JP4773225B2 - 鋼の連続鋳造用のモールドパウダとそれを用いた鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造用のモールドパウダとそれを用いた鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼の連続鋳造用のモールドパウダとそれを用いた鋼の連続鋳造方法に関する。
一般的に、鋼の鋳造工程において、鋳型内の溶鋼には、適宜のモールドパウダが浮設される。このモールドパウダは、図1に示す如く溶鋼熱によって滓化することで溶融パウダ層を形成し、鋳型とシェルとの間に流れ込むことによって、シェルの鋳型に対する潤滑性を確保すると共に、シェルに対する冷却制御機能を発揮するものである。
そして、上記のモールドパウダは、用途に応じてその成分が適宜に調整される。
例えば、低炭素鋼(C成分[wt%]:0.02〜0.07)を高速鋳造(鋳造速度[m/min]:1.8以上)する場合には、所謂高粘度パウダ(1300度における粘度[poise]:1.5以上)が採用される。これによれば、浸漬ノズルからの溶鋼吐出量(所謂スループット)が多いにも関わらず、当該パウダが溶鋼内へ巻き込まれ難くなるので、介在物の少ない鋳片が鋳造できるとされている。
しかし、上記の如く高粘度パウダを用いる連続鋳造では、所謂焼付き現象が問題視されている。
この「焼付き現象」とは、溶鋼が鋳型の内壁面と直接的に接触することにより溶鋼が当該内壁面と結合した状態で凝固し、その結果、鋳型内で既に形成されているシェルと鋳型の内壁面とが互いに連結されてしまう現象のことである。
この焼付き現象が発生すると、シェルは、鋳型の内壁面に拘束されつつも引き抜かれようとするので、部分的に裂けて溶鋼が漏れ出してしまう(所謂ブレークアウトといい、単にB.Oとも称される。)。
そこで、従来より、高粘度でありながら、焼付き現象の生じにくいモールドパウダの開発が望まれていた。
この種の技術として、特許文献1に記載のモールドパウダがある。
この特許文献1には、弗素を含有しなくとも、LiOを添加することにより結晶化を抑制可能な弗素レスパウダが記載されている。これによれば、浸漬ノズルなどの連鋳機周辺設備の腐食が抑えられると共に、2次冷却水を廃棄しても環境汚染の心配のない実用的な弗素レスパウダを提供できる、とされる。なお、当該特許文献1には、当該弗素レスパウダとして、そのLiO成分[wt%]とNaO成分[wt%]との比であるLiO/NaOが1〜4.5の範囲内のもののみが開示されている(特許文献1の表1参照)。
特開2001−47200号公報(段落番号0006・0016及び表1)
しかし、本発明の発明者が上記特許文献1に記載のパウダの技術的効果を検証してみたところ、上記弗素レスパウダを用いても、上記の焼付き現象が効果的には改善されないことが判った。
本発明は係る諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高粘度でありながら、焼付き現象の生じにくいモールドパウダを提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
ここで、上記焼付き現象の発生メカニズムを詳細に説明する。
上述した如くシェルの鋳型に対する潤滑性を確保するためには、溶融パウダ層が鋳型(固相パウダ層)とシェルとの間に連続的に流れ込む必要がある(図1において白抜き矢印)。
しかし、上記の高粘度パウダから成る溶融パウダ層は、高粘度であるが故、他のパウダから成る溶融パウダ層と比較して、固相パウダ層とシェルとの間に流れ込み難くなっている。
一時的にでも上記の連続的な流れ込みが途切れる(流れ込む溶融パウダ層に切れ目が生じる)と、上述した冷却制御機能が十分には発揮されなくなってしまう。その結果、当該切れ目の近傍において既に形成されているシェルが溶鋼熱により再溶解することで孔が空いて(或いはシェルそのものが形成されないので)溶鋼が漏れ出し、当該溶鋼が鋳型の内壁面と直接的に接触してしまうのである。
