JP3563638B2 - 熱伝導材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等の発熱体からの放熱を促すため、その発熱体に対して接触するように配置して使用される熱伝導材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、シリコーンゴムに熱伝導フィラーを充填してなる熱伝導材が考えられている。この種の熱伝導材は、電気・電子装置の内部において、例えば、発熱源となる電子部品と、放熱板や筐体パネル等といったヒートシンクとなる部品(以下、単にヒートシンクという)との間に介在させるように配置して使用される。このように熱伝導材を配置した場合、電子部品等が発生する熱をヒートシンク側へ良好に逃がすことができる。このため、この種の熱伝導材は、例えばCPUの高速化等のために不可欠な素材として注目を集めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、シリコーンゴムを基材とする従来の熱伝導材は、比較的良好な柔軟性を有するものの復元力が小さく、永久歪みが発生する可能性があった。熱伝導材に永久歪みが発生すると、電子部品やヒートシンクに対する密着性が低下して実質的な接触面積が減少してしまうため、充分な熱伝導性を得ることができない場合がある。
【0004】
また、熱伝導性を向上させるためにシリコーンゴムに熱伝導フィラーを高度に充填する場合は、液状シリコーンゴムに熱伝導フィラーを多量に混合した上で成形することになる。ところが、この場合、液状シリコーンゴムの粘度調整が困難になって、カレンダロール,押し出し,2本ロール等のどのような成形機を用いても良好に成形することができなくなる。熱伝導材の成形性が低下すると、電子部品やヒートシンクに対する密着性が低下して充分な熱伝導性を得ることができないばかりでなく、成形時に溶剤等を使用して劣悪な環境下で成形作業を行う必要が生じ、換気等の設備費や人件費を始めとする各種製造コストが上昇する。
【0005】
そこで、本発明は、熱伝導フィラーを充填したシリコーンゴムに良好な復元力を付与する改質を行うことにより、良好な復元力及び熱伝導性を呈すると共に製造が容易な熱伝導材を提供することを目的としてなされた。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、熱伝導フィラーを充填したシリコーンゴムに、有機合成ゴムを、添加オイルを用いて混練してなる熱伝導材であって、上記熱伝導フィラーが、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、または水酸化マグネシウムであることを特徴とする熱伝導材を、要旨としている。
【0007】
このように構成された本発明の熱伝導材は、シリコーンゴムと有機合成ゴムとを含有しているので、機械的特性は両者の中間的な特性となり、復元力及び柔軟性のいずれにおいても充分な機械的特性を有する。すなわち、熱伝導フィラーを充填したシリコーンゴムに良好な復元力を付与することができる。このため、熱伝導材に永久歪みが発生して電子部品やヒートシンクに対する密着性が低下するのを防止することができる。しかも、本発明の熱伝導材はシリコーンゴムに上記熱伝導フィラーを充填しているので、従来のシリコーンゴムを基材とした熱伝導材と同様の熱伝導率を呈することができる。従って、本発明の熱伝導材は、復元力及び柔軟性のいずれにおいても良好な機械的特性を有し、良好な熱伝導性を呈することができる。また、このようなシリコーンゴムと有機合成ゴムとを混練する場合、粘度調整が容易になり、各種成形機によって容易に成形が行えると共に、劣悪な環境下での成形作業を強いることもない。
【0008】
なお、シリコーンゴムに混練する有機合成ゴムは、予め熱伝導フィラーを充填したものであってもよく、熱伝導フィラーを有さない一般の有機合成ゴムであってもよい。有機合成ゴムとして予め熱伝導フィラーを充填したものを使用する場合、熱伝導フィラーが熱伝導材全体に一層均一に分散し、その熱伝導材は極めて良好な熱伝導性を呈する。また、シリコーンゴム及び有機合成ゴムにそれぞれ熱伝導フィラーを充填する場合、各フィラーは互いに同じ物質であってもよく、異なる物質であってもよい。
【0009】
請求項2記載の発明は、上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴムとのSP値(ソリュビリティーパラメータ)の差が1以下であることを特徴とする請求項1記載の熱伝導材を要旨としている。
