JP3920485B2 - 画像記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外〜赤外領域にある各種光源の利用が可能な単色または多色の転写型の感光感熱材料を用いた画像記録方法に関し、詳しくは、カラープルーフ等に適用しうる、記録スピードが速く、感度に優れるため書き込み用レーザーが低コストの画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液状の現像剤等を用いないドライタイプの画像記録方法が種々検討されており、直接画像形成を行うものとしては、光により硬化する組成物を用いる方法が注目されており、例えば、特開平3−87827号公報、同4−211252号公報等に開示されている。一方、転写により画像形成を行うものとしては、所定の記録材料の有色成分をサーマルヘッドやレーザーを用いて受像材料に移動(転写)させる方法がよく検討されている。
【0003】
前者光により硬化する組成物を用いる方法は、露光することによって、記録材料中に含まれる、光により硬化する組成物が硬化することにより潜像が形成され、一方、記録材料中の未露光部に含まれる、加熱により発色若しくは消色反応に作用する成分が記録材料内で移動し色画像を形成することを特徴とする。このような方式の記録材料を用いる場合、まず、光を画像原稿を通して記録材料上に露光し、該露光部を硬化させて潜像を形成した後、この記録材料を加熱することにより、未硬化部分(未露光部分)に含まれる発色若しくは消色反応に作用する成分を移動させ、可視画像を形成する。
この方式によれば、廃棄物の発生のない完全ドライシステムを実現することができる。
しかし、これらの記録材料は様々な用途に適用できるものの、いずれもUV光、短波可視光以外の光源では画像記録できず、小型で安価な赤外レーザーや緑〜赤色光を用いた使用は不可能であった。さらに、これらの記録材料はさまざまな用途に使用しうるものの、この方法のみによっては得られた画像を用途に応じて所望の支持体上に自由に再現することは困難である。
【0004】
後者転写方式に用いる記録方法には、昇華型染料と結合剤とを含有する記録材料を用いる方式や、顔料や染料と結合剤とを含有する熱溶融性の記録層を転写する方式などがある。
このうち、昇華型染料を用いる方式では、画像の鮮鋭度や耐久性に劣り、熱溶融性の記録層を用いる方法では、感熱感度が高く、安価であるが、階調再現性や色再現性に問題があった。従って、簡単なプロセスで感度、画像再現性に優れた記録材料、特に、カラープルーフなどに利用しうる鮮鋭度が高く、色相再現性に優れた転写式の記録材料が所望されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、現像液等の使用が不要な完全ドライの処理系で、青〜赤色レーザー、または小型で安価な赤外レーザー等を用いて記録することができ、かつ高感度で、鮮鋭度が高く、色相再現性に優れた高画質な画像を形成できる、転写方式を採用した画像記録方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
小型で安価な赤外レーザーや青〜赤色光等を用いて記録することができ、かつ高感度で、コントラストの高い高画質な画像を形成できる白黒若しくはカラーの感光感熱記録材料として、本発明者らは、先に特願平11−36308号を出願したが、これを先の転写方式に用いることにより、カラープルーフとして用いるのにも適する、高感度で、鮮鋭度が高く、色相再現性に優れた高画質な画像を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の画像記録方法は、支持体上に、感光感熱転写層と熱接着層とを順次積層してなる感光感熱転写材料に光照射により潜像を形成する潜像形成工程と、感光感熱転写材料の熱接着層表面と受像材料とを密着させて加熱し、加熱により発色成分が潜像に応じて発色し、画像形成する発色工程と、支持体を剥離して感光感熱転写層を受像材料に転写する転写工程と、感光感熱転写層表面を光照射して形成画像を定着する画像定着工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記感光感熱転写層として、互いに異なる発色色相をもつ発色成分を含有する複数の感光感熱記録層を積層してなるものを用いる多色感光感熱転写材料を用いることができる。
前記複数の感光感熱転写層を有する多色感光感熱転写材料を用いる場合、複数の感光感熱転写層の各層に対して、それぞれの感光感熱転写層に含有する発色成分に応じた光照射を行って全ての層に潜像を形成する潜像形成工程を施して、各色相の潜像を形成させた後、この材料に対して、前記発色工程、転写工程、画像定着工程を順次行って画像記録を行ってもよく、また、互いに異なる発色色相をもつ感光感熱転写層を有する複数の感光感熱転写材料のうち一つの材料に対して、光照射を行う潜像形成工程を施した後、前記発色工程、転写工程を順次行い、それぞれの色相に関して潜像形成、発色、転写を行った後、画像定着工程を行うこともできる。
ここで、前記互いに異なる発色色相が、黒、シアン、マゼンタ、イエローである複数の感光感熱転写層を有することによりフルカラーの画像記録が達成できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像記録方法及びそれに好適に用いうる感光感熱転写材料について、詳細に説明する。
本発明の画像記録方法に使用する感光感熱記録材料は、支持体上に、感光感熱転写層と熱接着層とを順次積層してなる感光感熱転写材料であり、支持体、感光感熱転写層、熱接着層がこの順に配置されていれば、公知のその他の層、例えば、保護層、中間層、UV吸収層等がいずれかの位置に形成されていてもよい。感光感熱転写層が一層であれば、単色の記録材料であり、互いに異なる発色色相をもつ発色成分を含有する複数の感光感熱転写層を積層してなるものを用いる場合には多色の記録材料となる。
【0010】
本発明の画像記録方法に適用しうる感光感熱転写材料の感光感熱転写層(画像記録層)の好ましい態様としては、(a)発色成分Aを内包した熱応答性マイクロカプセルと、該マイクロカプセル外に、少なくとも、同一分子内に重合性基と前記発色成分Aと反応して発色する部位とを有する実質的に無色の化合物Bと、光重合開始剤と、からなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱転写層、又は、(b)発色成分Aを内包した熱応答性マイクロカプセル、該マイクロカプセル外に、少なくとも、前記発色成分Aと反応して発色する実質的に無色の化合物Cと、同一分子内に重合性基と前記発色成分Aと化合物Cとの反応を抑制する部位とを有する実質的に無色の化合物Dと、光重合開始剤と、からなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱転写層等が挙げられ、上記(a),(b)における感光感熱転写層を、単一層または2層以上設けることにより構成される。
【0011】
上記感光感熱転写層(a)は、所望の画像形状に露光することにより、マイクロカプセル外部にある光重合性組成物が、光重合開始剤から発生するラジカルにより重合反応を起こして硬化し、所望の画像形状の潜像を形成する。次いで、加熱することにより未露光部分に存在する前記化合物Bが記録材料内を移動し、カプセル内の発色成分Aと反応し発色する。
従って、露光部では発色せず、未露光部の硬化されなかった部分が発色し画像を形成するポジ型の感光感熱転写層である。
【0012】
上記感光感熱転写層(b)は、所望の画像形状に露光することにより重合性基を有する前記化合物Dが、露光により反応した光重合開始剤から発生するラジカルにより重合して膜が硬化し、所望の画像形状の潜像を形成する。この潜像(硬化部)の持つ膜性に依存して、前記化合物Cが移動し、カプセル内の発色成分Aと反応して画像を形成する。
従って、露光部が発色して、画像を形成するネガ型の感光感熱転写層である。
【0013】
また、本発明において、支持体上に複数の感光感熱転写層を形成して構成される感光感熱転写材料も用いることができる。この場合にそれぞれ異なる色相に発色する発色成分をカプセル中に存在させた単色の感光感熱記録層を複数積層した感光感熱転写材料を用い、それぞれの層に含まれる発色成分に応じた光照射を行うことにより多色画像を実現することができる。
【0014】
上記感光感熱転写層の具体的態様として、下記(1),(2)のものが挙げられる。
(1)特開平3−87827号に記載の、マイクロカプセル外部に、電子受容性基と重合性基を同一分子内に有する化合物、光重合開始剤を含有する光硬化性組成物およびマイクロカプセルに内包された電子供与性無色染料を含有する感光感熱記録層を感光感熱転写層として用いる。
この感光感熱転写層においては、露光によりマイクロカプセル外部にある光硬化性組成物が重合して硬化し、潜像が形成される。その後、加熱により未露光部分に存在する電子受容性化合物が記録材料内を移動し、マイクロカプセル内の電子供与性無色染料と反応、発色する。従って、露光部の硬化した潜像部分は発色せず、硬化されなかった部分のみが発色し、コントラストの高い鮮明なポジ画像を形成することができる。
【0015】
(2)特開平4−211252号に記載の、マイクロカプセル外部に電子受容性化合物、重合性ビニルモノマー、光重合開始剤およびマイクロカプセルに内包された電子供与性無色染料を含有する感光感熱記録層を感光感熱転写層として用いる。
この機構は明確ではないが、露光によりマイクロカプセル外部に存在するビニルモノマーが重合される一方、露光部分に共存する電子受容性化合物は、形成された重合体には全く取り込まれず、むしろビニルモノマーとの相互作用が低下して、拡散速度の高い移動可能な状態で存在する。
一方、未露光部の電子受容性化合物は、共存するビニルモノマーにトラップされて存在するため、加熱した際、露光部における電子受容性化合物が優先的に記録材料内で移動し、マイクロカプセル内の電子供与性無色染料と反応するが、未露光部の電子受容性化合物は、加熱してもカプセル壁を透過できず、電子供与性無色染料と反応せず、発色に寄与できないためと考えられる。従って、この感光感熱記録材料では、露光部分が発色し、未露光部分では発色せずに画像を形成するため、コントラストの高い鮮明なネガ画像を形成することができる。
【0016】
本発明の画像記録方法は、上記のような感光感熱転写材料を用いた画像記録方法であり、少なくとも、画像露光により光重合性組成物が潜像を形成する露光工程と、感光感熱転写材料の熱接着層表面と受像材料とを密着させて加熱し、加熱により発色成分が潜像に応じて発色し、画像形成する発色工程と、支持体を剥離して感光感熱転写層を受像材料に転写する転写工程と、感光感熱転写層表面を光照射して形成画像を定着し、光重合開始剤成分を消色する定着工程と、を有する画像記録方法である。
【0017】
上記露光工程では、層中の光重合性組成物が、所望の画像形状のパターンに応じて、その画像形状に露光され、潜像を形成し、その後、発色工程で前記感光感熱転写材料の熱接着層表面と受像材料とを密着させて加熱することにより感光感熱転写層中に含まれる発色成分と、発色成分と反応して発色する化合物、或いは、化合物中の発色する特定の基と、が反応して、予め形成された潜像の形状に発色し、画像を形成するとともに、熱接着層表面と受像材料とが熱接着される。
【0018】
上記露光工程で画像形成用に用いる光源としては、感光感熱転写層中に特定領域に吸収を有する分光増感化合物等の光吸収材料を用いることにより、紫外〜赤外領域に光源波長を有する光源から任意に選択して使用することができる。具体的には、最大吸収波長が300〜1000nmの範囲にある光源が好ましい。
この場合、使用する分光増感化合物等の光吸収材料の吸収波長に適合する波長を有する光源を適宜選択して用いることが好ましい。上記のように光吸収材料を選択的に使用することにより、青〜赤色の光源や小型で安価な赤外レーザー等を使用することができ、用途が広がるだけでなく、高感度化、高鮮鋭化を図ることができる。
上記の中でも、特に、青色、緑色、赤色等のレーザー光源またはLEDを用いることが、装置の簡易小型化、低コスト化を達成しうる点で好ましい。
【0019】
本発明の画像記録方法においては、上記発色工程を経た後に、支持体を剥離すると前記感光感熱転写層は熱接着層表面を介して受像材料と接着されて受像材料側に転写画像が形成される。その後、感光感熱転写層表面の全面をさらに特定の光源により光照射することにより、上記発色工程で形成された画像を定着し、かつ記録層中に残存する光重合開始剤成分を失活させ、光重合開始剤成分による着色を防止する定着工程を設ける。この定着工程を経ることにより、非画像部の白色性を高めることができ、化学的に安定した転写画像を得ることができる。また、発色成分にジアゾニウム塩化合物を用いた場合には、画像形成後の記録層中に残存するジアゾニウム塩化合物をも光照射により失活させることができるため、形成画像の濃度変動、変色等を効果的に防止して、画像部の保存安定化にも寄与しうる。
【0020】
上記定着工程で用いることのできる光源としては、水銀灯、超高圧水銀灯、無電極放電型水銀灯、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、蛍光灯等の幅広い光源を好適に用いることができる。
