JP6754917B1 - 熱伝導性シート - Google Patents

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Abstract

シリコーンと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂組成物からなり、パワーモジュールとヒートシンクとの間に設けられる熱伝導性シートであって、前記熱伝導性フィラーは、アスペクト比が4以上であり、前記熱伝導性シート中の前記熱伝導性フィラーの含有量は、40〜70体積%であり、所定の条件で温度サイクル試験を行った際の熱伝導性シートの厚さ方向の圧縮量が10〜25%である、熱伝導性シート。

Description

本発明は、熱伝導性シートに関する。
パワーモジュールは、比較的発熱量の多い電子部品であり、ヒートシンク(冷却部材)によって放熱しながら使用される。
近年、パワーエレクトロニクス機器の小型化等に伴い、パワーモジュールの高出力密度化が進められており、それに伴って高い放熱性能も求められている。
パワーモジュールが発する熱は、パワーモジュールに取り付けられたヒートシンクによって筐体外部へ放熱される。ヒートシンクは、通常、熱伝導材(TIM:Thermal Interface Material)を介してパワーモジュールに取り付けられている。
パワーモジュールに用いられる熱伝導材としては、熱伝導グリースのような液状タイプの熱伝導材と、熱伝導性シート(放熱シートとも称される)のような固形タイプの熱伝導材とが知られている。
熱伝導グリースをパワーモジュールに使用した場合、徐々に放熱性能が低下することが問題となる。これは、パワーモジュールとヒートシンクとの間に充填した熱伝導グリースが、パワーモジュールのON/OFFの切り替えで生じる熱変形によって、外へ流出するポンプアウト現象が生じ、その結果、熱伝導グリースの内部にボイド(空隙)が発生するためと考えられている(非特許文献1参照)。
小西祐一郎、外2名、「熱サイクルにともなう熱伝導グリースのポンプアウト現象に関する可視化実験」、日本機械学会論文集、2017年、Vol.83、No.845、p.16−00243
上述したように、熱伝導グリースをパワーモジュールに使用した場合、この熱伝導グリースは、パワーモジュールの熱変形によってポンプアウトすることがある。
そこで、熱伝導グリースに代えて熱伝導性シートを使用することを検証した。その結果、パワーモジュールの熱変形によって、熱伝導性シートがパワーモジュールとヒートシンクとの間からはみ出したり、破損したりする場合があること、及び、これらの不具合を回避することができる耐久性を備えた熱伝導性シートは、熱伝導グリース並みの放熱性能を確保することが難しいことが明らかとなった。
本発明者らは、このような状況のもと鋭意検討を重ね、パワーモジュールの熱変形によってパワーモジュールとヒートシンクとの間からはみ出したり、破損が生じたりしにくく、かつ熱伝導性に優れた、パワーモジュールに好適に用いることができる熱伝導性シートを完成した。
(1)本発明の熱伝導性シートは、
シリコーンと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂組成物からなり、パワーモジュールとヒートシンクとの間に設けられる熱伝導性シートであって、
上記熱伝導性フィラーは、アスペクト比が4以上であり、
上記熱伝導性シート中の上記熱伝導性フィラーの含有量は、40〜70体積%であり、
下記条件で温度サイクル試験を行った際の熱伝導性シートの厚さ方向の圧縮量が10〜25%である。
[温度サイクル試験の条件]
初期圧縮応力:1MPa
温度条件(1サイクル):−40℃で30分間保持した後、150℃で30分間保持
サイクル数:70
本発明の熱伝導性シートは、シリコーンと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂組成物からなり、かつ、上記の条件で温度サイクル試験を行った際の熱伝導性シートの厚さ方向の圧縮量が10〜25%である。
このような特性を充足する熱伝導性シートは、パワーモジュールとヒートシンクとの間に配置して使用する熱伝導性シートとして極めて好適である。
パワーモジュールは、上述したようにON/OFFによって熱変形する部材である。例えば、パワーモジュールが図1に示したような平板状である場合には、電源のONによって発熱し、「上に凸」又は「下に凸」に反るよう変形する。このような変形によって、当該パワーモジュールとヒートシンクとの間に配置された熱伝導性シートが圧縮され、場合によっては破損するおそれがある。
これに対して、上記熱伝導性シートは、上記温度サイクル試験を行った際の厚さ方向の圧縮量が10〜25%である。そのため、パワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、長期間に亘って、破損することなく、優れた熱伝導性を発揮することができる。
(2)上記熱伝導性シートは、ASTM D5470に準ずる熱抵抗測定によって、測定圧力0.5MPa、シート厚さ0.2mmの条件で測定した熱抵抗値が0.27Kcm/W以下であることが好ましい。
このような条件で測定した熱抵抗値が上記範囲にある場合、上記熱伝導性シートはパワーモジュール用の熱伝導グリースと比較して遜色のない熱伝導性を有するものとなる。
そのため、上記熱伝導性シートは、耐久性に優れるとともに充分な熱伝導性を確保することができる。
