JP3901386B2 - 駐車設備の昇降装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は駐車設備の昇降装置に関する。さらに詳しくは、たとえば、パレットなどの車両収容手段が駐車空間内に、中間にスペースをおいて上段および下段の二段に配列された範囲を有する駐車設備において、上段および下段の車両収容手段を個別に上記中間スペースに昇降移動させるための昇降装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記駐車設備としては、たとえば、実公昭55−14682号公報(従来技術1という)、実公平7−32776号公報(従来技術2という)、特開平7−62908号公報(従来技術3という)、特許第2788057号(従来技術4という)等に開示されているものが知られている。
【0003】
図11に示すようにこれらの駐車設備51は、駐車空間内に上・中・下の三段に、且つ複数列に車両Aを収容するためのパレット52が配設されたものであり。中段Mにおける少なくとも一カ所が車両Aの出入口Eとして構成されている。そして、中段Mのパレット52bはその個数が列数より少なくとも一個少なくされているとともに、横方向に移動させられるようにされている。また、上段Uのパレット52aは駐車空間内における上段Uと中段Mとのあいだを昇降させられ、下段Lのパレット52cは駐車空間内における中段Mと下段Lとのあいだを昇降させられるようにされている。
【0004】
かかる構成により、中段のパレット52bを左右に横行させて、空いた中段Mのスペースに上段のパレット52aを下降させたり下段のパレット52cを上昇させたりして、出入口Eから進入する車両を所望のパレット52に収容し、また、所望のパレット52上の車両Aを上記出入り口Eから出車させる。
【0005】
一般に、中段の各パレット52bは、その前端縁と後端縁とが駐車空間の内壁面に配設されたガイドレールGに滑動可能に係合し、このガイドレールGに沿って横行可能にされている。また、上段パレット52aと下段パレット52cとは適宜位置に配設されたスプロケットに好適に掛け回されたチェーンによって昇降させられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術1および従来技術3の駐車設備におけるパレットの昇降装置はともに、そのパレットを定位置に位置させているときにはスットパーが作用している。そして、そのパレットを昇降させるに際してパレットの荷重が負荷された状態でストッパーを解除作動させる必要がある。しかも、従来技術1では昇降用のチェーンをパレットの前後にわたって掛け回すため、配設スペースおよびチェーン自体が不経済の要因となる。
【0007】
従来技術2の昇降装置にあっては、チェーンをその端部に取り付けた係合具の自重によって自由垂下させている。したがって、チェーンをたるませた状態から駆動スプロケットを作動させる場合に、たるみを除去し終わるまでチェーンの移動開始にタイムラグが生じてしまう。また、従来技術2におけるその他の昇降装置にあってはチェーンガイド、およびチェーンを把持する係合手段などの機構を備えなければならない。
【0008】
従来技術4の昇降装置にあっては、上段のパレットをチェーンによって直接昇降させるが、下段のパレットは滑車(ガイドロール)を介して昇降させるため、両パレットの昇降必要トルクおよび昇降時間が相互に大きく異なることとなる。
【0009】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、一台の駆動手段により、短い伝動手段によって上下段の各車両収容手段を個別に昇降させ、しかも、昇降に際して従来技術2のように伝動手段のたるみによる駆動開始時のタイムラグがなく、ストッパの作動持に従来技術1、3のように負荷が加わることなく、従来技術4のようにパレットの上昇と下降とに駆動条件が変化することのない昇降装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の昇降装置は、
駐車空間と、該駐車空間内に上下に配設された上下動可能な、車両を収容するための上段収容手段および下段収容手段と、上記駐車空間内上部に配設された第一固定滑車と、上段収容手段に配設された第一滑車と、下段収容手段に配設された第二滑車と、上段収容手段を下方から支持するように係合・離脱しうる係合滑車と、上記両収容手段を別々に上下動させる可撓性を有する伝動手段と、該伝動手段をその長手方向に移動させうる駆動手段と、少なくとも上昇位置における上段収容手段を停止固定するためのロック手段とを備えており、
該伝動手段が、その一端を駐車空間部に固定されたうえで少なくとも上記係合滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも第一固定滑車に上から係合し、ついで少なくとも上記第二滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも上記第一滑車に上から係合したうえで他端が駐車空間部に固定されている。
