以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明を病院施設に適用した場合における避難安全区画システムを、基準階の上方から吹き抜け状態で示す斜視図である。以下の説明では、病院施設の基準階を例に挙げ説明するが、かかる基準階と同一構成が、他の階にも適用されている。
図1に示すように、本発明の適用建物としての病院施設10の建物は、左右の入院棟10a、10bが中央の管理棟10cで連絡されるように構成されている。左右の入院棟10aには、それぞれ、緊急時要救出者としての入院患者を収容する収容スペース11として病室11aが設けられている。
なお、かかる病院10は、外来患者、入院患者、看護婦、医師、事務員、立ち入り業者など多数の者が建物利用者として考えられるが、以下の説明では、かかる者の内、自力で避難するのが困難な、所謂緊急時要救出者を例に挙げて説明する。
病室11a(11)は、通路12を挟んで両側に複数設けられ、通路12とは防火区画壁としての耐火壁21とガラス防火戸31とで区画されている。通路12の奥は、避難階段13に通じている。避難階段13は、防火区画壁としての耐火壁22、ガラス防火戸32により通路12、病室11a側などと延焼防止可能に仕切られている。
通路12の一方は、中央の管理棟10bの共用スペース14に、ガラス防火戸33を介して通じている。共用スペース14には、業務区画15として、入退院などの受付業務を行う事務局15a、看護婦の待機あるいは通常業務スペースとしてのナースステーション15bがそれぞれ設けられている。併せて、ベンチ16を設けた待合スペースも形成されている。
かかる事務局15a、ナースステーション15bは、それぞれ外部とは、耐火ガラス間仕切壁23により区画され、ガラス防火戸34を介して往来可能に構成されている。
共用スペース14は、エレベータ17、階段18aをまとめた上下階連絡スペース18に、ガラス防火戸35を介して通じている。さらに、上下階連絡スペース18には、入院棟10aの通路12を挟んだ一方の側の各病室11aの窓側に面したバルコニー19aが、ガラス防火戸36を介して連絡されている。バルコニー19aは、各病室11aとガラス防火戸37を介して連絡されている。
同様に、通路12を挟んだ他方の各病室11aの窓側に面したバルコニー19bは、共用スペース14と、入院棟10aの避難階段13側に、ガラス防火戸36を介して通じている。バルコニー19bと各病室11aとは、ガラス防火戸37で行き来可能に連絡されている。
入院棟10bにおける病室11a、通路12、避難階段13などの構成は、入院棟10aにおける上記説明の構成と同様に構成されている。すなわち。管理棟10cを挟んで、左右に同様の構成の入院棟10a、10bが設けられている。
上記のように本発明の避難安全区画システムでは、同一階に、緊急時要救出者を収容する収容スペース11としての病室11a、収容スペース11に繋がる通路12、通路12に繋がる避難階段13、通路12に繋がり避難階段13とは離して設けられた共用スペース14とを有しているため、例えば、火災が発生した場合には、その状況に応じて、同一階で避難を行ってレスキュー隊などの救出者が来るまでの一時待避を行うことができる。
例えば、一方の入院棟10aで火災が発生し、その入院棟10aの避難階段13の使用が困難な場合には、一方の入院棟10aから管理棟10cの共用スペース14側に脱出して避難する。また、火災状況によっては、共用スペース14の業務区画15内に入って一時待避、あるいは共用スペース14を通って他方の入院棟10b側に避難して、病室11a内、通路12側に一時待避、あるいは入院棟10bの避難階段13側に一時待避することができる。
入院棟10a、10bと管理棟10cとの通用部は、通路12に設けたガラス防火戸32を介して区画されているため、火の手が追ってきても、緊急時要救出者が救出されるまで、火災を一方の入院棟10a内に、あるいは入院棟10aと管理棟10cの共用スペース14内に閉じ込めておくことができる。
また、通路12と病室11aとの連絡もガラス防火戸31、通路12と避難階段13側との連絡もガラス防火戸32を介して行えるようになっているため、万が一にも病棟10b側にも火災が延焼してきても、状況によっては、病室11a側に一時待避することもできる。ガラス防火戸31を通して、通路12側の状況を確認し、ルーフバルコニー19a、19bを通って、避難階段13側へ避難することも考えられる。
通路12と避難階段13側も、ガラス防火戸32を介して連絡されているので、さらに火災状況が切迫して、病室11a内の一時待避では済まない状態に至ったと判断される場合には、避難階段13側に逃れてそこで一時待避することも可能である。
また、共用スペース14内の業務区画15は、ガラス耐火間仕切壁23で外部と区画されているため、万一に共用スペース14内に火の手が入っても、燃え易い書類等がある業務区画15内への延焼を回避することができる。あるいは、業務区画15内で火災が発生した場合でも、その火災を発生した業務区画15内に閉じ込め、共用スペース14の業務区画15外への延焼防止に努めることができる。
