JP3894024B2 - 画像形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真法等を利用して画像形成を行う際に使用されるカラートナーおよびカラートナーを使用して記録媒体上に画像を形成する方法に関する。特に、フラッシュ光からの光エネルギーを利用して記録媒体上に定着させるカラートナーおよび画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法は、複写機、電子写真ファクシミリ、電子写真プリンタ等の画像形成装置において広く使用されている技術である。電子写真法として、例えば米国特許第2297691号等に記載されるように、光導電性絶縁体を用いた方式が一般に使用される。この方式では、コロナ放電や電荷供給ローラによって帯電させられた光導電性絶縁体上にレーザ、LED等の光を照射することによって、静電潜像を形成する。次に、トナーと称される顔料や染料(着色剤と称す)によって着色された樹脂粉末を上記静電潜像に静電的に付着させて現像を行い、可視化されたトナー画像を得る。続いて、このトナー画像は紙やフィルム等の記録媒体上に転写される。但し、このときのトナー画像は記録媒体上に単に載っているだけの粉像であるため、これを記録媒体上に定着させる必要がある。そこで、最後の工程として、熱、圧力、光等によってトナーを記録媒体上で溶融した後に固化して、最終的に記録媒体上に定着したトナー画像を得ている。
【0003】
上記のようにトナーの定着とは、一般に熱可塑性樹脂(以下、結着樹脂と称す)を主成分とする粉体であるトナーを熱により溶融して記録媒体上に固着することである。そのための方式として、トナー画像が形成された記録媒体を直接、加熱したローラによってトナーを加熱・加圧するヒートロール方式と、キセノンフラッシュランプ等のフラッシュ光を照射することによりトナーに光エネルギーを吸収させて加熱し記録媒体上に定着させるフラッシュ定着方式などがよく知られている。
【0004】
ここで、フラッシュ定着方式は、キセノンフラッシュランプ等の放電管の閃光(フラッシュ光)からの光エネルギーをトナーが吸収して熱エネルギーに変換することよって溶融し、記録媒体上に定着させる方式である。
【0005】
このフラッシュ定着方式は、前記ヒートロール方式と比較して、画像形成装置に採用されたときには次のような特長を有している。
【0006】
(1)非接触定着であるため、記録媒体上に形成されたトナー粉像の解像度を劣化させない。(2)電源投入後のウォームアップ時間を必要とせず、クイックスタートが可能である。(3)のり付き紙、プレプリント紙、厚さの異なる紙(段差のある媒体)など、記録媒体の材質や厚さによる定着への影響が少ない。
【0007】
フラッシュ定着によりトナーが記録媒体上に定着される過程は次の通りである。放電管から発せられたフラッシュ光は、記録媒体上のトナー画像(粉像)に吸収され、熱エネルギーに変換される。この熱エネルギーにより、トナーとその周囲(記録媒体など)が熱せられ、トナーは温度上昇して軟化溶融し、記録媒体に密着する。フラッシュ光の発光終了後、温度は低下し、溶融したトナーは固化して定着とたトナー画像となる。
【0008】
よって、フラッシュ定着において充分な定着を満たすための好ましい条件としては、1)トナーが光エネルギーを効率良く熱エネルギーに変換できること、2)トナー材質は、与えられた熱で記録媒体へ浸透する溶融状態となること、3)トナー物質の溶融に使われる以外のエネルギーロス(例えば記録媒体の吸熱など)が少ないこと、などがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えばフラッシュ定着用の放電管として一般に用いられているキセノンフラッシュランプは、波長400nm〜2000nmの広い範囲にわたって発光し、特に400nm〜800nmの可視領域における発光強度に比べて波長2000nmまでの近赤外領域、とりわけ波長800nm〜1400nmの領域における発光強度は著しく強い。このため、フラッシュ定着が行われるトナーは800nm〜2000nmの近赤外波長領域の光、とりわけ800〜1400nmの光に対して光吸収性が高いことが要求される。
【0010】
しかし、トナーの主成分である結着樹脂は、一般に可視及び近赤外領域における光吸収性が極めて低い。また、着色剤成分の光吸収性に関しては、それが黒色である場合には可視及び近赤外領域に亘って高い光吸収性を示す。しかし、着色剤がイエロー、シアン、マゼンタ、レッド、ブルー、グリーンといったカラートナーの着色剤である場合には、可視領域では光吸収性を示すが、近赤外領域での光吸収性は低い。これはカラートナー自体の光熱変換効率が悪いことを意味している。
【0011】
そのために、結着樹脂とカラー用着色剤とを含むカラートナーは、黒色トナーを定着させる程度のフラッシュ光で定着させることが困難である。よって、カラートナーを定着させるためには強い光エネルギーを供給することが必要となってしまう。
【0012】
そこで、カラートナーをフラッシュ光で記録媒体上に定着させることに関して、必要とする光エネルギーを低減するために、キセノンフラッシュランプの発光波長領域で光吸収性を有する赤外光吸収剤を添加する技術が提案されている。例えば、特開昭61−132959号公報、特開平6−118694号公報、特開平7−191492号公報、特開2000−147824号公報では、アミニウム系化合物やジイモニウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物をフラッシュ定着用のトナーに含有させることについて提案している。また、特開平6―348056号公報では、アントラキノン系、ポリメチン系、シアニン系の赤外光吸収剤を含有する樹脂粒子をトナー表面に付着させる技術を提案している。さらに、特開平10−39535号公報には、酸化スズ、酸化インジウムを含有させることによりフラッシュ光によるカラートナーの定着性を向上させる技術が提案されている。
【0013】
上記で開示されている技術は、カラートナーへの赤外光吸収剤を添加することにより光エネルギーから熱エネルギーへの変換率を向上させ、主成分である結着樹脂の溶融性を増加させようとするものである。
【0014】
しかし、上記赤外光吸収剤の添加のみでは全ての問題を解決することはできない。赤外光吸収剤を微量添加するだけでは、未だ十分にトナーの結着樹脂を溶融することができていない。また、好ましい赤外光吸収剤として使用される上記アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物等はそれ自体が有色であり、多量に使用すると定着後のカラー画像の彩度、色相等に悪影響を及ぼす。そのために、赤外光吸収剤の使用量はできるだけ抑える必要がある。
【0015】
以上のように従来技術において、カラートナーをフラッシュ光で確実に定着させるために、未だ大きな光エネルギーが必要となっている。
【0016】
本発明は、前述したような実情に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の第1の目的は必要とする光エネルギーの低減を図ると共に、優れた画像形成が可能なフラッシュ定着用のカラートナーを提供することにある。
【0017】
なお、本トナーは電子写真法(エレクトロフォトグラフィ)のみならず、トナーを用いる他の画像形成方法、例えばイオノグラフィ,マグネトグラフィ等にも好適に使用できるものである。
【0018】
また、カラートナーの画像形成が可能である画像形成装置では、単一のトナーを単独で使用する場合よりも複数のトナーを用いて、ツインカラー、マルチカラー、フルカラーなど多色の画像を画像形成する目的で使用される場合が多い。
【0019】
ツインカラー、マルチカラー、フルカラーなどの画像形成においては、複数色のカラートナーや黒トナーが同時に使用されるが、同時に使用されるこれらトナー間で、トナーの溶融特性や光吸収特性が大幅に異なっていた場合、これらトナーの定着時の溶融特性に差が生じるため、光定着された画像の光沢度が色調毎に異なってしまうなど不具合が生じることがある。そして、その差がさらに顕著な場合においては、ある色調のカラートナーは良好な定着をするが、他の色調のトナーでは定着が不充分になったり、逆に過剰な光エネルギー吸収に起因するボイド発生などの画像欠陥を誘発してしまう問題が生じる。
【0020】
以上の課題に鑑み、本発明の第2の目的は、複数のフラッシュ定着用カラートナーを同時使用して画像形成する場合に関して画像欠陥や定着不良を生じさせない定着条件を明らかにすることで、逐次現像・一括定着方式を採用する画像形成において、良好な画像が得られる技術を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の目的は少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含みフラッシュ光により記録媒体上に定着されるカラートナーであって、光音響分光(PAS)分析測定に基づいて得られる赤外PASスペクトルを、800〜2000nmの範囲で積分したPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲にあるように構成することにより達成される。
【0022】
本発明に言う、光音響分光(PAS)分析法はPhotoacoustic Spectroscopyのことであり、このPAS分析法は試料に断続光(フラッシュ光)を照射して試料内に生じた周期的な熱変化を最終的に圧力変化として検出する方法である。この検出法はin−situ(その場)での測定が可能である。
【0023】
本発明で用いるPAS分析法について、より具体的に説明すれば、先ず、変調された赤外光が試料によって吸収されると、入射光に対応した熱が発生する。この発生した熱は、周囲の気体層に圧力変化を起こすので、この変化を高感度マイクロホンにより検出する。そして、これをフーリエ変換することによって、通常の赤外吸収スペクトルと同様のスペクトルを得るものである。
【0024】
本発明は、前記PAS分析法による測定結果を用いるものであり、PAS分析法に基づいて得た赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分したカラートナーのPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲にあるカラートナーは優れた定着性を示すことを見出したものである。
【0025】
上記トナーによれば定着させるための光エネルギーを低減できるカラートナーとして提供できる。このようなカラートナーは、従来の黒色トナーのみで画像定着を行うフラッシュ光に用いるエネルギーと同等程度である低い照射エネルギーでの定着が可能となる。
【0026】
なお、積分するスペクトル範囲を800〜2000nmの範囲に限定する理由は、前述の様にキセノンフラッシュランプの発光強度がこの領域で著しく強く、この領域の吸光特性を検討することで、トナーの光吸収溶融特性を実質的に制御することが可能となるからである。
【0027】
上記PAS強度が0.01未満のときはカラートナーの赤外領域での光吸収が低く、光−熱変換効率が低いので強力なフラッシュ光照射を行わない限り十分な定着性が得られない。この様な強力なフラッシュ光照射を行う定着ユニットを備えることは、画像形成装置の大型化, 高価格化を招くという問題を発生させるに留まらず、同時に画像形成される他のトナー、例えば黒トナーが過剰なエネルギー吸収を行い、その結果としてボイドなどの画像欠陥の発生、定着臭の増加などの問題を引き起こす要因となるため好ましくない。
【0028】
また、上記PAS強度が0.2より大きいときには十分な定着性が得られるものの、PAS強度を増加させるために赤外光吸収剤を多量に必要とすることになり、トナーの原材料コスト増加や前述したような定着後のカラー画像の彩度を低下させる等の悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0029】
また、上記フラッシュ定着用のカラートナーにおいて、前記PAS強度が、同時に定着される黒色トナーのPAS強度に対して0.2〜0.9倍とすることが望ましい。
【0030】
本発明者等の検討によると、カラートナーが上記条件を満たすことで、画像形成装置で記録媒体上に複数色のトナー、特に黒色トナーとカラートナーとが、同時に画像形成に用いられてもそれぞれが良好な定着性を示すようにすることができる。
【0031】
本発明におけるトナーの定着工程でのトナーの溶融特性(定着特性)は、照射される光エネルギー量、トナーの吸光特性、トナーの熱溶融特性(溶融粘弾性)などによって定まるものであるため、トナーの吸光特性が好適、即ちPAS強度が好適範囲でない場合においても、照射される光エネルギー量やトナーの熱溶融特性の因子を変更することで、該トナーの定着特性を調整することが原則的に可能となる。
【0032】
赤外光吸収剤を添加していないカラートナーなど、大幅にPAS強度が小さなトナーをフラッシュ定着させるためには、極端に照射光エネルギー量の大きいフラッシュ定着ユニットを用いるか、トナーを微小なエネルギーで溶融する物質で構成するか、また、その両者を併用するなどの手法が考えられる。しかし、照射光エネルギー量の大きいフラッシュ定着ユニットを用いる手法は、画像形成装置の大型化、高コスト化、消費電力量の急増などの問題を引き起こすのみではなく、黒色トナーなど、相対的に高いPAS強度を有しているトナーとの同時定着を行うと相対的に高いPAS強度を有しているトナーに過剰な光エネルギー照射を及ぼすことになってしまう。そして、この過剰な光エネルギー照射は、画像形成画像にボイドなどの画像欠陥を生じさせたり、定着臭の発生や発煙などの問題を引き起こす要因となるため好ましくない。また、微小なエネルギーで溶融する物質でトナーを構成すると、画像形成装置駆動中に現像ロールやキャリアなどの現像プロセス関連部材にトナー成分が付着(スペント)したりすることで画像形成性能が損なわれる要因となるだけではなく、トナー自体や画像形成物の熱または圧力的な観点からの保存特性が損なわれる要因となるため好ましくない。
