JP3884849B2 - 制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置 - Google Patents

制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワーMOSFETやIGBT(Insulated gate bipolar transistor)等の絶縁ゲート型半導体装置に係わり、特に、過熱保護回路や過電流保護回路などを含む制御回路を同一チップ上に具備する絶縁ゲート型半導体装置の高速駆動法、負ゲート電圧保護方法、および耐圧劣下防止に関する。
【0002】
【従来の技術】
パワーMOSFETの信頼性向上のため同一チップ上に過熱保護回路を内蔵した例が特開平7−58293号公報に開示されている。この従来例では外部ゲート端子と内部ゲート端子との間にゲート抵抗を接続し、さらに内部ゲート端子と外部ソース端子との間には保護回路用MOSFETを接続してある。チップ温度が規定温度以上に上昇した場合には、保護回路用MOSFETをオンさせて前記抵抗にゲート電流を流すことにより、パワーMOSFETが破壊する前にパワーMOSFETを遮断させることができる。
【0003】
この従来例では、プロセスステップの増加を抑さえるためパワーMOSFETのドレイン領域に制御回路を形成する自己分離型構造の素子である。このため、コストは安く抑さえられる。しかし、ゲート電圧が負になった場合に、保護回路用MOSFETのドレインとパワーMOSFETのドレインとの間に存在する寄生npnトランジスタにより、外部ドレイン端子から外部ゲート端子にリーク電流が流れるという問題が生じる。そこで、従来例ではこの対策として、前記寄生npnトランジスタのベース電流を遮断するためのダイオードを保護回路用MOSFETと直列に接続し、さらにこのダイオードの降伏を防止する別のダイオードを外部ゲート端子と外部ソース端子との間に接続していた。
【0004】
また、過熱保護回路を内蔵したパワーMOSFETの高周波化のために、上記ゲート抵抗の代わりにMOSFETを用いた例が、特開平6−244414号公報に開示されている。この従来例では、外部ゲート端子と内部ゲート端子との間にゲート抵抗を使用する代わりにボディの電位がソース端子電圧に固定されているMOSFETを使用していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した特開平7−58293号公報に開示された従来の半導体装置では、保護回路用MOSFETのソースとドレインが共にパワーMOSFETのソース端子に接続されていない場合の寄生npnトランジスタ動作を防止する負ゲート電圧保護に関しては検討がなされていなかった。また、この従来例ではゲート端子とソース端子との間にダイオードを挿入するために、このダイオードの電圧降下によりパワーMOSFETを完全に遮断できなかったり、過熱保護回路等の制御回路が正常動作するための最小ゲート端子電圧を低くできないという問題があった。
【0006】
さらに、特開平6−244414号公報に開示された高速動作化を図るために前記ゲート抵抗の代わりにMOSFETを用いる場合に、ボディ電位を制御してオン抵抗を低減することに関しては述べられてなかった。
【0007】
そこで、本発明の第1の目的は、保護回路用MOSFETのソースとドレインが共にパワーMOSFETのソース端子に接続されていない場合にも寄生npnトランジスタ動作が問題とならない負ゲート電圧保護を有する制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、高速動作化が可能な制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置を提供することにある。
【0009】
本発明の第3の目的は、上記負ゲート電圧保護や高速動作化を行ってもパワーMOSFETのドレイン耐圧やIGBTのコレクタ耐圧が低下しない制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置を提供することにある。
【0010】
本発明の第4の目的は、制御回路部が正常動作するためのゲート電圧の動作マージンを拡大した制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置は、例えば図1および図2に示すように、半導体基板のn型の第1の不純物領域(102)と該第1の不純物領域に接するp型の第2の不純物領域(107)と該第2の不純物領域に覆われたn型の第3の不純物領域(109a)とを含む第1のトランジスタ(パワーMOS30)と、上記第1の不純物領域に接するP型の第4の不純物領域(104a)と、上記第4の不純物領域に覆われたN型の第5及び第6の不純物領域(109b,109c)を含む第2のトランジスタ(MOSFET32)と、上記第1の不純物領域に接続されたドレイン端子1と、上記第2のトランジスタの上記第5の不純物領域(109b)に接続されたゲート端子2と、上記第3の不純物領域に接続されたソース端子3と、上記ゲート端子と上記第4の不純物領域との間に設けられた第1のスイッチ回路(SW2)と、上記ソース端子と上記第4の不純物領域との間に設けられた第2のスイッチ回路(SW3)とから構成される。そして、このように構成した本発明に係る制御回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置は、上記ゲート端子の電圧が上記ソース端子に対して負極性のときは、上記第2のスイッチ回路(SW3)がオフ、かつ、上記第1のスイッチ回路(SW2)がオンし、上記ゲート端子の電圧が上記ソース端子に対して正極性のときは、上記第2のスイッチ回路(SW3)がオン、かつ、上記第1のスイッチ回路(SW2)がオフし、上記ゲート端子2が上記ソース端子とほぼ同じ電位であり、さらに上記ドレイン端子の電圧が上記ソース端子に対して所定の正極性の電圧よりも大きいときは、上記第2のスイッチ回路(SW3)がオフであるとともに上記第1のスイッチ回路(SW2)がオン動作することを特徴とするものである。
【0012】
さらに好適な構成としては、同図に示したように、上記第1のトランジスタのゲート電極が上記第6の不純物領域(109c)と接続され、そして上記第1のトランジスタのゲート電極と上記ソース端子に接続されたグランド線(6)との間に設けられた第3のスイッチ回路(SW1)と、上記第1のトランジスタの過負荷状態を検出して上記第3のスイッチ回路をオンにし、かつ、上記第2のトランジスタのソース・ドレイン間抵抗を大きくする保護回路(21)とをさらに具備すればよい。
