JP3901437B2 - 樹脂成形用断熱スタンパーおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形用断熱スタンパーおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、熱可塑性樹脂をスタンパーにより成形する成形方法において、成形後のスタンパー冷却時間を短くするため、転写金属層と型本体の間に断熱層を挿入する断熱スタンパーにおいて、断熱層とスタンパー本体とのシェア・ストレスによる密着強度の劣化を防ぐことが可能な樹脂成形用断熱スタンパーおよびその製造方法に関する。
熱によるストレスを緩和し、異種材料の接合部を強固にする必要がある部品および製品に応用可能である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂から光記録媒体などの造形品を成形するため、従来から多くの種類の金型が使用されている。また、近年成形作業中の樹脂の初期冷却の遅延化を目的として、断熱層を有する多層金型が使用されており、その例として次のようなものが知られている。
・特開平7−178774号公報「光ディスク射出成形用断熱性金型構造」
金属粒子をポリマ結合材に分散させたプライマ層を備える断熱性金型構造が開示されている。金属粒子を用いる点では本発明の先行技術となる。ただし、凸部を有する構造ではない。
・特開平9−123223号公報「射出成型用金型装置及び樹脂成形品の製法」成型品における表面形状の転写性を向上させるため、射出成型用金型のキャビティ表面に断熱材層を介して金属層を形成させることが開示されている。
・特開平10−626号公報「プラスチック成形方法及びその装置」
断熱層の厚みをキャビティ内の位置によって傾斜させ、この熱伝導率の位置による傾斜をもとにプラスチックの成形を行うことが開示されている。
・特公平8−5130号公報「光記録媒体用基板の成形用ローラ、成形装置、成形方法及び光記録媒体」
スタンパと成型用ローラとを接着剤と金属または金属化合物の粉粒とを均一に混合した混合物で貼り合わせる技術が開示されている。ただし、熱伝導性を良くすることを目的とし、成型用ローラの熱伝導率を20W/mK以上、スタンパの厚さを10〜20μmとすることを特徴としている。
・特開平9−155876号公報「断熱金型およびその製法」
断熱金型の型表面再現性および耐久性を改善することを目的とし、断熱層に無機フィラーを用い、その一部をエッチンングして金属層と断熱層表面の密着性を向上させ、成型時の冷熱サイクルやシェア・ストレスに対する耐久性を改善することが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、樹脂成形の形状再現性を落さずにタクト・タイムを短縮する試みが進んでいる。すなわち、射出成形時の高温状態から冷却後取り出すまでの時間を短縮する試みがなされている。
このようなタクト・タイムの短縮は、金型構造の中に熱の流れを断つように制御する断熱層を設け、形状転写の再現性の高い高温部分と成形後の冷却速度を短縮制御するための断熱層とを同一構造内に合わせ持つ金型構造を形成することで実現されると考えられている。このような構造では異種材料の層を積層した際の、その界面でのシェア・ストレスが問題となる。このシェア・ストレスに対する対応策が要求されている。
例えば、このような対応を施した断熱金型の構造例としては、先に示した、断熱層に無機フィラーを用い、その一部をエッチンングして密着性を向上させたもの(特開平9−155876号公報)、金属フィラーを用いこの金属フィラーと支持体とを同じ材質のものを用いるもの(特開平7−178774号公報)がある。また、金型面内の温度分布を補正するための技術としては断熱層に傾斜を持たせることも必要とされている(特開平10−626号公報)。
【0004】
上記した従来の改善策においても、断熱金型の基本構成と異種材料接合間でのシェア・ストレスによる耐久性は充分ではない。たとえフィラーを導入したとしても、必ずしも金型支持体とフィラーが強固な結合となることは難しく、有機物の層が間に介在するとか、有機物の層が介在しない場合でもフィラーと金型支持体とが点接触であり強い接着性を保ち難く、充分なアンカー効果は得られていない。