【0033】
以上のことを鑑み、これらの課題が顕著化しない範囲で、定着ユニットの照射光量、 トナーの熱溶融特性を維持した場合、概ね、カラートナーのPAS強度が黒色トナーに対して0.2倍未満であるようなときに、黒色トナーに良好な定着性を与えるエネルギーでフラッシュ定着させてしまうと、カラートナーは定着不良となる。また、その逆にカラートナーに良好な定着性を与えるエネルギーでフラッシュ定着させた場合、黒色トナーはフラッシュ光のエネルギーは過剰であり、過剰溶融によるボイドが発生して、画像品位が低下してしまう。このように、カラートナーのPAS強度が黒色トナーに対して、0.2倍未満であるときにはカラートナーと黒色トナーとの同時に満足させることは困難であることが多い。このためカラートナーのPAS強度は同時に画像形成に用いられる黒トナーのPAS強度の0.2倍以上であることが望ましい。
【0034】
また、カラートナーのPAS強度が黒色トナーに対し0.9倍よりも大きいときにはカラートナーと黒色トナーの定着性を同時に満足できるものの、PAS強度を向上させるために添加する赤外光吸収剤が多量となり、トナーコスト増大を招くだけではなく、カラー画像の彩度の低下や色調が変化(濁り)する等の悪影響がでる場合が多い。
【0035】
また、上記フラッシュ定着用のカラートナーにおいて、前記PAS強度が、同時に定着される他のカラートナーのPAS強度に対して0.2〜5倍にすることが好ましい。
【0036】
各カラートナー間のPAS強度差をトナー構成材料の熱溶融特性などを変更することで補正し、トナー間の定着特性差を調節することは可能であるが、前述したようにプロセス部材へのスペントや保管特性の課題が生じるため、補正可能な範囲は限定されたものになる。そのため、同時に画像形成に用いられる2種以上のカラートナーのPAS強度差を所定範囲となるようにすることが必要となる。
【0037】
本発明者等の確認によると、トナー構成材料の熱特性を最適化する補正を加えたとしても、一方のカラートナー(X)のPAS強度が他方のカラートナー(Y)に対し、0.2倍未満であるときには、他方のカラートナー(Y)が好適に定着するエネルギーでフラッシュ定着させた場合、そのカラートナー(X)は定着不良となる場合が多い。
【0038】
また、その逆にPAS強度が他方のカラートナー(Y)に対して5倍以上あるカラートナー(Z)に対して、カラートナー(Y)が好適に定着するエネルギーでフラッシュ定着させた場合、そのカラートナー(Z)に対して照射エネルギーは過剰であり、過剰溶融によるボイドが発生して、画像品位が低下してしまう場合が多い。
【0039】
即ち、カラートナーのPAS強度が他のカラートナーに対して、0.2倍未満であるとき、その逆に他のカラートナーに対し5倍よりも大きいときには、それらのカラートナーの定着性を同時に満足させることは困難である場合が多く好ましくない。
【0040】
また、上記フラッシュ定着用のカラートナーにおいて、波長800〜2000nmの範囲で吸収波長スペクトルが異なる少なくとも2つ以上の赤外光吸収剤を含有する構成とすることができる。
【0041】
上記カラートナーによると、波長800〜2000nmの範囲でのトナーの吸光度を上げることができ、これによりカラートナーのPAS強度を向上でき、良好な定着画像を実現できる。前述したような赤外光吸収剤は特定の波長範囲に吸収ピークがあるので、1種類の赤外光吸収剤の量を増やしても照射された光エネルギーの利用効率が悪く、さらに1種類の赤外光吸収剤を多量に使用すると前述したような定着画像の彩度不良等の問題を生じる。吸収波長スペクトルが異なる2種以上の赤外光吸収剤を併用することで、効率的に照射された光エネルギーを利用でき、1種類の赤外光吸収剤を多量に使うことによる定着画質(色調等)の低下という問題も低減できる。
【0042】
前記赤外光吸収剤として、例えば波長800〜1100nmの範囲に吸収ピークを有する第1の赤外光吸収剤(A)と、波長1100〜2000nmの範囲に吸収ピークを有する第2の赤外光吸収剤(B)とを併用してする構成とすることができる。
【0043】
また、上記フラッシュ定着用のカラートナーにおいて、前記赤外光吸収剤として、波長800〜1100nmの範囲に吸収ピークを有する第1の赤外光吸収剤(A)と、波長1100〜2000nmの範囲に吸収ピークを有する第2の赤外光吸収剤(B)とを併用することができる。
【0044】
また、上記フラッシュ定着用のカラートナーにおいて、前記赤外光吸収剤(A)がナフタロシアニン系化合物であり、前記赤外光吸収剤(B)がアミニウム系化合物又はジイモニウム系化合物を採用することができる。
【0045】
そして、本発明者等の検討によれば、少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むカラートナーにフラッシュ光を照射して記録媒体上に形成された単層のトナー層を定着させる工程を含む画像形成方法であって、光音響分光(PAS)分析測定に基づいて得られる赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分した該カラートナーのPAS強度Sと、フラッシュ光のエネルギーEとが、関係式(1)を満たす、フラッシュ定着工程を含む画像形成方法により前記目的を達成することができる。更に望ましくは関係式(8)の関係を満たすことでさらに確実に前記目的を達成することができる。
【0046】
0.03≦E・S≦0.15 ………(1)
0.10≦E・S≦0.15 ………(8)
即ち、上記の条件を満たすことで、良好な定着性を有し、かつボイドの発生が少ないカラーの画像形成を実現できる。
【0047】
前記関係式(1)や(8)は、フラッシュ光の照射エネルギーが高い場合はカラートナーのPAS強度がある程度 低くても良好に定着させることができ、またフラッシュ光照射エネルギーが低い場合にはPAS強度を大きくしなければ良好な定着性が得られないことを意味している。
【0048】
つまり定着されるトナー層が単層の場合は、前記積E・Sが概ね0.03未満であると定着不良となり、概ね0.15を越えるとカラートナーに対して、過剰なエネルギー付与することになるため、ボイドが発生して、良好な定着画像が得られないことを示している。
【0049】
なお、上記関係式(1)や(8)において、(1)式で範囲を規定しながら、更に望ましい範囲として(8)式を再度、規定している理由は、記録媒体が定着に与える因子を考慮したことによるものである。前述の様にトナーに吸収され光熱変換された熱エネルギーは、トナー自体の温度を上昇させるだけではなく、記録媒体などへも吸熱されてしまう。このため、同量のエネルギー照射を受けた場合においても、媒体の吸熱特性によっては、トナーの定着特性が異なることによるものである。
【0050】
本発明者等は、薄層フィルムなど吸熱量の小さな媒体への定着を検討する際には関係式(1)の条件を満たすように、吸湿した厚手のボール紙(いわゆる連量210Kg紙など)への良好な定着をも確保する条件にて議論する際には関係式(8)を満たすように定着を実行すると光エネルギー量を低減しつつ、良好な定着画像を得ることができることを見出したものである。このような条件を満足する画像形成を実現するには、前述した条件を満たすカラートナーを用いることが望ましい。
【0051】
また、少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含み、前述した条件を満たすカラートナーを用い、これにフラッシュ光を照射して記録媒体上で形成された単層のトナー層を定着させる工程を含む画像形成方法であって、前記フラッシュ光のエネルギーを0.5〜2.5J/cm2とし、発光時間500〜3000μ秒とすると、記録媒体上に好適なフラッシュ定着画像形成方法を実現できる。
【0052】
なお、記録媒体上のトナー層を単層の場合と限定するのは、タンデム型フルカラーの様に逐次に現像を行なって一括で定着させる方式(逐次現像一括定着方式)を採用プロセスにおいては、数層の積層しているトナー層(粉像)の一括定着をも考慮しなければならず、この場合、最上層(記録媒体から最も離れた層)のトナーが最も強い光エネルギー照射を受け、下層のトナー層は当該トナー層より上層のトナー層に光吸収された弱い照射エネルギーを受光するため、最適な定着条件が上記説明の場合と異なってくるためである。
【0053】
上記逐次現像一括定着方式を採用するプロセスにおいての最適定着条件については後述する。
【0054】
また、画像形成装置を複数段に連ねた形態をとり、逐次に現像して逐次に定着する方式(逐次現像逐次定着方式)を採用するプロセスにおいては、現像、定着を経たトナー画像の上に、更に他のトナー層で現像、定着する工程を繰り返すため、本発明者等の検討に基づくと、概ね、上記関係式(1)又は(8)の関係を満たすことで良好な画像形成を行うことができる。
【0055】
そして、少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むフラッシュ定着用のカラートナーを用いて画像形成を行う画像形成方法であって、第1のトナーを用いて現像およびフラッシュ定着を行い、その後、順次、第2から第nのトナーを用いた現像およびフラッシュ定着の工程をn回繰返す、逐次現像逐次定着方式を採用し、X回目の工程に用いるトナーのPAS強度Sx及び該トナーの基準温度における溶融粘度ρXと、フラッシュ光のエネルギーEXとが関係式(3)を満たすフラッシュ定着工程を含むようにカラートナーの特性と画像形成での諸条件が設定されていること望ましい。
【0056】
【数2】
Figure 0003894024
(3)
このようにすると、先に定着されるトナーの方を溶け難い条件に設定でき、ボイド等の発生を防止できる。
【0057】
なお、ここで、SXは任意のX回目の画像形成および定着に用いられるトナーのPAS強度、ρXは該トナーの基準温度における溶融粘度(単位:Pa・S)、EXは該トナーを定着させるフラッシュ定着工程で照射される記録媒上での光照射エネルギーE(単位:J/cm2)を表す。
【0058】
また、上記式においてトナーの溶融粘度の基準温度は125℃とするのが望ましい。その理由は、例えば特許2501938号に記されているように、フラッシュ定着のトナー定着特性を検討する溶融粘弾性温度値として125℃が適しているからである。
【0059】
上記の式は、定着工程でのトナー溶融特性に関連する因子からなる式で分母のEX・SXは、定着工程でトナーがフラッシュ光照射を受けた際のトナーの加熱特性(光熱変換エネルギー量)を、分子のρXは、トナーが溶融した際のレオロジ特性を表している。
【0060】
分子に対して分母の値が小さすぎると、トナーは不充分な溶融状態となり記録媒体への定着が行われなくなる。一方、分子に対して、分母の値が大きすぎるとトナーは過剰な溶融状態となり、ボイド等の画像欠陥が生じる要因となる。
【0061】
また、後に行われる定着工程での光照射エネルギー量が先に行われる定着工程での照射光エネルギー量に対して過剰になることは好ましくない。これは先に行われる定着工程で定着されるトナーは、通常、該定着工程での照射エネルギーで最適な定着特性を示す様に設定されているものであり、後の定着工程で再照射される照射エネルギー量が先の定着工程での照射エネルギー光量より極度に過剰であると、該トナーが後の定着工程での照射のエネルギーを受け過剰溶融し、ボイドなどの画像欠陥を引き起こす虞が生じるためである。
【0062】
また、このことは、黒トナーなどPAS強度が相対的に高くなりやすいトナーは溶融粘弾性の高いトナー構成材料を、黄色トナーなどカラートナーの中でも着色剤成分による赤外光吸収の度合いが小さく、PAS強度が相対的に低くなり易いトナーには溶融粘弾性の低いトナー構成材料を用いると、各トナー間における定着特性などのバランスが取り易いことを示唆している。
【0063】
その逆に、第1のトナーを用いて現像後、順次、第2から第nのトナーを用いて現像をn回繰返し、記録媒体上に記録媒体に近接しているトナー層から順次、1〜n層の積層したトナー層を形成した後、一括で定着を行う逐次現像一括フラッシュ定着方式を採用する画像形成においては、本発明者等の検討によると、概ね以下の関係、1)PAS強度の強いトナーには溶融レオロジーの高いトナーバインダを用いる、2)同時定着する黒トナーに対してカラートナーのPAS強度は0.2〜0.9倍程度に設定する、3)同時定着する複数のカラートナーのPAS強度は任意のカラートナーのPAS強度を1とした場合、0.2〜5倍程度の範囲に設定する、ことに設定することにより、バランスの良いトナーおよび画像形成装置設計が可能となる。
【0064】
よって、上記の観点をトナーのレオロジー特性を含め、更に厳密にトナー特性および画像形成の諸条件の関係を規定すると、請求項に記載の如く、少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むフラッシュ定着用のカラートナーを用いて画像形成を行う画像形成方法であって、第1のトナーを用いて現像後、順次、第2から第nのトナーを用いて現像する工程をn回繰返して記録媒体上に1〜n層のトナー層を形成した後、一括でフラッシュ定着を行う逐次現像一括定着方式を採用し、上記記録媒体上に形成されるn層のトナー層を該記録媒体に近接しているトナー層から順次、1〜n層と順序付けした場合に、任意のY層目のトナー層を形成するトナーのPAS強度SY及び該トナーの基準温度における溶融粘度ρYとフラッシュ光のエネルギーEとが関係式(4)を満たすフラッシュ定着工程を含むことが望ましい。
【0065】
4000≧ρY/SY・E≧1000 ………(4)
