JP3680752B2 - フラッシュ定着用のカラートナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真法を利用した画像形成方法に関し、特にフラッシュ光からの光エネルギーを利用して記録媒体上にカラートナーを定着する画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法は、複写機、電子写真ファクシミリ、電子写真プリンタ等の画像形成装置において広く使用されている技術である。電子写真法として、例えば米国特許第2297691号等に記載されるように、光導電性絶縁体を用いた方式が一般に使用される。この方式では、コロナ放電や電荷供給ローラによって帯電させられた光導電性絶縁体上にレーザ、LED等の光を照射することによって、静電潜像を形成する。次に、トナーと称される顔料や染料により着色した樹脂粉末(着色剤と称す)を上記静電潜像に静電的に付着させて現像を行い、可視化されたトナー画像を得る。続いて、このトナー画像は紙やフィルム等の記録媒体上に転写される。但し、このときのトナー画像は記録媒体上に単に載っているだけの粉像であるため、これを記録媒体上に定着させる必要がある。そこで、最後の工程として、熱、圧力、光等によってトナーを記録媒体上で溶融した後に固化して、最終的に記録媒体上に定着したトナー画像を得ている。
【0003】
上記のようにトナーの定着とは、一般に熱可塑性樹脂(以下、結着樹脂と称す)を主成分とする粉体であるトナーを熱により溶融して記録媒体上に固着することである。そのための方式として、トナー画像が形成された記録媒体を直接、ローラによって加熱・加圧するヒートロール方式と、キセノンフラッシュランプ等のフラッシュ光を照射することによりトナーを記録媒体上に定着させるフラッシュ定着方式がよく知られている。
【0004】
ここで、フラッシュ定着方式は、キセノンフラッシュランプ等の放電管の閃光(フラッシュ光)からの光エネルギーを熱エネルギーに変換することよって、トナーを溶融し、記録媒体上に定着させる方式である。
【0005】
このフラッシュ定着方式は、前記ヒートロール方式と比較して、画像形成装置に採用されたときには次のような特長を有している。
(1)非接触定着であるため、光導電性絶縁体層上に形成されたトナー粉像の解像度を劣化させない。(2)電源投入後のウォームアップ時間を必要とせず、クイックスタートが可能である。(3)のり付き紙、プレプリント紙、厚さの異なる紙など、記録媒体の材質や厚さによる定着への影響が少ない。
【0006】
フラッシュ定着によりトナーが記録媒体上に定着される過程は次の通りである。放電管から発せられたフラッシュ光は、記録媒体上のトナー画像(粉像)に吸収され、熱エネルギーに変換される。これにより、トナーは温度上昇して軟化溶融し、記録媒体に密着する。フラッシュ光の発光終了後、温度は低下し、溶融したトナーは固化して定着とたトナー画像となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えばフラッシュ定着用の放電管として一般に用いられているキセノンフラッシュランプは、波長400nm〜1400nmの広い範囲にわたって発光し、特に、400nm〜800nmの可視領域における発光強度に比べて800nm〜1400nmの近赤外波長領域における発光強度は顕著に強い。このため、フラッシュ定着が行われるトナーは近赤外波長領域の光に対して光吸収性が高いことが要求される。
【0008】
しかし、トナーの主成分である結着樹脂は、一般に可視及び近赤外領域における光吸収性が極めて低い。また、着色剤が黒色である場合には可視及び近赤外領域に亘って高い光吸収性を示す。しかし、着色剤がイエロー、シアン、マゼンタ、レッド、ブルー、グリーンといったカラートナーの着色剤である場合には、可視領域では光吸収性を示すが、近赤外領域での光吸収性は低い。
【0009】
そのために、結着樹脂とカラー用着色剤とを含むカラートナーは、黒色トナーを定着させる程度のフラッシュ光で定着させることが困難である。よって、カラートナーを定着させるためには強い光エネルギーを供給することが必要となってしまう。
【0010】
そこで、カラートナーをフラッシュ光で記録媒体上に定着させることに関して、光エネルギーを低減するために、キセノンフラッシュランプの発光波長領域で光吸収性を有する赤外光吸収剤を添加する技術が提案されている。例えば、特開昭61−132959号公報、特開平6−118694号公報、特開平7−191492号公報、特開2000−147824号公報では、アミニウム系化合物やジイモニウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物をフラッシュ定着用のトナーに含有させることについて開示している。また、特開平6−348056号公報では、アントラキノン系、ポリメチン系、シアニン系の赤外光吸収剤を含有する樹脂粒子をトナー表面に付着させる技術を開示している。さらに、特開平10−39535号公報には、酸化スズ、酸化インジウムを含有させることによりフラッシュ光によるカラートナーの定着性を向上させる技術が開示されている。
【0011】
上記で開示されている技術は、カラートナーへの赤外光吸収剤を添加することにより光エネルギーから熱エネルギーへの変換を向上させ、主成分である結着樹脂の溶融性を増加させようとするものである。
【0012】
しかし、上記赤外光吸収剤の添加のみによっては、未だ十分に結着樹脂を溶融することができていない。また、好ましい赤外光吸収剤として使用される上記アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物等はそれ自体が有色であり、多量に使用すると定着後のカラー画像の彩度、色相等に悪影響を及ぼす。そのために、赤外光吸収剤の使用量はできるだけ少ない方が好ましい。
【0013】