【0013】
また、上記第1のトランジスタのゲート電極は上記第6の不純物領域と接続され、そして上記第1のトランジスタのゲート電極と上記第4の不純物領域に接続されたグランド線(6)との間に設けられた第3のスイッチ回路(SW1)と、上記第1のトランジスタの過負荷状態を検出して上記第3のスイッチ回路をオンにし、かつ、上記第2のトランジスタのソース・ドレイン間抵抗を大きくする保護回路(21)とをさらに具備すれば好適である。
【0014】
ここで、上記第3のスイッチ回路(SW1)は、例えば図3に示すように、上記保護回路が該半導体装置の過熱状態を検出したことを示す信号によりオン状態となる第3のトランジスタ(31)と、上記保護回路が上記第1のトランジスタのドレイン電流を過電流状態であることを示す信号によりオン状態となる第4のトランジスタ(42)とから構成すれば好適である。
【0015】
また、本発明をさらに好適な構成にするならば、上記第1のトランジスタのゲートにそのアノードが接続された第1及び第2のダイオード(91、89)をさらに設け、上記第3のトランジスタ(31)のソース・ドレイン経路を上記第1のダイオード(91)のカソードと上記グランド線(6)との間に接続され、上記第4のトランジスタ(42)のソース・ドレイン経路は上記第2のダイオード(89)のカソードと上記グランド線(6)との間に接続すればよい。
【0016】
これらのさらに具体的な構成及び作用効果は、以下の説明において明らかにする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る半導体装置の実施の形態につき、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<実施例1>
図1は、本発明に係る半導体装置の第1の実施例を示すブロック回路図である。図1に示した回路構成の半導体装置は、パワーMOSFET30と保護回路21を1つのチップに備え、チップ外部からは1つのトランジスタと見えるように構成したものである。そのため、本半導体装置のチップの外部端子としては、通常のパワーMOSFET同様に、ドレイン端子1、ゲート端子2、ソース端子3を有する。
【0019】
本実施例の半導体装置では、保護回路21の中に温度検出回路や過電流検出回路などを内蔵させ、ゲート端子2に正の電圧が印加されている場合でもドレイン端子1とソース端子3の間に大電流が流れる過負荷状態ではパワーMOSFET30を強制的に遮断、若しくは、パワーMOSFET30のドレイン電流を制限するスイッチ回路SW1を設けてある。
【0020】
MOSFET32は、通常のパワーMOSFET30のスイッチング時に、MOSFET32のオン抵抗を下げることにより、ゲート端子2からパワーMOSFET30のゲートまで入力信号を伝達しやすくして、高速スイッチングを可能にさせる。過負荷状態では、保護回路21に内蔵してある過熱または過電流などの検出回路が動作し、信号xによりスイッチ回路SW1を閉じるように保護回路が動作する。これにより、過負荷状態においてはパワーMOSFET30のドレイン電流を遮断または制限し、素子の破壊を防止できる。
【0021】
本回路では、保護回路21が動作するときノード10の電圧を低下させてMOSFET32のオン抵抗を上げることが特徴である。これにより、保護回路21が動作してパワーMOSFET30のドレイン電流を遮断または制限する場合には、ゲート端子2からのゲート電流が流れにくくなる。その結果、スイッチ回路SW1を介してパワーMOSFET30のゲートにある電荷が放出される。この場合、スイッチ回路SW1のオン抵抗が高い場合でも、MOSFET32がゲートへの電荷注入を低減しているため、パワーMOSFET30を高速に遮断できる。また、保護回路が働いた後のゲート電流も小さくできるため、消費電力が小さくてすむという特徴がある。
【0022】
一方、図2を用いて後述するが、本半導体装置はプロセスコスト低減のため通常のパワーMOSFETプロセスを用いて制御回路20を形成している。このため、安いプロセスコストで制御回路を内蔵できるという利点がある。しかし、パワーMOSFETのドレイン102をコレクタ、制御回路用MOSFETであるMOSFET32のドレイン領域109bをエミッタ、制御回路用MOSFET32のボディ領域104aをベースとする寄生npnトランジスタ29が形成される。従って、ゲート端子2が負になった場合には、ゲート端子2に接続されるMOSFET32のドレイン領域109bとMOSFET32のボディ領域104aに順方向電圧が印加されることになる。このため、寄生npnトランジスタ29がオンして、ドレイン端子1からゲート端子2へリーク電流が流れるという問題が生じる。
【0023】
本実施例では、この寄生npnトランジスタ問題を解決するために、MOSFET32のボディ4とゲート端子2を接続(すなわち、短絡)するスイッチ回路SW2と、MOSFET32のボディ4とソース端子3を接続するスイッチ回路SW3を設けている。
【0024】
ゲート端子2の電圧がソース端子3の電圧に対して正の場合には、スイッチ回路SW2はオフに、スイッチ回路SW3はオンとなるように制御される。通常、ゲート端子2の電圧が正の場合には、パワーMOSFET30がオンしてソース端子3に対するドレイン端子1の電圧は立ち下がり、ゲート端子2の電圧はドレイン端子1の電圧よりも大きくされる。従って、スイッチ回路SW2がオンのままでは、MOSFET32のボディ4とドレイン端子1との間のPN接合に順バイアスが印加されることになる。すなわち、寄生npnトランジスタ29のコレクタ・エミッタ間が順バイアスされ、寄生npnトランジスタ29は逆方向動作する。このため、ゲート端子2からドレイン端子1へリーク電流が流れるという問題が生じる。そこで、スイッチ回路SW2をオフにし、スイッチ回路SW3をオンにして、MOSFET32のボディ4をソース端子3と同電位とする。このようにスイッチ回路を制御することにより、寄生npnトランジスタ29の逆方向動作を防止できる。
【0025】
一方、ゲート端子2の電圧がソース端子3の電圧に対して負の場合には、スイッチ回路SW2をオンにし、スイッチ回路SW3をオフにする。これにより、MOSFET32のボディ4はゲート端子2と同電位になり、寄生npnトランジスタ29がオンすることを防止する。このようにスイッチ回路を制御することにより、本実施例ではドレイン端子1からゲート端子2へのリーク電流を防止できるという特徴がある。
【0026】
