JP3891818B2 - 熱伝導シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等の発熱源からの放熱を促すため、その発熱源に対して接触するように配置して使用される熱伝導シート及びその製造方法に関し、詳しくは、柔軟性及び自己粘着性(いわゆるタック性)にも優れた熱伝導シート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、シリコーンやEPDM等の母材に熱伝導フィラーを充填し、混練・成形してなる熱伝導シートが考えられている。この種の熱伝導シートは、例えば電気・電子装置の内部において、例えば発熱源となる電子部品と、放熱板や筐体パネル等といったヒートシンクとなる部品(以下、単にヒートシンクという)との間に介在させるように配置される。このように熱伝導シートを配置した場合、電子部品等が発生する熱をヒートシンク側へ良好に逃がすことができる。このため、この種の熱伝導シートは、例えばCPUの高速化等のために不可欠な素材として注目を集めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記熱伝導シートの母材として液状のシリコーンゲルを使用すると、シロキサンガスが発生して接触不良や液晶パネル等のくもりを引き起こす可能性があったり、シリコーン自体の材料コストが高いといった課題が生じる。一方、EPDM等の合成ゴムを母材に使用した場合は、硬い、熱伝導フィラーを高充填できない、連続成形ができない、自己粘着性がないといった課題が生じる。
【0004】
ウレタン系の母材を使用すると、フィラーの充填は比較的容易になるが、充分な自己粘着性が得られず、熱伝導フィラーを高充填(例えば70wt%)すると硬くなるといった課題が生じる。熱伝導シートの柔軟性や自己粘着性は母材にオイルを混練することである程度向上するが、あまり多量のオイルを使用すると、熱伝導シートの表面からオイルが漏れ出すいわゆるオイルブリードが発生する。
【0005】
そこで、本発明は、ウレタン系の母材を使用した熱伝導シートにおいて、オイルブリードの発生を抑制しつつ、柔軟性及び自己粘着性を向上させることを目的としてなされた。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、ウレタン系の母材に熱伝導フィラー及びオイルを混練してシート状に成形してなる熱伝導シートであって、上記オイルとして、粘度の異なる2種類のオイルが混練されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された本発明では、ウレタン系の母材に粘度の異なる2種類のオイルが混練されている。このように粘度の異なる2種類のオイルを混練した場合、上記混練物をシート状に成形して得られる熱伝導シートでは、シートの表裏面に粘度の高いオイルが集まり、シートの内部に粘度の低いオイルが集まる。この原因には不明な点もあるが、粘度の高いオイルは成形時に成形用のフィルム等に付着しやすく、成形後においてもシートの表裏面に集まった状態に保持されるものと推察される。
【0008】
このため、本発明の熱伝導シートでは、シートの内部に集まった粘度の低いオイルによって柔軟性を確保し、シートの表裏面に集まった粘度の高いオイルによって、上記粘度の低いオイルが漏れ出すいわゆるオイルブリードを抑制しつつ同時にシートの自己粘着性も確保することができる。更に、本発明ではウレタン系の母材を使用しているので、材料コストもシリコーンの半分以下に抑制することができ、熱伝導フィラーの充填性もよく、シロキサンガスも発生しない。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、上記2種類のオイルが同量ずつ混練されていることを特徴とする。
本発明では、上記2種類のオイルが同量ずつ混練されているので、各オイルの特性が良好に発揮される。従って、本発明では、請求項1記載の発明の効果に加えて、オイルブリードの発生を一層良好に抑制しつつ、柔軟性及び自己粘着性を一層良好に向上させることができるといった効果が生じる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成に加え、上記2種類のオイルの内、粘度の低いほうのオイルが10cSt〜200cSt、粘度の高いほうのオイルが500cSt〜7000cStの粘度を有することを特徴とする。
