JP3896870B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置の再生制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等に搭載される内燃機関、特にディーゼル機関では、排気中に含まれる浮遊粒子状物質である煤に代表される微粒子(パティキュレートマター、Particulate Matter、本明細書では、PMという)の除去が重要な課題となっている。このため、大気中にPMが放出されないようにディーゼルエンジンの排気系にPMの捕集を行うパティキュレートフィルタ(本明細書では、単に「フィルタ」とする)を設ける技術が周知である。このフィルタにより排気中のPMが一旦捕集され大気中へ放出されることを防止することができる。
【0003】
しかし、捕集したPMがフィルタに堆積するとフィルタの目詰まりを発生させることがある。この目詰まりが発生すると、フィルタ上流の排気の圧力が上昇し内燃機関の出力低下やフィルタの毀損を誘発する虞がある。このようなときには、フィルタ上に堆積したPMを着火燃焼させることによりこのPMを除去することができ、このようにフィルタに堆積したPMを除去することをフィルタの再生という。
【0004】
このようなフィルタの目詰まりが発生したかどうかの判定は、例えば、特開平5−288037号公報に記載のように、フィルタの前後に圧力計を設置し、このフィルタ前後の排気路中の排気圧力を計測してその差圧が所定値以上になったとき、フィルタにPMが所定量以上堆積したものとしてPMの除去処理が必要であると判断することができる。
【0005】
ところで、前記PMの成分に着目すると、この成分は、主に煤分とSOF分に大別される。ディーゼルエンジンでは、高負荷時に煤分が多く排気中に排出され、中・低負荷時にはSOF分が多く排出される。図9に示すように、エンジン負荷が低い程、排出されるSOF分の割合が煤分に対して増大する。その理由は、中・低負荷時には排気温度が低く、未燃焼の燃料成分が多く排気中に排出されるためであると考えられる。
【0006】
煤分は高温下でないと燃焼しないので、煤分がフィルタに多く堆積した場合にはフィルタ再生時に、例えばフィルタ温度を600℃〜650℃程度にしなければこれを酸化除去することができない。
【0007】
一方、SOF分は比較的低温で燃焼するので、SOF分がフィルタに多く堆積している場合には、フィルタ再生時においてフィルタが上記温度にまで達しなくてもPMを酸化除去することができる。
【0008】
従来はこれらの成分の性状に着目し、PMの捕集中におけるエンジンの運転状態を検知して、運転履歴に応じて排出された難燃性PMと良燃性PMとの割合と現在の内燃機関の運転状態によりとトラッパ(フィルタ)の昇温手段を操作する排気浄化装置が公知である(特開平7−189656号公報)。
【0009】
この装置によれば、捕集したPMの性状を判断できるので、この性状に適した効率的なPMの燃焼制御を実施することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィルタ自体が連続的にPMを酸化除去する機能を有していて、フィルタに捕集されたPMが連続的に減少させられる場合には、上記のような排気浄化装置を用いても効率的なPMの燃焼制御を実施することはできない。すなわち、運転状況に基づいてフィルタが捕集するであろうPMの量や煤分やSOF分の量を算出しても、実際にフィルタに堆積しているPMの正確な煤分やSOF分の量、またこれらの割合が正確に把握されないために、適切かつ効率的な燃焼制御をするという所期の目的は達成できない。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためにされたものであり、排気中のPMを捕集しこれを燃焼させるフィルタを備えた排気浄化装置において、フィルタに堆積した煤分やSOF分の正確な堆積量を算出して、効率的なPMの燃焼制御を実施することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することを技術的課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明の排気浄化装置の再生制御方法は、以下のような手段を採用した。すなわち、内燃機関の排気中のPMを一時期捕集可能であり、所定温度領域では酸化促進手段によって前記PMを連続的に酸化除去することが可能なフィルタを排気系に配置した内燃機関の排気浄化装置において、
前記内燃機関の煤分の排出量から前記フィルタによる煤分の酸化除去量を減算してフィルタでの煤分の堆積量を算出するとともに、前記内燃機関のSOF分の排出量から前記フィルタによるSOF分の酸化除去量を減算してフィルタでのSOF分の堆積量を算出し、これらの煤分とSOF分の堆積量からPMの堆積量を求め、このPMの堆積量が所定量を超えた場合には堆積したPMを燃焼させて除去するフィルタ再生制御を実行することを特徴とする。
【0013】
本発明の最大の特徴は、PMを連続的に酸化除去可能なフィルタにおけるPMの酸化除去量を把握し、実際にフィルタに堆積しているPM量を推定して、適切なタイミングで堆積したPMを酸化除去するフィルタ再生制御を実施することである。
【0014】
また、前記フィルタ再生制御では、煤分とSOF分の割合を算出し、この割合に応じてPMの酸化促進手段の制御量を求め、これに基づいてフィルタの温度を上昇させる昇温制御を実行することが可能である。このようにすれば、フィルタの堆積物がほとんど煤分である場合を想定して、当初からフィルタを高温にする必要がなくなり昇温制御をきわめて効率的に実施できるので、フィルタの無駄な昇温を回避できる。PMの酸化促進手段とは、具体的には、排気中への燃料添加による排気温度の上昇及びフィルタ床温の上昇である。
【0015】
上記のようなPM排出量の推定手段によって内燃機関から排出されたPM量を推定し、この排出量からフィルタにおいて酸化除去されたPM量を減算した堆積量が、予め定めた所定量を超えたときにフィルタ再生制御を実行するようにすれば、きわめて適切な時期にフィルタ制御を実行することが可能となり、効率的なフィルタ再生が行われる。
【0016】