上記のうち、感光感熱転写材料の感光感熱転写層中に用いる光重合開始剤の吸収波長に適合した波長を有する光源を適宜選択して使用することが好ましい。
【0021】
定着工程での上記光源を用いた光照射の方法としては、特に限定されるものではなく、記録層表面全面を一度に照射する方法でも、スキャニング等により記録面を徐々に光照射し最終的に全面を照射する方法でもよいが、ほぼ均一の照射光を用いて、最終的に画像形成後の感光感熱転写材料の記録面全体に照射することができる方法であればよい。このように、転写層全体を光照射することが本発明の効果をより効果的に奏する観点から好ましい。
上記光源を用いて光照射する時間は、形成画像が定着し、地肌部を十分に消色しうるのに要する時間照射する必要があるが、数秒〜数十分の範囲で照射することが十分な画像定着性と消色性を得る観点から好ましいが、数秒〜数分の範囲で照射することがより好ましい。
【0022】
次に、上記本発明の画像記録方法に用いる本発明の感光感熱転写材料について説明する。本発明の感光感熱転写材料の基本的な構成としては、上述の感光感熱転写材料(a),(b)に該当するものが挙げられる。
以下に、本発明の感光感熱転写材料に用いられる構成成分について、詳述する。
感光感熱転写層中のマイクロカプセルに内包する発色成分Aとしては、実質的に無色の電子供与性無色染料またはジアゾニウム塩化合物が挙げられる。
【0023】
上記電子供与性無色染料としては、従来より公知のものを使用することができ、前記化合物Bまたは化合物Cと反応して発色するものであれば全て使用することができる。
これら、発色成分の具体例は、前述の特願平11−36308号明細書中に記載の化合物、例えば、電子供与性化合物としては、段落番号[0051]〜段落番号[0059]に記載のものが挙げられる。本発明の感光感熱転写材料をフルカラー記録材料として用いる場合のシアン、マゼンタ、イエローの各発色色素用の電子供与性無色染料としては、同明細書段落番号[0060]に記載されている。
【0024】
上記電子供与性無色染料は、感光感熱転写層中に0.1〜1g/m2 の範囲で使用することが好ましく、0.1〜0.5g/m2 の範囲で使用することがより好ましい。上記使用量が、0.1g/m2 未満では、十分な発色濃度を得ることができず、1g/m2 を超えると、塗布適性が劣化するため好ましくない。
【0025】
上記ジアゾニウム塩化合物としては、下記式で表される化合物を挙げることができる。
Ar−N2 + X-
〔式中、Arは芳香族環基を表し、X- は酸アニオンを表す。〕
【0026】
このジアゾニウム塩化合物は加熱によりカプラーとカップリング反応を起こして発色したり、また光によって分解する化合物である。これらはAr部分の置換基の位置や種類によって、その最大吸収波長を制御することが可能である。
【0027】
本発明に用いられるジアゾニウム塩化合物の最大吸収波長λmax は、450nm以下であることが効果の点から好ましく、290〜440nmであることがより好ましい。また、本発明において用いられるジアゾニウム塩化合物は、炭素原子数が12以上で、水に対する溶解度が1%以下で、かつ酢酸エチルに対する溶解度が5%以上であることが望ましい。
【0028】
本発明の画像記録方法に好適に使用しうるジアゾニウム塩化合物の具体例としては、前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0064]〜段落番号[0075]に例示されたもの等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明において、ジアゾニウム塩化合物は、単独で用いてもよいし、さらに色相調整等の諸目的に応じて、2種以上を併用することもできる。
【0030】
上記ジアゾニウム塩化合物は、感光感熱転写層中に0.01〜3g/m2 の範囲で使用することが好ましく、0.02〜1.0g/m2 がより好ましい。0.01g/m2 未満では、十分な発色性を得ることができず、3g/m2 を超えると、感度が低下したり、定着時間を長くする必要が生じるため好ましくない。
【0031】
感光感熱転写層中に使用する、同一分子内に重合性基と前記発色成分Aと反応して発色する部位とを有する実質的に無色の化合物Bとしては、重合性基を有する電子受容性化合物または重合性基を有するカプラー化合物等の前記発色成分Aと反応して発色し、かつ光に反応して重合し、硬化するという両機能を有するものであれば全て使用することができる。
【0032】
上記重合性基を有する電子受容性化合物、即ち、同一分子中に電子受容性基と重合性基とを有する化合物としては、重合性基を有し、かつ前記発色成分Aの一つである電子供与性無色染料と反応して発色し、かつ光重合して膜を硬化しうるものであれば全て使用することができる。
上記重合性基を有する電子受容性化合物としては、特開平4−226455号に記載の3−ハロ−4−ヒドロキシ安息香酸エステル、特開昭63−173682号に記載のヒドロキシ基を有する安息香酸のメタアクリロキシエチルエステル、アクリロキシエチルエステル、同59−83693号、同60−141587号、同62−99190号に記載のヒドロキシ基を有する安息香酸とヒドロキシメチルスチレンとのエステル、欧州特許29323号に記載のヒドロキシスチレン、特開昭62−167077号、同62−16708号に記載のハロゲン化亜鉛のN−ビニルイミダゾール錯体、同63−317558号に記載の電子受容性化合物等を参考にして合成できる化合物等が挙げられる。
これらの電子受容性基と重合性基とを同一分子内に有する化合物のうち、下記一般式で表される3−ハロ−4−ヒドロキシ安息香酸エステルが好ましい。
【0033】
【化1】
Figure 0003920485
【0034】
〔式中、Xはハロゲン原子を表し、中でも塩素原子が好ましい。Yは重合性エチレン基を有する1価の基を表し、中でもビニル基を有するアラルキル基、アクリロイルオキシアルキル基またはメタクリロイルオキシアルキル基が好ましく、炭素数5〜11のアクリロイルオキシアルキル基または炭素数6〜12のメタクリロイルオキシアルキル基がより好ましい。Zは、水素原子、アルキル基またはアルコキシル基を表す。〕
【0035】
上記重合性基を有する電子受容性化合物としては、3−ハロ−4−ヒドロキシ安息香酸エステルその他の具体例として、前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0082]〜段落番号[0087]に例示されたもの等が挙げられる。
【0036】
上記重合性基を有する電子受容性化合物は、前記電子供与性無色染料と組合わせて用いられる。
この場合、電子受容性化合物は、使用する電子供与性無色染料1重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で使用することが好ましく、3〜10重量部の範囲で使用することがより好ましい。0.5重量部未満では、十分な発色濃度を得ることができず、20重量部を超えると、感度が低下したり、塗布適性が劣化することになり好ましくない。
【0037】
また、感光感熱転写層に使用する前記重合性基を有するカプラー化合物としては、重合性基を有し、かつ前記発色成分Aの一つであるジアゾニウム塩化合物と反応して発色し、かつ光重合して膜を硬化しうるものであれば全て使用することができる。
カプラー化合物は、塩基性雰囲気および/または中性雰囲気でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成するものであり、色相調整等種々の目的に応じて、複数種を併用して用いることができる。
カプラー化合物の具体例としては、前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0090]〜段落番号[0096]に例示されたもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
上記カプラー化合物は、感光感熱転写層中に、0.02〜5g/m2 の範囲で添加することができ、効果の点から、0.1〜4g/m2 の範囲で添加することがより好ましい。添加量が0.02g/m2 未満では発色性に劣るため好ましくなく、5g/m2 を越えると、塗布適性が悪くなることから好ましくない。
【0039】
上記カプラー化合物は、前記ジアゾニウム塩化合物と組合わせて用いる。
この場合、カプラー化合物は、ジアゾニウム塩化合物1重量部に対し、0.5〜20重量部の範囲で用いることが好ましく、1〜10重量部の範囲で用いることがより好ましい。0.5重量部未満では、十分な発色性を得ることができず、20重量部を超えると、塗布適性が劣化することになり好ましくない。
【0040】
カプラー化合物は、その他の成分とともに水溶性高分子を添加して、サンドミル等により固体分散して用いることもできるが、適当な乳化助剤とともに乳化し、乳化物として用いることもできる。ここで、固体分散または乳化する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を使用することができる。これらの方法の詳細については、特開昭59−190886号、特開平2−141279号、特開平7−17145号に記載されている。
【0041】
本発明においては、カップリング反応を促進する目的で、第3級アミン類、ピペリジン類、ピペラジン類、アミジン類、フォルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類等の有機塩基を用いることができる。
【0042】
これらは、具体的には、特開昭57−123086号、特開昭60−49991号、特開昭60−94381号、特開平9−71048号、特開平9−77729号、特開平9−77737号等に記載されている。
【0043】
有機塩基の使用量は、特に限定されるものではないが、ジアゾニウム塩1モルに対して、1〜30モルの範囲で使用することが好ましい。
【0044】
さらに、発色反応を促進させる目的で、発色助剤を加えることもできる。
発色助剤としては、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、アルコキシ置換ベンゼン類、アルコキシ置換ナフタレン類、ヒドロキシ化合物、カルボン酸アミド化合物、スルホンアミド化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、カプラー化合物または塩基性物質の融点を低下させる、或いは、マイクロカプセル壁の熱透過性を向上させる作用を有することから、高い発色濃度が得られるものと考えられる。
【0045】
また、本発明においては、前記発色成分Aと反応して発色する化合物として、前記のような重合性基を有する化合物Bに代えて、重合性基を有しない、発色成分Aと反応して発色する実質的に無色の化合物Cを使用することもできる。
但し、化合物Cは重合性基を有さないため、記録層に光重合による膜硬化作用を付与する必要があることから、他に重合性基を有する化合物Dを併用して用いる。化合物Dは、用いる上記化合物Cに応じて適合する化合物D、即ち、特定の光重合性モノマー(D1 、D2 )を選択して用いる。
【0046】
上記化合物Cとしては、重合性基を有しない全ての電子受容性化合物またはカプラー化合物を使用することができる。
重合性基を有しない電子受容性化合物としては、前記発色成分Aの一つである電子供与性無色染料と反応して発色しうるものであれば、全て使用することができる。
【0047】
重合性基を有しない電子受容性化合物としては、例えば、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、芳香族カルボン酸の金属塩、酸性白土、ペントナイト、ノボラック樹脂、金属処理ノボラック樹脂、金属錯体等が挙げられる。
具体的には、特公昭40−9309号、特公昭45−14039号、特開昭52−140483号、特開昭48−51510号、特開昭57−210886号、特開昭58−87089号、特開昭59−11286号、特開昭60−176795号、特開昭61−95988号等に記載されている。
上記の具体的な化合物としては、前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0109]〜段落番号[0110]に例示されたもの等が挙げられる。
【0048】
上記重合性基を有しない電子受容性化合物を使用する場合は、用いる電子供与性無色染料の使用量に対して5〜1000重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0049】
重合性基を有しない電子受容性化合物を用いる場合、化合物D、即ち、特定の光重合性モノマーD1 を併用するが、該光重合性モノマーD1 としては、電子供与性無色染料と電子受容性化合物との反応抑制機能を有し、分子内に少なくとも1個のビニル基を有する光重合性モノマーであることが好ましい。
