JP3917241B2 - 車両用運転支援装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガードレール、側壁、駐車車両等の障害物との接触の可能性についての正確な情報を提供して狭路等への進入・走行が容易に行なえるようにドライバの運転を支援する車両用運転支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の安全性の向上を図るため、積極的にドライバの運転操作を支援する総合的な運転支援システム(ADA;Active Drive Assist system)が開発されている。このADAシステムは、車両の走行環境情報や自車両の走行状態から先行車両との衝突、障害物との接触、車線逸脱等の様々な可能性を推定して、安全を維持できないと予測される場合に、ドライバに対して報知、その他制御等を行なうものである。
【0003】
上記車両の走行環境情報を得るための装置としては、レーザ・レーダ装置等が従来より公知であるが、最近では車両に搭載した複数のカメラにより捉えた車両前方の風景や物体の画像情報を処理して、道路、交通環境を実用上十分な精度と時間で三次元的に認識することが可能になってきている。
【0004】
上記ADAシステムの機能の一つである狭路進入の可否の判定や、障害物との接触防止を図って狭路の走行をガイドする狭路ガイド機能を用いるものとして駐車補助装置があり、例えば、特開平6−234341号公報に、駐車空間を決定し、駐車位置及び現在位置との位置関係に基づき演算した誘導路に沿って自車両を駐車位置に誘導すべく効率的に音声指示を行う技術が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行技術の誘導路は駐車位置及び現在位置との位置関係に基づき演算されるため、駐車位置までの間に電柱や縁石等の障害物が存在する場合はその対応が難しい。
【0006】
すなわち、駐車させる場合以外の様々な状況に対応させなければならない狭路ガイドでは、走行する方向に様々な障害物があることを考慮して形成されなければならず、例えどんな障害物があってもこれを運転者が有効に回避して容易に走行できるようにする必要がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、走行する方向に例えどんな障害物があっても、これを運転者に報知して、運転者が容易に素早く的確な判断を行って障害物との接触を回避して狭路走行ができるようにガイドする確実で信頼性、実用性の高い車両用運転支援装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の本発明による車両用運転支援装置は、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、上記自車両の走行方向の道路形状と立体物を検出する走行環境検出手段と、上記走行状態と上記道路形状と上記立体物情報に基づき上記自車両の走行方向および側方を含む上記自車両周辺の環境の位置情報を、過去の上記自車両周辺の環境の位置情報を次々に更新して形成する環境位置情報形成手段と、上記自車両の走行方向に狭路がある際に、上記自車両周辺の環境の位置情報に基づき上記自車両がこの狭路に進入する理想の経路を演算する理想経路演算手段と、上記自車両の上記走行状態に基づき設定時間後の上記自車両の予想位置を推定する予想位置推定手段と、上記環境位置情報形成手段で形成した上記自車両周辺の環境の位置情報と上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記自車両の予想位置に基づき上記自車両の狭路走行をガイドするとともに、上記環境位置情報形成手段で形成した上記自車両周辺の環境の位置情報上に上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記自車両の予想位置とを表示する報知手段とを備えたものである。
【0009】
上記請求項1記載の車両用運転支援装置は、走行状態検出手段で自車両の走行状態を検出し、走行環境検出手段で上記自車両の走行方向の道路形状と立体物を検出し、環境位置情報形成手段で上記走行状態と上記道路形状と上記立体物情報に基づき上記自車両の走行方向および側方を含む上記自車両周辺の環境の位置情報を、過去の上記自車両周辺の環境の位置情報を次々に更新して形成する。