JPWO2019189626A1 - 熱伝導性シート、熱伝導性シートの製造方法、及び、熱伝導性シートの使用方法 - Google Patents

熱伝導性シート、熱伝導性シートの製造方法、及び、熱伝導性シートの使用方法 Download PDF

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Abstract

生体組織を挟持するための一対の保持部材を備えた挟持部を有し、上記挟持部で標的生体組織を挟持するとともに、挟持した標的生体組織を加熱して処理する医療用デバイスに用いられ、少なくとも一方の上記保持部材における上記標的生体組織との接触部位に熱を伝導するための熱伝導性シートであって、シリコーンの架橋物及び熱伝導性フィラーを含有し、厚さ方向における圧縮応力とひずみ量とを200℃で測定し、得られた測定値に基づいて取得した応力−ひずみ曲線において、上記圧縮応力が1MPa以下の領域に変曲点が検出されない、熱伝導性シート。

Description

本発明は、医療用デバイスに用いられる熱伝導性シート、熱伝導性シートの製造方法、及び、熱伝導性シートの使用方法に関する。
生体組織を外科的に処置するための医療用デバイスとして、熱エネルギーを用いて生体組織を治療する医療用デバイスが知られている。
例えば、特許文献1では、通電により発熱する電気抵抗パターン(発熱パターン)と、上記電気抵抗パターンからの熱を生体組織に伝達する伝熱板と、上記電気抵抗パターンと上記伝熱板との間に介装された熱伝導性の接着シートと、を含む治療用エネルギー付与構造を備え、一対の伝熱板で生体組織を挟持しつつ、当該生体組織に熱エネルギーを供給することができるように構成された医療用デバイスが提案されている。
特許文献1に記載された医療用デバイスは、電気抵抗パターンが発する熱を熱伝導性の接着シートを介して伝熱板に伝達し、この伝熱板によって標的生体組織に熱エネルギーを供給し(標的生体組織を加熱し)、当該標的生体組織に処置を施す。
特許文献1に記載された医療用デバイスにおいて、接着シートは熱伝導性及び絶縁性を有する部材である。上記接着シートは、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、グラファイト、アルミニウム等を材質とする熱伝導性フィラーをエポキシ樹脂やポリウレタン等の樹脂と混合し、形成してなるものが使用されている。
国際公開第2016/166817号
特許文献1に記載された医療用デバイスでは、一対の伝熱板で標的生体組織を挟持しつつ、当該標的生体組織を加熱する。そのため、上記医療用デバイスを構成する熱伝導性の接着シートは、熱伝導性に優れることは勿論のこと、耐熱性に優れることも求められる。
更に、上記医療用デバイスは、生体組織を挟持する必要があり、生体組織を挟持した際には上記接着シートに厚さ方向から荷重が掛かるのが一般的である。また、上記医療用デバイスは、繰り返し使用される(生体組織の挟持と解放とが繰り返される)のが通常である。
従って、上記医療用デバイスに用いられる熱伝導性シートは、繰り返し使用しても上記接着シートの厚さ方向に掛かる荷重によって塑性変形しないことが求められている。上記接着シートが塑性変形した場合、電気抵抗パターンと伝熱板との間の熱伝導性が低下することがある。
本発明者らはこのような状況のもと、熱伝導性及び耐熱性に優れ、厚さ方向に掛かる所定の荷重によって塑性変形しない熱伝導性シートであれば、医療用デバイス用の熱伝導性シートとして極めて好適であることを見出し、本発明を完成した。
(1)本発明の熱伝導性シートは、生体組織を挟持するための一対の保持部材を備えた挟持部を有し、上記挟持部で標的生体組織を挟持するとともに、挟持した標的生体組織を加熱して処理する医療用デバイスに用いられ、少なくとも一方の上記保持部材における上記標的生体組織との接触部位に熱を伝導するための熱伝導性シートであって、
シリコーンの架橋物及び熱伝導性フィラーを含有し、
厚さ方向における圧縮応力とひずみ量とを200℃で測定し、得られた測定値に基づいて取得した応力−ひずみ曲線において、上記圧縮応力が1MPa以下の領域に変曲点が検出されない、熱伝導性シートである。
本発明の熱伝導性シートは、200℃で測定した応力−ひずみ曲線(以下、S−S曲線ともいう)において、圧縮応力が1MPa以下の領域に変曲点が検出されないことを特徴の1つとする。
この特徴は、上記熱伝導性シートにおいて厚さ方向に掛かる荷重が1MPa以下の場合、上記熱伝導性シートが厚さ方向に塑性変形しないことを意味する。
ここで、上記熱伝導性シートの使用態様、即ち、上記熱伝導性シートが、生体組織を挟持するための一対の保持部材を備えた挟持部を有し、上記挟持部で標的生体組織を挟持するとともに、挟持した標的生体組織を加熱して処理する医療用デバイスにおいて、上記保持部材における上記標的生体組織との接触部位に熱を伝導するためのシートであることを考慮すると、200℃に加熱された状態において、厚さ方向に掛かる荷重が1MPa以下で塑性変形しなければ、多く場合、上記熱伝導性シートは塑性変形することがなく、繰り返し使用することができる。
そのため、上記熱伝導性シートを用いた上記医療用デバイスは、長期間に亘って、高い信頼性で使用することができる。
本発明において、応力−ひずみ曲線における変曲点とは、縦軸を厚さ方向の圧縮応力、横軸をひずみ量として応力−ひずみ曲線を描画した際に、描画された曲線において曲がる方向が変わる点のことをいう。
また、上記応力−ひずみ曲線を描画した際に、当該応力−ひずみ曲線が滑らかな曲線とならなかった場合(例えば、後述する比較例1で取得した図7Cに示す応力−ひずみ曲線参照)には、応力−ひずみ曲線を滑らかな曲線に近似した後、変曲点を検出しても良い。
(2)上記熱伝導性シートにおいて、上記熱伝導性フィラーの配合量は、50〜70体積%であることが好ましい。