前述のように、熱伝導シートの柔軟性を良好に確保するためには、低いほうのオイルの粘度を10cSt〜200cStとするのが望ましく、オイルブリードを良好に抑制しつつ自己粘着性を確保するためには高いほうのオイルの粘度を500cSt〜7000cStとするのが望ましい。本発明では、上記2種類のオイルの粘度を前述のように設定しているので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、オイルブリードの発生を一層良好に抑制しつつ、柔軟性及び自己粘着性を一層良好に向上させることができるといった効果が生じる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、上記母材が、両末端水酸基含有ポリオレフィン系ポリオールであることを特徴とする。
両末端水酸基含有ポリオレフィン系ポリオールを母材として使用すると、一般のウレタン系母材を使用した場合に比べて、耐熱性を良好に向上させることができる。従って、本発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、熱伝導シート全体としての耐熱性を一層向上させることができるといった効果が生じる。
【0012】
請求項5記載の発明は、ウレタン系の母材に熱伝導フィラー及びオイルを混練してシート状に成形する熱伝導シートの製造方法であって、上記オイルとして、粘度の異なる2種類のオイルを混練すると共に、上記混練物を厚さ方向の両側からフィルムで挟んでシート状に成形することを特徴とする。
【0013】
本発明では、ウレタン系の母材に、熱伝導フィラーと粘度の異なる2種類のオイルとを混練し、シート状に成形している。このため、請求項1記載の熱伝導シートを得ることができる。また、上記2種類のオイルに請求項2,3,または4で付した限定を加えれば、請求項2,3,または4記載の熱伝導シートを得ることができる。
【0014】
更に、本発明では、上記混練物を厚さ方向の両側からフィルムで挟むことによってシート状に成形しているので、低いほうのオイルの粘度が極めて低い場合にも容易に成形を行うことができる。従って、本発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導シートを容易に製造することができるといった効果が生じる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、以下の製造方法により熱伝導シートを製造した。
すなわち、母材としての両末端水酸基含有ポリオレフィン系ポリオール(出光石油株式会社製:商品名「エポール」)100重量部に、粘度60cStのオレフィン系オイル150重量部、粘度700cStのひまし油150重量部、熱伝導フィラーとしてのアルミナ200重量部(アルミナの代わりに炭化ケイ素を200重量部使用してもよい)、及び、硬化剤としてのイソシアネート15重量部を加えて混練した。混練の方法としては、真空脱泡ミキサー等の機械を用いて混練する方法の他、押し出し,2本ロール,ニーダ,バンバリーミキサー等の種々の方法を適用することができる。この内、ミキサーを使用して混練する場合、作業性が向上する点で望ましい。
【0016】
続いて、このように混練した混練物をシート状に成形した。この成形の方法としては、コーター,カレンダロール,押し出し,プレス等の機械を用いて成形する方法等、種々の方法を適用することができる。この内、前述のように多量のオイルを配合した混練物は、図2に示すようなロールを用いた成形機51によって容易に成形することができる。
【0017】
図2に示すように、この成形機51では、装置の上方に巻回保持されたPETフィルム91がロール53,55を介して搬送され、装置の下方に巻回保持されたPETフィルム93がロール57,59を介して搬送される。ロール55とロール59とは目標とする熱伝導シートの厚さに対応した隙間を開けて対向配置され、その間に搬送されるPETフィルム93の上には材料タンク61に設けられた材料注入口63から前述の混練物95が供給される。
【0018】
すると、この混練物95はロール55,59の間にPETフィルム91,93を介して挟まれることによってシート状に成形される。続いて、この混練物95は、材料乾燥を行う常温の第1ゾーン71,加硫を行う第2ゾーン73,同じく加硫を行う第3ゾーン75,及び,更に同じく加硫を行う第4ゾーン77を経て搬送される。
【0019】
このようにして製造された熱伝導シートは、図1に示すように、母材1の中に熱伝導フィラーとしてのアルミナ3が充填された構造を有している。また、母材1には図示しないオレフィン系オイルとひまし油とが混練されているが、粘度の高いひまし油はシートの表裏面に集まり、粘度の低いオレフィン系オイルはシートの内部に集まっている。オイルがこのように集まる原因には不明な点もあるが、粘度の高いひまし油は上記成形時にPETフィルム91,93に付着しやすく、成形後においてもシートの表裏面に集まった状態に保持されるものと推察される。
【0020】