また、請求項に記載の如く、少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むフラッシュ定着用のカラートナーを用いて画像形成を行う画像形成方法であって、第1のトナーを用いて現像後、順次、第2から第nのトナーを用いて現像する工程をn回繰返し記録媒体上に1〜n層のトナー層を形成した後、一括でフラッシュ定着を行う逐次現像一括定着方式を採用し、上記記録媒体上に形成されるn層のトナー層を該記録媒体に近接しているトナー層から順次、1〜n層と順序付けした場合に、任意のY層目のトナー層を形成するトナーのPAS強度SY及び該トナーの基準温度における溶融粘度ρYとフラッシュ光のエネルギーEとが関係式(5)を満たすフラッシュ定着工程を含むように構成してもよい。
【0066】
【数3】
Figure 0003894024
(5)
この請求項及びに記載の発明よると、より下層にあるトナーの方が溶け易い条件となるので、一括定着時に於けるトナーの溶融を均一化でき定着ムラの発生を抑制でき、良好な発色を確保できる。特に請求項の発明では下となるトナーとなる程、光エネルギーを良く吸収するようになるのでより好ましい。
【0067】
なお、ここで、SYは記録媒体に近接している側からトナー層を順次、1〜n層と数えた際にY層に積層したトナーのPAS強度、ρYは該トナーの融点における溶融粘度、Eは定着においての光照射エネルギー量を示している。
【0068】
本発明者等の考察によると、逐次現像一括定着方式においては、数層に積層したトナー層に対してフラッシュ光が照射されるため、記録媒体に最も遠い層(最上層)のトナー層が最も強い照射エネルギーを受光し、それより下層のトナー層は順次、上層トナー層を通過することで徐々に減衰した照射エネルギーを受け、記録媒体に接するトナー層(最下層)が最も、弱い光エネルギーを受けることになる。
【0069】
トナーの基準温度(例えば125℃)でのレオロジーをトナーのPAS強度と照射エネルギーEで除した値が1000以下であるとトナーの溶融が過剰となりボイド発生などの画像欠陥が生じて好ましくない。一方、この値が4000以上であるとトナーの溶融が不充分となり定着不良などの問題が生じるので望ましくない。
【0070】
トナーの125℃でのレオロジーをトナーのPAS強度と照射エネルギーEで除した値が1000〜4000の範囲である場合は、最上層のトナー層と最下層のトナー層が受光する照射エネルギーに多少の差が生じても、上層のトナー層が溶融することにり、伝熱により上層から下層へと熱量の移動が生じるため、相応の熱量吸収が上層のトナー層で行われていれば、定着性の観点では、問題は生じない場合が多い。
【0071】
しかし、下層のトナーの溶融が上層のトナー層からの伝熱により行う条件下では、上層のトナー層が溶融してから、下層のトナー層が溶融するまでに一定のタイムラグが生じる。そして最下層のトナーが溶融状態になるタイミングにおいては最上層のトナー層は周囲に熱を奪われ温度低下し始めていることがある。
【0072】
フルカラー画像が色再現性良く発色するためには、積層されたイエロー、マゼンタ、シアンの各色トナー層が溶融状態で均質に混合されることが必要である。
【0073】
しかし、溶融にタイムラグが生じる様な状態では、上記の均質な混合は生じ難く、このため色再現特性が不充分となる。
【0074】
この問題を解決するためには、上記関係式(5)で示す様に上層のトナー層を形成しているトナー層より、より下層のトナー層の方が相対的に少ない照射エネルギーで充分な溶融状態を示すように設計することが望ましい。
【0075】
なお、帯電特性などのトナー諸特性に与える影響を最小限に止めつつ、関係式1〜5を満たす様な各色のトナー特性を制御する方法としては、トナーに処方される赤外光吸収剤をバインダ樹脂に対して不溶な固体とし、その比表面積が異なるものを使用することが望ましい。この様にすることで各トナーに処方される赤外光吸収剤の材質、添加量を大きく変えることなく、各トナーの光吸収特性を制御できるためである。
【0076】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で用いる光照射定着用のカラートナーについてより詳細に説明する。本発明の光照射定着用のカラートナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤及び赤外光吸収剤を含んでいる。本カラートナーは、光音響分光(PAS)分析測定に基づいて得られた赤外PASスペクトルを800から2000nmの範囲で積分したPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲内にある。このようなカラートナーは電子写真方式、或いはイオノグラフィ、マグネトグラフィなどトナーを用いて画像を形成する方式を採用する複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置で好適に用いることができる。
【0077】
なお、上記トナーのPAS強度の測定法は以下の実施例で用いる他の測定法と共に後述する。
【0078】
前記赤外光吸収剤は画像形成装置内の定着部において、フラッシュ光の光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有している。この赤外光吸収剤は本来、結着樹脂の溶融を促進するために添加されている。一般的な赤外光吸収剤は概ね800〜2500nmの範囲の波長光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する。例えば、本実施例のカラートナーに好適に用いることができるナフタロシアニン化合物の場合は凡そ800〜1100nmの範囲の赤外光を吸収する。
【0079】
本発明者等は、800〜2500nm、好ましくは800〜2000nmの広い波長範囲で吸収能がある赤外光吸収剤を探索すべく鋭意研究を重ねた。しかし、広い波長範囲で吸収能があるような単一の赤外光吸収剤を見出すことはできなかった。すなわち、1つの赤外光吸収剤を用いる場合、多量に添加して非常に高い濃度となるようにしなければカラートナーに十分な定着性を付与できないとの結論に至った。
【0080】
しかし、この広い波長範囲を分割すること、例えば波長800〜1100nmの範囲に吸収ピークを有する第1の赤外光吸収剤(A)と、波長1100〜2000nmの範囲に吸収ピークを有する第2の赤外光吸収剤(B)との併用により、赤外光吸収剤の濃度を低く抑えながら従来と比較して低い光エネルギーでカラートナーの定着性を向上させることができることを見出した。
【0081】
そして、このようなカラートナーは、赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分したPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲内となる。
【0082】
また、カラーの画像形成を行う画像形成装置では定着部で黒色トナーとカラートナーとが同時に画像形成に用いられ、定着されることになる。この場合、カラートナーの前記PAS強度を同時に定着される黒色トナーのPAS強度に対して0.2〜0.9倍に設定することで、フラッシュ定着に使用する光エネルギーを低減しつつ、カラートナー及び黒色トナーを効率よく良好に定着させることができる。
【0083】
さらに、カラーの画像形成を行う画像形成装置では定着部で、ある色のカラートナー(例えば赤色)と他の色のカラートナー(例えば青色)とが同時に定着されることになる。この場合には、一方のカラートナーの前記PAS強度を同時に画像形成に用いられる他方のカラートナーのPAS強度に対して0.2〜5倍に設定することで、過剰溶融による画像欠陥の発生や定着不良などの不都合の発生を抑制しつつ、各カラートナーを効率よく低エネルギーの光エネルギー照射で定着させることができる。
【0084】
また、本発明のカラートナーは、逐次現像一括定着方式の方式をとるツインカラー、マルチカラー、フルカラーの各カラー画像形成装置に用いることができる。
【0085】
また、画像形成が逐次現像一括定着方式を採用している場合には、記録媒体上に積層したトナー層間で記録媒体に近いほどρ/S値を小さく設定することで、トナー定着工程での各トナーの混合が相対的に均質に行われるため、優れた色再現域が確保できるなどの利点が生じ、良好な画像形成特性を得ることができる。
なおここで、ρはその定着工程で定着するトナーの溶融粘弾性、Eは記録媒体上での光照射エネルギー量、Sは該トナーの800〜2000nmの波長範囲でのPAS強度である。
【0086】
また、これら、各プロセス方式において、各トナーのPAS強度を制御する手法としては、該トナーに用いる赤外光吸収剤として、バインダレジンに対して非溶融の固体赤外光吸収剤を選択し、該赤外光吸収剤の比表面積を各トナーのPAS強度を調整する因子とすると、他のトナーの諸特性へ与える影響を最小限としつつ、各トナー間PAS強度を調整することができる。
【0087】
更に、記録媒体上に多色のトナー層を積層した画像形成を行う際には、記録媒体に遠いトナー層のトナーほど隠蔽度が低く、かつ、記録媒体の近いトナー層のトナーほど溶融し易い(光エネルギーの吸収効率が高い,少量の熱量で溶融しやすい)トナーとすることが望ましい。この様に設定することで色再現域の広い画像形成を得ることができる。
【0088】
なお、上記のようなPAS強度について所定関係を有するトナーは、波長800〜2000nmの範囲で吸収波長スペクトルが異なる少なくとも2つ以上の赤外光吸収剤を含有する本発明のカラートナーを適宜調整して製造することができる。
【0089】
図1は本発明の一例であるカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図であり、図2は1つの赤外光吸収剤を添加する従来のカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図である。
【0090】
図1では、波長800〜1100nmの範囲に吸収ピークを有する第1の赤外光吸収剤(A)と、波長1100〜2000nmの範囲に吸収ピークを有する第2の赤外光吸収剤(B)との両方が含有されているので、2つの吸収ピークが形成される。よって、赤外光を効率よく利用していることになる。
【0091】
一方、図2に示す従来のカラートナーは赤外領域で1つの吸収ピークが形成されるだけであるので、赤外光を効率よく利用することができない。よって、この1つのピークを高くするため、多量の赤外光吸収剤を添加することが必要となっていた。
【0092】
本発明に係るカラートナーで用いることができる第1の赤外光吸収剤(A)としては例えばナフタロシアニン系化合物を最も好適な材料として用いることができる。また、第2の赤外光吸収剤(B)としては例えばアミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物を最も好適な材料として用いることができる。
【0093】
ナフタロシアニン系化合物は、下記一般式で表される。
【0094】
【化1】
Figure 0003894024
(前記式中R1〜R8はナフタレン環に付加している置換基であり、水素, 炭素数1〜18までの飽和または不飽和炭化水素基, 炭素数1〜13までの酸素または/および窒素含有炭化水素基, Mは水素2原子または2個の水素原子、2価の金属、3〜4価の金属誘導体を示す)また、アミニウム系化合物は、下記一般式で表される。
【0095】
【化2】
Figure 0003894024
(式中、R1からR8のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表わし、X-は陰イオンを表わす)
また、ジイモニウム系化合物は、下記一般式で表される。
【0096】
【化3】
Figure 0003894024
(式中、R1からR8のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表わし、X−は陰イオンを表わす)
さらに、前記以外の赤外光吸収剤としてポリメチン系化合物、シアニン系化合物、アントラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、ジチオール−ニッケル錯体や、アゾコバルト錯体の金属錯体化合物、スクワリリウム系化合物、酸化スズ、酸化イッテルビウム、リン酸化イッテルビウムなどのランタノイド化合物、インジウムチンオキサイド、酸化すず、等を使用することもできるが、これに限定されるものではない。
【0097】
上記に例示した赤外光吸収剤は2種類以上を併用して用いることが好ましく、さらに、波長800nm〜1100nmの範囲に吸収ピークを持つ赤外光吸収剤と、波長1100nm〜2000nmの範囲に吸収ピークを持つ赤外光吸収剤を併用することが特に好ましい。
【0098】
本実施例のカラートナーで用いる赤外光吸収剤の添加量は、トナー100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。ここでの添加量とは、併用する赤外光吸収剤の合計添加量である。
【0099】
前述したように、赤外光吸収剤の添加量が多くなると、定着後のトナー画像の色相が着色剤本来の色相から大きくずれ、画像の彩度が低下するなどの問題が生じる。しかし、本発明のカラートナーでは使用する赤外光吸収剤の量を従来よりも抑制することができる。すなわち、1種類の赤外光吸収剤で十分な赤外光吸収能を得ようとすると多量の添加が必要である。その為に前述した定着後の画像劣化の問題も招来してしまう。しかし、吸収波長スペクトルが異なる2種以上の赤外光吸収剤を併用することで、1種類の赤外光吸収剤を用いた場合の総量よりも少ない合計量で総合的に赤外光吸収能を向上させることができる。さらに異なる赤外光吸収剤は色も異なるので、定着後の画像劣化(色濁り)の問題も抑制できる。