(3)上記熱伝導性シートは、更に、未架橋のシリコーンを含有することが好ましい。
(4)上記熱伝導性シートは、シリコーン、過酸化物及び熱伝導性フィラーを含有し、上記シリコーンの全量に対する上記過酸化物の配合量が0.3〜1.0重量%であるシリコーン系組成物の架橋物からなることが好ましい。
これらの場合、200℃で測定したS−S曲線(以下、S−S曲線(200℃)ともいう)において、変曲点が検出されないか、又は変曲点が検出される圧縮応力が更に高くなりやすく、厚さ方向に荷重が掛かった際により変形しにくい熱伝導性シートとなる。
(5)本発明の熱伝導性シートの製造方法は、上記(1)〜(4)の熱伝導性シートを製造する方法であって、
(a)シリコーン、過酸化物及び熱伝導性フィラーを含有するシリコーン系組成物を調製する工程、
(b)調製したシリコーン系組成物を成形する工程、及び、
(c)成形されたシリコーン系組成物を架橋し、その後、シート状にスライス加工する工程、を行う。
本発明の製造方法によれば、本発明の熱伝導性シートを好適に製造することができる。
(6)本発明の熱伝導性シートの使用方法は、生体組織を挟持するための一対の保持部材を備えた挟持部を有し、上記挟持部で標的生体組織を挟持するとともに、挟持した標的生体組織を加熱して処理する医療用デバイスにおいて、少なくとも一方の上記保持部材における上記標的生体組織との接触部位に熱を伝導するために用いる熱伝導性シートの使用方法であって、
上記熱伝導性シートが本発明の熱伝導性シートである。
このような熱伝導シートの使用方法も本発明の1つである。
本発明によれば、生体組織を挟持するための一対の保持部材を備えた挟持部を有し、上記挟持部で標的生体組織を挟持するとともに、挟持した標的生体組織を加熱して処理する医療用デバイスにおいて、上記保持部材における上記標的生体組織との接触部位に熱を伝導するために用いる熱伝導性シートを提供することができる。
本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを使用する医療用デバイスの一例を模式的に示す図である。 図1に示した医療用デバイスの先端部の拡大図である。 図2に示した医療用デバイスの先端部の一部のA−A線断面図である。 本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの一例を模式的に示す斜視図である。 図4AのB−B線断面における部分拡大図である。 本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの製造で使用する押出機の要部を模式的に示す図である。 実施例1で作製した熱伝導性シートのS−S曲線であって、23℃で測定したS−S曲線である。 実施例1で作製した熱伝導性シートのS−S曲線であって、100℃で測定したS−S曲線である。 実施例1で作製した熱伝導性シートのS−S曲線であって、200℃で測定したS−S曲線である。 比較例1で作製した熱伝導性シートのS−S曲線であって、23℃で測定したS−S曲線である。 比較例1で作製した熱伝導性シートのS−S曲線であって、(b)は100℃で測定したS−S曲線である。 比較例1で作製した熱伝導性シートのS−S曲線であって、(c)は200℃で測定したS−S曲線である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
まずは、図1〜3を参照しながら、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートが用いられる医療用デバイスの一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを使用する医療用デバイスの一例を模式的に示す図である。図2は、図1に示した医療用デバイスの先端部の拡大図である。図3は、図2に示した医療用デバイスの先端部の一部のA−A線断面図である。
医療用デバイス1は、処置対象である生体組織に熱エネルギーを付与し、当該生体組織を処置(例えば、接合(又は吻合)、切離、凝固など)するものである。
医療用デバイス1は、図1に示すように、処置装置2と、制御装置3とフットスイッチ4とを備える。
処置装置2は、例えば、腹壁を通して生体組織に処置を行うためのリニアタイプの外科医療用処置具である。この処置装置2は、図1に示すように、ハンドル5と、シャフト6 と、挟持部7とを備える。
ハンドル5は、術者が把持する部分である。ハンドル5には、操作ノブ5aが設けられている。
シャフト6は、略円筒形状を有し、一端がハンドル5に接続されている。また、シャフト6の他端には、挟持部7が取り付けられている。そして、シャフト6の内部には、術者による操作ノブ5aの操作に応じて、挟持部7を構成する保持部材8A、8Bを開閉させる開閉機構(図示せず)が設けられている。また、シャフト6の内部には、制御装置3に接続された電気ケーブル19がハンドル5を介して一端側から他端側まで配設されている。
図1、2に示す挟持部7は、生体組織を挟持して、当該生体組織を処置する部分である。挟持部7は、一対の保持部材8A、8Bを備える。一対の保持部材8A、8Bは、矢印R(図2参照)方向に開閉可能にシャフト6の他端に軸支されている。一対の保持部材8A、8Bは、術者による操作ノブ5aの操作に応じて開閉し、一対の保持部材8A、8Bが閉鎖することによって生体組織を挟持する。
各保持部材8A、8Bは、挟持した生体組織に熱エネルギーを付与する(生体組織を加熱する)ことができるように構成されている。
保持部材8Aは、筐体9と筐体9内に収容された加熱用積層体10とを備える。
加熱用積層体10は、生体組織に接触して当該生体組織に熱を伝達する伝熱板11と、絶縁性基材13Aの片面に導電体からなる発熱パターン13Bが設けられた発熱板13と、伝熱板11と発熱板13との間に設けられた熱伝導性シート12とを備える。
