JP3891078B2 - 過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造方法に関し、さらに詳しくは、、モールドパウダの潤滑作用の低下に起因する拘束性ブレークアウトを防止する連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
普通鋼の連続鋳造において、炭素濃度が、包晶点(鉄−炭素系平衡状態図におけるC濃度が0.18質量%の点)以上となる中炭素鋼を過包晶中炭素鋼とすれば、これら過包晶中炭素鋼は、次に述べる理由により、炭素濃度が包晶点未満の亜包晶鋼に比較して、凝固シェルと鋳型との間への溶融パウダの流入不足に起因する凝固シェルの鋳型への焼き付き、すなわち拘束性ブレークアウトが発生しやすい。
【0003】
過包晶中炭素鋼(以下、「過包晶鋼」と記す場合がある)において、凝固シェル・鋳型間への溶融パウダの流入が不足しやすい理由は、以下のとおりである。なお、以下の説明において、特に断らない限り、成分組成の濃度は、「質量%」を表すものとする。
1)亜包晶鋼に比べて凝固シェルの収縮が小さくなる。
【0004】
これは、亜包晶鋼では、大きな体積変化をともなうδ→γ変態が、完全凝固後の強度のある凝固シェル内において発生するので、変態が凝固シェルの大きな収縮を引き起こすのに対して、過包晶鋼の場合には、δ→γ変態は、凝固開始温度(液相線温度)と凝固完了温度(固相線温度)との間、すなわち、完全凝固前に起こるので、変態による体積収縮代は、周囲の液相の体積変化によって吸収され、凝固シェル全体の収縮には影響を及ぼさなくなるからである。このように、包晶点を境として、低炭素濃度領域の亜包晶鋼と、高炭素濃度領域の過包晶鋼とでは、凝固シェルの収縮量に不連続な変化があり、凝固収縮量の小さい過包晶鋼の場合には、凝固シェルと鋳型との間隙が小さくなるので、その間隙への溶融パウダの流入量が少なくなるのである。
上記の説明は、鉄−炭素系平衡状態図に基づく説明である。現実には、合金元素や冷却速度の影響により、包晶点の炭素濃度や、変態温度などに多少の差異は生じるものの、その挙動も上記の理由により説明可能である。
2)炭素濃度の上昇にともない、鋼の液相線温度が低下し、それにともない鋳造時の溶鋼温度が低下することから、パウダの溶融が不十分となりやすい。
炭素濃度が0.08〜0.16%程度の亜包晶鋼に対して、炭素濃度の低い低炭素鋼(例えば、C:0.05%)と炭素濃度の高い過包晶鋼(例えば、C:0.20%)とでは、凝固シェルの収縮量は、いずれも亜包晶鋼よりも小さく同程度である。しかし、過包晶鋼に拘束性ブレークアウトが発生しやすい理由は、炭素濃度が高いことによる鋼の液相線温度の低下にともなって、鋳造時の溶鋼温度が低下し、パウダの溶融が不充分となるためである。さらに、鋳造速度が低い場合には、浸漬ノズルから鋳型内への鋳型内湯面単位面積当たりの溶鋼供給量が低下し、鋳型内湯面上のモールドパウダを溶融させるための熱量が不足しやすいからである。
【0005】
凝固収縮の大きな亜包晶鋼の連続鋳造技術に関しては、縦割れなどの割れ性表面欠陥を防止する観点から以下のような技術が開示されている。
【0006】
特許文献1には、主として中炭素鋼(C:0.08〜0.16%)の連続鋳造時に鋳型内の溶鋼に添加されるモールドパウダーであって、主成分がCaO、SiOであって、CaO/SiOの値が1.2〜1.6であり、MgO含有量が1.5%以下のパウダが開示されている。
【0007】
特許文献2には、C:0.08〜0.18%の亜包晶領域の鋼を対象として、CaO/SiOが1.6〜2.5で、IA族に属する元素の酸化物を2種類以上、0.13<(IA族酸化物の合計モル数)<1.6で表される関係式の範囲内で含有し、かつ、Fを5〜15%含有する連続鋳造用モールドパウダが開示されている。
【0008】