そして、理想経路演算手段で上記自車両の走行方向に狭路がある際に、上記自車両周辺の環境の位置情報に基づき上記自車両がこの狭路に進入する理想の経路を演算し、予想位置推定手段で上記自車両の上記走行状態に基づき設定時間後の上記自車両の予想位置を推定して、報知手段で上記環境位置情報形成手段で形成した上記自車両周辺の環境の位置情報と上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記自車両の予想位置に基づき上記自車両の狭路走行をガイドするとともに、上記環境位置情報形成手段で形成した上記自車両周辺の環境の位置情報上に上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記自車両の予想位置とを表示する。これにより、運転者は上記自車両周辺の環境位置情報上に表示された上記理想経路と上記自車両の予想位置を視認することにより、障害物の回避の可能性を容易に認識できるとともに、これから行うべき運転操作も素早く容易に認識でき、また気付いていない障害物情報も知ることができる。
【0011】
さらに、請求項記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項1記載の車両用運転支援装置において、上記報知手段は、上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記予想位置とに基づき上記自車両の上記予想位置の上記理想経路からの外れ量を演算するとともに、この外れ量を最小にする速度修正量と舵角修正量とを演算して所定に表示するもので、運転者はこれから行うべき速度修正量と舵角修正量を視認して、これから行うべき運転操作をより素早く容易に認識できる。
【0012】
また、請求項記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項1又は請求項2記載の車両用運転支援装置において、上記報知手段は、上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記予想位置とに基づき上記自車両の上記予想位置の上記理想経路からの外れ量を演算するとともに、この外れ量を最小にする速度修正量と舵角修正量とを演算して所定に音声出力し、狭路走行をガイドするもので、運転者が障害物位置を車内の表示等を視認して確認することができなくても確実に上記理想経路に沿うようにガイドされる。
【0013】
さらに、請求項記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項記載の車両用運転支援装置において、上記報知手段は、上記音声出力のタイミングを上記自車両の走行状態に応じて可変して行うもので、車両速度、加速度等のパラメータにより適切な時期に音声ガイドされて運転操作が一層容易になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1〜図9は本発明の実施の第1形態に係わり、図1は車両用運転支援装置の機能ブロック図、図2は車両用運転支援装置の概略構成図、図3は狭路ガイド制御のフローチャート、図4は2次元マップ作成ルーチンのフローチャート、図5は狭路判定の範囲の説明図、図6は車両周辺の立体物位置情報の説明図、図7は前回の立体物位置情報を移動させる際の説明図、図8は車両前方の狭路に理想経路を設定する一例を示す説明図、図9はモニタへの表示の一例を示す説明図である。
【0015】
図2において、符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この自車両1に、狭路進入の可否の判定や、障害物との接触防止を図る機能を一つの機能として有し、ドライバの運転を支援する車両用運転支援装置2が搭載されている。以下、本発明の実施の第1形態では、車両用運転支援装置2の狭路進入の可否の判定や、障害物との接触防止を図る機能の部分についてのみ説明し、他の機能の部分については説明を省略する。
【0016】
上記車両用運転支援装置2は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組の(左右の)CCDカメラ3を有し、これら左右のCCDカメラ3は、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像するようになっている。そして、上記1組のCCDカメラ3で撮像した自車両1の走行方向の映像信号は、制御装置4に入力されるようになっている。
【0017】
また、上記車両用運転支援装置2は、走行状態検出手段として、上記自車両1の速度を検出する車速センサ5とハンドル角を検出するハンドル角センサ6からの各信号が上記制御装置4に入力されるように形成されており、上記制御装置4は上述の各情報(CCDカメラ3からの映像信号、車速センサ5およびハンドル角センサ6からの各信号)に基づいて狭路進入の可否の判定や、障害物との接触防止を図って狭路の走行をガイドする機能を達成すべく、警報器7と状態表示部8に制御出力するように構成されている。
【0018】