上述の対策は、本願発明者等が先に出願した特開平9−139633号公報において考慮されている。ところが、この公報に開示された本実施例のスイッチ回路SW2とSW3に相当するスイッチング手段は、ゲート端子2とソース端子3との間に印加される電圧により動作するため、ゲート端子2とソース端子3との間の電圧がほぼ等しい場合には、スイッチッング手段(SW2とSW3の両方)がオフ状態または高インピーダンスとなることが新たに発見された。つまり、前記寄生npnトランジスタ29のベース4はフローティングまたは高インピーダンスとなる。このため、ゲート端子2とソース端子3との間の電圧がほぼ等しい場合に、ドレイン端子1に高電圧が印加されると、寄生npnトランジスタはパワーMOSFET30の本来のドレイン耐圧(約70V)より低いコレクタ・エミッタ間耐圧BVceo(約20〜30V:ベース・エミッタ間が開放の場合の耐圧)またはそれに近い値で降伏し、ドレイン端子1からゲート端子2に大電流が流れる危険性があることが判明した。
【0027】
そこで、本発明では前記寄生npnトランジスタ29がコレクタ・エミッタ間耐圧BVceoにより降伏しないように、ゲート端子2とソース端子3の電圧がほぼ等しく、ドレイン端子1に正の電圧が印加される場合は、上記耐圧BVceoにマージンを入れて、この耐圧よりも低い10〜20V程度から前記スイッチ回路SW2をオンすることにした。スイッチ回路SW2がオンすることにより、寄生npnトランジスタ29のコレクタ・エミッタ間耐圧はパワーMOSFET30のドレイン・ソース間耐圧と等しいコレクタ・エミッタ間耐圧BVces(ベース・エミッタ間が短絡の場合の耐圧)となる。このため、パワーMOSFET30のドレイン耐圧劣化を防止できる。なお、ここでは正の電圧が印加される場合に10〜20V程度からスイッチ回路SW2をオンすることにしたが、スイッチ回路SW2をオンする電圧は耐圧BVceoよりも小さい値であれば、理論的には問題ない。
【0028】
すなわち、本実施例では信頼性向上のための保護回路を低コストプロセスで内蔵したインテリジェントなパワーMOSFETを高速動作化できる。さらに、ゲート・ソース間が負になる場合にも寄生素子動作を防止する負ゲート電圧保護を内蔵できる。またさらに、このような機能追加によってもパワーMOSFETのドレイン・ソース間耐圧が低下しないという特徴がある。
【0029】
図2は、図1に示したMOSFET32とパワーMOSFET30の断面構造である。図2に示したように、アンチモン又は砒素を不純物とした抵抗率0.02Ω・cm〜0.002Ω・cm程度の高濃度n型半導体基板101上に、抵抗率1〜2Ω・cm程度のn型エピタキシャル層を10μm程度形成されている。
【0030】
パワーMOSFET30の形成部分には、約50nmのゲート酸化膜105aと、その上に形成した多結晶シリコンゲート層106aと、多結晶シリコンゲート層106aのパターン間に、深さ6μm、ドーズ量1015cm-2程度の第1のp型ウエル拡散層103aと、多結晶シリコンゲート層106aをマスクにして自己整合的に形成した深さ2μm、ドーズ量5×1013cm-2程度のボディ用p型拡散層107と、深さ0.4μm、ドーズ量1016cm-2程度のソース用n型拡散層109aとが設けられている。また、ボディ107とアルミ電極112aの間にオーミックなコンタクトを取るために深さ0.5μm、ドーズ量1015cm-2程度の高濃度p型拡散層110aが設けられ、多結晶シリコンゲート層106aの上には絶縁層111を介してソース電極となるアルミ電極層112aが形成されている。
【0031】
また、MOSFET32の形成部分にはボディとなる深さ5μm、ドーズ量2×1013cm-2程度の第2のp型ウエル不純物層104aと、前記n型拡散層109aと同一工程で形成され、ドレイン不純物層およびソース不純物層となる高濃度n型不純物層109b及び高濃度n型拡散層109cと、前記p型拡散層110aと同一工程で形成される高濃度p型不純物層110bが設けられている。また、多結晶シリコンゲート層106aと同じ工程で形成される多結晶シリコンゲート層106bを保護回路用MOSFET32のゲート電極とし、さらにドレイン耐圧向上のためのドーズ量5×1012cm-2程度の低濃度n型オフセット領域108を設けてある。
【0032】
また、アルミ電極層112b、112c、112dは各々MOSFET32のドレイン電極、ソース電極、ボディ電極である。また、参照符号105bは選択酸化により形成された厚さ約1μmのフィールド酸化膜である。
【0033】
本半導体装置は、プロセスコスト低減のため通常のパワーMOSFETプロセスを用いてMOSFET32等の保護回路用MOSFETをパワーMOSFET30のドレイン領域であるn型エピタキシャル層102の中に形成した自己分離型構造である。このため、従来のパワーMOSFETプロセスと同様に低コストで制御回路を内蔵できるという利点があるものの、図1に示したようにパワーMOSFETのドレイン端子1をコレクタ、MOSFET32のドレイン領域109bをエミッタ、MOSFET32のボディ領域104aをベースとする寄生npnトランジスタ29が形成される。しかし、本発明の半導体装置では上記図1で説明したように、スイッチ回路SW2、SW3によりMOSFET32のボディ4の電圧を制御することにより寄生npnトランジスタ29の動作を防止することができる。
【0034】
<実施例2>
図3は、本発明に係る半導体装置の第2の実施例を示す回路図である。本実施例は、図1に示したグランド6をソース端子3に接続する場合(接続a)に対応した実施例であり、スイッチ回路SW1からSW3を具体的な回路構成で示してある。また、本実施例では保護回路21として過熱保護回路と過電流保護回路を内蔵した場合を示してある。
【0035】
すなわち、スウイッチ回路SW1はパワーMOSFET30の内部ゲート5とソース端子3の間を開閉し、パワーMOSFET30が過負荷状態においても破壊しないように設けたスイッチであり、過熱保護に対するMOSFET31と、過電流保護に対するMOSFET42で構成されている。スイッチ回路SW2は、ゲート端子2とMOSFET32のボディ4を開閉するスイッチであり、ソース端子3に対しゲート端子2が負になった時にオンするMOSFET39と、ソース端子3に対しゲート端子2がほぼ同電位の時にドレイン端子1の電位がソース端子3に対して10〜20V以上の正電圧になった場合にオンするMOSFET40で構成されている。スイッチ回路SW3はソース端子3とMOSFET32のボディ4を開閉するスイッチであり、MOSFET38で構成されている。
【0036】