(3)上記熱伝導性シートにおいて、上記シリコーンは、側鎖にビニル基を有するシリコーンの架橋物と、シリコーンオイルとの混合物であることが好ましい。
シリコーンオイルを含有する上記混合物は、シリコーンオイルを含有しないものと比較して可塑度が向上する。上記混合物の可塑度が向上すると、加工性の悪化を伴うことなくより多くの熱伝導性フィラーを含有させることが可能となる。また、上記可塑度の向上により、上記混合物中に含有させた熱伝導性フィラーの流動性が増し、当該熱伝導性フィラーを熱伝導シートの厚さ方向に配向させ易くなる。
(4)上記熱伝導性シートにおいて、上記熱伝導性フィラーは、材質が窒化ホウ素であり、かつ形状が鱗片状であることが好ましい。
この場合、上記熱伝導性フィラーが厚さ方向に配向し、熱伝導性に格別優れた熱伝導性シートを提供するのに適している。
本発明の熱伝導性シートは、優れた耐久性と熱伝導性とを両立でき、パワーモジュールとヒートシンクとの間に設けられる熱伝導性シートとして好適である。
本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを介してヒートシンクが取り付けられたパワーモジュールを模式的に示す断面図である。 図2(a)は本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの一例を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線断面における部分拡大図である。 本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを製造する際に使用する押出機を模式的に示す図である。 温度サイクル試験で使用した熱伝導性シートを挟持するための治具を示す断面図である。 図5(a)〜図5(e)は、それぞれ温度サイクル試験後の熱伝導性シートの状態を例示する参照図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明において、「熱伝導性シート」とは、押出成型等で成形した後のブロック状物、及び、当該ブロック状物を適宜切断して得られる切断物(スライスしたシート状物を含む)の両方を含む概念である。
ここでは、スライスしたシート状物を例にして、熱伝導性シートの実施形態を説明する。
本実施形態に係る熱伝導性シートは、パワーモジュールとヒートシンクとの間に設けられる部材である。上記熱伝導性シートは、シリコーンと、熱伝導性フィラーとを含有する樹脂組成物からなる。ここで、シリコーンとは、シロキサン結合による主骨格を有する高分子化合物である。
図1は、本実施形態に係る熱伝導性シートを介してヒートシンクが取り付けられたパワーモジュールを模式的に示す断面図である。図2(a)は、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの一例を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)のA−A線断面における部分拡大図である。
なお、本願図面において、図1〜4はいずれも模式図であり、各部材の実寸法を正確に反映したものではない。
熱伝導性シート1は、図1に示すように、パワーモジュール11とヒートシンク12との間に配置され、一方の面をパワーモジュール11に接触させ、他方の面をヒートシンク12に接触させて使用する。これにより、ヒートシンク12は熱伝導性シート1を介してパワーモジュール11に取り付けられる。パワーモジュール11が発する熱はヒートシンク12によって筐体(図示せず)の外部へ放熱される。
熱伝導性シート1は、図2(a)及び図2(b)に示すように、マトリックス成分2と、鱗片状の熱伝導性フィラー4とを含有している。熱伝導性フィラー4は、熱伝導性シート1のほぼ厚さ方向に配向している。熱伝導性シート1では、熱伝導性フィラー4による熱伝導パスが、熱伝導性シート1のほぼ厚さ方向に形成されている。なお、熱伝導性シート1は、ほぼ厚さ方向にウェルドラインが形成されることもある。
本実施形態の熱伝導性シートでは、熱伝導性フィラー以外の成分をまとめてマトリックス成分と称する。
マトリックス成分2は、シリコーンを含有する。そのため、熱伝導性シート1は耐熱性に優れる。
本実施形態において、上記シリコーンは、シリコーンの架橋物(以下、架橋シリコーンともいう)と、シリコーンオイルとの混合物である。
ここで、架橋シリコーンは、過酸化物架橋されたものであっても良いし、付加反応型の架橋により架橋されたものであっても良いが、過酸化物架橋されたものが好ましい。過酸化物架橋によって架橋された架橋シリコーンの方が耐熱性に優れるからである。
上記架橋シリコーンとしては、例えば、側鎖(末端も含む)の一部にビニル基を有するシリコーンを架橋させたものが好ましい。
上記シリコーンオイルは、例えば、側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンである。
マトリックス成分2では、上記架橋シリコーンによってもたらされる3次元網目構造の隙間に、上記シリコーンオイルが入り込んでいる。このようなマトリックス成分2によって、熱伝導性シートは、柔軟性が確保されつつ、優れた耐久性を確保するのに適した構造になっていると考えられる。
上記シリコーンオイルは、数平均分子量が10000〜100000であることが好ましい。
