JP3914363B2 - 再溶解性酸架橋型高分子及び該高分子と光酸発生剤とを組み合わせた感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸性雰囲気において架橋(硬化)し、該架橋化合物が比較的低温の加熱により除去容易な化学構造の化合物に分解する特性を有する新規なホモ又は共重合体である再溶解性酸架橋型高分子化合物に関する。ここで、再溶解融解性酸架橋型高分子とは、酸性雰囲気において架橋(硬化)し、該架橋化合物が比較的低温の加熱により除去容易な化学構造の化合物に分解する特性を有する高分子(オリゴマーに相当するものを含む)を意味する。そして、該酸性雰囲気を形成する手段として、従来から当該技術分野において公知の光酸発生剤を組み合わせることにより、レジスト、接着剤などとして利用した後の膜を、従来のレジストや光硬化接着剤などのように、物理的、化学的手段を要することなく、緩やかな加熱によって容易に除去できるものに変性させることができる感光性樹脂組成物として利用できる。
【0002】
【従来技術】
酸などにより、架橋(硬化)する重合体高分子化合物は、(フォト)リソグラフィーの技術分野、これを応用して種々の微細加工に利用する(フォト)レジストとしての応用分野、非溶剤型(光)硬化性の接着剤(インクのビヒクル)などとして利用されている。そして、前記フォトリソグラフィーなどの分野では、重合体高分子化合物自体(天然の高分子)に感光性基を導入したもの、感光性材料として重合体高分子化合物(天然の高分子)以外の化合物を利用して、および、該感光成分の光化学反応により生成した化学種によって、該重合体高分子化合物(天然の高分子)を、除去し易い特性に変える(ポジ型)又はより化学的又は物理的抵抗性を増加する特性に変える(ネガ型)感光性組成物としてするものなどが色々開発されてきた。
【0003】
このような中に、例えば特開2000−26444号公報には、重合体を形成するオキセタン化合物、酸素を環員とする4員環が提案されている。前記公報の中では、先行技術として多くのオキセタン化合物が提案され、光硬化型オキセタン化合物として利用されることが提案されてきているが、該先行技術の多くのオキセタン化合物は、オキセタン基以外にエーテル結合を含まないものである。ただ、特開平7−17958号公報にはオキセタン基以外にエーテル結合を持つ化合物が開示され(段落0010の〔化5〕)、その反応性について言及し、シクロヘキシルエポキシドが最も反応性が高く、該オキセタン化合物は重合性が乏しいと述べ、前記公報に記載のオキセタン化合物は重合性が良いと述べている。また、得られた前記オキセタン化合物から製造された重合体を光酸発生剤と共の用いられることが記載されておる。また、前記オキセタン化合物からの重合体は、耐熱性や各種被着体に対する接着剤としての利用についても言及している。
【0004】
ところで、最近では、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、更にその他のフォトファブリケーション工程に使用されるより微細加工(最小パターン幅はサブハーフミクロンの領域)用フォトレジストの開発が盛んである。1ギガビット以上の集積度を持つDRAMの製造のためには、より短波長の光源によるレジストパターンの形成が必要であるとされており、ArF エキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、更にはX線、電子線の利用が可能な上記レジスト材料の開発が考えられている。
【0005】
しかしながら、上記、接着剤、(フォト)レジスト材料などの開発は、ほとんど加工性能に向けられており、ここ数年来、化学技術の分野において多くの関心が向けられている、地球環境の問題も視野に入れた開発とはほど遠いものである。例えば、(フォト)レジスト材料などは、利用後は被加工材料から、また、製品の寿命の後は、被加工材料などから該(フォト)レジスト材料を取り除く必要がある。従来技術では、前記(フォト)レジスト材料の除去のためには、該(フォト)レジスト材料は化学的にも、機械的にも比較的安定なものであるから、極めて過酷な化学的、機械的手段を用いることが必要であった。その結果、多くの費用がかかるだけでなく、環境の汚染をももたらすという極めて不本意な事態を引き起こしているというのが、徐々に改善の意識はあるものの、現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記従来の接着剤、(フォト)レジスト材料などがもっている不都合を改善することである。