室温において、ゲート端子2に5〜10V程度の正のゲート電圧を印加してパワーMOSFET30をオンさせる場合、MOSFET31、33、42、35、36、39、40はオフ状態、MOSFET34、37、38、41はオン状態になる。この理由は以下の通りである。すなわち、抵抗66とダイオード82は定電圧回路を構成しており、ダイオード82のカソードには3V程度の定電圧が印加される。室温状態では、抵抗65とダイオード列81の分圧によりMOSFET37のゲートには1.5V以上の電圧が印加されている。このためMOSFET37はオン、MOSFET36はオフ状態である。また、抵抗62、63とMOSFET34、35で構成されるラッチ回路は、抵抗62の値を抵抗63の値より約1桁大きく設計してあるため、ゲート端子2に正の電圧が印加されたときには、常にMOSFET34はオン、MOSFET35はオフ状態となる。このため、MOSFET31はオフ状態である。従って、ゲート端子2に電圧が印加されるとダイオード90と抵抗61にゲート端子2から電流が流れてMOSFET32をオンし、パワーMOSFET30のゲートに電荷が供給され、パワーMOSFET30は高速にオンする。抵抗60は、定常状態においてゲート端子2と内部ゲート端子5の電位差を小さくするために設けてある。また、キャパシタ25はゲート端子2の電圧を上昇させるとき、ブートストラップ効果によりさらに高速にMOSFET32のゲート電圧を上昇させるために設けてある。
【0037】
ゲート端子2をゼロボルトにしてパワーMOSFET30をオフする場合、MOSFET32のみならずダイオード80を介してもパワーMOSFET30のゲート電荷を放出できるため、パワーMOSFET30を高速に遮断できる。
【0038】
過電流保護動作は、以下の通りである。すなわち、ドレイン電流が増加する場合には、パワーMOSFET30のドレイン電流をモニタする電流センス用のMOSFET43のドレイン電流が増加する。このため、抵抗70における電圧降下が増加してMOSFET42がオンし始める。このため、MOSFET32が高インピーダンスとなり、パワーMOSFET30の内部ゲート5の電圧を低下させる(スイッチ回路SW1の抵抗を小さくする)。これにより、パワーMOSFET30のドレイン電流が過大になることを防止する。
【0039】
過熱保護動作は、以下の通りである。すなわち、チップ温度が規定温度以上に上昇する場合には、温度の上昇によりダイオード列81の順方向電圧が低下するためMOSFET37のゲート電圧が低下し、MOSFET37がオフする。このため、MOSFET36がオンして、MOSFET34、35と抵抗62、63で構成されるラッチ回路の状態が反転する。従って、MOSFET34がオフしMOSFET33がオンすることにより、パワーMOSFET30の内部ゲート電圧5は低下する(スイッチ回路SW1の抵抗を小さくする)。これにより、パワーMOSFET30が遮断する。
【0040】
本実施例では、上述の過電流保護や過熱保護が働き、パワーMOSFET30の内部ゲート5の電圧を下げる場合にもMOSFET32のゲート10の電圧を下げて、MOSFET32のオン抵抗を増加させることが特徴である。これにより、MOSFET31やMOSFET42のようにパワーMOSFET30のドレイン電流を遮断または制限するために設けてあるスイッチ回路SW1のオン抵抗をあまり低くしなくても高速に保護回路を動作できるという効果がある。また、過大なゲート電流を流す必要がなくなるという効果もある。
【0041】
本実施例では、ソースがソース端子3に接続されているMOSFET、すなわち、MOSFET31、MOSFET42、MOSFET33〜37に関しては、特開平7−58293号公報に開示してある方法、すなわちダイオード91、89、90、88を用いることにより、上記ソースがソース端子3に接続されているMOSFETのドレインとパワーMOSFET30のドレインとの間に存在する寄生npnトランジスタの動作防止を行って負ゲート電圧保護を行なう。
【0042】
さらにソースがソース端子3に接続されていないMOSFET32の寄生npnトランジスタの動作防止のためには、MOSFET39、40、38を使用している。すなわち、外部ゲート端子2が負になった場合にはスイッチ回路SW2を構成するMOSFET39とMOSFET40がオンし、スイッチ回路SW3を構成するMOSFET38がオフする。このため、MOSFET32のボディ電圧4はゲート端子電圧2と同電位になり、図1に示した寄生npnトランジスタ29のベース・エミッタ間が順バイアスされることを防止した。本実施例ではこのような負ゲート電圧保護により、高速動作化のためMOSFET32を内蔵させた場合でも、ドレイン端子1からゲート端子2へのリーク電流を遮断できるという効果がある。
【0043】
さらに本実施例では、MOSFET39、38、40のしきい電圧を例えば1Vにした場合、ゲート端子2の電圧が±1Vの範囲内ではMOSFET38、39、40はすべてオフ状態となる。このため、ゲート端子2がゼロボルト近辺の時には図1で述べた寄生npnトランジスタ29のベースが、開放状態もしくは開放状態に近くなる。従って、寄生npnトランジスタ29のコレクタ・エミッタ間耐圧は、ベース・エミッタ間を短絡した場合の耐圧BVces(約70V)ではなく、ベースが開放の場合の耐圧BVceo(20〜30V程度)近くに低下する恐れがある。
【0044】
そこで、本実施例ではドレイン端子1がソース端子3に対し高電位になり、スイッチ回路SW2を構成するMOSFET40がオンすると、ゲート端子2とMOSFET32のボディ4を短絡するように回路構成してある。これにより、寄生npnトランジスタ29のコレクタ・エミッタ間耐圧を、ベース・エミッタ間を短絡した場合の耐圧BVces(約70VでパワーMOSFET30のドレイン・ソース間耐圧と同じ)に戻し、ドレイン耐圧の劣下を防止することができるという効果がある。
【0045】
なお、ダイオード83、84の降伏電圧を各々10Vとし、抵抗67として400kΩ以上の抵抗、抵抗71として1MΩの抵抗を用いた場合、抵抗67を通って流れるドレインリーク電流はドレイン電圧が20V程度までは遮断し、ドレイン電圧が60Vにおいても100μA(=(60V−2×10V)/400kΩ)程度以下に抑えられる。ここで、ダイオード84はMOSFET40のゲート保護としても働く。
【0046】