そこで、本発明の発明者は、高粘度でありながら、焼付き現象の生じにくいモールドパウダの提供を目的として、以下の点に着目した。
その第1は、溶融パウダ層の流入口(図1中、白抜き矢印で示す箇所の近傍)における当該溶融パウダ層の粘度(即ち、粘度の温度依存性)である。
なぜなら、溶融パウダ層の前記流入口の近傍では、当該溶融パウダ層が鋳型の冷却作用により凝固温度近傍に至るまで冷却され、これに伴い結晶化が進行してその粘度が上がり、その結果、その流入が滞り易くなっているからである。当該溶融パウダ層の流入が滞る、換言すれば、その流入が不足すると上記の焼付き現象が生じやすくなるのは前述した通りである。
それなのに従来では、例えば上記の特許文献1の如く、溶融パウダ層の粘度は、凝固温度より遥かに高い1300度のみを測定する際の基準温度として評価されており、粘度の温度依存性はモールドパウダの成分設計の際には全く考慮されていなかった。
そして、第2は、生パウダ層が溶融パウダ層へと滓化(液化)する速度、即ち滓化速度である。
即ち、上記の焼付き現象には、浸漬ノズルから吐出される溶鋼の温度や吐出量、浸漬ノズルに注入されているArガス流量などと技術的に関連しており、その中でも前記溶鋼温度が前記焼付き現象に大きな影響を及ぼすことが、本発明の発明者による試験研究により明らかとなっている。
例えば、タンディッシュ内の溶鋼の温度が所望の温度より低い場合は、メニスカス温度も同様に低くなるから、溶融パウダ層が形成されるために必要とされる熱供給が不足する。これにより、上記滓化速度が低下するので、やがて溶融パウダ層の厚みが減じ、それに伴って、鋳型とシェルとの間への当該溶融パウダ層の流入も不足し、これが上記焼付き現象を誘発してしまうのである。
そこで、滓化速度を一定に維持できれば、鋳型とシェルとの間に溶融パウダ層が過不足なく安定して供給され、当該溶融パウダ層に切れ目が生じ難くなるのではないか、と考えたのである。
次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成される、鋼の連続鋳造用のモールドパウダが提供される。
即ち、CaO成分[wt%]とSiO成分[wt%]との比であるCaO/SiOが0.8≦CaO/SiO≦1.2の範囲内である。
LiO成分[wt%]が2.0≦LiO≦5.0の範囲内である。
LiO成分[wt%]とNaO成分[wt%]との比であるLiO/NaOが10.0≦LiO/NaOの範囲である。
凝固温度TLL[℃]が1135≦TLL≦1185の範囲内である。
粘度η[poise]が、1300度のとき1.5≦η≦1.8の範囲内であり、1250度のとき2.2≦η≦2.6の範囲内である。
これにより、例えば鋳造速度が1.8m/min以上などの高速鋳造時においても、前記モールドパウダが溶鋼内に巻き込まれるのを防止できると共に、溶鋼の鋳型内壁に対する焼き付きを防止できる。
また、例えばC成分[wt%]が0.02以上0.07以下であってS成分[wt%]が0.01以上の鋼を連続鋳造するとき、上記の効果は特に効果的に奏される。
本発明の第2の観点によれば、以下のような、鋼の連続鋳造方法が提供される。
即ち、上記のモールドパウダを用い、C成分[wt%]が0.02≦C≦0.07の範囲内であってS成分[wt%]が0.01≦Sの範囲である鋼種を連続鋳造する、鋼の連続鋳造方法において、鋳造速度Vc[m/min]を1.8≦Vc≦2.2の範囲内とする。
鋳型の上方に設けられるタンディッシュに貯えられている溶鋼の、鋳型へ注湯される際の過熱度ΔT[℃]を10≦ΔT≦30の範囲内とする。