有機合成ゴムにはシリコーンゴムと混練し易いものと混練し難いものとがあるが、シリコーンゴムとの混練を容易にするためには、シリコーンゴムと有機合成ゴムとのSP値の差は少なくとも1以下であることが要求される。本発明では、シリコーンゴムと有機合成ゴムとのSP値の差を1以下としているので、その有機合成ゴムをシリコーンゴムと混練する作業が極めて容易となり、混練を円滑に行うために添加するオイルの量も良好に減らすことができる。また、オイルの量を、例えば上記シリコーンゴム及び上記有機合成ゴムの和100重量部に対して20重量部以下に減らせば、成形後、電子部品等への取り付けの際や圧縮時に熱伝導材からオイルが滲み出るいわゆるオイルブリードも防止できる。
【0010】
従って、本発明では、請求項1記載の発明の効果に加えて、製造を一層容易にすると共に、成形後のオイルブリードを良好に防止することができるといった効果が生じる。
請求項3記載の発明は、上記有機合成ゴムがエチレン・プロピレン共重合体であることを特徴とする請求項2記載の熱伝導材を要旨としている。
【0011】
本発明では、請求項2に規定した条件を満たす有機合成ゴムとして、エチレン・プロピレン共重合体を使用している。エチレン・プロピレン共重合体は、極めて良好な圧縮永久歪み特性を有し、しかも、耐候性,耐寒性に優れている。このため、エチレン・プロピレン共重合体を上記有機合成ゴムとして使用した場合、熱伝導材に良好な圧縮永久歪み特性を付与し、かつ、その機械的特性が安定して維持できる。
【0012】
従って、本発明では、請求項2記載の発明の効果に加えて、永久歪みの発生を一層良好に防止して一層良好な熱伝導性を一層安定して呈することができると共に、製造コストを低減しつつシートの引き裂き強度を増加させることができるといった効果が生じる。
【0013】
なお、エチレン・プロピレン共重合体には、EPDM,EPM等の種々のものが存在するが、この内、EPDMを有機合成ゴムとして使用した場合、NR,SBR等の第3成分との共加硫も可能となる。従って、この場合、所望に応じて上記共加硫を行い、特性を調整することができるといった更なる効果が生じる。
【0014】
請求項4記載の発明は、上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴムとの割合が、100重量部:25〜400重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導材を要旨としている。
請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導材において、有機合成ゴムの割合がシリコーンゴム100重量部に対して400重量部を超えると、2本ロールでの離型性及びシートの柔軟性が低下するといった課題が生じる場合があり、上記割合が、25重量部未満であると、2本ロールで混練可能な粘度範囲を超えてしまうため混練の効率が低下するといった課題が生じる場合がある。これに対して本発明では、上記割合を25〜400重量部としているので、2本ロールでの混練が良好に行え、しかも、シートの柔軟性等にも問題は生じない。
【0015】
従って、本発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、混練の効率が上がって生産性がよくなるので、製造コストを一層良好に低減することができるといった効果が生じる。
請求項5記載の発明は、シリコーンゴムに熱伝導フィラーを充填する第1工程と、
該第1工程によって熱伝導フィラーを充填された上記シリコーンゴムに有機合成ゴムを混練して成形する第2工程と、
を備えた熱伝導材の製造方法であって、
上記熱伝導フィラーが、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、または水酸化マグネシウムであることを特徴とする熱伝導材の製造方法を要旨としている。
【0016】
本発明では、第1工程によってシリコーンゴムに上記熱伝導フィラーを充填し、第2工程によって、上記第1工程によって熱伝導フィラーを充填されたシリコーンゴムに有機合成ゴムを混練して成形している。このため、本発明では、請求項1記載の熱伝導材を容易に製造することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴムとのSP値の差が1以下であり、上記第2工程での混練を円滑に行うために添加するオイルの量が、上記シリコーンゴム及び上記有機合成ゴムの和100重量部に対して20〜10重量部であることを特徴とする請求項5記載の熱伝導材の製造方法を要旨としている。
【0018】