従って本実施例でも、実施例1で述べたように、信頼性向上のための保護回路を低コストプロセスで内蔵したインテリジェントなパワーMOSFETの高速動作化を図ることができる。さらに、ゲート・ソース間が負になる場合にも寄生素子動作を防止する負ゲート電圧保護機能を内蔵できる。またさらに、このような機能追加によってもパワーMOSFETのドレイン・ソース間耐圧が劣化しないという特徴がある。なお、本実施例で使用されるダイオードや抵抗は、寄生素子が形成されないようにMOSFETのゲート用の多結晶シリコン層を用いて形成することが望ましい。
【0047】
<実施例3>
図4は、本発明に係る半導体装置の第3の実施例を示す回路図である。本実施例も、図1に示したグランド6はソース端子3に接続する場合(接続a)に対応した実施例であり、スイッチ回路SW1からSW3を具体的な回路構成で示してある。
【0048】
本実施例では、図3においてスイッチ回路SW3として使用したMOSFET38の代りにダイオード93を用いた場合を示してある。ゲート端子2の電圧が正の時には、MOSFET32のボディ4の電圧はダイオード93を介してほぼソース端子3の電圧になるため、MOSFET38を用いた場合に比べてMOSFET32のボディ電圧とソース端子3の電圧との差が大きくなりやすいという点で、実施例2と異なるだけである。従って、実施例1と2で述べたように低コストプロセスを用いて、高速動作化と、負ゲート電圧保護と、ドレイン耐圧の劣下防止とを達成できる。
【0049】
<実施例4>
図5は、本発明に係る半導体装置の第4の実施例を示す回路図である。本実施例は、図1に示したグランド6をMOSFET32のボディ4に接続する場合(接続b)に対応した実施例であり、スイッチ回路SW1〜SW3を具体的な回路構成で示してある。
【0050】
本実施例では、図3に示していたMOSFET31、33〜37に存在する寄生npnトランジスタの動作を防止するために使用していた負ゲート電圧保護用ダイオード88、91を使用せずに、スイッチ回路SW3を構成するMOSFET38を用いてMOSFET32に対する負ゲート電圧保護と同じ方法により負ゲート電圧保護を行う場合である。なお、本実施例ではダイオード90は残してある。これは、キャパシタ25によるブートストラップ効果により、パワーMOSFET30の通常のオン動作時にMOSFET32のゲートを高速に昇圧させるためである。従って、このブートストラップ効果を期待しない場合にはダイオード90とキャパシタ25は不要である。
【0051】
本実施例の場合には、実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣下防止の効果のみならず、MOSFET38として低オン抵抗素子を使用することにより、MOSFET38のドレイン・ソース間電圧を図1〜図4で用いていた負ゲート電圧保護用ダイオード88、91のアノード・カソード間電圧より低くすることができる。従って、この電圧分だけゲート端子2の電圧が下がっても、MOSFET33〜37を用いた過熱保護回路は正常に動作できる。すなわち、ゲート電圧の動作マージンを拡大できるという効果がある。さらに、過熱保護回路が動作した後の内部ゲート端子5の電圧を従来より低くできるため、ドレイン電流を低くできるという効果もある。勿論、本実施例の場合にも実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣下防止の効果がある。
【0052】
<実施例5>
図6は、本発明に係る半導体装置の第5の実施例を示す回路図である。本実施例も図1に示したグランド6をMOSFET32のボディ4に接続する場合(接続b)に対応した実施例であり、スイッチ回路SW1〜SW3を具体的な回路構成で示してある。
【0053】
図5に示した実施例4ではスイッチ回路SW2をMOSFET39とMOSFET40を用いて構成していたのに対し、本実施例はスイッチ回路SW2をMOSFET40だけで構成した場合の実施例である。本実施例では実施例4に比べ負ゲート電圧保護能力が低下するものの、図5に示したMOSFET39を使用しなくてもすむため、半導体チップ上の保護回路の占有面積を低減できるという効果がある。勿論、本実施例の場合にも実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣下防止の効果がある。
【0054】
<実施例6>
図7は本発明に係る半導体装置の第6の実施例を示す回路図である。本実施例は図1に示したグランド6をソース端子3に接続する場合(接続a)に対応した実施例であり、スイッチ回路SW1〜SW3を具体的な回路構成で示してある。
【0055】
本実施例は、図1に示したグランド6はソース端子3に接続する場合(接続a)ではあるが、MOSFET31、33〜37のボディはMOSFET32のボディ4と接続してある。このため、MOSFET31、33〜37に存在する寄生npnトランジスタの動作を防止するために図1等で使用していた負ゲート電圧保護用ダイオード88、91を使用せずにスイッチ回路SW3を構成するMOSFET38を用いて、MOSFET32と同じ方法(寄生npnトランジスタのエミッタ・ベース間を短絡する方法)により負ゲート電圧保護を行っている。この点では、図5に示した実施例4の場合と同様である。
【0056】
本実施例ではMOSFET31、33〜37のソースをソース端子3に接続してあるため、MOSFET31、33〜37のドレイン電流がMOSFET38には流れない。このため、図6に示した実施例5の場合に比べMOSFET38のオン抵抗を低くしなくても(すなわち、素子の半導体チップ内の占有面積を大きくしなくても)、MOSFET32のボディ4を容易に制御できるという利点がある。その他の点では、本実施例の場合にも実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣下防止の効果がある。さらに、実施例4で述べたように、ゲート電圧動作マージンを拡大できるという効果もある。
【0057】
<実施例7>
図8は、本発明に係る半導体装置の第7の実施例を示すブロック回路図である。本実施例は、図9の断面図に示してあるようにフローティングのp型拡散層103cのノード7を用いてスイッチ回路SW2を制御する場合の実施例である。
【0058】
本実施例では、ドレイン端子1に10V程度の電圧が印加されたときパワーMOSFET30のボディであるp型拡散層103aとn型エピタキシャル層102の間に形成される空乏層がフローティングのp型拡散層103cに達するように設計し、これによりスイッチ回路SW2がオンするように構成したことが特徴である。
【0059】