具体的には、アクリル酸およびその塩、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類;メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド類;無水マレイン酸、マレイン酸エステル類;イタコン酸、イタコン酸エステル類;スチレン類;ビニルエーテル類;ビニルエステル類;N−ビニル複素環類;アリールエーテル類;アリルエステル類等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、特に、分子内に複数のビニル基を有する光重合性モノマーを使用することが好ましく、例えば、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等の多価アルコール類のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル;レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール等の多価フエノール類やビスフエノール類のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル;および、アクリレートまたはメタクリレート末端エポキシ樹脂、アクリレートまたはメタクリレート末端ポリエステル等が挙げられる。
【0051】
中でも、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ヘキサンジオール−1,6−ジメタクリレートおよびジエチレングリコールジメタクリレート等が特に好ましい。
【0052】
上記光重合性モノマーD1 の分子量としては、約100〜約5000が好ましく、約300〜約2000がより好ましい。
【0053】
上記光重合性モノマーD1 は、前記発色成分Aと反応して発色する実質的に無色の化合物C1重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で使用することが好ましく、0.5〜5重量部の範囲で使用することがより好ましい。0.1重量部未満では、露光工程で潜像を形成することができず、10重量部を超えると、発色濃度が低下するため好ましくない。
【0054】
前記の重合性基を有しないカプラー化合物としては、前記発色成分Aの一つであるジアゾニウム塩化合物と反応して発色しうるものであれば全て使用することができる。
上記重合性基を有しないカプラー化合物は、塩基性雰囲気および/または中性雰囲気でジアゾニウム塩化合物とカップリングして色素を形成するものであり、色相調整等種々目的に応じて、複数種を併用することが可能である。
【0055】
重合性基を有しないカプラー化合物としては、カルボニル基の隣にメチレン基を有するいわゆる活性メチレン化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体などを挙げることができ、本発明の目的に合致する範囲で適宜、選択して使用することができる。
【0056】
上記重合性基を有しないカプラー化合物の具体例としては、前述の特願平11−36308号明細書の段落番号[0119]〜段落番号[0121]に記載のものが挙げられる。
【0057】
重合性基を有しないカプラー化合物の詳細は、特開平4−201483号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平7−323660号、特開平5−278608号、特開平5−297024号、特開平6−18669号、特開平6−18670号、特開平7−316280号、等の公報に記載されており、本願出願人が先に提出した特願平8−12610号、特願平8−30799号、特開平9−216468号、特開平9−216469号、特開平9−319025号、特開平10−35113号、特開平10−193801号、特開平10−264532号等に記載されたものも参照できる。
【0058】
重合性基を有しないカプラー化合物は、重合性基を有するカプラー化合物の場合同様、感光感熱転写層中に0.02〜5g/m2 の範囲で添加することが好ましく、効果の点から0.1〜4g/m2 の範囲で添加することがより好ましい。添加量が0.02g/m2 未満では十分な発色濃度を得ることができなず、5g/m2 を越えると、塗布適性が悪くなることため好ましくない。
【0059】
カプラー化合物は、その他の成分とともに水溶性高分子を添加して、サンドミル等により固体分散して用いることもできるが、適当な乳化助剤とともに乳化し、乳化物として用いることもできる。ここで、固体分散または乳化する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を使用することができる。これらの方法の詳細は、特開昭59−190886号、特開平2−141279号、特開平7−17145号に記載されている。
【0060】
また、カップリング反応を促進する目的で、第3級アミン類、ピペリジン類、ピペラジン類、アミジン類、フォルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類等の有機塩基を用いることができる。
ここで用いる有機塩基は、上述の重合性基を有するカプラー化合物の場合と同様のものを挙げることができる。また、ここで使用できる有機塩基の使用量も同様である。
【0061】
また、発色反応を促進させる目的で用いる発色助剤も上述の重合性基を有するカプラー化合物の場合と同様のものを使用することができる。
【0062】
上記重合性基を有しないカプラー化合物を用いる場合、化合物D、即ち、特定の光重合性モノマーD2 を併用して用いるが、該光重合性モノマーD2 としては、カップリング反応の抑制効果を有する酸性基を有し、金属塩化合物でない光重合性モノマーであることが好ましい。
【0063】
上記光重合性モノマーD2 としては、例えば、前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0128]〜段落番号[0130]に記載のものが挙げられる。
【0064】
上記光重合性モノマーD2 は、前記発色成分Aと反応して発色する実質的に無色の化合物C1重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で使用することが好ましく、0.5〜5重量部の範囲で使用することがより好ましい。0.1重量部未満では、露光工程で潜像を形成することができず、10重量部を超えると、発色濃度が低下することになり好ましくない。
【0065】
次に、本発明の感光感熱転写材料の感光感熱転写層中に使用する光重合開始剤について説明する。
この光重合開始剤は、前記の感光感熱転写材料(a),(b)のいずれにも使用し、光露光することによりラジカルを発生して層内で重合反応を起こし、かつその反応を促進させることができる。この重合反応により記録層膜は硬化し、所望の画像形状の潜像を形成することができる。
【0066】
上記光重合開始剤は、300〜1000nmに最大吸収波長を有する分光増感化合物と、該分光増感化合物と相互作用する化合物と、を含有するものであることが好ましいが、上記分光増感化合物と相互作用する化合物が、その構造内に300〜1000nmに最大吸収波長を有する色素部とボレート部との両機能を併せ持つ化合物であれば、上記分光増感色素を用いなくてもよい。
本発明の画像形成方法は、これらを含む光重合開始剤を含有する感光感熱転写層を有する感光感熱転写材料を用いた画像記録方法である。
【0067】
300〜1000nmに最大吸収波長を有する分光増感化合物としては、この波長領域に最大吸収波長を有する分光増感色素が好ましい。上記波長領域にある分光増感色素から所望の任意の色素を選択し、用いる光源に適合するよう感光波長を調整する目的で使用することにより、高感度を得ることができ、また、画像露光に用いる光源に、青色、緑色、赤色の光源や赤外レーザー等を好適に選択することができる。
従って、例えば、異なる色相に発色する単色の感光感熱転写層を積層した多色の感光感熱転写材料を用いてカラー画像を形成するような場合に、発色色相の異なる各単色層中に異なる吸収波長を有する分光増感色素を存在させ、その吸収波長に適合した光源を用いることにより、複数層積層した記録材料であっても、各層(各色)が高感度で、かつ高鮮鋭な画像を形成するため、多色の感光感熱転写材料全体として、高感度化と高鮮鋭化を達成することができる。
【0068】
上記分光増感色素としては、公知の化合物を使用することができる。
分光増感色素の具体例としては、後述する「分光増感化合物と相互作用する化合物」に関する特許公報や、「Research Disclogure,Vol.200,1980年12月、Item 20036」や「増感剤」(p.160〜p.163、講談社;徳丸克己・大河原信/編、1987年)等に記載されたものを挙げることができる。
【0069】
具体的には、特開昭58−15603号に記載の3−ケトクマリン化合物、特開昭58−40302号に記載のチオピリリウム塩、特公昭59−28328号、同60−53300号に記載のナフトチアゾールメロシアニン化合物、特公昭61−9621号、同62−3842号、特開昭59−89303号、同60−60104号に記載のメロシアニン化合物が挙げられる。
【0070】
また、「機能性色素の化学」(1981年、CMC出版社、p.393〜p.416)や「色材」(60〔4〕212−224(1987))等に記載された色素も挙げることができ、具体的には、カチオン性メチン色素、カチオン性カルボニウム色素、カチオン性キノンイミン色素、カチオン性インドリン色素、カチオン性スチリル色素が挙げられる。
【0071】
分光増感色素には、クマリン(ケトクマリンまたはスルホノクマリンも含まれる。)色素、メロスチリル色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等のケト色素;非ケトポリメチン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アントラセン色素、ローダミン色素、アクリジン色素、アニリン色素、アゾ色素等の非ケト色素;アゾメチン色素、シアニン色素、カルボシアニン色素、ジカルボシアニン色素、トリカルボシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素等の非ケトポリメチン色素;アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、キノリン色素、チアゾール色素等のキノンイミン色素等が含まれる。
【0072】
上記分光増感色素を適宜使用することにより、本発明の感光感熱転写材料に用いる光重合開始剤の分光感度を、紫外〜赤外域に得ることができる。
上記各種の分光増感色素は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
感光感熱転写層に用いる分光増感化合物は、感光感熱転写層の総重量に対し、0.1〜5重量%の範囲で使用することが好ましく、0.5〜2重量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0074】
上記分光増感化合物と相互作用する化合物としては、前記化合物B中の光重合性基または化合物D(光重合性モノマー)と光重合反応を開始しうる化合物の中から、1種または2種以上の化合物を選択して使用することができる。特に、この化合物を上記の分光増感化合物と共存させることにより、その分光吸収波長領域の露光光源に効率よく感応するため、高感度化が図られ、かつ紫外〜赤外領域にある任意の光源を用いてラジカルの発生を制御することができる。
分光増感化合物と相互作用する化合物としては、有機ボレート塩化合物、または前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0145]〜段落番号[0151]に記載の化合物等が挙げられる。
【0075】
「分光増感化合物と相互作用する化合物」のうち、有機ボレート化合物、ベンゾインエーテル類、トリハロゲン置換メチル基を有するS−トリアジン誘導体、有機過酸化物またはアジニウム塩化合物が好ましく、有機ボレート化合物がより好ましい。
【0076】
「分光増感化合物と相互作用する化合物」を前記分光増感化合物と併用して用いることにより、露光時、その露光された部分に局所的に、かつ効果的にラジカルを発生させることができ、高感度化を図ることができる。
【0077】
有機ボレート化合物としては、特開昭62−143044号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号等に記載の有機ボレート化合物(以下、「ボレート化合物I」という場合がある。)、またはカチオン性色素から得られる分光増感色素系ボレート化合物(以下、「ボレート化合物II」という場合がある。)等が挙げられる。
上記ボレート化合物Iの具体例としては、前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0154]〜段落番号[0163]に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
