JP3911657B2 - 防煙たれ壁連動防火扉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防煙たれ壁連動防火扉に関し、特に、常時は防火扉の召合せ部で抑えられている防煙たれ壁を非常時には分離固定して、防火扉のみを両開き可能にする防煙たれ壁連動防火扉に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物に防災上の避難計画を確立しておくことは重要な課題であり、各種防災設備の配置やメンテナンスが義務付けられている。特に、病院や老健施設においては最も大切なテーマであり、大規模な医療施設、老人介護施設においては、従来から図5に示すように、火災時に避難して安全性を確保する目的で建物の外周部にバルコニーを設置する事例が多く採用されてきた。
しかし、この方式は、建物の外観が画一的になること、建物の外周部に設置されたバルコニーは日常的にはほとんど使用されないばかりでなく、被災に際しての避難時においては下記の理由から有効に機能しないものがあるとの指摘があるように、あまり適当な計画とは言えないものがある。
【0003】
一般の病院30は建物の両側に配置された複数の病室31と看護婦が詰めているナースステーション32を中心にして、デイルーム33及びエレベーター室34等の諸設備室で構成されている。
そして、建物の周辺には上述のように避難路としてのバルコニー35が回廊の如く病室間の境もなく設置されているが、一般の病院においては、自力避難できる患者の割合は約5割程度であり、ストレッチャーや車椅子での避難を考慮すると、避難上充分なバルコニー幅員を確保していると言い難いものや、建物によっては窓台を跨ぐ避難を前提にしているものも見受けられ、避難に有効なバルコニーとは言い難いものがある。
【0004】
このため、安全区画を形成してフロアの安全性を確保する対策として水平避難方式が提案されている。水平避難方式は、図6に示めすように、フロアーを廊下36に設けた防火扉37によって複数の区画38,39に区分しておき、仮に区画38の病室40から火災が発生した場合に、火災ゾーンの区画38からの避難者が滞留できる非火災ゾーンの区画39に逃げ込むことで避難者の安全性を確保しようとする方法であり、自力避難、階段を使っての避難の困難な入院患者の多い施設においては有効な考え方である。
【0005】
水平避難は、防火扉37を押し開いて水平移動することで避難を完了するものであるが、いずれの区画に火災が発生するか予測できないことから、廊下に設ける扉は一般にいずれの方向からも開放可能なように図7のようなS字状に両開きするものが多く敷設されている。
防火扉37は、常時開放の原則から常時は図示のように壁側の戸袋41に納められているが、火災発生の時は図示の矢印42、42の如く両側から回動して廊下36を閉鎖する。そして、図の右側が火災区画の場合には避難矢印43の方向には片側の防火扉37が開放して確実な避難と火災の拡大を阻止している。
【0006】
しかし、このようなS字状扉も、図8に示すように、扉の高さが廊下天井高となる防火扉では、避難時の扉開放では各区画を遮るものがなくなる結果、煙が扉上部から非火災区画に伝搬してしまう点が問題になる。又、図9に示す如く、固定式の防煙たれ壁44と防火扉37とを併設する方式では美観上から好ましくなく、さりとて天井格納式の防煙たれ壁では機構が複雑になりコスト高になることが問題点として提起されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、常時は防煙たれ壁を防火扉と共に収納して置き、避難時には各区画に防煙たれ壁を固定して煙が非火災区画に伝搬するのを阻止しながら、防火扉は自由に開放できるようにして、美観上の支障がなく、コスト的にも廉価な防煙たれ壁連動防火扉を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る発明は、それぞれが鉛直方向に沿って延在する軸心周りに開閉移動する態様でヒンジ止めし、互いに閉成移動した場合に廊下の通路下方域を閉鎖する一対の防火扉と、それぞれが前記防火扉と同じ軸心周りに開閉移動する態様でヒンジ止めし、互いに閉成移動した場合に廊下の通路上方域を閉鎖する一対の分割防煙たれ壁と、前記廊下の天井面において前記分割防煙たれ壁を互いに閉成移動した場合に前記分割防煙たれ壁の上面に対向する部位に固定し、各分割防煙たれ壁の上面に対向する部位にそれぞれ窪みを有した扉枠とを備え、これら一対の防火扉及び一対の分割防煙たれ壁をそれぞれ互いに閉成移動した場合に、廊下において扉枠の下方に位置する通路を閉鎖する防煙たれ壁連動防火扉であって、前記扉枠からそれぞれ下方に向けて突設し、一対の分割防煙たれ壁が廊