上記警報器7は、例えばブザー等であり、進入ができない寸法の狭路に走行していった場合や、走行を続けると障害物との接触の可能性が有る場合に上記制御装置4からの出力信号により警報音を発してドライバに報知するようになっている。
【0019】
また、上記状態表示部8は、上記制御装置4からの出力信号に応じて、車内に設けたモニタ等に、例えば図9に示すように、自車両1と障害物(塀H0 ,駐車車両H1 ,H2 ,電柱H3 )との位置関係や、自車両1がこのままの運転状態(ハンドル角θ、車両速度V)を維持した場合の設定時間後(例えば、2秒後)の予想位置1' 、および狭路を走行するための理想的な経路RRを上面から見た2次元マップで視覚的に表示するようになっている。図9に示す場合では、例えば理想的な経路RRを青色で、各障害物を赤色で、設定時間後の予想位置を黄色でというようにカラー表示で解りやすく表示されるようになっている。
【0020】
上記制御装置4は、マイクロコンピュータとその周辺回路で形成され、図1に示すように、画像認識部21、道路形状・障害物認識部22、狭路判定処理部23、警報制御部24、2次元マップ作成部25、理想経路演算部26、予想位置推定部27、報知制御部28で主に構成されている。
【0021】
上記画像認識部21は、上記CCDカメラ3で撮像した自車両1の走行方向の環境の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって画像全体に渡る距離情報を求める処理を行なって、三次元の距離分布を表す距離画像を生成して上記道路形状・障害物認識部22に出力するように形成されている。
【0022】
上記道路形状・障害物認識部22は、上記画像認識部21からの距離画像の距離分布についてヒストグラム処理を行うことで道路・障害物等の立体物等を認識し、自車両1から見た立体物の相対位置座標(相対位置情報)の計算を行なって、上記狭路判定処理部23と上記2次元マップ作成部25に出力するようになっている。
【0023】
すなわち上述のように、上記CCDカメラ3,画像認識部21および上記道路形状・障害物認識部22で走行環境検出手段が形成されている。
【0024】
上記狭路判定処理部23は、上記道路形状・障害物認識部22から入力された自車両1の走行方向の相対位置情報に基づき、自車両1の走行方向の略正面の設定範囲内に狭路があるか否かの判定を行うようになっている。
【0025】
ここで、上記設定範囲は、例えば図5に示すように、走行方向が前方の場合、車体前端から約20mまでの範囲で、自車両1の前方に延出した自車両1の左右の最外縁部(例えばドアミラー)の接線α1L,α1Rで囲まれる範囲と、この範囲の左右の外側にそれぞれマージンを加えた線α2L,α2Rで囲まれる範囲である。尚、遠方になるにつれ次第に大きくマージンを加えた線α2L' ,α2R' で囲まれる範囲としても良い。
【0026】
そして、走行方向で極低速または静止している車両、道路端部のガードレール、縁石、家屋の塀等の障害物の間隔を計測して道路等の実質的な道幅を検出し、道幅と自車両1の車体の最大幅及び余裕分との関係で、例えば道幅が車体の最大幅に40cmの余裕分を加算した値より小さく、車体の最大幅に10cmの余裕分を加算した値以上ある場合に狭路有りと判定して上記2次元マップ作成部25に出力するようになっている。
【0027】
また、上記狭路判定処理部23での判定の結果、狭路無しの場合は、さらに十分余裕をもって通行可能か否かが判定され、通行不可と判定した(車体の最大幅に10cmの余裕分を加算した値より狭い通行幅しかない、あるいは全く通行できる道が無い)場合は上記警報制御部24に出力するようになっている。
【0028】
上記警報制御部24は、上記狭路判定処理部23からの信号で、運転者に対して通行不可能の注意をすべく、前記警報器7から警報音を発するようになっている。この場合の警報音も、障害物に近いほど音量が大きく、また間欠して行っていた警報間隔も短くなるようにして効果的に運転者に報知できるようになっている。さらに、明らかに障害物との衝突が避けられない場合、自動ブレーキ装置(図示せず)が作動されるようになっていてもよい。
【0029】
上記2次元マップ作成部25は、環境位置情報形成手段として形成され、前記ハンドル角センサ6で検出したハンドル角θと、前記車速センサ5で検出した車両速度Vと、上記道路形状・障害物認識部22からの相対位置情報を基に、過去(前回)に作成した環境位置情報(2次元マップ)を次々に更新して、自車両1の走行方向を含む自車両1周辺の環境の2次元マップを形成して、上記理想経路演算部26と、上記予想位置推定部27に出力するようになっている。
【0030】
上記車両周辺の環境位置情報(2次元マップ)は、図6に示すように、XY平面上に予め設定した自車両1を中心とする領域QRST内の立体物の位置情報であり、今回演算して得た上記道路形状・障害物認識部22からの相対位置情報(領域PQR内の情報)と、前回までに得た上記道路形状・障害物認識部22からの情報とで形成されている。