また、本発明に係る感光感熱転写材料では、前記「機能性色素の化学」(1981年、CMC出版社、p.393〜p.416)や「色材」(60〔4〕212−224(1987))等に記載されたカチオン性色素から得ることのできる分光色素系有機ボレート化合物(ボレート化合物II)も挙げることができる。
このボレート化合物IIは、その構造内に色素部とボレート部の両機能を併せ持つ化合物であり、露光時に、色素部の光吸収機能により効果的に光源エネルギーを吸収し、かつボレート部のラジカル放出機能により重合反応を促進すると同時に、併存する分光増感化合物を消色するという3つの機能を有するものである。
【0079】
具体的には、300nm以上の波長領域、好ましくは400〜1100nmの波長領域に最大吸収波長を有するカチオン性色素であれば、いずれも好適に用いることができる。中でも、カチオン性のメチン色素、ポリメチン色素、トリアリールメタン色素、インドリン色素、アジン色素、キサンテン色素、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ローダミン色素、アザメチン色素、オキサジン色素またはアクリジン色素等が好ましく、カチオン性のシアニン色素、ヘミシアニン色素、ローダミン色素またはアザメチン色素がより好ましい。
【0080】
上記有機カチオン性色素から得られるボレート化合物IIは、有機カチオン性色素と有機ホウ素化合物アニオンとを用い、欧州特許第223,587A1号に記載の方法を参考にして得ることができる。カチオン性色素から得られるボレート化合物IIの具体例としては、前記特願平11−36308号明細書の段落番号[0168]〜段落番号[0174]に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
上記のボレート化合物IIは、前記の通り、多機能な化合物であるが、高い感度と十分な消色性を得る観点から、本発明の感光感熱転写材料では、前記光重合開始剤には、分光増感化合物と、該分光増感化合物と相互作用する化合物と、を適宜組合わせて構成することが好ましい。
この場合、光重合開始剤は、上記分光増感化合物とボレート化合物Iとを組合わせた光重合開始剤(1)、または上記ボレート化合物Iとボレート化合物IIとを組合わせた光重合開始剤(2)であることがより好ましい。
【0082】
この時、光重合開始剤中に存在する分光増感色素と有機ボレート化合物との使用比率が、高感度化と定着工程の光照射による十分な消色性を得る点で非常に重要となる。
上記光重合開始剤(1)の場合、光重合開始剤中には、光重合反応に必要な分光増感化合物/ボレート化合物Iの比(=1/1:モル比)に加え、さらに層内に残存する分光増感化合物を十分に消色するのに必要な量のボレート化合物Iを添加することが十分な高感度化と消色性能を得る点から特に好ましい。
即ち、分光増感色素/ボレート化合物Iの比は、1/1〜1/50の範囲で使用することが好ましく、1/1.2〜1/30の範囲で使用することがより好ましいが、1/1.2〜1/20の範囲で使用することが最も好ましい。上記の比が、1/1未満では十分な重合反応性と消色性を得ることができず、1/50を越えると、塗布適性が劣化するため好ましくない。
【0083】
また、上記光重合開始剤(2)の場合には、ボレート化合物Iとボレート化合物IIとを、ボレート部位が色素部位に対して等モル比以上となるように組合わせて用いることが、十分な高感度化と消色性能を得る点から特に好ましい。
ボレート化合物I/ボレート化合物IIの比は、1/1〜50/1の範囲で使用することが好ましく、1.2/1〜30/1の範囲で使用することがより好ましいが、1.2/1〜20/1の範囲で使用することが最も好ましい。上記の比が、1/1未満ではラジカルの発生が少なく、十分な重合反応性と消色性能が得られず、50/1を越えると、十分な感度を得られなくなるため好ましくない。
【0084】
光重合開始剤中の分光増感色素と有機ボレート化合物との総量は、重合性基を有する化合物の使用量に対し、0.1〜10wt%の範囲で使用することが好ましく、0.1〜5wt%の範囲で使用することがより好ましいが、0.1〜1wt%の範囲で使用することが最も好ましい。上記使用量が、0.1wt%未満では本発明の効果を得ることができず、10wt%を越えると、保存安定性が低下するとともに、塗布適性が低下するため好ましくない。
【0085】
また、本発明の画像記録方法における感光感熱転写層の光重合性組成物には重合反応を促進する目的で、さらに助剤として、酸素除去剤(oxygen scavenger)または活性水素ドナーの連鎖移動剤等の還元剤や連鎖移動的に重合を促進するその他の化合物を添加することもできる。
上記酸素除去剤としては、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト、第1銀塩または酸素により容易に酸化されるその他の化合物が挙げられる。
具体的には、N−フエニルグリシン、トリメチルパルビツール酸、N,N−ジメチル−2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリン酸が挙げられる。さらに、チオール類、チオケトン類、トリハロメチル化合物、ロフィンダイマー化合物、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類、有機過酸化物、アジド類等も重合促進剤として有用である。
【0086】
本発明の画像記録方法に適用しうる感光感熱転写材料は、前述の感光感熱転写材料(a),(b)に限定されるものではなく、目的に応じて様々な構成をとることができ、また単色の記録材料であっても、多色の記録材料であってもよい。
また、本発明に用いる感光感熱転写材料には、前記感光感熱転写層上となる最外層に熱接着層を設けることを要する。この熱接着層(感熱性接着層)は、加熱した際に、発熱して受像材料に接着するように感熱性接着剤を含有する。
【0087】
感熱性接着層に含まれる感熱性接着剤としては、熱によって接着性を示す成分であればいずれのものであっても適用することができ、例えば、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックス等の鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0088】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0089】
このエチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、エチレン−アクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、エチレン−αオレフィン共重合体等を挙げることができる。これらのうち、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート樹脂及びエチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂等のエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、及びエチレン−エチルアクリレート樹脂もしくはエチレン−エチルアクリレート系樹脂が好ましく、特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が好ましい。
【0090】
また、これらの各種エチレン系共重合体は、エチレン単位以外のコモノマー単位の含量が28重量%以上、特に35重量%以上であるものが好ましい。このような特定の組成を有する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−酢酸ビニル系共重合体及び/又は−エチルアクリレート樹脂等のエチレン−エチルアクリレート系樹脂を前記熱可塑性樹脂或いはその主成分として用いることにより、表面平滑度が低い被転写体に対してもより一層の接着力の向上を図ることができ、画像形成後における画像部の著しく高い定着性を実現することができる。
【0091】
また、前記熱可塑性樹脂は、そのメルトインデックス(MI値)が、通常、2〜1,500の範囲、好ましくは、20〜500の範囲にあるものが好ましい。MI値が前記の範囲にある熱可塑性樹脂を使用すると、被転写体に対する感熱性接着剤の接着力をより一層十分なものとすることができるからである。なお、前記熱可塑性樹脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
本発明に係る感光感熱転写材料の熱接着層は、これらの前記熱溶融性化合物及び/又は熱可塑性樹脂を主成分として含むのが好ましく、その含有量は、例えば、50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度である。含有量が少なすぎると、十分な接着強度を得られず、転写不良などの画像欠陥が生じる虞があり、好ましくない。
【0093】
さらに、本発明に係る感光感熱転写材料の熱接着層には、必要に応じて発明の効果を損なわない範囲において、その他、公知の添加成分、例えば、粘着性付与剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、マット剤、金属石鹸、界面活性剤、帯電防止剤、着色剤、蛍光増白剤などを適宜含有させることができる。この熱接着層の膜厚は通常、0.2〜5.0μmであり、特に、0.5〜4.0μmの範囲になることが好ましい。また、この熱接着層は少なくとも一層設けられていることを要するが、例えば、色材の種類及び含有率、或いは、熱可塑性樹脂と熱溶融性化合物との配合比率が異なる二層以上で構成されていてもよい。
【0094】
また、本発明に適用される感光感熱転写材料には、必要に応じて、転写後に最外層となる支持体に隣接する位置に保護層を設けることができる。
前記保護層としては、単層構造であってもよいし、二層以上の積層構造であってもよい。
【0095】
上記保護層に用いる材料としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン類、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダなどの水溶性高分子化合物、及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等のラテックス類などが挙げられる。
【0096】
前記保護層に用いる水溶性高分子化合物を架橋することにより、保存安定性をより一層向上させることもできる。この場合、前記架橋に用いる架橋剤としては、公知の架橋剤を使用することができ、具体的にはN−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、尿素−ホルマリン等の水溶性初期縮合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物類、硼酸、硼砂等の無機系架橋剤、ポリアミドエピクロルヒドリンなどが挙げられる。
【0097】
前記保護層には、更に公知の顔料、金属石鹸、ワックス、界面活性剤などを使用することもでき、公知のUV吸収剤やUV吸収剤プレカーサーを添加することもできる。
【0098】
前記保護層の塗布量としては、0.2〜5g/m2 が好ましく、0.5〜3g/m2 がより好ましい。
【0099】
多色の感光感熱転写材料の場合は、支持体上に複数の単色感光感熱転写層を積層して構成され、各感光感熱転写層にそれぞれ発色色相の異なる発色成分を含有するマイクロカプセルと、それぞれ異なる波長の光に感光する光重合性組成物と、を含有させることにより多色の感光感熱転写材料とすることができる。上記光重合性組成物は、それぞれ異なる吸収波長を有する分光増感化合物を使用することにより、異なる波長の光に感光する光重合性組成物とすることができる。この場合、各単色の感光感熱転写層間に中間層を設けることもできる。
【0100】
本発明の方法が適用される多色の多層感光感熱転写材料の感光感熱転写層は、例えば、以下のようにして得ることができる。
イエロー発色する発色成分を含有するマイクロカプセルと、光源の中心波長λ1 に感光する光重合性組成物と、を含有した第1の記録層(転写層)を支持体上に設け、その層上に、マゼンタ発色する発色成分を含有するマイクロカプセルと、中心波長λ2 に感光する光重合性組成物と、を含有した第2の記録層を設け、さらにその層上に、シアン発色する発色成分を含有するマイクロカプセルと、波長λ3 に感光する光重合性組成物と、を含有した第3の記録層を設けて積層した感光感熱転写層より構成することができ、また、必要に応じて、それぞれの記録層の間に中間層を設けた感光感熱転写層とすることもできる。
【0101】
上記のような多色の多層感光感熱転写層を有する感光感熱転写材料を用いて画像形成する場合、露光工程で、各感光感熱転写層の吸収波長に適合した、波長の異なる複数の光源を用いて画像露光することにより、光源の吸収波長を有する記録層が選択的にそれぞれ潜像を形成するため、多色画像を高感度、かつ高鮮鋭に形成することができ、さらに受像材料に転写した後に、感光感熱転写層表面を光照射することにより、層内に残存する分光増感化合物をはじめとする光重合開始剤による地肌部の着色を消色することができるため、高いコントラストを有する高画質な画像を形成することができる。