このフローティングノード7とn型エピタキシャル層102との間には寄生ダイオード92が形成されるが、この寄生ダイオードの耐圧はMOSFET30のドレイン耐圧と同じにしても構わない。本実施で寄生ダイオード92の耐圧をパワーMOSFET30のドレイン耐圧と同じにした場合は、図3等においてドレイン端子1からのリーク電流を低減するために設けていた抵抗67は不要である。本実施例の場合にも、実施例1で述べたように低コストプロセスを用いて高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣下防止を達成できる。
【0060】
<実施例8>
図10は、本発明に係る半導体装置の第8の実施例を示す回路図である。本実施例は、図8に示したグランド6をソース端子3に接続する場合(接続a)に対応した実施例であり、図8に示したスイッチ回路SW1〜SW3を具体的な回路構成で示してある。また、本実施例は、保護回路21として過熱保護回路と過電流保護回路を内蔵した場合である。
【0061】
本実施例は、図3の多結晶ダイオード83の代りに、n型エピタキシャル層102とp型拡散層103cにより形成される寄生ダイオード92を用いた回路構成である。本実施例では、前述のように寄生ダイオード92の耐圧をパワーMOSFET30のドレイン耐圧と同じにした場合、図3等においてドレイン端子1からのリーク電流を低減するために設けていた抵抗67は不要である。
【0062】
また、本実施例では、実施例7で説明したように、ドレイン電圧が例えば10V以上になるとp型拡散層103aとn型エピタキシャル層102の間に形成される空乏層がフローティングのp型拡散層103cに達するために、フローティングノード7が10Vになる(寄生ダイオード92が降伏するためではない)。このため、ゲート端子2とソース端子3がほぼ同じ電圧の場合でも、図3の回路と同じようにMOSFET40がオンするので、MOSFET32のボディ4はゲート端子2と同じ電圧となり、寄生npnトランジスタによるドレイン・ソース間の耐圧劣化を防止できる。従って、本実施例の場合にも実施例1や2で述べたように低コストプロセスを用いて高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣下防止が達成できる。
【0063】
<実施例9>
図11は、本発明に係る半導体装置の第9の実施例を示すブロック回路図である。本実施例では、実施例1においてゲート端子2とソース端子3がほぼ同じ電圧となる場合に、MOSFET32のボディがフローティングになることを防止する手段として、スイッチ回路SW3と並列に抵抗72を設け、またスイッチ回路SW2と並列に抵抗73を設けて寄生npnトランジスタ29によるドレイン・ソース間耐圧の劣化を防止する場合の実施例である。
【0064】
例えば、ゲート端子2の電圧が±0.7Vの場合に、ゲート端子2から供給される電圧ではスイッチ回路SW3もSW2も共にオンさせることができないとすると、抵抗72や抵抗73がない場合には、npnトランジスタ29のベースノード4の電圧は、±0.7Vの範囲で変動し得るオープン状態となり、寄生npnトランジスタ29によるドレイン・ソース間の耐圧が劣化するという問題がある。
【0065】
これに対して、本実施例では、抵抗72と抵抗73に同じ値の抵抗を設けることにより、ゲート端子2が±0.7Vの範囲(スイッチ回路SW3もSW2も共にオフ状態)となる場合でも、寄生npnトランジスタ29のベースノード4の電圧は±0.35V以内に抑える。このため、寄生npnトランジスタ29によるドレイン・ソース間の耐圧劣化を防止できる。なお、この場合の抵抗72,73はベースノード4とゲート端子2またはソース端子3とのインピーダンスを低減できる抵抗値を有すれば良く、50MΩ以下、好ましくは5MΩ以下、より好ましくは500kΩ以下が望ましい。そして、抵抗体としては多結晶シリコンを用いた抵抗でも拡散層を用いた抵抗でも良く、その抵抗値の大きさの中には配線抵抗等の寄生抵抗を含んでも良い。
【0066】
従って、本実施例の場合には、実施例1のようにドレイン電圧(端子1の電圧)によりスイッチ回路SW2を制御してMOSFET32のボディがフローティングになることを防ぐ必要はなくなる。
【0067】
本実施例の場合にも、実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣化防止の効果がある。
【0068】
<実施例10>
図12は、本発明に係る半導体装置の第10の実施例を示す回路図である。本実施例は、図11に示したグランド6をソース端子3に接続する場合(接続a)に対応した実施例であり、スイッチ回路SW1〜SW3を具体的な回路構成で示してある。また、本実施例では保護回路21として過熱保護回路と過電流保護回路を内蔵した場合である。
【0069】
本実施例では、ゲート電圧がゼロボルト近辺になりスイッチ回路SW2として働くMOSFET39と、スイッチ回路SW3として働くMOSFET38が共にオフ状態になっても、抵抗72と抵抗73として、例えば共に1MΩの抵抗を入れておくことにより、図1に示した寄生npnトランジスタ29によるドレイン・ソース間の耐圧の劣化を防止することができる。
【0070】
すなわち、MOSFET39とMOSFET38のしきい電圧が共に0.7Vの場合には、ボディ電圧を±0.35Vの範囲に抑えられる。このため、寄生npnトランジスタ29によるドレイン・ソース間の耐圧の劣化を防止できる。
【0071】
本実施例では、ドレイン電圧(端子1の電圧)によりスイッチ回路SW2を制御してMOSFET32のボディがフローティングになることを防ぐ必要はないため、図3に示した抵抗67〜69、71、MOSFET40、41、ダイオード83、84が不要となり、その代わりに抵抗72と抵抗73を設けてMOSFET32のボディがフローティングになることを防止している。これにより、本実施例の場合にも実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、ドレイン耐圧の劣下防止が達成できる。なお、本実施例においてゲート端子2に正の電圧が印加されている場合で、MOSFET32のボディ4とソース端子3のインピーダンスを小さくする必要がない場合にはMOSFET38を取り除くことも可能である。
【0072】
なお、抵抗72と抵抗73は、本半導体装置の全使用温度範囲において、MOSFET39のしきい電圧を0.6V程度以下に選ぶことができる場合には、抵抗73を取り除くことが可能となる。また同様に、MOSFET38のしきい電圧を0.6V程度以下に選ぶことができる場合は、抵抗72を取り除くことが可能となる。MOSFET39やMOSFET38のしきい電圧を低くしすぎると高温時にMOSFET39とMOSFET38のしきい電圧が低下するため、ゲートリーク電流が増加するという問題があるが、本実施例では、抵抗72と抵抗73を用いることにより、MOSFET39やMOSFET38のしきい電圧を低くせずに本発明の目的の一つであるドレイン耐圧の劣化防止が達成できる。