特許文献3には、C:0.05〜0.20%の亜包晶鋼の連続鋳造用モールドパウダであって、CaO、SiOおよびFを基本成分とし、下記(X)式で表されるCaO’の重量%と、SiOがの重量%との比CaO’/SiOが0.9〜2.8であり、下記(Y)式で表されるCaF含有率が所定の範囲を満足し、さらにNaOおよびCを含有する連続鋳造用モールドパウダが開示されている。
CaO’=T.CaO−(56/38)F ・・・(X)
CaF=(78/38)F ・・・・・・(Y)
しかしながら、拘束性ブレークアウトの問題が残る過包晶鋼の連続鋳造用モールドパウダおよびそれを用いた鋳造方法に関しては、体系的に対応策がとられた例は少なく、試行錯誤的に対応しているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−141713号公報
【特許文献2】
特開平10−216907号公報
【特許文献3】
特開平11−320058号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述の問題に鑑み、適正な化学組成および物性を有するモールドパウダを使用することにより、過包晶中炭素鋼を低速で鋳造する際に発生しやすい拘束性ブレークアウトを防止することのできる連続鋳造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の課題を達成するために、前記した従来技術の問題点について検討を加え、過包晶鋼を鋳造する場合に、モールドパウダに求められる化学組成および物性について下記の(a)〜(e)の知見を得た。
(a)塩基度は0.8〜1.1の範囲が、また、凝固温度は1050〜1220℃の範囲が適正である。塩基度および凝固温度は、低過ぎると固相パウダフィルム中に析出する結晶が減少し、伝熱抵抗が減少する結果、凝固シェルが急冷却され、割れ性欠陥が生じやすくなる。一方、塩基度および凝固温度が高すぎると、結晶を有する固相フィルムの厚さが増加し、潤滑性の良いガラス層や液相フィルムが不足して、鋳型への凝固シェルの焼き付き(以下、「拘束」ともいう)が発生しやすくなる。
【0012】
(b)粘度は、1300℃における測定値で0.07〜1Pa・s(0.7〜10poise)の範囲が適正である。粘度が低すぎるとモールドパウダの保温性が低下し、高すぎるとパウダフィルムの潤滑性が損なわれる。
(c)嵩比重は、0.5〜0.9の範囲が適正である。嵩比重が高すぎると必要な空気断熱効果が得られない。また、嵩比重が0.5未満のモールドパウダは製造が困難である。
(d)C含有量は、2〜20%の範囲が適正である。Cを2%以上含有させると必要な発熱効果が得られる。しかし、20%を超えるとパウダの溶融速度が低下しすぎるという問題が生じる。
【0013】
(e)酸化発熱金属またはアルカリ金属酸化物を必要に応じて含有させるのが好ましい。酸化発熱金属の燃焼熱により、また、アルカリ金属酸化物による粘度または凝固温度の低下により、保温性がさらに一層向上する。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づき完成させたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(4)に示す連続鋳造方法にある。
【0015】
(1)C含有量が0.18〜0.30質量%である過包晶中炭素鋼の溶鋼を連続鋳造する際に、塩基度が0.8〜1.1、凝固温度が1050〜1220℃、1300℃における粘度が0.07〜1Pa・s、嵩比重が0.5〜0.9およびC含有量が2〜20%であるモールドパウダを用い、ノズル側面に2〜6個の吐出孔を有する浸漬ノズルを用いて、浸漬ノズル内を下降する溶鋼流に水平方向の速度成分を与えて吐出させるか、または、ノズル底部に1個の吐出孔を有する浸漬ノズルを用い、かつ鋳型内の溶鋼を電磁力により攪拌することを特徴とする過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法。
【0016】