以上のように従来技術において、カラートナーをフラッシュ光で確実に定着させるために、未だ大きな光エネルギーが必要となっている。
【0014】
本発明は、前述したような実情に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の主な目的は使用する光エネルギーの低減を図ると共に、フラッシュ定着用のカラートナーを用いた優れた画像形成方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含みフラッシュ光により記録媒体上に定着されるカラートナーであって、光音響分光(PAS)分析測定に基づいて得られる赤外PASスペクトルを、1000〜2000nmの範囲で積分したPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲にあるように構成したカラートナーを用いることにより好ましく達成される。
【0016】
本発明に言う、光音響分光(PAS)分析法はPhotoacoustic Spectroscopyのことであり、このPAS分析法は試料に断続光(フラッシュ光)を照射して試料内に生じた周期的な熱変化を最終的に圧力変化として検出する方法である。この検出法はin−situ(その場)での測定が可能である。
【0017】
本発明で用いるPAS分析法について、より具体的に説明すれば、先ず、変調された赤外光が試料によって吸収されると、入射光に対応した熱が発生する。この発生した熱は、周囲の気体層に圧力変化を起こすので、この変化を高感度マイクロホンにより検出する。そして、これをフーリエ変換することによって、通常の赤外吸収スペクトルと同様のスペクトルを得るものである。
【0018】
本発明は、前記PAS分析法による測定結果を用いるものであり、PAS分析法に基づいて得た赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分したカラートナーのPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲にあるカラートナーは優れた定着性を示すことを見出したものである。このようなカラートナーは、従来の黒色トナーのみで画像定着を行うフラッシュ光のエネルギーと同等である低い光エネルギーでの定着が可能となる。
【0019】
なお、上記PAS強度が0.01未満のときはカラートナーの赤外領域での光吸収が低く、光−熱変換効率が低いので十分な定着性が得られない。また、上記PAS強度が0.2より大きいときには十分な定着性が得られるものの、PAS強度を増加させるために赤外光吸収剤を多量に必要とすることになり、前述したような定着後のカラー画像の彩度を低下させる等の悪影響を及ぼす。
【0020】
また、請求項3に記載される如く、請求項1または2に記載の画像形成方法において、カラートナーの前記PAS強度は、同時に定着される黒色トナーのPAS強度に対して0.2〜0.9倍に設定されている、構成とすることが好ましい。
【0021】
前記の構成によれば、画像形成装置で記録媒体上に黒色トナーと同時に定着されるカラートナーが良好な定着性を示す。すなわち、カラートナーと黒色トナーのPAS強度の差を所定範囲となるようにすることで、カラートナーと黒色トナーの定着性を同等レベルにすることができる。
【0022】
なお、カラートナーのPAS強度が黒色トナーに対して0.2倍未満であるようなときは、黒色トナーに良好な定着性を与えるエネルギーでフラッシュ定着させた場合、カラートナーは定着不良となる。また、その逆にカラートナーに良好な定着性を与えるエネルギーでフラッシュ定着させた場合、黒色トナーはフラッシュ光のエネルギーは過剰であり、溶融し過ぎによるボイドが発生して、画像品位が低下してしまう。このように、カラートナーのPAS強度が黒色トナーに対して、0.2倍未満であるときにはカラートナーと黒色トナーとの同時に満足させることは困難である。
【0023】
また、カラートナーのPAS強度が黒色トナーに対し0.9倍よりも大きいときにはカラートナーと黒色トナーの定着性を同時に満足できるものの、PAS強度を向上させるために添加する赤外光吸収剤が多量の場合であり、カラー画像の彩度が低下する等の悪影響が出る。
【0024】
また、請求項4に記載される如く、請求項1から3のいずれかに記載の画像形成方法において、カラートナーの前記PAS強度は、同時に定着される他のカラートナーのPAS強度に対して0.2〜5倍に設定されている、構成とすることが好ましい。
【0025】
前記の構成によれば、画像形成装置で記録媒体上に同時に定着される2種以上のカラートナーが良好な定着性を示す。すなわち、同時に使用される2種以上のカラートナーのPAS強度差を所定範囲となるようにすることで、各カラートナーの定着性を同等レベルにすることができる。
【0026】
ここで、1のカラートナーのPAS強度が他のカラートナーに対し、0.2倍未満であるときには、他のカラートナーに良好な定着性を与える定着性を与えるエネルギーでフラッシュ定着させた場合、そのカラートナーは定着不良となる。また、その逆にあるカラートナーに良好な定着性を与えるエネルギーでフラッシュ定着させた場合、他のカラートナーはフラッシュ光のエネルギーは過剰であり、溶融し過ぎによるボイドが発生して、画像品位が低下してしまう。このように、カラートナーのPAS強度が他のカラートナーに対して、0.2倍未満であるときにはカラートナーと他のカラートナーとの同時に満足させることは困難である。また、あるカラートナーのPAS強度が他のカラートナーに対し5倍よりも大きいとき、そのカラートナーと他のカラートナーの定着性を同時に満足させることは不可能となる。
【0027】
また、請求項5に記載の如く、請求項1から4のいずれかに記載の画像形成方法において、波長800〜2000nmの範囲で、吸収波長スペクトルが異なる少なくとも2つ以上の赤外光吸収剤を含有する構成とすることができる。
【0028】