加熱用積層体10を備えた保持部材8Aは、発熱板13の発熱パターン13Bを通電することにより発生した熱を、熱伝導性シート12を介して伝熱板11に伝達することができる。ここで、熱伝導性シート12は本発明の実施形態に係る熱伝導性シートである。そのため、保持部材8Aは、発熱板13で発生した熱を高効率(高熱伝導率)で伝熱板11に伝達することができる。
伝熱板11は、例えば銅等の材料で構成された薄板であり、保持部材8Aに取り付けられた状態で保持部材8Bと対向する側の面を処置面11aとする。伝熱板11は、一対の保持部材8A、8Bにて生体組織を挟持した際に、処置面11aで当該生体組織に接触するとともに、発熱板13からの熱を生体組織に伝達し、当該生体組織を加熱する。
発熱板13は、絶縁性基材13Aと、その片面に設けられた発熱パターン13Bとを備える。
絶縁性基材13Aは、ポリイミド等の絶縁材料で構成されたシートであり、可撓性を有する。
発熱パターン13Bは、ステンレス(SUS304)等の導電性材料を加工したものであり、絶縁性基材13Aの一方の面に熱圧着されている。上記導電性材料はステンレスに限定されず、プラチナ、タングステン等の他の導電性材料を採用することもできる。また、発熱パターン13Bは、蒸着等により形成されたものでも良い。
発熱パターン13Bは、電気ケーブル19を介して電源(図示せず)に接続されており、通電することにより発熱させることができる。
保持部材8Bは、シャフト6に取付ける際に上下が反転する以外は、保持部材8Aと同様の構成を有している。
加熱用積層体10において、伝熱板11と熱伝導性シート12との間、及び/又は、発熱板13と熱伝導性シートとの間には、必要に応じて熱伝導性の接着剤層が設けられていても良い。
なお、熱伝導性シート12の構成については、後で詳しく説明する。
図1に戻って、フットスイッチ4は、術者が足で操作する部分である。そして、フットスイッチ4への当該操作に応じて、制御装置3から処置装置2(発熱パターン13B)への通電のオン及びオフが切り替えられる。
制御装置3は、CPU等を含んで構成され、所定の制御プログラムにしたがって処置装置2の動作を統括的に制御する。具体的には、制御装置3は、術者によるフットスイッチ4への操作に応じて、電気ケーブル19を介して発熱パターン13Bに電圧を印加して、伝熱板11を加熱する。
次に、医療用デバイス1の動作(作動方法)について簡単に説明する。
術者は、処置装置2を把持し、処置装置2の先端部分(挟持部7及びシャフト6の一部)を、例えばトロッカ等を用いて腹壁を通して腹腔内に挿入する。さらに、術者は、操作ノブ5aを操作し、保持部材8A、8Bにて標的生体組織を挟持する。
その後、術者は、フットスイッチ4を操作し、制御装置3から処置装置2への通電をオンに切り替える。この操作により、制御装置3は、電気ケーブル19を介して発熱パターン13Bに電圧を印加し、伝熱板11を加熱する。そして、伝熱板11の熱により、伝熱板11に接触している標的生体組織は処置される。
次に、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートについて詳述する。
本発明の実施形態に係る熱伝導性シートは、シリコーンの架橋物及び熱伝導性フィラーを含有する。上記熱伝導性シートは、厚さ方向における圧縮応力とひずみ量とを200℃で測定し、得られた測定値に基づいて取得した応力−ひずみ曲線(S−S曲線(200℃))において、上記圧縮応力が1MPa以下の領域に変曲点が検出されないシートである。
本発明の実施形態に係る熱伝導性シートは、上述した通り、医療用デバイス1(処置装置2)における熱伝導性シート12として好適に使用することができる。
勿論、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを使用することができる医療用デバイスは、図1〜3に示した医療用デバイス1に限定されるわけではない。
図4Aは本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの一例を模式的に示す斜視図であり、図4Bは図4AのB−B線断面における部分拡大図である。
熱伝導性シート12は、図4A、4Bに示すように、マトリックス成分22と熱伝導性フィラー24とを有しており、マトリックス成分22中の熱伝導性フィラー24が熱伝導性シート12の厚さ方向にほぼ配向している。熱伝導性シート12では、熱伝導性フィラー24による熱伝導パスが、熱伝導性シート12のほぼ厚さ方向に形成されている。また、熱伝導性シート12は、厚さ方向にウェルドラインが形成されることもある。
本発明の実施形態に係る熱伝導性シートでは、熱伝導性フィラー以外の成分をまとめてマトリックス成分と称する。
マトリックス成分22は、少なくともシリコーンの架橋物を含有する。そのため、熱伝導性シート12は耐熱性に優れる。
本発明において、シリコーンの架橋物とは、シロキサン結合による主骨格を有する高分子(シリコーン)が架橋したものである。ここで、シリコーンの架橋は、過酸化物架橋であっても良いし、付加反応型の架橋であっても良いが、過酸化物架橋が好ましい。過酸化物架橋によって架橋されたシリコーンの架橋物の方が耐熱性に優れるからである。
上記シリコーンの架橋物として、側鎖(末端も含む)の一部にビニル基を有するシリコーンを架橋させたものが好ましい。
上記側鎖の一部にビニル基を有するシリコーンの具体例としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
マトリックス成分22は、上記シリコーンの架橋物に加えて、未架橋のシリコーンを含有していても良い。上記未架橋のシリコーンとしては、例えば、側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーン等が挙げられる。