(2)前記(1)に記載の過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法は、鋳造速度が1.1m/min以下の鋳造に適用すると効果が大きく好ましい。
(3)前記(1)または(2)に記載の過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法において、溶鋼表面上の大気中で酸化し発熱する金属の含有量が2〜15%である上記モールドパウダを用いることが好ましい。
(4)前記(3)に記載の過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法において、アルカリ金属の酸化物の含有量が8%以下である上記モールドパウダを用いることが好ましい。
【0017】
本発明において、「過包晶中炭素鋼」とは、鋼中の炭素濃度が0.18%以上0.30%以下の普通鋼を意味する。
【0018】
「塩基度」とは、モールドパウダ中の総Ca含有量をCaO含有量(質量%)に換算した値を、総Si含有量をSiO含有量(質量%)に換算した値で除した値(−)をいう。
【0019】
「嵩比重」とは、鋳型内における加熱を模擬して、大気中において700℃で焼成したモールドパウダをJIS−K5101に規定された方法により緩充填状態で測定して得られる比重を意味する。
【0020】
「大気中で酸化し発熱する金属」とは、大気中で酸素との発熱反応により発熱する金属をいい、例えば、Si、Ca、CaSi合金、CaAl合金などが該当する。
「アルカリ金属の酸化物」とは、周期表IA属に属する元素の酸化物をいい、例えば、NaO、LiO、KOなどが該当する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記のとおり、適正な化学組成および物性を有するモールドパウダを使用することにより、過包晶中炭素鋼を低速で鋳造する際に発生しやすい拘束性ブレークアウトを防止することのできる連続鋳造方法である。
【0022】
図1は、鋳型内におけるモールドパウダ、凝固シェルなどの挙動を示す模式図である。鋳型1内には、浸漬ノズル2から溶鋼3が供給され、溶鋼は鋳型により冷却されて凝固シェル4を形成しつつ連続的に下方に引き抜かれる。モールドパウダ7は、鋳型内の溶鋼湯面上に添加され、溶鋼に接する部分では溶融スラグとなり溶融層8を形成する。溶融層は鋳型と凝固シェルとの間隙に流入した後、鋳型側では凝固し固相のパウダフィルム6を、凝固シェル側では溶融したまま液相のパウダフィルム5を形成する。
【0023】
これらのパウダフィルムは、固相の割合を増加しつつ順次下方に移動し、やがて鋳型下端から排出される。モールドパウダの役割は、溶鋼の保温、酸化防止、溶鋼中不純物(非金属介在物)の溶かし込み、鋳型内潤滑、および鋳型内冷却制御である。
【0024】
図2は、過包晶鋼における鋳造速度と拘束性ブレークアウト発生率との関係を示す図である。同図の関係は、垂直曲げ型連続鋳造機により、鋳造速度を種々変更させて、鋳片幅800〜1900mm、鋳片厚さ210〜270mmの範囲で過包晶鋼の鋳造試験を行った結果をまとめたものである。
【0025】
鋳造速度が1.1m/min以下の遅い領域では、拘束性ブレークアウトの警報発生率が高くなっている。高速で鋳造した場合においても拘束性ブレークアウトの発生率は高まると考えられるが、同図の鋳造速度の範囲では、その傾向は明確ではなかつた。このように、過包晶鋼は、低速鋳造時に高い頻度で拘束が発生し、本発明に開示した対策が必要となるのである。鋳造速度の下限値は、連続鋳造機の鋳型サイズおよび機長により決定されるが、通常は、0.2m/min以上にて操業される。
【0026】
以下に、本発明におけるモールドパウダの限定理由を説明する。
1)モールドパウダの塩基度:0.8〜1.1、および凝固温度:1050〜1220℃:
モールドパウダの塩基度および凝固温度は、いずれも低すぎる場合には、固相パウダフィルム中に析出する結晶量が減少し、パウダフィルムの伝熱抵抗が小さくなる結果、凝固シェルが急冷却され、凝固シェルに割れ性欠陥が生じやすくなる。一方、塩基度およぴ凝固温度が高すぎる場合には、多量の結晶を有する厚い固相フィルムが生成し、潤滑性の良いガラス層や液相フィルムが相対的に不足する結果、鋳型への凝固シェルの焼き付き、すなわち拘束が発生しやすくなる。
【0027】
本発明者の調査によれば、過包晶鋼の鋳造のために適正な塩基度の範囲は、0.8〜1.1であり、適正な凝固温度の範囲は、1050〜1220℃である。さらに好ましい凝固温度の範囲は、1100〜1180℃である。両者が上記の範囲内にあるとき、潤滑性の維持に必要なパウダフィルム中のガラス層あるいは液相のパウダフィルム厚さを確保した上で、適度な鋳型内緩冷却作用が得られるのである。
なお、モールドパウダの化学組成の主成分を占めるCaOおよびSiO含有量は、溶融スラグの状態において、その合計量が50%以上であることが好ましい。これらの成分を主成分とするのは、これらの成分または、これらの成分を含むパウダ原料は、モールドパウダが溶融層およびフィルムを形成した状態において、溶鋼の保温、酸化防止、溶鋼中の気泡または介在物の吸収、および鋳型内壁と凝固シェルとの潤滑性の確保を促進す上で好ましい作用を有するからである。
【0028】
2)粘度:1300℃において0.07〜1Pa・s:
粘度が低過ぎると、モールドパウダの保温性が低下し、一方、高過ぎると、パウダフィルムの潤滑性を損なう。粘度が低過ぎる場合にモールドパウダの保温性が低下するのは、溶融層の流入度が過大となり、単位時間当たりのパウダ溶融量が増加して溶解熱を奪うこと、および溶融層中に対流が生じやすくなり、溶湯面から溶融層を介して上方に放熱される熱量が増加することによる。
【0029】
一方、粘度が高過ぎる場合にパウダフィルムの潤滑性が損なわれるのは、鋳型と凝固シェルとの間の摩擦抵抗が増加するためであり、これは、十分な量の液相やガラス層が確保されている場合であっても、避けることができない。
【0030】
パウダの1300℃における粘度が0.07Pa・sを下回ると、保温性の低下が顕著となり、また、1Pa・sを超えると、潤滑性の悪化が顕著となる。1300℃における好ましい粘度の範囲は、0.12〜0.6Pa・s(1.2〜6poise)である。
粘度または凝固温度の調整は、モールドパウダの化学成分組成により行うことができる。例えば、Al、MgO、F、酸化鉄、MnO、TiO、ZrOおよびBのうちの少なくとも2種以上の成分を合計で50%未満含有させることにより調整すればよい。
3)保温性:
モールドパウダの保温性を確保するためには、上記の粘度の確保に加え、嵩比重を小さくし、発熱材としてカーボン(C)を含有させることが求められる。さらに、保温を必要とする場合には、Cに加えて発熱金属、さらにはアルカリ金属酸化物を必要量含有させることもできる。
【0031】
嵩比重は0.9以下とすることにより、必要な空気断熱効果が得られる。さらに好ましくは0.7以下とすることにより、保温性は一層向上する。なお、ここでいう嵩比重とは、前述のとおり、700℃にて焼成したモールドパウダを、JIS−K5101に規定された方法により緩充填状態で測定して得られる比重である。
C含有量の適正範囲は、2〜20%である。Cを2%以上含有させると必要な発熱効果が得られるからである。さらに、4%以上含有させると一層大きな発熱効果が得られ、好ましい。しかし、20%を超えるとパウダの溶融速度が低下しすぎるという問題が生じるため、含有量は20%以下とする。
なお、さらに、発熱金属、またはそれに加えてアルカリ金属酸化物を含有させてもよい。
【0032】
発熱金属を含有させる場合は、2〜15%の範囲で含有させるのが好ましい。発熱金属としては、例えば、Si、Ca、CaSi合金、CaAl合金などを用いればよい。
【0033】