本発明では、請求項5記載の構成に加え、シリコーンゴムと有機合成ゴムとのSP値の差を1以下としているので、請求項2に関連して説明したように、その有機合成ゴムをシリコーンゴムと混練する作業が極めて容易となる。そこで本発明では、混練を円滑に行うために添加するオイルの量を、シリコーンゴム及び有機合成ゴムの和100重量部に対して20〜10重量部としている。このため、成形後の熱伝導材におけるオイルブリードの発生が良好に防止できる。
【0019】
従って、本発明では、請求項5記載の発明の効果に加えて、熱伝導材の製造を一層容易にすると共に、成形後の熱伝導材にオイルブリードが発生するのを一層良好に防止することができるといった効果が生じる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、以下の製造方法により熱伝導材を製造した。
第1工程:熱伝導シリコーンゴムの製造
液状シリコーンゴム :100重量部
熱伝導フィラー :20〜900重量部
その他(白金系化合物,加硫剤,難燃剤等) :0.5〜200重量部
を混合することにより、シリコーンゴムに熱伝導フィラーを充填した。上記混合の方法としては、真空脱泡ミキサー等の機械を用いて混練する方法の他、押し出し,2本ロール,ニーダ,バンバリーミキサー等の種々の方法を適用することができる。この内、真空脱泡ミキサーを使用して混練する場合、上記のような低粘度混練が容易となる点で望ましい。熱伝導フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、種々のものを適用することができる。この内、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムは、難燃助剤としても機能する。また、上記熱伝導フィラーの内、窒化ホウ素等のかさ高いフィラーを使用する場合、母材の粘度が低いため充填し易いといった点で望ましい。
【0021】
熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程
有機合成ゴムとしてのエチレン・プロピレン共重合体:100重量部
熱伝導フィラー :10〜900重量部
添加オイル :0〜200重量部
その他(加硫剤,難燃剤等) :20〜200重量部
を混合することにより、エチレン・プロピレン共重合体に熱伝導フィラーを充填した。上記混合の方法としては、2本ロール等の機械を用いて混練する方法の他、ニーダ,バンバリーミキサー等の種々の方法を適用することができる。この内、ニーダ方法を適用した場合、フィラーの飛散及びオイルのこぼれを防止する点で望ましい。また、エチレン・プロピレン共重合体としては、EPDM,EPM等の種々の有機合成ゴムを適用することができる。この内、EPDMを使用する場合、NR,SBR等の第3成分との共加硫も可能となる点で望ましい。更に、熱伝導フィラーとしては、第1工程で列挙したものと同様のものが使用でき、第1工程で使用したものと同じ物質を使用してもよく異なる物質を使用してもよい。但し、上記熱伝導フィラーの内、炭化ケイ素を使用した場合、熱伝導性及び混練性を一層向上させることができる。
【0022】
第2工程:混練及び成形
上記熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程で得られた熱伝導エチレン・プロピレン共重合体と、第1工程で得られた熱伝導シリコーンゴムとを、100重量部:25〜400重量部の割合で混練して成形した。この混練及び成形の方法としては、2本ロール,ニーダ等の機械を用いて混練し、カレンダロール,押し出し,プレス等の機械を用いて成形する方法等、種々の方法を適用することができる。この内、2本ロールを用いて混練し、カレンダロールを用いて成形する場合、量産性及び厚み精度等を向上させる上で望ましい。
【0023】
このようにして製造された熱伝導材は、次のような優れた特性を有している。すなわち、熱伝導フィラーを充填したため従来のシリコーンゴムを基材とした熱伝導材と同様の優れた熱伝導性を呈し、機械的特性はシリコーンゴムと有機合成ゴムとの中間的な特性となって復元力及び柔軟性のいずれにおいても充分な機械的特性を有する。このため、シリコーンゴムのみを使用した場合のように永久歪みが発生して電子部品やヒートシンクに対する密着性が低下したり、有機合成ゴムのみを使用した場合のように充分な柔軟性が得られないために電子部品やヒートシンクに対する密着性が低下したりするのを防止することができる。従って、本実施の形態の熱伝導材は、復元力及び柔軟性のいずれにおいても良好な機械的特性を有し、良好な熱伝導性を呈することができる。このため、CPUの高速化等に極めて良好に対応することができる。