【0005】
したがって、本発明は断熱効果が高く、しかも断熱層と金型支持体との結合が強固で断熱層と金型支持体間に働くシェア・ストレスに対して変形することのない耐久性の優れた断熱スタンパーおよびその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を達成するためになされたものであって、その第1の技術手段は、樹脂表面の形状を転写する転写金属層、断熱層、金属層を順次積み重ねて構成される樹脂成形用断熱スタンパーにおいて、前記断熱層と前記金属層は、金属または無機物質からなるフィラーを混入したコーティング層を介して接続され、かつ、該コーティング層と前記金属層との接続界面において該フィラーが前記金属層側に突出していることを特徴とする。
【0007】
第2の技術手段は、第1の技術手段の樹脂成形用断熱スタンパーにおいて、前記フィラーの突出した部分の寸法は、前記フィラー全体の深さ方向の50%以下であることを特徴とする。
【0008】
第3の技術手段は、第1の技術手段の樹脂成形用断熱スタンパーにおいて、前記フィラーの主成分は、前記金属層の主成分と同一であることを特徴とする。
【0009】
第4の技術手段は、第1または第2の技術手段の樹脂成形用断熱スタンパーにおいて、前記フィラーの主成分は、前記断熱層の硬度よりも硬い金属または無機物質であることを特徴とする。
【0010】
第5の技術手段は、樹脂表面の形状を転写する転写金属層、断熱層、金属層を順次積み重ねて構成され、前記断熱層と前記金属層は、金属または無機物質からなるフィラーを混入したコーティング層を介して接続され、かつ、該コーティング層と前記金属層との接続界面において該フィラーが前記金属層側に突出している樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法において、前記断熱層に前記フィラーを混入したコーティング層を形成した後、エッチングにより前記コーティング層の樹脂成分を除去し、前記フィラーを露出させて突出部を形成した後、前記金属層を形成することを特徴とする。
【0011】
第6の技術手段は、第5の技術手段の樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法において、前記エッチングは、真空雰囲気内で稀ガスによる逆スパッタを行うことを特徴とする。
【0012】
第7の技術手段は、第5の技術手段の樹脂形成用断熱スタンパーの製造方法において、前記エッチングは、真空雰囲気内で酸素を混合させた稀ガスによる逆スパッタを行うことを特徴とする。
【0013】
第8の技術手段は、第5の技術手段の樹脂形成用断熱スタンパーの製造方法において、前記エッチングは、真空雰囲気内で酸素を混合させた稀ガスによる逆スパッタを行った後、さらに稀ガスのみによる逆スパッタを行うことを特徴とする。
【0014】
第9の技術手段は、第5の技術手段の樹脂形成用断熱スタンパーの製造方法において、前記エッチングは、エッチング液により行うことを特徴とする。
【0015】
第10の技術手段は、第5の技術手段の樹脂形成用断熱スタンパーの製造方法において、前記エッチングは、大気中でのUV/O3処理により行うことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜3に基づいて説明する。
本発明は、断熱性を有するコーティング層に導入したフィラーがアンカーとしてコーティング層にしっかりと埋め込まれた状態で金属層に対しても充分な固着強度を持つように構成し、繰り返し成形サイクルによってスタンパー高温部分、断熱層およびスタンパー低温部にあたる金属層間の膜の広がり方向に生ずるシェア・ストレスに対して高耐久性を維持する構造の樹脂成形用断熱スタンパーおよびその製造方法を開示する。
【0017】
図1は、本発明の実施例の断熱スタンパーを示す模式的断面図である。