上記の如く過熱度ΔTを好適な範囲内とすることで、前記モールドパウダの滓化速度を略一定に維持できるから、鋳型とシェルとの間に溶融パウダ層が過不足なく安定して供給されるので、当該溶融パウダ層に切れ目が生じ難くなる。従って、前述の焼付き現象を効果的に防止できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態において鋼の連続鋳造用のモールドパウダは、以下の如く設定されている。
即ち、CaO成分[wt%]とSiO成分[wt%]との比であるCaO/SiOは、0.8≦CaO/SiO≦1.2の範囲内となるように設定されている。
また、LiO成分[wt%]は、2.0≦LiO≦5.0の範囲内となるように設定されている。
また、LiO成分[wt%]とNaO成分[wt%]との比であるLiO/NaOは、10.0≦LiO/NaOの範囲となるように設定されている。
また、凝固温度TLL[℃]は、1135≦TLL≦1185の範囲内となるように設定されている。なお、「凝固温度」とは、粘度の温度依存性が急激に上がる温度を示す。
また、粘度η[poise]が、1300度のとき1.5≦η≦1.8の範囲内であり、1250度のとき2.2≦η≦2.6の範囲内となるように設定されている。
次に、上記のモールドパウダを用いた鋼の連続鋳造方法を図1に基づいて説明する。図1は、連続鋳造時における鋳型の断面図である。
本図に示す如く、本実施形態に係るモールドパウダは、鋳型の上方に設けられ、図略の取鍋によって搬送されてきた溶鋼を鋳型に注湯する前に一時的に保持するためのタンディッシュから、図略の浸漬ノズルを介して鋳型内に注湯された溶鋼の湯面(所謂メニスカス)に適宜の流量で供給される。これにより、当該湯面には、略球状の粒状物であるモールドパウダから成る生パウダ層と、当該生パウダ層が溶鋼熱の作用により溶融して形成される溶融パウダ層と、が上方から下方へ向かってこの順番で形成される。
なお、鋳型の上方に設けられるタンディッシュに貯えられている溶鋼の、鋳型へ注湯される際の過熱度ΔTは、10〜30[℃]の範囲内とする。なお、過熱度(スーパーヒート)ΔTとは、現実の溶鋼温度と液相線温度(固相が出始める温度)との温度差のことである。
一方、鋳型内に注湯された溶鋼は図略の冷却手段(例えば水冷ジャケットなど)を備える鋳型の内壁面を介して冷却され、鋳片の外殻となる中空矩形状のシェルが図示の如く形成される。
そして、上記のシェルが図示しない鋳片引抜手段(例えばダミーバなど)によって本図の紙面下方へ引き抜かれることで、連続的に鋳片が鋳造される。
なお、本実施形態において鋳造速度[m/min]は、1.8〜2.2の範囲内とし、鋳造する鋼種は、C成分[wt%]が0.02≦C≦0.07の範囲内であってS成分[wt%]が0.01≦Sの範囲であるものとする。
このとき、上記の如くシェルが紙面下方へ引き抜かれるにつれて、前述の溶融パウダ層が当該シェルと、鋳型の内壁面と、の間に流れ込む(図中、白抜き矢印参照)。これにより、前記の溶融パウダ層は、鋳型の内壁面とシェルとの間の潤滑性を確保すると共に、鋳型の内壁面の、シェルに対する冷却(抜熱)が適宜に制御される。
なお、本図に示す如く前記の溶融パウダ層は、鋳型の内壁面と接触して冷却されることで凝固し、固相パウダ層を形成する。より具体的には、当該固相パウダ層は、鋳型の内壁面に固着した状態で形成される。
また、前記のシェル及び固相パウダ層は、本図に示す如く、下方へ向かうにつれてその厚みを増すように形成される。従って、これら固相パウダ層及びシェルとの間に流れ込む溶融パウダ層は、本図に示す如く下方へ向かうにつれてその厚みが薄くなることになる。
また、溶融パウダ層の流入口の近傍(図中、白抜き矢印で示す箇所の近傍)では、前述の如く、当該溶融パウダ層が鋳型の冷却作用により冷却される。