上記シリコーンオイルの数平均分子量が10000未満では、熱伝導性シート1からシリコーンオイルがブリードしやすくなる。一方、シリコーンオイルの数平均分子量が100000を超えると、熱伝導性シート1を製造する際の成形性や加工性に劣る傾向にある。
上記シリコーンオイルの動粘度は、ウッベローデ粘度計で測定した25℃の動粘度で、1000〜100000cpsが好ましい。
上記動粘度が1000cps未満では、シリコーンオイルが熱伝導性シートからブリードし易くなる。一方、上記動粘度が100000cpsを超えると、熱伝導性シートの硬度が高く、パワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、パワーモジュールやヒートシンクとの接触面における密着性や追従性に劣ることになる。
上記側鎖の一部にビニル基を有するシリコーンの具体例としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記架橋シリコーンと上記シリコーンオイルとを併用する場合、上記ビニル基を有するシリコーンと上記シリコーンオイルとの合計量に対する、上記ビニル基を有するシリコーンの含有量は1〜10重量%が好ましい。
上記ビニル基を有するシリコーンの含有量が1重量%未満では、熱伝導性シートが軟らかすぎて、当該熱伝導性シートをパワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、両者の間からはみ出しやすくなる。一方、上記含有量が10重量%を超えると、熱伝導性シートが硬く、当該熱伝導性シートをパワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、パワーモジュールやヒートシンクとの接触面における密着性や追従性に劣ることになる。
マトリクス成分2は、シリコーンとして、所謂、ミラブルタイプのシリコーンを含有していても良い。上記ミラブルタイプのシリコーンとしては、例えば、上記シリコーンオイルよりも数平均分子量が大きく、側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンが挙げられる。
本発明においてシリコーンオイルや上述したミラブルタイプのシリコーンの数平均分子量は、JIS−K7252−1:2008年「プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方−第1部:通則」に準拠し、ポリスチレンを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した数平均分子量である。
上記過酸化物架橋を行う際の過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、P−メチルベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
更には、架橋促進剤や架橋促進助剤等を併用して架橋を行っても良い。
上記過酸化物の好ましい配合量は、ビニル基を有するシリコーンが過不足なく架橋反応する量であり、例えば、ビニル基を有するシリコーン(未架橋のシリコーン)の全量に対して17〜25重量%程度である。通常、この程度の量でビニル基を有するシリコーンが過不足なく架橋反応するため、未反応のビニル基や、過酸化物の分解生成物が、熱伝導性シート内に残留しにくい。
一方、上記過酸化物の配合量が17重量%未満では、熱伝導性シート内に未反応のビニル基が残りやすく、その結果、製造した熱伝導シートは熱劣化しやすくなる。
また、上記過酸化物の上記配合量が25重量%を超えると、望まない架橋反応が進行してしまい、熱伝導性シートが硬くなり過ぎてしまうことがある。更には、過酸化物の熱分解生成物の量がビニル基の量に対して過剰になり、この熱分解生成物が熱伝導性シート内に残留し、熱伝導性シートの性能を劣化させることがある。また、上記熱分解生成物は加熱によって除去することが可能であるが、残留量が多くなると除去にも時間を要することになる。
マトリックス成分2は、熱伝導性シート1の要求特性を損なわない範囲で、他のエラストマー成分等を含有していても良い。
マトリックス成分2は、難燃剤を含有していても良い。
上記難燃剤としては、例えば、白金系化合物、トリアゾール系化合物、べんがら、黒鉄などの酸化鉄等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
マトリックス成分2は、更に、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、粘着付与剤、帯電防止剤、練り込み接着剤、カップリング剤等の一般的な配合・添加剤を含有していても良い。
一方、マトリックス成分2は、シリカを含有しないことが好ましい。
シリカを含有すると、マトリックス成分が硬くなり、柔軟性を確保しつつ、導電性フィラーの含有量を高めることが困難になる。その結果、高い熱伝導性を確保することが難くなる。
このようにマトリックス成分が硬くなる理由は、マトリックス成分がシリカを含有すると、シリコーン系組成物を架橋させる際に、このシリカが、ポリマー(シリコーン)の流動を阻害する拘束点となり、得られた架橋物が硬くなり過ぎてしまうためと推測している。
熱伝導性シート1は、熱伝導性フィラー4を含有する。
熱伝導性フィラー4は、絶縁性フィラーが好ましい。導電性フィラーを含有する熱伝導性シートは、パワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、短絡による電気系トラブルの原因になることがある。