さらに、ガラス耐火間仕切壁23を使用することにより、業務区画15の内外の様子が分かり、火災時には火災状況の把握が行え、的確な避難の検討が行える。例えば、共用スペース14内に火の手が迫り、共用スペース14内に煙が立ち込め、業務区画15からの避難が最早危険と判断される場合には、業務区画15である事務局15a、あるいはナースステーション15bにレスキュー隊などの救出者を待って一時待避することができる。
従来は、平常時の利便性、コンクリート製などの耐火ボードを主体とする耐火区画壁で囲う場合の採光性、閉鎖性などの観点から、かかる事務局15a、ナースステーション15bなどの共用スペース14内に設けられる業務区画15を、耐火壁で区画するとの発想には至らず、オープンにされていた。
しかし、本発明者は、ガラス耐火間仕切壁23を使用することにより、平常時でも、ガラス越しに向こう側が見え、共用スペース14内の全体の見通しが確保され、業務区画の存在による圧迫感を感じることなく、且つガラスを通しての採光性を確保して、かかる業務区画15を安全区画に構成することを発想したのである。
また、受付業務などが円滑に行えるように、ガラス耐火間仕切壁23には、適所に防火シャッタ(図示せず)を設けた窓口15cを開口しておき、日常業務に支障がないようにされている。
本発明の構成では、このように同一階に、共用スペース14に設けた業務区画からなる防火区画と、収容スペース11としての複数の病室11a、通路12からなる防火区画と、避難階段13を有する防火区画とが設けられ、避難経路が共用スペース14、通路12、避難階段13へと形成されている。
かかる避難経路に沿って設けられた共用スペース14内の業務区画15としてのナーススーション15a、事務局15bを1次安全区画に、共用スペース14と病室11aとを連絡する通路12を2次安全区画に、避難階段13側を3次安全区画に構成しておけば、避難経路に沿って火災状況によっては一時待避可能となる区画を形成しておけば、火災状況に合わせた避難の各段階での一時待避を状況に合わせて選択することができる。
段階的に一時待避箇所を予め設けることにより、かかる配慮のない従来構成とは異なり、過剰な避難を避け、火災状況、消火状況に合わせた適切な避難、待避が行える。段階的に一時待避箇所を設けない従来構成では、例えば、1箇所の一時待避所に一度に避難するなどの状態が発生するが、火災状況の段階に合わせて利用できる一時待避所を複数設けておくことにより、火災発生時には、重度の歩行困難者などは看護婦の誘導などにより3次安全区画に避難させておき、軽度の歩行困難者は、取り敢えず1次安全区画に避難して、火災状況、消火状況を把握した上で、2次安全区画にさらに避難するか否かの冷静、的確な判断が行える。
このように複数の防火区画を設け、かかる防火区画内に、ガラス防火戸を介して互いに区画された安全区画を設けることにより、杖を付いたり、あるいは車椅子を利用したり、あるいはその他の歩行具を利用するなど、自力での歩行が事実上困難な者などの緊急時要救出者は、歩行時の負担が極端に大きくなる階段利用による上下階への避難を避けて、同一階の火災の影響が少ない方への避難を段階的に安全に進めることができる。
本発明の避難安全区画システムに使用するガラス防火戸は、次に示すような構造に構成しておくのが好ましい。すなわち、ガラス防火戸の取付構造として、火災時に煙あるいは炎の通過が予測されるガラス防火戸取付部の隙間に、火災時の熱により発泡する熱感応型発泡材を設けておく。
ガラス防火戸を片開き戸に構成した場合には、ガラス防火戸と戸枠との間に生ずる隙間を考えればよい。あるいはガラス防火戸と、戸枠、戸収納部とのそれぞれの間に生ずる隙間を考えてもよい。ガラス防火戸を両開き戸に構成した場合には、ガラス防火戸の召し合せ部に生ずる隙間が考えられる。さらには、ガラス防火戸と、戸枠、召し合せ部、戸収納部とのそれぞれの間に形成された隙間を考えてもよい。
ガラス防火戸を自動開閉ガラス防火戸に構成する場合には、ガラス防火戸とガラス防火戸開閉機構部の組込部との隙間にも、火災時の熱により発泡する熱感応型発泡材を設けておけばよい。
かかる構成を図面に基づきさらに詳細に説明すれば次のようになる。図2(A)は、自動開閉の両開き引き戸に構成したガラス防火戸を示す平断面図であり、(B)は開閉機構部を部分的に示した断面図である。
例えば、入院棟10a、10bの通路12と、管理棟10cの共用スペース14とを開閉可能に区画するガラス防火戸33を例にとり説明する。図2に示すように、入院棟10a、10bと管理棟10cとを仕切る防火区画壁41の開口部に、ガラス防火戸33は自動開閉式に設けられている。
ガラス防火戸33は、建築基準法で定められた所定層厚のスチール枠に耐火ガラスを入れた両開きの引き戸33a、33bとから構成されている。両開き引き戸33a、33bの各々には、図2(B)に示すように、既知の自動開閉機構部42が設けられ、人が両開き引き戸33a、33bの正面近傍に立つと、人が来ていることを重量センサなどで検知して、自動的に開閉できるように構成されている。かかる構成は、従来より既知の構成を適用すればよい。