【0100】
本発明のカラートナーに含有される結着樹脂として、従来の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ガラス転移温度40〜80℃、軟化点80〜140℃のエポキシ樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等を単独もしくは混合して使用することができる。必要により、この結着樹脂にワックス(例えば、カルナバ、モンタン、ポリエチレン、アマイド、エステル、ポリプロピレン等)を添加してもよい。
【0101】
本実施例のカラートナーに含有させることができる着色剤については、特に限定はなく、公知の着色剤を用いることができる。例えば、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、モノアゾ系赤色顔料、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料キ化合物等を使用することができる。また、これらを適宜、組合せて使用してもよい。
【0102】
着色剤として具体的には、例えば、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、食用赤色2号(アマランス、C.I.No.16185)、食用赤色3号(エリスロシン、C.I.No.45430)、食用赤色40号(アルラレッドAC、C.I.No.16035)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.No.16255)、食用赤色104号(フロキシン、C.I.No.45410)、食用赤色105号(ローズベンガル、C.I.No.45440)、食用赤色106号(アシドレッド、C.I.No.45100)、食用黄色4号(タートラジン、C.I.No.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.No.15985)、食用緑色3号(ファーストグリーンFCF、C.I.No.42053)、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.No.42090)、食用青色2号(インジゴカーミン、C.I.No.73015)等を使用することができる。
【0103】
上記着色剤の含有量は、トナー100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0104】
前述したように、本発明のカラートナーでは、カラートナー全体を100重量部とした場合に、例えば結着樹脂は75〜95重量部、着色剤は0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、赤外光吸収剤は0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜3重量部を含むように構成することが推奨される。
【0105】
さらに、本発明のカラートナーには、帯電性付与や異なる温湿度環境での帯電量変化を小さくすることを目的として帯電制御剤を添加してもよい。帯電制御剤としては、無色ないし淡色のものが推奨される。
【0106】
帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、サリチル酸化合物、ホウ酸系錯体、カルボン酸系化合物など、公知の正帯電性、負帯電性の帯電制御剤を使用することができる。
【0107】
本発明のカラートナーは、従来と同様な製造法により製造することができる。少なくとも、結着樹脂、着色剤、波長800〜2000nmの範囲で吸光度特性を有する赤外光吸収剤、更に望ましくは波長800〜2000nmの範囲で吸光度特性が異なる少なくとも2種以上の赤外光吸収剤を準備し、さらに必要により帯電制御剤、ワックスを添加して原材料とする。この原材料を例えば、加圧ニーダ、ロールミル、押出機などにより混錬して均一分散させる。その後、例えば粉砕機、ジェットミルなどにより、粉砕、微粉砕し、風力分吸機などにより分級して、所望の粒度分布のカラートナーを得る。
【0108】
なお、混錬の際、例えば特開平7−191492号公報に開示されるように、赤外光吸収剤と帯電制御剤を別々の樹脂に混錬した後、この両者を再度混錬する方法を採用してもよい。
【0109】
さらに、本発明カラートナーの流動性を向上させるために、無機微粒子(以下、外添剤)をトナー表面に被覆してもよい。ここで、使用できる外添剤としては、粒子径が2nm〜500nm、好ましくは5nm〜200nmの範囲にあるものである。また、BET法による比表面積は20m2/g〜500m2/gであることが好ましい。
【0110】
本発明のカラートナーに混合される外添剤の割合は、トナー100重量部に対して、0.1〜5重量部であり、好ましくは0.1〜2.0重量部である。このような外添剤としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸珪素、窒化珪素等を微粒子化したものを使用することができる。これらの中では、シリカ微粒子を用いることが好ましい。なお、外添剤はその表面を予め疎水処理しているものを用いることがより好ましい。
【0111】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明のカラートナーおよび画像形成方法をより具体的に説明する。
【0112】
以下のように参考例に係るカラートナーおよび参考比較例用トナーを製造した。まず、参考例1〜5、参考比較例1〜4では、単層のトナー層を定着させることに関する例を示した参考例を説明する。なお、ここで説明する例には、異なる単層トナーを併存させた状態で定着する所謂ツインカラーの画像形成も含んでいる。
【0113】
参考例1)
青トナーA
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)91重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製)
(最大吸収波長880nm)1重量部
赤外光吸収剤(B):アミニウム塩化合物(NIR−AM1;ナガセケムテックス社製)
(最大吸収波長1550nm)1重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーES;東洋インキ製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
以上の材料をヘンシェルミキサーへ投入し、予備混錬を行った後、エクストルーダにより混錬し、ついでハンマーミルにて粗粉砕した。さらに、これをジェットミルにて微粉砕し、気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が約8.5μmの青色トナーを得た。次いで、外添剤として疎水シリカ微粒子(H2000/4;クラリアント社製)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサで外添処理を行い外添剤を表面に被覆させた青色トナーAを得た。
【0114】
この青色トナーAの赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分してPAS強度を求めた。基準物質としてカーボンブラックを用い、カーボンブラックのPAS強度を基準1として、カラートナーのPAS強度は相対強度で求めた。この青色トナーの相対強度は0.07であった。
【0115】
上記のように得た青色トナーAについて他の諸物性も求めた。その結果を下記表1に示す。なお、測定手順については後述する。
【0116】
次ぎに、前記青色トナーAを2成分現像剤に構成して、フラッシュ定着型のプリンタを使用して記録媒体上にトナー画像の形成を行い、その定着性を評価した。
【0117】
上記青色トナーA4.5重量部と、シリコーン系樹脂コートマグネタイトキャリア(関東電化工業社製)95.5重量部とをボールミルで混合したものを使用して2成分現像剤を製造した。
【0118】
図3は、一例として2成分現像方式の画像形成装置1の一部概要を模式的に示す図である。本装置1は例えばプロセス速度600mm/sの高速現像タイプであり、有機感光体からなる感光体10の周辺に、帯電器20、露光手段30、現像手段40、転写器50、クリーナ60、除電器70、キセノンフラッシュランプ81を有するフラッシュ定着器80等が配設されている。現像手段40は現像剤容器41、現像ローラ43及び図示せぬ攪拌羽等を含み、現像剤容器41内のトナー粒子TOとキャリア粒子CAを接触させて所定の帯電量がトナーに付与されるようになっている。
【0119】
参考例では、画像形成装置としてキセノンフラッシュ定着方式を採用しているレーザプリンタ(PS2160;富士通社製)を用いて、フラッシュランプに印加する電位等を変位させた。これにより、フラッシュランプから発する光エネルギーを記録媒体(用紙)の単位面積あたりで変化させることができる。参考例1においては、1.8J/cm2、発光時間1500μ秒の光エネルギーを付与し、青色トナーAの粉像を用紙上で溶融してから固化し、定着画像を得た。この定着画像について定着性や画像形成(描画)特性を評価した。この評価手法は後述する。評価結果は表1に示している。
【0120】
参考例1における青色トナーAの定着性の評価結果は90%と良好な定着性を示し、過剰光エネルギー照射によるボイド発生も見られなかった。
【0121】
参考例2)
カラートナーの材料構成を下記とした他は、参考例1と同様にして青色トナーBを製造して、同様に諸物性、諸特性を測定した。その結果を表1に示す。
【0122】
また、参考例1と同様の定着評価を行った結果、定着率80%で、ボイド発生もない良好な定着性を示した。青色トナーBのPAS強度は、カーボンブラック1に対して0.05であった。
【0123】
青トナーB
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 0.5重量部
赤外光吸収剤(B):ジイモニウム塩化合物(NIR−IM1; ナガセケムテックス社製)
(最大吸収波長1150nm)1重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーES;東洋インキ製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0124】
参考例3)
カラートナーの材料構成を以下とした他は、参考例1と同様にして青色トナーCを製造して前記と同様にして諸物性、諸特性を測定した。その結果を表1に示す。この青色トナーCのPAS強度はカーボンブラック1に対して0.02であった。
【0125】
また、参考例1と同様の定着評価を行った結果、定着率70%で、ボイド発生もない良好な定着性を示した。
【0126】
青トナーC
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)90重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 0.1重量部
赤外光吸収剤(B):ジイモニウム塩化合物(NIR−IM1;ナガセケムテックス社製) 1重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(リオノールフ゛ルーES;東洋インキ製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0127】
参考比較例1)
カラートナーの材料構成を以下とした他は、参考例と同様に青色トナーDを製造して前記と同様にして諸物性、諸特性を測定した。この青色トナーDのPAS強度はカーボンブラック1に対して0.005であった。この青色トナーDの評価結果を表1に示す。
【0128】
また、参考例1と同様の定着評価を行った結果、ボイドの発生はないが定着率が50%と低く、定着不良となった。
【0129】
これは、参考比較例1のトナーDのPAS強度が0.005であり、参考例の各トナーと比較して格段に低く、同様のフラッシュ光を照射されているにも拘わらずそのエネルギー利用効率が悪いためと推測できる。
【0130】
青トナーD
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)92.95重量部
赤外光吸収剤:アミニウム塩化合物(NIR−AM1;ナガセケムテックス社製) 0.05重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーES;東洋インキ製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0131】
参考比較例2)
カラートナーの材料構成を下記とした他は、参考例1と同様にして青色トナーEを製造して、同様に諸物性、諸特性を測定した。この青色トナーEのPAS強度はカーボンブラック1に対して0.021であった。その評価結果を表1に示す。
【0132】
また、参考例1と同様の定着評価を行った結果、定着率が90%と高いが、ボイドが多量に発生して良好な定着性を得ることができなかった。また、画像形成された画像の色も青黒く、鮮明な色調ではなかった。
【0133】
この参考比較例2のトナーは2種類の赤外光吸収剤を併用するものであるが、その添加量が過多となるとトナー色調へ与える影響が大きくなること、およびトナーが過剰溶融してしまうことが分かる。
【0134】
青トナーE
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)73重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 10重量部
