JP3880175B2 - 乳酸の精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸の精製方法に関する。乳酸は食品工業において、清涼飲料、酸性食品、貯蔵食品、清酒等の製造に、或いは医薬品工業において、注射液等の医薬品の製造に広く利用されている。また、最近では、生分解性樹脂の原料として化学工業においても、広く利用されている。
【0002】
【従来の技術】
乳酸は、工業的には発酵法、ラクトニトリルの加水分解法、あるいは2−クロロプロピオン酸の加水分解法等によって製造される。また、この他に、プロピレンの窒素酸化物を用いた酸化や、プロピレングリコールやプロピレンオキシドの酸化、アセトアルデヒドと一酸化炭素との反応等による合成も知られている。これらの製造方法によって得られた乳酸の分離精製法としては、乳酸を乳酸カルシウムとして晶析し、溶解性不純物を分離した後、硫酸と反応させて乳酸に転換し、カルシウム分を硫酸カルシウム結晶として分離する方法が広く行われている。
さらに乳酸の純度を高めるために活性炭処理、反復晶析、イオン交換樹脂や有機溶媒による抽出、電気透析等が併用されている。また、乳酸をメタノールやエタノール等のアルコールでエステル化し、蒸留することによって不純物を分離する方法など、さまざまな精製手段を経ることによって純度の高い乳酸が得られている。
【0003】
しかしながら、これらの方法で得られる乳酸には、なお製造時の副生あるいは温度、光等の作用による経時変化により、ピルビン酸、還元糖類をはじめとする各種不純物が含まれている。その結果、臭いや乳酸の熱安定性の点でさらに高品質を必要とする分野での使用が制限されるという問題点があった。
【0004】
また、米国特許第5,310,865号(特開平6−65360号)には、乳酸等のヒドロキシカルボン酸類を、直接的に脱水縮合することにより、高分子量のポリヒドロキシカルボン酸類を製造する技術及び該ポリヒドロキシカルボン酸類を含む優れた強度を有するフィルム、糸及び成形加工品を製造する技術が開示されている。しかしながら、上記公知技術に従って、ポリ乳酸を製造する場合、実用的な強度を有する高分子量のポリマーが得るために、比較的高品質の乳酸を使用しても、使用する乳酸の種類やロットの違いにより、得られるポリ乳酸が着色することがあり、安定した品質のポリマーが得られないという問題があった。
【0005】
ところで、乳酸中に微量に含まれる不純物の精製法に関しては、特開昭56−65841号には、乳酸水溶液に水を添加した後、蒸留することによる乳酸の精製方法が開示されており、乳酸中に存在する数10ppm相当のアルデヒド分を除去し、微量に混在する不純物、例えば、メタノール、酢酸等も同時に留去される結果、臭いも改善されることが記載されている。
しかしながら、この方法は、精製のために、多量の水を添加する必要があり、濃縮蒸留に費用がかかる。また留出した水の廃水処理の問題、さらには、この方法では効率良く除去することが困難な不純物が依然として存在する。例えば、ピルビン酸などの除去が困難であり、必ずしも満足のいく精製方法とは言えなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、簡単な操作によって乳酸に含まれるピルビン酸およびその他の微量不純物を除去することによって、ピルビン酸を含まず、臭いや熱安定性が改善された高品質の乳酸を得る新規な乳酸の精製方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意検討を行った結果、乳酸を、水素又は水素含有ガスで接触還元する方法及び金属によって還元する方法等の簡単な還元処理によって、ピルビン酸を含まず、しかも臭いと熱安定性が大幅に改善された高品質の乳酸が得られることを見出し、本発明を完成した。本発明のこれらの還元処理を行った乳酸をポリマー原料として使用することにより、着色が少ない品質の安定したポリ乳酸が得られる。
【0008】
本発明は、以下の〔1〕〜〔9〕に記載した事項により特定される。
〔1〕 発酵法により得られ、ピルビン酸を含有する乳酸水溶液を、還元処理することを特徴とする乳酸の精製方法。