ガラス防火戸33を構成する引き戸33a、33bと、開口時の引き戸33a、33bを収納する戸袋側の防火区画壁41との間には、引き戸33a、33bの開閉時に防火区画壁41面と擦れが生じないように、僅かな隙間43a、43bが設けられている。かかる隙間43a、43bには、ケイ酸ソーダ系、カーボングラファイト系など従来より使用されている熱感応型発泡材44が設けられている。
熱感応型発泡材44は、図2(A)に示すように、防火区画壁41の引き戸33a、33bに対面する側に設けられ、熱感応型発泡材44と引き戸33a、33b面とが接しないように設けられている。さらに、熱感応型発泡材44は、図示しないが、引き戸33a、33bの上下方向に沿っても所定幅で設けられている。
かかる熱感応型発泡材44は、火災が発生した場合には、所定温度に達した時点で、発泡して膨張し、隙間43a、43bを埋めることとなる。このため防火区画壁41面と、引き戸33a、33bとの間に生じている隙間43a、43bを通して、煙や炎が通ることがない。熱感応型発泡材44を設けるに際しては、発泡時に隙間43a、43bを十分に埋める程度に設ける必要があり、かかる使用量は、熱感応型発泡材44の発泡時における膨張率などから設定すればよい。
使用する熱感応型発泡材44の選択に際しては、上記発泡時の膨張率以外にも、発泡開始時の温度にも十分に注意する必要がある。これは、火災初期の低い温度で発泡してしまっては、ガラス防火戸33を通して避難する際に、ガラス防火戸33の開閉に支障を来す虞があるためである。例えば、100〜120℃程度の温度に設定しておけばよい。かかる温度に設定しておけば、火災時にガラス防火戸33としての機能を発揮する。
ガラス防火戸33を構成する引き戸33a、33bでは、両引き戸33a、33bを閉じた状態で発生する召し合せ部の隙間45をも、火災時に塞ぐことができるように、両引き戸33a、33bの端面にも熱感応型発泡材44が設けられている。
図2(A)に示す場合には、引き戸33a、33bの両端面に設けられ、平常時には、両端面に設けられた熱感応型発泡材44同士の間に隙間が発生するように構成されている。これは、平常時に両熱感応型発泡材44同士の間に隙間がない場合には、火災時に熱感応型発泡材44が発泡することにより、閉じ状態にある引き戸33a、33bを左右に開こうとする大きな力が発生するが、かかる力が発生しないようにするためである。
図3に示す場合には、召し合せ部の隙間45における熱感応型発泡材44の取付例を示している。引き戸33a、33bの互いに対面するそれぞれの端面間の隙間45は、例えば、5mmに設定されている。引き戸33a、33bの両端面には、中央部に突起状部44aを形成するように平坦部44bができるように熱感応型発泡材44を設ければよい。このように突起状部44aを形成するように設けておけば、図2に示すように、両突起状部44aの先が出合いになっているため、熱感応型発泡材44を、突起状部44aを設けることなく、双方とも平らに設けた場合に比べて、隙間45の許容間隔を広く設定することができる。
引き戸33a、33bは、その端面が対面する形式の引き戸に構成した場合について説明したが、例えば、図3(B)に示すように、引き戸33a、33bを、引き違い戸に構成してもよい。図3(B)に示す場合には、引き戸33a、33bが閉じた状態で互いに対面する隙間46に、引き戸33bの側に、中央に突起状部44aができるように平坦部44bを形成するように設けておけばよい。突起状部44aを形成しておくことにより、隙間46は、かかる突起状部44を設けずに平らに設ける場合に比べて、隙間46の許容間隔をより広く設定することができる。
図3(B)では、突起状部44aは、片方の引き戸33b側から設けた場合について示したが、引き戸33a、33bの両方から図3(A)に示すように、突起状部44aを設けた場合には、図3(B)に示す場合よりも、さらに隙間46の許容間隔を広く設定することができる。
また、図示しないが、引き戸33a、33bと戸枠との間に生ずる隙間側も、火災時に塞ぐことができるように、熱感応型発泡材44を、戸枠の引き戸33a、33bに面する側に設けておけばよい。さらに、図2(B)に示すように、ガラス防火戸33の上端側に設けた開閉機構部42の組込部42aの隙間にも、火災時に組込部42aの内部を煙や炎が通らない程度に埋めることができるように、上記構成の熱感応型発泡材44が設けられている。
図2(B)に示す場合には、熱感応型発泡材44は、略ボックス状に形成された開閉機構部42の内周面に設けられ、火災時には、開閉機構部42の内部の組込部42aの隙間を十分に埋めることができるようになっている。
かかる構成のガラス防火戸の取付構造では、火災が発生し、所定温度に達した時点で熱感応型発泡材44が発泡して、ガラス防火戸33、すなわち引き戸33a、33bの閉じ状態で、その周囲の戸枠、戸袋側、召し合せ部、開閉機構部側の隙間を、煙や炎が通らない程度に発泡して埋めることとなる。