【0031】
すなわち、前回演算して記憶しておいた立体物位置情報の領域(2次元マップ)Q' R' S' T' から、今回、自車両1が移動して(移動量M=(車速)・(計測時間))、新たに上記道路形状・障害物認識部22から領域PQRの相対位置情報を得ると、前回の2次元マップの領域Q' R' S' T' を上記移動量Mだけ移動し、今回の車両位置に対する情報になるように更新するとともに、この更新した前回の2次元マップの領域Q' R' S' T' から、記憶領域外に出たもののデータ(領域TSS' T' のデータ)と、新たに得た領域PQRの相対位置情報に重複する領域PEFのデータとを消去し、上記領域PQRの相対位置情報を追加して今回の2次元マップの領域QRSTを形成するようになっている。尚、図6では、解りやすくするため、車両が前進移動する場合で示しているが、車両が旋回移動する場合等でも同様にして今回の2次元マップが求められる。
【0032】
そしてこのような2次元マップを用いて狭路走行のガイドをすることにより、従来のような車両の走行方向での立体物の位置が認識できることはもちろん、一旦車両の走行方向で認識された立体物は、車両の移動に伴って車両側方になってしまった場合でもその位置を把握することができ、他にカメラあるいは立体物認識装置を特別に付加することなく、車両周辺の広い範囲で立体物の認識を行うことができるようになっている。
【0033】
ここで、検出した自車両1の移動量を基に、前回の立体物の位置情報を移動させるには、例えば、以下の算出式により行う。
【0034】
図7において、自車両1が直進する場合、A点(xa ,ya )にある物体は、B点(xb ,yb )に相対的に移動する(xa =xb )。ここで、ハンドル角θによる実舵角をδとすると、直進走行時はδ=0であり、車両の移動量をΔMとして、yb =ya −ΔMとなる。すなわち、直進走行時では、座標(xold ,yold )で示す前回の2次元マップは、座標(xnew ,ynew )で示す今回の新たな2次元マップに以下の2式により移動される。
xnew =xold …(1)
ynew =yold −ΔM …(2)
尚、上記実舵角δは、厳密に0でなくとも、予め設定しておいた範囲内の値であれば直進走行とみなすようになっている。この設定範囲は、車速等のパラメータにより可変設定されるものであっても良い。
【0035】
また、自車両1が旋回する場合(δ≠0の場合)、B点(xb ,yb )にある物体はC点(xc ,yc )に相対的に移動する。この旋回の中心座標Pc(XCE,YCE)は、XCEを実舵角δによる車両諸元に基づいて予め設定しておいたテーブルの参照により求める(f(δ)で示す)ものとして、
XCE=f(δ) …(3)
YCE=(車輪軸までのオフセット)=0 …(4)
となる。
【0036】
さらに、旋回の回転角θc は、カメラ位置から左後輪までのX方向のオフセットをXW として、
θc =ΔM/(XCE−XW ) …(5)
で算出される。
【0037】
上記中心座標Pc(XCE,YCE)、旋回角θc を用いて、旋回走行時では、座標(xold ,yold )で示す前回の2次元マップは、座標(xnew ,ynew )で示す今回の新たな2次元マップに以下のように移動される。
r=((xold −XCE)2 +(yold −YCE)2 1/2
a=arctan((yold −YCE)/(xold −XCE))
とすると、
xnew =r・cos (a+θc )+XCE …(6)
ynew =r・sin (a+θc )+YCE …(7)
上記理想経路演算部26は、上記2次元マップ作成部25で演算した2次元マップに基づき、自車両1の走行方向に狭路がある際に自車両1がこの狭路に進入する場合の理想の経路を演算する理想経路演算手段として形成されており、この理想経路演算部26で求めた理想経路は上記報知制御部28に出力されるようになっている。
【0038】
例えば、図8(a)に示すように、自車両1の前方に障害物としての駐車車両H1 と駐車車両H2 で形成される狭路SP(駐車車両H1 の左側最外縁部の接線・直線L1 と駐車車両H2 の右側最外縁部の接線・直線L2 との間)が有り、この狭路SPに進入するための理想の経路を演算する場合は、上記2次元マップ作成部25から車両周辺の情報として図8(b)に示すような2次元マップが入力される。
【0039】
そして、図8(c)に示すように、この2次元マップ上で直線L2 よりも狭路SP側に予め設定しておいたマージンを持たせた直線L3 を引き、駐車車両H1 ,H2 の自車両1側の直線との交点をPt1とし、電柱H3 の周囲に一定の幅でマージンを持たせ、自車両1側との接触の可能性の最も高い点をPt2とする。