前記の構成によれば、波長800〜2000nmの範囲でのトナーの吸光度を上げることができ、これによりカラートナーのPAS強度を向上でき、良好な定着画像を実現できる。前述したような赤外光吸収剤は特定範囲で吸収ピークがあるので、1つの赤外光吸収剤の量を増やしても照射された光エネルギーの利用効率が悪く、さらに1つの赤外光吸収剤を多量に使用すると前述したような定着画像の彩度不良等の問題を生じる。吸収波長スペクトルが異なる2種以上の赤外光吸収剤を併用することで、効率的に照射された光エネルギーを利用でき、1つの赤外光吸収剤を多量に使うことによる定着画質の低下という問題も低減できる。
【0029】
前記赤外光吸収剤として、例えば波長800〜1100nmの範囲に吸収ピークを有する第1の赤外光吸収剤(A)と、波長1100〜2000nmの範囲に吸収ピークを有する第2の赤外光吸収剤(B)とを併用してする構成とすることができる。
【0030】
そして、請求項1に記載の如く、少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むカラートナーにフラッシュ光を照射して記録媒体上に定着させる工程を含む画像形成方法であって、前記カラートナーの光音響分光(PAS)分析測定に基づいて得られる赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分したPAS強度(S)と、フラッシュ光のエネルギー(E)とが、次式(1)の関係にあるフラッシュ定着工程を含む画像形成方法として上記目的を達成することができる。
【0031】
0.03≦E・S≦0.15 ……(1)
請求項1に記載の発明によれば、良好な定着性を有し、かつボイドの発生が少ないカラーの画像形成を実現できる。
【0032】
前記式(1)は、フラッシュ光のエネルギーが高い場合はカラートナーのPAS強度が低くても良好に定着させることができ、またフラッシュ光エネルギーが低い場合にはPAS強度が大きければ良好な定着性が得られることを意味している。
【0033】
つまり、前記積E・Sが0.03未満であると定着不良となり、0.15を越えるとカラートナーに対して、過剰なエネルギー付与することになるため、ボイドが発生して、良好な定着画像が得られない。すなわち、本発明者等は前記式(1)の条件を満たすようにフラッシュ定着を実行すると光エネルギーを低減しつつ、良好な定着画像を得ることができることを見出したものである。このような条件を満足する画像形成を実現するには、前記のカラートナーを用いることが望ましい。
【0034】
また、前記のカラートナーを用いることにより、カラートナー像をフラッシュ光による露光で記録媒体上に定着させる好適なフラッシュ定着画像形成方法を実現でき、この方法ではフラッシュ光のエネルギーを0.5〜2.5J/cm2とし、発光時間を500〜3000μ秒とすることができる。このように従来と比較して低い光エネルギーでも安定した定着性で、ボイドの発生が少ないカラー画像形成を行うことができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明におけるフラッシュ定着用のカラートナーについてより詳細に説明する。本発明におけるフラッシュ定着用のカラートナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤及び赤外光吸収剤を含んでいる。本カラートナーは、光音響分光(PAS)分析測定に基づいて得られた赤外PASスペクトルを800から2000nmの範囲で積分したPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲内にあることが好ましい。このようなカラートナーは電子写真方式を採用する複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置で好適に用いることができる。
【0036】
ここで、トナーのPAS強度は例えば次のように求めることができる。トナーをステンレス皿に取り、PAS測定ユニットをセットした後、10ml/s、10sの条件で雰囲気をHeガスに置換し、所定のフーリエ変換機能を備えた装置としてFT−IR(Mattson社製)を用いて測定する。積分回数は200回として赤外PASスペクトルを求め、この赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分してPAS強度を求める。基準物質として広い波長領域で光吸収性の高いカーボンブラックを用い、カーボンブラックのPAS強度を基準1として、カラートナーのPAS強度を相対強度で求める。
【0037】
前記赤外光吸収剤は画像形成装置内の定着部において、フラッシュ光の光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有している。この赤外光吸収剤は本来、結着樹脂の溶融を促進するために添加されている。一般的な赤外光吸収剤は概ね800〜2500nmの範囲の波長光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する。例えば、本実施例のカラートナーに好適に用いることができるナフタロシアニン化合物の場合は凡そ800〜1100nmの範囲の赤外光を吸収する。
【0038】
本発明者等は、800〜2500nm、好ましくは800〜2000nmの広い波長範囲で吸収能がある赤外光吸収剤を探索すべく鋭意研究を重ねた。しかし、広い波長範囲で吸収能があるような単一の赤外光吸収剤を見出すことはできなかった。すなわち、1つの赤外光吸収剤を用いる場合、多量に添加して非常に高い濃度となるようにしなければカラートナーに十分な定着性を付与できないとの結論に至った。
【0039】
しかし、この広い波長範囲を分割すること、例えば波長800〜1100nmの範囲に吸収ピークを有する第1の赤外光吸収剤(A)と、波長1100〜2000nmの範囲に吸収ピークを有する第2の赤外光吸収剤(B)との併用により、赤外光吸収剤の濃度を低く抑えながら従来と比較して低い光エネルギーでカラートナーの定着性を向上させることができることを見出した。