また、前記フィルタ上には、貴金属触媒と、このフィルタに流入する排気の空燃比がリーンのときには排気中のNOxを吸蔵し、フィルタに流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチであるときは吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵剤と、を担持させることができる。
【0017】
前記NOx吸蔵剤としては、アルカリ金属、アルカリ土金属、希土類または遷移金属から選択されたものが使用可能である。
【0018】
また、本発明は、周囲に過剰酸素が存在するときは酸素を吸蔵して酸素を保持し、周囲の酸素濃度が低下したときは保持している酸素を活性酸素として放出する活性酸素放出剤をフィルタ上に担持し、放出された活性酸素によってフィルタ上に堆積したPMを酸化させることができる。
【0019】
前記活性酸素放出剤は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土金属、希土類または遷移金属から選択されたものが使用できる。
【0020】
このような本発明の排気浄化装置の再生制御方法では、従来のようにフィルタの前後の差圧を計測して、この差圧に基づいてフィルタの詰まりの検出をすることなく、実際に堆積したPMの量に基づいて、そのPMの燃焼除去によるフィルタ再生制御を適切な時期に実行することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る排気浄化装置の再生制御方法の具体的な実施態様を図面に基づいて説明する。ここでは、本発明に係る排気浄化装置の再生制御方法を車両駆動用のディーゼル機関に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る内燃機関1とその吸排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷式の4サイクル・ディーゼル機関である。
【0023】
内燃機関1は、各気筒2の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁3を備えている。各燃料噴射弁3は、燃料を所定圧まで蓄圧する蓄圧室(コモンレール)4と接続されている。このコモンレール4には、このコモンレール4内の燃料の圧力に対応した電気信号を出力するコモンレール圧センサ4aが取り付けられている。
【0024】
前記コモンレール4は、燃料供給管5を介して燃料ポンプ6と連通している。この燃料ポンプ6は、内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源として作動するポンプであり、この燃料ポンプ6の入力軸に取り付けられたポンププーリ6aが内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)に取り付けられたクランクプーリ1aとベルト7を介して連結されている。
【0025】
このように構成された燃料噴射系では、クランクシャフトの回転トルクが燃料ポンプ6の入力軸へ伝達されると、燃料ポンプ6は、クランクシャフトからこの燃料ポンプ6の入力軸へ伝達された回転トルクに応じた圧力で燃料を吐出する。
【0026】
前記燃料ポンプ6から吐出された燃料は、燃料供給管5を介してコモンレール4へ供給され、コモンレール4にて所定圧まで蓄圧されて各気筒2の燃料噴射弁3へ分配される。そして、燃料噴射弁3に駆動電流が印加されると、燃料噴射弁3が開弁し、その結果、燃料噴射弁3から気筒2内へ燃料が噴射される。
【0027】
次に、内燃機関1には、吸気枝管8が接続されており、この吸気枝管8の各枝管は、各気筒2の燃焼室と吸気ポート(図示省略)を介して連通している。
【0028】
前記吸気枝管8は、吸気管9に接続され、この吸気管9は、この吸気管9内を流通する吸気の質量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ11が取り付けられている。
【0029】
前記吸気管9における吸気枝管8の直上流に位置する部位には、この吸気管9内を流通する吸気の流量を調節する吸気絞り弁13が設けられている。
この吸気絞り弁13には、ステップモータ等で構成されてこの吸気絞り弁13を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ14が取り付けられている。
【0030】
前記エアフローメータ11と前記吸気絞り弁13との間に位置する吸気管9には、排気の熱エネルギを駆動源として作動する遠心過給機(ターボチャージャ)15のコンプレッサハウジング15aが設けられ、コンプレッサハウジング15aより下流の吸気管9には、前記コンプレッサハウジング15a内で圧縮されて高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ16が設けられている。
【0031】
このように構成された吸気系では、エアクリーナボックス10に流入した吸気は、このエアクリーナボックス10内のエアフィルタ(図示省略)によって吸気中の塵や埃等が除去された後、吸気管9を介してコンプレッサハウジング15aに流入する。
【0032】
コンプレッサハウジング15aに流入した吸気は、このコンプレッサハウジング15aに内装されたコンプレッサホイールの回転によって圧縮される。前記コンプレッサハウジング15a内で圧縮されて高温となった吸気は、インタークーラ16にて冷却された後、必要に応じて吸気絞り弁13によって流量を調節されて吸気枝管8に流入する。吸気枝管8に流入した吸気は、各枝管を介して各気筒2の燃焼室へ分配され、各気筒2の燃料噴射弁3から噴射された燃料を着火源として燃焼される。
【0033】
一方、内燃機関1には、排気枝管18が接続され、排気枝管18の各枝管が排気ポート(図示省略)を介して各気筒2の燃焼室と連通している。
【0034】
前記排気枝管18は、前記遠心過給機15のタービンハウジング15bと接続されている。前記タービンハウジング15bは、排気管19と接続され、この排気管19は、下流にてマフラー(図示省略)に接続されている。
【0035】
前記排気管19の途中には、吸蔵還元型NOx触媒を担持したパティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという。)20が設けられている。