アルカリ金属酸化物を粘度または凝固温度の調整のために含有させる場合は、8%以下の範囲で含有させるのが好ましい。アルカリ金属酸化物としては、例えば、NaO、LiO、KOなどを用いればよい。しかし、含有量が8%を超えると、約800℃においてパウダ中の主成分の一つであるSiO成分と溶融層直上で反応して液相を生じ、パウダを焼結させる結果、嵩比重が増大し、伝熱抵抗が低下して保温性を損なうこととなる。したがって、含有量は8%以下とするのが好ましい。
【0034】
上記のパウダの焼結は、鋳型内溶鋼の湯面レベルの変動が大きい場合や、鋳型内でのパウダの滞留時間が長い場合に発生する傾向がある。そのような悪条件下においても安定して良好な保温性を維持するには、モールドパウダ中のアルカリ金属酸化物の含有量は少ないことが好ましい。したがって、含有量を5%以下とするのがさらに一層好ましい。
また、前記の嵩比重の低下、C含有量の調整、およびさらには発熱金属含有量やアルカリ金属酸化物含有量の調整は、それぞれ保熱性の向上のための条件を同時に満足する範囲で行われる必要がある。
【0035】
4)鋳造速度:
鋳造速度が1.1m/min以下では、浸漬ノズルから鋳型内への溶鋼供給量が少なくなるため、鋳型内溶鋼湯面の単位面積当たりの溶鋼供給量が低下する。そのため、溶鋼湯面上のモールドパウダを溶融させるための熱量が不足しやすい状態となる。したがって、本発明の方法で用いる保温性の良好なパウダは、このような鋳造速度の遅い条件下において用いれば、一層大きな効果を発揮する。
上記のように、モールドパウダの物性を適正化し、保温性、潤滑性などを確保した上で、さらに鋳造に用いる浸漬ノズルの形状を、以下のようにする必要がある。すなわち、ノズルの底部に開孔した1つの吐出孔、またはノズルの側面に開孔した2つ以上の吐出孔を有して浸漬ノズル内を下降する溶鋼流に水平方向の速度成分を与えて吐出させる形状とする。このようにすることにより、鋳型内溶鋼湯面に向かう上昇流が形成されて溶鋼湯面への熱供給が促進され、モールドパウダが安定して溶融する。浸漬ノズルの吐出孔の数は、多すぎると吐出孔1個当たりの吐出孔面積が小さくなり、閉塞しやすくなるので、6孔以内とするのが適切である
【0036】
また、鋳型内の溶鋼を電磁力を利用して攪拌するのが好ましく、常に一定の鋳型内流動を形成させると、鋳型内において溶鋼流の淀みが生じにくくなり、溶鋼湯面全面において、モールドパウダが安定して溶融する。
【0037】
【実施例】
本発明の連続鋳造方法の効果を確認するため、各種の物性を有するモールドパウダを作製し、そのモールドパウダを使用して、垂直曲げ型連続鋳造機により、鋳造速度などの条件を種々変更して、鋳片幅800〜1900mm、鋳片厚さ210〜270mmの範囲で過包晶鋼の鋳造試験を行った。
【0038】
表1に試験条件および試験結果を示す。
【0039】
【表1】
Figure 0003891078
【0040】
なお、試験結果の評価は、拘束発生率(拘束性ブレークアウト発生率)、および鋳片割れ性欠陥の発生率について、それぞれ下記の評価基準により行った。
【0041】
〔拘束発生率の評価〕:(数値の単位は、×10−2/鋳造長さ(m))
A:0.0001未満、 B:0.0001以上、0.01未満、 C:0.01以上、1.0未満、 D:1.0以上。
【0042】
〔鋳片割れ性欠陥発生率の評価〕:
A:ほとんど発生しない、 B:まれに発生することがある、 C:頻繁に発生する、 D:ほぼ確実に発生する。
【0043】
試験番号A〜Hは、本発明例についての試験であり、試験番号I〜Nは、比較例についての試験である。
【0044】
試験番号A〜Hは、いずれも本発明で規定する全ての条件について適正範囲を満足しており、拘束発生率および鋳片割れ性欠陥発生率ともに低く、試験結果の評価はB以上であった。
【0045】
特に、本発明例の試験番号Hは、モールドパウダの塩基度、凝固温度および粘度ともに本発明で規定する範囲の中央値に比較的近い値を有しており、嵩比重も好ましい範囲内にあり、さらに、発熱金属およびアルカリ金属酸化物を好ましい含有量の範囲内で含有しており、総合的に優れたパウダである。拘束発生率および鋳片割れ性欠陥発生率ともに最高の評価Aであった。
【0046】