下の通路上方域を閉鎖した状態において分割防煙たれ壁の一方方向への開閉移動を規制する一方、他方方向への開閉移動を許容する一対の戸当りと、一対の分割防煙たれ壁のそれぞれから下方に向けて突設し、一対の防火扉が廊下の通路下方域を閉鎖した状態において防火扉の一方方向への開閉移動を規制する一方、他方方向への開閉移動を許容する一対の召合せ部と、一対の分割防煙たれ壁の上面に進退可能に装備し、該分割防煙たれ壁が閉成移動した状態において進出移動した場合に対応する扉枠の窪みに係合することにより前記分割防煙たれ壁が閉鎖状態を保持するように固定するラッチとを備え、一方の軸心回りに開閉移動する分割防煙たれ壁及び防火扉においては、閉鎖した廊下の一方の通路域に対向する面に前記戸当り及び前記召合せ部を設ける一方、他方の軸心回りに開閉移動する分割防煙たれ壁及び防火扉においては、閉鎖した廊下の他方の通路域に対向する面に前記戸当り及び前記召合せ部を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る防煙たれ壁連動防火扉は、上記請求項1において、扉のヒンジ止めがトルク調整可能であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明による防煙たれ壁連動防火扉を、図面に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明による防煙たれ壁連動防火扉が廊下を閉鎖した状態を立面図で示している。
防煙たれ壁連動防火扉1は、双方向に片開きの開閉扉であり、片面の扉2、3はそれぞれが上部の分割防煙たれ壁4と召合せ部5で当接した形態に構成している。防煙たれ壁連動防火扉1は、扉を閉鎖すると自動的に閉鎖状態を形成するように、常用される防火扉と同様にヒンジ止め15され戸袋に収納されているので、防火区画を形成する必要が生じた場合には、感知器との連動で常用される電磁レリーズのような常時開放式扉保持機構(図示せず)が作動し防煙たれ壁連動防火扉1を閉鎖して図示のように自動的に閉鎖状態を形成する。
【0011】
図2、3は、図1の各部を部分断面的に示している。
図2は、図1における矢視イーイの閉鎖状態にある防火扉の断面図である。
片面の扉2と3は、互いの閉鎖状態が密になるように、召合せ部6において片面の扉2の内部端を切り欠いてあり、相手方である片面の扉3の内部端がこれに係合して防煙区画の閉鎖状態を確立している。
正常時の防煙たれ壁連動防火扉1は、常時開放の原則に従って、想像線で図示するように廊下の壁7に設けてある戸袋8に納められている。分割防煙たれ壁4と片面の扉2もしくは3とは召合せ部5で押さえ込んで一体に収納されており、分割防煙たれ壁4に設けてある常用される電磁レリーズのような常時開放式扉保持機構(図示せず)によって片面の扉と共に開放状態を維持している。
【0012】
図3は、図1における分割防煙たれ壁の矢視ローロの断面図である。
図において、分割防煙たれ壁4と片面の扉2とは召合せ部5によって係合関係になっており、分割防煙たれ壁4が扉枠9の上部中央に設けてある戸当り10に当接することで閉鎖位置を特定している。
分割防煙たれ壁4の上部にはラッチ13が装備されており、扉枠9に形成してある窪み12と係合することで、分割防煙たれ壁4が閉鎖状態を保持するように固定する働きをしている。
【0013】
図4は、分割防煙たれ壁4を固定してからの片面の扉2、3の開放状態を示している。
分割防煙たれ壁4は、戸当り10と窪み12に挿入されたラッチ13とによって閉鎖状態を形成しており、廊下の天井面を伝わってくる炎や煙が火災区域から非火災区域に拡大して行くのを阻止している。
一方、片面の扉2、3は基本的には防火区画を維持しながら火災区画から避難してくる人々への避難口を片開きの扉によって確保しているものである。
【0014】
上述したように、本発明による防煙たれ壁連動防火扉は、図1に示すように自閉状のヒンジ止め15で扉に取付けられている。
ヒンジを自閉状に付勢するためには種々の方式が考慮されるが、本実施の形態では、つる巻きバネを採用して自閉するときの回動速度や防火区画を形成してからの扉前後の圧力差に対する開閉力の平衡を図っている。
上記の手段は、火災時においても空調設備の稼働は継続されており、特に加圧防煙システムのように空調力を積極的に活用する防煙方式の場合には、空調機の風量と扉前後の圧力差の関係が重要な要素になってくるからである。
【0015】
実験に依れば、空調機ファンの回転数を上げることで風量を増加させ、これによって扉の通過風量を増大させても扉前後の圧力差はほとんど増大しないが、図示していないトルク調整機構によりつる巻きバネの巻き込み数を変えることでトルクを調整し、これによって扉の開度を小さくする方が扉前後の圧力差を大きく得られることが判明している。