マトリックス成分22が、シリコーンの架橋物と、未架橋のシリコーンとを含有する場合、マトリックス成分22の状態を、上記シリコーンの架橋物によってもたらされる3次元網目構造の隙間に、上記未架橋のシリコーンが入り込んだ状態とすることができる。このようなマトリックス成分22を有する熱伝導性シートは、柔軟性及び耐久性がより優れたものとなる。
上記未架橋のシリコーンとしては、側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンであって、一般にシリコーンオイルと呼ばれるものやミラブルタイプのシリコーン(ミラブルタイプのシリコーンゴムの含まれる生ゴム)を好適に用いることができる。
上記シリコーンオイルとしては、ウッベローデ粘度計で測定した25℃の動粘度が1000〜200000cs(センチストークス)のものが好ましく、3000〜100000csのものがより好ましい。
また、上記シリコーンオイルの数平均分子量は、10000〜100000が好ましい。上記シリコーンオイルの数平均分子量が10000未満では、熱伝導性シート1からシリコーンオイルがブリードしやすくなる。
上記ミラブルタイプのシリコーンとしては、数平均分子量が200000〜500000であって、側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンが好ましい。
本発明において、シリコーンオイルやミラブルタイプのシリコーンの数平均分子量は、JIS−K7252−1:2008年「プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方−第1部:通則」に準拠し、ポリスチレンを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した数平均分子量である。
上記過酸化物架橋を行う際の過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、P−メチルベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
更に、架橋時には、架橋促進剤や架橋促進助剤等を併用しても良い。
上記過酸化物の好ましい配合量は、シリコーン、過酸化物及び熱伝導性フィラーを含有する、熱伝導性シートを得るためのシリコーン系組成物において、上記シリコーンの全量に対する量として、0.3〜1.0重量%である。
上記過酸化物の配合量が、上記シリコーンの全量に対して0.3重量%未満では、S−S曲線(200℃)において、1MPa以下の領域に変曲点が検出されない熱伝導性シートとすることが難しくなる。
一方、上記過酸化物の配合量が、上記シリコーンの全量に対して1.0重量%を超えると、上記熱伝導性シートと、伝熱板11や発熱板13などの上記熱伝導性シートと接触する部材との界面での抵抗値が大きくなってしまい熱伝導性が低下してしまうことがある。
マトリックス成分22は、熱伝導性シート12の要求特性を損なわない範囲で、他のエラストマー成分やゴム成分等を含有していても良い。
また、本発明の実施形態において、熱伝導性シートを得るためのシリコーン系組成物に、側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンを配合した場合、当該側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンの一部は、マトリックス成分22において、他のシリコーンと架橋していても良い。
マトリックス成分22は、難燃剤を含有しても良い。
上記難燃剤としては、例えば、白金系化合物、トリアゾール系化合物、べんがら、黒鉄などの酸化鉄等が挙げられる。これらは、単独でも用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記白金系化合物の配合量は、熱伝導性シート12全体に対して、0.0001〜0.2重量%が好ましい。
上記トリアゾール系化合物の配合量は、熱伝導性シート12全体に対して0.001〜2重量%以上であることが好ましい。
マトリックス成分22は、炭酸カルシウム粉末、シリカ粉末及びゴムパウダーの少なくとも1種を含有しても良い。これらのいずれかを含有させた場合、熱伝導性シート12を製造する際の成形性を向上させることができる。
マトリックス成分22は、更に、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、粘着付与剤、帯電防止剤、練り込み接着剤、カップリング剤等の一般的な配合・添加剤を含有しても良い。
熱伝導性シート12は、熱伝導性フィラー24を含有する。
熱伝導性フィラー24の材質としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、銅、アルミニウム等が挙げられる。熱伝導性フィラー24は、単一の材質からなる1種類の熱伝導性フィラーのみを含んでいても良いし、材質の異なる複数種類の熱伝導性フィラーを含んでいても良い。
これらの熱伝導性フィラーのなかでは、熱伝導性シート12の厚さ方向に配向させやすく、上記厚さ方向に優れた熱伝導性を付与することができる点から窒化ホウ素(BN)が好ましい。
熱伝導性フィラー24の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導性フィラー24の形状は、例えば、鱗片状、板状、膜状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状などが挙げられる。これらのなかでは鱗片状が好ましい。
