者からよく見える位置に表示装置(液晶ディスプレイ装置(LCD))28が取り付けられている。表示装置28の画面には、荷役作業時にカメラ24によって撮影されたフォーク2の前方エリア(棚やパレット)の画像が映し出されるようになっている。
【0059】
図2に示すように、フォークリフト1が例えば工場内に立設された棚30に対して荷取りまたは荷置き作業をするときには、まずフォーク2を目標とする格納部31の高さまで上昇させる。棚30の格納部31には荷32を載置したパレット33が格納されている。荷取作業時にはフォーク2をパレット33の差込穴33Aに相対するよう位置合わせをする。一方、荷置作業時にはフォーク2を格納部31の棚面(荷置面)34Aの上方所定高さ(棚面34Aから例えば10〜20cm上方の高さ)の位置に位置合わせする。本実施形態では、このような高所での荷役作業をする際に、カメラ24が撮影したフォーク2の前方エリアの画像を表示装置28の画面上で見られるとともに、その画像データを画像認識処理することによりフォーク2の目標位置に対するずれ量を算出して、フォーク2の位置合わせ作業を支援する。
【0060】
図3に示すように、本実施形態では、位置検出対象である棚30またはパレット33に対するフォーク2の相対位置を求めるため、棚30とパレット33には位置合わせの目標とするマークM1,M2が付されている。すなわち、パレット33の側面(正面)には2つの差込穴33A間の中央にパレット位置検出用のマークM1が貼り付けまたは印刷されている。一方、棚30の棚部(ビーム)34にはその正面中央に棚位置検出用のマークM2が貼り付けまたは印刷されている。本実施形態では、マークM1,M2は貼付用シート35でできており、この荷役システムを採用するユーザまたはメーカが、貼付用シート35を棚30やパレット33に貼付して使用する。ここで、パレット33に付されたマークM1と、棚30に付されたマークM2は図形は同じだが、白黒が反転した模様となっている。このマークM1,M2の模様の理由など詳しい内容は後述する。
【0061】
図4は、カメラ24で撮影されて表示装置28の画面28Aに表示された画像を示す。画面28Aの中央にはマークM1,M2があるべき位置を指す目標マーク38が表示される。この目標マーク38がパレット33に付されたマークM1に一致するようフォーク2を移動させることにより、フォーク2は差込穴33Aに一致する。一方、この目標マーク38が棚部34に付されたマークM2に一致するようフォーク2を移動させることにより、フォーク2は荷置きに最適な位置に位置合わせされる。本実施形態では、カメラ24で撮影された画像データを画像認識処理することで、画像上のマークM1,M2を位置検出する。
【0062】
図5は、マークとテンプレートを示す。同図(a)はパレット位置検出用のマークM1を示し、同図(c)は棚位置検出用のマークM2を示す。また同図(b)がマークM1用のテンプレートT1、同図(d)がマークM2用のテンプレートT2である。
【0063】
マークM1は同じパターンP1,P1を2個並べて構成され、マークM2は同じパターンP2,P2を2個並べて構成されている。ここで、マークというのは、同図(a),(c)の全体の模様、パターンというのはマークを構成する2つの模様を指す。画像認識処理としてパターンマッチング処理を採用する本実施形態では、パターンマッチング処理で使うテンプレートT1,T2にはパターンP1,P2と同じ模様が使用される。つまりテンプレートT1はパターンP1と同じ模様を有し、テンプレートT2はパターンP2と同じ模様を有する。
【0064】
パターンP1,P2はいずれも正方形の4頂点を対角に結ぶ2本の対角線を境界線とする4つの領域を白と黒で色分けされた模様である。但し、四角形の辺に相当する外形線は模様の一部ではない。この模様を言い換えれば、一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる4本の境界線によって白と黒に色分けされた模様である。パターンP1,P2の境界線はすべて中心(放射中心)を通る直線である。マークM1,M2のパターンP1,P2は、互いに白と黒が反転している模様である。
【0065】
パターンP1,P2の模様の特徴は、連続的に拡大しても常にそのパターンの中に元のサイズのパターンが含まれる模様である。言い換えれば、模様の大きさが連続的に変わっても中心部分(放射中心部分)のパターンが変化しない模様である。このような特徴をもつパターンP1,P2とテンプレートT1,T2を用いていることから、画面28A上に映し出されるマークM1,M2のサイズが撮影距離に応じて変化しても、常にその撮影されたパターンP1,P2の中心部分にはテンプレートT1,T2と同じサイズのパターンができる。つまりテンプレートT1,T2と相似な図形でテンプレートT1,T2より大きなものは、その中心部がテンプレートT1,T2そのものと同じパターンである。このため、マークM1,M2がどのようなサイズで映し出されても、マーク1つにつき1つのテンプレートT1,T2を用いたパターンマッチングによりマークM1,M2を認識できることになる。
【0066】