〔2〕 精製された乳酸が、180℃、2時間加熱後のAPHAが50未満である、請求項1記載の乳酸の精製方法。
〔3〕 還元処理が、接触還元処理であることを特徴とする、請求項1記載の乳酸の精製方法。
【0009】
〔4〕 接触還元処理が、還元触媒として、パラジウム、白金、及びそれらの化合物からなる群から選択された少なくとも一種を使用するものである、請求項3記載の乳酸の精製方法。
〔5〕 還元処理が、還元剤として金属を使用するものである、請求項1記載の乳酸の精製方法。
〔6〕 還元剤として使用する金属が、金属鉄、金属錫、金属亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項5記載の乳酸の精製方法。
【0010】
〔7〕 請求項1〜6のいずれかの方法で得られた乳酸を重合するポリ乳酸の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられる乳酸は、どのような製法によって製造された乳酸にも適用でき、特に、発酵法によった乳酸に好適に適用できる。
【0012】
本発明において乳酸は、単量体としての乳酸のみならず、オリゴマーとしてのオリゴ乳酸(数平均分子量300以下の乳酸縮合体)をも包含し、これらの混合物をも包含する。オリゴ乳酸のうち、数平均分子量が300を越えるものは、一般的には、溶液粘度が高くなる結果、還元操作が困難となったり、還元処理後に、還元に使用した接触還元触媒や、還元剤として使用した未反応の金属を除くことが困難となるため好ましくない場合がある。
【0013】
本発明に係る精製方法に供される乳酸は、通常、水溶液の状態である。乳酸水溶液中の乳酸濃度は特に制限されず、任意の濃度の乳酸水溶液を使用することができるが、一般的には、濃度20重量%以上のものが好ましい。
本発明に係る精製方法に供される乳酸は、通常、本発明に係る精製方法により精製された乳酸の使用目的に適合するように、予め、水を添加したり、濃縮したりして、乳酸水溶液の濃度を調整することが好ましい。
【0014】
一般に、還元処理の方法は、新実験化学講座15巻、酸化と還元〔II〕(丸善、東京、1997年)に記載されているように、金属及び金属塩による還元、金属水素化物による還元、金属水素錯化合物による還元、接触還元、電界還元、リン化合物による還元等があるが、本発明において、還元処理の方法は、乳酸及び/又は水に対して実質的に影響を与えることなく、また、乳酸及び/又は水により実質的に阻害されることなく、乳酸水溶液中に混在する酸化物を還元する操作であれば、特に制限されない。
従って、金属ナトリウム、リチウムアルミニウムハイドライド、ボラン等の水との反応性が高い化合物を使用する還元処理は好ましくないし、ナトリウムボロンハイドライド、ヒドラジン、ジイミド等の乳酸との反応性が高い化合物を使用する還元処理は利用できない。
【0015】
本発明において、還元処理の方法は、上述の如く、乳酸及び/又は水に対して実質的に影響を与えることなく、また、乳酸及び/又は水により実質的に阻害されなければ、いかなる方法も用いることができるが、還元操作及び後処理の利便性、試薬の入手の利便性等を考慮すると、接触還元による還元処理、金属鉄、金属錫、金属亜鉛等の金属を還元剤として使用する還元処理が好ましい。
【0016】
本発明の方法において、還元処理の方法が接触還元の方法である場合、接触還元とは、還元方法の一種であって、適当な触媒の存在下に水素を用いて、乳酸中に存在する乳酸以外の被還元性不純物、例えば、ピルビン酸、還元糖等の不純物を還元する方法を言う。
本発明において、接触還元には、新実験化学講座15巻、酸化と還元〔II〕、333頁−448(丸善、東京、1997年)に記載されている方法を包含する。
【0017】
本発明において、通常、接触還元は、乳酸水溶液に、触媒を加え、水素又は水素と窒素やアルゴン等の不活性なガスとからなる水素含有ガスにより還元処理する。反応の終点は水素ガスの吸収を測定し、水素ガスの吸収が停止するところである。
【0018】