【0040】
この点Pt2を原点とし、狭路SPを進む方向にy軸の正方向を取った座標系で、x=−k1 ・tanh(k2 ・y)、(k1 は1程度)が直線L3 を漸近線として点Pt1付近でほぼ直線L3 に沿うように設定する。この式で出来た曲線L4 を自車両1の左側最外縁が通る理想的な軌道として右側の軌道も求めるのである。
【0041】
上記予想位置推定部27は、予想位置推定手段としてのもので、前記車速センサ5からの車両速度、前記ハンドル角センサ6からのハンドル角、上記2次元マップ作成部25からの2次元マップに基づき、この2次元マップ上で自車両1がこのままの運転状態を維持した場合の設定時間後(例えば、2秒後)の予想位置を、自車両1の車両諸元で予め設定しておいた車両の運動方程式等により求めて予想するようになっており、求めた予想位置は上記報知制御部28に出力されるようになっている。
【0042】
上記報知制御部28は、上記理想経路演算部26で求めた理想経路と上記予想位置推定部27で求めた予想位置とを合成し、上記2次元マップ作成部25で作成した2次元マップ上に共に表示させるように、前記車室内に設けたモニタ等の状態表示部8に信号出力するように形成されており、上記報知制御部28とこの状態表示部8とで報知手段が形成されている。このため運転者は状態表示部8を視ることにより、障害物の回避の可能性を容易に認識できるとともに、これから行うべき運転操作も素早く容易に認識でき、また気付いていない障害物情報も知ることができるようになっている。
【0043】
次に、上記構成による車両用運転支援装置の作用について、図3のフローチャートを基に説明する。
プログラムがスタートすると、まず、ステップ(以下「S」と略称)101で、車速センサ5により自車両1の速度Vを、ハンドル角センサ6により自車両1のハンドル角θを検出して読み込むとともに、左右のCCDカメラ3で自車両1の走行方向の環境を撮像して制御装置4の画像認識部21に取り込む。この1組のステレオ画像対は、上記画像認識部21で、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって画像全体に渡る距離情報を求める処理が行なわれ、三次元の距離分布を表す距離画像が生成されて道路形状・障害物認識部22に出力される。そして、この道路形状・障害物認識部22で、上記画像認識部21からの距離画像の距離分布についてヒストグラム処理を行うことで道路・障害物等の立体物等を認識し、自車両1から見た立体物の相対位置座標(相対位置情報)の計算が行なわれて、上記狭路判定処理部23と上記2次元マップ作成部25に出力される(すなわち、道路・障害物情報の読み込みが行われる)。
【0044】
その後、S102に進み、進行方向(自車両1の走行方向の略正面の設定範囲内)に狭路が有るか否かの判定が行われる。そして、走行方向で極低速または静止している車両、道路端部のガードレール、縁石、家屋の塀等の障害物の間隔を計測して道路等の実質的な道幅Dを検出し、道幅Dと自車両1の車体の最大幅W及び余裕分との関係で、例えば車体の最大幅Wに40cmの余裕分を加算した値より小さく、車体の最大幅Wに10cmの余裕分を加算した値以上(W+10≦D<W+40)の道幅Dを狭路として、狭路無しの場合(W+10>DまたはD≧W+40の場合)はS103に進む。
【0045】
上記S103では、さらに上記通路(狭路ではない通路)が通行可能な通路であるか否かの判定を行い、走行するのに十分な余裕がある通路、すなわち、D≧W+40の通路の場合は上記S101に戻り、通行不可能な通路、すなわち、W+10>Dの通路の場合はS104へと進む。尚、上記S102、S103は、狭路判定処理部23で行われる処理である。
【0046】
上記S104に進むと、警報制御部24が、運転者に対して通行不可能の注意をすべく、ブザー等の警報器7から警報音を発する。この場合の警報音も、障害物に近いほど音量が大きく、また間欠して行っていた警報間隔も短くなるようにして効果的に運転者に報知する。さらに、明らかに障害物との衝突が避けられない場合、自動ブレーキ装置(図示せず)が作動される。そして、このS104の処理の後、プログラムを抜ける。
【0047】
一方、上記S102で自車両1の進行方向に狭路が有る場合(W+10≦D<W+40の場合)はS105へ進む。このS105に進むと、上記2次元マップ作成部25で、後述する2次元マップ作成ルーチンに従って、ハンドル角θと車両速度Vと相対位置情報(道路・障害物情報)を基に、過去(前回)に作成した環境位置情報(2次元マップ)を次々に更新して、自車両1の走行方向および側方を含む自車両1周辺の環境の2次元マップを形成する。
【0048】