またパターンP1,P2の模様は、境界線が水平線に対して斜め(この例では45度)に走っている。例えば工場内には、棚30の柱や棚面34A、パレット33の上面や側面、荷物32の側面や上面など、縦や横の線(ライン)が比較的多い。しかし、パターンP1,P2の境界線が水平線に対して斜めに走っていることから、この種の縦や横のラインをマークM1,M2と誤認識することをより確実に低く抑えることが可能である。
【0067】
図8は、マーク1つに1つのテンプレートで済むパターンマッチング処理を説明するものである。同図(a)はテンプレートT1を示し、同図(b)〜(d)は、カメラとマークの距離に応じて画面上に映し出される種々の大きさのパターンP1を示す。同図(b)は標準サイズの50%の大きさ、同図(c)は標準サイズ、同図(d)は標準サイズの2倍の大きさのそれぞれパターンP1を示す。
【0068】
例えばテンプレートT1の大きさを同図(a)に示すように標準の50%の大きさに設定しておく。こうすれば、標準の50%以上の大きさに映っているマークM1を、その大きさが標準より大きくても小さくても全て認識することが可能になる。このため、テンプレートT1,T1の大きさを、マークM1,M2が認識される必要がある最小サイズのときのパターンサイズ(パターンP1,P2の大きさ)以下の大きさに設定しておけば、認識する必要がある大きさのマークM1,M2を全て認識することが可能となる。本実施形態では、荷役作業時に画面上に映し出されるマークの大きさを予測して、上記の点を考慮してテンプレートT1,T2の大きさが設定してある。
【0069】
図8に示すようなパターンP1は、1つのテンプレートT1を用いたパターンマッチング処理により認識されるので、画面28Aの画像データ上(画面座標系)においてパターンP1の中心(放射中心)の位置(座標)を計算できる。これによりパターンP1の位置を検出することが可能である。但し、パターン1つでは、パターンの位置は分かるがその大きさまでは分からない。そのため、本実施形態では、図5に示したように2つのパターンP1,P1(P2,P2)を配置したマークM1,M2を採用し、2つのパターンの各位置(座標)を基にマークの位置および大きさ、さらにはマークとカメラとの相対位置関係を求めるようにしている。本実施形態では、マークの位置・大きさと、マークとカメラの相対位置関係とを求めるため、2つのパターンP1,P1の位置(中心座標)とこの二点間の距離とを求めるようにしている。
【0070】
図7は画面上に設定された画面座標系を示す。画面座標系では座標を画素の単位で取り扱い、同図におけるHは画面28Aの横方向画素数であり、Vは画面28Aの縦方向画素数である。同図に示すような画面上の画像データに対しテンプレートT1を用いてパターンマッチング処理をする。そしてマークM1の重心(I,J)とパターンの中心間距離Dを求める。
【0071】
まず図9を用いてマークの位置および大きさを求める処理方法を説明する。同図(a)に示すようにパターンP1を2個並べたマークM1であるため、マークM1中の2箇所でマッチングし、2つのパターンP1,P1の各中心座標が計算される。この2点の座標が決まると、同図(b)に示すようにパターンP1,P1の中心間距離Dを計算する。距離Dが分かると同図(c)に示すようにマークM1の大きさを計算できる。本実施形態では、パターンP1が正方形(但し辺無し)であり、これを2つ並べたものがマークM1であることから、パターン中心間距離Dを用いて、マークM1の大きさは縦D、横2Dと計算できる。また2つのパターンP1,P1の中心座標を基にマークM1の重心座標(I,J)を計算する。本実施形態では、算出されたマークM1の位置および大きさのデータを基に画面28A上に表示されているマークM1に輪郭線を強調する表示処理を施し、認識中のマークM1を運転者に視覚的に知らせる手法を採用している。
【0072】
また本実施形態では、フォーク2の操作を支援するためにフォーク2の位置合わせ目標位置に対するずれ量を算出し、フォーク1を自動で位置合わせするフォーク位置決め制御を採用している。この場合、画面座標系だけでなくカメラ24とマークMとの実座標系の相対位置座標を計算する必要がある。本実施形態では、図6に示すような実座標系の3次元座標を想定している。すなわち、マークMの重心を原点Oとし、マークMに垂直な方向でカメラ24と逆の向きにX軸、X軸を水平面内で反時計回りに90度回転した方向にY軸、鉛直方向にZ軸をとる。そしてこの実座標系でカメラ24の相対座標(Xc,Yc,Zc)を求め、この相対座標を基にフォーク2の位置ずれ量を算出する。
【0073】
相対座標(Xc,Yc,Zc)を求めるために、図7に示す画面座標系において計算したマークM1の重心座標(I,J)とパターンP1,P1の中心間距離Dを使用する。そして画面座標系の座標(I,J)と距離Dの値を用いて、幾何変換を行って実座標系の相対座標(Xc,Yc,Zc)を計算する。この計算方法については後述する。
【0074】
次に、荷役操作支援装置20の電気的構成を説明する。
図10に示すように、荷役操作支援装置20はコントローラ40を備える。
コントローラ40は、カメラ昇降制御部41,画像制御部42、荷役制御部43、駆動回路44,45を備えている。
【0075】