図4に示すように、ガラス防火戸33を両開き戸33c、33dに構成しても構わない。両開き戸33c、33dが閉じ状態で、両端面が対面する側に、熱感応型発泡材44を設けておけばよい。両開き戸33c、33dの回転中心側と、戸枠47側との間に生ずる隙間にも熱感応型発泡材44を設けておく。図示しないが、開き戸33c、33dの上端側、下端側の戸枠との隙間にも熱感応型発泡材44を設け、火災時には、かかる隙間を埋めて、煙、炎を通さないようにしておく。
図4に示す場合でも、熱感応型発泡材44の形状は、上記説明のように平坦部44bに突起状部44aが設けられた構成にしておけば、隙間間隔を前記説明と同様の理由でより広くすることができる。
図5(A)には、通路12と病室11aとの出入り口を開閉可能に区画するガラス防火戸31を示す。ガラス防火戸31は、片開き引き戸31aに構成されている。引き戸31aは、図面右側に片開きできるように構成され、病室11aと通路12とを区画する防火区画壁としての耐火壁22との間に形成される隙間を火災時に塞ぐことができるように、閉じ状態の引き戸31aと対面する防火区画壁22の対面側に熱感応型発泡材44が設けられている。
図5(B)には、バルコニー19aと上下階連絡スペース18との出入口を開閉可能に区画するガラス防火戸36のように、片開き戸36aに構成した場合を示す。片開き戸36aの回転中心側に面する戸枠47側には、図4に示すと同様に、熱感応型発泡材44が設けられている。片開きのガラス防火戸32、34、についても、同様の構成を適用すればよい。
しかし、ガラス防火戸の構成は、上記説明に限定されるものではない。例えば、上記説明では、ストレッチャーに患者を載せた状態でも、車椅子利用者でも、特段の開閉操作をしなくても円滑に通過できるようにとの目的で、ガラス防火戸を自動開閉機構を有する自動扉に構成した場合について述べたが、状況に応じては、手動開閉の構成にしても構わない。
このように本発明の避難安全区画システムでは、ガラス防火戸とその取付構造部との隙間には、熱感応型発泡材が予め設けられているため、万が一にも火災が発生した場合でも、火災時の温度により熱感応型発泡材が発泡してその隙間を塞ぐため、かかる隙間に熱感応型発泡材を設けない場合とは異なり、火災側から、ガラス防火戸により遮られている防火区画側に煙や炎が通ることがない。そのため、火災時でも、防火区画内を煙や炎から保護できるので、かかる隙間の手当てをしない構成に比べて、防火区画内の安全性をより確実に確保することができる。
建築基準法で定められた従来構成の鉄扉などの防火戸では、相当厚の鋼鉄板が使用されており、火災時の高温環境において、熱変形を起こし、正常時に比べて防火戸の取付構造部分における隙間が大きくなることがあった。そのため、かかる隙間が発生すると、火災時においては煙、あるいは炎などの格好の通り道となることが予想され、火災規模によっては、防火戸としての機能を十分には発揮できない場合も予想された。
しかし、上記構成のガラス防火戸に構成しておけば、火災時においてもガラス防火戸の取付構造部分に生ずる隙間から煙や炎が通る心配がないので、従来とは異なり確実に延焼防止、防煙効果を確保することができ、とかく避難が遅れがちに成り易い緊急時要救出者であっても、十分に避難することができる。
次に、本発明の避難安全区画システムで使用する避難階段13側の構成について説明する。かかる構成としては、次に示すような構造に構成しておけばよい。
すなわち、防火区画で病室などを設けた居住空間などの建物内部と区画された階段室に避難用の階段を設ける避難階段の区画システムで、前記防火区画には、前記建物内部から前記階段室への出入り用の引き戸に形成された遮熱性能を有する耐火ガラス製のガラス防火戸を設け、前記避難階段の階段室には、緊急時要救出者収容などの歩行困難者が待避する待避空間を設け、前記待避所を区画する防火区画壁には、待避空間内の状況が視認できるガラス耐火間仕切を使用する構成とすればよい。
前記階段室と建物内部との間には、排煙および/または防煙装置を設けた附室を介在させるようにしてもよい。階段室には、排煙および/または防煙装置を設けておけばよい。
前記ガラス防火戸が片開き引き戸の場合には、前記ガラス防火戸と、戸枠、戸袋、引き戸開閉用機械設置部とのそれぞれの間に生ずる隙間に、あるいは、前記ガラス防火戸が両開き引き戸に構成されている場合には、前記ガラス防火戸と、戸枠、召し合せ部、戸袋、引き戸開閉用機械組込部とのそれぞれの間に形成された隙間に、それぞれ火災時の熱により発泡する熱感応型発泡材を設けておけばより好ましい。
かかる避難階段13側のより詳細な構成については、以下、図面を用いて説明する。図6は、避難階段13側の区画状況を示す平面図である。図7は、階段室を通路側から矢視方向に附室を眺めた様子を示す説明図である。図8は、階段室内の待避空間の様子を示す説明図である。
避難階段13側は、図6に示すように、入院棟10a、病室11a、通路12側の居住空間と防火区画壁としての耐火壁22により区画された階段室51内に、避難階段13を設けた構成となっている。
階段室51の正面は、ガラス防火戸52を介して附室53に通じている。附室53は、ガラス防火戸32を介して通路12に通じている。かかる構成の附室53には、ダクトを介して外壁側に排煙口を設けた排煙装置54が設けられている。附室53内に流れ込んだ火災時の煙を建物の外部に排煙装置54により、排煙できるようになっている。