赤外光吸収剤(B):ジイモニウム塩化合物(NIR−IM1;ナガセケムテックス社製) 10重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーES;東洋インキ製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0135】
さらに、以下で示す参考例4、5及び参考比較例3、4は、画像形成装置内で実際に定着される状況について考慮したものであり、複数の異なるトナー、例えばカラートナーと黒色トナーとの単層のトナー層を同時定着させた場合について説明するものである。
【0136】
参考例4)
黒色トナー(No.1黒色トナー)として下記に示すトナーFを参考例1の青色トナーAと同様にして製造し、諸物性、諸特性を測定した。その評価結果を表1に示す。
【0137】
これら参考例1の青色トナーA及びNo.1黒色トナーFを用い、参考例1の場合と同様に、この2種のトナーを用いてツインカラーの画像形成を行い、両トナーを記録媒体上で同時定着させる定着試験を行った。青色トナーAのPAS強度は0.07であり、No.1黒色トナーFのPAS強度は0.1であるので、黒色トナーのPAS強度に対する青色トナーの前記PAS強度比は、0.7(=0.07/0.1)である。
【0138】
参考例での定着率は、青色トナー90%、黒色トナー95%であり、どちらもボイド発生がない良好な定着性を示した。
【0139】
[No.1黒色トナー]
トナーF
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)88重量部
カーボン:(#25;三菱化学社製)10重量部
負帯電制御剤:アゾ染料(ボントロンS−34;オリエント化学社製)2重量部
【0140】
参考例5)
カラートナーとして参考例3で用いた青色トナーCを用いた以外、参考例4と同様にツインカラーの画像形成および定着評価を行った。なお、黒色トナーのPAS強度に対する青色トナーの前記PAS強度比は、0.2である。
【0141】
参考例での定着率は、青色トナー70%、黒色トナー95%であり、どちらもボイド発生がない良好な定着性を示した。
【0142】
参考比較例3)
黒トナーとして、下記に示すNo.2黒色トナーG(PAS強度0.13)、カラートナーとして青トナーCを用い、照射光エネルギーを2.5J/cm2に変更して、参考例4の場合と同様な画像形成および定着評価を行った。この時の黒色トナーのPAS強度に対する青色トナーのPAS強度比は、約0.15であった。その結果、定着率は青色トナー75%、黒色トナー95%であったが、黒色トナー側にボイドが発生して良好な定着性を得られなかった。
【0143】
[No.2黒色トナー]
トナーG
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)83重量部
カーボン:(#25;三菱化学社製)15重量部
負帯電制御剤:アゾ染料(ボントロンS−34;オリエント化学社製)2重量部
【0144】
参考比較例3で用いたNo.2黒色トナーGは、No.1黒色トナーFと比較して、PAS強度が大きい。よって、本参考例のカラートナー(青色)に好適な定着光エネルギーは黒色トナーの種類によっては強すぎる場合がある。
【0145】
すなわち、前述したように本発明者等はツインカラーによる画像形成のように、同時に単層のトナー層を形成するカラートナーと黒色トナーの関係では、カラートナーのPAS強度は、同時に画像形成される黒色トナーのPAS強度に対して0.2〜0.9倍程度に設定されていることが好ましいことを確認した。また、赤色、緑色、マゼンタ、シアン、イエロー等、他の色のカラートナーにおいても同様の結果を得えることができた。
【0146】
また、ここでは実施例としては示さないが、本発明者等は前記参考例4及び5、並びに参考比較例3と同様に、カラートナー同士の関係についても検討した。その結果、同時に使用される各カラートナーの前記PAS強度は、他のカラートナーのPAS強度に対して0.2〜5倍に設定されていることが好ましいことを確認している。
【0147】
参考比較例4)
黒色トナーとして、前記No.1黒色トナーFを用いた。また、カラートナーとして青色トナーHを用いた。このトナーは、用いる赤外光吸収剤(A)及び赤外光吸収剤(B)の添加量をそれぞれ、5重量部とし合計で10重量部まで増加させたこと以外は青色トナーAと同様にして製造した。この青色トナーHのPAS強度は0.095(No.1黒色トナーに対して0.95)であった。
【0148】
これらのトナーを参考例4の場合と同様に評価した。その結果、定着率は青色トナー90%、黒色トナー90%であったが、青色トナーの定着画像の彩度が低下して、良好な画像が得られなかった。
【0149】
青トナーH
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製)83重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製)5重量部
赤外光吸収剤(B):ジイモニウム塩化合物(NIR−IM1;ナガセケムテックス社製) 5重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーES;東洋インキ製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0150】
参考比較例では、赤外光吸収剤が多量に添加されているので定着性は向上するが、有色である赤外光吸収剤が定着画像の彩度に悪影響があることが分かる。
【0151】
以下でさらに示す参考例6、7及び参考比較例5〜8は、モノカラー、ツインカラーなど、記録媒体上に単層のトナー層を形成し、フラッシュ定着を行う際の光エネルギー(定着エネルギー)とトナーのPAS強度との関係について検討した結果について示している。なお、記録媒体としては、薄層フィルム、連量55kg上質紙、連量120kg上質紙を用いた。また、一部の検討においては、記録媒体を60℃に余熱した場合の定着評価も行なった。
【0152】
参考例6)
フラッシュ光のエネルギーを0.5J/cm2、発光時間3000μ秒に変更した以外、前記参考例1の場合と同様に青色トナーAの評価を行った。本参考例では、通常の連量55kg上質紙を用いた場合においては定着率60%と充分な定着性を得られなかったものの、記録媒体として薄層フィルムを用いた際と60℃に余熱した連量55kg上質紙を用いた際にともに定着率70%でボイド発生もない良好な画像が得られた。
【0153】
参考例7)
フラッシュ光のエネルギーを2.5J/cm2、発光時間500μ秒に変更した以外、前記参考例1の場合と同様に青色トナーAの評価を行った。本参考例では、定着率95%で、ボイド発生もない良好な定着性を示した。
【0154】
参考比較例5)
フラッシュ光のエネルギーを0.4J/cm2、発光時間500μ秒に変更した以外、前記参考例1の場合と同様に青色トナーAの評価を行った。本参考比較例では、低エネルギー定着な有利である記録媒体である、薄層フィルムを用いた際の定着率60%、60℃に余熱した連量55kg上質紙を用いた際の定着率50%で何れも定着不良となった。
【0155】
参考比較例では、吸熱量の少ない記録媒体を用いた場合といえども、照射した光エネルギーが不足していると推測できる。
【0156】
参考比較例6)
フラッシュ光のエネルギーを3.1J/cm2に変更した以外、前記参考例1の場合と同様に青色トナーAの評価を行った。本参考比較例では、吸熱量の大きい連量120kg上質紙においてもボイドが発生し、良好な定着性が得られなかった。本参考比較例では照射した光エネルギーが過剰であり、トナーが過剰溶融したものと推測できる。
【0157】
参考比較例7)
フラッシュ光のエネルギーを1J/cm2に変更した以外、前記参考例1の場合と同様に青色トナーCの評価を行なった。本参考比較例ではボイド発生はないが、定着率が60%となり定着不良となった。本参考比較例では照射した光エネルギーが不足しているものと推測できる。
【0158】
参考比較例8)
フラッシュ光のエネルギーを3J/cm2に変更した以外、前記参考例1の場合と同様に青色トナーAの評価を行った。本参考比較例では吸熱量の大きい連量120kg上質紙においてもボイドが発生し、良好な定着性を得られなかった。本比較例では照射した光エネルギーが過剰であり、トナーが過剰溶融したものと推測できる。
【0159】
上記参考例6及び7並びに参考比較例5〜8から確認できるように、本参考例のカラートナーを用いると、フラッシュ光のエネルギーを0.5〜2.5J/cm2とし、発光時間500〜3000μ秒として、従来よりも定着エネルギーを低減し、モノカラー、ツインカラーの如く単層のトナー層を形成し画像形成するフラッシュ定着工程を実現できる。
【0160】
さらに、以下に示すように本発明者等はカラートナーについて、前記PAS強度(S)と、フラッシュ光のエネルギー(E)との積(E・S)に着目し、このE・S値が関係式(1)の条件を満たすように定着がなされていると単層のトナー層に対して優れたカラートナーの定着を実現できることも確認した。
【0161】
0.03≦E・S≦0.15 ……(1)
下記表1には、前述した参考例1〜7で示した良好なカラートナー及び問題のあった参考比較例カラートナーについて、E・S値を示す。また、このE・S値と定着率の関係を図4に示す。図4からE・S値が低く過ぎると、定着性を確保するに好適に記録媒体を選択した場合についても定着不足となり、逆に高くなり過ぎると吸熱量が大きくトナーが過剰溶融を起こし難い記録媒体を選択したとしてもボイドが発生することが確認できる。よって、ここからE・S値が上記関係式(1)の範囲にあることが好ましいことが確認できる。更に多様な記録媒体を任意に選択することを考慮すれば、E・S値の範囲が前述した関係式(8)の範囲にあることが望ましいことも確認できる。
【0162】
【表1】
Figure 0003894024
【0163】
参考例1〜7のカラートナーは上記関係式(1)の条件を満足していること、その逆に各参考比較例のカラートナーは関係式(1)の条件を満足しいないことも確認できる。
【0164】
なお、参考例4及び参考例5、並びに参考比較例3のトナーは、黒色トナーと青色トナーを同時定着させた場合であるので、両トナーが共に良好な状態である必要がある。よって、参考比較例3のトナーは黒色トナーにボイドが生じているので評価は不可(×)である。
【0165】
さらに、以上示した参考例1〜3及び参考比較例1について、発光時間を1500μ秒とし、定着エネルギー(フラッシュ光のエネルギー)を変更したときの定着率(%)の様子を纏めて示したのが図5である。
【0166】
図5から、参考例1〜3のカラートナーは、参考比較例トナーが定着不良となる1.75J/cm2より低い定着エネルギーでも高い定着性を得られることが確認できる。すなわち、本発明に係るカラートナーはフラッシュ定着での定着エネルギーを低減できるトナーであることが確認できる。
【0167】
上記参考例では本発明に係るカラートナーの一例として、青色及び黒色を示して、これらを製造し、定着試験を行った場合について説明した。しかし、本発明は青色に限らず、他の色、例えば赤色、緑色、青色、マゼンタ、シアン、イエロー等の場合についても同様に定着用の光エネルギーを低減しつつ確実に定着を行うことができるトナーとして提供できる。
【0168】
以下では、さらに示す参考例及び参考比較例は、マルチカラー、フルカラーなど、記録媒体上で積層状態になる場合があるトナーの関係について検討した結果について示している。特に、積層状態となるトナー層に関して、フラッシュ定着での光照射エネルギーとトナーの諸特性、画像形成との関係について検討した結果について示している。
【0169】
まず、記録媒体上へ単層のトナー層形成を行った後、フラッシュ定着を行い、更にこれらの工程を繰り返して、積層した複数のトナー層を得る、逐次現像逐次定着方式を採用した画像形成方法を実施した場合での検討結果を参考例8〜10、参考比較例9〜15として示す。
【0170】
これらの例においては、逐次現像、逐次定着プロセスを4回行う、4サイクル画像形成で画像形成(描画)評価を行った。
【0171】
逐次現像逐次定着方式の場合、第1サイクルに用いられるトナーは、第1サイクルでフラッシュ光照射を受けるだけでなく、以後の2〜4サイクルにおいてもフラッシュ光照射を受ける。
【0172】
また、第2サイクルに用いられるトナーは、記録媒体表面へのトナー層形成と定着のみならず、既にトナー層(定着済)が形成されている部位上へのトナー層形成と定着についても考慮しなければならない。
【0173】
さらには、前述したツインカラープロセスの画像形成のように複数のトナー(一方は粉像、他方は定着像)の同時定着(溶融)挙動についても考慮する必要があることは当然のこととして、更にサイクル数に応じた積層したトナー層(4サイクルの場合は最大4層)での定着挙動を検討しなければならない。
【0174】
よって、評価に際しては、画像形成終了後、各サイクルに用いるトナー各々の単層での画像形成、さらにこれらトナーが2層、3層となる全ての組合わせでの画像形成、トナー全てが積層された4層での画像形成について、定着性を中心として評価した。
【0175】
なお、画像形成に用いたブリンタは、キセノンフラッシュ定着方式を採用しているレーザプリンタ(PS2160改造機;富士通社製)で、この1台のプリンタを1サイクルの現像・定着を行った後、その工程で用いた記録媒体上に再度、現像・定着を繰り返すことで4サイクルの逐次現像・逐次定着による画像形成を行った。
【0176】
以下に逐次現像・逐次定着の例を示す。積層順は各例の右に、赤はR、緑はG、青はB、イエローはY、マゼンタはM、シアンはC、黒はKを用いて示している。
【0177】
参考例8) R→G→B→K
カラートナー赤I、緑J、青Kの3種と黒トナーLの1種を用い逐次現像逐次定着による画像形成評価を行った。
【0178】