【0011】
したがって、上段収容手段が駐車空間内の上段にあり且つ下段収容手段が駐車空間内の下段にある基準位置の状態では、伝動手段はたるみがほとんど生じない長さに設定されることになる。そして、ロック手段によって上段収容手段を上段に固定した状態で下段収容手段の第二滑車を持ち上げるように、または、下降するように伝動手段を移動させれば下段収容手段を上昇・下降させることができる。その際、下段収容手段が下降端以外に位置するときには上段収容手段から離脱した係合滑車が自重によって伝動手段のたるみを垂下処理することになる。下段収容手段が下降端に位置するときには伝動手段にたるみがほとんど生じず、係合滑車が上段収容手段に係合することになる。また、基準位置から、ロック手段を解除した状態で係合滑車を下降するようにまたは持ち上げるように伝動手段を移動させれば、下段収容手段は自重によって下降端に静止したまま上段収容手段を下降・上昇させることができる。
【0012】
すなわち、昇降対象となる収容手段側の伝動手段がたるむことがないので収容手段の移動開始のタイムラグはない。いずれの収容手段も滑車を介して昇降させられるので駆動のための必要トルクおよび所要時間が上昇と下降とで大きく異なることはない。また、ロック手段を作動させるときには、駆動手段によって第五滑車と第一滑車とを僅かに持ち上げておくことができるのでロック手段に対する収容手段の荷重負荷を解除することが可能である。しかも、短い伝動手段によって上記作用を奏することができる。
【0016】
本発明のさらに他の昇降装置は、
駐車空間と、該駐車空間内に上下に配設された、上下動可能な、車両を収容するための上段収容手段および下段収容手段と、上記駐車空間内上部に配設された第一固定滑車および第二固定滑車と、上記駐車空間内下部に配設された第三固定滑車と、上段収容手段に配設された第一滑車および第四滑車と、下段収容手段に配設された第二滑車および第三滑車と、上記両収容手段を別々に上下動させる可撓性を有する伝動手段と、該伝動手段をその長手方向に移動させうる駆動手段と、少なくとも上昇位置における上段収容手段を停止固定するためのロック手段とを備えており、
該伝動手段が、その一端を駐車空間部に固定されたうえで少なくとも上記第三滑車に上から係合し、ついで少なくとも第三固定滑車に下から係合し、ついで少なくとも上記第二固定滑車に上から係合し、ついで少なくとも上記第四滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも上記第一固定滑車に上から係合し、ついで少なくとも上記第二滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも上記第一滑車に上から係合したうえで他端が駐車空間部に固定されている。
【0017】
したがって、上段収容手段が駐車空間内の上段にあり、且つ下段収容手段が駐車空間内の下段にある基準位置であるとき、ロック手段によって上段収容手段を上段に固定した状態で下段収容手段の第二滑車を持ち上げるように、または、下降するように伝動手段を移動させれば下段収容手段を上昇・下降させることができる。また、基準位置から、ロック手段を解除した状態で第四滑車を下降するようにまたは持ち上げるように伝動手段を移動させれば、下段収容手段は自重によって下降端に静止したまま上段収容手段を上昇・下降させることができる。
【0018】
その際、収容手段の全ての状態において伝動手段にたるみがほとんど生じない。したがって、収容手段の移動開始のタイムラグがなく、しかも、下段収容手段が下降端以外に位置するときの伝動手段のたるみ処理も不要となる。
【0019】
また、いずれの収容手段も滑車を介して昇降させられるので、駆動のための必要トルクおよび所要時間が上昇と下降とで大きく異なることはない。また、ロック手段を作動させるときには、駆動手段によって第四滑車と第一滑車とを僅かに持ち上げておくことができるのでロック手段に対する収容手段の荷重負荷を解除することが可能である。
【0026】
如上のうちのいずれかの昇降装置であって、上記駆動手段が上記第一固定滑車を回転駆動し、該第一固定滑車の回転によって上記伝動手段がその長手方向に移動させられるように構成されたものにあっては、伝動手段の移動経路に別途駆動手段を配設する必要が無いので装置全体がシンプルなものとなる。
【0027】
なお、上記滑車および伝動手段としては、スプロケットおよびチェーンが選択されうる。
【0028】
【発明の実施の形態】
添付の図面を参照しながら本発明の昇降装置の実施形態を説明する。
【0029】
図1は本発明の昇降装置の一実施形態を概略的に示す斜視図である。図3(a)は図1の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す側面図であり、図3(b)は図1の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【0030】