その後、S106へ進み、理想経路演算部26で、上記2次元マップ作成部25で演算した2次元マップに基づき、自車両1の走行方向に狭路がある際に自車両1がこの狭路に進入する場合の理想の経路を演算する。
【0049】
次いで、S107へ進み、予想位置推定部27で、ハンドル角θ、車両速度V、2次元マップに基づき、この2次元マップ上で自車両1がこのままの運転状態を維持した場合の設定時間後(例えば、2秒後)の予想位置を、自車両1の車両諸元で予め設定しておいた車両の運動方程式等により求めて予想する。
【0050】
そして、S108へ進んで、報知制御部28は、車室内に設けたモニタ等の状態表示部8に信号出力し、上記理想経路演算部26で求めた理想経路と上記予想位置推定部27で求めた予想位置とを合成し、図9に示すように上記2次元マップ作成部25で作成した2次元マップ上に共に表示させてプログラムを抜ける。
【0051】
このため運転者は状態表示部8を視ることにより、障害物の回避の可能性を容易に認識できるとともに、これから行うべき運転操作も素早く容易に認識でき、また気付いていない障害物情報も知ることができる。
【0052】
次に、図4は2次元マップ作成部25で実行される2次元マップ作成ルーチンのフローチャートを示し、このルーチンがスタートされると、まず、S201でハンドル角θによる実舵角δ、車両移動量ΔM(車速と計測時間から演算)、前回の2次元マップを読み込み、その後、S202に進んで実舵角δの値から旋回状態か直進状態かを判定し、直進状態の場合にはS203に進み、旋回状態の場合にはS204に進む。
【0053】
上記S202で直進状態と判定してS203に進むと、前回の2次元マップに車両移動量ΔMを加算して(前記(1)式,(2)式に基づく処理を行なって)、S206に進む。
【0054】
一方、上記S202で旋回状態と判定してS204に進むと、実舵角δ、車両移動量ΔMから旋回中心PC 、旋回角θc を算出し(前記(3)式,(4)式,(5)式に基づく算出)、S205に進んで前回の2次元マップを上記旋回中心PC を中心に旋回角θc 回転させ(前記(6)式,(7)式に基づく処理を行なって)、S206に進む。
【0055】
上記S203あるいは上記S205からS206に進むと、前回の2次元マップの中で、上記S203あるいは上記S205の処理により記憶領域外に出たもののデータの消去を行なう。
【0056】
次いで、S207に進み、前回の2次元マップの中で、上記S203あるいは上記S205の処理により立体物の新たな相対位置情報と重複するデータを消去する。
【0057】
次に、S208に進み、自車両1から見た立体物の相対位置座標(相対位置情報)を読み込み、S209に進んで、上記S207で形成した前回の2次元マップに上記新たな相対位置情報を加え記憶する。この立体物位置情報が今回更新された新たな2次元マップである。
【0058】
尚、記憶された今回の新たな2次元マップは、次回制御プログラムが実行される際には、前回の2次元マップとして読み込まれ処理される。この様に2次元マップを作成するようになっているため、一旦車両前方で認識された立体物が車両の移動に伴って車両側方になってしまった場合でもその位置を把握することができ、車両前方に存在する障害物に対する運転支援はもちろん、車両側方に存在する障害物に対する運転支援も容易に行なうことが可能である。
【0059】
以上のように本発明の実施の第1形態によれば、駐車させる場合以外の様々な状況に対応して、走行する方向に例えどんな障害物があっても、これを運転者に報知して、運転者が容易に素早く的確な判断を行って障害物との接触を回避し、狭路走行ができるようにガイドする確実で信頼性、実用性の高いものとなる。
【0060】
次に、図10〜図13は本発明の実施の第2形態に係わり、図10は車両用運転支援装置の機能ブロック図、図11は車両用運転支援装置の概略構成図、図12は狭路ガイド制御のフローチャート、図13はモニタへの表示の一例を示す説明図である。尚、本発明の実施の第2形態は、理想経路演算部で演算した理想経路と予想位置推定部で推定した自車両の予想位置とを表示するとともに、上記理想経路と上記予想位置とに基づき自車両の上記予想位置の上記理想経路からの外れ量を演算し、この外れ量を最小にする速度修正量と舵角修正量とを演算してこれらを所定に表示する一方、上記速度修正量と上記舵角修正量とを自車両の走行状態に応じて可変して所定に音声出力し、狭路走行をガイドするようにしたものである。
【0061】
図10において、符号41は車両用運転支援装置を示し、この車両用運転支援装置は1組のCCDカメラ3で撮像した自車両1の走行方向の映像信号が、制御装置42に入力されるようになっている。
【0062】