このため、本実施の形態の熱伝導シートでは、シートの内部に集まった粘度の低いオレフィン系オイルによって柔軟性を確保し、シートの表裏面に集まった粘度の高いひまし油によって、上記オレフィン系オイルが漏れ出すいわゆるオイルブリードを抑制しつつ同時にシートの自己粘着性も確保することができる。更に、本実施の形態ではウレタン系の母材を使用しているので、材料コストもシリコーンの半分以下に抑制することができ、熱伝導フィラーとしてのアルミナ3の充填性もよく、シロキサンガスも発生しない。
【0021】
また更に、本実施の形態では、上記ウレタン系の母材として両末端水酸基含有ポリオレフィン系ポリオールを使用しているので、一般のウレタン系母材を使用した場合に比べて、耐熱性を良好に向上させることができる。例えば、一般のウレタン系母材では80℃程度であった耐熱温度を、100℃まで向上させることができる。
【0022】
【実施例】
続いて、上記実施の形態の効果を確認するため、オレフィン系オイルとひまし油との割合を種々に変更して物性データを調査した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003891818
【0024】
但し、オイルブリードはアルミ板にシートを挟み込んだ状態で1週間放置し、オイルブリードが起こるか否かを確認した。タック性は(ASTM D 3121)ボールタック試験によって評価した。硬度はASKERC規格によって評価した。充填性は、脱泡混練撹拌機にかかるか否かによって評価した。
【0025】
表1から分かるように、オレフィン系オイルとひまし油とを混練した本発明の実施例(試料No.6〜8)では、いずれか一方のみを使用した比較例(試料No.1〜5)に比べて、オイルブリードの発生を良好に抑制しつつ、柔軟性及び自己粘着性(タック性)を良好に向上させられることが分かった。特に、オレフィン系オイル及びひまし油を同量ずつ混練した実施例(試料No.7,8)では、各オイルの特性が良好に発揮され、オイルブリードの発生を一層良好に抑制しつつ、柔軟性及び自己粘着性を一層良好に向上させることができた。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態及び実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、使用する2種類のオイルとしては、粘度の異なるものであれば種々のものが使用できる。但し、前述のオレフィン系オイル(粘度60cSt)及びひまし油(粘度700cSt)と同様に、粘度の低いほうのオイルが少なくとも10cSt〜200cSt、粘度の高いほうのオイルが少なくとも500cSt〜7000cStの範囲に粘度を有することが、オイルブリードを一層良好に抑制しつつ自己粘着性及び柔軟性を確保する上で望ましいものと考えられる。
【0027】
また、上記2種類のオイルは、前述のオレフィン系オイル及びひまし油と同様にある程度の相溶性を有していることが、シートの成形を容易にする上で望ましいものと考えられる。但し、上記2種類のオイルの相溶性があまりに大きいと両者がシート全体に渡って均一に混ざってしまうことが予測される。このため、オイルは母材の特性も考慮して適宜選択するのが好ましい。また更に、熱伝導フィラーとしては、上記のものの他に周知の種々のものが使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した熱伝導シートの構成を概略的に表す説明図である。
【図2】 ロールを用いた成形機の構成を概略的に表す説明図である。
【符号の説明】
1…母材 3…アルミナ 51…成形機
91,93…PETフィルム 95…混練物

Claims (5)

  1. ウレタン系の母材に熱伝導フィラー及びオイルを混練してシート状に成形してなる熱伝導シートであって、
    上記オイルとして、粘度の異なる2種類のオイルが混練されていることを特徴とする熱伝導シート。
  2. 上記2種類のオイルが同量ずつ混練されていることを特徴とする請求項1記載の熱伝導シート。
  3. 上記2種類のオイルの内、粘度の低いほうのオイルが10cSt〜200cSt、粘度の高いほうのオイルが500cSt〜7000cStの粘度を有することを特徴とする請求項1または2記載の熱伝導シート。
  4. 上記母材が、両末端水酸基含有ポリオレフィン系ポリオールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導シート。
  5. ウレタン系の母材に熱伝導フィラー及びオイルを混練してシート状に成形する熱伝導シートの製造方法であって、
    上記オイルとして、粘度の異なる2種類のオイルを混練すると共に、
    上記混練物を厚さ方向の両側からフィルムで挟んでシート状に成形することを特徴とする熱伝導シートの製造方法。
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