JP2000353771A - 熱伝導材及びその製造方法 - Google Patents

熱伝導材及びその製造方法

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JP2000353771A
JP2000353771A JP11162613A JP16261399A JP2000353771A JP 2000353771 A JP2000353771 A JP 2000353771A JP 11162613 A JP11162613 A JP 11162613A JP 16261399 A JP16261399 A JP 16261399A JP 2000353771 A JP2000353771 A JP 2000353771A
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晃生 山口
Yasuhiro Kawaguchi
康弘 川口
Teruaki Sukeoka
輝明 祐岡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱伝導フィラーを充填したシリコーンゴムに
良好な復元力を付与する改質を行うことにより、良好な
復元力及び熱伝導性を呈すると共に製造が容易な熱伝導
材を提供すること。 【解決手段】 シリコーンゴムに熱伝導フィラーを充填
し、そのシリコーンゴムとのSP値の差が1以下の有機
合成ゴム(例えばEPDM)にも好ましくは熱伝導フィ
ラーを充填し、両者を混練して成形することによって熱
伝導材が得られる。図1に示すように、シリコーンゴム
(白い点がちりばめられた部分)と有機合成ゴム(黒ベ
タの部分)とは、添加オイルをあまり使用せずに良好に
混練することができ、得られた熱伝導材は、有機合成ゴ
ムの復元力とシリコーンゴムの柔軟性とを合わせ持った
優れた機械的特性を有する。しかも、この熱伝導材は、
熱伝導フィラーを高度に充填しても成形が容易である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品等の発熱
体からの放熱を促すため、その発熱体に対して接触する
ように配置して使用される熱伝導材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、シリコーンゴムに熱伝導フィ
ラーを充填してなる熱伝導材が考えられている。この種
の熱伝導材は、電気・電子装置の内部において、例え
ば、発熱源となる電子部品と、放熱板や筐体パネル等と
いったヒートシンクとなる部品(以下、単にヒートシン
クという)との間に介在させるように配置して使用され
る。このように熱伝導材を配置した場合、電子部品等が
発生する熱をヒートシンク側へ良好に逃がすことができ
る。このため、この種の熱伝導材は、例えばCPUの高
速化等のために不可欠な素材として注目を集めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、シリコーン
ゴムを基材とする従来の熱伝導材は、比較的良好な柔軟
性を有するものの復元力が小さく、永久歪みが発生する
可能性があった。熱伝導材に永久歪みが発生すると、電
子部品やヒートシンクに対する密着性が低下して実質的
な接触面積が減少してしまうため、充分な熱伝導性を得
ることができない場合がある。
【0004】また、熱伝導性を向上させるためにシリコ
ーンゴムに熱伝導フィラーを高度に充填する場合は、液
状シリコーンゴムに熱伝導フィラーを多量に混合した上
で成形することになる。ところが、この場合、液状シリ
コーンゴムの粘度調整が困難になって、カレンダロー
ル,押し出し,2本ロール等のどのような成形機を用い
ても良好に成形することができなくなる。熱伝導材の成
形性が低下すると、電子部品やヒートシンクに対する密
着性が低下して充分な熱伝導性を得ることができないば
かりでなく、成形時に溶剤等を使用して劣悪な環境下で
成形作業を行う必要が生じ、換気等の設備費や人件費を
始めとする各種製造コストが上昇する。
【0005】そこで、本発明は、熱伝導フィラーを充填
したシリコーンゴムに良好な復元力を付与する改質を行
うことにより、良好な復元力及び熱伝導性を呈すると共
に製造が容易な熱伝導材を提供することを目的としてな