【0036】
このフィルタ20より上流の排気管19には、この排気管19内を流通する排気の温度に対応した電気信号を出力する排気温度センサ24が取り付けられている。
【0037】
また、前記したフィルタ20より下流の排気管19には、この排気管19内を流通する排気の流量を調節する排気絞り弁21が設けられている。この排気絞り弁21には、ステップモータ等で構成されてこの排気絞り弁21を開閉駆動する排気絞り用アクチュエータ22が取り付けられている。
【0038】
このように構成された排気系では、内燃機関1の各気筒2で燃焼された混合気(既燃ガス)が排気ポートを介して排気枝管18へ排出され、次いで排気枝管18から遠心過給機15のタービンハウジング15bへ流入する。タービンハウジング15bに流入した排気は、この排気が有するエネルギを利用してタービンハウジング15b内に回転自在に支持されたタービンホイールを回転させる。その際、タービンホイールの回転トルクは、前述したコンプレッサハウジング15aのコンプレッサホイールへ伝達される。
【0039】
前記タービンハウジング15bから排出された排気は、排気管19を介してフィルタ20へ流入し、排気中のPMが捕集され、かつ有害ガス成分が除去または浄化される。フィルタ20にてPMを捕集され、かつ有害ガス成分を除去または浄化された排気は、必要に応じて排気絞り弁21によって流量を調節された後にマフラーを介して大気中に放出される。
【0040】
また、排気枝管18と吸気枝管8とは、排気枝管18内を流通する排気の一部を吸気枝管8へ再循環させる排気再循環通路(以下、EGR通路とする。)25を介して連通されている。このEGR通路25の途中には、電磁弁などで構成され、印加電力の大きさに応じて前記EGR通路25内を流通する排気(以下、EGRガスとする。)の流量を変更する流量調整弁(以下、EGR弁とする。)26が設けられている。
【0041】
前記EGR通路25の途中でEGR弁26より上流には、このEGR通路25内を流通するEGRガスを冷却するEGRクーラ27が設けられている。前記EGRクーラ27には、冷却水通路(図示省略)が設けられ内燃機関1を冷却するための冷却水の一部が循環する。
【0042】
このように構成された排気再循環機構では、EGR弁26が開弁されると、EGR通路25が導通状態となり、排気枝管18内を流通する排気の一部が前記EGR通路25へ流入し、EGRクーラ27を経て吸気枝管8へ導かれる。
【0043】
その際、EGRクーラ27では、EGR通路25内を流通するEGRガスと内燃機関1の冷却水との間で熱交換が行われ、EGRガスが冷却される。
【0044】
EGR通路25を介して排気枝管18から吸気枝管8へ還流されたEGRガスは、吸気枝管8の上流から流れてきた新気と混ざり合いつつ各気筒2の燃焼室へ導かれる。
【0045】
ここで、EGRガスには、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)などのように、自らが燃焼することがなく、且つ、熱容量が高い不活性ガス成分が含まれているため、EGRガスが混合気中に含有されると、混合気の燃焼温度が低められ、以て窒素酸化物(NOx)の発生量が抑制される。
【0046】
更に、EGRクーラ27においてEGRガスが冷却されると、EGRガス自体の温度が低下するとともにEGRガスの体積が縮小されるため、EGRガスが燃焼室内に供給されたときに、この燃焼室内の雰囲気温度が不要に上昇することがなくなるとともに、燃焼室内に供給される新気の量(新気の体積)が不要に減少することもない。
【0047】
次に、本実施の形態に係るフィルタ20について説明する。
【0048】
図2は、フィルタ20の断面図である。図2(A)は、フィルタ20の横方向断面を示す図である。図2(B)は、フィルタ20の縦方向断面を示す図である。
【0049】
図2(A)及び図2(B)に示されるようにフィルタ20は、互いに平行をなして延びる複数個の排気流通路50、51を具備するいわゆるウォールフロー型である。これら排気流通路は下流端が栓52により閉塞された排気流入通路50と、上流端が栓53により閉塞された排気流出通路51とにより構成される。なお、図2(A)においてハッチングを付した部分は栓53を示している。従って、排気流入通路50および排気流出通路51は薄肉の隔壁54を介して交互に配置される。換言すると排気流入通路50および排気流出通路51は各排気流入通路50が4つの排気流出通路51によって包囲され、各排気流出通路51が4つの排気流入通路50によって包囲されるように配置される。
【0050】
フィルタ20は、例えばコージェライトのような多孔質材料から形成されており、従って排気流入通路50内に流入した排気は図2(B)において矢印で示されるように周囲の隔壁54内を通って隣接する排気流出通路51内に流出する。
【0051】
本発明による実施例では、各排気流入通路50および各排気流出通路51の周壁面、すなわち各隔壁54の両側表面上および隔壁54内の細孔内壁面上には、例えばアルミナからなる担体の層が形成されており、この担体上に吸蔵還元型NOx触媒が坦持されている。
【0052】
ここではフィルタ20は、例えば、アルミナを担体とし、その担体上に、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、もしくはセシウム(Cs)等のアルカリ金属と、バリウム(Ba)もしくはカルシウム(Ca)等のアルカリ土類と、ランタン(La)もしくはイットリウム(Y)等の希土類とから選択された少なくとも1つと、白金(Pt)等の貴金属とを担持して構成されている。尚、本実施の形態では、アルミナからなる担体上にバリウム(Ba)と白金(Pt)を担持し、これにO2ストレージ能力のあるセリア(Ce2O3)を添加して構成される吸蔵還元型NOx触媒が採用されている。
【0053】
次に、本実施の形態に係るフィルタ20に担持された吸蔵還元型NOx触媒の機能について説明する。このようなNOx触媒は、このNOx触媒に流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中の窒素酸化物(NOx)を吸蔵(吸収、吸着)する。
【0054】