また、上記車両用運転支援装置41は、走行状態検出手段として、前記発明の実施の第1形態と同様、車速センサ5、ハンドル角センサ6からの各検出信号が上記制御装置42に入力されるように形成されており、上記制御装置42は上述の各情報に基づいて狭路進入の可否の判定や、障害物との接触防止を図って狭路の走行をガイドする機能を達成すべく、警報器7、状態表示部8、操作ガイド表示部43、左音声出力部44L、右音声出力部44Rに制御出力するように構成されている。
【0063】
上記操作ガイド表示部43は、上記制御装置42からの出力信号(後述する舵角修正量と速度修正量)に応じて、車内に設けたモニタ等に、例えば図13に示すように、上記状態表示部8とともに表示され(Apのエリア)、ハンドル角をどの程度修正すれば良いか(APHのエリア)、車速をどの程度修正すれば良いか(APVのエリア)を視覚的に表示するようになっている。
【0064】
また、上記左右の音声出力部44L,44Rは、上記制御装置42からの出力信号(上記舵角修正量と速度修正量)に応じて、予め記録媒体に記録しておいた音声信号を用いて、左への指示ならば上記左音声出力部44Lを作動させて例えば「左方向へ少しハンドルを回して下さい」と音声出力する一方、右への指示ならば上記右音声出力部44Rを作動させて例えば「右方向へ少しハンドルを回して下さい」と音声出力するようになっている(速度のみ可変指示の場合は上記左右の音声出力部44L,44R両方から行う)。
【0065】
ここで、上記左右の音声出力部44L,44Rから音声出力するタイミングは、上記制御装置42により、予め現在の車速や加速度によって変化させられるようになっている。例えば、現在の車速は低くても加速中ならば早めの音声出力を発し、減速中ならば遅めに音声出力を発するようになっている。
【0066】
上記制御装置42は、マイクロコンピュータとその周辺回路で形成され、図10に示すように、画像認識部21、道路形状・障害物認識部22、狭路判定処理部23、警報制御部24、2次元マップ作成部25、理想経路演算部26、予想位置推定部27、報知制御部45で主に構成されている。
【0067】
上記報知制御部45は、上記理想経路演算部26で求めた理想経路と上記予想位置推定部27で求めた予想位置とを合成し、上記2次元マップ作成部25で作成した2次元マップ上に共に表示させるように、前記車室内に設けたモニタ等の状態表示部8に信号出力するように形成される。また、上記報知制御部45は、上記理想経路と上記予想位置とに基づき自車両1の上記予想位置の上記理想経路からの外れ量を演算し、この外れ量を最小にする速度修正量と舵角修正量とを車両諸元に基づき演算して、これらを上記操作ガイド表示部43に出力するとともに、上記速度修正量と上記舵角修正量とを自車両の走行状態(現在の速度、加速度)に応じて発生タイミングを可変して上記左右の音声出力部44L,44Rに信号出力するようになっている。すなわち、上記報知制御部45、状態表示部8、操作ガイド表示部43、左右の音声出力部44L,44Rで報知手段が形成されている。
【0068】
このような構成で本発明の実施の第2形態では、図12のフローチャートに示すようにプログラムが実行される。本発明の実施の第2形態は、S101〜S107まで前記発明の実施の第1形態と同様の処理が行われ、上記S107で、ハンドル角θ、車両速度V、2次元マップに基づき、この2次元マップ上で自車両1がこのままの運転状態を維持した場合の設定時間後の予想位置を、自車両1の車両諸元で予め設定しておいた車両の運動方程式等により求めて予想した後、S301へ進む。
【0069】
上記S301では、報知制御部45で上記理想経路と上記予想位置とに基づき自車両1の上記予想位置の上記理想経路からの外れ量を演算し、この外れ量を最小にする速度修正量と舵角修正量とを車両諸元に基づき演算する。
【0070】
そして、S302へ進み、上記報知制御部45は、上記理想経路と上記予想位置とを合成し、2次元マップ上に共に表示させるように、車室内に設けたモニタ等の状態表示部8に信号出力するとともに、上記速度修正量と上記舵角修正量を操作ガイド表示部43に出力して表示させる一方、上記速度修正量と上記舵角修正量を自車両の走行状態(現在の速度、加速度)に応じて発生タイミングを可変して上記左右の音声出力部44L,44Rに信号出力して音声出力させ走行ガイドする。
【0071】
このように本発明の実施の第2形態では、前記第1形態での効果に加え、速度修正量と舵角修正量とを演算してこれらを所定に表示することで、運転者はこれから行うべき速度修正量と舵角修正量を視認して、これから行うべき運転操作をより素早く容易に認識できるようになっている。
【0072】
また、速度修正量と舵角修正量は音声出力されるので、運転者が障害物位置を車内の表示等を視認して確認することができなくても確実に上記理想経路に沿うようにガイドされる。そしてこの音声出力のタイミングも自車両の走行状態に応じて可変して行なわれるため、車両速度、加速度等のパラメータにより適切な時期に音声ガイドされて運転操作が一層容易になる。