【0040】
そして、このようなカラートナーは、赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分したPAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲内となる。
【0041】
また、カラーの画像形成を行う画像形成装置では定着部で黒色トナーとカラートナーとが同時に定着されることになる。この場合、カラートナーの前記PAS強度を同時に定着される黒色トナーのPAS強度に対して0.2〜0.9倍に設定することで、フラッシュ定着に使用する光エネルギーを低減しつつ、カラートナー及び黒色トナーを効率よく良好に定着させることができる。
【0042】
さらに、カラーの画像形成を行う画像形成装置では定着部で、ある色のカラートナー(例えば赤色)と他の色のカラートナー(例えば青色)とが同時に定着されることになる。この場合には、1のカラートナーの前記PAS強度を同時に定着される他のカラートナーのPAS強度に対して0.2〜5倍に設定することで、フラッシュ定着に使用する光エネルギーを低減しつつ、各カラートナーを効率よく良好に定着させることができる。
【0043】
上記のようなPAS強度について所定関係を有するトナーは、波長800〜2000nmの範囲で吸収波長スペクトルが異なる少なくとも2つ以上の赤外光吸収剤を含有する本発明におけるカラートナーを適宜調整して製造することができる。
【0044】
図1は本発明の一例であるカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図であり、図2は1つの赤外光吸収剤を添加する従来のカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図である。
【0045】
図1では、波長800〜1100nmの範囲に吸収ピークを有する第1の赤外光吸収剤(A)と、波長1100〜2000nmの範囲に吸収ピークを有する第2の赤外光吸収剤(B)との両方が含有されているので、2つの吸収ピークが形成される。よって、赤外光を効率よく利用していることになる。
【0046】
一方、図2に示す従来のカラートナーは赤外領域で1つの吸収ピークが形成されるだけであるので、赤外光を効率よく利用することができない。よって、この1つのピークを高くするため、多量の赤外光吸収剤を添加することが必要となっていた。
【0047】
本発明におけるカラートナーで用いることができる第1の赤外光吸収剤(A)としては例えばナフタロシアニン系化合物を最も好適な材料として用いることができる。また、第2の赤外光吸収剤(B)としては例えばアミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物を最も好適な材料として用いることができる。
【0048】
ナフタロシアニン系化合物は、下記一般式で表される。
【0049】
【化1】
(式中、Mは金属、酸化金属又はハロゲン化金属を表わし、R1からR3のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表わす)
また、アミニウム系化合物は、下記一般式で表される。
【0050】
【化2】
(式中、R1からR8のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表わし、X−は陰イオンを表わす)
また、ジイモニウム系化合物は、下記一般式で表される。
【0051】
【化3】
(式中、R1からR8のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表わし、X−は陰イオンを表わす)
さらに、前記以外の赤外光吸収剤としてポリメチン系化合物、シアニン系化合物、アントラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、ジチオール−ニッケル錯体や、アゾコバルト錯体の金属錯体化合物、スクワリリウム系化合物、酸化スズ、酸化イッテルビウム、リン酸化イッテルビウム等を使用することもできる。
【0052】
上記に例示した赤外光吸収剤は2種類以上を併用して用いることが好ましく、さらに、波長800nm〜1100nmの範囲に吸収ピークを持つ赤外光吸収剤と、波長1100nm〜2000nmの範囲に吸収ピークを持つ赤外光吸収剤を併用することが特に好ましい。
【0053】
本実施例のカラートナーで用いる赤外光吸収剤の添加量は、トナー100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。ここでの添加量とは、併用する赤外光吸収剤の合計添加量である。
【0054】
前述したように、赤外光吸収剤の添加量が多くなると、定着後のトナー画像の色相が着色剤本来の色相から大きくずれ、画像の彩度が低下するなどの問題が生じる。しかし、本発明におけるカラートナーでは使用する赤外光吸収剤の量を従来よりも抑制することができる。すなわち、1つの赤外光吸収剤で十分な赤外光吸収能を得ようとすると多量の添加が必要である。その為に前述した定着後の画像劣化の問題も招来してしまう。しかし、吸収波長スペクトルが異なる2種以上の赤外光吸収剤を併用することで、1つの赤外光吸収剤を用いた場合の総量よりも少ない合計量で総合的に赤外光吸収能を向上させることができる。さらに異なる赤外光吸収剤は色もことなるので、定着後の画像劣化の問題も抑制できる。
【0055】
本発明におけるカラートナーに含有される結着樹脂として、従来の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ガラス転移温度40〜80℃、軟化点80〜140℃のエポキシ樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂等を単独もしくは混合して使用することができる。必要により、この結着樹脂にワックス(例えば、カルナバ、モンタン、ポリエチレン、アマイド、ポリプロピレン等)を添加してもよい。