しかしこの課題は、架橋性と架橋後の分解容易性という、反対の特性と見えるような特性を同時に持つ分子を設計をするとい問題であるが、一方の特性に単純化して、高分子化合物の持つ構造と外部手段による分解性を見出すことを考えた。外部手段として、従来用いられていた化学的手段、機械的手段が考えられないとすれば、熱という物理的手段と高分子化合物の持つ構造との関係を検討する以外にない。このような着想のもとに鋭意検討する中で、カルボニル基又は芳香族環に結合する酸素と3級炭素との結合は、酸性雰囲気において、緩やかな加熱によって切れることを発見し、前記本発明の課題を解決した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、(1)下記架橋基Aで表される酸性雰囲気で架橋を形成する化学構造を有する下記の式1で表されるモノマー単位からなるホモ重合体又は少なくとも式1のモノマー単位を一部構成成分として含む共重合体である再溶解性酸架橋型高分子化合物。
【0008】
【化3】
【0009】
(式1において、RxはHまたは低級アルキルであり、R1は低級アルキル、R2は置官基を有していてもよいアルキル、R3は酸性雰囲気において架橋を形成する下記の化学基Aである。)。
【0010】
【化4】
【0011】
〔化学基Aにおいて、n1は0または整数、R4はメチル基またはエチル基である。〕
また、共重合体における共重合成分としては、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、アクリルアミド系、メタアクリルアミド系、N−ビニルピロリドン、非置換のフェニル基またはOH、COOH、エステル基、アルコキシ基、O−C(=O)−OC(CH3)3で置換されたフェニル基を有するスチレン型モノマーからなる群から選択され、最大90モル%を共重合成分とすることができる。
【0012】
本発明の第2の発明は、(2)前記(1)に記載のホモ又は共重合体である再溶解性酸架橋型高分子化合物に光酸発生剤を配合したことを特徴とする光架橋(硬化)・加熱分解性高分子組成物感光性組成物である。
【0013】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明のホモ又は共重合体である再溶解性酸架橋型高分子化合物は前記したとおりであり、共重合体成分としては、当該分野において周知の多くの不飽和モノマー類を用いることができ、前記本発明の特性である、緩やかな加熱によって除去性を向上させる特性を低下させてしまわないモノマー(例えばメタクリル酸メチル)を前記本発明の必須の構成モノマーに対して、90モル%の範囲まで共重合しても良い。共重合成分としては、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、アクリルアミド系、メタアクリルアミド系、N−ビニルピロリドン、非置換のフェニル基またはOH、COOH、エステル基、アルコキシ基、O−C(=O)−OC(CH3)3で置換されたフェニル基を有するスチレン型モノマーなどを好ましいものとして挙げることができる。
【0014】
B.光酸発生剤は、前記本発明のホモ又は共重合体である再溶解性酸架橋型高分子化合物における、R3の架橋(硬化)基に作用して、例えばエポキシ環を開環させて前記高分子化合物同士及び/又は被接着部材の表面と架橋(結合)させる酸性活性物質を放出する化合物を意味し、当該分野において周知である。好ましいものとしては、オニウムイオン(カチオン)とアニオンとの塩、例えば、一般式3のスルホニウム塩型の塩
【0015】
【化5】
【0016】
(式3中Rは、炭素数11までのアルコキシキ基、X−は、PF6 −、AsF6 −、CF3SO3 −などのアニオンを表す。)、具体的にはトリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホン酸との塩、または下記の式4の(a)、(b)のヨードニウム型の塩
【0017】
【化6】
【0018】
(式4中、Rは炭素数8以上のアルキル基であり、X−は、PF6 −、SbF6 −、p−トルエンスルホン酸イオン、または式5などのアニオンを表す、
【0019】
【化7】
【0020】