熱伝導性フィラー24は、熱伝導パスを形成する観点及びマトリックス成分22中で配向しやすいという観点から、アスペクト比が2以上であることが好ましい。
熱伝導性フィラー24の粒子径は、20〜60μmが好ましい。上記粒子径が20μm未満では熱伝導性フィラーの充填性が悪くなり熱伝導パスが形成されにくくなる。一方、上記粒子径が60μmを超えると、熱伝導性フィラーを緻密に充填することが困難となり、また、熱伝導性シート12を製造する際に熱伝導性フィラーが破損しやすくなる。
本発明において、上記熱伝導性フィラーの粒子径とは、レーザ回折・散乱法を用いて測定したメジアン径(d50)の値をいう。
また、上記熱伝導性フィラーの形状が鱗片状の場合、上記熱伝導性フィラーの粒子径とは、熱伝導性フィラーにおいて最も長い部分の長さをいう。
熱伝導性フィラー24としては、粒子径の異なる熱伝導性フィラー24を併用しても良い。
この場合、窒化ホウ素からなり粒子径(d50)が20〜60μmの熱伝導性フィラー(以下、大粒径BNフィラーともいう)と、窒化ホウ素からなり粒子径(d50)が5μm以上20μm未満の熱伝導性フィラー(以下、小粒径BNフィラーともいう)とを併用することが好ましい。寸法の異なる熱伝導性フィラーを併用することにより、熱伝導性シートにおける熱伝導性フィラーの含有量を高含有量としやすい。また、上記S−S曲線(200℃)において、変曲点が検出される厚さ方向の圧縮応力を高圧縮応力としやすい。
上記大粒径BNフィラーと上記小粒径BNフィラーとを併用する場合、両者の形状はいずれも鱗片状が好ましい。
熱伝導性シート12において、熱伝導性フィラー24の含有量は50〜70体積%が好ましい。
熱伝導性フィラー24の含有量がこの範囲にあれば、優れた熱伝導性を確保しつつ、上記S−S曲線(200℃)において、変曲点が検出される厚さ方向の圧縮応力を高圧縮応力とするのに適している。
熱伝導性シート12における熱伝導性フィラー24の含有量は、60〜70体積%がより好ましい。
また、上記熱伝導性フィラーとして、上記大粒径BNフィラーと上記小粒径BNフィラーとを併用する場合、上記熱伝導性シートにおける上記熱伝導性フィラーの含有量は、両者の合計量として50〜70体積%が好ましく、60〜70体積%がより好ましい。
また、上記大粒径BNフィラーと上記小粒径BNフィラーとを併用する場合、両者の配合比率は、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの合計量に対する大粒径BNフィラーの量が66体積%以上となることが好ましい。
熱伝導性シート12の厚さは特に限定されず、上記医療用デバイスの設計に応じて適宜設定すれば良い。熱伝導性シート12の厚さは、通常0.1〜1.0mm程度である。
熱伝導性シート12は、既に説明した通り、S−S曲線(200℃)において、圧縮応力1MPa以下の領域に変曲点が検出されないシートである。そのため、上記医療用デバイスに好適に用いることできる。
熱伝導性シート12は、S−S曲線(200℃)において、圧縮応力2.5MPa以下の領域に変曲点が検出されないことが好ましく、圧縮応力3.0MPa以下の領域に変曲点が検出されないことがより好ましい。
熱伝導性シート12が用いられる医療用デバイス1のような生体組織を挟持する医療用デバイスでは、生体組織を挟持する保持部材8A、8Bにおいて生体組織を挟持した際に、熱伝導性シート12の厚さ方向に2.5MPaを超える荷重が掛かることは稀であり、3.0MPaを超える荷重が掛かることは極めて稀である。そのため、上述した圧縮応力の領域に変曲点が検出されないシートとすることによって、上記医療用デバイスの使用時に熱伝導性シート12が塑性変形してしまうことを回避することができる。
従って、熱伝導性シート12を用いた上記医療用デバイスは、長期間に亘って高い信頼性を維持することができる。
次に、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを製造する方法について説明する。
上記熱伝導性シートは、下記(a)〜(c)の工程を行うことにより製造することができる。
(a)シリコーン、過酸化物及び熱伝導性フィラーを含有するシリコーン系組成物を調製する工程、
(b)調製したシリコーン系組成物を成形する工程、及び、
(c)成形されたシリコーン系組成物を架橋し、その後、シート状にスライス加工する工程。
まず、シリコーン系組成物を調製する工程(a)を行う。シリコーン系組成物は、熱伝導性シートを得るための原料組成物である。ここでは、例えば、側鎖(末端も含む)の一部にビニル基を有するシリコーンや側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンなどのシリコーン、有機過酸化物、熱伝導性フィラー、更には、必要に応じて添加する各種添加剤を2本ロールで練り込む等によって調製すれば良い。
このとき、各成分はマスターバッチの状態で供給しても良い。
次に、調製したシリコーン系組成物を成形する工程(b)と、成形されたシリコーン系組成物(樹脂シート前駆体)を架橋し、その後、シート状にスライス加工する工程(c)とを行う。
上記シリコーン系組成物の成形は、例えば、押出機を用いて行えば良い。
図5は、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの製造で使用する押出機の要部を模式的に示す図である。図5には、押出機の先端部分及びTダイの断面概略図を示す。
押出機30に投入された上記シリコーン系組成物は、スクリュー34によって撹拌・混練され、流路31に沿ってTダイの第1ギャップ32に導入される。