【0024】
また、本実施の形態では、エチレン・プロピレン共重合体及びシリコーンゴムに予めそれぞれ熱伝導フィラーを充填し、両者を混練することによって熱伝導材を製造しているので、熱伝導フィラーが熱伝導材全体に一層均一に分散し、その熱伝導材は一層良好な熱伝導性を呈する。更に、エチレン・プロピレン共重合体はSP値が8.0未満(少なくともシリコーンゴムの値よりは大)とシリコーンゴムの値(7.2)に近く、添加オイルをあまり使用せずに両者を容易に混練することができると共に、粘度調整も容易となる。このため、各種成形機によって容易に成形が行えると共に、溶剤等の使用により劣悪な環境下での成形作業を強いることもない。よって、その製造コストを良好に低減することができる。しかも、上記添加オイルは多量に使用するとオイルブリード等の原因となるが、本実施の形態ではその使用量を低減してオイルブリードを良好に防止することができる。このため、オイルによる周囲の汚染(移行)の問題が少ない。
【0025】
なお、上記実施の形態では有機合成ゴムとしてエチレン・プロピレン共重合体を使用しているが、他の有機合成ゴムを使用してもよい。但し、有機合成ゴムとしてはエチレン・プロピレン共重合体の他、例えばブチルゴム,天然ゴム等、シリコーンゴムとのSP値の差が1.0以下のものを使用することが、混練を容易にして添加オイルの使用量を減らす上で望ましい。また、熱伝導フィラーはシリコーンゴムのみに充填してもよい。次に、上記第1工程,熱伝導シリコーンゴムの製造工程,及び第2工程を実際に実施し、得られた熱伝導材の特性を調査した。以下、この実施例について説明する。
【0026】
【実施例】
第1工程:熱伝導シリコーンゴムの製造
液状シリコーンゴム :100重量部
熱伝導フィラー(窒化ホウ素) :800重量部
加硫剤(白金系触媒) :5重量部
を真空脱泡ミキサーによって混合し、スラリー状とした。
【0027】
熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程
EPDM :100重量部
熱伝導フィラー(炭化ケイ素) :800重量部
添加オイル(商品名PW−380:出光興産製) :20重量部
加硫剤(パーオキサイド) :5重量部
加硫助剤(酸化カルシウム) :3重量部
難燃剤(水酸化アルミニウム) :30重量部
を2本ロールによって混合し、スラブ状とした。
【0028】
第2工程:混練及び成形
熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程によって製造した熱伝導エチレン・プロピレン共重合体(有機合成ゴム)と第1工程によって製造したシリコーンゴムとを、種々の割合(重量部)で混練して成形し、得られた熱伝導材の特性を比較した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、熱伝導エチレン・プロピレン共重合体のみによって構成したNo.1の熱伝導材(比較例)では、高粘度(硬度)で成形が困難(2本ロールからの離型困難等)であり、熱伝導エチレン・プロピレン共重合体100重量部に対する熱伝導シリコーンゴムの割合が25重量部未満であるNo.2の熱伝導材では、高粘度で成形性が不良であった。また、熱伝導シリコーンゴムのみによって構成したNo.7の熱伝導材(比較例)では、低粘度であるが成形性は不良であり、熱伝導エチレン・プロピレン共重合体100重量部に対する熱伝導シリコーンゴムの割合が400重量部を超えているNo.6の熱伝導材では、成形性が非常に悪かった。これに対して、熱伝導エチレン・プロピレン共重合体100重量部に対する熱伝導シリコーンゴムの割合が25〜400重量部であるNo.3,4,5の熱伝導材は、粘度,成形性共に良好であった。
【0031】
次に、上記優れた特性を呈したNo.5の熱伝導材に対して、製造時に使用する添加オイルの量を種々に変更して上記と同様の製造方法を実施した、結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すように、添加オイルの使用量が5重量部未満であると、良好に混練を行うことができなかった。また、添加オイルの使用量が30重量部を超えると、オイルブリードが発生した。従って、添加オイルの使用量は20〜10重量部とするのが望ましく、より望ましくは10重量部とするべきである。
【0034】