ここで、本発明の発明者が、本図におけるシェルや溶融パウダ層及び固相パウダ層の温度を求めるために非定常伝熱計算を実行したことを報告する。それによると、固相パウダ層と溶融パウダ層との境界の温度はおよそ1150度であり(図1参照)、当該溶融パウダ層とシェルとの境界の温度はおよそ1250度であり、また、当該シェルと溶鋼との境界はおよそ1450度であることが明らかとなった。なお、固相パウダ層と溶融パウダ層との境界の温度は、略、モールドパウダの凝固温度を示している。
上記の計算結果によれば、前記の溶融パウダ層は、上記の流入口の近傍において、少なくとも1250度前後に至るまで冷却されると考えれられる。
それ故、粘度の温度依存性が考慮されていない、換言すれば、1250度以下にまで冷却されたときの粘度が全く考慮されていない従来のモールドパウダを用いると、当該モールドパウダは、固相パウダ層とシェルとの間に流入することで思いのほか粘度が上昇し、その円滑な流入が阻害され、結果として上述の焼付き現象が発生してしまう。
一方で、本実施形態に係るモールドパウダは、上記の如く1250度まで冷却されたときの粘度に着目し、当該粘度が過大とならないように十分考慮して成分設計されているので、その円滑な流入が補償され、焼付き現象の生じない良好な連続鋳造が実現されているのである。
また上記の如く、本実施形態に係る連続鋳造方法では、過熱度ΔTが適宜の範囲内に設定されることにより、前述したモールドパウダの滓化速度が略一定に維持されるから、鋳型とシェルとの間に溶融パウダ層が過不足なく安定して供給されるので、当該溶融パウダ層に切れ目が生じ難くなる。従って、前述の焼付き現象を効果的に防止できる。
また、上記の焼付き現象には、浸漬ノズルから吐出される溶鋼の成分とも技術的に関連していることが、本発明の発明者による試験研究により明らかとなっている。例えば本実施形態の如く、上記低炭素鋼に硫黄(サルファー:S)が添加されている場合(いわゆるS添加鋼)は、同じく添加されていないものと比較して、シェルが破断し易い性質を有しているので、前記焼付き現象が特に大きな問題となる。従って、上記の効果は、特に低炭素鋼に硫黄が添加されている場合に特に有用だといえる。
次に、上記実施形態に係るモールドパウダの技術的効果を確認するための第1試験に関して説明する。その試験条件と試験結果を表1に示す。上記のモールドパウダの各成分の設定値は、本第1試験により合理的に裏付けられている。
Figure 0004773225
本試験では、互いに異なる成分を有するモールドパウダを複数用意し、これら特性の異なるモールドパウダを用いて連続鋳造を実施した。表1の列タイトルを以下に説明する。
・SiO〜L/Nは、各モールドパウダの成分値を表す。
そのうち、『T.C』はモールドパウダ中のトータル炭素量を示し、『C/S』は所謂塩基度のことであって具体的にはCaO/SiOの略称である。また、『L/N』はLiOとNaOとの比であるLiO/NaOの略称である。
・TLL〜η(at1250℃)は、各モールドパウダの物性を表す。
そのうち、『TLL』は前述の如くモールドパウダの凝固温度を表し、『η』は同じくモールドパウダの粘度を表す。当該『η』の横に付記した温度は、当該粘度を測定するときのモールドパウダの温度条件を示すものである。
なお、表1における凝固温度及び粘度は振動片粘度計測装置を用いて以下のように測定した。即ち、第1に、モールドパウダを凝固温度以上に加熱し、第2に、冷却速度を3〜5℃/minとして連続的に徐々に冷却しながら測定した。なお、当該粘度の測定方法は例示の振動片粘度計測装置に限定されず、例えば、白金球引抜式の測定装置を用いてもよい。
・ΔT及びVcは、上記試験における連続鋳造試験の鋳造条件を表す。
そのうち、『ΔT』は過熱度を表し、『Vc』は鋳造速度を表す。