このようにして、入院棟10aでは、病室11a、通路12を設けた居住空間と、避難階段13を設けた階段室51は、排煙装置54を設けた附室53を間に介在させて間接的に連絡されることとなる。
そこで、例えば、病室11a側などを有する居住空間側で火災が発生した場合でも、防火区画壁としての耐火壁22で区画されているため、附室53、階段室51、避難階段13側への延焼をくい止めることができる。
上記ガラス防火戸32は、避難時の開閉が円滑に行えるように、自動開閉式に構成しておけばよい。図6に示す場合には、片開きの開き戸に形成したが、より好ましくは、引き戸に構成しておけばよい。これは、極力開閉部に相当するガラス防火戸32の開閉空間を、避難に支障がでない程度に少空間に抑えるためである。開き戸に形成しておくと、避難時に扉が通行方向に開閉するため、避難者の通行を開閉の度に妨げる虞れがある。
また、ガラス防火戸32は、向こう側が少なくともある程度視認できる程度の透明性の遮熱性能を有する耐火ガラスを使用した構成に形成されている。併せて、階段室51と附室53とを仕切る耐火間仕切壁55も、遮熱性能を有する耐火ガラスを使用したガラス耐火間仕切壁55aに形成されている。ガラス耐火間仕切壁55aも防火区画壁として機能している。
階段室51は、図6に示すように、ガラス防火戸52を開けて階段室51内に入った箇所が少し広めの踊り場に形成されている。踊り場には、図6に示すように、図中破線表示として緊急時要救出者などの歩行困難者が一時待避できる待避空間56が設けられている。
図7は通路12側から階段室51内に人が一時待避している様子が、耐火壁22をガラス耐火間仕切壁22aに構成して見通している様子を示している。階段室51内の待避空間56は、例えば車椅子に人が載った状態で、3台横に並んで待避できる程度に形成しておけばよい。車椅子3台分の個々の空間を、フロアに区画表示して設定するようにしてもよい。かかる待避空間56の大きさは、階段室51の踊り場の広さに合わせて適宜決めればよい。なお、ガラス耐火間仕切壁22aの側面には、防火シャッタ58が設けられている。
待避空間56の側面の外壁57部分を大きく開口しておき、この部分に強化ガラスなどを嵌め込み、外光が階段室51内に入り込むように構成してもよい。待避空間56は、背後の遮熱性能を有するガラス耐火間仕切壁22a、強化ガラスを嵌めた外壁57で囲むようにして、待避空間以外の部位から待避空間56内の様子が分かるようにするとともに、併せて、待避空間56内の照明状態を明るく保てるようにしておけばよい。
火災が発生した場合には、建物内の多くの人が階段室51内に入り、避難階段13を利用して避難することとなるが、例えば車椅子などを使用した障害者の場合には、階段室51まではなんとか避難できても、階段を自力で降りることはできず、その場で立ち往生することが予想される。
避難する健常者が、複数で車椅子を持ち上げ、一緒に避難階段を降りてくれれば良いが、常にそれを期待することは難しい。そこで、上記待避空間56を設けておけば、歩行困難者は無理をして避難階段を利用することなく、建物外部からの救助隊の到着を安全に待つことができる。従来は、かかる待避空間56を設けていないため、健常者の避難の流れに巻き込まれて、車椅子ごと階段を落下したり、転倒したりなどの虞が十分に予想された。
しかし、待避空間56を設けておくことにより、車椅子に乗った歩行困難者でも、安全に、健常者の避難の流れに巻き込まれずに、救助隊の到着を待つことができる。
特に階段室51を、ガラス防火戸32、ガラス耐火間仕切壁22a、ガラス耐火間仕切壁55aで区画するように構成してあるため、ガラスを通して向こう側がある程度視認できるため、救助隊が階段室51の外から建物内に進入した場合でも、附室53の側から、待避空間56内に待避している人が居るか居ないかの確認が簡単にできる。一刻も争う緊急時においては、かかる確認が素早く行えるか否かは、極めて重要である。
また、外壁57部分に強化ガラスを用いて建物外部と内部とがある程度見通せるように構成しておけば、建物外部から階段室51の待避空間56に、救助を求めて待っている人がいることを確認することができ、救助隊の進入目標が前もって分かり、敏速な救助活動を助けることとなる。
待避空間56には、図8に示すように、車椅子に乗った状態で救助依頼ができるように、建物内の防災センターに通じるインターホンAを設けておけばよい。また、かかる待避空間56は、車椅子を使用している歩行困難者以外の者でも使用できることは勿論である。さらには、待避空間56の近くの外壁57に、救助隊が外部から進入できるような緊急時の進入口を設けておけば更に効果的である。
さらに、ガラス防火戸52には、前述したように、その取付構造部における隙間に、熱感応型発泡材が設けられ、万が一にも附室53内に火災が延焼した場合でも、上下階に通じ、外部に通じる避難階段13を有する階段室51に煙や炎が入り込まないように構成されている。すなわち、図9に示すように、ガラス防火戸52の取付構造部の隙間59には熱感応型発泡材44が設けておけばよい。