【0073】
<実施例11>
図13は、本発明に係る半導体装置の第11の実施例を示すブロック回路図である。本実施例は、図1に示したパワーMOSFET30の代りにIGBT(Insulated gate bipolar transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)50を用いた場合である。
【0074】
図13において、参照符号11はコレクタ端子、12はゲート端子、13はエミッタ端子である。また、MOSFET32は図1の場合と同様にIGBT50の高速スイッチングを行うために設けてある。図14には保護回路を内蔵したIGBTの断面構造を示してある。図14と図2の相違点は、半導体基板としてp型基板201を使用し、その上にp型基板201からn型ベース領域として働くn型エピタキシャル層102への少数キャリアの注入を抑制するために、n型エピタキシャル層102より高濃度のn型バッファ領域202を設けている点だけである。
【0075】
また、本実施例の場合には寄生npnトランジスタの代りに図14の断面構造から明らかなように、IGBT50のコレクタ端子11とMOSFET32のドレインの間には図13に示す寄生サイリスタ52が形成される。従って、ゲート端子12に負の電圧が印加されると、この寄生サイリスタ52がオンしてコレクタ端子11からゲート端子12にリーク電流が流れる恐れがある。つまり、パワーMOSFET30の代りにIGBT50を用いた場合には、寄生npnトランジスタ29の代りに寄生サイリスタ52による問題が発生するが、その対策はこれまで述べてきたパワーMOSFET30の場合と同じ方法が使用できる。
【0076】
すなわち、実施例1の図1に示したスイッチ回路SW2とSW3を用いたMOSFET32のボディ4の制御によりIGBT50の負ゲート電圧保護を達成できる。さらに、ゲート端子12がゼロボルト付近において、サイリスタ52のベース4がフローティングになった時、サイリスタ52のラッチアップによりIGBT50の実効的コレクタ・エミッタ間耐圧が劣化することを、実施例2の場合と同様にスイッチ回路SW2とSW3を用いたMOSFET32のボディ4の制御により防止している。また、実施例10までにパワーMOSFETを用いて説明した本発明の半導体装置の特徴は、IGBTを用いた場合にも全く同じ制御回路20を用いて達成できる。従って、低コストプロセスを用いて高速動作化、負ゲート電圧保護、コレクタ・エミッタ間耐圧の劣下防止を達成できる。
【0077】
<実施例12>
図15は、本発明に係る半導体装置の第12の実施例を示すブロック回路図である。本実施例は、実施例1においてゲート端子2とソース端子3がほぼ同じ電圧の場合にMOSFET32のボディがフローティングになることを防止する手段として、スイッチ回路SW3と直列に抵抗74を設け、またスイッチ回路SW2と直列に抵抗75を設けて寄生npnトランジスタ29によるドレイン・ソース間耐圧の劣化を防止する場合である。
【0078】
実施例1のように、ドレイン電圧(端子1の電圧)によりスイッチ回路SW2を制御してMOSFET32のボディがフローティングになることを防ぐ理由は、ゲート端子2がゼロボルト近辺になるとスイッチ回路SW2やSW3が導通状態とならないためである。また、ゲート端子2がゼロボルト近辺でもスイッチ回路SW2やSW3を導通状態とするためには、例えばスイッチ回路SW2やSW3を構成するために用いるMOSFETのしきい電圧を極力ゼロボルトに近づけることが必要である。しかしこの場合、高温になり、しきい電圧が低下した時にゲート端子2からスイッチ回路SW2とSW3を通るゲート電流が増加するという問題がある。
【0079】
そこで、本実施例では、スイッチ回路SW2とSW3がゼロボルト近辺でも導通状態となるように、スイッチ回路SW2とSW3を構成するために用いるMOSFETのしきい電圧を極力ゼロに近づけたり、場合によってはデプレッション型のMOSFETを使用することにより、MOSFET32のボディ4がフローティングになることを防いで、ドレイン耐圧の劣化防止を実現すると共に、更にスイッチ回路SW2とSW3を通るゲート電流の増加に対しては、それぞれスイッチ回路SW2とSW3と直列に設けた抵抗74と抵抗75により低減するようにした。なお、この場合の抵抗74,75はゲート端子2とソース端子3との間の貫通電流を阻止できる抵抗値を有すれば良く、抵抗74と抵抗75の抵抗値の合計は10Ω以上、好ましくは500Ω以上、より好ましくは5kΩ以上が望ましい。そして、抵抗体としては多結晶シリコンを用いた抵抗でも拡散層を用いた抵抗でも良く、その抵抗値の大きさの中には配線抵抗等の寄生抵抗を含んでも良い。
【0080】
本実施例の場合にも、実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、パワーMOSFET30のドレイン耐圧劣化防止の効果がある。
【0081】
<実施例13>
図16は、本発明に係る半導体装置の第13の実施例を示す回路図である。本実施例は、図15に示したグランド6をソース端子3に接続する場合(接続a)に対応した実施例であり、スイッチ回路SW1〜SW3を具体的な回路構成で示してある。また、本実施例は、保護回路21として過熱保護回路と過電流保護回路を内蔵した場合である。
【0082】
本実施例では、ゲート電圧がゼロボルトになり、スイッチ回路SW2として働くMOSFET39とスイッチ回路SW3として働くMOSFET38が共にオン状態となっても、抵抗72と抵抗73とを入れておくことにより、ゲート端子2からスイッチ回路SW2とSW3を通るゲート電流の増加を防止することができる。
【0083】
また、スイッチ回路SW2として働くMOSFET39とスイッチ回路SW3として働くMOSFET38のしきい電圧を極力ゼロボルトに近づける(または負にする)ことにより、ゲート端子2がゼロボルト近辺となる場合でも寄生npnトランジスタ29によるパワーMOSFET30のドレイン・ソース間の耐圧劣化を防止できる。
【0084】
また更に、MOSFET38とMOSFET39のしきい電圧の選び方によっては抵抗74か抵抗75のいずれかがなくても、本実施例の半導体装置のドレイン耐圧(端子1と端子3の間の耐圧)の劣化防止を行い、なおかつ、MOSFET38とMOSFET39を通るゲート電流を低減できるように設定することが可能となる。