ここで、表2に示すオイルの使用量が10重量部の熱伝導材で混練が良好に行われていることを検証するため、次のような実験を行った。すなわち、熱伝導フィラーとしての炭化ケイ素を第1工程においてのみ使用し、熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程では熱伝導フィラーを全く使用しないで上記と同様の製造方法を実施し、得られた熱伝導材の断面SEM像を観察した。この場合、図1に示すように、熱伝導フィラーは白い点として表れ、その白い点の隙間に配設された黒い部分がシリコーンゴム、黒ベタの部分がEPDMである。図1の断面SEM像より、シリコーンゴム中にEPDMが均一に分散し、混練が良好に行われていることが判る。
【0035】
更に、従来のシリコーンゴムを基材とした熱伝導材(例えば、表1No.7の熱伝導材)では、熱伝導フィラーの充填を高度に行うと粘度調整が困難になり、成形作業に支障を来すといった課題があったが、本実施の形態の熱伝導材は、熱伝導フィラーの充填量が増加したときにも粘度調整及び成形が容易であるといった顕著な効果が生じる。表3は、シリコーンゴムを基材とした表1No.7の熱伝導材(比較例)と、表1No.4の熱伝導材(実施例)とにおいて、熱伝導フィラーの充填率を種々に変化させ、成形性等の各種特性を比較したものである。なお、表3におけるフィラー充填率は基材全体に対するwt%で表されている。
【0036】
【表3】
【0037】
表3に示すように、上記実施例では、基材全体に対するフィラー充填率が高い場合にも、混練性及び成形性が共に良好であった。また、シリコーンゴムからは低分子シロキサンガスが発生し、これが電子機器内での電気的接点不良の原因となることが指摘されていたが、上記実施例では、有機合成ゴムをシリコーンゴムに混練しているため、低分子シロキサンガスの発生を良好に抑制することができる。従って、上記実施例では、電子機器等に装着したときにその電子機器内で電気的接点不良等が発生するのを良好に防止することができる。更に、上記シリコーンゴムが低分子シロキサンをカットしたものであれば、低分子シロキサンガスの発生を一層良好に抑制し、上記電気的接点不良等を極めて良好に防止することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、有機合成ゴム,熱伝導フィラー,添加オイル等の種類は種々に変更することができる。また、混練方法,成形方法等においても本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の方法で混練または成形を行うことができる。更に、有機合成ゴムには特に熱伝導フィラーを充填しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の熱伝導材の構成を表す断面SEM像である。
Claims (6)
- 熱伝導フィラーを充填したシリコーンゴムに、有機合成ゴムを、添加オイルを用いて混練してなる熱伝導材であって、
上記熱伝導フィラーが、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、または水酸化マグネシウムであることを特徴とする熱伝導材。 - 上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴムとのSP値(ソリュビリティーパラメータ)の差が1以下であることを特徴とする請求項1記載の熱伝導材。
- 上記有機合成ゴムがエチレン・プロピレン共重合体であることを特徴とする請求項2記載の熱伝導材。
- 上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴムとの割合が、100重量部:25〜400重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導材。
- シリコーンゴムに熱伝導フィラーを充填する第1工程と、
該第1工程によって熱伝導フィラーを充填された上記シリコーンゴムに有機合成ゴムを混練して成形する第2工程と、
を備えた熱伝導材の製造方法であって、
上記熱伝導フィラーが、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、または水酸化マグネシウムであることを特徴とする熱伝導材の製造方法。 - 上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴムとのSP値の差が1以下であり、上記第2工程での混練を円滑に行うために添加するオイルの量が、上記シリコーンゴム及び上記有機合成ゴムの和100重量部に対して20〜10重量部であることを特徴とする請求項5記載の熱伝導材の製造方法。
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