以下に説明する昇降装置は、前述した図11の駐車設備51にも適用しうる昇降装置である。もちろん、図11に示すようにパレットの列数は三列に限定されることはなく、一列以上であればよい。
【0031】
図1に示す昇降装置1は、駐車空間Sにおける上段パレット2および下段パレット3の車両出入口Eとは反対側の奥部に一対の形態で配設されている。図には理解容易のために各パレット2、3を平板状に示しているが、実際のパレットは車輪案内のための溝などを形成するために屈曲されている。まず、駐車空間Sにおける、上段位置にある上段パレット2の後縁近傍の上方に対応するように駆動軸4が配設されている。この駆動軸4の両端それぞれに、すなわち上段パレット2の後縁近傍の両端の上方に対応する位置に駆動スプロケット5が取り付けられている。そして駆動軸4を回転駆動する駆動機6が配設されている。上段パレット2の後縁近傍の両端にはそれぞれ第一スプロケット7が配設されており、下段パレット3の後縁近傍の両端にはそれぞれ第二スプロケット8が配設されている。上記駆動軸を配設する部位は駐車空間Sの壁でも梁でもよい。
【0032】
また、これらのスプロケット5、7、8には伝動手段としてのチェーン9が掛け回されている。すなわち、チェーン9はその一端が駐車空間Sにおける上段位置Uにあるパレット2の上方に(壁面でも梁でもよい)に取り付けられ、ついで浮動の係合スプロケット10にその下から係合してこれを吊持し、ついで上記駆動スプロケット5に上から係合し、ついで下段パレット3の第二スプロケット8に下から係合して下段パレット3を吊持し、ついで上段パレット2の第一スプロケット7に上から係合したうえで、その他端が駐車空間Sの中段位置Mの下端近傍に取り付けられている。そして、駆動スプロケット5が駆動機6によって正逆方向に回転させられて、チェーン9がその長手方向の両向きに移動させられることによって各パレット2、3が昇降させられる。
【0033】
図1は、上段パレット2が駐車空間S内の上段位置にあり、下段パレット3が駐車空間S内の下段位置にある状態を示している。この状態では、たとえば隣接列の中段パレット(図示しない)が横行して上記上段パレット2と下段パレット3との間の空いた空間(以下、中段位置ともいう)Mに至ることができる。したがって、この図1に示すパレット2、3の状態を横行基準位置ともいう。
【0034】
上記係合スプロケット10はチェーン9によって持ち上げられることにより、その上方にある上段パレット2に係合し得るように構成されている。そして、係合状態で係合スプロケット10がさらに持ち上げられることによって上段パレット2も上昇させられる。
【0035】
図2に係合スプロケット10の詳細が示されている。図2(a)は係合スプロケット10の正面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図、図2(c)は係合スプロケット10が上段パレット2に係合した状態を示す正面図、図2(d)は図2(c)のD−D線断面図、図2(e)は図2(c)の平面図である。
【0036】
軸11に回転自在にスプロケットホイール10aが支持されている。この軸11にはスプロケットホイール10aの下半分の外周を覆うチェーンガイド12が取り付けられ、また、軸11を支持する支持板13がチェーンガイド12を横方向に取り巻くように取り付けられている。チェーン9としてはローラチェーンが採用されている。一方、上段パレット2の側縁には係合部14が形成されている。すなわち、係合スプロケット10を安定して昇降させるために、チェーン9の移動を案内する一対のガイド孔15aが穿設され、このガイド孔15aの内周縁にチェーン9と係合してこれを案内するガイド棒15bが固着されている。さらに、上記軸11におけるスプロケットホイール10aの両側部分に係合しうる係合板16が固着されている。係合板16はU字状に屈曲された板部材から形成されており、その両端縁に上記軸11が係合しうる切欠き部16aが形成されている。
【0037】
また、図1に示すように、上段位置Uには、そこに位置する上段パレット2の下降を不能とする上段ロック装置17が配設されている。上段ロック装置17は、そのストッパアーム17aが上段パレット2の下面に係合する作用位置と係合が解除される非作用位置との間を揺動駆動されるように構成されている。
【0038】
なお、本実施形態では上段ロック装置17を上段パレット2の落下防止装置と兼用している。したがって、上段ロック装置17は上段パレット2の正規の上昇駆動停止位置よりも若干下方位置に配置されており、万が一チェーン9の切断やブレーキの故障が発生しても上段パレット2の落下をストッパアーム17aによって受け止めるようにされている。
【0039】