以上の理由から、上記のような選択をしているものであるが、本発明による防煙たれ壁連動防火扉は何らこれに限定されるものでなく、適用する周囲の事情を考慮して各種の選択が可能であることは当然である。
【0016】
【発明の効果】
本発明による防煙たれ壁連動防火扉は、廊下に設けた所定寸法の防煙たれ壁を2分し、自閉状にヒンジ止めした分割防煙たれ壁により召合せ部で抑えられて分割防煙たれ壁の下方に配置され自閉状にヒンジ止めした双方向に片開きの防火扉で構成して、分割防煙たれ壁と該防火扉とが閉鎖する時には分割防煙たれ壁を閉鎖状態に固定することを特徴としているので、避難時には各区画に防煙たれ壁を固定して煙が非火災区画に伝搬するのを阻止して安全性の向上を図り、廊下の美観や使用を向上させる効果を奏している。
【0017】
特に、病院用防煙たれ壁連動防火扉では、病院の防火区画部に配置の防煙たれ壁を2分し、自閉状にヒンジ止めした分割防煙たれ壁により召合せ部で抑えられて分割防煙たれ壁の下方に配置され自閉状にヒンジ止めした双方向に片開きの防火扉で構成して、分割防煙たれ壁と該防火扉とが閉鎖する時には分割防煙たれ壁を閉鎖状態に固定しており、扉のヒンジ止めをトルク調整可能にすることを特徴としており、病院における常時開放、非常時閉鎖の機能を確立し扉の開閉力を制御できるようにしているので、病院における防火扉の常時開放、非常時閉鎖の機能を確立し、避難時の介護行動等をし易くして介護負担の低減と安全性を高め、併せて扉の開閉力を制御して加圧防煙システムにも効率的に対応できる効果を発揮している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による防煙たれ壁連動防火扉の立面図
【図2】本発明による防煙たれ壁連動防火扉の断面図
【図3】本発明による防煙たれ壁連動防火扉の部分断面図
【図4】防火扉閉鎖時における防火扉開放時の斜視図
【図5】大規模病院の平面図
【図6】防火区画の形成図
【図7】S字型防火扉の平面図
【図8】防火扉のみの場合の立面図
【図9】防火扉と防煙たれ壁とを併設した場合の立面図
【符号の説明】
1 防煙たれ壁連動防火扉
2、3 片面の扉
4 分割防煙たれ壁
5、6 召合せ部
7 廊下の壁
8 戸袋
9 扉枠
10 戸当り
12 窪み
13 ラッチ
15 ヒンジ止め
30 病院
31 病室
32 ナースステーション
33 デイルーム
34 エレベーター室
35 ベランダ
36 廊下
37 防火扉
38 火災区画
39 非火災区画
40 火元病室
41 戸袋
44 防煙たれ壁
Claims (2)
- それぞれが鉛直方向に沿って延在する軸心周りに開閉移動する態様でヒンジ止めし、互いに閉成移動した場合に廊下の通路下方域を閉鎖する一対の防火扉と、
それぞれが前記防火扉と同じ軸心周りに開閉移動する態様でヒンジ止めし、互いに閉成移動した場合に廊下の通路上方域を閉鎖する一対の分割防煙たれ壁と、
前記廊下の天井面において前記分割防煙たれ壁を互いに閉成移動した場合に前記分割防煙たれ壁の上面に対向する部位に固定し、各分割防煙たれ壁の上面に対向する部位にそれぞれ窪みを有した扉枠と を備え、これら一対の防火扉及び一対の分割防煙たれ壁をそれぞれ互いに閉成移動した場合に、廊下において扉枠の下方に位置する通路を閉鎖する防煙たれ壁連動防火扉であって、
前記扉枠からそれぞれ下方に向けて突設し、一対の分割防煙たれ壁が廊下の通路上方域を閉鎖した状態において分割防煙たれ壁の一方方向への開閉移動を規制する一方、他方方向への開閉移動を許容する一対の戸当りと、
一対の分割防煙たれ壁のそれぞれから下方に向けて突設し、一対の防火扉が廊下の通路下方域を閉鎖した状態において防火扉の一方方向への開閉移動を規制する一方、他方方向への開閉移動を許容する一対の召合せ部と、
一対の分割防煙たれ壁の上面に進退可能に装備し、該分割防煙たれ壁が閉成移動した状態において進出移動した場合に対応する扉枠の窪みに係合することにより前記分割防煙たれ壁が閉鎖状態を保持するように固定するラッチと を備え、一方の軸心回りに開閉移動する分割防煙たれ壁及び防火扉においては、閉鎖した廊下の一方の通路域に対向する面に前記戸当り及び前記召合せ部を設ける一方、他方の軸心回りに開閉移動する分割防煙たれ壁及び防火扉においては、閉鎖した廊下の他方の通路域に対向する面に前記戸当り及び前記召合せ部を設けたことを特徴とする防煙たれ壁連動防火扉。 - 扉のヒンジ止めがトルク調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の防煙たれ壁連動防火扉。
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