絶縁性を有する熱伝導性フィラー4の材質としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
これらのなかでは、熱伝導性シート1の厚さ方向に配向させやすく、上記厚さ方向に優れた熱伝導性を付与することができる点から六方晶窒化ホウ素(h−BN)が好ましい。
熱伝導性フィラー4は、アスペクト比が4以上である。このようなアスペクト比の熱伝導性フィラー4は、厚さ方向に配向させやすく、かつ厚さ方向に配向させることにより、優れた熱伝導性を確保することができる。
熱伝導性フィラー4の形状は、アスペクト比が4以上であれば特に限定されず、例えば、鱗片状、板状、膜状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状などが挙げられる。これらのなかでは鱗片状が好ましい。
上記熱伝導性フィラーのアスペクト比とは、熱伝導性フィラーの長径を短径で除した値をいう。ここで、熱伝導性フィラーの長径とは、熱伝導性フィラーにおいて最も長い部分の長さをいい、熱伝導性フィラーの短径とは、上記長径に直交する方向において、熱伝導性フィラーの最も短い部分の長さをいう。
特に具体的な例として、例えば、上記熱伝導性フィラーが鱗片状を有する窒化ホウ素製のフィラーの場合には、結晶軸におけるa軸方向の長さをc軸方向の長さで除した値が上記熱伝導性フィラーのアスペクト比となる。
上記熱伝導性フィラーの長径及び短径(鱗片状を有する窒化ホウ素製のフィラーのa軸方向の長さ及びc軸方向の長さを含む)は、熱伝導性フィラーの顕微鏡画像を用いて算出する。
そして、上記熱伝導性フィラーのアスペクト比の算出は、熱伝導性フィラーの顕微鏡画像を取得した後、当該画像内から無作為に20個の熱伝導性フィラーを選択し、各フィラーにおける長径及び短径に基づいてアスペクト比を算出し、更にその平均値を算出することによって行う。
熱伝導性フィラー4の粒子径は、20〜60μmが好ましい。上記粒子径が20μm未満では熱伝導性フィラーの充填性が悪くなり熱伝導パスが形成されにくくなる。一方、上記粒子径が60μmを超えると、熱伝導性フィラー4を緻密に充填することが困難となり、また、熱伝導性シート1を製造する際に熱伝導性フィラー4が破損しやすくなる。
本発明において、上記熱伝導性フィラーの粒子径とは、レーザ回折・散乱法を用いて測定したメジアン径(d50)の値をいう。
熱伝導性フィラー4としては、粒子径の異なる熱伝導性フィラーを併用しても良い。
この場合、窒化ホウ素からなり粒子径が20〜60μmの熱伝導性フィラー(以下、大粒径BNフィラーともいう)と、窒化ホウ素からなり粒子径が5μm以上20μm未満の熱伝導性フィラー(以下、小粒径BNフィラーともいう)とを併用することが好ましい。寸法の異なる熱伝導性フィラーを併用することにより、熱伝導性シートにおける熱伝導性フィラーの含有量を高含有量としやすい。
上記大粒径BNフィラーと上記小粒径BNフィラーとを併用する場合、両者ともにアスペクト比は4以上とする。また、両者の形状はいずれも鱗片状が好ましい。
熱伝導性シート1において、熱伝導性フィラー4の含有量は40〜70体積%である。
上記熱伝導性フィラーの含有量が40体積%未満では、充分な熱伝導性を確保することができない。一方、上記含有量が70体積%を超えると、熱伝導性シートを作製する際の加工が困難になり、また、熱伝導性シートを安価に提供することが困難になる。
熱伝導性シート1における熱伝導性フィラー4の含有量は、55〜70体積%がより好ましい。これにより、極めて高い熱伝導性を確保することができる。
また、上記熱伝導性フィラーとして、上記大粒径BNフィラーと上記小粒径BNフィラーとを併用する場合、上記熱伝導性シートにおける上記熱伝導性フィラーの含有量は、両者の合計量として50〜70体積%が好ましく、55〜70体積%がより好ましい。
また、上記大粒径BNフィラーと上記小粒径BNフィラーとを併用する場合、両者の配合比率は、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの合計量に対する大粒径BNフィラーの量が66体積%以上となることが好ましい。
熱伝導性シート1は、温度サイクル試験を行った際の厚さ方向の圧縮量が10〜25%である。
熱伝導性シート1は、上記圧縮量が10〜25%であるため、パワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、長期間に亘って、破損することなく、優れた熱伝導性を発揮することができる。
これに対して、上記圧縮量が10%未満では、パワーモジュールやヒートシンクの接触面に対する追従性が不十分で、熱伝導性シート1をパワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、パワーモジュールやヒートシンクとの界面に隙間を生じ、放熱性能が不充分になる。
また、上記圧縮量が25%を超えると、上記熱伝導性シートは、破損しやすく、パワーモジュール用の熱伝導性シートとして、耐久性が不充分になる。
本発明において、温度サイクル試験を行った際の厚さ方向の圧縮量とは、「温度サイクル試験前の熱伝導性シートの厚さ」に対する「温度サイクル試験前後の熱伝導性シートの厚さの差」の百分率をいう。
上記温度サイクル試験の条件は、
初期圧縮応力:1MPa、