一方、NOx触媒は、このNOx触媒に流入する排気の酸素濃度が低下したときは吸蔵していた窒素酸化物(NOx)を放出する。その際、排気中に炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等の還元成分が存在していれば、NOx触媒は、このNOx触媒から放出された窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元せしめることができる。
【0055】
ところで、内燃機関1が希薄燃焼運転されている場合は、内燃機関1から排出される排気の空燃比がリーン雰囲気となり排気の酸素濃度が高くなるため、排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)がNOx触媒に吸蔵されることになるが、内燃機関1の希薄燃焼運転が長期間継続されると、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和し、排気中の窒素酸化物(NOx)がNOx触媒にて除去されずに排気中に残存する。
【0056】
特に、ディーゼル機関である内燃機関1では、大部分の運転領域においてリーン空燃比の混合気が燃焼され、それに応じて大部分の運転領域において排気の空燃比がリーン空燃比となるため、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和し易い。
【0057】
従って、内燃機関1が希薄燃焼運転されている場合は、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和する前にNOx触媒に流入する排気中の酸素濃度を低下させるとともに還元剤の濃度を高め、NOx触媒に吸蔵された窒素酸化物(NOx)を放出及び還元させる必要がある。
【0058】
このように酸素濃度を低下させる方法としては、排気中の燃料添加や、再循環するEGRガス量を増大させて煤の発生量が増加して最大となった後に、更にEGRガス量を増大させる低温燃焼の実施、気筒2内への燃料噴射時期や回数の変更等の方法が考えられるが、本実施の形態では、フィルタ20より上流の排気管19を流通する排気中に還元剤たる燃料(軽油)を添加する還元剤供給機構を備え、この還元剤供給機構から排気中へ燃料を添加することにより、フィルタ20に流入する排気の酸素濃度を低下させるとともに還元剤の濃度を高めるようにしている。
【0059】
還元剤供給機構は、図1に示されるように、その噴孔が排気枝管18内に臨むように取り付けられ、ECU35からの信号により開弁して燃料を噴射する還元剤噴射弁28と、前述した燃料ポンプ6から吐出された燃料を前記還元剤噴射弁28へ導く還元剤供給路29と、還元剤供給路29に設けられてこの還元剤供給路29内の燃料の流通を遮断する遮断弁31と、を備えている。
【0060】
このような還元剤供給機構では、燃料ポンプ6から吐出された高圧の燃料が還元剤供給路29を介して還元剤噴射弁28へ印加される。そして、ECU35からの信号によりこの還元剤噴射弁28が開弁して排気枝管18内へ還元剤としての燃料が噴射される。
【0061】
還元剤噴射弁28から排気枝管18内へ噴射された還元剤は、排気枝管18の上流から流れてきた排気の酸素濃度を低下させる。
【0062】
このようにして形成された酸素濃度の低い排気はフィルタ20に流入し、フィルタ20に吸蔵されていた窒素酸化物(NOx)を放出させつつ窒素(N2)に還元することになる。
【0063】
その後、ECU35からの信号により還元剤噴射弁28が閉弁し、排気枝管18内への還元剤の添加が停止されることになる。
【0064】
なお、本実施の形態では、排気中に燃料を噴射して燃料添加を行っているが、これに替えて低温燃焼を行っても良く、また、内燃機関1の膨張行程や排気行程等に燃料噴射弁3から燃料を噴射させても良い。
【0065】
以上述べたように構成された内燃機関1には、この内燃機関1を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)35が併設されている。このECU35は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。
【0066】
ECU35には、差圧センサ37からのアナログ信号の他、コモンレール圧センサ4a、エアフローメータ11、排気温度センサ24、クランクポジションセンサ33、アクセル開度センサ36等の各種センサが電気配線を介して接続され、上記した各種センサの出力信号が入力されるようになっている。
【0067】
一方、ECU35には、燃料噴射弁3、吸気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエータ22、EGR弁26、還元剤噴射弁28、遮断弁31等が電気配線を介して接続され、上記した各部をECU35が制御することが可能になっている。
【0068】
ここで、ECU35は、図3に示すように、双方向性バス350によって相互に接続された、CPU351と、ROM352と、RAM353と、バックアップRAM354と、入力ポート356と、出力ポート357とを備えるとともに、前記入力ポート356に接続されたA/Dコンバータ(A/D)355を備えている。
【0069】
前記入力ポート356は、クランクポジションセンサ33のようにデジタル信号形式の信号を出力するセンサの出力信号を入力し、それらの出力信号をCPU351やRAM353へ送信する。
【0070】
前記入力ポート356は、第1の圧力センサ37a及び第2の圧力センサ37bからのアナログ信号の他、コモンレール圧センサ4a、エアフローメータ11、排気温度センサ24、アクセル開度センサ36等のように、アナログ信号形式の信号を出力するセンサのA/D355を介して入力し、それらの出力信号をCPU351やRAM353へ送信する。
【0071】
前記出力ポート357は、燃料噴射弁3、吸気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエータ22、EGR弁26、還元剤噴射弁28、遮断弁31等と電気配線を介して接続され、CPU351から出力される制御信号を、前記した燃料噴射弁3、吸気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエータ22、EGR弁26、還元剤噴射弁28、あるいは遮断弁31へ送信する。