カメラ昇降制御部41には、電動アクチュエータ47、上限位置検知スイッチ48,下限位置検知スイッチ49が電気的に接続されている。カメラ昇降制御部41は、荷役制御部43からの起動の指示に基づき電動アクチュエータ47の制御を行う。上限位置検知スイッチ48はカメラユニット23が上限位置に達したことを検知するもので、下限位置検知スイッチ49はカメラユニット23が下限位置に達したことを検知するものである。各位置検知スイッチ48,49によって、カメラユニット23の上限エンドと下限エンドが検知されたときに、電動アクチュエータ47の駆動が停止される。
【0076】
CCDカメラ24からの映像信号(画像信号)は、画像制御部42に入力される。画像制御部42は、画像生成部50および画像処理部51を備える。画像生成部50は映像信号から画像データを生成して表示装置28の画面28Aに撮影画像を表示させる。また画像制御部42は、音声アナウンスなどのための音声合成処理を行ってスピーカ53に音声信号を出力する。また画像処理部51には画像生成部50から画像データが入力される。
【0077】
画像処理部51は、画像生成部50で生成された画像データを基に画像上のマークM1,M2の位置を割り出す画像認識処理と、その認識結果に基づきフォーク2の自動位置制御に必要な画面座標系のデータを計算する演算処理を行う。画像処理部51は、画像認識手段としての画像認識処理部55、記憶手段としてのテンプレート記憶部56および画像演算部57を備えている。
【0078】
画像認識処理部55はパターンマッチング処理による画像認識処理を行う。テンプレート記憶部56には、パターンマッチング処理に使用するテンプレートT1,T2のデータが記憶されている。本実施形態では、図5(b),(d)に示すテンプレートT1,T2が記憶されている。画像認識処理部55は、画像データ上にテンプレートT1(T2)と一致するパターンがあるかどうかを調べるパターンマッチング処理を行い、テンプレートT1(T2)と一致するパターンがあればそれをマークM1(M2)のパターンP1(P2)と認識する。画像演算部57は、画像認識されることでパターンP1(P2)の位置が決まると、それぞれの位置座標(I1,J1),(I2,J2)を基に、マークM1(M2)に関する重心座標(I,J)と中心間距離Dを計算する。画像処理部51の処理内容については後述する。
【0079】
荷役制御部43には、荷役用の各レバー61〜64の操作を検知する各センサ65〜68、操作ボタンスイッチ69、揚高センサ70および荷重センサ71が電気的に接続されている。また荷役制御部43は、駆動回路44を介して荷役モータ72、各種電磁比例弁73〜76のソレノイドと電気的に接続されている。各種電磁比例弁73〜76は、オイルコントロールバルブ77に組付けられており、これらが比例制御されることにより荷役系の油圧制御が行われる。荷役モータ72は荷役ポンプ(油圧ポンプ)78を駆動するためのもので、荷役ポンプ78の駆動によってオイルコントロールバルブ77に作動油を供給する。荷役制御部43は、各センサ65〜68からの信号を基に電磁比例弁73〜76の電流値制御と荷役モータ72の駆動制御を行う。各レバー61〜64の操作に応じてそれぞれ対応するシリンダ12,14,79,80が駆動され、フォーク2の昇降操作、リーチ操作、サイドシフト操作、ティルト操作が可能となっている。
【0080】
荷役制御部43は、フォーク位置決め制御実行中においては画像処理部51からのデータを基にリフト用電磁比例弁73とサイドシフト用電磁比例弁75を電流値制御して、リフトシリンダ14とサイドシフトシリンダ79を駆動制御する。荷役制御部43は、このフォーク位置決め制御のために、相対座標算出部81、制御量算出部82、制御量指令部83および荷役駆動制御部84を備えている。相対座標算出部81は、画像演算部57で算出されたデータを基にマークMを原点とする実座標系におけるカメラ24の相対位置座標(Xc,Yc,Zc)を計算する。制御量算出部82は相対位置座標(Xc,Yc,Zc)から制御量を求める。制御量指令部83は荷役駆動制御部84に制御量を指令する。荷役駆動制御部84は、制御量の指令を受けると駆動回路44を介してリフト用電磁比例弁73とサイドシフト用電磁比例弁75を電流値制御して、フォーク2の位置合わせに必要なその制御量だけリフトシリンダ14とサイドシフトシリンダ79を駆動制御する。なお、各制御部41,42,43は、マイクロコンピュータおよびメモリ(ROM)等に格納されたプログラムデータによって構成される。また、画像演算部57及び相対座標算出部81により位置演算手段が構成される。
【0081】
操作ボタンスイッチ69は、例えばリフトレバー61のノブに設けられ、フォーク位置決め制御を行うときに運転者が操作するものである。荷役制御部43は、操作ボタンスイッチ69が操作された操作信号を入力すると起動準備モードに入る。本実施形態では、フォーク2が設定揚高(例えば約2メートル)以上の高さにあるときに限り、フォーク位置決め制御が行われるように設定されている。この起動準備モードに入った後、荷役制御部43は、揚高センサ70の検出値から分かるフォーク2の揚高を基にカメラ昇降制御部41を起動させるかどうかを判断する。揚高センサ70の検出値に基づきフォーク2の検出揚高が設定揚高以上にあるときだけフォーク位置決め制御の実行モード(自動位置決めモード)に入る。つまり、揚高が設定高さ以上であるときがカメラ昇降制御部41の起動条件となる。