用いたトナーは下記原料を用い、参考例1と同様にして製造したものである。画像形成に用いたトナーの諸物性、諸特性を表2に示す。
【0179】
なお、逐次現像・逐次定着の画像形成順序は赤→緑→青→黒、定着工程における光照射エネルギー量は順次、2.6J/cm2→2.6J/cm2→2.6J/cm2→1.9J/cm2とした。
【0180】
画像形成の結果、何れの描画パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲内であり良好(○)な結果となった。また、ボイドなどの画像欠陥も見られず良好(○)な画質が得られた。
【0181】
赤トナーI
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製) 92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 0.4重量部
赤外光吸収剤(B):リン酸イッテルビウム(UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:アリルアマイド(イルガライド3RS;チバスペシャリティ社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
緑トナーJ
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製) 92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製)0.4重量部
赤外光吸収剤(B):リン酸イッテルビウム(UU-HPタイプ信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:ブロム化銅フタロシアニン(ホスタペルンGNX-L;クラリアント社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
青トナーK
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製) 92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 0.4重量部
赤外光吸収剤(B):リン酸イッテルビウム(UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーES;東洋インキ製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
黒トナーL 結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製)91重量部
着色剤:カーボン:(MA−100S;三菱化学社製)7重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0182】
参考例9) Y→M→C→K
参考例8と同様に、カラートナーM、N、Oの3種と黒トナーLの1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。用いたトナーは下記原料を用い、参考例1と同様にして製造した。
【0183】
画像形成に用いたトナーの諸物性,諸特性を表2に示す。
【0184】
なお、逐次現像・逐次定着の画像形成順序はイエロー→マゼンタ→シアン→黒とし、定着工程における光照射エネルギー量は順次、2.6J/cm2→2.6J/cm2→2.6J/cm2→1.9J/cm2とした。画像形成の結果、何れの画像形成パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲内であり良好な結果となった。また、ボイドなどの画像欠陥も見られず良好な画質が得られた。
【0185】
イエロートナーM
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製)92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製)0.4重量部
赤外光吸収剤(B):酸化サマリウム (UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:ベンズイミダゾロン(ノバパームイエローP-HG;クラリアント社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
マゼンタトナーN 結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製)92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 0.4重量部
赤外光吸収剤(B):リン酸イッテルビウム(UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:キナクリドン(ホスタパームピンクE02;クラリアント製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
シアントナーO 結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製) 92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製)0.4重量部
赤外光吸収剤(B):リン酸イッテルビウム(UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:銅フタロシアニン(ホスタハ゜ームフ゛ルーB2G;クラリアント製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
【0186】
参考比較例9) K→R→G→B
参考例8と同様に、カラートナーI、J、Kの3種と黒トナーL1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。なお、逐次現像・逐次定着の画像形成順序は黒→赤→緑→青と、参考例8では最後の現像順序である黒トナーLを最初の現像順序に変更した。それに伴って、定着工程における光照射エネルギー量は順次、1.9J/cm2→2.6J/cm2→2.6J/cm2→2.6J/cm2へと変更した。画像形成の結果、何れの画像形成パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲内であり良好であったものの、黒トナーの画像形成部にボイドの発生が見られ、画像形成全体での画像品位は満足すべきものではなかった。
【0187】
黒トナーLに対しては、カラートナーI,J,Kを定着させるために要する照射エネルギーが過剰であり、トナーが過剰溶融したものと推測できる。
【0188】
参考比較例10) K→R→G→B
各定着工程で照射するエネルギーを、全て→1.9J/cm2へと変更する以外は参考比較例9と同様にして画像形成評価を行った。画像形成の結果、黒トナーの画像形成部位でボイドは見られなくなったものの、カラートナーで画像形成された部位の一部、特に赤トナーIの定着、特に赤トナーIと他のトナーが積層した箇所が弱く(定着率50%以下)、画像全体の画像品位は満足するものではなかった。
【0189】
黒トナーLに対しては適度なエネルギー量では、カラートナー、特にその積層部位を定着させるために必要なエネルギー量に達していないものと推測できる。
【0190】
参考比較例11) K→R→G→B
参考例8と同様に、カラートナーI,J,Kの3種と黒トナーPの1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。トナーは下記原料を用い、参考例1と同様にして製造したものである。画像形成に用いたトナーの諸物性,諸特性を表2に示す。
【0191】
なお、逐次現像・逐次定着の画像形成順序は黒→赤→緑→青と、参考比較例10と同一である。また、この検討で用いた黒トナーPは着色剤であるカーボンの添加量を減じ、トナーのPAS強度を下げることを目的に製造したものであるため、光照射エネルギー量は4サイクル全て2.6J/cm2とした。画像形成の結果、何れの画像形成パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲内であり良好(○)であり、黒トナー画像形成部のボイドの状況もかなりな改善が見られ合否のボーダーラインにある印字の状態であった。しかしながらカーボン添加量を減じたため、黒トナーの黒度は不充分(×)なものであった。黒トナー画像形成部の黒度がやや不充分,ボイドも多少見られるといったレベルで印字品位的にも不満が残るとともに、参考例8に比べ、定着に要する総エネルギー量が増加してしまうこともあり、本比較例は満足できるものではない。
【0192】
黒トナーP
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製) 96重量部
着色剤:カーボン:(MA−100S;三菱化学社製) 2重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0193】
参考例10) K→R→G→B
参考例8と同様に、カラートナーI,J,Kの3種と黒トナーQの1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。トナーは下記原料を用い、参考例1と同様にして製造したものである。画像形成に用いたトナーの諸物性、諸特性を表2に示す。
【0194】
なお、逐次現像・逐次定着の画像形成順序は黒→赤→緑→青であり、参考比較例9と同一である。また、この検討で用いた黒トナーQは溶融粘度の高いバインダ樹脂を用いて、耐ボイド性改善を目指して製造したものであるため、光照射エネルギー量は4サイクル全て2.6J/cm2とした。画像形成の結果、カラートナーの定着率は80〜90%、黒トナーの定着率は70%であり、若干、黒トナーの定着率が低いものの、ボイドも無く、画像全体の画像品位は満足できるものであった。
【0195】
参考例8に比べ、定着に要する総エネルギー量が増加してしまう難点もあるが、トナーバインダとして高溶融粘度樹脂を使用することで、現像剤寿命伸長など、他の観点からのメリットが存在する場合は、本参考例のような手法を取ることも可能である。
【0196】
黒トナーQ
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FIZ−100;ハリマ化成社製)64重量部
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NE2150;花王社製)27重量部
着色剤:カーボン:(MA−100S;三菱化学社製)7重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0197】
参考比較例12) K→R→G→B
参考例8と同様に、カラートナーI、J、Kの3種と黒トナーRの1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。トナーは下記原料を用い、参考例1と同様にして製造したものである。画像形成に用いたトナーの諸物性、諸特性を表2に示す。
【0198】
なお、逐次現像・逐次定着の画像形成順序は黒→赤→緑→青であり、参考比較例11と同一である。また、この参考例で用いた黒トナーRは参考例10に比べ更に溶融粘度の高いバインダ樹脂を含んでおり、光照射エネルギー量は4サイクル全て参考例10と同等の2.6J/cm2とした。
【0199】
画像形成の結果、カラートナーの定着率は80〜90%、黒トナーの定着率は60%であり、黒トナーの定着率が合格ラインを下回ってしまい、満足できないものであった。
【0200】
黒トナーR
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FIZ−100;ハリマ化成社製)9重量部
結着樹脂:ポリエステル樹脂(タフトンNE2150;花王社製)82重量部
着色剤:カーボン:(MA−100S;三菱化学社製)7重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0201】
参考比較例13) Y→M→C→K
参考例9と同様に、カラートナーM、T、Oの3種と黒トナーLの1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。トナーは下記原料を用い、参考例1と同様にして製造したものである。画像形成に用いたトナーの諸物性,諸特性を表2に示す。なお、逐次現像・逐次定着の画像形成順序はイエロー→マゼンタ→シアン→黒とし、定着工程における光照射エネルギー量は順次、2.6J/cm2→2.6J/cm2→2.6J/cm2→1.9J/cm2とした。
【0202】
この参考例で用いたマゼンタトナーTは参考例9に比べPAS強度が高く、かつ、溶融粘度の低い高バインダ樹脂を用いた。
【0203】
画像形成の結果、何れの画像形成パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲内であり良好な結果となった。しかし、マゼンタトナーを用いた画像形成部にボイドの発生が見られ、全体の画像品位としては満足できるものではなかった。
【0204】
マゼンタトナーT
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FN−1;花王社製)92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 0.5重量部
赤外光吸収剤(B):酸化イッテルビウム(UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:キナクリドン(ホスタパームピンクE02;クラリアント製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