【0102】
本発明の感光感熱転写材料では、用いる電子供与性無色染料またはジアゾニウム塩化合物(以下、適宜、発色成分と称する)をマイクロカプセルに内包して使用する。マイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、米国特許第2800457号、同28000458号に記載の親水性壁形成材料のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号、英国特許第990443号、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−771号等に記載の界面重合法、米国特許第3418250号、同3660304号に記載のポリマー析出による方法、米国特許第3796669号に記載のイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号に記載のイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同4087376号、同4089802号に記載の尿素−ホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025455号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシブロビルセルロース等の壁形成材料を用いる方法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号に記載のモノマーの重合によるin situ法、英国特許第952807号、同965074号に記載の電解分散冷却法、米国特許第3111407号、英国特許第930422号に記載のスプレードライング法等が挙げられる。
【0103】
マイクロカプセル化する方法はこれらに限定されるものではないが、本発明の感光感熱転写材料においては、特に、発色成分をカプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解または分散させ調製した油相を、水溶性高分子を溶解した水相と混合し、ホモジナイザー等の手段により乳化分散した後、加温することによりその油滴界面で高分子形成反応を起こし、高分子物質のマイクロカプセル壁を形成させる界面重合法を採用することが好ましい。
即ち、短時間内に均一な粒径のカプセルを形成することができ、生保存性にすぐれた記録材料とすることができる。
【0104】
高分子を形成するリアクタントは、油滴内部および/または油滴外部に添加される。高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアが特に好ましい。上記の高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
【0105】
前記水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0106】
例えば、ポリウレタンをカプセル壁材として用いる場合には、多価イソシアネートおよびそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオール、ポリアミン)を水溶性高分子水溶液(水相)またはカプセル化すべき油性媒体(油相)中に混合し、これらを乳化分散した後、加温することにより油滴界面で高分子形成反応が生じ、マイクロカプセル壁を形成することができる。
【0107】
上記多価イソシアネート及びそれと反応する相手のポリオール、ポリアミンとしては、米国特許第3281383号、同3773695号、同3793268号、特公昭48−40347号、同49−24159号、特開昭48−80191号、同48−84086号に記載されているものを使用することができる。
【0108】
本発明において、発色成分を含有するマイクロカプセルを調製する際、内包する発色成分は、該カプセル中に溶液状態で存在していても、固体状態で存在していてもよい。
上記溶媒としては、前記の光硬化性組成物の乳化分散させる場合に用いる溶媒と同様のものを用いることができる。
電子供与性無色染料またはジアゾニウム塩化合物をカプセル中に溶液状態で内包させる場合、電子供与性無色染料またはジアゾニウム塩化合物を溶媒に溶解した状態でカプセル化すればよく、この場合、溶媒は電子供与性無色染料100重量部に対して、1〜500重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0109】
また、カプセル化しようとする電子供与性無色染料またはジアゾニウム塩化合物の前記溶媒に対する溶解性が劣る場合には、溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもできる。この低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド等が挙げられる。
【0110】
一方、用いる水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、該水溶性高分子は分散を均一に、かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は周知の乳化用界面活性剤が使用可能である。また、界面活性剤を添加する場合には、界面活性剤の添加量は、油相の重量に対して0.1%〜5%、特に0.5%〜2%であることが好ましい。
【0111】
また、水相に含有させる界面活性剤は、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤の中から、上記保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを好適に選択して使用することができる。
好ましい界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等を挙げることができる。
【0112】
前記したように、油相を混合する水相に保護コロイドとして含有させる水溶性高分子は、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができる。
【0113】
アニオン性高分子としては、天然、合成のいずれのものも用いることができ、例えば、−COO−、−SO2 −基等を有するものが挙げられる。
具体的には、アラビヤゴム、アルギン酸、ベクチン等の天然物;カルボキシメチルセルロース、フタル化ゼラチン等のゼラチン誘導体、硫酸化デンプン、硫酸化セルロース、リグニンスルホン酸等の半合成品;無水マレイン酸系(加水分解物を含む)共重合体、アクリル酸系(メタクリル酸系)重合体および共重合体、ビニルベンゼンスルホン酸系重合体および共重合体、カルボキシ変成ポリビニルアルコール等の合成品が挙げられる。
【0114】
ノニオン性高分子としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
両性高分子としては、ゼラチン等が挙げられる。これらのうち、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコールが好ましい。
上記水溶性高分子は0.01〜10重量%の水溶液として用いられる。
【0115】
感光感熱転写層中に含有させる発色成分をはじめとする全ての成分は、例えば、水溶性高分子、増感剤およびその他の発色助剤等とともに、サンドミル等の手段により固体分散して用いることもできるが、予め水に難溶性又は不溶性の高沸点有機溶剤に溶解した後、これを界面活性剤および/または水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合し、ホモジナイザー等で乳化した乳化分散物として用いることがより好ましい。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることもできる。
さらに、上記の発色成分をはじめとする全ての成分は、それぞれ別々に乳化分散することも、予め混合してから高沸点溶媒に溶解し乳化分散することも可能である。好ましい乳化分散粒子径は1μm以下である。
【0116】
乳化は、上記成分を含有した油相と保護コロイド及び界面活性剤を含有する水相を、高速撹拌、超音波分散等の通常の微粒子乳化に用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミルなど、公知の乳化装置を用いて容易に行うことができる。
乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させるために、乳化物を30〜70℃に加温する。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、充分な攪拌を行う等の必要がある。
【0117】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その発生の終息をもっておよそのカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的の色素を内包したマイクロカプセルを得ることができる。
【0118】
本発明の感光感熱転写材料に用いるマイクロカプセルの平均粒子径は、20μm以下が好ましく、高解像度を得る観点から5μm以下であることがより好ましい。形成したマイクロカプセルが小さすぎると、一定固形分に対する表面積が大きくなり多量の壁剤が必要となるため、上記平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましい。
【0119】
本発明の感光感熱転写材料を多色の感光感熱転写材料として用いる場合、感光感熱転写材料の感光感熱転写層は、支持体上に複数の単色の感光感熱転写層を積層して構成され、その各感光感熱転写層には、それぞれ異なる色相に発色する電子供与性無色染料を含有するマイクロカプセルと、それぞれ最大吸収波長の異なる分光増感色素を含有する光硬化性組成物と、が含有され、光照射した際、その光源波長の違いにより感光し、多色画像を構成する。
【0120】
また、上記感光感熱転写層を構成する各単色の感光感熱転写層間には、中間層を設けることがもできる。中間層は、主にバインダーから構成され、必要に応じて、硬化剤やポリマーラテックス等の添加剤を含有することができる。
【0121】
本発明の感光感熱転写材料において、保護層、感光感熱転写層、中間層等の各層に用いるバインダーとしては、前記光重合性組成物の乳化分散に用いるバインダーと同様のもの、発色成分をカプセル化する際に用いる水溶性高分子のほか、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメチルアクリレート,ポリブチルアクリレート,ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレートやそれらの共重合体等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の溶剤可溶性高分子、或いは、これらの高分子ラテックスを用いることもできる。
中でも、ゼラチンおよびポリビニルアルコールが好ましい。
【0122】
本発明の感光感熱転写材料を構成する各感光感熱転写層には、塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止等の種々の目的で、種々の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤であるサポニン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドのアルキルエーテル等のポリエチレンオキサイド誘導体やアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル、N−アシル−N−アルキルタウリン類、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレナルキルフェニルエーテル類等のアニオン性界面活性剤、アルキルベタイン類、アルキルスルホベタイン類等の両性界面活性剤、脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。
【0123】
さらに、感光感熱転写層には、これまで述べた添加剤等のほか、必要に応じて、他の添加剤を添加することができる。
例えば、染料、紫外線吸収剤、可塑剤、蛍光増白剤、マット剤、塗布助剤、硬化剤、帯電防止剤、滑り性改良剤等を添加することもできる。
上記各添加剤の代表例は、「Research Disclosure,Vol.176」(1978年12月、Item 17643)および「同Vol.187」(1979年11月、Item 18716)に記載されている。
【0124】
本発明に用いる感光感熱転写材料では、感光感熱転写層、中間層、保護層等の熱接着層を除く各層に硬化剤を併用することが好ましい。