図1において、断熱スタンパー1は金型高温部分にあたる転写金属層表面2の裏側に断熱層3が設けられ、断熱層3の金属層6側に金属または無機物質からなるフィラー4が混入されたコーティング層5を設け、コーティング層5中の金属または無機物質のフィラー4が金属層6の裏打ちメッキ層に対し充分なアンカー効果をもつように構成されている。すなわち、コーティング層5に混入されたフィラー4を裏打ちメッキ層からなる支持体6側に凸に突き出した形状の突出部となるように形成する。
【0018】
フィラー4の凸状に突き出した突出部は、単にフィラー4を混入したコーティング層5を積層した場合には露出部が点状になってしまうのに比べ、凸状突出部となり金属層6との接触面積が広くなるように構成できる。
金属層6とフィラー4の接合強度は、フィラー4と金属層6の接触面積に相関するので、結果としてシェア・ストレスに対する強度は接触面積の広さと相関すると考えられる。そのため、このように断熱層3に含有させるフィラー4に突き出した部分を形成することにより金属層6とフィラー4との強固な接続を実現することができる。
図1の断面図において、1は断熱スタンパー、2はスタンパー高温部分にあたる転写金属層、3は断熱層、5は断熱性樹脂にフィラー4を混入したコーティング層であって、フィラー4は金属層6のアンカー部となっている。6は裏打ちメッキ層からなる金属層である。
図2は、図1の部分拡大図であり、フィラー4の凸状の突出部は裏打ちメッキ層によって金属層6を形成する際にメッキ用の電極として用いるコンタクト層膜となる。
【0019】
金属または無機物質からなるフィラー4は、通常原料物質の粉砕により製造されるのが一般的であるので、多くの場合、球に近い形状となっている。
球状のモデルで考えるとフィラー4の断熱層3に対するアンカー効果が維持されるためには突部の寸法をフィラー全体の50%以下で構成するのが効果的である。
また、材質的には金属または無機フィラーであれば、突出部によるアンカー効果が得られるが、金属層6と主成分が同一となる材料から選んだ方がフィラー4と金属層6間での剥離がなく、最も強固な接合が可能となる。
さらに、硬さの点では断熱層3に用いる樹脂よりも硬い物質でないとアンカー効果が得られない。
【0020】
次に、断熱スタンパーの製造方法は、フィラー4が混入されたコーティング層5を断熱層3にコーティングした後に、コーティング層5の断熱樹脂をエッチング処理してフィラー4の凸部を形成するとともにフィラー4の地肌面を露出させる。
その後、金属層6となる裏打ちメッキ用の電極となる部分を無電界メッキまたは真空中の金属スパッタを行い、金属層6としての金属部を厚付けメッキなどにより形成する。構造的には金属または無機物質のフィラー4が露出しているために、スパッタ膜及び裏打ちメッキ層との密着性が良好となり、しかも金属フィラー4がアンカー効果を発現するため、連続使用した際の断熱層3と裏打ちメッキとの剥がれが防止できる。
【0021】
具体的なエッチングの方法としては、真空中でフィラー4が混入したコーティング層5を断熱層3にコーティングした後、
(1)真空槽内で希ガスにより逆スパッタを行い、金属または無機物質のフィラー4の地肌面を露出させる方法、
(2)同じく真空槽内で希ガスに加え樹脂のエッチング効果を増すために酸素を混合させて逆スパッタを行い金属または無機物質のフィラーの地肌面を露出させる方法、
(3)希ガスに酸素を加えた雰囲気で逆スパッタを行った後さらに希ガスのみで逆スパッタを行う方法、などが可能である。
これらの方法では真空槽内でエッチング処理後に、裏打ちメッキ用の電極となる金属スパッタを同一装置内で行うのが効果的である。
【0022】
また、他の方法として
(4)コーティング層5の樹脂をウエットエッチングにより除去し、フィラーの凸部を形成するとともにフィラーの地肌面を露出させる方法、
(5)酸素を導入した雰囲気内で紫外線を照射して除去する(UV/O3処理)方法、などが可能である。
(4)および(5)の処理後、さらに(1)と同様に真空雰囲気内で稀ガスにより逆スパッタし、表面を清浄化させ、その後支持体6を形成をしてもよい。
【0023】
断熱層樹脂3として用いることができる樹脂材料、金属または無機物質のフィラー4として用いることができる材料は、それぞれ以下の材料から選ぶことができる。
・断熱層樹脂材料の具体例:ポリイミド、ポリアミドイミドを中心とした高耐熱性重合性の樹脂。