温度条件(1サイクル):−40℃で30分間保持した後、150℃で30分間保持する、
サイクル数:70、
である。
ここで、初期圧縮応力は、試験開始時に熱伝導性シートに印加する圧力を意味する。本試験では、熱伝導性シートに1MPaの圧力を印加して温度サイクル試験を行う。
パワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した熱伝導性シートには、上述したように、パワーモジュールの変形によって圧力が掛かる。このとき、熱伝導性シートに掛かる圧力は大きくても1MPa程度であると考えられる。そのため、上記の初期圧縮応力で温度サイクル試験を行うことにより、熱伝導性シートが充分な耐久性を有することを評価することができる。
また、温度条件(1サイクル)を上記範囲に設定して評価を行うことにより、短時間でパワーモジュールとヒートシンクとの間に設けられる熱伝導性シートとしての性能を評価することができる。
熱伝導性シート1は、ASTM D5470に準ずる熱抵抗測定によって、測定圧力0.5MPa、シート厚さ0.2mmの条件で測定した熱抵抗値が0.27Kcm/W以下であることが好ましい。この場合、熱伝導性シート1は、パワーモジュール用の熱伝導グリースと比較して遜色のない熱伝導性を有するものとなり、耐久性に優れるとともに充分な熱伝導性が確保される。
熱伝導性シート1は、測定時間を30秒後から15秒後に変更した以外はSRIS 0101(日本ゴム規格協会)に準じて測定したアスカーC硬度が、75〜82であることが好ましい。優れた耐久性と熱伝導性との両立により適しているからである。
上記アスカーC硬度が75未満では、熱伝導性シートがパワーモジュールとヒートシンクとの間からはみ出す現象や、破損がより起こりやすくなる。
一方、上記アスカーC硬度が82を超えると、熱伝導性シートをパワーモジュールとヒートシンクとの間に配置した際に、熱伝導性シートとパワーモジュールとの界面や熱伝導性シートとヒートシンクとの界面に隙間ができ、放熱性能に劣ることがある。
また、熱伝導性シート1を後述する手法で製造する場合は、架橋後、厚さ方向に垂直な方向にスライス加工する前の熱伝導性シートのブロックについて、上記アスカーC硬度を測定し、当該アスカーC硬度が上記範囲にあることも好ましい。
上記熱伝導性シートのブロックのアスカーC硬度と当該ブロックをスライスした後の上記熱伝導性シートのアスカーC硬度とはほぼ同じであり、上記熱伝導性シートのブロックのアスカーC硬度の方が測定が容易だからである。
熱伝導性シート1の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1〜3.0mm程度である。この場合、熱伝導性シート1は、パワーモジュールとヒートシンクとの間で熱を効率良く伝達する部材として好適に使用することができる。
熱伝導性シート1の厚さは、0.1〜1.0mmが好ましい。パワーモジュールやヒートシンクの接触面に対する追従性を確保しつつ、より優れた放熱性能を確保することができる。一方、熱伝導性シート1の厚さが0.1mm未満ではパワーモジュールやヒートシンクの接触面に追従しきれないことがある。また、上記厚さが1mmを超えるとシート自体の熱抵抗値によって放熱性に劣ることがある。
熱伝導性シート1は、パワーモジュール用の熱伝導性シートであり、縦寸法、及び、横寸法は、それぞれ独立して10〜100mm程度である。
熱伝導性シート1は、このような寸法であっても、破損しにくく、かつ高い熱伝導率を有する。
次に、熱伝導性シート1を製造する方法について説明する。
熱伝導性シート1は、例えば、下記(a)〜(c)の工程を行うことにより製造することができる。
(a)ビニル基を有するシリコーン、過酸化物、シリコーンオイル及び熱伝導性フィラーを含有するシリコーン系組成物を調製する工程、
(b)調製したシリコーン系組成物を成形する工程、及び、
(c)成形されたシリコーン系組成物を架橋し、その後、シート状にスライス加工する工程。
まず、シリコーン系組成物を調製する工程(a)を行う。ここでは、例えば、ビニル基を有するシリコーン、有機過酸化物、シリコーンオイル及び熱伝導性フィラー、更には、必要に応じて添加する各種添加剤を2本ロールで練り込む等によってシリコーン系組成物を調製すれば良い。
このとき、各成分はマスターバッチの状態で供給しても良い。
次に、調製したシリコーン系組成物を成形する工程(b)と、成形されたシリコーン系組成物(樹脂シート前駆体)を架橋し、その後、シート状にスライス加工する工程(c)とを行う。
上記シリコーン系組成物の成形は、例えば、押出機を用いて行えば良い。
図3は、本実施形態に係る熱伝導性シートの製造で使用する押出機を模式的に示す図である。図3には、押出機の先端部分及びTダイの断面概略図を示す。
押出機30に投入された上記シリコーン系組成物は、スクリュー34によって撹拌・混練され、流路31に沿ってTダイの第1ギャップ32に導入される。
押出機30で攪拌・混錬されたシリコーン系組成物は、まず、第1ギャップ32によって上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれて薄い帯状となる。第1ギャップ32を通過するシリコーン系組成物にはせん断力が作用し、このとき、シリコーン系組成物中に混合されている熱伝導性フィラーがシリコーン系組成物の流れ方向(押出方向)に配向する。従って、第1ギャップ32を通過して成形された厚さの薄い樹脂シート前駆体は、熱伝導性フィラーが当該前駆体の面方向に配向している。