特に、保護層中に硬化剤を併用し、保護層の粘着性を低減することが好ましい。硬化剤としては、例えば、写真感光材料の製造に用いられる「ゼラチン硬化剤」が有用であり、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド系の化合物、米国特許第3635718号等に記載の反応性のハロゲン化合物、米国特許第3635718号等に記載の反応性のエチレン性不飽和基を有する化合物、米国特許第3017280号等に記載のアジリジン系化合物、米国特許第3091537号等に記載のエポキシ系化合物、ムコクロル酸等のハロゲノカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサン、ジクロロジオキサン等のジオキサン類、米国特許第3642486号や米国特許第3687707号に記載のビニルスルホン類、米国特許第3841872号に記載のビニルスルホンブレカーサー類、米国特許第3640720号に記載のケトビニル類を用いることができ、また、無機硬化剤として、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、硼酸等も用いることができる。
【0125】
中でも、1,3,5−トリアクロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,2−ピスピニルスルホニルメタン、1,3−ビス(ビニルスルホニルメチル)プロパノール−2、ビス(α−ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム塩、2,4,6−トリエチレニミノ−s−トリアジンや硼酸等の化合物が好ましい。
上記硬化剤は、バインダーの使用量に対して、0.5〜5重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0126】
本発明に適用する感光感熱転写材料は、感光感熱転写層用塗布液、熱接着層用塗布液等を前記各構成成分を必要に応じて溶媒中に溶解する等の手段により調製した後に、各塗布液を順次、所望の支持体上に塗布、乾燥することで得ることができる。
塗布液の調製に使用できる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、メチルセロソルプ、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライド等のハロゲン系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル;トルエン;キシレン等の単独物、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。中でも、水が特に好ましい。
【0127】
感光感熱転写層用塗布液を支持体上に塗布するには、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、ロールドクターコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター等を用いることができる。
【0128】
塗布方法としては、「Rcscarch Disclosurc,Vol.200」(1980年12月,Item 20036 XV項)を参考に塗布することができる。
感光感熱転写層の層厚としては、0.1〜50μmの範囲であることが好ましく、5〜35μmの範囲であることがより好ましい。
【0129】
上記のようにして得られた本発明の画像記録方法は、様々な用途に利用することができる。
例えば、カラープリンター、ラベル、カラープルーフ、OHP、マスクフィルム、ディスプレイ、カード、チケット、名刺、装飾材料等の用途が挙げられる。
【0130】
本発明に係る感光感熱転写材料に用いる支持体としては、紙、コーティツドペーパー、ラミネート紙等の合成紙;ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、3酢酸セルロースフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリスチレンフイルム、ポリカーボネートフイルム等のフイルム;アルミニウム、亜鉛、銅等の金属板;または、これらの複合体、さらに、これらの支持体表面に表面処理、下塗、金属蒸着処理等の各種処理を施したもの等を挙げることができる。さらに、「Research Disclosure,Vol.200」(1980年12月、Item 20036 XVII項)の支持体も挙げることができる。また、支持体自体が弾性を有するポリウレタンフォームやゴム等のシートを用いることもできる。
またさらに、必要に応じて、用いる支持体の表面には、クッション層、アンチハレーション層、裏面にはスベリ層、アンチスタチック層、カール防止層等を設けることができる。
【0131】
本発明に係る感光感熱転写材料は、感光感熱転写層が熱接着層を介して受像材料に、密着・加熱により転写されるため、受像材料との密着性向上のため、支持体が弾性を有することが好ましい。このような支持体としては、支持体自体が弾性を有する材料で形成されたシートであってもよいが、前記例示した一般的な支持体の上(感光感熱転写層が形成される側)に弾性を有する材料で形成された弾性層を設けてもよい。
支持体に適用しうる弾性を有する材料としては、天然ゴム、アクリレートゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ネオプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリン、EPDM、ウレタンエラストマー等のエラストマー類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリウレタン、ABS樹脂、アセテート、セルロースアセテート、アミド樹脂、ポリスチレン、エポキシ樹脂、フェノールフォルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の内弾性率の小さな樹脂類などが挙げられ、弾性層、或いは弾性支持体はこれらの材料を主成分として形成される。
【0132】
次に、本発明の方法に用いうる受像材料について説明する。
本発明の受像材料は、転写後の感光感熱転写層の支持体となる材料であり、通常の紙支持体(普通紙、アート紙などの印刷用紙、ダンボール等)をはじめとする前記感光感熱転写材料の支持体として例示した材料の他、布、皮革、プラスチック、ゴム、木材、ガラス、磁器などを使用することができる。
また、これら支持体の表面に、例えば、プレコート、プレラミネート、アンカーコート、エッチング処理、サンディング処理、薬品処理、溶剤処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の前記熱接着層との接着性を向上させる処理を行うこともできる。
なお、支持体上に前記熱接着層を予め設けたものを使用することにより、前記本発明に使用する感光感熱転写材料の最外層にある熱接着層の形成を省略することもできる。
【0133】
本発明に係わる感光感熱転写材料は、潜像を形成するための露光後に、熱接着層を受像材料に密着させて加熱現像処理を行うことにより、画像を形成するとともに転写の前段階としての受像材料と熱接着層との接着が達成される。
加熱処理する際の加熱・密着方法としては、加熱ローラー、熱板、ヒートブロックなど従来公知の方法を用いることができるが、加熱エンボスローラー等の手段によることが好ましい。一般に、加熱温度は80〜200℃であることが好ましく、85〜150℃であることがより好ましい。加熱時間は、1秒〜5分の範囲が好ましく、3秒〜1分の範囲がより好ましい。
【0134】
加熱現像処理後、支持体を剥離することにより転写が完了し、受像材料上に画像形成された感光感熱転写層が転写される。転写により、支持体に隣接して形成されたUV吸収層や保護層が感光感熱転写層の最外層に位置することになる。これらの層は、画像形成時には、最下層に位置するため、潜像形成時の光照射を阻害することなく、転写後には最上層に位置して形成された画像を効果的に保護することができる。
【0135】
転写された感光感熱転写層表面を光照射することにより、形成画像を定着し、かつ記録層中に残存する分光増感化合物、ジアゾニウム塩化合物等の地肌部の白色性を低下させる成分を消色、分解または失活させることができる。
このようにすることにより、地肌部(非画像部)をはじめとする記録層中に残存する地肌部を着色している成分を除去することができ、かつ残存するジアゾニウム塩化合物も失活して発色反応を抑制することができるため、画像中の濃度変動が抑制でき、画像保存性を大幅に向上させることができる。
【0136】
本発明の感光感熱転写材料を用いて上記方法により画像形成する際、上記画像形成中に材料全面を発色温度未満の所定温度で均一に予熱する過程を設けることにより、さらに感度を向上することができる。
また、本発明の感光感熱転写材料は上記記録方法のみならず、公知の他の記録方法にも使用することができる。
例えば、サーマルヘッド等の加熱装置を用いた感熱記録やコントラスト、画像品質向上を目的として、国際出願WO95/31754号に記載の3M社提案のハロゲン化銀感光感熱転写材料に用いるレーザービームを照射する際、そのビームスポットが所定の範囲でオーバーラップするように照射することにより画像形成する記録方法にも使用することができる。
また、特開昭60−195568号に記載のキャノン(株)提案の記録方法、即ち、記録材料面に照射するレーザービームの入射角を傾けることにより、入射ビームが記録材料の感光層界面で反射する反射ピッチをビームスポット径より大きくし、記録材料に生ずる光干渉を防止する技術を用いることにより、より高品質の画像を得ることができる技術にも使用することができる。
【0137】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
【0138】
<電子供与性無色染料内包マイクロカプセルの調製>
(1−a)電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(I)の調製
酢酸エチル16.9gに、イエロー発色の下記電子供与性無色染料(1)8.9gを溶解し、カプセル壁材(商品名:タケネートD−110N,武田薬品工業(株)製)20gとカプセル壁材(商品名:ミリオネートMR200,日本ポリウレタン工業(株)製)2gとを添加した。
得られた溶液を、8%フタル化ゼラチン42gと10%ドデシルベンゼンルスルホン酸ナトリウム溶液1.4gとの混合液中に添加した後、温度20℃で乳化分散し、乳化液を得た。次いで、得られた乳化液に水14gと2.9%テトラエチレンペンタミン水溶液72gとを加え、攪拌しながら60℃に加温し、2時間経過後、下記電子供与性無色染料(1)を芯とする、平均粒径0.5μmのマイクロカプセル液(I)を得た。
【0139】
(1−b)電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(II)の調製
上記(1−a)で用いた下記電子供与性無色染料(1)に代えて、マゼンタ発色の下記電子供与性無色染料(2)を用いた以外、上記(1−a)と同様の方法により、下記電子供与性無色染料(2)を芯とする、平均粒径0.5μmのマイクロカプセル液(II)を得た。
【0140】
(1−c)電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(III)の調製
上記(1−a)で用いた下記電子供与性無色染料(1)に代えて、シアン発色の下記電子供与性無色染料(3)を用いた以外、上記(1−a)と同様の方法により、下記電子供与性無色染料(3)を芯とする、平均粒径0.5μmのマイクロカプセル液(III)を得た。
【0141】
(1−d)電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(IV)の調製
上記(1−a)で用いた下記電子供与性無色染料(1)に代えて、黒色の下記電子供与性無色染料(4)を用いた以外、上記(1−a)と同様の方法により、下記電子供与性無色染料(4)を芯とする、平均粒径0.5μmのマイクロカプセル液(IV)を得た。
【0142】
【化2】
Figure 0003920485
【0143】
<光重合性組成物乳化液の調製>
(2−a)光重合性組成物乳化液(1)の調製
前記に示した有機ボレート化合物(29)0.6gと、前記に示した分光増感色素系ボレート化合物(26)0.1gと、高感度化を目的とした下記助剤(1)0.1gと、酢酸イソプロピル(水への溶解度約4.3%)3gと、の混合溶液中に、重合性基を有する下記電子受容性化合物(1)5gを添加した。
得られた溶液を、13%ゼラチン水溶液13gと、下記2%界面活性剤(1)水溶液0.8gと、下記2%界面活性剤(2)水溶液0.8gと、の混合溶液中に添加し、ホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000回転で5分間乳化し、光重合性組成物の乳化液(1)を得た。
【0144】
【化3】
Figure 0003920485
【0145】
【化4】
Figure 0003920485
【0146】