・『ラップ疵』とは鋳造された鋳片の鋳肌に見られる疵を表し、当該ラップ疵は、鋳型内でシェルが部分的に破け、その破けた部分から溶鋼が染み出して形成される痕跡である。そして、当該ラップ疵が鋳肌に1つでも発見された場合は、当該表1においてその評価を「×」とし、1つも発見されなかった場合は、同じく評価を「○」とした。なお、このラップ疵は、他でもない前述の焼付き現象に起因するものである。
表1によれば、上記実施形態に係るモールドパウダの如く成分設計されたモールドパウダを用いると、鋳肌にラップ疵が全く発生しないことが判った。このことからも、上記実施形態に係るモールドパウダが、焼付き現象が生じにくい性質を有する点が明らかとなると共に、鋳肌の品質改善に寄与する点も言える。
次に、本実施形態に係るモールドパウダの技術的効果を確認するための第2試験に関して説明する。その試験条件と試験結果を表2に示す。
Figure 0004773225
本試験では、上記の表1においてラップ疵が発生しなかった試験に用いられたモールドパウダ(銘柄:B及びR)を用いて、互いに異なる鋳造条件(具体的には、過熱度ΔT及び鋳造速度Vc)に基づいて連続鋳造を実施した。
表2によれば、上記実施形態に係るモールドパウダの如く成分設計されたモールドパウダを用い、且つ、上記実施形態に係る連続鋳造方法の如く鋳造条件(過熱度ΔTと鋳造速度Vc)が設定されると、鋳肌にラップ疵が全く発生しないことが判った。これにより、上記実施形態に係る連続鋳造方法が、焼付き現象が生じにくい性質を有することが明らかとなった。
次に、上述の如く焼付き現象を防止するためにはモールドパウダの粘度の温度依存性を十分考慮しなければならない理由を、活性化エネルギに関する第3試験と共に説明する。表3は、第3試験の試験条件とその結果、及び活性化エネルギを示す。
Figure 0004773225
表3によれば、確かに1300度における粘度の大きく異なるモールドパウダ(ア)を用いると、他のモールドパウダ(イ及びウ)を用いた場合と全く異なる結果となったが、特筆すべきは、主要な成分及び特性が殆ど一致しているモールドパウダ(イ)及び(ウ)が異なる結果となった点である。
そこで、本発明の発明者は、上記のモールドパウダ(イ)及び(ウ)の粘度の温度依存性を実験により調査してみた。すると、少なくとも定性的にはこれらのモールドパウダは異なる温度依存性を呈していた。
上記のことから言えることは、モールドパウダの1300度における粘度のみを調査しただけでは、そのモールドパウダが本当に焼付き現象を防止できるか否かを判断することが不可能である点である。つまり、当該焼付き現象を防止するためには、上記1300度における粘度のみならず、その温度依存性も十分、評価しなければならないのである。
ここで、モールドパウダの温度依存性を定量的に評価するパラメータとして、粘性流動の活性化エネルギなるものが知られている。この活性化エネルギとは、下記式(1)で表されるものである。
lnη=A+(E/R)×(1/T)・・・(1)
ただし、η[poise]は粘度を表し、Aは定数であって、E[kJ/mol]は活性化エネルギを示し、R[kJ/mol]は気体定数であって、T[K]はモールドパウダの絶対温度を表す。
なお、上記式(1)は下記式(2)の両辺の自然対数をとったものである。
η=Aexp(E/RT)・・・(2)
上記の表3には、上記各モールドパウダ(ア)〜(ウ)の活性化エネルギも併せて示されている。
この表3によれば、モールドパウダ(ア)及び(イ)は、モールドパウダ(ウ)と比較して、活性化エネルギ、即ち粘度の温度依存性が顕著に高いことが判る。温度依存性が高いということは換言すれば、溶融パウダ層の粘度が当該溶融パウダ層の温度低下に伴って著しく上昇することである。それ故、モールドパウダ(ア)及び(イ)を用いて連続鋳造を実施すると、比較的温度が低くなっている、鋳型の内壁面とシェルとの間へ溶融パウダ層が流れ込み難くなっており、その結果、ブレークアウトやラップ疵の原因である前述の焼付き現象が発生したのだと合理的に推考できる。