押出機30に投入されたシリコーン系組成物は、まず、第1ギャップ32によって上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれて薄い帯状となる。第1ギャップ32を通過するシリコーン系組成物にはせん断力が作用し、このとき、シリコーン系組成物中に混合されている熱伝導性フィラーがシリコーン系組成物の流れ方向(押出方向)に配向する。従って、第1ギャップ32を通過して成形された厚さの薄い樹脂シート前駆体は、熱伝導性フィラーが当該前駆体の面方向に配向している。
第1ギャップ32の隙間(図5中、上下方向の寸法)は、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。第1ギャップ32の隙間が0.1mmよりも小さいと、押出し圧力が不必要に上昇することがあり、更には樹脂詰まりが発生してしまうことがある。一方、第1ギャップ32の隙間が5.0mmよりも大きいと、上記薄い樹脂シート前駆体の面方向に対する熱伝導性フィラーの配向度が減少することがある。
熱伝導性フィラーが面方向に配向した上記薄い樹脂シート前駆体は、第1ギャップ32を完全に通過すると、押出方向に限定されていたシートの流れ方向が解放されて、当該流れ方向が押出方向に対してほぼ垂直となる方向に変化する。これは、第1ギャップ32を通過した後の流路31の断面積が拡大し、流路31の上下方向の長さが長くなるためである。
シートの流れ方向が押出方向に対してほぼ垂直となる方向に変化した上記薄い樹脂シート前駆体は、第1ギャップ32を完全に通過した後、更に第2ギャップ33に向かって押し出される。その結果、第2ギャップ33内の樹脂シート前駆体は、上記薄い樹脂シート前駆体が積層された状態となる。その際に熱伝導性フィラーの多くは、第2ギャップ33内の樹脂シート前駆体の厚さ方向(図5中、上下方向)に配向させられる。
その後、第2ギャップ33を通過した樹脂シート前駆体を必要に応じて所定の条件で加熱することにより架橋を進行させ、シリコーンの架橋物と熱伝導性フィラーを含む熱伝導性シートのブロックを作製する。また、樹脂シート前駆体を架橋させた後は、必要に応じていわゆる二次架橋を行っても良い。
最後に、熱伝導性シートのブロックを厚さ方向に垂直な方向にスライス加工する。その結果、所定の厚さを有し、熱伝導性フィラーが厚さ方向にほぼ配向した熱伝導性シート12を得ることができる。
このような、熱伝導性シート12の製造方法において、第2ギャップ33の隙間は第1ギャップ32の隙間の2倍以上20倍以下であることが好ましい。第2ギャップ33の隙間が第1ギャップ32の隙間の2倍よりも小さい場合は、熱伝導性フィラー24の多くが熱伝導性シート12の厚さ方向に配向しなくなることがある。また、第2ギャップ33の隙間が第1ギャップ32の隙間の20倍よりも大きな場合は、部分的に樹脂シート前駆体が乱流した状況が生じやすくなり、その結果、熱伝導性シート12の厚さ方向に配向する熱伝導性フィラー24の割合が減少してしまうことがある。
第2ギャップ33の隙間は第1ギャップ32の隙間の2倍以上10倍以下であることがより好ましい。
また、上記薄い樹脂シート前駆体が、第1ギャップ32を通過した後、流路31の上下方向において均等に流れやすくなるように、第1ギャップ32における厚さ方向の中心位置と第2ギャップ33における厚さ方向の中心位置とは、厚さ方向において略同一の位置にあることが好ましい。
また、第1ギャップ32における開口部(第1ギャップに繋がる部分)の形状は特に規定されないが、上流側側面(上下面)は圧力損失が少ないように傾斜面とすることが好ましく、下流側側面(上下面)については最も効率良く熱伝導性フィラーを樹脂シートの厚さ方向に配向させるために、傾斜角度(押出方向と傾斜面とのなす角度)を調整することが望ましい。当該傾斜角度は、例えば10°〜50°が好ましく、20°〜25°がより好ましい。
第1ギャップ32に繋がる開口部の形状は、上下面が共に傾斜を有している必要はなく、どちらか一方のみが傾斜を有していても良い。
なお、第1ギャップ32及び第2ギャップ33の奥行(即ち、図5において紙面に垂直な方向における第1ギャップ32及び第2ギャップ33の寸法)は、Tダイの全体にわたって略同一である。また、上記第1ギャップ及び上記第2ギャップの奥行は特に規定されず、樹脂シートの製品幅に応じて種々の設計変更が可能である。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示した組成の通り、シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製 DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(東レ・ダウコーニング株式会社製 MR−53)7重量部、架橋剤として有機過酸化物(東レ・ダウコーニング株式会社製、RC−4 50P FD:過酸化物含有量50重量%)3重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製 KF−96−3000CS)100重量部、窒化ホウ素(デンカ株式会社製 XGP、粒子径35μm)664.0重量部、及び、窒化ホウ素(昭和電工株式会社製 UHP−1K、鱗片状、粒子径8μm)60.4重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシート(シリコーン系組成物)を作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は60%であり、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの体積比率は、大粒径BNフィラー:小粒径BNフィラー=55:5である。また、シート全体に含まれるシリコーン全量に対する有機過酸化物の重量割合は0.73%である。
次に、作製したリボン状のシートをゴム用短軸押出機30にて、1mmの第1ギャップ及び10mmの第2ギャップを有する垂直配向金型を用いて(図5参照)、厚さ10mmのシートを作製し、180℃で10分間の架橋処理を施した。