【0056】
本実施例のカラートナーに含有させることができる着色剤については、特に限定はなく、公知の着色剤を用いることができる。例えば、モノアゾ系赤色顔料、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料、アントラキノン染料、ニグロシン系染料、第4級アンモニウム塩、モノアゾ系の金属錯塩染料等を使用することができる。また、これらを適宜、組合せて使用してもよい。
【0057】
着色剤として具体的には、例えば、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、食用赤色2号(アマランス、C.I.No.16185)、食用赤色3号(エリスロシン、C.I.No.45430)、食用赤色40号(アルラレッドAC、C.I.No.16035)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.No.16255)、食用赤色104号(フロキシン、C.I.No.45410)、食用赤色105号(ローズベンガル、C.I.No.45440)、食用赤色106号(アシドレッド、C.I.No.45100)、食用黄色4号(タートラジン、C.I.No.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.No.15985)、食用緑色3号(ファーストグリーンFCF、C.I.No.42053)、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.No.42090)、食用青色2号(インジゴカーミン、C.I.No.73015)等を使用することができる。
【0058】
上記着色剤の含有量は、トナー100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0059】
前述したように、本発明のカラートナーでは、カラートナー全体を100重量部とした場合に、例えば結着樹脂は75〜95重量部、着色剤は0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、赤外光吸収剤は0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜3重量部を含むように構成することが推奨される。
【0060】
さらに、本発明におけるカラートナーには、帯電性付与や異なる温湿度環境での帯電量変化を小さくすることを目的として帯電制御剤を添加してもよい。帯電制御剤としては、無色ないし淡色のものが推奨される。
【0061】
帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、サリチル酸化合物、ホウ酸系錯体、カルボン酸系化合物など、公知の正帯電性、負帯電性の帯電制御剤を使用することができる。
【0062】
本発明におけるカラートナーは、従来と同様な製造法により製造することができる。少なくとも、結着樹脂、着色剤、波長800〜2000nmの範囲で吸光度特性が異なる少なくとも2種以上の赤外光吸収剤を準備し、さらに必要により帯電制御剤、ワックスを添加して原材料とする。この原材料を例えば、加圧ニーダ、ロールミル、押出機などにより混錬して均一分散させる。その後、例えば粉砕機、ジェットミルなどにより、粉砕、微粉砕し、風力分吸機などにより分級して、所望の粒度分布のカラートナーを得る。
【0063】
なお、混錬の際、例えば特開平7−191492号公報に開示されるように、赤外光吸収剤と帯電制御剤を別々の樹脂に混錬した後、この両者を再度混錬する方法を採用してもよい。
【0064】
さらに、本発明におけるカラートナーの流動性を向上させるために、無機微粒子(以下、外添剤)をトナー表面に被覆してもよい。ここで、使用できる外添剤としては、粒子径が2nm〜500nm、好ましくは5nm〜200nmの範囲にあるものである。また、BET法による比表面積は20m2/g〜500m2/gであることが好ましい。
【0065】
本発明におけるカラートナーに混合される外添剤の割合は、トナー100重量部に対して、0.1〜5重量部であり、好ましくは0.1〜2.0重量部である。このような外添剤としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸珪素、窒化珪素等を微粒子化したものを使用することができる。これらの中では、シリカ微粒子を用いることが好ましい。なお、外添剤はその表面を予め疎水処理しているものを用いることがより好ましい。
[実施例]
以下、実施例を示して本発明の画像形成方法をより具体的に説明する。
【0066】
本発明に用いるカラートナーとして実施例1〜7で示すカラートナーを製造した。上記赤外光吸収剤を単独で使用した場合や、添加量を変更した比較例についても示している。
(実施例1)
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製) 91重量部
赤外光吸収剤(A):ナフタロシアニン化合物(YKR−5010;山本化成社製) (最大吸収波長880nm) 1重量部
赤外光吸収剤(B):アミニウム塩化合物(NIR−AM1;帝国化学産業社製) (最大吸収波長1550nm) 1重量部
着色剤:銅フタロシアニン顔料(Lionol Blue ES;東洋インキ製造社製) 5重量部
負帯電制御剤:E−89(オリエント化学社製) 2重量部
以上の材料をヘンシェルミキサーへ投入し、予備混錬を行った後、エクストルーダにより混錬し、ついでハンマーミルにて粗粉砕した。さらに、これをジェットミルにて微粉砕し、気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が約8.5μmの青色トナーを得た。次いで、外添剤として疎水シリカ微粒子(H2000/4;クラリアント社製)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサで外添処理を行い外添剤を表面に被覆させた青色トナーを得た。