熱感応型発泡材44は、前述の如く、ケイ酸ソーダ系、カーボングラファイト系など従来より使用されているものを使用すればよく、ガラス防火戸52の上下方向に沿っても所定幅で設けておけばよい。
かかる熱感応型発泡材44は、火災が発生した場合には、所定温度に達した時点で、発泡して膨張し、隙間59を埋めることとなる。このため附室53に火災が延焼したり、あるいは附室53内で十分な排煙が行えない場合でも、隙間59を通して、煙や炎が通ることがない。
上記説明では、附室53を階段室51に隣接して設けることにより、火災時に発生する煙を、階段室51に通さないように構成したが、図9に示すように、ガラス防火戸52の取付構造部の隙間59などを熱感応型発泡材44で火災時に発泡膨張させて塞ぐ構成を採用しておけば、図10に示すように、附室53を設けない構成も採用できる。
また、附室53を設けない構成では、図10に示すように、階段室51内に排煙装置54を設けておき、万が一にも階段室51内に煙が進入した場合でも、十分に排気して、避難階段を使用して避難する際に煙にまかれないようにしてもよい。
このように本発明の避難安全区画システムにおける避難階段に、上記構成を採用することで、かかる構成を採用しない場合に比べて、例えば、次のような効果が得られる。
すなわち、階段室に待避空間が設けられているため、避難階段を利用して避難することが困難な歩行困難者が、健常者の避難の流れに巻き込まれずに、救助隊の到着を安心して待つことができる。
階段室51へ通じるガラス防火戸52の取付構造の隙間に、熱感応型発泡材44を設けておくことにより、ガラス防火戸52を介して階段室51に隣接する空間が火災になった場合でも、熱感応型発泡材44が発泡、膨張して隙間を塞ぐため、階段室51を煙や炎から保護することができるのである。
従来の防火戸は建築基準法で定められた仕様規定の所定厚のスチール製に構成されていても、火災時の高温環境においては、防火戸に使用するスチールが熱変形を起こし、正常時に比べて防火戸の取付構造部分における隙間が大きくなる虞れがあった。火災時においては煙、あるいは炎などの格好の通り道となることが十分に予測され、火災規模によっては、防火戸としての機能を十分には発揮できない場合が危惧された。
しかし、本発明では上記構成の熱感応型発泡材を使用することにより、火災時の炎、あるいは煙などの通り道となりそうな隙間を有効に塞ぐことができるので、火災が発生した場合でも、煙などが防火区画で囲われた避難階段に入り込み、安全な避難が脅かされる危険を回避することができるのである。
また、避難に際しては、早くに避難したいという気持ちから、どうしても我がちに避難する場合もある。かかる状況下では、身体に何らかの障害などを負い、素早い歩行が行えないなどの歩行困難者は、健常者の素早い避難行動に追いつけず、最悪の場合には、後ろから押されて転ぶなどの事故も発生し易い。我がちに避難する際に、転んだりすると、後続の避難者が次々に覆いかぶさるように倒れ、将棋倒しの大惨事になる場合も十分に考えられる。
しかし、本発明では、階段室内に一時待避所を設ける構成を採用しているので、避難階段での健常者の避難と、歩行困難者の一時待避により救出活動を待つ避難とを区別して、速やかな避難が円滑に行えるようにすることができるのである。
次に、本発明の避難安全区画システムで使用するガラス耐火間仕切壁について説明する。かかるガラス耐火間仕切壁の構造としては、例えば、次に示すような構成を採用しておけばよい。
すなわち、耐火ガラスを用いて火災側と非火災側とを画するガラス耐火間仕切壁の耐火ガラス取付構造としては、耐火ガラスを、その外周に枠状にサッシを設けない状態で、前記耐火ガラスの適用部位に、断熱材を介して取り付けるようにすればよい。複数枚の前記耐火ガラスを連接する場合には、前記耐火ガラス同士は、アルミナシリカ系セラミック材、あるいはガラス繊維混入ケイ酸カルシウム材を介して連接しておけばよい。前記耐火ガラスと、前記アルミナシリカ系セラミック材、あるいは前記ガラス繊維混入ケイ酸カルシウム材との間には、熱感応型発泡材が介在しておけば好ましい。
かかる構成について、以下、図面に基づいて詳細に説明する。図11(A)は、ガラス耐火間仕切壁の部分正面図を示し、(B)は、(A)のA−A線で切断した様子を示す断面図である。図12は、耐火ガラスの上下支持部の飲み込み状況を示した断面図である。
ガラス耐火間仕切壁22aは、図11(A)に示すように、複数枚の耐火ガラス110を、天井スラブ120と床スラブ130との間に、横方向に連接して形成されている。耐火ガラス110は、図12に示すように、3枚の耐熱ガラス140間に、所定温度に達すると熱に感応して発泡する加熱発泡材150を介在させた積層構造に形成されている。
尚、使用する耐火ガラス110には、図12に示す構成以外の耐火ガラスを使用してもよく、要は、十分にその耐火性能を有する構成の耐火ガラスであれば、本発明に適用することができる。
かかる構成の耐火ガラス110には、図11(B)、図12に示すように、その外周にはサッシが枠状に設けられていない。すなわち、従来構成の耐火性のサッシは、耐火ガラス110の周囲には設けられていない。このようにサッシレスの状態で、耐火ガラス110が建物の耐火ガラス適用部位としてのガラス耐火間仕切壁に取り付けされている。