第1ギャップ32の隙間(図3中、上下方向の寸法)は、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。第1ギャップ32の隙間が0.1mmよりも小さいと、押出し圧力が不必要に上昇するだけでなく、樹脂詰まりが発生してしまうことがある。一方、第1ギャップ32の隙間が5.0mmよりも大きいと、上記薄い樹脂シート前駆体の面方向に対する熱伝導性フィラーの配向度が減少することがある。
熱伝導性フィラーが配向した上記薄い樹脂シート前駆体は、第1ギャップ32を完全に通過すると、押出方向に限定されていたシートの流れ方向が解放されて、当該流れ方向が押出方向に対してほぼ垂直となる方向に変化する。これは、第1ギャップ32を通過した後の流路31の断面積が拡大し、流路31の上下方向の長さが長くなるためである。
シートの流れ方向が押出方向に対してほぼ垂直となる方向に変化した上記薄い樹脂シート前駆体は、第1ギャップ32を完全に通過した後、更に第2ギャップ33に向かって押し出される。その結果、第2ギャップ33内には、上記薄い樹脂シート前駆体が積層された状態の樹脂シート前駆体が形成される。その際に熱伝導性フィラーの多くは、第2ギャップ33内の樹脂シート前駆体の厚さ方向(図3中、上下方向)に配向させられる。
その後、第2ギャップ33を通過した樹脂シート前駆体を所定の条件で加熱することにより架橋を進行させ、シリコーンと熱伝導性フィラーを含む熱伝導性シートのブロックを作製する。また、樹脂シート前駆体を架橋させた後は、必要に応じて二次架橋を行っても良い。
最後に、熱伝導性シートのブロックを厚さ方向に垂直な方向にスライス加工する。その結果、所定の厚さを有し、熱伝導性フィラーが厚さ方向にほぼ配向した熱伝導性シート1を得ることができる。
このような、熱伝導性シート1の製造方法において、第2ギャップ33の隙間は第1ギャップ32の隙間の2倍以上30倍以下であることが好ましい。第2ギャップ33の隙間が第1ギャップ32の隙間の2倍よりも小さい場合は、熱伝導性フィラー4の多くが熱伝導性シート1の厚さ方向に配向しなくなることがある。また、第2ギャップ33の隙間が第1ギャップ32の隙間の30倍よりも大きい場合は、上記樹脂シート前駆体内に上記薄い樹脂シート前駆体が乱流した状態で積層した部分が生じやすくなり、その結果、熱伝導性シート1の厚さ方向に配向する熱伝導性フィラー4の割合が減少してしまうことがある。
第2ギャップ33の隙間は第1ギャップ32の隙間の5倍以上20倍以下であることがより好ましい。
また、上記薄い樹脂シート前駆体が、第1ギャップ32を通過した後、流路31の上下方向において均等に流れやすくなるように、第1ギャップ32における厚さ方向の中心位置と第2ギャップ33における厚さ方向の中心位置とは、厚さ方向においてほぼ同一の位置にあることが好ましい。
また、第1ギャップ32における開口部(第1ギャップとつながる部分)の形状は、特に限定されないが、上流側側面は圧力損失が少ないように傾斜面とすることが好ましい。また、第1ギャップ32における開口部の下流側側面は、熱伝導性フィラーを効率良く上記樹脂シート前駆体の厚さ方向に配向させるために、傾斜角度(押出方向と傾斜面とのなす角度)を調整することが望ましい。当該傾斜角度は、10°〜50°が好ましく、20°〜25°がより好ましい。
第1ギャップ32における開口部は、上下共に傾斜を有している必要はなく、どちらか一方のみが傾斜を有していても良い。
なお、第1ギャップ32及び第2ギャップ33の奥行(即ち、図3において紙面に垂直な方向における第1ギャップ32及び第2ギャップ33の寸法)は、Tダイの全体にわたってほぼ同一である。また、上記第1ギャップ及び上記第2ギャップの奥行は特に規定されず、熱伝導性シート1の製品幅に応じて種々の設計変更が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示した組成の通り、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製 KF−96−30KCS)200重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(東レ・ダウコーニング株式会社製 MR−53)5.25重量部、架橋剤として有機過酸化物(東レ・ダウコーニング株式会社製、RC−4 50P FD:過酸化物含有量50重量%)2.25重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 ME400−FR)10重量部、窒化ホウ素(デンカ株式会社製 XGP、粒子径30μm、アスペクト比9)664重量部、及び、窒化ホウ素(昭和電工株式会社製 UHP−1K、鱗片状、粒子径8μm、アスペクト比4)60.4重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシート(シリコーン系組成物)を作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は約60.0%であり、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの体積比率は、大粒径BNフィラー:小粒径BNフィラー=55:5である。