・無機物質のフィラーの具体例:酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化タングステンなどの酸化物、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタンなどの炭化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化チタン、などの窒化物、あるいは、これらの物質の混合物など。
・金属フィラーの具体例:ニッケル、銅、アルミニウム、クロム、亜鉛、真鍮。
【0024】
本発明を光ディスクの製造に適用した実施例について説明する。
光ディスクを製造する場合、まず最初に、情報ビットをガラス盤面上に形成し、その後その表面にニッケルメッキ(ニッケルに限らずアルミ等の他の金属も用いられるが、本明細書では「ニッケル」にこれらの金属を代表させる)を施し、このニッケルメッキ層をガラス盤から剥離させて、ガラス盤上のビットに対してネガ型となるニッケル製の複製原盤を作成する(通常これは「マスタ」、または「マスタースタンパ」と称されるものである)。
このマスタースタンパの表面に、剥離を容易にするために酸化被膜を形成し、あるいは離型剤を塗布し(通常これを「剥離処理」という)た後、さらにニッケルメッキを施し、このメッキ層を剥離させて複製スタンパ(マスタースタンパに対してはネガ型であるが、ガラス原盤に対してはポジ型。通常これは「マザー」、または「マザースタンパ」と称されるものである)を作成する。
さらに、このマザースタンパの表面に、上記と同様に剥離処理を施した後、ニッケルメッキを施し、これを剥離させて複製スタンパ(マスタースタンパ等から複製されたスタンパ)を形成する(これはマスタースタンパに対してポジ型になる。通常これは「サン」、または「サンスタンパ」と称されるものである)。
この複製スタンパ(サンスタンパ)をプラスチック射出成形機の金型に取り付けて、ポリカーボネートやアクリル樹脂製の光ディスクの基板を量産する。
【0025】
図3は、光ディスクの製造工程を工程順に示す図である。
(A)はマザースタンパ11を示す図である。
このマザースタンパ11の表面をUV/O3処理して酸化被膜12を形成し剥離処理を施した状態が(B)である。
この酸化被膜12の上に約25μmのニッケル層13を電鋳法で形成する。この状態が(C)である。
その後、断熱層14の形成を行う。まず、断熱層14を形成するニッケル層13の表面を酸洗して表面を洗浄し、ポリアミドイミドを約30μm形成する。ポリアミドイミド層の形成方法は、溶剤で希釈したポリアミドイミド(東洋紡社製バイロマックス,粘度230ポイズ,ポリアミドイミド12%,溶剤のNMP:nメチルピロリドン88%)をディスペンサで40g滴下し、450rpmでスタンパ全体を回転させて均一膜厚となるように振り切り、100℃で30分間乾燥させて形成する。形成後の状態が(D)である。
さらに、金属または無機物質のフィラー15を含む断熱性コーティング層16を形成する。形成後の状態が(E)となる。
その後の工程で、フィラー15を含む断熱性コーティング層16をエッチングしてフィラー15からなる突出部を形成する。この状態が(F)である。
【0026】
以下実施例1〜4では、前記製造工程の(E)から(F)に至る工程について個別に説明する。
フィラー15からなる突出部を形成後、ニッケルのスパッタ膜17を500Åの厚みで形成し電鋳用の電極とする。この状態が(G)である。
次に、金属層6としての電鋳ニッケル膜18を250μmの厚みで形成すし、マザースタンパ11を剥離して断熱スタンパーが完成する。この工程が(H)〜(I)である。
【0027】
(実施例1) 金属フィラーを用いた実施例
図3(D)の断熱層形成まで実施した状態の工程品に対して、平均粒径が1〜1.2μmのニッケルをポリアミドイミド成分に対し20Vol%フィラー分として混合した塗布用の樹脂液を用い、ベイキング後膜厚で5μmとなるようにコーティング層16を形成した。