【0072】
前記ROM352は、フィルタ20に捕集されたPMを燃焼除去するためのPM燃焼制御ルーチン、その他、燃料噴射弁3を制御するための燃料噴射制御ルーチン、吸気絞り弁13を制御するための吸気絞り制御ルーチン、排気絞り弁21を制御するための排気絞り制御ルーチン、EGR弁26を制御するためのEGR制御ルーチン、フィルタ20に還元剤を添加して吸蔵されたNOxを放出させるNOx浄化制御ルーチン、フィルタ20のSOx被毒を解消する被毒解消制御ルーチン、等のアプリケーションプログラムを記憶している。
【0073】
前記ROM352は、上記したアプリケーションプログラムに加え、各種の制御マップを記憶している。前記制御マップは、例えば、本願発明のフィルタ再生制御の実行のための煤排出量マップ、煤酸化量マップ、SOF排出量マップ、SOF酸化量マップの他、内燃機関1の運転状態と基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)との関係を示す燃料噴射量制御マップ、内燃機関1の運転状態と基本燃料噴射時期との関係を示す燃料噴射時期制御マップ、内燃機関1の運転状態と吸気絞り弁13の目標開度との関係を示す吸気絞り弁開度制御マップ、内燃機関1の運転状態と排気絞り弁21の目標開度との関係を示す排気絞り弁開度制御マップ、内燃機関1の運転状態とEGR弁26の目標開度との関係を示すEGR弁開度制御マップ、等である。
【0074】
前記RAM353は、各センサからの出力信号やCPU351の演算結果等を格納する。前記演算結果は、例えば、クランクポジションセンサ33がパルス信号を出力する時間的な間隔に基づいて算出される機関回転数等である。これらのデータは、例えばクランクポジションセンサ33がパルス信号を出力する都度、最新のデータに書き換えられる。
【0075】
前記バックアップRAM354は、内燃機関1の運転停止後もデータを記憶可能な不揮発性のメモリである。
【0076】
前記CPU351は、前記ROM352に記憶されたアプリケーションプログラムに従って動作して、燃料噴射弁制御、吸気絞り制御、排気絞り制御、EGR制御、NOx浄化制御、フィルタ再生制御、被毒解消制御、等を実行する。
【0077】
NOx浄化制御では、CPU351は、フィルタ20に流入する排気中の酸素濃度を比較的に短い周期でスパイク的(短時間)に低くする、所謂リッチスパイク制御を実行する。
【0078】
このようなリッチスパイク制御では、CPU351は、所定の周期毎にリッチスパイク制御実行条件が成立しているか否かを判別する。このリッチスパイク制御実行条件としては、例えば、フィルタ20が活性状態にある、排気温度センサ24の出力信号値(排気温度)が所定の上限値以下である、被毒解消制御が実行されていない、等の条件を例示することができる。
【0079】
上記したようなリッチスパイク制御実行条件が成立していると判定された場合は、CPU351は、還元剤噴射弁28からスパイク的に還元剤たる燃料を噴射させるべく当該還元剤噴射弁28を制御することにより、フィルタ20に流入する排気の空燃比を一時的に所定の目標リッチ空燃比とする。
【0080】
具体的には、CPU351は、RAM353に記憶されている機関回転数、アクセル開度センサ36の出力信号(アクセル開度)、エアフローメータ11の出力信号値(吸入空気量)、空燃比センサの出力信号、燃料噴射量等を読み出す。
【0081】
CPU351は、前記した機関回転数とアクセル開度と吸入空気量と燃料噴射量とをパラメータとしてROM352の還元剤添加量制御マップへアクセスし、排気の空燃比を予め設定された目標空燃比とする上で必要となる還元剤の添加量(目標添加量)を算出する。
【0082】
続いて、CPU351は、前記目標添加量をパラメータとしてROM352の還元剤噴射弁制御マップへアクセスし、還元剤噴射弁28から目標添加量の還元剤を噴射させる上で必要となる還元剤噴射弁28の開弁時間(目標開弁時間)を算出する。
【0083】
還元剤噴射弁28の目標開弁時間が算出されると、CPU351は、還元剤噴射弁28を開弁させる。
【0084】
CPU351は、還元剤噴射弁28を開弁させた時点から前記目標開弁時間が経過すると、還元剤噴射弁28を閉弁させる。
【0085】
このように還元剤噴射弁28が目標開弁時間だけ開弁されると、目標添加量の燃料が還元剤噴射弁28から排気枝管18内へ噴射されることになる。そして、還元剤噴射弁28から噴射された還元剤は、排気枝管18の上流から流れてきた排気と混ざり合って目標空燃比の混合気を形成してフィルタ20に流入する。
【0086】
この結果、フィルタ20に流入する排気の空燃比は、比較的に短い周期で酸素濃度が変化し、フィルタ20が窒素酸化物(NOx)の吸収と放出・還元とを交互に短周期的に繰り返すことになる。
【0087】
また、フィルタ再生制御では、CPU351は、内燃機関1の運転状況を検出して、内燃機関1から排出されるPMの量とフィルタ20でのPMの酸化量とに基づいて、フィルタ20に堆積しているPMの量(以下、PM堆積量という)を算出する。以下、フィルタ20に堆積しているPM堆積量の算出について具体的に説明する。
【0088】
第1に、煤の堆積量は次のようにして算出する。
【0089】
CPU351は、一定のサンプリング時間毎(例えば、1秒毎)の内燃機関1の回転数Neと燃料噴射量Qを読み込む。回転数Neは、上述のようにクランクポジションセンサ33がパルス信号を出力する時間的な間隔に基づいて算出され、燃料噴射量Qは、燃料噴射量制御マップに基づいて噴射された燃料噴射量である。
【0090】
次に、前記サンプリング時間毎の回転数Neと燃料噴射量Qから、図4(A)に示す煤排出量マップに基づいて煤の排出量を求める。
【0091】
さらに、CPU351は、所定期間における煤の排出量の合計を、所定期間内のサンプリング時間毎の煤の排出量を積算することによって算出する。
【0092】
また、煤の酸化量は、次のようにして求められる。
【0093】
上記のサンプリング時間毎のフィルタ20の温度Tを計測する。この温度Tは排気温度センサ24により測定された温度を用いる。
【0094】