【0067】
上記のように得た青色トナーについて、PAS強度を測定した。測定の手順は以下の通りである。青色トナーをステンレス皿に取り、PAS測定ユニット(Photoacustic Model 300,MTEC社製)をセットした後、10ml/s、10sの条件で雰囲気をHeガスに置換した後、FT−IR(Mattson社製)を用いて測定した。積分回数は200回として赤外PASスペクトルを求め、この赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分してPAS強度を求めた。基準物質としてカーボンブラックを用い、カーボンブラックのPAS強度を基準1として、カラートナーのPAS強度は相対強度で求めた。この青色トナーの相対強度は0.07であった。
【0068】
次ぎに、前記青色トナーを2成分現像剤に構成して、フラッシュ定着型のプリンタを使用して記録媒体上にトナー画像の形成を行い、その定着性を評価した。
【0069】
上記青色トナー4.5重量部とシリコーン系樹脂コートマグネタイトキャリア(関東電化工業社製)95.5重量部をボールミルで混合したものを使用して2成分現像剤を製造した。
【0070】
図3は、一例として2成分現像方式の画像形成装置1の一部概要を模式的に示す図である。本装置1は例えばプロセス速度1100mm/sの高速現像タイプであり、アモルファスシリコンからなる感光体10の周辺に、帯電器20、露光手段30、現像手段40、転写器50、クリーナ60、除電器70、キセノンフラッシュランプ81を有するフラッシュ定着器80等が配設されている。現像手段40は現像剤容器41、現像ローラ43及び図示せぬ攪拌羽等を含み、現像剤容器41内のトナー粒子TOとキャリア粒子CAを接触させて所定の帯電量がトナーに付与されるようになっている。
【0071】
本実施例では、画像形成装置としてキセノンフラッシュ定着方式を採用しているレーザプリンタ(F676D;富士通社製)を用いて、フラッシュランプに印加するバイアス電位を変位させた。これにより、フラッシュランプから発する光エネルギーを記録媒体(用紙)の単位面積あたりで変化させることができる。ここでは、1.8J/cm2、発光時間1500μ秒の光エネルギーを付与し、青色トナーの粉像を用紙上で溶融してから固化し、定着画像を得た。この定着画像について定着性を評価した。
【0072】
定着性の評価は、テープ剥離試験により行った。テープ剥離試験は定着画像を粘着テープ(スコットメンディングテープ;3M社製)を軽く貼り、円柱ブロックを円周方向に転がすことにより、250g/cmの線圧にて該テープを画像面に密着させ、しかる後、該テープを引き剥がず試験法であり、下式で表されるテープ引き剥がし前後の画像の光学濃度比を定着率とした。定着率70%程度を可とした。
定着率(%)=(テープ剥離後の画像濃度/テープ剥離前の画像濃度)×100
実施例1における青色トナーの評価結果は90%と良好な定着性を示し、光エネルギーの過剰によるボイド発生も見られなかった。
【0073】
ここで、定着画像の光学濃度は、分光測色計(CM−3700d;ミノルタ社製)を使用して波長域400nm〜800nmの反射光を測定し、吸光度が最も大きくなる波長での吸光度値を光学濃度とした。
【0074】
なお、用紙上でのトナー量が異なることによって定着率が変化するため、定着率測定は用紙上のトナー量が0.70±0.05g/cm2の範囲であるトナー定着率(%)を求めた。
(実施例2)
カラートナーの材料構成を下記とした他は、実施例1と同様にして青色トナーを製造して、同様にPAS強度を求めた。実施例2の青色トナーのPAS強度は0.05であった。
【0075】
また、実施例1と同様の定着評価を行った結果、定着率80%で、ボイド発生のもない良好な定着性を示した。
(実施例3)
カラートナーの材料構成を以下とした他は、実施例1と同様にして青色トナーを製造して前記と同様にしてPAS強度を求めた。このトナーのPAS強度は、カーボンブラック1に対して0.02であった。
【0076】
また、実施例1と同様の定着評価を行った結果、定着率70%で、ボイド発生のもない良好な定着性を示した。
(比較例1)
カラートナーの材料構成を以下とした他は、実施例と同様に青色トナーを製造して前記と同様にしてPAS強度を求めた。この比較例1トナーのPAS強度は、カーボンブラック1に対して0.005であった。また、実施例1と同様の定着評価を行った結果、ボイドの発生はないが定着率が50%と低く、定着不良となった。
【0077】
これは、比較例1のトナーのPAS強度が0.005であり、実施例の各トナーと比較して格段に低く、同様のフラッシュ光を照射されているにも拘わらずそのエネルギー利用効率が悪いためと推測できる。
(比較例2)
カラートナーの材料構成を下記とした他は、実施例1と同様にして青色トナーを製造して、同様にPAS強度を求めた。比較例2のトナーのPAS強度は0.21であった。
【0078】
また、実施例1と同様の定着評価を行った結果、定着率が90%と高いが、ボイドが多量に発生して良好な定着性を得ることができなかった。
【0079】
この比較例2のトナーは2種類の赤外光吸収剤を併用するものであるが、その添加量が過多となるとトナーが溶融し過ぎてしまうことが分かる。
さらに、以下で示す実施例及び比較例は、画像像形成装置内で実際に定着される状況についても考慮したものであり、カラートナーと黒色トナーとを同時定着させた場合について説明する。
(実施例4)
黒色トナー(No.1黒色トナー)として下記に示すものを実施例1の青色トナーと同様に製造し、同様にPAS強度を求めた。本実施例4で製造した黒色トナーのPAS強度は0.1であった。