耐火ガラス110の取付は、図12に示すように、その上端110a、下端110bを、それぞれガラス耐火間仕切壁の敷設箇所の天井側、床側に固定して行われている。建物の耐火ガラス適用部位の天井スラブ120には、ガラス耐火間仕切壁の敷設方向に沿って形成された溝部120aが設けられ、床スラブ130側には溝部130aが設けられている。
溝部120a、130aに、耐火ガラス110の上端110a、下端110bが嵌められ、溝部120a、130aと耐火ガラス110の上端110a 、110bとの間の隙間には耐火層160が介在されて、耐火ガラス110の上下端が固定されている。
天井スラブ120側の耐火層160は、図12に示すように、溝部120aにビス止めにより設けられた断面凹型部材1610と、断面凹型部材1610内面と、耐火ガラス110の上端110aとの間に介在させるセラミックファイバー1620、耐火シール1630とから構成されている。セラミックファイバー1620は、耐火ガラス110の上端110a側にキャップ状に被せるような状態で介在させられている。キャップ状に被せたセラミックファイバー1620と、天井スラブ面120b側との間は、耐火ガラス110の周囲に耐火シール1630が設けられて、火災時の耐火性が確保されている。
床スラブ130側の耐火層160は、図12に示すように、溝部130aにビス止めにより設けられた断面凹型部材1610と、断面凹型部材1610内面と耐火ガラス110の下端110bとの間に介在させるセラミックファイバー1620と、耐火シール1630と、セッティングブロック1640とから構成されている。
耐火ガラス110の下端110bは、断面凹型部材1610内面に平らに設けた珪酸カルシウム板などから構成されるセッティングブロック1640上に載置された状態となっている。
セッティングブロック1640の周囲には、断面凹型部材1610との間に、セラミックファイバー1620が介在させられ、さらに、セラミックファイバー1620上端から床スラブ面130bまで、耐火ガラス110の周面に耐火シール1630が設けられて、火災時の耐火性が確保されている。
また、溝部120aは、図11(B)、図12に示すように、溝部130aより深く形成され、耐火ガラス110の上端110a側の天井スラブ120への飲み込み量hを、下端110bより深くすることにより、サッシレスの耐火ガラスの取付支持構造の安定、強化を図っている。かかる飲み込み量hとしては、20〜30mmの範囲を設定すればよい。
耐火層160の構成としては、上記構成以外の構成でも、耐火ガラス110と溝部120a、130aとの間を埋めて、且つ耐火ガラス110の上下端を確実に固定できるものであればよい。
このようにして、図11に示すガラス耐火間仕切壁22aに使用されている複数枚の耐火ガラス110は、その上端110aが天井スラブ120の溝部120aに、その下端110bが床スラブ130の溝部130aに、それぞれ固定されている。
上下が固定された複数枚の耐火ガラス110同士は、間に断熱材170を介して連接されている。断熱材170としては、例えば、アルミナシリカ系セラミック材、ガラス繊維混入ケイ酸カルシウム材を使用できる。図13に示すように、かかる断熱材170が柱170aに形成され、柱170a(170)の周囲には、熱感応型発泡材180で成形された耐火ガラス保持部180aが設けられている。
耐火ガラス保持部180aは、図13(A)に示すように、柱170aの両側に縦方向に沿って溝部190を設けた形状に形成され、溝部190に耐火ガラス110の縦方向端部が嵌め込まれて支持されている。
このように耐火ガラス110同士は、間に断熱材170、熱感応型発泡材180を介して連接保持されており、従来のような耐火ガラスの周囲に枠状に設けたサッシを支持支柱で支持する構成とは全く異なる。そのため、耐火ガラス面には、従来のように太いサッシ部分がでることはなく、意匠的にすっきりとさせることができる。
耐火ガラス保持部180aに使用できる熱感応型発泡材180としては、ケイ酸ソーダ系、カーボングラファイト系など従来より使用されている熱感応型発泡材を使用することができる。
さらに、耐火ガラス自体は、その上端110a、下端110b側は、コンクリートなどの耐火材を介して天井スラブ120、床スラブ130に固定され、隣接する耐火ガラスとはその側方を耐火材170、熱感応型発泡材180を介して互いに連接接合されているので、火災時の耐火性も十分に確保されている。
かかる構成のノンサッシ構造の耐火ガラス取付構造は、ガラス耐火間仕切壁22a以外にも、避難階段の防火区画壁、あるいは嵌め殺しの耐火窓などに使用して構わない。ナースステーション15bの周囲を囲むガラス耐火間仕切壁23、階段室51と通路12とを区画するガラス耐火間仕切壁に適用できることは言うまでもない。
さらには、病室11aと通路12とを区画する耐火壁21に、上記構成のガラス耐火間仕切壁を使用しても構わない。但し、かかる場合には、通路12側と病室11a内が互いに見通せることとなるため、病室11a側にカーテン、あるいはブラインドを設けるなどして、平常時には通路12側からの見通しを入院患者側からコントロールできるようにしておくことが好ましい。