一方で、モールドパウダ(ウ)は活性化エネルギが比して低く、即ち粘度の温度依存性が比較的低いので、上述した溶融パウダ層の流入口において粘度が過大とならずに良好な流動が得られ、その結果、問題なく連続鋳造が行われたものだと考えられる。
上記を踏まえると、前記活性化エネルギE[kJ/mol]は、100≦E≦140の範囲内であることが好ましいものと考えられる(図2参照)。
以上説明したように、上記実施形態において連続鋳造用のモールドパウダは、以下のように構成される。
即ち、CaO成分[wt%]とSiO成分[wt%]との比であるCaO/SiOが0.8≦CaO/SiO≦1.2の範囲内である。
LiO成分[wt%]が2.0≦LiO≦5.0の範囲内である。
LiO成分[wt%]とNaO成分[wt%]との比であるLiO/NaOが10.0≦LiO/NaOの範囲である。
凝固温度TLL[℃]が1135≦TLL≦1185の範囲内である。
粘度η[poise]が、1300度のとき1.5≦η≦1.8の範囲内であり、1250度のとき2.2≦η≦2.6の範囲内である。
これにより、例えば鋳造速度が1.8m/min以上などの高速鋳造時においても、前記モールドパウダが溶鋼内に巻き込まれるのを防止できると共に、溶鋼の鋳型内壁に対する焼き付きを防止できる。
例えばC成分[wt%]が0.02以上0.07以下であってS成分[wt%]が0.01以上の鋼を連続鋳造するとき、上記の効果は特に効果的に奏される。
また、以上説明したように上記実施形態では、以下のような連続鋳造が行われる。
即ち、上記のモールドパウダを用い、C成分[wt%]が0.02≦C≦0.07の範囲内であってS成分[wt%]が0.01≦Sの範囲である鋼種を連続鋳造する、鋼の連続鋳造方法において、鋳造速度Vc[m/min]を1.8≦Vc≦2.2の範囲内とする。
鋳型の上方に設けられるタンディッシュに貯えられている溶鋼の、鋳型へ注湯される際の過熱度ΔT[℃]を10≦ΔT≦30の範囲内とする。
上記の如く過熱度ΔTを好適な範囲内とすることで、前記モールドパウダの滓化速度を略一定に維持できるから、鋳型とシェルとの間に溶融パウダ層が過不足なく安定して供給されるので、当該溶融パウダ層に切れ目が生じ難くなる。従って、前述の焼付き現象を効果的に防止できる。
連続鋳造時における鋳型の断面図。 モールドパウダの絶対温度と粘度と活性化エネルギEとの関係を示す図。

Claims (2)

  1. CaO成分[wt%]とSiO成分[wt%]との比であるCaO/SiOが0.8≦CaO/SiO≦1.2の範囲内であり、
    LiO成分[wt%]が2.0≦LiO≦5.0の範囲内であり、
    LiO成分[wt%]とNaO成分[wt%]との比であるLiO/NaOが10.0≦LiO/NaOの範囲であり、
    凝固温度TLL[℃]が1135≦TLL≦1185の範囲内であり、
    粘度η[poise]が、1300度のとき1.5≦η≦1.8の範囲内であり、1250度のとき2.2≦η≦2.6の範囲内である、
    ことを特徴とする鋼の連続鋳造用のモールドパウダ。
  2. 請求項1に記載のモールドパウダを用い、C成分[wt%]が0.02≦C≦0.07の範囲内であってS成分[wt%]が0.01≦Sの範囲である鋼種を連続鋳造する、鋼の連続鋳造方法において、
    鋳造速度Vc[m/min]を1.8≦Vc≦2.2の範囲内とし、
    鋳型の上方に設けられるタンディッシュに貯えられている溶鋼の、鋳型へ注湯される際の過熱度ΔT[℃]を10≦ΔT≦30の範囲内とする、
    ことを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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