また図1および図3に示すように、上段パレット2および下段パレット3それぞれの両側辺部にバランスチェーン20が配設されている。このバランスチェーン20はパレット2、3を昇降させるときに、昇降力をパレット2、3の後部に加えても、パレット2、3がほぼ水平に保ちながら昇降するためのものである。各パレット2、3の両側辺の前端部および後端部それぞれに、前部と後部の一対のバランススプロケット21、22が配設されている。そして、上段パレット2の両側辺において、それぞれバランスチェーン20が、その一端を駐車空間Sの上段位置Uに固定され、ついで前部バランススプロケット21に下から係合し、ついで後部スプロケット22に上から係合したうえで他端が中段位置Mに固定されている。下段パレット3の両側辺にも、バランスチェーン20がその一端を駐車空間Sの中段位置Mに固定され、ついで前部バランススプロケット21に下から係合し、ついで後部スプロケット22に上から係合したうえで他端が下段位置Lに固定されている。
【0040】
いずれのパレット2、3も、その第一スプロケット7または第二スプロケット8が持ち上げられることによって上昇させられるときに後部バランススプロケット22も持ち上げられるので、バランスチェーン20の張力によって前部バランススプロケット21が持ち上げられ、その結果、パレット2、3の水平状態が維持されつつ上昇する。パレット2、3の下降時にはその逆作用によって同様に水平状態が維持されつつ下降する。
【0041】
如上の昇降装置1の作動を図1および図3を参照しつつ以下に説明する。図3では、理解容易のために後部バランススプロケット22を実際の位置より前方にずらして示している。
【0042】
図1の横行基準位置から図3(a)に示すように上段パレット2を中段の位置に下降させるには、上段ロック装置17のストッパアーム17aを作用位置から非作用位置に揺動駆動した後、駆動スプロケット5を図中の反時計方向に回転させることにより、係合スプロケット10はその自重と上段パレット2の自重とによって下がり、結果的に上段パレット2が中段位置まで下降させられ、中段位置への着床とともに駆動機6が停止する。この間、下段パレット3は自重によって下降端に静止したままであり、駆動スプロケット5より下段パレット3側の部分のチェーン9には大きな張力が作用しない。
【0043】
上段パレット2を中段の位置から図1の上段位置Uへ戻すには図3(a)の状態から駆動スプロケット5を時計方向に回転させればよい。そうすると、係合スプロケット10は上段パレット2の下面に係合した状態で上段位置Uまで上昇する。そして、上段ロック装置17を作用させるときには上段パレット2はそこより若干上方の正規の上昇停止位置に位置しているので上段ロック装置17のストッパアーム17aには荷重は負荷されない。また、ストッパアーム17aを非作用位置に退避させるときにも同様に荷重は負荷されていない。しかも、上記作動中にチェーン9にはたるむ部分は生じない。図1の横行基準位置ではチェーン9に遊び部分はなく、有効に使用される。
【0044】
つぎに、図1の横行基準位置から図3(b)に示すように下段パレット3を中段の位置に上昇させるには、上段ロック装置17のストッパアーム17aを作用位置にした状態で駆動スプロケット5を図中の反時計方向に回転させればよい。これにより、まず、係合スプロケット10とともに上段パレット2がその自重によって下がり始めるが、上段パレット2は僅かに下降した位置のストッパアーム17aによって受け止められる。したがって、第一スプロケット7の下降も阻止されるため、チェーン9の第二スプロケット8に係合している部分が引き上げられて下段パレット3が上がる。また、係合スプロケット10はその自重によって上段パレット2との係合が解かれてチェーン9のたるみ部を垂下処理し、結果的に下段パレット3が中段位置まで上昇させられ、駆動機6の停止によって停止させられる。下段パレット3を中段の位置から図1の下段位置Lへ戻すには、図3(b)の状態から駆動スプロケット5を時計方向に回転させればよい。そうすると、係合スプロケット10が引き上げられるとともに、第二スプロケット8とともに下段パレット3は下段位置Lまで下降して駐車空間Sの底部Vに着床する。したがって、下段パレット3が駐車空間Sの底部Vに着床していないとき、チェーン9にたるみ部分が生じるが、横行基準位置においてはチェーン9にたるみ部分は生じない。
【0045】
図4には他の実施形態が示されている。この昇降装置23は図1および図3に示す昇降装置1における、駆動スプロケット5と係合スプロケット10との間に、チェーン9が上から係合するための、上段位置に懸架された第二固定滑車である追加の上段固定スプロケット24を備えた点で上記昇降装置1とは異なる。このように本発明では、図1の昇降装置1に対して、チェーンの掛け回し位置の変更など、必要に応じてその昇降機能に影響しない位置に固定スプロケットを追加することが可能である。固定スプロケットを追加することにより、さらに、第一スプロケット7と係合スプロケット10との干渉を簡単に回避することができ、駆動スプロケット5や第一スプロケット7の大きさ、レイアウトなどの設計自由度を高めることができる。図4(a)は昇降装置23の横行基準位置にある要部側面図であり、図4(b)は昇降装置23が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図4(c)は昇降装置23が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。この昇降装置にももちろん図1におけると同様の図示しないバランスチェーンが配設されている。各パレット2、3を昇降させるための駆動スプロケット5の回転方向と昇降との関係はもちろん図1および図3におけると同じである。