本発明の接触還元に用いられる触媒は、乳酸と反応して変化しないものであれば、特に制限されない。本発明の接触還元に用いられる触媒の具体例としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、銅等を挙げることができる。これらの触媒は、一種類でも二種類以上の組み合わせでも使用することができる。
これらの触媒は金属の状態でも使用できるが、通常はカーボン、硫酸バリウム、シリカゲル、アルミナ等の担体表面に担持させて用いられる。工業的にはパラジウム、白金触媒をそれぞれ活性炭やアルミナに担持させたものが好適に用いられる。
これらの触媒の使用量は、原料の乳酸水溶液に対して、金属として0.01−30重量%の範囲であり、通常、担体に担持させて用いる場合では0.01−5重量%の範囲である。
【0019】
本発明の接触還元の反応温度は、一般的には0−150℃の範囲、好ましくは10−100℃の範囲である。
【0020】
本発明の接触還元方法において、反応圧力は通常、50kg/cm2 以下の任意の圧力が用いられ、反応を常圧で行ってもよい。
【0021】
還元処理が終了した後、反応系内を窒素等の不活性ガスに置換し、触媒と乳酸を分離する。
乳酸水溶液と触媒の分離方法は、特に制限されない。乳酸水溶液と触媒は、例えば、触媒を濾過により、又は、触媒を含む乳酸水溶液を静置、若しくは、遠心沈降させて乳酸水溶液をデカントする等の簡単な操作によって、分離することができる。
分離した触媒は回収して再使用することができる。
【0022】
本発明において、還元処理の方法が金属を還元剤として使用する方法である場合、乳酸水溶液中、酸性条件下で金属を還元剤として使用し、乳酸中に存在する乳酸以外の被還元性不純物、例えば、ピルビン酸、還元糖等の不純物を還元する。この時、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸を同時に添加し、酸の強度を上げることによって、還元反応の速度を速めることも可能であるが、通常、乳酸自身の酸としての作用で充分に還元反応を行うことができる。
【0023】
本発明の方法で用いられる還元剤としての金属は、金属鉄、金属錫、金属亜鉛が好ましい。
本発明の方法で用いられる還元剤としての金属の使用量は、乳酸中に混在する乳酸以外の不純物に対して、充分な、あるいは大過剰の量を通常使用する。
【0024】
反応温度は、一般的には0−150℃の範囲、好ましくは10−100℃の範囲である。
【0025】
本発明の方法で、金属を還元剤として使用する方法の実施の形態としては、乳酸水溶液中に粉末状の金属を添加し、所定温度で攪拌し、還元を行った後、未反応の金属を濾過したり、未反応の金属を含む乳酸水溶液を静置、若しくは、遠心沈降させてデカントする等の簡単な操作によって分離する操作を包含する。他の実施の形態として、粒状の還元剤をカラム等の充填塔に装入し、その中を乳酸水溶液を流通させながら還元を行う方法等をも包含する。
【0026】
反応の終点は、HPLC等により適宜乳酸中のピルビン酸等の不純物の分析を行い、不純物が還元されて、検出されなくなったところで還元操作を終了する。過剰に使用して残った未反応の金属は繰り返し再使用することができ、操作は回分式、半回分式、連続式のいずれの方法でも実施可能である。
【0027】
本発明の方法で、金属を還元剤として使用して還元操作を行った乳酸水溶液中には、反応した金属成分、鉱酸を添加した場合には添加した鉱酸成分が溶解している。これら乳酸中の不純物を還元処理するために使用した成分を分離除去する方法は特に限定されない。例えば、金属成分を、H−型強酸性イオン交換樹脂によって除去する方法、鉱酸成分をOH型または乳酸型強塩基性アニオン交換樹脂によって処理する方法等のイオン交換樹脂によって処理する方法が実施可能である。
あるいは、本発明の金属による還元処理方法は、金属による還元処理を行った後、他の公知の精製方法、例えば、乳酸をアルコールと反応させ、乳酸エステルとして蒸留、分離した後、乳酸エステルを加水分解して乳酸を精製する方法と組み合わせて用いることができる。
【0028】