次に、図4(B)に示す煤酸化量マップから求められる煤の酸化速度、すなわち単位時間あたりの煤の酸化量に基づいて前記サンプリング時間毎の煤の酸化量を算出する。さらに所定期間における煤の酸化量の合計を、所定期間内のサンプリング時間毎の煤の酸化量を積算することで算出する。
【0095】
さらに、前記の煤の排出量の合計から煤の酸化量の合計を除することで、フィルタ20での所定期間における煤の堆積量が求められる。
【0096】
一方、SOF分の堆積量は、次のようにして求める。
【0097】
上記のサンプリング時間毎の回転数Neと燃料噴射量Qから、図5(A)に示すSOF排出量マップに基づいてSOF分の排出量を求める。次に、所定期間におけるSOF分の排出量の合計を、所定期間内のサンプリング時間毎のSOF分の排出量を積算することによって算出する。
【0098】
次に、SOF分の酸化量を次のようにして求める。
【0099】
一定のサンプリング時間毎のフィルタ20の温度Tを計測し、図5(B)に示すSOF酸化量マップから求められるSOF分の酸化速度、すなわち単位時間あたりのSOF分の酸化量に基づいて、前記サンプリング時間毎のSOF分の酸化量を算出する。さらに所定期間におけるSOF分の酸化量の合計を、所定期間内のサンプリング時間毎のSOF分の酸化量を積算することで算出する。
【0100】
前記のSOF分の排出量の合計から、前記SOF分の酸化量の合計を除することで、フィルタ20での所定期間におけるSOF分の堆積量が求められる。
【0101】
上記のようにして求めた煤の堆積量及びSOF分の堆積量の合計をPMの堆積量とする。
【0102】
次に、CPU351は、このPMの堆積量がROM42に記憶した所定のしきい値を超えているかどうかを判断する。
【0103】
この堆積量が前記しきい値を超えていなければ、フィルタ20の再生制御は必要ないものと判断する。
【0104】
他方、前記堆積量がこのしきい値を超えている場合は、直ちにフィルタ再生制御を実行する。このフィルタ再生制御では、CPU351が、PMが燃焼し得る温度域まで排気温度を高めるべく排気昇温制御を実行する。前記しきい値は、
フィルタ20に堆積しているPMが燃焼した場合にフィルタ20の過熱が生じない範囲の量であるか否かに基づいて決定される。
【0105】
排気昇温制御の実行方法としては、燃料噴射量を増量させると同時に排気絞り弁21を所定量閉弁する方法、通常の燃料噴射(主燃料噴射)に加えて各気筒2の膨張行程時に追加の燃料噴射(膨張行程噴射)を行なう方法、主燃料噴射及び膨張行程噴射の燃料量を増加させると同時に排気絞り弁21を所定量閉弁する方法、主燃料噴射に加えて各気筒2の排気行程時に追加の燃料噴射(排気行程噴射)を行うことで未燃の燃料をフィルタ20へ供給して燃焼させる方法などを例示することができる。
【0106】
特に、フィルタ20が触媒を担持したものである場合は、CPU351は、各気筒2の膨張行程時に燃料噴射弁3から副次的に燃料を噴射させるとともに還元剤噴射弁28から排気中へ燃料を添加することで、それらの未燃燃料成分をフィルタ20において酸化させ、その酸化の際に発生する熱によってフィルタ20の床温を高めるようにしてもよい。
【0107】
但し、フィルタ20が過剰に昇温された場合、フィルタ20の熱劣化が誘発される虞があるため、排気温度センサ24の出力信号値に基づいて副次的な噴射燃料量及び添加燃料量がフィードバック制御されるようにすることが好ましい。
【0108】
なお、還元剤噴射弁28から過剰な量の燃料が噴射されると、それらの燃料がフィルタ20において急激に燃焼するためフィルタ20が過熱し、或いは還元剤噴射弁28から噴射された過剰な燃料によってフィルタ20が不要に冷却される虞があるため、CPU351は、空燃比センサ(図示省略)の出力信号に基づいて還元剤噴射弁28からの燃料噴射量をフィードバック制御するようにすることが好ましい。
【0109】
このようにしてフィルタ再生制御が実行されると、フィルタ20に堆積していたPMが燃焼し、これがフィルタ20から除去されてフィルタ20のPMの捕集能力が再生される。
【0110】
また、PM堆積量が増大して大量のPMが一度に燃焼し、フィルタ20が溶損するような事態が回避される。
【0111】
次に、本実施の形態についてのフローチャートを図6に示し、以下、このフローチャートにしたがってフィルタ再生制御を説明する。
【0112】
このフローチャートを実行するルーチンは、予めROM352に記憶されており、CPU351によって所定時間毎(例えば、クランクポジションセンサ33がパルス信号を出力する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
【0113】
S101では、CPU351は、フィルタ20の煤分の堆積量を計算する。この煤分の堆積量は、所定期間における内燃機関1の煤の排出量の合計から、所定期間におけるフィルタ20での煤の酸化量の合計を除することで算出される。
【0114】
S102では、CPU351は、フィルタ20のSOF分の堆積量を計算する。このSOF分の堆積量は、所定期間における内燃機関1のSOF分の排出量の合計から、所定期間におけるフィルタ20でのSOF分の酸化量の合計を除することで算出される。
【0115】
S103では、フィルタ20でのPM堆積量を算出する。これは前記S101及びS102で算出した煤の堆積量とSOF分の堆積量を積算して求める。
【0116】
S104では、S103で求めたPM堆積量が所定のPMしきい値より大きいか否かを判定する。
【0117】
S104においてPM堆積量がPMしきい値より小さいと判定された場合には、CPU351は、S106に進みフィルタ20の再生の必要はないと判断し、このPM詰まり検出を一旦終了する。
【0118】
一方、前記S104においてPM堆積量がPMしきい値以上であると判定された場合には、CPU351は、フィルタ20の詰まりが生じたものと判断し、S105に進み、フィルタ再生制御を実行する。
【0119】
このようにしてフィルタ再生制御を実行すれば、フィルタの前後差圧によるフィルタの詰まり検出に比べ、いかなる運転状況でも堆積量の検出が可能であり、詰まり検出遅れによるフィルタの過熱が生じなくなる。
【0120】
なお、差圧センサ37によってフィルタ前後の差圧を検出し、この差圧に基づくフィルタ20のPM堆積量を検出する手段を併設してフィルタ詰まり検出の精度を高めることも可能である。