その後、得られたシートを厚さ方向に垂直な方向にスライス加工し、厚さ200μmの熱伝導性シート、及び、厚さ300μmの熱伝導性シートを作製した。
(実施例2)
表1に示した組成の通り、シリコーン(DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)7重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)3重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(KF−96−3000CS)100重量部、及び、窒化ホウ素(XGP)724.3重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は60%である。また、シート全体に含まれるシリコーン全量に対する有機過酸化物の重量割合は0.73%である。
次に、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmの熱伝導性シート、及び、厚さ300μmの熱伝導性シートを作製した。
(実施例3)
表1に示した組成の通り、シリコーン(DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)7重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)3重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(KF−96−3000CS)100重量部、窒化ホウ素(XGP)603.6重量部、及び、窒化ホウ素(UHP−1K)120.7重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は60%であり、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの体積比率は、大粒径BNフィラー:小粒径BNフィラー=50:10である。また、シート全体に含まれるシリコーン全量に対する有機過酸化物の重量割合は0.73%である。
次に、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmの熱伝導性シート、及び、厚さ300μmの熱伝導性シートを作製した。
(実施例4)
表1に示した組成の通り、シリコーン(DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)5.29重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)2.27重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(KF−96−3000CS)115重量部、及び、窒化ホウ素(XGP)510.0重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は50%である。また、シート全体に含まれるシリコーン全量に対する有機過酸化物の重量割合は0.52%である。
次に、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmの熱伝導性シート、及び、厚さ300μmの熱伝導性シートを作製した。
(実施例5)
表1に示した組成の通り、シリコーン(DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)3.5重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)1.5重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(KF−96−3000CS)115重量部、及び、窒化ホウ素(XGP)505.5重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は50%である。また、シート全体に含まれるシリコーン全量に対する有機過酸化物の重量割合は0.35%である。
次に、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmの熱伝導性シート、及び、厚さ300μmの熱伝導性シートを作製した。
(比較例1)
表1に示した組成の通り、シリコーン(DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)1.75重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)0.75重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)10重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(KF−96−3000CS)200重量部、窒化ホウ素(XGP)765.0重量部、及び、窒化ホウ素(UHP−1K)77.0重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は55%であり、大粒径BNフィラーと小粒径BNフィラーとの体積比率は、大粒径BNフィラー:小粒径BNフィラー=50:5である。また、シート全体に含まれるシリコーン全量に対する有機過酸化物の重量割合は0.13%である。
次に、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmの熱伝導性シート、及び、厚さ300μmの熱伝導性シートを作製した。
(比較例2)