【0082】
そして起動条件成立後、荷重センサ71の検出値から分かるフォーク2上の荷重(積載重量)を基に起動させるときの荷役モードを判断する。ところで、本実施形態では、荷役モードとして荷取モードと荷置モードを用意し、そのモードに応じてカメラユニット23の昇降位置(撮影位置)を切り替えるようにしている。つまり、フォーク2上に荷の無い荷取り時は、カメラユニット23が格納位置に保持されたままでも撮影できるが、フォーク2上に荷がある荷置き時は荷が撮影の邪魔になるため、カメラユニット23を下降位置に配置させるようにしている。荷取モードか荷置モードかは、荷重センサ71の検出信号を基にフォーク2上の荷の有無から判断する。荷役制御部43は、フォーク2上に荷が無いと判断したときは荷取モードを設定し、フォーク2上に荷があると判断したときは荷置モードを設定する。
【0083】
カメラ昇降制御部41は、荷役制御部43からの起動の指示に従って電動アクチュエータ47を制御し、荷取りモードでの起動の指示を受けたときはカメラユニット23を格納位置に配置された状態に保持する。一方、荷置きモードでの起動の指示を受けたときは電動アクチュエータ47を駆動させてカメラユニット23を下降位置に配置する。
【0084】
また荷役制御部43は、操作ボタンスイッチ69の操作を検知して起動準備モードに入ると、その旨を画像制御部42に伝える。画像処理部51では、荷取モードであればパレット位置検出用のマークM1を認識対象とし、荷置モードであれば棚位置検出用のマークM2を認識対象とする画像認識処理を実行する。つまり画像処理部51は、パターンマッチング処理時に、荷取モードであればテンプレートT1を使用し、荷置モードであればテンプレートT2を使用する。
【0085】
図12は、画像認識処理からフォーク位置制御までの制御処理の流れを説明するものである。
まず画像データを取得すると、画像認識処理部55がテンプレート記憶部56からテンプレートTを読み出してパターンマッチング処理を行う。画像演算部57は、画像認識処理部55で認識されたパターンの位置を基にマークMの重心座標(I,J)とパターン中心間距離Dを画面座標系(画素レベル)で算出する。ここで算出されたデータI,J,Dは、相対座標算出部81に送られる。
【0086】
相対座標算出部81は、データI,J,Dを基に、実座標系におけるカメラ24の相対座標OC(Xc,Yc,Zc) を算出する。ここで、図11に示すように、カメラ位置C、フォーク位置F、パレット位置P、マーク重心位置(原点)Oとすると、ベクトルFP=ベクトルOP−ベクトルOC−ベクトルCFの関係にあり、ベクトルCF,OPは既知情報である。制御量算出部82は、既知情報(ベクトルCF,OP)を用いてベクトルFPを求める。
【0087】
そして、制御量指令部83は、ベクトルFPが「0」になるような制御量指令値を荷役駆動制御部84に送る。但し、本実施形態では、フォーク2の上下方向および左右方向についてのみ自動位置制御をすることとしており、前後方向(リーチ方向)については運転者の操作に任せている。このため、制御量指令部83は、ベクトルFPのうちYZ成分を「0」とするよう算出したフォーク2の上下方向および左右方向の各シフト量を制御量指令値として荷役駆動制御部84に出力する。荷役駆動制御部84はこの制御量指令値を基に駆動回路44を介してリフトシリンダ14およびサイドシフトシリンダ79を駆動制御する。これによりフォーク2は上下方向および左右方向については自動で位置合わせされる。この結果、フォーク2は荷取モードの際はパレット33の差込穴33Aに位置決めされ、荷置モードの際は棚面34Aから所定距離上方の目標位置に位置合わせされる。なお、フォーク2のリーチ動作も自動制御で行ってもよい。
【0088】
次に、I,J,D値からカメラ24とマークM1の相対位置座標(Xc,Yc,Zc)を算出する計算方法について説明する。
図13は、実座標系でカメラとマークを上から見た図を示す。また図14は、実座標系と画面座標系について相似関係にあることを示す。同図左側がYZ平面内で、カメラ24に映っている部分を示したもので、同図右側が実際にカメラ24に映っている画像のIJ平面を示す。像の歪みを考慮しなければ、これらの2つの像は相似関係にある。
【0089】
表1は、実座標系と画面座標系の相似関係を示したものである。
【0090】
【表1】
Figure 0003921968
実座標系において撮影範囲の横幅は、2L・tanαで示され、これは画面座標系では画面28Aの横方向画素数Hとなる。ここで、図13に示すように、αは、カメラ24の水平画角の2分の1である。またLは、カメラ24とYZ平面間の距離であり、|Xc|に等しい(L=|Xc|)。また、実座標系におけるマークM1内の2つのパターンP1,P1の中心間距離dは、画面座標系では中心間距離Dとなる。つまり実座標系と画面座標系の相似比は、d:Dとなる。また、マークM1の中心(重心)である原点Oから像の中心までの横座標については、実座標系のYcが、画面座標系のI−H/2に相当する。マークM1の中心(重心)である原点Oから像の中心までの縦座標については、実座標系のZcが、画面座標系のJ−V/2に相当する。但し、Vは、画面28Aの縦方向画素数である。