(実施の形態2)
この実施の形態は、フィルタ再生制御の実行までの手順は実施の形態1と同一であり、フィルタ詰まりを検出した後のフィルタ再生制御において相違があるので、このフィルタ再生制御について説明する。
【0121】
すなわち、実施の形態1では排気の温度を600℃ないし650℃に上昇させてフィルタ20の床温を堆積したPMが燃焼する程度に上昇させていたが、この実施の形態では、煤分とSOF分では各々燃焼する温度域が異なることに着目して、堆積したPM中のこれらの割合に基づいて、PMの燃焼のための無駄のない適切な昇温制御を実行しようとするものである。
【0122】
実施の形態1で算出した煤分とSOF分の堆積量に基づいて、これらの割合を算出し、図7に示すような前記割合と燃料添加量を示すマップに基づいて、PMを除去するために最適なフィルタ温度を決定する。図7のマップに基づけば、煤分の割合が大きければ、フィルタ温度を高くしなければ所定の酸化速度、すなわち酸化量が得られず、反対にSOF分が多ければフィルタ温度が低くても、所定量のPMの酸化が可能であるので、この目標とするフィルタ温度に基づいて燃料の添加量を決定し、フィルタ再生を行う。そして、このマップからフィルタ20におけるPMの酸化量を計算し、PM堆積量が所定値以下になったらフィルタ再生制御を終了する。
【0123】
次に、本実施の形態についてのフローチャートを図8に示し、以下、このフローチャートにしたがってフィルタ再生制御を説明する。
【0124】
このフローチャートを実行するルーチンは、予めROM352に記憶されており、CPU351によって所定時間毎(例えば、クランクポジションセンサ33がパルス信号を出力する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
【0125】
ここでフィルタ再生のスタートは、その前提として図6におけるS101からS105が実行されていることが必要である。S105に達したらS201を続けて実行することになる。S201では、CPU351は、フィルタ20の煤分とSOF分のそれぞれの堆積量からPM全体における両者の割合を算出する。
【0126】
次にS202において、図7に示すマップに基づいて燃料の添加量を求める。その後、S203に進みS202で求めた量の燃料を排気中に添加してフィルタ再生制御を実行する。S204でが、前記マップに基づいてPMの酸化速度からPM酸化量を計算する。
【0127】
S205では、所定時間が経過したら先の実施の形態1のS103で求めたPM堆積量と、PM酸化終了しきい値とを比較する。このPM酸化終了しきい値としては、フィルタ20に残存するPMが少量で、その燃焼によりフィルタ20が損傷しない程度の量が設定される。
【0128】
S205では、PM堆積量がPM酸化終了しきい値より小さくなければS204に戻り、フィルタ再生制御を継続しつつPMの酸化量の計算を続行する。
【0129】
S205では、時間の経過とともに増加したPM酸化量を差し引いたPM堆積量と、PM酸化終了しきい値とを再び比較し、その値がPM酸化終了しきい値より小さければフィルタ再生制御を終了する。反対に、PM堆積量が依然としてPM酸化終了しきい値より大きければ、フィルタ再生制御は終了せず、S204とS205を繰り返して実行する。
【0130】
以上のように、このフィルタ再生制御では、CPU351は、煤分とSOF分の割合に応じてPMが燃焼するのに必要な温度域まで排気温度を高めるべく排気昇温制御を実行するので、必要以上の燃料添加や昇温が行われることがない。
【0131】
このようにしてフィルタ再生制御が実行されると、フィルタ20に堆積していたPMが燃焼し除去されるので、フィルタ20のPM捕集能力が再生される。
【0132】
前記S206においてフィルタ再生制御を実行し終えたCPU351は、PM堆積量の記憶内容をリセットし、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0133】
このように本実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置によれば、フィルタ再生制御の際に、直ちに煤分を酸化除去するために必要な温度にまでフィルタの床温を高めることなく、煤分とSOF分の割合に応じてこれらを除去するのに適切な温度にまでフィルタ20の床温を上昇させる制御が実行される。よってフィルタ20に対する無駄な昇温がされることが無くなり、必要以上にフィルタ20が高温になることがない。その結果、フィルタ20の熱劣化が抑制されるのでその寿命を延ばすことができる。
(実施の形態3)
実施の形態1、2では、内燃機関での燃焼のための燃料噴射量に基づいて煤分やSOF分の量を算出していたが、フィルタ20に担持したNOx吸蔵剤からNOxを放出するために、所定期間毎に還元剤としての燃料が排気中に添加される場合には、この排気中への燃料の添加量を考慮して煤分とSOF分の排出量を決定するようにした。
【0134】
すなわち、上述のようにリッチスパイク制御では、CPU351はリッチスパイク制御実行条件が成立していると判定された場合は、還元剤噴射弁28からスパイク的に還元剤たる燃料を噴射させる。このとき、CPU351は、機関回転数とアクセル開度と吸入空気量と燃料噴射量とをパラメータとしてROM352の還元剤添加量制御マップへアクセスし、排気の空燃比を予め設定された目標空燃比とする上で必要となる還元剤の添加量(目標添加量)を算出する。この添加量に基づいて還元剤噴射弁28が目標開弁時間だけ開弁されると、目標添加量の燃料が還元剤噴射弁28から排気枝管18内へ噴射され、この燃料は混合気としてフィルタ20に流入する。
【0135】
したがって、燃焼室内での燃料噴射量による煤分とSOF分の量に加えて、所定期間内のリッチスパイク制御による排気中への燃料添加量によるSOF分を合算することとした。リッチスパイクによってフィルタ20に到達した燃料はSOF分としてフィルタに堆積する。
【0136】