【0073】
尚、上記各発明の実施の形態では、走行状態検出手段として車速センサとハンドル角センサを設けた例で説明しているが、他のセンサをさらに付加して制御するようにしても良い。例えばヨーレートセンサ等を設けてヨーレートを制御パラメータとしても良い。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、走行する方向に例えどんな障害物があっても、これを運転者に報知して、運転者が容易に素早く的確な判断を行って障害物との接触を回避して狭路走行ができるようにガイドされ、確実で信頼性、実用性が高いという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態に係わり、車両用運転支援装置の機能ブロック図
【図2】同上、車両用運転支援装置の概略構成図
【図3】同上、狭路ガイド制御のフローチャート
【図4】同上、2次元マップ作成ルーチンのフローチャート
【図5】同上、狭路判定の範囲の説明図
【図6】同上、車両周辺の立体物位置情報の説明図
【図7】同上、前回の立体物位置情報を移動させる際の説明図
【図8】同上、車両前方の狭路に理想経路を設定する一例を示す説明図
【図9】同上、モニタへの表示の一例を示す説明図
【図10】本発明の実施の第2形態に係わり、車両用運転支援装置の機能ブロック図
【図11】同上、車両用運転支援装置の概略構成図
【図12】同上、狭路ガイド制御のフローチャート
【図13】同上、モニタへの表示の一例を示す説明図
【符号の説明】
1 自車両
2 車両用運転支援装置
3 CCDカメラ(走行環境検出手段)
4 制御装置
5 車速センサ(走行状態検出手段)
6 ハンドル角センサ(走行状態検出手段)
7 警報器
8 状態表示部(報知手段)
21 画像認識部(走行環境検出手段)
22 道路形状・障害物認識部(走行環境検出手段)
23 狭路判定処理部
24 警報制御部
25 2次元マップ作成部(環境位置情報形成手段)
26 理想経路演算部(理想経路演算手段)
27 予想位置推定部(予想位置推定手段)
28 報知制御部(報知手段)

Claims (4)

  1. 自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、上記自車両の走行方向の道路形状と立体物を検出する走行環境検出手段と、上記走行状態と上記道路形状と上記立体物情報に基づき上記自車両の走行方向および側方を含む上記自車両周辺の環境の位置情報を、過去の上記自車両周辺の環境の位置情報を次々に更新して形成する環境位置情報形成手段と、上記自車両の走行方向に狭路がある際に、上記自車両周辺の環境の位置情報に基づき上記自車両がこの狭路に進入する理想の経路を演算する理想経路演算手段と、上記自車両の上記走行状態に基づき設定時間後の上記自車両の予想位置を推定する予想位置推定手段と、上記環境位置情報形成手段で形成した上記自車両周辺の環境の位置情報と上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記自車両の予想位置に基づき上記自車両の狭路走行をガイドするとともに、上記環境位置情報形成手段で形成した上記自車両周辺の環境の位置情報上に上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記自車両の予想位置とを表示する報知手段とを備えたことを特徴とする車両用運転支援装置。
  2. 上記報知手段は、上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記予想位置とに基づき上記自車両の上記予想位置の上記理想経路からの外れ量を演算するとともに、この外れ量を最小にする速度修正量と舵角修正量とを演算して所定に表示することを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
  3. 上記報知手段は、上記理想経路演算手段で演算した上記理想経路と上記予想位置推定手段で推定した上記予想位置とに基づき上記自車両の上記予想位置の上記理想経路からの外れ量を演算するとともに、この外れ量を最小にする速度修正量と舵角修正量とを演算して所定に音声出力し、狭路走行をガイドすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用運転支援装置。
  4. 上記報知手段は、上記音声出力のタイミングを上記自車両の走行状態に応じて可変して行うことを特徴とする請求項記載の車両用運転支援装置。
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