【0046】
図5には参考例が示されている。この昇降装置31は、図1および図3の昇降装置1とは、係合スプロケット10に代えて第五滑車32が上段パレット2に離脱することなく取り付けられている点で異なっている。第五滑車はスプロケットとは違ってチェーン9との係合のための係合歯を有しないローラー形状のものである。その他の構成は図1および図3の昇降装置1と同一であるため、同一符号を付してその説明を省略する。図5(a)は昇降装置31の横行基準位置にある要部側面図であり、図5(b)は昇降装置31が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図5(c)は昇降装置31が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【0047】
図示のごとく、この昇降装置31の動作は上記昇降装置1とほとんど同じである。すなわち、各パレット2、3を昇降させるための駆動スプロケット5の回転方向とパレット2、3の昇降との関係は図1および図3におけると同じであり、図示しないが、図1におけると同様のバランスチェーンが配設されている。動作で異なる点は、図5(c)に示すとおり、図5(a)の横行基準位置から下段パレット3を横行基準位置まで引きあげるとき(図5(c))、および、その横行基準位置から下段パレット3を下段位置Lまで下降させるとき(図5(a))のチェーン9の状態である。下段パレット3が下段位置Lより上方にあるときには、第五滑車32は上段パレット2から離脱しないので必然的にチェーン9が自重によって第五滑車32から離脱して垂下する。このように、図1および図3の昇降装置1ではチェーン9の垂下する部分に係合スプロケット10の重量が加わるのに対して、図5の昇降装置31ではチェーン9の自重のみが加わる点で異なる。
【0048】
したがって、本昇降装置31では図2に示すような係合スプロケット10が上段パレット2から離脱した後に再度その側辺に確実に係合するような工夫は必要がない。その代わりに、図6に示すようなチェーン9が第五滑車32から離脱した後に再度第五滑車32に確実に係合するような工夫が必要である。
【0049】
図6(a)は第五滑車32の正面断面図、図6(b)は図6(a)のVI−VI線断面図、図6(c)は図6(a)のVIc−VIc線断面図である。上段パレット2の側辺に取り付けられた軸33によって回転自在にローラホイール32aが支持されている。ローラホイール32aはその外周に沿って図6(b)および図6(c)に示すようにチェーン9が係合するための溝34が形成され、溝34の両側にはチェーン9が横方向に外れることを防止するための案内鍔35が形成されている。上段パレット2の側辺上面にはチェーン9の移動を案内する一対のガイド孔36が穿設されている。このガイド孔36の内周縁には、チェーン9がローラホイール32aの半径方向横向きに外れることを防止し、且つチェーン9の移動を案内するためのガイド棒37が固着されている。ガイド棒37は上記ガイド孔36から少なくともローラホイール32aの水平方向直径部までは直線的に鉛直下方へ延びている。そして、図6(c)に示すように、上記案内鍔35とガイド棒37との間の寸法Dはチェーン9が通過できない狭いものとされている。また、チェーン9への引っかかりを避けるためにガイド棒37の上端と下端とが外側に若干湾曲されている。符号38は軸受である。
【0050】
かかる構成により、図5において、下段パレット3の上昇時にはチェーン9は第五滑車32から何らの障害もなく下方に離脱することができる。また、下段パレット3が下段位置に着床したときにはチェーン9は係合歯を有しない第五滑車32に何らの障害もなく再係合することができる。
【0051】
そして、下段パレット3が下降端以外に位置するときにはチェーン9の一部が第五滑車32から垂下するが、これは昇降対象となる下段パレット3側の部分ではないのでパレット2、3の移動開始のタイムラグは生じない。また、上段パレット2の昇降時にはチェーン9がたるむことはない。さらに、チェーン9の駆動によって上段パレット2を僅かに持ち上げておくことができるので、上段ロック装置17に負荷をかけた状態で作動させることもない。
【0052】