次に、作製したリボン状のシートをゴム用短軸押出機30にて、1mmの第1ギャップ及び10mmの第2ギャップを有する垂直配向金型を用いて(図3参照)、厚さ10mmのシート(ブロック)を作製し、160℃で40分間の架橋処理を施した。
その後、得られたシートを厚さ方向に垂直な方向にスライス加工し、厚さ200μmのシートを作製した。更に、縦×横の寸法が40mm×40mmになるように厚さ方向に沿って裁断し、熱伝導性シート1を完成した。
(実施例2)
ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)の量を7.00重量部とし、架橋剤としての有機過酸化物(RC−4 50P FD)の量を3.00重量部とした(表1参照)以外は、実施例1と同様にして熱伝導性シート1を作製した。
(実施例3)
窒化ホウ素(XGP)の量を650重量部とし、窒化ホウ素(UHP−1K)の量を35.0重量部とした(表1参照)以外は、実施例2と同様にして熱伝導性シート1を作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は約58.6%であり、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの体積比率は、大粒径BNフィラー:小粒径BNフィラー=55.6:3である。
(実施例4)
窒化ホウ素(XGP)の量を726重量部とし、窒化ホウ素(UHP−1K)の量を64.0重量部とした(表1参照)以外は、実施例2と同様にして熱伝導性シート1を作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は約62.0%であり、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの体積比率は、大粒径BNフィラー:小粒径BNフィラー=57:5である。
(実施例5)
表1に示した組成の通り、ミラブルタイプのシリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製、DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)3.50重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)1.50重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製 KF−96−3000CS)115重量部、及び、窒化ホウ素(XGP)505.5重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は約50.0%である。
その後、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、縦40mm×横40mm×厚さ200μmの熱伝導性シートを作製した。
(比較例1)
表1に示した組成の通り、シリコーン(DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)1.75重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)0.75重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(KF−96−3000CS)200重量部、窒化ホウ素(XGP)765重量部、及び、窒化ホウ素(UHP−1K)77.0重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本比較例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は約55.0%であり、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの体積比率は、大粒径BNフィラー:小粒径BNフィラー=50:5である。
その後、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、縦40mm×横40mm×厚さ200μmの熱伝導性シートを作製した。
[評価試験]
(1)アスカーC硬度
実施例及び比較例における熱伝導性シートの製造工程において、架橋処理後、スライス加工する前のシート(ブロック)のアスカーC硬度を測定した。測定は、測定時間を30秒後から15秒後に変更した以外はSRIS0101(日本ゴム規格協会)に準じてアスカーC硬度計で行った。
(2)温度サイクル試験
実施例及び比較例で作製した熱伝導性シート1を治具に固定し、この状態で温度サイクル試験を行った。ここで、温度サイクル試験機としては、ESPEC社製、TSA41Lを使用した。また、治具としては、図4に示した治具を使用した。図4は、本温度サイクル試験で使用した熱伝導性シートを挟持するための治具を示す断面図である。
治具50は、下段プレート51と、下段プレート51に対して上下動可能に設けられた中段プレート52と、中段プレート52の上方にコイルバネ54を介して設けられた上段プレート53を備える。各プレート51〜53は、厚さ10mmで100mm角のアルミ板(A5052製)からなる。