【0091】
表1の相似関係を用いれば、カメラの座標(Xc,Yc,Zc)は次式より算出される。
Xc=−L=−Hd/(2Dtanα)
Yc=d/D(I−H/2)
Zc=d/D(J−V/2)
ここで、H,V,α,d値は既知の値であるため、I,J,D値を算出すれば、座標(Xc,Yc,Zc)が求まる。
【0092】
次に図15を用いて、マーク平面(YZ平面)内でのマーク回転角θを計算する方法を説明する。まず画像処理によりマークM1内に2つあるパターンP1,P1の中心座標(I1,J1)と(I2,J2)が求まる。次にパターンP1、P1の中心座標を用いて次の関係式が成り立つ。すなわち、tanθ=[(J2−J1)/(I2−I1)] である。この関係式を用いてマークM1の回転角θを求める。
【0093】
ここで、たとえフォーク2が正規の位置に位置合わせされても、車体の姿勢に対しパレット33が僅か(2,3度)に傾いているだけでフォーク2はパレット33の差込穴33Aに差し込まれない。本実施形態では、このような理由からフォーク2の上下方向と左右方向の位置制御は自動で行うが、パレット33の差込穴33Aにフォーク2を挿入する最後のリーチ動作は運転者自身が判断して操作するようにしている。このようにパレット33が僅か(2,3度)に傾いているときには、画面28A上の表示や音声アナウンスによってその旨を運転者に報知する。
【0094】
この実施の形態では、以下の効果が得られる。
(1)パターンを連続的に拡大しても常にそのパターンの中に元のサイズのパターンが含まれることになる模様をパターンとするテンプレートT1,T2を採用した。そして、テンプレートT1,T2と同じ模様のパターンをマークM1,M2に採用した。このため、撮影画像上のマークM1(M2)の大きさが遠近の違いによって変化しても、その大きさの異なるパターンP1(P2)を1つのテンプレートT1(T2)によって認識することができる。従って、パターンP1(P2)を認識する処理時間がかなり短縮される。この結果、パターンP1(P2)の位置を短時間で割り出すことができる。
【0095】
(2)マークM1(M2)を2つのパターンP1(P2)を並べて形成し、パターンP1,P1(P2,P2)の中心間距離Dを算出するようにしたので、画面上におけるマークM1(M2)の位置だけでなくマークM1(M2)の大きさも検出することができる。
【0096】
(3)マークM1(M2)を2つのパターンP1(P2)を並べて形成し、パターンP1,P1(P2,P2)の中心間距離Dを算出するようにしたので、マークM1(M2)とカメラ24との実座標系の3次元相対位置座標(Xc,Yc,Zc)を求めることができる。よって、フォーク2とパレット33の差込穴33Aまたは棚面34Aから所定距離上方の目標位置との位置ずれ量を求めることができる。これによりフォーク2の目標位置に対する位置合わせを支援する自動制御をすることができる。
【0097】
(4)また2つのパターンP1、P1(P2,P2)の各中心座標を使ってマークM1(M2)の傾き(回転角)θを検出することもできる。よって、フォークリフト1の車体3が左右に傾いていたり、パレット33が傾いていたときには、フォーク2をパレット33の差込穴33Aに差し込むことができない旨の警告を運転者に発することができる。
【0098】
(5)マークM1,M2を構成するパターンP1,P2は、一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線によって色分けされた模様からなる。よって、撮影されたマークの撮影画像上の大きさが遠近の違いによって変化しても、そのパターンP1(P2)の位置を1つのテンプレートT1(T2)によって認識することができ、パターンP1(P2)を認識する処理時間がかなり短縮される。また、パターンP1,P2は、一点を中心とする周方向に交互に白と黒の配色を付したので、コントラストがはっきりしてパターン以外のものをパターンと誤認識したり、パターンが認識されない認識漏れが減る。
【0099】
(6)パターンP1,P2は、一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びた4本の境界線によって色分けされた模様である。このようにパターンP1,P2は、例えば2本の境界線で色分けされた模様に比べ比較的複雑な図形となるため、工場内に存在する他の図形をマークと誤検出することが減る。
【0100】
(7)マークM1(M2)は、同一のパターンP1(P2)を2つ並べて形成されている。よって、2つのパターンP1(P2)を共通の1つのテンプレートT1(T2)により認識できるので、マークM1(M2)1つにつき1つのテンプレートT1(T2)を用意するだけで済む。
【0101】
(8)テンプレートT1,T2は、画像データ上に映し出されるマークM1,M2が認識されなければならない最小サイズにあるときのパターンサイズ以下のサイズに設定されている。よって、マークM1(M2)とカメラ24の距離によって撮影画像上のマークM1(M2)の大きさが変化しても、その際に最も小さなマークサイズに合わせてテンプレートT1,T2のサイズを設定しているので、マークM1(M2)1つにつきテンプレートT1(T2)が1つで済む。