【0205】
参考比較例14) Y→M→C→K
参考比較例13と同様に、カラートナーM、T、Oの3種と黒トナーLの1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。逐次現像・逐次定着の画像形成順序はイエロー→マゼンタ→シアン→黒とし、参考比較例13で2サイクル目に現像・定着を行ったマゼンタトナーの画像形成部にボイド現象が生じていたことから、マゼンタ定着工程における光照射エネルギー量を減じ、光照射エネルギー量を順次、2.6J/cm2→1.9J/cm2→1.9J/cm2→1.9J/cm2とした。画像形成の結果、シアンの画像形成パターンにおいても定着率は50%となり、全体の画像品位としては満足できるものではなかった。
【0206】
参考比較例15) Y→M→C→K
参考比較例13と同様に、カラートナーM、T、Oの3種と黒トナーLの1種を用い逐次現像逐次定着による描画評価を行った。逐次現像・逐次定着の画像形成順序はイエロー→マゼンタ→シアン→黒とし、参考比較例13で2サイクル目に現像・定着を行ったマゼンタトナーの画像形成部にボイド現象が生じていたことから、マゼンタ定着工程における光照射エネルギー量を減じ、光照射エネルギー量を順次、2.6J/cm2→1.9J/cm2→2.6J/cm2→1.9J/cm2とした。画像形成の結果、何れの画像形成パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲内であり良好な結果となった。しかし、マゼンタトナーを用いた画像形成部には参考比較例13と同様にボイドの発生が見られ、全体の画像品位としては満足できるものではなかった。
【0207】
このことは、当該トナーが現像され、光照射により定着像となるサイクル以降において、当該トナーにとって過剰となるエネルギーが再照射された場合、ボイドが生じていなかった画像形成部(定着済)が再溶融してボイドが生じる可能性があることを示唆しているものと推察される。
【0208】
【表2】
Figure 0003894024
以上、逐次現像・逐次定着方式のプロセスを採用する一連の画像形成での結果をまとめた表2に基づいて、以下のことが確認できる。
【0209】
1) ρ/E・S値を尺度として、上記評価結果よりトナーが定着不良及び過剰定着(ボイド)を抑制できるような好ましい条件を導くと1150〜4950の範囲となる。即ち、前述した関係式(3)を満たすことにより、逐次現像・逐次定着プロセスを採用する画像形成装置にて良好な光照射定着ができることが確認できる。
【0210】
2) 下限値は単層トナー層での下限値より僅かに高い値となっている。これは、モノカラーなどが単層トナーへの光照射が1回であるのに対して、逐次現像・逐次定着では複数回の光照射があるため、トナーが若干、過剰溶融し易いためと本発明者等は推察している。
【0211】
なお、本発明者等の経験に基づくと、逐次現像・逐次定着の反復プロセス数が4回以上となっても、上記の条件範囲は一定となっている。これは、光照射の反復がトナーの溶融特性に及ぼす影響が、反復回数が2〜3回の小さい値で飽和してしまうためと推察されている。
【0212】
3) 上限値は単層トナー層での条件値よりやや低い値となっている。光熱変換されトナーの熱溶融に用いられた熱量がトナー層(粉像)下面から記録媒体側へ失われる際の熱ロス量が記録媒体単独の場合に比べ、トナー層(溶融済)がある場合の方が、トナー層(溶融済み)への吸熱容量の分だけ、大きくなることが、その要因であると本発明者等は推察している。
【0213】
以下では、タンデム型フルカラー機などで常用されている逐次現像・一括定着方式を採用した画像形成の実施例について説明する。逐次現像一括定着のプロセスにおいては、一般に4回の現像を繰り返し、記録媒体上に最大4層に積層したトナー粉像を形成した後、それらを一括で定着する。
【0214】
用いるトナーをα、β、γ、δとすると、記録媒体上で、まずα、β、γ、δの夫々が単層状態である場合、またα+β、α+γ、α+δ、β+γ、β+δ、γ+δの2層状態である場合、またα+β+γ,α+β+δ,α+γ+δ,β+γ+δの3層状態である場合、更にはα+β+γ+δの4層状態である場合が存在する。これらの全ての定着挙動を同時に満足する必要がある。
【0215】
但し、上記α+β+γ+δの現像がフルカラー現像の場合、イエロー,マゼンタ,シアンの各トナーの等量混色は黒色となることから、色調的に等価な黒色トナー現像への置換が行われる。よって、α+β+γ+δの各色を最大現像量で現像することはない。
【0216】
更に階調表現をとることから、各色の現像量はその現像プロセスでの最大現像量〜0まで変化する。また、逐次現像一括定着方式のフラッシュ定着画像形成装置においては、現像順序も極めて重要な因子となる。これは、数層に積層したトナー層に光エネルギー照射を行うと、その光エネルギーは上層のトナー層へ多く吸収され、下層になればなるほど、照射エネルギーの到達量は少なくなる。このことが定着性や画像形成性に大きな影響を及ぼす。
【0217】
本実施例においては、定着ユニット部を取り外したタンデム型フルカラープリンタ(F6908B;富士通製)を用い、上記の画像形成パターン全てを含むトナー粉像(積層)を記録媒体上に出力し、これをフラッシュ定着方式を採用したレーザプリンタ(PS2160;富士通製)にて定着を行い、その定着性、画像形成性を評価した。
【0218】
なお、本実施例の効果を確認しやすいように、下記の段階に分割して検討した。
【0219】
〔第一段階〕積層したトナー層を定着するに要する光照射エネルギー量を調査した。
【0220】
最大のトナー積層が行われた際のトータルトナー量を2.0mg/cm2と想定し、トナー諸特性が異なる代表的なトナーとして、青トナーC、黒トナーSを選択し、同一トナーを4回現像することにより記録媒体上に2.0mg/cm2のトナー層を作成し、これに照射エネルギーを変えながらフラッシュ光を照射して定着状況を調査した。この評価を表に示す。
【0221】
なお、定着可否の評価判定は、積層したトナー全体が充分に定着しているか否かにより行った。
【0222】
〔第二段階〕次に、第一段階の検討より導かれた強い光エネルギー照射が行われた際に、単層のトナー層でボイドが発生しないためのトナー条件の関係(PAS強度、溶融粘度)を求めた。これには後述の手段でPAS強度や溶融粘度を調整した黒トナーおよび青トナーを用いた。この評価を表3、表4に示す。
【0223】
〔第三段階〕第二段階で導き出された条件範囲にあるトナーを中心として、イエロー,マゼンタ,シアン色のトナーを製造し、第二段階で導いた結果の検証を行うとともに、更に、トナー積層序列等に起因する画像形成特性の違いについて検討した。この評価を表に示す。
【0224】
なお、上記各段階で使用するトナーとしては、バインダ樹脂として、溶融粘度の異なる2種のポリエステル樹脂(FN−1;花王製およびFIZ−100;ハリマ化成製)をブレンド比を変えて用いることにより溶融粘度の調整を行った。トナーに添加する赤外光吸収剤の粒度(比表面積)や添加量を変えることによりPAS強度の調整を行った。トナーに用いる顔料の分散度を変えることにより隠蔽度の調整を行った。
【0225】
なお、顔料分散度の調整は、マスターバッチ処理した顔料とマーターバッチ処理していない顔料とを準備し、そのブレンド比率を変えることで行った。
【0226】
製造したトナーの内、評価に使用したトナーの諸物性、諸特性を表に示す。
【0227】
黒トナーS
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FIZ−100;ハリマ化成社製)46重量部
結着樹脂:ポリエステル樹脂(タフトンNE2150;花王社製)45重量部
着色剤:カーボン:(MA−100S;三菱化学社製)7重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)2重量部
【0228】
【表3】
Figure 0003894024
【0229】
【表4】
Figure 0003894024
【0230】
〔第一段階〕検討結果
上記表3、表4から、相対的に低粘度である青トナーCの場合は少なくとも2.5J/cm2程度、やや高粘度である黒トナーSでは4.0J/cm2以上の光エネルギー照射を行わないと、充分なトナー溶融は行われないことが確認できる。
【0231】
その一方で、7J/cm2以上の光エネルギーを照射すると、記録媒体に黄ばみが生じる可能性があることも判明した。このことより、一括定着に用いるべき光エネルギー照射量として好ましくは2.5〜7.0J/cm2、更に好ましくは3.5〜5.0J/cm2の範囲が妥当であることが確認された。
【0232】
また、良好な定着特性が得られた際のトナーのρ/E・S値は4000以下であることも確認できる。
【0233】
〔第二段階〕検討結果
以下の青及びシアントナー、A、B、C、D、E、H、K、O、Uの9点、黒トナーF、G、L、P、Q、R6点の単層トナーに照射エネルギー量を3.0〜4.0J/cm2の範囲で照射エネルギー量を変えて光エネルギー照射を行った。黒トナーについては表、青トナーについては表に示している。
【0234】
上記の評価結果で、ボイドの発生が見られたのは、照射エネルギー3.0J/cm2および3.5J/cm2では、トナーA、F、G、H、L、Pの5点、4.0J/cm2では、更にトナーBが追加され6点であった。
【0235】
これらのトナーのρ/S・E値を調べると、表3及び表4に示す通り、全てρ/S・E値が1000以上であることが確認できる。
【0236】
上記結果より、逐次現像・一括定着においても、ρ/S・E値が1000以上であるとボイドが生ぜず良好な定着ができることが確認された。
【0237】
なお、シアントナーUの組成は、
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FIZ−100;ハリマ化成社製)92重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) 0.35重量部
赤外光吸収剤(B):酸化イッテルビウム(UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:銅フタロシアニン(ホスタパームブルーB2G;クラリアント製造社製)4.5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
である。
【0238】
〔第三段階〕検討結果
次に上記の第一段階、第二段階で導き出されたρ/S・E値1000〜4000が、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の4色画像形成においても成り立つものであるかを検証するため、以下の4条件の画像形成を行い、その定着性、画像形成性を評価した。この評価結果を表に示す。
【0239】
【表5】
Figure 0003894024
【0240】
(実施例)Y→M→C→K
カラートナーM、N、Oの3種と黒トナーQの1種を用い逐次現像一括定着による画像形成評価を行った。記録媒体上でのトナー層の積層順序は媒体側から黒→シアン→マゼンタ→イエローとし、光照射エネルギー量は3.5J/cm2とした。画像形成の結果は表4に示すように、何れの画像形成パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲であり、各色単層トナー層部を含む全画像形成パターンにおいてもボイドの発生は見られず、良好な画像形成結果となった。この実施例での各トナーのρ/E・S値は、2499〜3331であり、上記範囲を満たすものであった。
【0241】
(実施例) C→Y→M→K
カラートナーM、N、Uの3種と黒トナーQの1種を用い逐次現像一括定着による画像形成評価を行った。
【0242】
記録媒体上でのトナー層の積層順序は媒体側から黒→マゼンタ→イエロー→シアンとし、光照射エネルギー量は4.0J/cm2とした。画像形成の結果は表に示すように、何れの画像形成パターンにおいても定着率は80〜90%の範囲であり、各色単層トナー層部を含む全画像形成パターンにおいてもボイドの発生は見られず、良好な画像形成結果となった。なお、この実施例での各トナーのρ/E・S値は、2186〜4222であり、上記範囲を満たすものであった。
【0243】
(比較例) Y→M→C→K
カラートナーM,O,Vの3種と黒トナーQの1種を用い逐次現像一括定着による画像形成評価を行った。トナーは下記原料を用い、参考例1と同様にして製造したものである。画像形成に用いたトナーの諸物性,諸特性を表に示す。記録媒体上でのトナー層の積層順序は媒体側から黒→シアン→マゼンタ→イエローとし、光照射エネルギー量は3.5J/cm2とした。画像形成の結果、マゼンタ単層およびマゼンタ以外のトナーの単層部,積層部では定着率70%以上を確保したものの、マゼンタと他色の積層部での定着率は50%以下となり、画像形成結果は満足できないものであった。
【0244】
なお、この実施例での各トナーのρ/E・S値は、マゼンタトナーVが5607と上記範囲を満たしていないが、他のトナーは2499〜3331で上記範囲内であった。
【0245】
マゼンタトナーV
結着樹脂:ポリエステル樹脂(FIZ−100;ハリマ化成社製)74重量部
結着樹脂:ポリエステル樹脂(タフトンNE2150 ;花王社製)18重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物 0.4重量部
赤外光吸収剤(B):酸化イッテルビウム(UU-HPタイプ;信越化学工業社製) 1重量部
着色剤:キナクリドン(ホスタパームピンクE02;クラリアント製造社製)5重量部
負帯電制御剤:カリックスアレン(ボントロンE-89;オリエント化学社製)1重量部
【0246】