【0085】
勿論、本実施例の場合にも、実施例1や2で述べた高速動作化、負ゲート電圧保護、パワーMOSFET30のドレイン耐圧劣化防止の効果がある。
【0086】
以上、本発明の好敵な実施例について説明したが、本発明は前記実施例に限定するものではなく、例えば前記実施例ではパワーMOSFETを含む全てのMOSFETやIGBTはnチャネル型として説明したが全ての素子をpチャネル型としても同様の効果が得られ、本発明の精神を逸脱しない範囲内において種々の設計変更をなし得ることは勿論である。
【0087】
【発明の効果】
前述した各実施例から明らかなように、本発明によれば例えば過熱保護回路や過電流保護回路等の制御回路を自己分離型構造で内蔵したパワーMOSFETやIGBTの高速動作化を図ることができる。また、ゲート端子に負の電圧が印加されても寄生npnトランジスタ動作や寄生サイリスタ動作によりドレイン端子(IGBTではコレクタ端子)からゲート端子へのリーク電流を防止でき、ゲート端子がゼロボルト付近でのドレイン・ソース間(IGBTではコレクタ・エミッタ間)耐圧の劣化を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の半導体装置のブロック回路図である。
【図2】本発明の第1の実施例の半導体装置の断面構造図を示す。
【図3】本発明の第2の実施例の半導体装置の回路図である。
【図4】本発明の第3の実施例の半導体装置の回路図である。
【図5】本発明の第4の実施例の半導体装置の回路図である。
【図6】本発明の第5の実施例の半導体装置の回路図である。
【図7】本発明の第6の実施例の半導体装置の回路図である。
【図8】本発明の第7の実施例の半導体装置のブロック回路図である。
【図9】本発明の第7の実施例の半導体装置の断面構造図を示す。
【図10】本発明の第8の実施例の半導体装置の回路図である。
【図11】本発明の第9の実施例の半導体装置のブロック回路図である。
【図12】本発明の第10の実施例の半導体装置の回路図である。
【図13】本発明の第11の実施例の半導体装置のブロック回路図である。
【図14】本発明の第11の実施例の半導体装置の断面構造図を示す。
【図15】本発明の第12の実施例の半導体装置のブロック回路図である。
【図16】本発明の第13の実施例の半導体装置の回路図である。
【符号の説明】
1…パワーMOSFETの外部ドレイン端子、2…パワーMOSFETの外部ゲート端子、3…パワーMOSFETの外部ソース端子、4…保護回路用MOSFETのボディノード(寄生npnのベースノード)、5…内部ゲートノード、6…保護回路21のグランドノード、7…p型拡散層103cのフローティングノード、10…MOSFET32のゲート端子、11…IGBTの外部コレクタ端子、12…IGBTの外部ゲート端子、13…IGBTの外部エミッタ端子
20…制御回路、21…保護回路、29…寄生npnトランジスタ、30…パワーMOSFET、31〜42…MOSFET、43…電流センス用MOSFET、50…IGBT、52…寄生サイリスタ、60〜75…抵抗、80〜93…ダイオード、101…n型基板、102…nエピタキシャル層、103a,103b…第1のp型ウエル層、104a…第2のp型ウエル層、105…ゲート酸化膜、106a,106b…ゲート電極、107,109a,109b…p型拡散層、108…低濃度n型拡散層、109a,109b,109c…n型拡散層、109b,109c,103…n型拡散層、110a,110b…p型拡散層、111…保護膜、112a〜112g…アルミ電極、201…p型基板、202…n型バッファ層。

Claims (6)

  1. 第1外部端子と第2外部端子と第3外部端子とを有する半導体装置であって、
    上記第3外部端子に接続された第1端子と、上記第1外部端子に接続された第2端子と、制御端子とを有し、該第1端子がそのボディに接続された第1トランジスタと、
    その電流経路が上記第2外部端子と上記第1トランジスタの制御端子との間に設けられた第2トランジスタと、
    上記第2外部端子と上記第2トランジスタのボディとの間に設けられた第2スイッチ回路と、
    上記第3外部端子と上記第2トランジスタのボディとの間に設けられた第3スイッチ回路とを有し、
    上記第2外部端子の電位が上記第3外部端子の電位に対して負となったときに、上記第2スイッチ回路はオン状態となり、上記第3スイッチ回路はオフ状態となり、
    上記第2外部端子の電位が上記第3外部端子の電位に対して正となったときに、上記第2スイッチ回路はオフ状態となり、上記第3スイッチ回路はオン状態となり、
    上記第1外部端子の電位が上記第3外部端子の電位に対して正となったときに、上記第2スイッチ回路はオン状態となり、上記第3スイッチ回路はオフ状態となる半導体装置。
  2. 請求項において、
    上記第2スイッチ回路は、上記第2トランジスタのボディに接続された第1端子と、上記第2外部端子に接続された第2端子と、制御端子とを有し、該第1端子がそのボディに接続された第3トランジスタを含み、
    上記第3トランジスタの制御端子は、その電位が上記第2外部端子の電位と上記第3外部端子の電位の間の電位となるノードに接続された半導体装置。
  3. 請求項において、
    上記第2スイッチ回路は、上記第2トランジスタのボディに接続された第1端子と、上記第2外部端子に接続された第2端子と、上記第3外部端子に接続された制御端子とを有し、該第1端子がそのボディに接続された第4トランジスタを含む半導体装置。
  4. 請求項において、
    上記第2スイッチ回路は、上記第2トランジスタのボディに接続された第1端子と、上記第2外部端子に接続された第2端子と、上記第3外部端子に接続された制御端子とを有し、該第1端子がそのボディに接続された第4トランジスタと、
    上記第2外部端子と上記第2トランジスタのボディとの間に設けられた抵抗とを含む半導体装置。
  5. 請求項において、
    上記第3スイッチ回路は、上記第2トランジスタのボディに接続された第1端子と、上記第3外部端子に接続された第2端子と、上記第2外部端子に接続された制御端子とを有し、該第1端子がそのボディに接続された第5トランジスタを含む半導体装置。
  6. 請求項において、
    上記第3スイッチ回路は、そのアノードが上記第2トランジスタのボディに接続され、そのカソードが上記第3外部端子に接続されたダイオードを含む半導体装置。
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