【0102】
(9)マークM1,M2をパレット33または棚30に付した状態において、パターンP1,P2の境界線が水平線に対し斜めに延びるような模様のパターンP1,P2を採用したので、工場内に比較的多くある縦や横の線をマークM1,M2と誤検出する恐れをより確実に抑えることができる。
【0103】
なお、実施の形態は上記に限定されず、次の態様で実施することもできる。
○ 2つのパターンP1,P1(P2,P2)を横に並べる構成に限定されない。例えば図16に示すように、パターンP1,P2を縦方向に2つずつ並べてマークM3,M4を構成することもできる。マークが付される箇所の形状や種々の制限などにより縦長の方が都合がよい場合には同図のようなパターン配列をとることが好ましい。
【0104】
○ パターンは前記実施形態の模様に限定されない。例えば図17に示すようなパターンP5〜P10を持つマークM5〜M10を採用することができる。これらどのパターンも、連続的に拡大しても常にそのパターンの中に元のサイズのパターンが含まれる模様である。言い換えれば、パターンの大きさが連続的に変わっても中心部分のパターンが変化しない模様である。さらに詳しくは、一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線によって色分けされた模様である。これらの例では色分けは黒と白の二色である。同図(a),(b)は、4本の境界線によって白と黒に色分けされている。外形形状が(a)は四角形、(b)は丸形である。同図(C)は、外形が四角形で、8本の境界線によって白と黒に色分けされている。同図(d)は外形が六角形で、6本の境界線によって白と黒に色分けされている。同図(e)は外形が丸形で、4本の境界線によって白と黒に色分けされている。境界線が水平面に対して斜め(この例では45度)に走っている。同図(f)は外形が四角形で、4本の境界線によって白と黒に色分けされている。境界線は四角形の対角線を少し回転させた傾きとなっている。同図(c),(d),(e),(f)は、境界線が水平線に対して斜めに走っているので、縦や横の線(ライン)が比較的多い工場内で、パターン以外のものをパターンと誤認識してしまう不都合を一層確実に抑えることができる。よって、位置検出の精度を上げることができる。同図では各マークはパターンを横方向に2つ並ぶ構成であるが、もちろん縦方向に2つ並ぶ構成でもよい。またテンプレートT5〜T10は、前記実施形態と同様に認識しなければならない最小サイズ以下のサイズに設定され、例えば標準サイズの50%サイズに設定してある。
【0105】
○ マークを構成する2つのパターンは隣接していることに限定されない。例えば図18に示すように2つのパターンP1,P1を離して配置することもできる。2つのパターンの中心間距離(放射中心間距離)を一定(既知の値)に設定しておけば、座標(Xc,Yc,Zc)は計算できる。例えばパターンを2つ並べたサイズのマークを貼るだけの十分なスペースを確保できない場合、このようにパターンを分離配置することでパターンのサイズを小さくせずに済ませられ、例えばマークの認識可能な距離を長く設定することができる。
【0106】
○ 1つのマークにつきテンプレートは1つに限定されない。例えば標準サイズと、標準サイズの50%の2つ用意しても構わない。テンプレートを複数用意しても、従来技術で述べたスケール処理に比べテンプレート数は少なく済むので、認識処理時間は短縮できる。もちろん、テンプレートの数は3つ、4つ、5つ以上でも構わない。
【0107】
○ 境界線は3本でもよい。白と黒など2色の色分けはできないが、3色の色分けはすることができる。例えば白、黒、灰の3色でもよい。またカラー画像であれば、なるべく色調の異なる3色を適宜使用できる。
【0108】
○ 境界線は2本でもよい。境界線が2本であってもその2本のなす角度が180°以外であれば、中心点(放射中心点)が特定され、画像認識をすることはできる。白と黒の二色の色分けも可能である。
【0109】
○ 前記実施形態では2色で色分けしたが、色分けは2色に限定されない。3色、4色、5色以上であっても構わない。3色以上であっても色の違いを認識できる色の組合せであればパターンを認識することはできる。
【0110】
○ マークの2つのパターンは同一であることに限定されない。2つのパターンは模様が異なるものであっても構わない。この場合、1つのマークの認識に2つのテンプレートを用意する必要があるが、スケール処理に比べれば処理速度を短くすることはできる。また同じ模様で異なるサイズの2つのパターンを設けてもよい。
【0111】
○ 前記実施形態では、境界線が一点で交わるパターンの中心をパターンの位置座標として計算したが、パターンの位置座標はパターンの中心である必要はない。一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる境界線の放射中心であればよい。例えば放射中心がパターンの中心からずれていても構わない。放射中心座標であれば、パターンの大きさが撮影距離に応じて変化しても、パターンの位置を正確に算出することができる。
【0112】
○ マークの位置はその重心座標に限定されず、2つのパターンの中心座標のうち一方をそのままマークの位置座標として採用しても構わない。