された。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的
を達するためになされた請求項1記載の発明は、熱伝導
フィラーを充填したシリコーンゴムに、有機合成ゴムを
混練してなることを特徴とする熱伝導材を、要旨として
いる。
【0007】このように構成された本発明の熱伝導材
は、シリコーンゴムと有機合成ゴムとを含有しているの
で、機械的特性は両者の中間的な特性となり、復元力及
び柔軟性のいずれにおいても充分な機械的特性を有す
る。すなわち、熱伝導フィラーを充填したシリコーンゴ
ムに良好な復元力を付与することができる。このため、
熱伝導材に永久歪みが発生して電子部品やヒートシンク
に対する密着性が低下するのを防止することができる。
しかも、本発明の熱伝導材はシリコーンゴムに熱伝導フ
ィラーを充填しているので、従来のシリコーンゴムを基
材とした熱伝導材と同様の熱伝導率を呈することができ
る。従って、本発明の熱伝導材は、復元力及び柔軟性の
いずれにおいても良好な機械的特性を有し、良好な熱伝
導性を呈することができる。また、このようなシリコー
ンゴムと有機合成ゴムとを混練する場合、粘度調整が容
易になり、各種成形機によって容易に成形が行えると共
に、劣悪な環境下での成形作業を強いることもない。
【0008】なお、シリコーンゴムに混練する有機合成
ゴムは、予め熱伝導フィラーを充填したものであっても
よく、熱伝導フィラーを有さない一般の有機合成ゴムで
あってもよい。有機合成ゴムとして予め熱伝導フィラー
を充填したものを使用する場合、熱伝導フィラーが熱伝
導材全体に一層均一に分散し、その熱伝導材は極めて良
好な熱伝導性を呈する。また、シリコーンゴム及び有機
合成ゴムにそれぞれ熱伝導フィラーを充填する場合、各
フィラーは互いに同じ物質であってもよく、異なる物質
であってもよい。
【0009】請求項2記載の発明は、上記シリコーンゴ
ムと上記有機合成ゴムとのSP値(ソリュビリティーパ
ラメータ)の差が1以下であることを特徴とする請求項
1記載の熱伝導材を要旨としている。有機合成ゴムには
シリコーンゴムと混練し易いものと混練し難いものとが
あるが、シリコーンゴムとの混練を容易にするために
は、シリコーンゴムと有機合成ゴムとのSP値の差は少
なくとも1以下であることが要求される。本発明では、
シリコーンゴムと有機合成ゴムとのSP値の差を1以下
としているので、その有機合成ゴムをシリコーンゴムと
混練する作業が極めて容易となり、混練を円滑に行うた
めに添加するオイルの量も良好に減らすことができる。
また、オイルの量を、例えば上記シリコーンゴム及び上
記有機合成ゴムの和100重量部に対して20重量部以
下に減らせば、成形後、電子部品等への取り付けの際や
圧縮時に熱伝導材からオイルが滲み出るいわゆるオイル
ブリードも防止できる。
【0010】従って、本発明では、請求項1記載の発明
の効果に加えて、製造を一層容易にすると共に、成形後
のオイルブリードを良好に防止することができるといっ
た効果が生じる。請求項3記載の発明は、上記有機合成
ゴムがエチレン・プロピレン共重合体であることを特徴
とする請求項2記載の熱伝導材を要旨としている。
【0011】本発明では、請求項2に規定した条件を満
たす有機合成ゴムとして、エチレン・プロピレン共重合
体を使用している。エチレン・プロピレン共重合体は、
極めて良好な圧縮永久歪み特性を有し、しかも、耐候
性,耐寒性に優れている。このため、エチレン・プロピ
レン共重合体を上記有機合成ゴムとして使用した場合、
熱伝導材に良好な圧縮永久歪み特性を付与し、かつ、そ
の機械的特性が安定して維持できる。
【0012】従って、本発明では、請求項2記載の発明
の効果に加えて、永久歪みの発生を一層良好に防止して
一層良好な熱伝導性を一層安定して呈することができる
と共に、製造コストを低減しつつシートの引き裂き強度
を増加させることができるといった効果が生じる。
【0013】なお、エチレン・プロピレン共重合体に
は、EPDM,EPM等の種々のものが存在するが、こ
の内、EPDMを有機合成ゴムとして使用した場合、N
R,SBR等の第3成分との共加硫も可能となる。従っ
て、この場合、所望に応じて上記共加硫を行い、特性を
調整することができるといった更なる効果が生じる。
【0014】請求項4記載の発明は、上記シリコーンゴ