このようにして、本発明の方法によって還元処理された乳酸は、処理前と比較して、乳酸中に含まれるピルビン酸を還元処理すると同時にアルデヒド化合物等の不純物が還元処理される結果、ピルビン酸を実質的に含まず、熱安定性に優れ、しかも臭い(臭気性)の低減に関して、大幅に改善された高品質の乳酸が得られる。
具体的には、市販の乳酸中には、数十ppm−数百ppm、乳酸の種類によっては1000ppmを超える量のピルビン酸が含まれているが、本発明の方法により還元処理を行うと、HPLCによる分析で(検出限界:5ppm)ピルビン酸は検出されなくなる。
【0029】
更に、本発明の方法で精製した乳酸を原料として使用して、直接脱水縮合することにより乳酸系ポリマーを製造する場合、着色の少ないポリマーを安定して得ることができる。
乳酸を原料として使用してポリマーを得る方法は、既に知られている。例えば、米国特許第5,310,865号及び特開平6−65360号には、ヒドロキシカルボン酸類の加熱脱水縮合反応を触媒の存在下、有機溶媒中で行い、生成した水を該有機溶媒と共に反応系外に留出させるとともに、留出した有機溶媒に溶解する水分量以下の水分量を有する有機溶媒を追加溶媒として反応系に装入しながら反応することを特徴とする、ポリヒドロキシカルボン酸の製造方法が開示されている。
【0030】
この方法にしたがって、原料に乳酸を使用してポリ乳酸を製造する場合、実用的な強度を持った高分子量(重量平均分子量50,000以上)のポリ乳酸を得るためには、比較的品質の高い乳酸が用いられるが、乳酸の種類によっては、高分子量のポリ乳酸が得られるものであっても、乳酸中に少量のピルビン酸が混入するため、得られたポリ乳酸に着色が見られたり、あるいは同じグレードの乳酸を使用しても、乳酸のロットの違いによって、得られるポリ乳酸の着色の度合いがばらつき、安定した品質のポリマーを継続的に得ることが困難であった。
しかしながら、本発明の還元処理して精製したピルビン酸を実質的に含まない乳酸を使用することによって、米国特許第5,310,865号開示の方法に従って脱水縮合反応を行うことにより、イエローインデックスが3.0以下の着色の少ない高分子量のポリマーを安定して得ることができる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を詳述する。
なお、本発明における実施例の記載は、本発明の内容の理解を支援するための説明であって、その記載は本発明の技術的範囲を狭く解釈する根拠となる性格のものではない。
【0032】
この実施例で用いた分析、評価方法は、以下のとおりである。
乳酸不純物の分析は、ピルビン酸を代表例として挙げたが、本発明の方法で還元処理される不純物はピルビン酸のみに限定されるものではない。
実施例においては、特に説明がない限りは、重量基準で記載した。
【0033】
(1)乳酸中の不純物の分析(ピルビン酸)
ピルビン酸の分析は以下に示すHPLC条件で行った。ピルビン酸の検出限界は5ppmであった。
<HPLC分析条件>
カラム:YMC A−312 ODS(6mm×150mm)
移動相:アセトニトリル/水=5/95(pH=2.0/リン酸)
流速 :1.0ml/min
検出 :λ=225nm
【0034】
(2)乳酸の熱安定性試験
乳酸の熱安定性を計る方法として、乳酸を180℃、2時間加熱した後の着色の程度をAPHA法で測定した。
APHA法の色数標準液は、塩化白金カリウム(K2PtCl6 )1.246g(白金として500mg)、塩化コバルト(CoCl2 ・6H2O)1.0gを塩酸100mlに溶かし、水で1リットルに薄める。これを色数500とする。試薬はいずれも特級、水は蒸留水を用いる。色数100、50、20、10等は、色数500の液をそれぞれ蒸留水で5、10、25、50倍に薄めて作る。規定の大きさの試験管(径約3cm、長さ約20cm)に入れて、試験管上面から肉眼で試料色と比較し、同じ感じの標準色数液番号で表示する。標準色数液の長期の保存は困難なので、適当な時期に作りかえる。
【0035】
(3)重量平均分子量
得られたポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(カラム温度40℃、クロロホルム溶媒)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
【0036】
(4)黄色度(YI値)
得られたポリ乳酸から、2mm厚のプレートサンプルを作成し、これについて黄色度をJIS K−7103に従って、SMカラーコンピューター(型式:SM−6−IS−2B、スガ試験機(株))にて測定した。
【0037】
実施例1
攪拌装置、温度計を備えた密閉型還元反応器に市販のL−乳酸(濃度88%)185gに5%パラジウム−アルミナ触媒(NEケムキャット社製)3.08gを加え系内を窒素置換した。系内を水素で置換した後25℃で激しく攪拌しながら、常圧で接触還元処理を行った。攪拌40分で45mlの水素を吸収し、これ以上の吸収が認められなくなったので、攪拌1時間後に反応を終了した。系内を窒素で置換した後、触媒を濾過により分離して、還元処理した乳酸を得た。
この乳酸中のピルビン酸を分析したところ、処理前は480ppm含まれていたものが、処理後には検出されなかった。また、処理前は乳酸とは異なる異臭が感じられたが、処理後の乳酸には異臭は感じられなかった。
接触還元処理後の乳酸を180℃、2時間加熱した後のAPHAを測定したところ、処理前の乳酸を180℃、2時間加熱した時のAPHAが80であったのに対し、30で着色の程度も改善されていた。
【0038】
実施例2
使用する触媒を50%含水5%パラジウム−カーボン触媒(NEケムキャット社製)1.16gに変更し、60℃で接触還元処理する他は実施例1と同様に処理を行った。攪拌30分で45mlの水素を吸収し、これ以上の吸収が認められなくなったので、攪拌1時間後に反応を終了した。系内を窒素で置換した後、触媒を濾過により分離して、還元処理した乳酸を得た。
この乳酸中のピルビン酸を分析したところ、処理前は480ppm含まれていたものが、処理後には検出されなかった。また、処理前は乳酸とは異なる異臭が感じられたが、処理後の乳酸には異臭は感じられなかった。
接触還元処理後の乳酸を180℃、2時間加熱した後のAPHAを測定したところ20であった。
【0039】
実施例3
実施例1で使用した市販のL−乳酸(濃度88%)200gに5gの鉄粉を添加し、70℃で攪拌した。HPLCによりピルビン酸が検出されなくなるまで攪拌を続けた後、濾過により未反応の鉄粉を乳酸水溶液から分離した。次に、この乳酸水溶液を室温まで冷却した後、H−型に調整したイオン交換樹脂カラム(DIAION SK1B)に通液し、溶解している鉄分を除去した。
得られた乳酸を180℃、2時間加熱した後のAPHAを測定したところ20であった。また、処理前は乳酸とは異なる異臭が感じられたが、処理後の乳酸には異臭は感じられなかった。
【0040】
実施例4
実施例1で使用した市販のL−乳酸(濃度88%)200gに5gの錫粉を添加し、70℃で攪拌した。HPLCによりピルビン酸が検出されなくなるまで攪拌を続けた後、濾過により未反応の錫粉を乳酸水溶液から分離した。次に、この乳酸水溶液を室温まで冷却した後、H−型に調整したイオン交換樹脂カラム(DIAION SK1B)に通液し、溶解している錫分を除去した。
得られた乳酸を180℃、2時間加熱した後のAPHAを測定したところ20であった。また、処理前は乳酸とは異なる異臭が感じられたが、処理後の乳酸には異臭は感じられなかった。
【0041】
実施例5
実施例2で得られた還元処理を行った88%L−乳酸103.2g、重合触媒として酸化第一錫0.43gを500mlの丸底フラスコに装入し、140℃/100mmHgで3時間、系外に水を留去しながら加熱攪拌した。その後、o−ジクロロベンゼン72gが入ったDean Starktrapを装着し、さらに反応マスにo−ジクロロベンゼン72gを加えて140℃/270mmHgで4時間共沸脱水した。Dean Starktrapを取り外し、モレキュラーシーブ3Aが30g充填され、o−ジクロロベンゼンで満たされた管を取りつけ、還流により留出する溶媒がモレキュラーシーブを通って再び系内に戻るようにして、140℃/270mmHgで24時間、系内に水を混入させないようにしながら加熱攪拌し、反応させた。