○ マークは位置検出対象に付されていることに限定されない。位置検出対象と既知の所定位置関係にあるものにマークを付せば、位置検出対象を位置検出することはできる。前記実施形態では、パレットに付されたマークを位置検出することによりパレットを検出し、棚に付されたマークを位置検出することにより棚面上方の所定位置を検出するようにした。これとは逆に、パレットに付されたマークを位置検出することにより棚面上方位置を検出し、棚に付されたマークを位置検出することによりパレットを位置検出するようにしてもよい。パレットの棚面上における左右方向の位置のばらつきが許容される範囲であればこのような構成も可能である。
【0113】
○ 前記実施形態では、マークとカメラの距離が変わることが前提であるため、2つのパターンを並べたマークを採用していたが、例えばマークとカメラの距離が一定(固定)である場合は、パターン1つのマークを採用し、実座標系におけるマークとカメラとの相対位置を検出するようにしてもよい。例えば位置検出対象が列状に並んでいるその列に沿って一定距離を保ったままカメラを移動させてマークを位置検出する場合、あるいはこの逆で固定したカメラから一定距離離れた撮影域を通過する位置検出対象を位置検出する場合が挙げられる。また、例えば距離センサを用いてカメラと位置検出対象(例えば棚やパレット)との距離を得るようにすれば、マークとカメラとの実座標系の相対位置座標を求めることができる。
【0114】
○ 産業車両はリーチ型フォークに限定されない。カウンタバランス型フォークリフトでもよい。また荷役用のマストを備えたフォークリフト以外の産業車両であってもよい。無人フォークリフトに採用することもできる。さらに無人搬送車に適用してもよい。また産業車両や荷役システム以外の分野で、位置検出方法または位置検出装置を使用しても構わない。
【0115】
前記実施形態及び別例等から把握される技術的思想を、以下に記載する。
(1)前記マークは前記パターンを1つだけ有し、該1つのパターンを画像認識して該パターンに一義的に定まる点の位置を撮影画面上における前記マークの位置として割り出す。
【0116】
(2)前記マークは前記パターンを2つ有し、該2つのパターンを画像認識して該2つのパターンごとに一義的に定まる各点とこの二点間の距離とを求め、これらの値を基に前記カメラと前記マークの相対位置を算出する。
【0117】
(3)前記位置検出方法は、産業車両における位置検出において用いられる。
(4)前記テンプレートは、一点を中心に放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンをもつ。
【0118】
(5)前記境界線の本数は3本以上である。
(6)前記境界線が一点で交わる交点は前記パターンのほぼ中心に位置する。
【0119】
(7)前記位置検出装置は、産業車両における位置検出において用いられる。
(8)前記パレットと、前記前記棚と、前記産業車両とを備えた荷役システム。
【0120】
(9)前記パレットに付されたマークのパターンと、前記棚に付されたマークのパターンは、共に黒と白の二色からなるパターンで、互いに白と黒が反転したパターンである。
【0121】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項の発明によれば、マークのパターンの認識処理速度を速くすることができ、位置検出の処理時間を短くすることができる。
【0122】
請求項及び13の発明によれば、さらに撮影位置とマークとの実座標系における相対位置を効率よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施形態におけるフォークリフトの斜視図。
【図2】 棚に対する荷役作業の様子を示す側面図。
【図3】 格納部の正面図。
【図4】 画面図。
【図5】 マークとテンプレートを示す正面図。
【図6】 実座標系を説明する斜視図。
【図7】 画面座標系を説明する画面図。
【図8】 テンプレートの説明図。
【図9】 位置検出手法を説明する説明図。
【図10】 荷役操作支援装置の電気的構成を示すブロック図。
【図11】 位置制御方法を説明する説明図。
【図12】 位置制御方法の処理の流れを説明する説明図。
【図13】 実座標系を説明する平面図
【図14】 実座標系と画面座標系の相似関係を示す説明図。
【図15】 回転角の算出方法を説明する画面図。
【図16】 別例のマークを示す正面図。
【図17】 図16と異なる別例の正面図。
【図18】 別例のマークを付した棚とパレットの正面図。
【図19】 従来のパターンマッチング処理の説明図。
【符号の説明】
1…産業車両としてのフォークリフト、2…荷役具としてのフォーク、3…車体、11…荷役装置、13…マスト、15…キャリッジ、23…カメラユニット、24…撮影手段としてのカメラ、28…表示装置、28A…画面、30…位置検出対象としての棚、33…位置検出対象としてのパレット、40…コントローラ、50…画像生成部、51…画像処理部、55…画像認識手段としての画像認識処理部、56…記憶手段としてのテンプレート記憶部、57…位置演算手段を構成する画像演算部、81…位置演算手段を構成する相対座標算出部、M1〜M10…マーク、P1〜P10…パターン、T1,T2…テンプレート、D…放射中心間の距離としての中心間距離。