次に、MRC社製スパッタ装置で逆スパッタ・モードにて、アルゴンガス圧5mTorr、進行波0.5kW40分の逆スパッタ(エッチング)を実施した。このときの断熱性コーティング層16の断熱層樹脂部分のエッチング量は膜厚にして0.5μmであった。ニッケル素材のフィラー15部分はアルゴンの逆スパッタによりエッチングされ難いので、ほぼ元の形のまま残り樹脂部のみがエッチングされて凸部部分の寸法が最大0.5μmになる突出部が形成された。
次に、連続して同一装置内で電鋳用の電極とするニッケルのスパッタ膜17を500Åの厚みで形成して、スパッタ装置から取り出し、金属層としての電鋳ニッケル膜18を250μmの厚みで形成後、マザースタンパ11を剥離して断熱構造をもつスタンパーを製作した。
このようにして形成したスタンパーは4秒の成形サイクルで射出成形可能で、スタンパーの寿命も15〜18万枚成形程度の寿命を保持した。18万枚射出成形後までは断熱層界面での剥離は発生せず、真円度ズレも必要精度内であった。
【0028】
(実施例2) アルゴンに酸素を入れた場合の実施例
図3(D)の断熱層形成まで実施した状態の工程品に対して、ニッケルフィラーの代りに酸化チタンフィラー(粒径1.0〜1.5μm平均粒径は1.2μm)とした他は同一としたフィラー入り断熱性コーティング層16を5μm形成した。
その後、アルゴンに20%酸素を加えたスパッタガスを用いて、ガス圧5mTorr、進行波0.5kW20分の逆スパッタ(エッチング)を実施した。この場合のコーティング層の樹脂部分のエッチンング膜厚は時間が短いにもかかわらず、実施例1と同じ0.5μmであった。
実施例1と同様に、連続して同一装置内でニッケルのスパッタ膜17を500Åの厚みで形成後、スパッタ装置から取り出し金属層を形成後、マザースタンパ11を剥離して断熱構造を持つスタンパーを製作した。スタンパ形状完成後、スタンパとしての評価をしたところ、ニッケルフィラーの場合と同じく4秒の成形サイクルで射出成形でき、スタンパーの寿命も15〜18万枚成形後程度の寿命を保持した。
【0029】
(実施例3) 無機物質フィラーを用いた実施例
図3(D)の断熱層形成まで実施した状態の工程品に対して、ニッケルフィラーの代りにニクロムフィラー(粒径1.0〜1.5μm平均粒径は1.2μm)とした他は同一としたフィラー入り断熱部を5μm形成した。
その後、アルゴンに20%酸素を加えたスパッタガスを用いて、ガス圧5mTorr、進行波0.5kW20分の逆スパッタ(エッチング)を実施した。
さらに、酸素雰囲気で形成されている表面酸層を除去する目的で、アルゴンガスのみの雰囲気下にて進行波0.5kW5分の逆スパッタ(エッチング)を実施した。このときのガス圧は5mTorrである。ニクロムの場合は酸化表面層が離型層となる(単体のニッケルおよびクロムも同じ)ので、酸化層の除去が耐久性の上で重要となる。
後工程は実施例1と同一とし、同様に評価したところ同じ結果を得た。
【0030】
(実施例4) ウエットエッチング液を用いた実施例
図3(D)の断熱層形成まで実施した状態の工程品に対して、平均粒径が1〜1.2μmのニッケルをポリアミドイミド成分に対し20Vol%フィラー分として混合した塗布用の樹脂液を用い、ベイキング後膜厚で5μmとなるように形成した。
この後80℃に加熱したピリジンに40分浸漬後引き上げ、アセトンの蒸気洗浄によりピリジンを置換した。100℃で20分乾燥後、樹脂部のエッチンング膜厚を測定したところ0.1μmであった。すなわち凸部の最大寸法は0.1μmとなる。
フィラーからなる凸部形成後の工程は実施例1と同一とし、同様に評価したところ、形成したスタンパは4秒の成形サイクルで射出成形できた。スタンパーの寿命は10〜15万枚成形程度の寿命を保持した。
【0031】
(実施例5) UV/O3の実施例
図3(D)の断熱層形成まで実施した状態の工程品に対して、平均粒径が1〜1.2μmのニッケルをポリアミドイミド成分に対し20Vol%フィラー分として混合した塗布用の樹脂液を用い、ベイキング後膜厚で5μmとなるように形成した。
この後、185nmと254nmの波長の紫外線を大気中でフィラー入り断熱性コーティング層に180mW/cm2の強さで60分照射した。コーティング層16の樹脂部分のエッチンング膜厚を測定したところ0.12μmであった。すなわちフィラー15の突出部の最大寸法は0.12μmとなる。
フィラーからなる突出部形成後に評価したところ、実施例4とほぼ同等の結果を得た。