ムと上記有機合成ゴムとの割合が、100重量部:25
〜400重量部であることを特徴とする請求項1〜3の
いずれかに記載の熱伝導材を要旨としている。請求項1
〜3のいずれかに記載の熱伝導材において、有機合成ゴ
ムの割合がシリコーンゴム100重量部に対して400
重量部を超えると、2本ロールでの離型性及びシートの
柔軟性が低下するといった課題が生じる場合があり、上
記割合が、25重量部未満であると、2本ロールで混練
可能な粘度範囲を超えてしまうため混練の効率が低下す
るといった課題が生じる場合がある。これに対して本発
明では、上記割合を25〜400重量部としているの
で、2本ロールでの混練が良好に行え、しかも、シート
の柔軟性等にも問題は生じない。
【0015】従って、本発明では、請求項1〜3のいず
れかに記載の発明の効果に加えて、混練の効率が上がっ
て生産性がよくなるので、製造コストを一層良好に低減
することができるといった効果が生じる。請求項5記載
の発明は、シリコーンゴムに熱伝導フィラーを充填する
第1工程と、該第1工程によって熱伝導フィラーを充填
された上記シリコーンゴムに有機合成ゴムを混練して成
形する第2工程と、を備えたことを特徴とする熱伝導材
の製造方法を要旨としている。
【0016】本発明では、第1工程によってシリコーン
ゴムに熱伝導フィラーを充填し、第2工程によって、上
記第1工程によって熱伝導フィラーを充填されたシリコ
ーンゴムに有機合成ゴムを混練して成形している。この
ため、本発明では、請求項1記載の熱伝導材を容易に製
造することができる。
【0017】請求項6記載の発明は、上記シリコーンゴ
ムと上記有機合成ゴムとのSP値の差が1以下であり、
上記第2工程での混練を円滑に行うために添加するオイ
ルの量が、上記シリコーンゴム及び上記有機合成ゴムの
和100重量部に対して20〜10重量部であることを
特徴とする請求項5記載の熱伝導材の製造方法を要旨と
している。
【0018】本発明では、請求項5記載の構成に加え、
シリコーンゴムと有機合成ゴムとのSP値の差を1以下
としているので、請求項2に関連して説明したように、
その有機合成ゴムをシリコーンゴムと混練する作業が極
めて容易となる。そこで本発明では、混練を円滑に行う
ために添加するオイルの量を、シリコーンゴム及び有機
合成ゴムの和100重量部に対して20〜10重量部と
している。このため、成形後の熱伝導材におけるオイル
ブリードの発生が良好に防止できる。
【0019】従って、本発明では、請求項5記載の発明
の効果に加えて、熱伝導材の製造を一層容易にすると共
に、成形後の熱伝導材にオイルブリードが発生するのを
一層良好に防止することができるといった効果が生じ
る。
【0020】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を説明
する。本実施の形態では、以下の製造方法により熱伝導
材を製造した。 第1工程:熱伝導シリコーンゴムの製造 液状シリコーンゴム :100重量部 熱伝導フィラー :20〜900重量部 その他(白金系化合物,加硫剤,難燃剤等) :0.5〜200重量部 を混合することにより、シリコーンゴムに熱伝導フィラ
ーを充填した。上記混合の方法としては、真空脱泡ミキ
サー等の機械を用いて混練する方法の他、押し出し,2
本ロール,ニーダ,バンバリーミキサー等の種々の方法
を適用することができる。この内、真空脱泡ミキサーを
使用して混練する場合、上記のような低粘度混練が容易
となる点で望ましい。熱伝導フィラーとしては、酸化ア
ルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシ
ウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウ
ム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ
素、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化
マグネシウム等、種々のものを適用することができる。
この内、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、及
び水酸化マグネシウムは、難燃助剤としても機能する。
また、上記熱伝導フィラーの内、窒化ホウ素等のかさ高