Claims (13)

  1. マークをカメラで撮影して得た画像データをパターンマッチング処理することで、前記マークのパターンを画像認識して位置を割り出す位置検出方法であって、
    前記マークは、連続的に拡大しても常にそのパターンの模様の中に元のサイズのパターンが一つだけ含まれるよう、一点を中心に放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンをもつとともに、各々の放射中心間の距離が既知の値に定められた2つの前記パターンを有しており、
    前記2つのパターンを画像認識して該パターンの各々の放射中心点と該二点間の距離とを算出して、これらの値を基に撮影画面上における前記マークの位置と大きさを割り出すことを特徴とする位置検出方法。
  2. マークをカメラで撮影して得た画像データをパターンマッチング処理することで、前記マークのパターンを画像認識して位置を割り出す位置検出方法であって、
    前記マークは、連続的に拡大しても常にそのパターンの模様の中に元のサイズのパターンが一つだけ含まれるよう、一点を中心に放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンをもつとともに、各々の放射中心間の距離が既知の値に定められた2つの前記パターンを有しており、
    前記2つのパターンを画像認識して該パターンの各々の放射中心点と該二点間の距離とを算出して、これらの値を基に前記カメラと前記マークの相対位置を算出することを特徴とする位置検出方法。
  3. 請求項1又は2に記載の位置検出方法において、
    前記マークは、一点を中心に放射状に真っ直ぐ延びる3本以上の境界線のみによって色分けされたパターンをもつ位置検出方法。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の位置検出方法において、
    前記2つのパターンは、同一の模様である位置検出方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の位置検出方法において、
    前記パターンは、4本以上の偶数本の前記境界線によって前記一点を中心とする周方向に交互に濃淡で色分けされている位置検出方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の位置検出方法において、
    前記パターンマッチング処理で用いられるテンプレートは、前記画像データ上に映し出されるマークが認識されなければならない最小サイズにあるときのそのパターンサイズ以下のサイズに設定されている位置検出方法。
  7. 位置検出対象に設けられるとともに2つのパターンを有するマークを撮影する撮影手段と、
    一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンからなるテンプレートを記憶する記憶手段と、
    前記マークを前記撮影手段で撮影して得た画像データを前記テンプレートを用いたパターンマッチング処理することで前記マークの2つのパターンを画像認識する画像認識手段と、
    前記認識された2つのパターンの各々の放射中心点と両二点間の距離とを算出して前記マークの位置と大きさを割り出す位置演算手段と
    を備えた位置検出装置
  8. 位置検出対象に設けられるとともに2つのパターンを有するマークを撮影する撮影手段と、
    一点を中心として放射状に真っ直ぐ延びる複数本の境界線のみによって色分けされたパターンからなるテンプレートを記憶する記憶手段と、
    前記マークを前記撮影手段で撮影して得た画像データを前記テンプレートを用いたパターンマッチング処理することで前記マークの2つのパターンを画像認識する画像認識手段と、
    前記認識された2つのパターンの各々の放射中心点と両二点間の距離とを算出して前記マークと撮影位置との相対位置を割り出す位置演算手段と
    を備えた位置検出装置
  9. 請求項7又は8に記載の位置検出装置において、
    前記2つのパターンは、同一のパターンである位置検出装置
  10. 請求項7〜9のいずれか一項に記載の位置検出装置において、
    前記パターンは、4本以上の偶数本の前記境界線によって前記一点を中心とする周方向に交互に濃淡で色分けされている位置検出装置
  11. 請求項10に記載の位置検出装置において、
    前記濃淡の色分けは、黒と白の色分けである位置検出装置。
  12. 請求項7〜11のいずれか一項に記載の位置検出装置において、
    前記マークが位置検出対象に設けられた状態において、前記パターンは水平線に対し斜めに延びている境界線を有する位置検出装置。
  13. 請求項7〜12のいずれか一項に記載の位置検出装置において、
    前記テンプレートは、前記画像データ上に映し出されるマークが認識されなければならない最小サイズにあるときのそのパターンサイズ以下のサイズに設定されている位置検出装置。
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