一方、燃料添加量とSOF分の関係はほぼ比例するので、この関係を実験により予め求めておき、これをROM352に記憶しておく。そして、フィルタ20に対するPM堆積量は実施の形態1に説明した方法によって算出されるが、このマップによって求められた燃料添加量に基づくSOF分を、さらに前記PM堆積量に積算することで、より正確なフィルタ20でのPM堆積量が求められる。このようにして求めたPM堆積量に対して、上述した昇温制御を実行する。このようにすればPM堆積量の算出がより正確に行えるので、精度の高いフィルタ再生制御の実行が可能となる。
【0137】
なお、本発明の装置では、実施の形態1に述べたようにフィルタ20のPM堆積量を求め、このPM堆積量が所定量以上であることに基づいてフィルタの再生制御を直ちに実行してもよく、また、実施の形態2、3で説明したように、さらに堆積したPMの煤分とSOF分の割合を求め、これに基づいてPM除去に必要な燃料添加量を算出してからフィルタ再生制御を実行してもよい。
【0138】
【発明の効果】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置によれば、フィルタに堆積したPMの量を正確に把握して、適切な時期にフィルタ再生制御を実行することができる。
【0139】
また、堆積したPMを構成する煤分とSOF分の割合を算出する場合には、PMの酸化除去に見合った必要量の燃料添加をする昇温制御に基づいて、より効率的なフィルタ再生制御を実施することができる。したがって必要以上の無駄な昇温がされることがなく、フィルタの熱劣化を最低限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置を適用するディーゼルエンジンとその吸排気系とを併せ示す概略構成図である。
【図2】(A)は、フィルタの横方向断面を示す図である。(B)は、フィルタの縦方向断面を示す図である。
【図3】ECUの内部構成を示すブロック図である。
【図4】(A)は機関回転数と燃料噴射量に基づく煤排出量マップを示し、 (B)はフィルタ床温と酸化速度に基づいて煤酸化量を示すマップである。
【図5】(A)は機関回転数と燃料噴射量に基づくSOF排出量マップを示し、 (B)はフィルタ床温と酸化速度に基づいてSOF酸化量を示すマップである。
【図6】本発明の実施の形態1におけるフィルタ再生制御実行フローを示すフローチャート図である。
【図7】煤分とSOF分の割合と昇温のための燃料添加量との関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2におけるフィルタ再生制御実行フローを示すフローチャート図である。
【図9】内燃機関の負荷とPM排出量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
1a・・・クランクプーリ
2・・・・気筒
3・・・・燃料噴射弁
4・・・・コモンレール
4a・・・コモンレール圧センサ
5・・・・燃料供給管
6・・・・燃料ポンプ
6a・・・ポンププーリ
8・・・・吸気枝管
9・・・・吸気管
18・・・排気枝管
19・・・排気管
20・・・フィルタ
21・・・排気絞り弁
24・・・排気温度センサ
25・・・EGR通路
26・・・EGR弁
27・・・EGRクーラ
28・・・還元剤噴射弁
29・・・還元剤供給路
31・・・遮断弁
33・・・クランクポジションセンサ
34・・・水温センサ
35・・・ECU
36・・・アクセル開度センサ
Claims (6)
- 内燃機関の排気中のPMを一時期捕集可能であり、所定温度領域では酸化促進手段によって前記PMを連続的に酸化除去することが可能なフィルタを排気系に配置した内燃機関の排気浄化装置において、前記内燃機関の煤分の排出量から前記フィルタによる煤分の酸化除去量を減算してフィルタでの煤分の堆積量を算出するとともに、前記内燃機関のSOF分の排出量から前記フィルタによるSOF分の酸化除去量を減算してフィルタでのSOF分の堆積量を算出し、これらの煤分とSOF分の堆積量からPMの堆積量を求め、このPMの堆積量が所定量を超えたときには、堆積したPMを燃焼させて除去するフィルタ再生制御を実行し、
前記フィルタ再生制御では、煤分とSOF分の割合を算出し、この割合に応じたフィルタ温度となるようにPMの酸化促進手段の制御量を求め、フィルタの温度を上昇させる昇温制御を実行し、
PMの酸化速度からPM酸化量を計算し、PM酸化量を差し引いたPM堆積量が、所定のPM酸化終了しきい値より小さい場合に前記フィルタ再生制御を終了することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記フィルタに、このフィルタに流入する排気の空燃比がリーンのときには排気中のNOxを吸蔵し、フィルタに流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチであるときは吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵剤を担持した請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記NOx吸蔵剤からNOxを放出するために所定期間毎に還元剤としての燃料が排気中に添加される場合には、この排気中への燃料の添加量に基づくSOF分を、さらに前記PM堆積量に積算することで、フィルタでのPMの堆積量を求める請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 周囲に過剰酸素が存在するときは酸素を吸蔵して酸素を保持し、周囲の酸素濃度が低下したときは保持している酸素を活性酸素として放出する活性酸素放出剤をフィルタ上に担持し、放出された活性酸素によってフィルタ上に堆積したPMを酸化させる請求項1から3のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記活性酸素放出剤は、アルカリ金属、アルカリ土金属、希土類または遷移金属から選択されたものである請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記NOx吸蔵剤は、アルカリ金属、アルカリ土金属、希土類または遷移金属から選択されたものである請求項2から5のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
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