表1に示した組成の通り、シリコーン(DY32−1005U)100重量部、ビニル基含有シリコーンコンパウンド(MR−53)1.75重量部、有機過酸化物(RC−4 50P FD)0.75重量部、白金化合物を含むビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ME400−FR)50重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(ME41−F)1重量部、酸化鉄を含むシリコーン混和物(XC87−905)5重量部、シリコーンオイル(KF−96−3000CS)200重量部、及び、窒化ホウ素(XGP)794.5重量部を2本ロールで練り込み、幅約100mmで、厚さ約1mmのリボン状のシートを作製した。
本実施例において、シート全体に対する窒化ホウ素の体積分率は50%である。また、シート全体に含まれるシリコーン全量に対する有機過酸化物の重量割合は0.11%である。
次に、得られたリボン状のシートを用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmの熱伝導性シート、及び、厚さ300μmの熱伝導性シートを作製した。
[評価試験]
(1)S−S曲線における変曲点の検出
得られた厚さ300μmの熱伝導性シートについて、23℃、100℃及び200℃のそれぞれの測定温度でS−S曲線を取得した。その後、得られたS−S曲線において、変曲点を示す圧縮応力を特定した。結果を表2に示した。なお、表2に示した「>3」の結果は、圧縮応力3MPa以下の領域に変曲点が認められなかったことを意味する。
また、参考のため、図6A〜図6Cには実施例1の熱伝導性シートのS−S曲線を示し、図7A〜図7Cには比較例1の熱伝導性シートのS−S曲線を示した。
S−S曲線の取得手法は下記の通りである。
熱伝導性シートを、万能引張圧縮試験機(インストロン1175型)を用いて、圧縮速度0.5mm/minで圧縮し、その時のひずみ量と圧縮応力とを測定した。その後、測定値をプロットし、S−S曲線を取得した。
なお、サンプルサイズは、縦10mm×幅10mm×厚さ300μmとした。
(2)熱抵抗
得られた厚さ200μmの熱伝導性シートの厚さ方向の熱抵抗をTIM TESTER1300を用いて3水準の測定圧力(0.3MPa、0.5MPa及び1.0MPa)で計測し、計測された値を表2に示した。なお、当該測定は定常法にて米国規格ASTM D5470に準拠した。なお、熱抵抗の測定は、実施例1〜3及び比較例1の熱伝導性シートについて行った。
1 医療用デバイス
2 処置装置
3 制御装置
4 フットスイッチ
5 ハンドル
5a 操作ノブ
6 シャフト
7 挟持部
8A、8B 保持部材
9 筐体
10 加熱用積層体
11 伝熱板
11a 処置面
12 熱伝導性シート
13 発熱板
13A 絶縁性基材
13B 発熱パターン
22 マトリックス成分
24 熱伝導性フィラー
30 押出機
31 流路
32 第1ギャップ
33 第2ギャップ
34 スクリュー

Claims (6)

  1. 生体組織を挟持するための一対の保持部材を備えた挟持部を有し、前記挟持部で標的生体組織を挟持するとともに、挟持した標的生体組織を加熱して処理する医療用デバイスに用いられ、少なくとも一方の前記保持部材における前記標的生体組織との接触部位に熱を伝導するための熱伝導性シートであって、
    シリコーンの架橋物及び熱伝導性フィラーを含有し、
    厚さ方向における圧縮応力とひずみ量とを200℃で測定し、得られた測定値に基づいて取得した応力−ひずみ曲線において、前記圧縮応力が1MPa以下の領域に変曲点が検出されない、熱伝導性シート。
  2. 前記熱伝導性フィラーの配合量は、50〜70体積%である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
  3. 更に、未架橋のシリコーンを含有する請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
  4. シリコーン、過酸化物及び熱伝導性フィラーを含有し、前記シリコーンの全量に対する前記過酸化物の配合量が0.3〜1.0重量%であるシリコーン系組成物の架橋物からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性シート。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性シートを製造する方法であって、
    (a)シリコーン、過酸化物及び熱伝導性フィラーを含有するシリコーン系組成物を調製する工程、
    (b)調製したシリコーン系組成物を成形する工程、及び、
    (c)成形されたシリコーン系組成物を架橋し、その後、シート状にスライス加工する工程、
    を行う熱伝導性シートの製造方法。
  6. 生体組織を挟持するための一対の保持部材を備えた挟持部を有し、前記挟持部で標的生体組織を挟持するとともに、挟持した標的生体組織を加熱して処理する医療用デバイスにおいて、少なくとも一方の前記保持部材における前記標的生体組織との接触部位に熱を伝導するために用いる熱伝導性シートの使用方法であって、
    前記熱伝導性シートは、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性シートである、方法。
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JP2018095691A (ja) * 2016-12-09 2018-06-21 日立化成株式会社 熱伝導シート及び熱伝導シートを用いた放熱装置

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