図7には他の参考例が示されている。この昇降装置41は、図4の昇降装置23とは、係合スプロケット10に代えて図6に示した第五滑車32が上段パレット2に離脱することなく取り付けられている点で異なっている。その他の構成は図4の昇降装置23と同一であるため、同一符号を付してその説明を省略する。図7(a)は昇降装置41の横行基準位置にある要部側面図であり、図7(b)は昇降装置41が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図7(c)は昇降装置41が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【0053】
本昇降装置41においても、図5の昇降装置31と同様に、下段パレット3が下段位置Lより上方にあるときには、第五滑車32は上段パレット2から離脱しないので必然的にチェーン9が自重によって第五滑車32から離脱して垂下する。そして前述の昇降装置と同様に、パレット2、3の移動開始にタイムラグを生じず、上段ロック装置17に負荷をかけた状態で作動させることもない。
【0054】
図8にはさらに他の実施形態が示されている。この昇降装置25は、図1および図3に示す昇降装置1における下段パレット3の両側辺に第三滑車である追加の第三スプロケット26が配設されている。そして、上段パレット2の両側辺には、前述の係合スプロケット10に代えて、上段パレット2に常時一体の第四滑車である第四スプロケット18が配設されてる。また、上段位置Uに第二固定滑車である追加の上段固定スプロケット24が二個(一個であっても三個以上であってもよい)懸架されており、下段位置Lに第三固定滑車である追加の下段固定スプロケット27が二個(一個であっても三個以上であっもよい)上方に向けて突設されている。
【0055】
この昇降装置25のチェーン9掛け回しが図1の昇降装置1と異なる点は、第四スプロケット18に下から係合した後で上段位置Uに直ちには固定されず、上記二個の上段固定スプロケット24に上から係合し、ついで二個の下段固定スプロケット27に下から係合し、ついで下段パレット3の第三スプロケット26に上から係合した後、下段位置Lに他端が固定されていることである。各パレット2、3を昇降させるための駆動スプロケット5の回転方向と昇降との関係は図1および図3におけると同じである。ただし、下段パレット3の昇降駆動によって駆動スプロケット5より上段パレット2側に生じようとするチェーン9のたるみ部は、上段固定スプロケット24および下段固定スプロケット27を介して、下段パレット3と一体の第三スプロケット26によって引き寄せられるため、チェーン9のたるみは生じない。したがって、本実施形態では全てのパレットの昇降過程においてチェーン9にたるみが生じることはない。また、チェーン9駆動によって上段パレット2を僅かに持ち上げておくことができるので、上段ロック装置17に負荷をかけた状態で作動させることもない。
【0056】
図8(a)は昇降装置25の横行基準位置にある要部側面図であり、図8(b)は昇降装置25が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図8(c)は昇降装置25が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。この昇降装置にももちろん図1におけると同様の図示しないバランスチェーンが配設されている。
【0057】
前述した全ての昇降装置1、23、25では、チェーン9を駆動するのは駆動スプロケット5であったが、本発明ではとくにチェーン駆動を上記駆動スプロケット5に限定することはない。
【0058】
図9には他の昇降装置28が示されている。この昇降装置28では、上段位置Uに駆動スプロケット5と一個の上段固定スプロケット24(二個以上でもよい)とを備え、さらに、上段パレット2には第一スプロケット7を備え、下段パレット3には第二スプロケット8を備えている。そしてチェーン9は、その一端が上段位置Uに固定され、ついで駆動スプロケット5に上から係合し、ついで上段パレット2の第一スプロケット7に下から係合してこれを吊持し、ついで上段固定スプロケット24に上から係合し、ついで下段パレット3の第二スプロケット8に下から係合してこれを吊持したうえで他端が中段位置Mに固定されている。この昇降装置28にも図示しないが図1におけると同様のバランスチェーンが配設されている。
【0059】
なお、この昇降装置28の下段位置Lには、そこに位置する下段パレット3の上昇を不能とする図示しない下段ロック装置が配設されている。この下段ロック装置は、たとえば図1に示す上段ロック装置17と上段パレット2との上下関係を全く逆にしたものである。そして、そのストッパアームが下段パレット3の上面に上方から係合する作用位置と、係合が解除される非作用位置とのあいだを揺動駆動されるように構成されている。
【0060】
また、本実施形態の図示しない上段ロック装置は、上段パレット2の正規の上昇停止位置におけるさらなる上昇を不能とする機能を兼ね備えたものであるのが望ましい。しかし、上段位置Uの適宜箇所に単なる固定の当接部材を設け、上昇停止位置より上方への上段パレット2の上昇を阻止するものであってもよい。
【0061】