【0080】
これら実施例1の青色トナー及びNo.1黒色トナーを用い、実施例1の場合と同様に、この2種のトナーを用紙上で同時定着させる定着試験を行った。青色トナーのPAS強度は0.07であり、No.1黒色トナーのPAS強度は0.1である。黒色トナーのPAS強度に対する青色トナーの前記PAS強度は、0.7(=0.07/0.1)である。
【0081】
本実施例での定着率は、青色トナー90%、黒色トナー95%であり、どちらもボイド発生がない良好な定着性を示した。
[No.1黒色トナー]
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製) 88重量部
カーボン:(#25;三菱化学社製) 10重量部
負帯電制御剤:S−34(オリエント化学社製) 2重量部
(実施例5)
カラートナーとして実施例3で用いたPAS強度0.02(No.1黒色トナーに対して0.2)の青色トナーを用いた以外、実施例4と同様に黒色トナーを用いて評価した。本実施例での定着率は、青色トナー70%、黒色トナー95%であり、どちらもボイド発生がない良好な定着性を示した。
(参考例)
黒トナーとして、下記に示すNo.2黒色トナー(PAS強度0.13)、カラートナーとして実施例3で用いたPAS強度0.02(No.2黒色トナーに対して0.15)の青色トナーを用い、定着光エネルギーを2.5J/cm2に変更した以外、実施例4の場合と同様に評価した。その結果、定着率は青色トナー75%、黒色トナー95%であったが、黒色トナー側にボイドが発生して良好な定着性を得られなかった。
[No.2黒色トナー]
結着樹脂:ポリエステル樹脂(NCP−001J;日本カーバイド社製) 83重量部
カーボン:(#25;三菱化学社製) 15重量部
負帯電制御剤:S−34(オリエント化学社製) 2重量部
参考例で用いたNo.2黒色トナーは、No.1黒色トナーと比較して、PAS強度が大きい。よって、本実施例のカラートナー(青色)に好適な定着光エネルギーは黒色トナーの種類によっては強すぎる場合がある。
【0082】
すなわち、前述したように本発明者等は同時に使用されるカラートナーと黒色トナーの関係では、カラートナーの前記PAS強度は、同時に定着される黒色トナーのPAS強度に対して0.2〜0.9倍程度に設定されていることが好ましいことを確認した。また、赤色、緑色、マゼンタ、シアン、イエロー等、他の色のカラートナーにおいても同様の結果を得えることができた。
【0083】
また、ここでは実施例としては示さないが、本発明者等は前記実施例4及び5、並びに参考例と同様に、カラートナー同士の関係についても検討した。その結果、同時に使用される各カラートナーの前記PAS強度は、他のカラートナーのPAS強度に対して0.2〜5倍に設定されていることが好ましいことを確認している。
(比較例3)
黒色トナーとして、前記No.1黒色トナーを用いた。また、カラートナーとして実施例1で用いた青色トナー用いた。ただし、この青トナーに添加した赤外光吸収剤については、赤外光吸収剤(A)及び赤外光吸収剤(B)をそれぞれ、5重量部とし合計で10重量部まで増加させた。その他の条件は、実施例1の場合と同様にして青色トナーを製造した。この青色トナーのPAS強度は0.095(No.1黒色トナーに対して0.95)であった。
【0084】
これらのトナーを実施例4の場合と同様に評価した。その結果、定着率は青色トナー90%、黒色トナー90%であったが、青色トナーの定着画像の彩度が低下して、良好な画像が得られなかった。
【0085】
本比較例では、赤外光吸収剤が多量に添加されているので定着性は向上するが、有色である赤外光吸収剤が定着画像の彩度に悪影響があることが分かる。
以下でさらに示す実施例及び比較例は、実施例1のトナーを用いフラッシュ定着を行うの光エネルギー(定着エネルギー)を変更した場合について示している。
(実施例6)
フラッシュ光のエネルギーを0.5J/cm2、発光時間3000μ秒に変更した以外、前記実施例1の場合と同様にトナーの評価を行った。本実施例では、定着率70%で、ボイド発生もない良好な定着性を示した。
(比較例4)
フラッシュ光のエネルギーを0.4J/cm2、発光時間500μ秒に変更した以外、前記実施例1の場合と同様にトナーの評価を行った。本比較例では、定着率60%で、定着不良となった。本比較例では照射した光エネルギーが不足していると推測できる。
(比較例5)
フラッシュ光のエネルギーを3.1J/cm2に変更した以外、前記実施例1の場合と同様にトナーの評価を行った。本比較例ではボイドが発生し、良好な定着性が得られなかった。本比較例では照射した光エネルギーが過剰であると推測できる。
(比較例6)
フラッシュ光のエネルギーを1J/cm2に変更した以外、前記実施例3の場合と同様にトナーの評価を行った。本比較例ではボイド発生はないが、定着率が60%となり定着不良となった。本比較例では照射した光エネルギーが過剰であると推測できる。
(比較例7)
フラッシュ光のエネルギーを3J/cm2に変更した以外、前記実施例1の場合と同様にトナーの評価を行った。本比較例ではボイドが発生し、良好な定着性を得られなかった。本比較例では照射した光エネルギーが過剰であると推測できる。
【0086】
上記実施例6並びに比較例4〜7に示されるが、本実施例のカラートナーを用いると、フラッシュ光のエネルギーを0.5〜2.5J/cm2とし、発光時間500〜3000μ秒として、従来よりも定着エネルギーを低減したフラッシュ定着工程を実現できる。
【0087】
さらに、以下に示すように本発明者等はカラートナーについて、前記PAS強度(S)と、フラッシュ光のエネルギー(E)との積(E・S)に着目し、このE・S値が式(1)の条件を満たすように定着がなされていると優れたカラートナーの定着を実現できることも確認した。
【0088】
0.03≦E・S≦0.15 ……(1)