いフィラーを使用する場合、母材の粘度が低いため充填
し易いといった点で望ましい。
【0021】 熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程 有機合成ゴムとしてのエチレン・プロピレン共重合体:100重量部 熱伝導フィラー :10〜900重量部 添加オイル :0〜200重量部 その他(加硫剤,難燃剤等) :20〜200重量部 を混合することにより、エチレン・プロピレン共重合体
に熱伝導フィラーを充填した。上記混合の方法として
は、2本ロール等の機械を用いて混練する方法の他、ニ
ーダ,バンバリーミキサー等の種々の方法を適用するこ
とができる。この内、ニーダ方法を適用した場合、フィ
ラーの飛散及びオイルのこぼれを防止する点で望まし
い。また、エチレン・プロピレン共重合体としては、E
PDM,EPM等の種々の有機合成ゴムを適用すること
ができる。この内、EPDMを使用する場合、NR,S
BR等の第3成分との共加硫も可能となる点で望まし
い。更に、熱伝導フィラーとしては、第1工程で列挙し
たものと同様のものが使用でき、第1工程で使用したも
のと同じ物質を使用してもよく異なる物質を使用しても
よい。但し、上記熱伝導フィラーの内、炭化ケイ素を使
用した場合、熱伝導性及び混練性を一層向上させること
ができる。
【0022】第2工程:混練及び成形 上記熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程で
得られた熱伝導エチレン・プロピレン共重合体と、第1
工程で得られた熱伝導シリコーンゴムとを、100重量
部:25〜400重量部の割合で混練して成形した。こ
の混練及び成形の方法としては、2本ロール,ニーダ等
の機械を用いて混練し、カレンダロール,押し出し,プ
レス等の機械を用いて成形する方法等、種々の方法を適
用することができる。この内、2本ロールを用いて混練
し、カレンダロールを用いて成形する場合、量産性及び
厚み精度等を向上させる上で望ましい。
【0023】このようにして製造された熱伝導材は、次
のような優れた特性を有している。すなわち、熱伝導フ
ィラーを充填したため従来のシリコーンゴムを基材とし
た熱伝導材と同様の優れた熱伝導性を呈し、機械的特性
はシリコーンゴムと有機合成ゴムとの中間的な特性とな
って復元力及び柔軟性のいずれにおいても充分な機械的
特性を有する。このため、シリコーンゴムのみを使用し
た場合のように永久歪みが発生して電子部品やヒートシ
ンクに対する密着性が低下したり、有機合成ゴムのみを
使用した場合のように充分な柔軟性が得られないために
電子部品やヒートシンクに対する密着性が低下したりす
るのを防止することができる。従って、本実施の形態の
熱伝導材は、復元力及び柔軟性のいずれにおいても良好
な機械的特性を有し、良好な熱伝導性を呈することがで
きる。このため、CPUの高速化等に極めて良好に対応
することができる。
【0024】また、本実施の形態では、エチレン・プロ
ピレン共重合体及びシリコーンゴムに予めそれぞれ熱伝
導フィラーを充填し、両者を混練することによって熱伝
導材を製造しているので、熱伝導フィラーが熱伝導材全
体に一層均一に分散し、その熱伝導材は一層良好な熱伝
導性を呈する。更に、エチレン・プロピレン共重合体は
SP値が8.0未満(少なくともシリコーンゴムの値よ
りは大)とシリコーンゴムの値(7.2)に近く、添加
オイルをあまり使用せずに両者を容易に混練することが
できると共に、粘度調整も容易となる。このため、各種
成形機によって容易に成形が行えると共に、溶剤等の使
用により劣悪な環境下での成形作業を強いることもな
い。よって、その製造コストを良好に低減することがで
きる。しかも、上記添加オイルは多量に使用するとオイ
ルブリード等の原因となるが、本実施の形態ではその使
用量を低減してオイルブリードを良好に防止することが
できる。このため、オイルによる周囲の汚染(移行)の
問題が少ない。
【0025】なお、上記実施の形態では有機合成ゴムと
してエチレン・プロピレン共重合体を使用しているが、
他の有機合成ゴムを使用してもよい。但し、有機合成ゴ
ムとしてはエチレン・プロピレン共重合体の他、例えば
ブチルゴム,天然ゴム等、シリコーンゴムとのSP値の
差が1.0以下のものを使用することが、混練を容易に