図9(a)は昇降装置28の横行基準位置にある要部側面図であり、図9(b)は昇降装置28が上段パレット2を中段位置Mに下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図9(c)は昇降装置28が下段パレット3を中段位置Mに上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【0062】
この昇降装置28によって横行基準位置にある(図9(a))上段パレット2を下降させるには、図示しない下段ロック装置によって下段パレット3を固定した状態で駆動スプロケット5を図中の反時計方向に回転させればよく、横行基準位置に戻すには時計方向に回転させる。下段パレット3を中段位置へ上昇させるには、図示しない上段ロック装置によって上段パレット2を固定した状態で駆動スプロケット5を図中の時計方向に回転させればよく、横行基準位置に戻すには反時計方向に回転させる。パレット2、3を上昇させるときには駆動スプロケット5と上段固定端とのあいだのチェーン9がたるむ(図9中、符号Hで示す)が、駆動スプロケット5と昇降対象となるパレット2、3とのあいだのチェーン9の部分はたるまないので駆動スプロケット5による昇降開始時にタイムラグが生じることはない。また、下段ロック装置によって下段パレット3を静止・固定しておけば上段パレット2を僅かに持ち上げておくことができるので、上段ロック装置17に負荷をかけた状態で作動させることもない。前述の正規の上昇停止位置とは、この僅かな持ち上げ寸法を含んだものである。また、本昇降装置28に対しても、その昇降機能に変化を生じない範囲で固定スプロケットを増設することは可能である。
【0063】
図10にも他の昇降装置29が示されている。図10(a)は昇降装置29の横行基準位置にある要部側面図であり、図10(b)は昇降装置29が上段パレット2を中段位置Mに下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図10(c)は昇降装置29が下段パレット3を中段位置Mに上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【0064】
この昇降装置29が図9の昇降装置28と異なる点は、図示のごとく、上記上段固定スプロケット24の両側における第一スプロケット7と第二スプロケット8との配置が逆になっていることである。すなわち、図10の昇降装置29では、駆動スプロケット5に係合して垂下されたチェーン9は先に第二スプロケット8に下から係合した後、上段固定スプロケット24に上から係合したうえで第一スプロケット7に下から係合している。この昇降装置29においても、駆動スプロケット5と上段固定端とのあいだのチェーン9がたるむ(図10中、符号Hで示す)が、駆動スプロケット5と昇降対象となるパレット2、3とのあいだのチェーン9の部分はたるまないので駆動スプロケット5による昇降開始時にタイムラグが生じることはない。また、下段ロック装置によって下段パレット3を静止・固定しておけば上段パレット2を僅かに持ち上げておくことができるので、上段ロック装置17に負荷をかけた状態で作動させることもない。また、本昇降装置29に対しても、その昇降機能に変化を生じない範囲で固定スプロケットを増設することは可能である。
【0065】
図9および図10に示す各昇降装置28、29では、チェーン9を駆動するのは駆動スプロケット5であったが、本発明ではとくにチェーン駆動を上記駆動スプロケット5に限定することはない。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、一台の駆動手段により、短い伝動手段によって上下段の各車両収容手段を個別に昇降させ、しかも、昇降に際してタイムラグを生じることが無く、負荷が加わった状態でストッパの作動をさせることがなく、パレットの上昇と下降とに駆動条件が変化することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の昇降装置の一実施形態を概略的に示す斜視図である。
【図2】 図2(a)は係合スプロケットの正面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図であり、図2(c)は係合スプロケットが上段パレット2に係合した状態を示す正面図であり、図2(d)は図2(c)のD−D線断面図であり、図2(e)は図2(c)の平面図である。