【0032】
前記実施例1〜4の技術的効果を評価するため、次のような実験を行い比較例1〜4とした。
(比較例1):フィラーに突出部が無い場合の比較例
フィラー入りの断熱性コーティング層を形成せずに、フィラー無しの断熱性コーティング層35μmとした以外は実施例1と同じプロセスにより断熱構造を持つスタンパーを作製した。この場合は、同じく4秒タクトでの射出成形は可能であったが、寿命は5〜8万枚であり、断熱層の剥離が起きない場合も真円度の劣化が起きた。
【0033】
(比較例2):突出部が50%以上の場合の比較例
実施例2において、エッチング厚が0.8〜1μmとなるようにフィラー入り樹脂部分を深くエッチングした場合は、突出部が形成されていても断熱構造を持つスタンパーとしてはそのスタンパーの寿命は4〜10万枚の寿命となり、寿命のバラツキが大きくなった。これは、平均粒径1.2μmに対し、アンカー効果を発現する部分が浅くなるためと思われる。寿命のバラツキの大きさは、アンカー効果の発現の大小に起因するものである。
【0034】
(比較例3):
ニッケル、クロムあるいはニクロムなどの金属フィラーを用いた例えば実施例3において、アルゴンに酸素を含む雰囲気のみで逆スパッタした場合は、凸部を形成しても断熱構造を持つスタンパーとしてはそのスタンパーの寿命は2〜3万枚と寿命が短くなった。これは、金属フィラー表面にできる極薄い表面酸化膜が次にスパッタされるニッケル膜との間で離型作用を持つためと思われる。
【0035】
(比較例4):断熱構造を持たない金型の場合の比較例
通常の断熱構造を持たないスタンパーでは、スタンパー寿命は20万サイクルであるが、成形体サイクルは6〜7秒と断熱構造を持つ金型に比べ長く生産効率は低くなってしまう。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば次のような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、フィラーに凸形の突出部が形成されているため金型支持体との接触面積が広く取れるので、金属層と断熱層を強固に接続することが可能である。そのため、フィラーが断熱層に対してアンカーとして効果的に働き断熱層と金属層とに働くシェア・ストレスに対する耐久性を向上することができる。
【0037】
請求項2の発明によれば、フィラーの凸となる形状に突き出した部分の寸法がフィラー全体の深さ方向の50%以下であるので、フィラーの断熱層に対するアンカー効果を保つことができる。
【0038】
請求項3の発明によれば、フィラーと金属層の主成分の材質が同一であるので、フィラーと金属層との接合強度を弱めることなく接続することができる。
【0039】
請求項4の発明によれば、断熱層材料より硬度の高い材質をフィラーとして用いることで、シェアストレスを受けた際に、フィラーが変形することがないので強いシェアストレスにおいてもアンカー効果を維持することができる。
【0040】
請求項5の発明によれば、フィラーの突出部を再現性良く形成することができる。また、フィラー部の表面も断熱層の樹脂に覆われていても、エッチングされることでクリーニングされるので接合しやすく接合後の耐久性も保持される。
【0041】
請求項6の発明によれば、ドライ処理のため、汚れを巻きこむことなどがないので、空気中や溶液中のようにフィラー表面に酸化膜や窒化膜などの表面反応層やコンタミネ−ション層を形成することなくクリーンな清浄表面のフィラー突出部が得られる。そのため、フィラーの突出部と金属層と再現性良く強固に接合できる。コストは溶液中などに比べ高くなるので、光ディスク用スタンパなど高付加価値のプロセス向けに最適である。
【0042】
請求項7の発明によれば、希ガスに酸素を含有させることで断熱層樹脂部のエッチングレートを向上させることができるので、製作上の生産性を向上させることができる。フィラーが酸化物の場合には最適である。
【0043】
請求項8の発明によれば、フィラーが酸化物以外の場合には、表面酸化層により金属層との接触強度が落ちることがあるので、請求項7に加え表面酸化層を取り除くために希ガスのみによる逆スパッタが必要となる。特に、ニッケルとかクロムあるいはニクロムフィラーの場合は酸化層が有ると接着強度が極端に低くなるので、希ガスのみによる逆スパッタが有効である。