本発明例の試験番号Cは、試験番号Hとともに拘束発生率は最高の評価Aであったが、鋳片割れ性欠陥発生率の評価はBであった。これは、潤滑性は良好であったものの、パウダの凝固温度が本発明で規定する下限値に近いため、凝固シェルの冷却がやや強くなり、若干の割れ性欠陥を発生させたことによると考えられる。
【0047】
試験番号I〜Nは、比較例であり、いずれも、本発明で規定する塩基度からC含有量までの条件の少なくともいずれかが適正範囲を外れている。比較例の試験番号Iは、嵩比重が大きいため保温性が悪化し、拘束発生率が高くなっている。比較例の試験番号Jは、パウダの塩基度が高いため、パウダフィルムの潤滑性が悪化し、拘束発生率が高くなっている。比較例の試験番号Kは、パウダの塩基度、凝固温度、粘度、嵩比重およびC含有量が全て本発明で規定する範囲を外れ、アルカリ金属酸化物の含有量も好ましい範囲を超えていることから、保温性、潤滑性が特に悪く、さらに、鋳型内電磁撹絆を実施していないことと相俟って、拘束発生率が特に高くなった。比較例の中でも、評価は最低のDとなっている。
【0048】
比較例の試験番号Lは、塩基度および凝固温度がともに低すぎるので鋳型内において凝固シェルが強冷却され、割れ性欠陥が多く発生した。比較例の試験番号Mは、塩基度が低すぎるので鋳片割れ性欠陥の発生率が高く、また、粘度が高すぎるので拘束発生率も高くなった。比較例の試験番号Nは、嵩比重が大きく、C含有量も少ないことから保温性が悪く、加えて浸漬ノズルが1孔のストレートノズルであることから、鋳型内湯面への熱の供給が不足し、拘束が多く発生した。
【0049】
【発明の効果】
本発明の連続鋳造方法によれば、適正な化学組成および物性を有するモールドパウダを使用することにより、過包晶中炭素鋼を低速で鋳造する際に発生しやすい拘束性ブレークアウトを防止することができ、同時に鋳片割れ性欠陥も抑制できるので、連続鋳造技術の発展に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳型内におけるモールドパウダ、凝固シェルなどの挙動を示す模式図である。
【図2】過包晶鋼における鋳造速度と拘束性ブレークアウト発生率との関係を示す図である。
【符号の説明】
1:鋳型、
2:浸漬ノズル、
3:溶鋼、
4:凝固シェル、
5:液相のパウダフィルム、
6:固相のパウダフィルム、
7:モールドパウダ、
8:溶融層。

Claims (4)

  1. C含有量が0.18〜0.30質量%である過包晶中炭素鋼の溶鋼を連続鋳造する際に、塩基度が0.8〜1.1、凝固温度が1050〜1220℃、1300℃における粘度が0.07〜1Pa・s、嵩比重が0.5〜0.9およびC含有量が2〜20質量%であるモールドパウダを用い、ノズル側面に2〜6個の吐出孔を有する浸漬ノズルを用いて、浸漬ノズル内を下降する溶鋼流に水平方向の速度成分を与えて吐出させるか、または、ノズル底部に1個の吐出孔を有する浸漬ノズルを用い、かつ鋳型内の溶鋼を電磁力により攪拌することを特徴とする過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法。
  2. 鋳造速度が1.1m/min以下で鋳造することを特徴とする請求項1に記載の過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法。
  3. 溶鋼表面上の大気中で酸化することにより発熱する金属の含有量が2〜15質量%である上記モールドパウダを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法。
  4. アルカリ金属の酸化物の含有量が8質量%以下である上記モールドパウダを用いることを特徴とする請求項3に記載の過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法。
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