【0042】
この反応液を30℃まで冷却し、0.7%塩酸/イソプロピルアルコール溶液800mlを加え、1時間攪拌した後、吸引濾過し、触媒を除去した。続いて、濾塊をイソプロピルアルコール600mlで攪拌した後、吸引濾過する操作を濾液が中性になるまで行い、その後、60℃熱風乾燥し、59.6g(収率82%)のポリ乳酸を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は143,000であり、その黄色度(YI値)は1.5であった。
【0043】
実施例6
実施例3で得られた還元処理乳酸を行った88%L−乳酸を使用する以外は実施例5に示した重合操作と同様の操作を行いポリ乳酸60.0g(収率83%)を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は145,000であり、その黄色度(YI値)は1.3であった。
【0044】
比較例1
実施例1で使用した市販のL−乳酸(濃度88%)200gに、蒸留水200gを加え、温度50〜55℃、90〜50mmHgの減圧下で全液が200gになるまで濃縮した。
処理後の乳酸は、異臭は感じられなかったが、ピルビン酸含有量を測定したところ、420ppmと、処理前と比較してわずかに減少しただけであった。
処理後の乳酸を180℃、2時間加熱した後のAPHAを測定したところ50であった。
このようにして得られた88%L−乳酸を使用し、実施例5に示した重合操作と同様の操作を行いポリ乳酸59.5g(収率82%)を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は145,000であり、その黄色度(YI値)は4.3であった。
【0045】
比較例2
実施例1で使用した還元処理前の88%L−乳酸をそのまま重合に使用し、実施例5に示した重合操作と同様の操作を行いポリ乳酸58.5g(収率81%)を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は143,000であり、その黄色度(YI値)は4.8であった。
実施例5、6及び比較例1、2の重合により得られたポリ乳酸の重量平均分子量、黄色度(YI値)と、原料として使用した乳酸中のピルビン酸含有量、180℃、2時間加熱後の着色の程度(APHA)の関係を表−1(表1)に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
このようにして、本発明の方法によって還元処理された乳酸は、処理前と比較して、乳酸中に含まれるピルビン酸を還元処理すると同時にアルデヒド化合物等の不純物が還元処理される結果、ピルビン酸を実質的に含まず、熱安定性に優れ、しかも臭い(臭気性)の低減に関して、大幅に改善された高品質の乳酸が得られる。
更に、本発明の方法で精製した乳酸を原料として使用して、直接脱水縮合することにより乳酸系ポリマーを製造する場合、着色の少ないポリマーを安定して得ることができる。
Claims (7)
- 発酵法により得られ、ピルビン酸を含有する乳酸水溶液を、還元処理することを特徴とする乳酸の精製方法。
- 精製された乳酸が、180℃、2時間加熱後のAPHAが50未満である、請求項1記載の乳酸の精製方法。
- 還元処理が、接触還元処理であることを特徴とする、請求項1記載の乳酸の精製方法。
- 接触還元処理が、還元触媒として、パラジウム、白金、及びそれらの化合物からなる群から選択された少なくとも一種を使用するものである、請求項3記載の乳酸の精製方法。
- 還元処理が、還元剤として金属を使用するものである、請求項1記載の乳酸の精製方法。
- 還元剤として使用する金属が、金属鉄、金属錫、金属亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項5記載の乳酸の精製方法。
- 請求項1〜6のいずれかの方法で得られた乳酸を重合するポリ乳酸の製造方法。
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