【0044】
請求項9の発明によれば、フィラー表面のコンタミや酸化層または残留水分が問題とならない場合はエッチング液による凸部形成は設備コストが少なく安価である。
【0045】
請求項10の発明によれば、液を用いないので水分を含むことなく凸部を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の断熱スタンパーを示す模式的断面図である。
【図2】 図1の部分拡大図である。
【図3】 光ディスクの製造工程を順を追って示す図である。
【符号の説明】
1…断熱スタンパー、2…転写金属層、3…断熱層、4…フィラー、5…コーティング層、6…金属層、11…マザースタンパー、12…酸化被膜、13…ニッケル被膜、14…断熱層、15…フィラー、16…フィラーを含む断熱層、17…ニッケルスパッタ膜、18…電鋳ニッケル膜。
Claims (10)
- 樹脂表面の形状を転写する転写金属層、断熱層、金属層を順次積み重ねて構成される樹脂成形用断熱スタンパーにおいて、
前記断熱層と前記金属層は、金属または無機物質からなるフィラーを混入したコーティング層を介して接続され、かつ、該コーティング層と前記金属層との接続界面において該フィラーが前記金属層側に突出していることを特徴とする樹脂成形用断熱スタンパー。 - 前記フィラーの突出した部分の寸法は、前記フィラー全体の深さ方向の50%以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形用断熱スタンパー。
- 前記フィラーの主成分は、前記金属層の主成分と同一であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形用断熱スタンパー。
- 前記フィラーの主成分は、前記断熱層の硬度よりも硬い金属または無機物質であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形用断熱スタンパー。
- 樹脂表面の形状を転写する転写金属層、断熱層、金属層を順次積み重ねて構成され、前記断熱層と前記金属層は、金属または無機物質からなるフィラーを混入したコーティング層を介して接続され、かつ、該コーティング層と前記金属層との接続界面において該フィラーが前記金属層側に突出している樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法において、
前記断熱層に前記フィラーを混入したコーティング層を形成した後、エッチングにより前記コーティング層の樹脂成分を除去し、前記フィラーを露出させて突出部を形成した後、前記金属層を形成することを特徴とする樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法。 - 前記エッチングは、真空雰囲気内で稀ガスによる逆スパッタを行うことを特徴とする請求項5記載の樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法。
- 前記エッチングは、真空雰囲気内で酸素を混合させた稀ガスによる逆スパッタを行うことを特徴とする請求項5記載の樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法。
- 前記エッチングは、真空雰囲気内で酸素を混合させた稀ガスによる逆スパッタを行った後、さらに稀ガスのみによる逆スパッタを行うことを特徴とする請求項5記載の樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法。
- 前記エッチングは、エッチング液により行うことを特徴とする請求項5記載の樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法。
- 前記エッチングは、大気中でのUV/O3処理により行うことを特徴とする請求項5記載の樹脂成形用断熱スタンパーの製造方法。
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