(2−b)光重合性組成物乳化液(2)の調製
上記(2−a)で用いた分光増感色素系ボレート化合物(26)に代えて、前記に示した分光増感色素系ボレート化合物(28)0.1gを用いた以外、上記(2−a)と同様にして光重合性組成物乳化液(2)を得た。
【0147】
(2−c)光重合性組成物乳化液(3)の調製
上記(2−a)で用いた分光増感色素系ボレート化合物(26)に代えて、前記に示した分光増感色素系ボレート化合物(30)0.1gを用いた以外、上記(2−a)と同様にして光重合性組成物乳化液(3)を得た。
【0148】
<感光感熱転写層用塗布液の調製>
(3−a)感光感熱転写層用塗布液(1)の調製−〔ブラック〕
電子供与性無色染料内包マイクロカプセル(IV)4gと、光重合性組成物乳化液(2)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱転写層用塗布液(1)を調製した。
【0149】
(3−b)感光感熱転写層用塗布液(2)の調製−〔イエロー〕
電子供与性無色染料内包マイクロカプセル(I)4gと、光重合性組成物乳化液(1)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱転写層用塗布液(5)を調製した。
【0150】
(3−c)感光感熱転写層用塗布液(3)の調製−〔マゼンタ〕
電子供与性無色染料内包マイクロカプセル(II)4gと、光重合性組成物乳化液(2)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱転写層用塗布液(6)を調製した。
【0151】
(3−d)感光感熱転写層用塗布液(4)の調製−〔シアン〕
電子供与性無色染料内包マイクロカプセル(III )4gと、光重合性組成物乳化液(3)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱転写層用塗布液(7)を調製した。
【0152】
<中間層用塗布液の調製>
15%ゼラチン水溶液4.5gと、蒸留水4.5gと、前記2%界面活性剤(4)水溶液0.3gを混合し、中間層用塗布液(1)を調製した。
【0153】
<保護層用塗布液の調製>
10%ゼラチン水溶液4.5gと、蒸留水4.5gと、前記2%界面活性剤(3)水溶液0.5gと、前記2%界面活性剤(4)水溶液0.3gと、2%ビニルスルホン系化合物(硬膜剤)水溶液0.5gと、乾燥塗布量を50mg/m2 とした場合に必要な量のサイロイド72(FUJI−DEVISON CHEMICALLTD.製)と、スノーテックスN1gと、を混合し、上記保護層用塗布液(1)を調製した。
【0154】
<熱接着層用塗布液の調製>
水 10gにエチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン(商品名:レゼムEV−2、中京油脂(株)製)4.5gとブチラール樹脂エマルジョン(商品名:J−667、中京油脂(株)製)4.5gと界面活性剤(商品名:メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)0.1gとを混合し、熱接着剤層用塗布液を得た。
【0155】
(実施例1):黒発色
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレート(PET)ブルーベース支持体上に、前記保護層用塗布液(1)をその塗布層の乾燥重量が2g/m2 になるように塗布、乾燥し、その上に前記感光感熱転写層用塗布液(1)をコーティングバーを用いて、塗布層全体の乾燥重量が、30g/m2 になるように塗布、乾燥した。
この層上に、前記熱接着層用塗布液をコーティングバーを用いて、塗布層全体の乾燥重量が2.0g/m2 になるように塗布、乾燥して感光感熱転写材料(1)を得た。
【0156】
上記感光感熱転写材料(1)を、熱接着層側から波長657nmの半導体レーザー光を用いて、最大照射エネルギー15mJ/cm2 で、順々に照射エネルギーが変わるようにステップウェッジ状の画像形状に露光した。
受像材料としては、坪量130gのアート紙(特菱アート、三菱製紙(株)製)を用いた。上記露光により潜像の形成された転写材料の熱接着層側を前記アート紙の表面と密着させ、120℃の加熱エンボスローラーで5秒間加熱した後、支持体を剥離し、転写層の保護層側から58000luxの高輝度シャーカステン上で30秒間上記記録材料の転写層表面全体を光照射した。すると、鮮明に発色し、地肌部の白色性の高いステップウェッジ状の画像が得られた。
【0157】
<感度の評価>
感度は、各材料のウェッジ像中の同一露光量に相当する、ある1ステップにおいて、このステップの前記照射エネルギーと各材料の地肌部を形成するまでに要するエネルギーとのエネルギー差(地肌部を形成するまでのエネルギー−上記ステップの照射エネルギー)を測定、算出し、感度の指標とした。
従って、感度は数値の小さい程、高感度であることを表す。測定した結果を以下の表1に示す。
【0158】
<サーモ処理>
上記より得られた感光感熱転写材料(1)を、温度50℃、相対湿度30%RHの環境下に、1日間放置した。
【0159】
<濃度の測定>
発色濃度(Dmax)、地肌カブリ(Dmin)およびサーモ処理後の地肌カブリ(Dmin−S)は、マクベス反射型濃度計(マクベス (株)製)を用いて測定した。
これらの測定結果は、上記結果と併せて以下の表1に示す。
【0160】
(実施例2):多色発色
白色顔料を充填したポリエステルフィルム(ルミラーE−68L,東レ(株)製)厚さ100μmの支持体上に、コーティングバーを用いて、保護層用塗布液(1)を、乾燥重量が1.5g/m2 になるように塗布、乾燥して設け、次に、前記感光感熱層用塗布液(4)(シアン発色)を塗布層の乾燥重量が4g/m2 になるように塗布、乾燥し、この層上に、中間層用塗布液(1)を、乾燥重量が1.5 g/m2 になるように塗布、乾燥した。
さらに、この中間層上に、感光感熱転写層用塗布液(3)(マゼンタ発色)をコーティングバーを用いて、塗布層の乾燥重量が4g/m2 になるように塗布、乾燥し、この層上に、中間層用塗布液を乾燥重量が1.5g/m2 になるように塗布、乾燥した。
さらにこの層上に、感光感熱転写層用塗布液(2)(イエロー発色)をコーティングバーを用いて塗布層の乾燥重量が4g/m2 になるように塗布、乾燥し、その層上に、熱接着層用塗布液を、乾燥重量が2.0g/m2 になるように塗布、乾燥して設け、感光感熱転写材料(2)を得た。
【0161】
上記より得られた感光感熱転写材料(2)は、熱接着層側から、まず波長780nmの半導体レーザー光を用いて画像様に露光し、次いで波長650nmの半導体レーザー光を用いて画像様に露光し、さらに波長532nmの固体レーザー光を用いて画像様に露光した。
上記露光により潜像の形成された記録材料の熱接着層側を前記アート紙の表面と密着させ、120℃の加熱エンボスローラーで5秒間加熱した後、支持体を剥離し、転写層の保護層側から58000luxの高輝度シャーカステン上で30秒間記録層表面を光照射した。すると、鮮明に発色し、地肌部の白色性の高いカラー画像が得られた。
感光感熱転写材料(2)のサーモ処理前後のカブリ濃度を、上記実施例1と同様の方法により測定し、その結果を以下の表1に示す。
【0162】
(比較例1、2)
上記実施例1、2で得られた感光感熱転写材料(1)、(2)を用い、58000luxの高輝度シャーカステン上で30秒間記録層表面に光照射を行わなかったこと以外、上記実施例1と同様にしてステップウェッジ状の画像を得た。
上記実施例1と同様の方法により、比較例1については感度、発色濃度、さらに、比較例1及び2についてはサーモ処理前後のカブリ濃度を測定し、その結果を以下の表1に示す。
【0163】
(比較例3)
上記実施例1の光重合性組成物乳化液(2)で用いた分光増感色素系ボレート化合物(28)を用いなかった以外、上記実施例1と同様にして感光感熱転写材料(3)を得た。上記感光感熱転写材料(3)を上記実施例1と同様にして、ステップウェッジ状の画像を形成した。
感光感熱転写材料(3)の発色濃度、カブリ濃度を、上記実施例1と同様の方法により測定し、その結果を以下の表1に示す。
【0164】
【表1】
Figure 0003920485
【0165】
上記表1より明らかなように、本発明の感光感熱転写材料(1)、(2)を用い、かつ画像様に露光し、加熱した後、支持体を剥離し、記録層表面を光照射する定着工程を経る本発明の画像記録方法により形成された画像は、高い感度が得られるとともに、現像と同時に受像紙上に効率よく画像形成でき、サーモ処理による地肌部の濃度上昇もほとんど認められなかった。得られた画像は、分光増感化合物による着色が記録層表面への光照射により十分に消色され、同時に形成画像も定着されており、地肌部の白色性に優れ、かつ高コントラストであるとともに、保存安定性の良好な画像を受像紙上に効率よく形成することができた。
【0166】
一方、比較例1、2のように、本発明の感光感熱転写材料(1)、(2)を用いたが、露光、加熱後に、記録層表面を光照射する定着工程を経ずに形成された画像では受像紙上に画像形成できるものの、サーモ処理による地肌部の濃度上昇が極めて大きく、コントラストの高い鮮明な画像を得ることはできなかった。また、本発明に規定する光重合開始剤を用いなかった比較例3の感光感熱転写材料(3)では、十分な感度が得られず、画像形成することができなかった。
【0167】
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液の調製>
(4−a)ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(V)の調製
酢酸エチル13.7部に、ジアゾニウム塩化合物(下記化合物A)4.6部と、フタル酸ジフェニルエステル10.4部と、を添加して均一に混合した。
次いで、この混合液に、カプセル壁材(商品名:タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)5.5部、カプセル壁材(商品名:ミリオネートMR200,日本ポリウレタン工業(株)製)2.8部を添加した。
【0168】
得られた溶液を、フタル化ゼラチン8%水溶液62.7部、水17.4部およびsucraphAG−S(日本精化(株)製)0.4部の混合液に添加し、ホモジナイザーを用いて、温度40℃、回転数8000rpmで10分間乳化分散した。得られた乳化物に、水50部およびジエチレントリアミン0.26部を添加し、均一化した後、撹拌しながら60℃で3時間マイクロカプセル化反応を行わせて、ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(V)を得た。このマイクロカプセルの平均粒径は、0.3〜0.4μmであった。
【0169】
(4−b)ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(VI)の調製
酢酸エチル19.0部に、硫酸ブチル2.8部と、上記(4−a)で用いた下記化合物Aに代えて、365nmに光分解の最大吸収波長を持つジアゾニウム塩化合物(下記化合物B)2.8部と、を溶解した。
この溶液中に、さらに高沸点溶媒であるイソプロピルフェニル5.9部およびリン酸トリクレジル2.5部を添加し、加熱して均一に混合した。得られた溶液に、カプセル壁材(商品名:タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)7.6部を更に添加し、均一に撹拌した溶液を得た。
【0170】
また、10%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液2.0部を加えた6重量%ゼラチン(商品名:M部P−9066,ニッピゼラチン工業(株)製)水溶液64部を用意し、これに、先のジアゾニウム塩の溶液を添加し、ホモジナイザーにて乳化分散した。
得られた乳化液に、水20部を加え均一化した後、撹拌しながら40℃に昇温し、3時間カプセル化反応を行わせた。その後、温度を35℃に下げ、イオン交換樹脂(商品名:アンバーライトIRA68,オルガノ(株)製)6.5部、イオン交換樹脂(商品名:アンバーライトIRC50,オルガノ(株)製)13部を加え、さらに一時間撹拌した。
この後、イオン交換樹脂をろ過し、ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(VI)を得た。このマイクロカプセルの平均粒径は0.64μmであった。
【0171】
(4−c)ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(VII)の調製
酢酸エチル19部に、ジアゾニウム塩化合物(下記化合物C)2.8部およびトリクレジルホスフェート10部を添加して均一に混合した。次いで、この混合液にカプセル壁材(商品名:タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)7.6部を加えて混合した。得られた溶液を、フタル化ゼラチンの8%水溶液46部、水17.5部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダの10%水溶液2部の混合液に添加し、ホモジナイザーを用いて40℃、回転数10000rpmで10分間乳化分散した。