であり、具体的にはジフェニルヨードニュウムのp−トルエンスルホン酸との塩、R−S(=O)2−O−Ry(式6)表されるイミノスルホナート型化合物(式6中、Rは、低級アルキル基、置換または未置換のフェニル基、CF3などを表し、Ryは
【0021】
【化8】
【0022】
の基1、(a)、(b)を表す。)、具体的には、9−フルオレニリデンイミノp−トルエンスルホナート、または下記の式7の(a)〜(c)のイミドスルホナート型化合物
【0023】
【化9】
【0024】
(式7中Rは、低級アルキル基、置換または未置換のフェニル基、CF3などを表す。)などを挙げることができる。これら、光酸発生剤は、単独でも、また2種以上組み合わせて使用できる。また、光増感剤などと併用することもできる。配合量は、必要とする光反応性を考慮して適宜決定しうるが、前記再溶解性酸架橋型高分子化合物100重量部に対して10〜0.5重量部の割合とすること、特に、5〜1重量部とすることが良い。
【0025】
C.光酸発生剤を分解し、酸性活性物質を発生するために照射する光エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などを用いることができるが、簡易な光源としては、紫外線が使用される。本発明の高分子化合物の1態様である、メタクリル酸α−テルピネオールエステルエポキシドの重合体を用いた場合の、露光(光エネルギー照射)による架橋(硬化)と加熱による化学構造の変化の概念を図1に示す。また、本発明の重合高分子化合物(ポリマー:P)と光酸発生剤(AR)を含む組成物を用いて基体(BS)上に感光層(PSL)を形成し、適当な光源(L)による露光、現像による架橋硬化画像(PH:ネガ型)の形成、及び前記架橋硬化画像を利用した後に該画像を除去するのに、緩やかな加熱処理後に行う、本発明の感光性組成物を用いた場合の工程の特徴を概念的に図2に示す。
【0026】
【実施例】
実施例1
A.メタクリル酸α−テルピネオールエステルの合成
α−テルピネオール34.8g(0.226モル)、触媒として4−ジメチルアミノピリジン2.7g(0.0221モル)を三口フラスコに入れ蒸留したピリジン31mLに溶かす。3つ口フラスコを氷水に入れ反応溶液を冷やしながら塩化メタクリロイルの塩化メチレン溶液(塩化メタクリロイル24.0g(0.230モル)を蒸留した塩化メチレ110mLに溶かして調製)をゆっくり滴下してゆく。その溶液を撹拌しながら室温で40時間反応させた。反応溶液を2NのH2SO4水溶波200mLで洗浄し、水層が酸性になったことを確認してから水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、水層が中性になったことを確認し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒の塩化メチレンをエバポレーターで留去し、酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v:v)の混合溶媒でシリカゲルのカラムで精製した。収量25.6g、収率51%であった。得られた化合物(式(8)のNMRの分析結果は
1H−NMR(CDCl3、ppm)
δ 5.90(s,1H,Ha)
5.40(s,1H,Hb)
5.30(s,1H,Hc)
1.20〜2.10(m,19H,Hd)である。
【0027】
【化10】
【0028】
B.メタクリル酸α−テルピネオールエステルエポキシドの合成
2Lの4つ口フラスコにスターラーピースを入れpHメーター電極と滴下ろうとを取り付ける。フラスコにメタクリル酸α−テルピネオールエステル25.6g(0.115モル)、塩化メチレン190mL、アセトン190mL(2.64モル)、リン酸緩衝溶液(pH7.4)630mL、18−クラウン−6−エーテル1.26g(0.00477モル)を入れる。反応溶液を水浴中で5℃に保ちながら別途調製したオキソン(OXONE:商品名)(2KHSO5・K2SO4・KHSO4)水溶波〔オキソン107g(0.174モル)を水400mLにとかしたもの〕と水酸化カリウム水溶演〔KOH、40g(0.713モル)を水250mLに溶かしたもの〕をpHが7.1〜7.5になるように満下してゆく。オキソン水溶液を1時間かけて満下し、その後もpH調整に水酸化カリウム水溶液を添加しながら2時間反応させる。その後、反応溶液をろ通し50mLの塩化メチレンで3回抽出する。その後有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒の塩化メチレンをエバポレーターで留去し、酢酸エチル:ヘキサン=3:1(v:v)の混合溶媒でシリカゲルのカラムで精製した。収量14.3g、収率52%であった。得られた化合物(式9)のNMRは、以下のとおりである。