下段プレート51には、下端側及び上端側のそれぞれにネジ溝が設けられた4本の柱部材55が取り付けられ、中段プレート52及び上段プレート53は4本の柱部材55で支持されている。柱部材55は、下段プレート51の4隅に立設するように取り付けられている。そのため、下段プレート51の4隅には、貫通孔51aが設けられるとともに下段ナット56が固定されている。更に、4本の柱部材55は、中段プレート52及び上段プレート53に設けられた貫通孔52a、53aを挿通し、更に上段プレート53の上側に設けられた円筒状のスペーサ57も挿通している。柱部材55の上端側には上段ナット58が取り付けられている。
中段プレート52と上段プレート53との間にはコイルバネ54が設置されている。中段プレート52の貫通孔52a、上段プレート53の貫通孔53aには、ブッシュ58が嵌め込まれている。
このような治具50を用いて温度サイクル試験を行った。
まず、厚さ0.2mmの熱伝導性シート1を、厚さ1.0mmで4mm角のSUS板61(SUS304製)2枚で挟み、更に、これを厚さ10mmで4mm角のアルミ板62(A5052製)2枚で挟み、この状態で下段プレート51と中段プレート52との間に設置した。
その後、所定の圧力が熱伝導性シート1に印加されるように、上段プレート53を押し下げ、下段ナット56及び上段ナット58によって、上段プレート53を所定の位置(高さ)に固定した。
熱伝導性シート1に印加する圧力は、コイルバネ54の沈み込み量で制御した。
コイルバネ54としては、まず、コイルスプリング(型式:SWL40−45、バネ定数118N/mm)を使用し、このコイルバネ54の沈み込み量が14mmとなる位置で上段プレートを固定した。この場合、1652Nの荷重を40×40mm(1600mm)のSUS板で受けるので、熱伝導性シート1への印加圧力(初期圧縮応力)は、1.0MPaとなる。
その後、熱伝導性シート1を挟み込んだ治具50を上記温度サイクル試験機に投入し、−40℃30分間、常温5分間、150℃30分間を1サイクルとする温度サイクルを70サイクル行い、試験後の熱伝導性シートの状態を目視観察した。
また、実施例1〜4及び比較例1の熱伝導性シートについて、熱伝導性シート1に印加する圧力(初期圧縮応力)を2.0MPaとして同様の温度サイクル試験を行った。この試験は加速試験として機能することができる。
このとき、コイルバネ54としては、型式SWHシリーズのコイルスプリングを使用した。
印加圧力1.0MPaで行った温度サイクル試験後、各熱伝導性シート1の厚さを測定端子径5mmのダイヤルゲージで測定した。なお、厚さ測定は、破損やシワの発生等の変形が生じていない4隅付近及び中央付近の5箇所で行い、その平均値を算出した。
(3)熱抵抗値
実施例及び比較例で作製した厚さ200μmの熱伝導性シート1を、直径33mmに裁断して測定サンプルを作製した。この測定サンプルの厚さ方向の熱抵抗値をTIM TESTER MODEL1300を用いて測定圧力0.5MPa、サンプル温度25℃で計測した。
計測された値を表2に示した。なお、当該測定は定常法にて米国規格ASTM D5470に準拠した。
(4)熱伝導性シートの破れの有無
上記(2)で行った温度サイクル試験後の熱伝導性シート1の状態を目視観察した。
結果を表2に示した。
熱伝導性シート1の状態は、下記に示す「◎」〜「××」の5段階で評価した。
また、評価基準の参考のため、図5(a)〜図5(e)には温度サイクル試験後の熱伝導性シートを例示した。ただし、図5(a)〜図5(e)に示す温度サイクル試験後の熱伝導性シートは、必ずしも実施例及び比較例で作製したものではない。
(評価基準)
◎:形状変化なし(図5(a)参照)
〇:目視可能な形状変化あり(図5(b)参照)
△:過大変形あり(図5(c)参照)
×:重度な過大変形あり(図5(d)参照)
××:シート破れを伴う過大変形あり(図5(e)参照)
1 熱伝導性シート
2 マトリックス成分
4 熱伝導性フィラー
11 パワーモジュール
12 ヒートシンク
30 押出機
31 流路
32 第1ギャップ
33 第2ギャップ
34 スクリュー
50 治具

Claims (4)

  1. シリコーンと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂組成物からなり、パワーモジュールとヒートシンクとの間に設けられる熱伝導性シートであって、
    前記熱伝導性フィラーは、アスペクト比が4以上であり、
    前記熱伝導性シート中の前記熱伝導性フィラーの含有量は、40〜70体積%であり、
    下記条件で温度サイクル試験を行った際の熱伝導性シートの厚さ方向の圧縮量が10〜25%である、熱伝導性シート。
    [温度サイクル試験の条件]
    熱伝導性シートの厚さ:0.2mm
    初期圧縮応力:1MPa
    温度条件(1サイクル):−40℃で30分間保持した後、150℃で30分間保持
    サイクル数:70
  2. ASTM D5470に準ずる熱抵抗測定によって、測定圧力0.5MPa、シート厚さ0.2mmの条件で測定した熱抵抗値が0.27Kcm2/W以下である請求項1に記載の熱伝導性シート。
  3. 前記シリコーンは、側鎖にビニル基を有するシリコーンの架橋物と、シリコーンオイルとの混合物である請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
  4. 前記熱伝導性フィラーは、材質が窒化ホウ素であり、かつ形状が鱗片状である請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性シート。
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