して添加オイルの使用量を減らす上で望ましい。また、
熱伝導フィラーはシリコーンゴムのみに充填してもよ
い。次に、上記第1工程,熱伝導シリコーンゴムの製造
工程,及び第2工程を実際に実施し、得られた熱伝導材
の特性を調査した。以下、この実施例について説明す
る。
【0026】
【実施例】 第1工程:熱伝導シリコーンゴムの製造 液状シリコーンゴム :100重量部 熱伝導フィラー(窒化ホウ素) :800重量部 加硫剤(白金系触媒) :5重量部 を真空脱泡ミキサーによって混合し、スラリー状とし
た。
【0027】 熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程 EPDM :100重量部 熱伝導フィラー(炭化ケイ素) :800重量部 添加オイル(商品名PW−380:出光興産製) :20重量部 加硫剤(パーオキサイド) :5重量部 加硫助剤(酸化カルシウム) :3重量部 難燃剤(水酸化アルミニウム) :30重量部 を2本ロールによって混合し、スラブ状とした。
【0028】第2工程:混練及び成形 熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工程によっ
て製造した熱伝導エチレン・プロピレン共重合体(有機
合成ゴム)と第1工程によって製造したシリコーンゴム
とを、種々の割合(重量部)で混練して成形し、得られ
た熱伝導材の特性を比較した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】表1に示すように、熱伝導エチレン・プロ
ピレン共重合体のみによって構成したNo.1の熱伝導
材(比較例)では、高粘度(硬度)で成形が困難(2本
ロールからの離型困難等)であり、熱伝導エチレン・プ
ロピレン共重合体100重量部に対する熱伝導シリコー
ンゴムの割合が25重量部未満であるNo.2の熱伝導
材では、高粘度で成形性が不良であった。また、熱伝導
シリコーンゴムのみによって構成したNo.7の熱伝導
材(比較例)では、低粘度であるが成形性は不良であ
り、熱伝導エチレン・プロピレン共重合体100重量部
に対する熱伝導シリコーンゴムの割合が400重量部を
超えているNo.6の熱伝導材では、成形性が非常に悪
かった。これに対して、熱伝導エチレン・プロピレン共
重合体100重量部に対する熱伝導シリコーンゴムの割
合が25〜400重量部であるNo.3,4,5の熱伝
導材は、粘度,成形性共に良好であった。
【0031】次に、上記優れた特性を呈したNo.5の
熱伝導材に対して、製造時に使用する添加オイルの量を
種々に変更して上記と同様の製造方法を実施した、結果
を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】表2に示すように、添加オイルの使用量が
5重量部未満であると、良好に混練を行うことができな
かった。また、添加オイルの使用量が30重量部を超え
ると、オイルブリードが発生した。従って、添加オイル
の使用量は20〜10重量部とするのが望ましく、より
望ましくは10重量部とするべきである。
【0034】ここで、表2に示すオイルの使用量が10
重量部の熱伝導材で混練が良好に行われていることを検
証するため、次のような実験を行った。すなわち、熱伝
導フィラーとしての炭化ケイ素を第1工程においてのみ
使用し、熱伝導エチレン・プロピレン共重合体の製造工
程では熱伝導フィラーを全く使用しないで上記と同様の
製造方法を実施し、得られた熱伝導材の断面SEM像を
観察した。この場合、図1に示すように、熱伝導フィラ
ーは白い点として表れ、その白い点の隙間に配設された
黒い部分がシリコーンゴム、黒ベタの部分がEPDMで
ある。図1の断面SEM像より、シリコーンゴム中にE
PDMが均一に分散し、混練が良好に行われていること
が判る。
【0035】更に、従来のシリコーンゴムを基材とした
熱伝導材(例えば、表1No.7の熱伝導材)では、熱
伝導フィラーの充填を高度に行うと粘度調整が困難にな
り、成形作業に支障を来すといった課題があったが、本
実施の形態の熱伝導材は、熱伝導フィラーの充填量が増
加したときにも粘度調整及び成形が容易であるといった
顕著な効果が生じる。表3は、シリコーンゴムを基材と
した表1No.7の熱伝導材(比較例)と、表1No.