下記表1には、前述した実施例1〜6で示した良好なカラートナー及び問題のあった比較例カラートナーについて、E・S値を示す。また、このE・S値と定着率の関係を図4に示す。図4からE・S値が低く過ぎると定着不足となり、逆に高くなり過ぎるとボイドが発生することが確認できる。よって、ここからE・S値が上記式(1)の範囲にあることが好ましいことが確認できる。
【0089】
【表1】
実施例1〜6のカラートナーは上記式(1)の条件を満足していること(表1では評価で○にて示す)、その逆に各比較例のカラートナーは上記式(1)の条件を満足していないことが確認できる。
【0090】
なお、実施例4及び実施例5、並びに参考例のトナーは、黒色トナーと青色トナーを同時定着させた場合であるので、両トナーが良好な状態となる必要がある。よって、参考例のトナーは黒色トナーにボイドが生じているので評価は不可(×)である。
【0091】
さらに、以上示した実施例1〜3及び比較例1について、発光時間を1500μ秒とし、定着エネルギー(フラッシュ光のエネルギー)を変更したときの定着率(%)の様子を纏めて示したのが図5である。
【0092】
図5から、本実施例1〜3のカラートナーは、比較例トナーが定着不良となる1.75J/cm2より低い定着エネルギーでも高い定着性を得られることが確認できる。すなわち、本発明に係るカラートナーはフラッシュ定着での定着エネルギーを低減できるトナーであることが確認できる。
【0093】
上記実施例では本発明に係るカラートナーの一例として、青色及び黒色を示して、これらを製造し、定着試験を行った場合について説明した。しかし、本発明は青色に限らず、他の色、例えば赤色、緑色、マゼンタ、シアン、イエロー等の場合についても同様に定着用の光エネルギーを低減しつつ確実に定着を行うことができるトナーとして提供できる。
【0094】
また、前述した実施例では、2成分現像方式での定着試験を行ったが、本発明のカラートナーは磁性或いは非磁性の1成分トナーとして使用できることは言うまでもない。
【0095】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0105】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、請求項1記載の発明によれば定着させるための光エネルギーを低減できる画像形成方法として提供できる。このような画像形成方法では従来においては定着不良となる虞のあるような弱い光エネルギーでも確実に定着させることができる。赤外光吸収剤の使用量を抑制できるので、定着後のカラー画像の劣化がない鮮明なカラー画像形成が可能である。
【0106】
また、請求項3記載の発明によれば、記録媒体上に黒色トナーと同時に定着され、良好な定着性を示す画像形成方法を提供できる。
【0107】
また、請求項4記載の発明によれば、記録媒体上に同時に定着され、互いに良好な定着性を示す画像形成方法を提供できる。
【0108】
また、請求項5記載の発明によれば、波長800〜2000nmの範囲でのトナーの吸光度を確実に上げることができ、これによりカラートナーのPAS強度を向上でき、良好な定着画像を実現できる。
【0109】
また、2つ以上の赤外光吸収剤を併用するので、フラッシュ光をより効率的に利用できるようになり光エネルギーを確実に低減できる。さらに、赤外光吸収剤はその使用量が総量として抑制できるので形成画像への影響をさらに確実に抑制できる。
【0110】
また、請求項1に記載の発明によれば、良好な定着性を有し、かつボイドの発生がないはカラーの画像形成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例であるカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図である。
【図2】1つの赤外光吸収剤を添加する従来のカラートナー(赤色トナー)の吸光度特性を示す図である。
【図3】一例として示す2成分現像方式の画像形成装置の一部概要を模式的に示す図である。
【図4】各カラートナーについて、E・S値と定着率との関係を示す図である。
【図5】各カラートナーについて定着エネルギー(J/cm2)と定着率(%)の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 画像形成装置
TO トナー
CA キャリア
Claims (5)
- 少なくとも結着樹脂、着色剤、赤外光吸収剤を含むカラートナーにフラッシュ光を照射して記録媒体上に定着させる工程を含む画像形成方法であって、前記カラートナーの光音響分光(PAS)分析測定に基づいて得られる赤外PASスペクトルを800〜2000nmの範囲で積分したPAS強度(S)と、フラッシュ光のエネルギー(E)とが、次式(1)の関係にあることを特徴とするフラッシュ定着工程を含む画像形成方法。
0.03≦E・S≦0.15 ……(1) - 前記カラートナーの前記PAS強度が、カーボンブラックを1とした場合に0.01〜0.2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
- 前記カラートナーの前記PAS強度が、同時に定着される黒色トナーのPAS強度に対して0.2〜0.9倍に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
- 前記カラートナーの前記PAS強度が、同時に定着される他のカラートナーのPAS強度に対して0.2〜5倍に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成方法。
- 前記カラートナーが、波長800〜2000nmの範囲で、吸収波長スペクトルが異なる少なくとも2つ以上の赤外光吸収剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成方法。
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