1H−NMR(CDCl3、ppm)
δ 5.90(s,1H,Ha)
5.40(s,1H,Hb)
2.90〜3.10(m,1H,Hc)
1.20〜2.10(m,1H,Hd)
【0029】
【化11】
【0030】
C.メタクリル酸α−テルピネオールエステルエポキシドの重合仕込量は以下の通りである。メタクリル酸α−テルピネオールエステルエポキシド 2.5g(0.0105モル)アゾビスイソブチロニトリル(A1BN) 0.030g(0.000183モル)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 4mLモノマー、開始剤AIBNおよぴ溶媒としてDMFをコック付き試験管に入れ混合した。液体窒素を用いて凍結脱気した後、30℃で高圧水銀灯UV−35フィルターを用いて335nm以上の波長の光を照射重合した。重合反応は2時間40分であった。再沈精製はメタノール:クロロホルム系で4回行った。収率 44% Mn=50000 Mw/Mn=2.2 Tg=118℃
【0031】
実施例2
光不溶化率の測定(光架橋度の測定に相当しうる)ポリマーと光酸発生剤(9−フルオレニリデンイミノp−トルエンスルホナート)をポリマーに対して3.6モル%(5重量%)添加してクロロホルム:シクロヘキサノン=1:1(v:v)混合溶媒に溶かしてサンプル溶液を調製する。その溶液をシリコンウェハー上にスピンコートして薄膜を調製する(膜厚:約0.5μm、ブリベーク:120℃、2分)。薄膜に低圧水銀灯で254nm光を照射した後、THF(テトラヒドロフラン)に10分間浸漬してその現像前後の膜厚から不溶化率を測定した。不溶化率は照射光量とともに増大した。光照射を60mJ/cm2のときに不溶化率として80%以上の不溶化率が得られた。
【0032】
実施例3
加熱再可溶化の測定光不溶化率の測定と同様にして作製した薄膜に、まず光照射を60mJ/cm2行う。その薄膜を加熱し、メタノールに10分間浸漬してその現像前後の膜厚から残存率を測定した。薄膜が完全にメタノールに溶解するためには160℃で12分、170℃で8分、180℃で2.5分の加熱が必要であった。不溶化膜の可溶化は、加熱温度と加熱時間に強く依存する。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の光架橋(硬化)・加熱分解性高分子組成物感光性組成物は、該組成物を用いた光架橋(硬化)層を、該層の利用後、緩やかな加熱だけで容易に除去できる化学構造に変性し得るという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 露光(光エネルギー照射)による高分子層の架橋(硬化)と前記架橋高分子層の加熱による化学構造の変化を示す概念図
【図2】 露光、現像、架橋硬化画像(PH:ネガ型)、及び加熱処理、架橋硬化画像の除去の工程の概念図
【符号の説明】
L 光源 P 本発明の重合高分子化合物AR 光酸発生剤 BS 基体 PSL 感光層 PH 架橋硬化画像
Claims (2)
- 下記架橋基Aで表される酸性雰囲気で架橋を形成する化学構造を有する下記の式1で表されるモノマー単位からなるホモ重合体又は少なくとも式1のモノマー単位を一部構成成分として含む共重合体である再溶解性酸架橋型高分子化合物。
また、共重合体における共重合成分としては、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、アクリルアミド系、メタアクリルアミド系、N−ビニルピロリドン、非置換のフェニル基またはOH、COOH、エステル基、アルコキシ基、O−C(=O)−OC(CH3)3で置換されたフェニル基を有するスチレン型モノマーからなる群から選択され、最大90モル%を共重合成分とすることができる。 - 請求項1に記載のホモ又は共重合体である再溶解性酸架橋型高分子化合物に光酸発生剤を配合したことを特徴とする光架橋・硬化・加熱分解性高分子組成物感光性組成物。
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