4の熱伝導材(実施例)とにおいて、熱伝導フィラーの
充填率を種々に変化させ、成形性等の各種特性を比較し
たものである。なお、表3におけるフィラー充填率は基
材全体に対するwt%で表されている。
【0036】
【表3】
【0037】 但し、(混練性) ○:良好 △:悪い (成形性) ◎:成形性極めて良好(粘度調整不要) ○:成形性良好(コータが使用可能) △:成形可能(プレスが使用可能) ×:成形不能(この粘度に適した成形方法なし) 表3に示すように、上記実施例では、基材全体に対する
フィラー充填率が高い場合にも、混練性及び成形性が共
に良好であった。また、シリコーンゴムからは低分子シ
ロキサンガスが発生し、これが電子機器内での電気的接
点不良の原因となることが指摘されていたが、上記実施
例では、有機合成ゴムをシリコーンゴムに混練している
ため、低分子シロキサンガスの発生を良好に抑制するこ
とができる。従って、上記実施例では、電子機器等に装
着したときにその電子機器内で電気的接点不良等が発生
するのを良好に防止することができる。更に、上記シリ
コーンゴムが低分子シロキサンをカットしたものであれ
ば、低分子シロキサンガスの発生を一層良好に抑制し、
上記電気的接点不良等を極めて良好に防止することがで
きる。
【0038】なお、本発明は上記実施の形態に何等限定
されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で
種々の形態で実施することができる。例えば、有機合成
ゴム,熱伝導フィラー,添加オイル等の種類は種々に変
更することができる。また、混練方法,成形方法等にお
いても本発明は上記実施の形態に限定されるものではな
く、種々の方法で混練または成形を行うことができる。
更に、有機合成ゴムには特に熱伝導フィラーを充填しな
くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の熱伝導材の構成を表す断面SEM像
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 祐岡 輝明 愛知県名古屋市中区千代田2丁目24番15号 北川工業株式会社内 Fターム(参考) 4J002 BB15X CP03W DB016 DE046 DE076 DE086 DE106 DE116 DE136 DE146 DF016 DJ006 DK006 EA007 FD016 GQ00 5F036 AA01 BB21 BD21

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱伝導フィラーを充填したシリコーンゴ
    ムに、有機合成ゴムを混練してなることを特徴とする熱
    伝導材。
  2. 【請求項2】 上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴム
    とのSP値(ソリュビリティーパラメータ)の差が1以
    下であることを特徴とする請求項1記載の熱伝導材。
  3. 【請求項3】 上記有機合成ゴムがエチレン・プロピレ
    ン共重合体であることを特徴とする請求項2記載の熱伝
    導材。
  4. 【請求項4】 上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴム
    との割合が、100重量部:25〜400重量部である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝
    導材。
  5. 【請求項5】 シリコーンゴムに熱伝導フィラーを充填
    する第1工程と、 該第1工程によって熱伝導フィラーを充填された上記シ
    リコーンゴムに有機合成ゴムを混練して成形する第2工
    程と、 を備えたことを特徴とする熱伝導材の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記シリコーンゴムと上記有機合成ゴム
    とのSP値の差が1以下であり、上記第2工程での混練
    を円滑に行うために添加するオイルの量が、上記シリコ
    ーンゴム及び上記有機合成ゴムの和100重量部に対し
    て20〜10重量部であることを特徴とする請求項5記
    載の熱伝導材の製造方法。
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