得られた乳化物に、水20部を加えて均一化した後、撹拌しながら40℃で3時間カプセル化反応を行わせて、ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(VII)を得た。このマイクロカプセルの平均粒径は、0.7〜0.8μmであった。
【0172】
【化5】
Figure 0003920485
【0173】
<光重合性組成物乳化液の調製>
(5−a)光重合性組成物乳化液(4)の調製
酢酸エチル10.5部に、下記組成の化合物を溶解し、さらに高沸点溶媒であるリン酸トリクレジル0.48部、マレイン酸ジエチル0.24部およびバイオニンA41C(竹本油脂(株)製)1.27部を添加した後、加熱し均一な混合液を得た。
Figure 0003920485
【0174】
上記混合液を、8%ゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)水溶液93部中に加えて、ホモジナイザーにて回転数10000rpmで5分間乳化分散した。得られた乳化液から、残存する酢酸エチルを蒸発させてカプラー化合物の光重合性組成物乳化液(4)を得た。
【0175】
(5−b)光重合性組成物乳化液(5)の調製
酢酸エチル10.5部に、下記組成の化合物を溶解し、さらに高沸点溶媒であるリン酸トリクレジル0.48部、マレイン酸ジエチル0.24部およびバイオニンA41C(竹本油脂(株)製)1.27部を添加した後、加熱し均一な混合液を得た。
Figure 0003920485
【0176】
上記混合液を、8%ゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)水溶液93部中に加えて、ホモジナイザーにて回転数10000rpmで5分間乳化分散した。この乳化液から残存する酢酸エチルを蒸発させカプラー化合物の光重合性組成物乳化液(5)を得た。
【0177】
(5−c)光重合性組成物乳化液(6)の調製
酢酸エチル10.5部に、下記組成の化合物を溶解し、均一な混合液を得た。
・前記に示した有機ボレート化合物(29) ・・・0.6部
・前記の分光増感色素系ボレート化合物(28) ・・・0.1部
・高感度化を目的とした助剤(下記化合物J) ・・・0.1部
・カプラー化合物(下記化合物部) ・・・3.0部
・トリフェニルグアニジン ・・・3.0部
・トリクレジルホスフェート ・・・0.5部
・マレイン酸ジエチル ・・・0.24部
【0178】
【化6】
Figure 0003920485
【0179】
上記混合液を、石灰処理ゼラチン15%水溶液49部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダの10%水溶液9.5部および水35部を40℃で均一に混合した中に添加し、ホモジナイザーにて40℃、回転数10000rpmで10分間分散した。この乳化液から残存する酢酸エチルを蒸発させてカプラー化合物の光重合性組成物乳化液(6)を得た。
【0180】
<感光感熱転写層用塗布液の調製>
(6−a)感光感熱転写層用塗布液(5)の調製−〔イエロー〕
ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(V)10部およびカプラー化合物の光重合性組成物乳化液(5)30部を混合して感光感熱転写層用塗布液(8)を調製した。
【0181】
(6−b)感光感熱転写層用塗布液(6)の調製−〔シアン〕
ジアゾニウム塩化合物(化合物B)内包マイクロカプセル液(VI)、カプラー化合物の光重合性組成物乳化液(5)およびスチレン−ブタジエンゴム(SBR:SN307,住友ノーガッタ(株)製)のそれぞれを、ジアゾニウム塩化合物(化合物B)/カプラーの比率が1/2となるように混合し、これにさらにL−アスコルビン酸(ビタミンC,武田薬品工業(株)製)を、L−アスコルビン酸/ジアゾニウム塩化合物(化合物B)の比率が1/40となるように混合し、感光感熱転写層用塗布液(6)を調製した。
【0182】
(6−c)感光感熱転写層用塗布液(7)の調製−〔マゼンタ〕
ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(VII)3.6部、水3.3部およびカプラー化合物の光重合性組成物乳化液(6)9.5部を混合して感光感熱転写層用塗布液(7)を調製した。
【0183】
<中間層用塗布液(2)の調製>
14%ゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)水溶液90部に4%ホウ酸水溶液8.2部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウムの2%水溶液1.2部、(CH2 =CHSO2 CH2 CONHCH2 )−(CH2 NHCOCH2 SO2 CH=CH2 )とCH2 −(CH2 NHCOCH2 SO2 CH=CH2 2 の3:1混合物(重量比)の2%水溶液7.5部を添加し、均一に撹拌し中間層用塗布液(2)を得た。
【0184】
<中間層用塗布液(3)の調製>
13%ゼラチン水溶液57部に、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウムの2%水溶液0.4部、(CH2 =CHSO2 CH2 CONHCH2 )−(CH2 NHCOCH2 SO2 CH=CH2 )とCH2 −(CH2 NHCOCH2 SO2 CH=CH2 2 の3:1混合物(重量比)の2重量%水溶液8.3部、PVP−k15(商品名:GAF五協産業(株)製)2.4部を添加し、均一に撹拌し、目的の中間層用塗布液(3)を得た。
【0185】
<保護層用塗布液(2)の調製>
5.0%イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318,クラレ(株)製)水溶液61部に、20.5%ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115,中京油脂(株)製)2.0部を添加し、C1225O(CH2 CH2 O)Hの2%水溶液8.4部、フッ素系離型剤(商品名:ME−313,ダイキン(株)製)8.0部および小麦粉澱粉(商品名:KF−4、籠島澱粉(株)製)0.5部を添加し均一に撹拌した。以下、これを「母液」と称する。
【0186】
また、イオン交換した20%カオグロス(白石工業(株)製)水溶液12.5部、ポイズ532A(花王(株)製)0.06部、ハイドリンZ−7(中京油脂(株)製)1.87部、10%ポリビニルアルコール(商品名:PVA105,クラレ(株)製)1.25部および2%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液0.39部を混合し、ダイノミルにて微分散を行った。以下、この液を「顔料液」と称する。
前記母液80部に、上記顔料液4.4部を加えて30分以上撹拌した。その後、Wetmaster500(東邦化学(株)製)2.8部を添加し、さらに30分以上撹拌して保護層用塗布液(2)を調製した。
【0187】
(実施例3):イエロー発色
上質紙上にポリエチレンをラミネートした印画紙用支持体上に、メイヤーバーを用いて、保護層用塗布液(2)、感光感熱転写層用塗布液(5)感熱接着層塗布液を支持体側からこの順次に塗布し、乾燥して感光感熱転写材料(4)を得た。感光感熱転写層の乾燥塗布量は3.5g/m2 、保護層の乾燥塗布量は1.23g/m2 であった。
上記感光感熱転写材料(4)を上記実施例1と同様にしてステップウェッジ状の画像を形成した。すると、鮮明に発色し、地肌部の白色性の高いステップウェッジ状の画像が得られた。
感光感熱転写材料(4)の感度、発色濃度、サーモ処理前後のカブリ濃度を、上記実施例1と同様の方法により測定し、その結果を以下の表2に示す。
【0188】
(実施例4):多色発色
上質紙上にポリエチレンをラミネートした印画紙用支持体上に、メイヤーバーを用いて、保護層用塗布液(2)、感光感熱転写層用塗布液(5)、中間層用塗布液(2)、感光感熱転写層用塗布液(6)、中間層用塗布液(3)、感光感熱転写層用塗布液(7)、熱接着層用塗布液を支持体側からこの順次に積層して塗布し、乾燥して3層の多色感光感熱転写層を有する感光感熱転写材料(5)を得た。
上記感光感熱転写材料(5)を上記実施例2と同様にして露光し、画像形成した。すると、鮮明に発色し、地肌部の白色性の高いカラー画像が得られた。
感光感熱転写材料(5)のサーモ処理前後のカブリ濃度を、上記実施例1と同様の方法により測定し、その結果を以下の表2に示す。
【0189】
(比較例4、5)
上記実施例3、4で得られた感光感熱転写材料(4)、(5)を用い、58000luxの高輝度シャーカステン上で30秒間記録層表面に光照射を行わなかったこと以外、上記実施例3と同様にしてステップウェッジ状の画像を得た。
感光感熱転写材料(4)については感度、発色濃度を、さらに、感光感熱転写材料(4)及び(5)についてはサーモ処理前後のカブリ濃度を、上記実施例1と同様の方法により測定し、その結果を以下の表2に示す。
【0190】
(比較例6)
上記実施例3の光重合組成物乳化液(4)で用いた分光増感色素系ボレート化合物(26)を用いなかった以外、上記実施例3と同様にして感光感熱転写材料(6)を得た。
上記感光感熱転写材料(6)を上記実施例3と同様にして、ステップウェッジ状の画像を形成した。
感光感熱転写材料(6)の発色濃度、サーモ処理前後のカブリ濃度を、上記実施例6と同様の方法により測定し、その結果を以下の表2に示す。
【0191】
【表2】
Figure 0003920485
【0192】
上記表2より明らかなように、本発明の感光感熱転写材料(3)、(4)を用い、かつ画像様に露光し、加熱した後支持体を剥離し、記録層表面を光照射する定着工程を経る本発明の画像記録方法により形成された画像は、高い感度が得られるとともに、現像と同時に受像紙上に効率よく画像形成でき、サーモ処理による地肌部の濃度上昇もほとんど認められなかった。得られた画像は、分光増感化合物による着色が記録層表面への光照射により十分に消色されるとともに、層内に残存するジアゾニウム塩化合物も失活、分解され、同時に形成画像も定着されるため、地肌部の白色性に優れ、かつ高コントラストであるとともに、保存安定性の良好な画像を受像紙上に効率よく形成することができた。
【0193】
一方、比較例4、5のように、本発明の感光感熱転写材料(4)、(5)を用いたが、露光、加熱後に、記録層表面を光照射する定着工程を経ずに形成された画像では受像紙上に画像形成できるものの、サーモ処理による地肌部の濃度上昇が極めて大きく、コントラストの高い鮮明な画像を得ることはできなかった。また、本発明に規定する光重合開始剤を用いなかった比較例6の感光感熱転写材料(6)では、十分な感度が得られず、画像形成することができなかった。
【0194】
【発明の効果】
本発明によれば、現像液等の使用が不要の完全ドライの処理系で、青〜赤色レーザー、または小型で安価な赤外レーザー等を用いて記録することができ、かつ高感度で、鮮鋭度が高く、色相再現性に優れた高画質な画像を形成できる、転写方式を採用した画像記録方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. 支持体上に、感光感熱転写層と熱接着層とを順次積層してなる感光感熱転写材料に光照射により潜像を形成する潜像形成工程と、
    感光感熱転写材料の熱接着層表面と受像材料とを密着させて加熱し、加熱により発色成分が潜像に応じて発色し、画像形成する発色工程と、
    支持体を剥離して感光感熱転写層を受像材料に転写する転写工程と、
    感光感熱転写層表面を光照射して形成画像を定着する画像定着工程と、
    を有することを特徴とする画像記録方法。
  2. 前記感光感熱転写層が、互いに異なる発色色相をもつ発色成分を含有する複数の感光感熱記録層を積層してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
  3. 前記複数の感光感熱転写層の各層に対して、それぞれの感光感熱記録層に含有する発色成分に応じた光照射を行って全ての層に潜像を形成する潜像形成工程を施した後、前記発色工程、転写工程、画像定着工程を順次行うことを特徴とする請求項2に記載の画像記録方法。
  4. 互いに異なる発色色相をもつ感光感熱転写層を有する複数の感光感熱転写材料のうち一つの材料に対して、光照射を行う潜像形成工程を施した後、前記発色工程、転写工程を順次行い、これを前記複数の感光感熱転写材料のそれぞれについて行った後、前記画像定着工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
  5. 前記互いに異なる発色色相が、黒、シアン、マゼンタ、イエローである複数の感光感熱転写層を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像記録方法。
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