(比較例) Y→M→C→K
カラートナーM、O、Tの3種と黒トナーQの1種を用い逐次現像一括定着による画像形成評価を行った。記録媒体上でのトナー層の積層順序は媒体側から黒→シアン→マゼンタ→イエローとし、光照射エネルギー量は3.5J/cm2とした。画像形成の結果は表に示すように、マゼンタ単層およびシアントナーO層上にマゼンタトナーT層が積層されている部位で激しいポイドが発生し、画像形成結果は満足できないものであった。
【0247】
なお、この実施例での各トナーのρ/E・S値は、マゼンタトナーTが約833と上記範囲を満たしていないが、他のカラートナーは2499〜3331で上記範囲内であった。
【0248】
実施例、比較例1、2に関しては、画像形成に用いたトナーの内で、1色でも関係式(4)を満たさないカラートナーが存在すると、その色と関連する画像形成部が不良となる虞があること、及び、上記関係式(4)の関係を満たしていれば、現像順序に関わりなく、定着性確保とボイドなどの画像欠陥の発生を抑制できることを示唆していると推察できる。
【0249】
次にρ/E・Sと現像順序の関係が画像形成特性に与える影響を検討した。先に例示した実施例で使用したトナーを用い、その現像順序を変えて画像形成を行い、その画質の差を詳細に検討した。
【0250】
なお、表に示すように、用いたトナーOの隠蔽度は18、ρ/E・S値は3009.5である。トナーNの隠蔽度は16、ρ/E・S値は3157.1である。トナーMの隠蔽度は14、ρ/E・S値は3330.6である。
【0251】
【表6】
Figure 0003894024
【0252】
色再現域の広さを議論する際には、黒トナーは不必要であるため、上記3トナーを用いた画像形成を行った。その評価結果を表に示す。この結果は、色再現域が最も広い結果となった実施例での色再現域を1とした場合の比率で示している。
【0253】
から、記録媒体に近い側から順に上層へとρ/E・S値が大きくなる配列、隠蔽度が小さくなる配列をとるトナー積層順が色再現域確保に有利であることが確認できる。
【0254】
なお、本発明者等は、隠蔽度、ρ/E・S値の異なる他のトナーを組合せて評価した結果においても、概ね記録媒体に近い側に相対的に高い隠蔽度のトナーを配列した場合、また、隠蔽度の差がさほど大きくない場合では、記録媒体に近い側のトナーのρ/E・S値が相対的に小さく、記録媒体から離れる側のトナーのρ/E・S値を相対的に大きくなるように配列した場合に、広い色再現域が得られることを確認している。
【0255】
本発明者等は、この様な結果が得られた要因として、以下のように推察した。
【0256】
まず、記録媒体に近いトナー(下層のトナー)のρ/E・S値が小さいということは、このトナーからなるトナー層が他のトナー層より相対的に溶融し易い特性を有していることを示している。上部より照射される光エネルギーの多くは、上部のトナー層に吸収されるため、ρ/E・S値が小さいとはいえどもこのトナー層の溶融は上部トナー層の溶融に比べ高粘度な状態に留まるものの、記録媒体に近い側から順に上層へとρ/E・S値が小さくなる、逆の配列を取っている場合に比べ、この様な配列の方が上層のトナー層と下層のトナー層の溶融状態差が相対的に小さくなる。そして、このことで、各色トナーの溶融状態での混合が促進され、相対的に色再現域が広がる。
【0257】
次ぎに、隠蔽度が高いトナー層領域が上層にあると、その層で入射光が反射されるため、その下の層の色調が顕れ難くなる。このため、上層の色調に引きずられた色再現域の狭い画像となる。
【0258】
以上のことから、逐次現像一括定着方式により画像形成を行う際には、以下の条件を満たすことが望ましいことが確認できる。
【0259】
1) 基準温度(例えば125℃)におけるトナーの溶融粘度ρ、このトナーのPAS強度Sと定着工程での光エネルギーEとの間で前記関係式(5)を満たすトナーで各色トナーを構成することで、満足できる定着性、画像形成性を得ることができる。
【0260】
2)更に、記録媒体上のトナー積層順を、記録媒体に近い側から順に上層へとρ/E・S値が大きくなる配列、隠蔽度が小さくなる配列をとるトナー積層順が色再現域確保に有利となる。
【0261】
なお、前述した逐次現像逐次定着方式を採用する場合でも、光エネルギー照射の過程で、上層のトナー層の隠蔽度が低く設定することにより下層のトナー画像層も再溶融し易くなる。そして、上層、下層のトナー層が相対的に均質に混合され、色再現域を拡大させることができる。
【0262】
また、本発明者等は、特開2001−102603号公報、特開2001−392759号公報などに示すように、用いる赤外光吸収剤がバインダ樹脂に不溶な場合、トナー中の該赤光吸収剤の粒度(比表面積)を制御することで、トナーのPAS強度を制御できることを見出している。
【0263】
実施例を示しての例示は行わないが、関係式(1)〜(5)を満たすための制御手法として、該赤外光吸収剤の粒度(比表面積)制御を行う手法は、トナーの溶融特性や電気抵抗、帯電特性など、諸特性に及ぼす影響を最小限に止めながら、PAS強度を調整する手法として極めて有効な手法である。
【0264】
すなわち、赤外光吸収剤の少なくとも1種類がバインダ樹脂に対して不溶の固体であり、かつ、第n回目の現像に用いられるトナーに添加されている赤外光吸収剤の比表面積が上記関係式(6)を満たすことで各トナーに処方される赤外光吸収剤の材質、添加量を大きく変えることなく、各トナーの光吸収特性等を簡易に制御できる。
【0265】
最後に、前述した実施例で用いた測定手法を以下にまとめて説明する。
【0266】
[定着性評価]
定着性の評価は、テープ剥離試験により行った。テープ剥離試験は定着画像を粘着テープ(スコットメンディングテープ;3M社製)を軽く貼り、円柱ブロックを円周方向に転がすことにより、250g/cmの線圧にて該テープを画像面に密着させ、しかる後、該テープを引き剥がす試験法であり、下式で表されるテープ引き剥がし前後の画像の光学濃度比を定着率とした。定着率70%程度以上を可とした。
【0267】
定着率(%)=(テープ剥離後の画像濃度/テープ剥離前の画像濃度)×100
ここで、定着画像の光学濃度は、分光測色計(CM−3700d;ミノルタ社製)を使用して波長域400nm〜800nmの反射光を測定し、吸光度が最も大きくなる波長での吸光度値を光学濃度とした。
【0268】
なお、記録媒体上でのトナー量が異なることによって定着率が変化するため、単層のトナー層の場合については、トナー層重量量が0.70±0.05g/cm2の範囲であるトナー定着率(%)を求めた。
【0269】
なお、積層したトナー層について検討した場合のトナー層重量は、前記実施例中の記載で別途、説明している。
【0270】
[溶融粘度]
溶融粘度と溶融弾性率はコーン・プレート型動的粘弾性測定装置「MR・3ソリキッドメータ」((株)レオロジ社)を用い、窒素雰囲気中で昇温速度10℃/minで50℃から250℃まで昇温測定して得た値である。なお、この際の周波数は0.5Hzとした。
【0271】
[PAS強度]
トナーをステンレス皿に取り、PAS測定ユニット(Photoacustic Model 300,MTEC社製)をセットした後、10ml/s、10sの条件で雰囲気をHeガスに置換した後、FT・IR、Mattson社製)を用いて測定した。積分回数は200回として赤外PASスペクトルを求め、この赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分してPAS強度を求めた。基準物質としてパウダー状のカーボンブラックを用い、このPAS強度を基準1として、トナーのPAS強度を相対強度で示した。
【0272】
[隠蔽度]
下記組成の塩化ビニル酢酸ビニルコポリマ溶液95gに顔料(赤外光吸収剤)5gを混合し、ペイントシェーカーにて1時間分散し、作製した顔料分散液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にバーコータを用いて、均一に塗布し、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにする。
【0273】
塩化ビニル酢酸ビニルコポリマ溶液の組成(1)塩化ビニル酢酸ビニルコポリマ :12g(2)Ethylacetate :19g(3)MIBK :25g(4)MEK :39g乾燥後のフィルムに顔料分散液を塗布したサンプルをJIS K5101の隠蔽率試験紙法に基づき評価する。
【0274】
JIS K5101に規定された白紙(反射率80±1)、黒紙(反射率2以下)を用い、上記サンプルをそれぞれの紙に密着させ、サンプル側より分光測色計(CM-3700d、ミノルタ製)でそれぞれの明度を測定し隠蔽度を求めた。
【0275】
隠蔽度(%)=(LB/LW)×100
LB:黒紙上の明度
LW:白紙上の明度
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0276】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記4) 少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むフラッシュ定着用のカラートナーを用いて画像形成を行う画像形成方法であって、第1のトナーを用いて現像後、順次、第2から第nのトナーを用いて現像する工程をn回繰返して記録媒体上に1〜n層のトナー層を形成した後、一括でフラッシュ定着を行う逐次現像一括定着方式を採用し、上記記録媒体上に形成されるn層のトナー層を該記録媒体に近接しているトナー層から順次、1〜n層と順序付けした場合に、任意のY層目のトナー層を形成するトナーのPAS強度SY及び該トナーの基準温度における溶融粘度ρYとフラッシュ光のエネルギーEとが関係式(4)を満たすフラッシュ定着工程を含む、ことを特徴とする画像形成方法。
【0277】
4000≧ρY/SY・E≧1000 ………(4)
【0278】
(付記5) 少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むフラッシュ定着用のカラートナーを用いて画像形成を行う画像形成方法であって、第1のトナーを用いて現像後、順次、第2から第nのトナーを用いて現像する工程をn回繰返し記録媒体上に1〜n層のトナー層を形成した後、一括でフラッシュ定着を行う逐次現像一括定着方式を採用し、上記記録媒体上に形成されるn層のトナー層を該記録媒体に近接しているトナー層から順次、1〜n層と順序付けした場合に、任意のY層目のトナー層を形成するトナーのPAS強度SY及び該トナーの基準温度における溶融粘度ρYとフラッシュ光のエネルギーEとが関係式(5)を満たすフラッシュ定着工程を含む、ことを特徴とする画像形成方法。
【0279】
【数4】
Figure 0003894024
(5)
【0280】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明の画像形成方法によれば、トナーを単層或いは積層状態に現像した場合のいずれにも対応して、記録媒体上に好適なフラッシュ定着の画像形成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例であるカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図である。
【図2】1つの赤外光吸収剤を添加する従来のカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図である。
【図3】一例として示す2成分現像方式の画像形成装置の一部概要を模式的に示す図である。
【図4】各カラートナーについて、E・S値と定着率との関係を示す図である。
【図5】各カラートナーについて定着エネルギー(J/cm2)と定着率(%)の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 画像形成装置
TO トナー
CA キャリア

Claims (2)

  1. 少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むフラッシュ定着用のカラートナーを用いて画像形成を行う画像形成方法であって、
    第1のトナーを用いて現像後、順次、第2から第nのトナーを用いて現像する工程をn回繰返して記録媒体上に1〜n層のトナー層を形成した後、一括でフラッシュ定着を行う逐次現像一括定着方式を採用し、上記記録媒体上に形成されるn層のトナー層を該記録媒体に近接しているトナー層から順次、1〜n層と順序付けした場合に、任意のY層目のトナー層を形成するトナーのPAS強度SY及び該トナーの基準温度における溶融粘度ρYとフラッシュ光のエネルギーEとが関係式(4)を満たすフラッシュ定着工程を含む、ことを特徴とする画像形成方法。
    4000≧ρY/SY・E≧1000 ………(4)
  2. 少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むフラッシュ定着用のカラートナーを用いて画像形成を行う画像形成方法であって、
    第1のトナーを用いて現像後、順次、第2から第nのトナーを用いて現像する工程をn回繰返し記録媒体上に1〜n層のトナー層を形成した後、一括でフラッシュ定着を行う逐次現像一括定着方式を採用し、上記記録媒体上に形成されるn層のトナー層を該記録媒体に近接しているトナー層から順次、1〜n層と順序付けした場合に、任意のY層目のトナー層を形成するトナーのPAS強度SY及び該トナーの基準温度における溶融粘度ρYとフラッシュ光のエネルギーEとが関係式(5)を満たすフラッシュ定着工程を含む、ことを特徴とする画像形成方法。
    Figure 0003894024
    (5)
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