ガラス耐火間仕切壁の構成は、上記説明に限定されるものではなく、上記説明の趣旨を逸脱しない範囲で以下のように変更してもよい。
例えば、前記説明では、耐火ガラス110の上端110a、下端110bの天井スラブ120、床スラブ130への取り付けを、断面凹型部材1610などを使用した図2に示すような構成にしたが、簡単な構成としては、図14に示すように、耐火材のコンクリートを用いて耐火層160を構成するようにしてもよい。
また、上記説明では、耐火ガラス同士の連接を、断熱材170で構成した柱170aの周囲に、熱感応型発泡材180の耐火ガラス保持部材180aを介して行う構成について説明したが、図13(B)に示すように、断熱材170の柱170aを使用することなく、熱感応型発泡材180による耐火ガラス保持部材180aのみで両隣の耐火ガラスの縦方向端部を挟持して連接させてもよい。
上記説明では、耐火ガラス同士の連接に際して使用する柱170aの断熱材170として、アルミナシリカ系セラミック材、あるいはガラス繊維混入ケイ酸カルシウム材を単独使用する場合について説明したが、これらを併用した構成を採用しても勿論構わない。
本発明の避難安全区画システムで採用するガラス耐火間仕切壁では、従来とは異なり耐火ガラスの周囲に枠状にサッシを設けないため、その分耐火ガラス面の視野を遮るものがない。そのため、火災発生時において、ガラスを通して向こう側の状況をより確実に把握することができる。
さらに、意匠的にもガラス面を広く使うことができる。特に、緊急時要救出者収容施設などでの病院施設、あるいは老人施設などでは、長期入院患者などをも含めて長期滞在者がおり、自宅での療養などとは異なり、一定の規則に従った集団生活が求められ、どうしても気うつに成り易い傾向があると言われる。
本発明で使用するガラス耐火間仕切壁では、サッシを用いない耐火ガラスを使用しているので、サッシを用いる場合とは異なり、ガラス面を遮る部材がなく、心理的な圧迫感を受けない。そのため、サッシを設けないガラス耐火間仕切壁を意識的に使用することにより、従来よりも一層の開放感を演出して、かかる長期滞在者の気うつを少しでも解消する構成とすることができる。
また、サッシを使用しない取付構造であるため、耐火ガラスとその周囲に設けるサッシとの火災時の高温における熱膨張率の違いに基づくガラス破損を未然に防止することができ、より火災時のガラス耐火間仕切壁の信頼性を高めることができる。さらに、サッシを用いない分、耐火ガラスの全体重量が軽くなり、施工容易性を向上させることができ、結果として施工費用の低減を図ることもできる。
また、ガラス耐火間仕切壁は耐火ガラス部分で採光できるので、透光性を有しないそれまでの防火区画材に比べて、防火区画内の採光環境が改善される。透光性を有しない防火区画材を使用した場合には、防火区画内の空間は暗くなりがちで、特別の照明を設ける必要がある。しかし、耐火ガラスを用いることにより、防火区画に隣接する通常の使用空間などから光が入り込み、防火区画内の空間を明るくすることができる。そのため、防火区画内の空間を、平時でも周囲空間とは違和感がなく気軽に利用できる存在とすることができる。
避難路などは、平時から違和感なく使い慣れていた方が好ましいと言われている。普段から使い慣れていた方が、非常時でも安心して落ち着いて避難することができるからである。すなわち、防火区画壁に耐火ガラスを使用することにより、普段から防火区画内の避難空間を明るい親しみ易い空間に構成しておくことが、避難行動時の心理面からも意味のあることである。
さらに、火災時においても、耐火ガラスを通して火災側の状況がある程度察することができるため、全く透光性を有しない防火区画材を使用する場合に比べて、かかる避難路の使用の可否を判断することもでき、より安全な避難行動の確保を行うことができる。
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて変更してもよい。
例えば、共用スペースに設ける業務区画を外部と仕切る耐火間仕切壁には、防火シャッタを開閉可能に設けた窓口を開口させた場合について説明したが、業務区画内に別途受付カウンターなどを設けておき、ガラス防火戸を通して業務区画内に入った状態で受付などが行えるようにしても構わない。かかる構成にしておけば、ガラス耐火間仕切壁に開口部を設けないようにすることができ、火災時における開口部からの延焼などをより回避することができる。
前記説明では、管理棟を挟んで左右に同様の構成を有する入院棟を設けた病院施設を例に上げて説明したが、左右の入院棟の構成は異なる仕様でも構わない。さらには、1棟全体が、入院棟のように構成され、ガラス耐火間仕切壁で病室側と仕切られたナースステーションを設ける構成でも構わない。
共用スペースは、上記説明では業務区画として事務局、ナースステーションを想定して説明したが、施設利用者用の売店などであっても構わない。
また、前記説明の避難安全区画システムの構成は、病院施設の全ての階に適用しても構わないし、あるいは一部の階に適用しても構わない。