【図3】 図3(a)は図1の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す側面図であり、図3(b)は図1の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【図4】 図4(a)は本発明の昇降装置の他の実施形態を概略的に示す要部側面図であり、図4(b)は図4(a)の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図4(c)は図4(a)の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【図5】 図5(a)は昇降装置の参考例を概略的に示す要部側面図であり、図5(b)は図5(a)の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図5(c)は図5(a)の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【図6】 図6(a)は図5における第五滑車の正面断面図であり、図6(b)は図6(a)のVI−VI線断面図であり、図6(c)は図6(a)のVIc−VIc線断面図である。
【図7】 図7(a)は昇降装置の他の参考例を概略的に示す要部側面図であり、図7(b)は図7(a)の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図7(c)は図7(a)の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【図8】 図8(a)は本発明の昇降装置のさらに他の実施形態を概略的に示す要部側面図であり、図8(b)は図8(a)の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図8(c)は図8(a)の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【図9】 図9(a)は昇降装置のさらに他の参考例を概略的に示す要部側面図であり、図9(b)は図9(a)の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図9(c)は図9(a)の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【図10】 図10(a)は昇降装置のさらに他の参考例を概略的に示す要部側面図であり、図10(b)は図10(a)の昇降装置が上段パレットを中段位置に下降させた状態を概略的に示す要部側面図であり、図10(c)は図10(a)の昇降装置が下段パレットを中段位置に上昇させた状態を概略的に示す側面図である。
【図11】 図11(a)は本発明の昇降装置が適用されうる駐車設備の正面図であり、図11(b)は図11(a)の側面図である。
Claims (3)
- 駐車空間と、該駐車空間内に上下に配設された、上下動可能な、車両を収容するための上段収容手段および下段収容手段と、上記駐車空間内上部に配設された第一固定滑車と、上段収容手段に配設された第一滑車と、下段収容手段に配設された第二滑車と、上段収容手段を下方から支持するように係合・離脱しうる係合滑車と、上記両収容手段を別々に上下動させる可撓性を有する伝動手段と、該伝動手段をその長手方向に移動させうる駆動手段と、少なくとも上昇位置における上段収容手段を停止固定するためのロック手段とを備えており、
該伝動手段が、その一端を駐車空間部に固定されたうえで少なくとも上記係合滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも第一固定滑車に上から係合し、ついで少なくとも上記第二滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも上記第一滑車に上から係合したうえで他端が駐車空間部に固定されてなる駐車設備の昇降装置。 - 駐車空間と、該駐車空間内に上下に配設された、上下動可能な、車両を収容するための上段収容手段および下段収容手段と、上記駐車空間内上部に配設された第一固定滑車および第二固定滑車と、上記駐車空間内下部に配設された第三固定滑車と、上段収容手段に配設された第一滑車および第四滑車と、下段収容手段に配設された第二滑車および第三滑車と、上記両収容手段を別々に上下動させる可撓性を有する伝動手段と、該伝動手段をその長手方向に移動させうる駆動手段と、少なくとも上昇位置における上段収容手段を停止固定するためのロック手段とを備えており、
該伝動手段が、その一端を駐車空間部に固定されたうえで少なくとも上記第三滑車に上から係合し、ついで少なくとも第三固定滑車に下から係合し、ついで少なくとも上記第二固定滑車に上から係合し、ついで少なくとも上記第四滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも上記第一固定滑車に上から係合し、ついで少なくとも上記第二滑車に下から係合してこれを吊持し、ついで少なくとも上記第一滑車に上から係合したうえで他端が駐車空間部に固定されてなる駐車設備の昇降装置。 - 上記駆動手段が上記第一固定滑車を回転駆動し、該第一固定滑車の回転によって上記伝動手段がその長手方向に移動させられるように構成されてなる請求項1または2記載の駐車設備の昇降装置。
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