JP3874338B2 - ノボラック型フェノール樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、未反応フェノール類が少ないノボラック型フェノール樹脂を高収率に効率よく得るための製造方法に関するものである。本発明で得られるノボラック型フェノール樹脂は、例えば、成形材料、摩擦材、砥石、封止材等のバインダーとして好適に使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、蓚酸、p−トルエンスルホン酸といった無機酸、有機酸を触媒として用いて反応させることで得られる。しかしながら、これらの触媒で反応させたノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類の2核体以上を樹脂と見なすと、仕込んだフェノール類の全量に対して樹脂への反応率が60〜90%しかなく、これ以上の反応率を得ることは難しかった。このため、反応生成物中の未反応成分量をさらに低減させるためには、150〜250℃といった高温で真空蒸留、水蒸気蒸留を行うことにより未反応のフェノールを取り除く工程が必要である。また、通常10%以上の未反応のフェノール類を取り除くため収得量が減ってしまう問題がある。
【0003】
近年環境対応の必要性からノボラック型フェノール樹脂に含まれる未反応フェノール類量の低減要求があり、なかには未反応フェノール類量を1%以下としたノボラック型フェノール樹脂の要求がある。しかし、これを達成するためには、真空蒸留、水蒸気蒸留により未反応のフェノール類を取り除く工程で、温度、真空度を上げて、より多くの未反応フェノール類を取り除く必要がある。このため、より多くのエネルギー、工数を必要としコストが高くなる問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、樹脂への反応率を高くすることにより未反応フェノール類を取り除く工程を削減もしくは無くしても、未反応フェノール類が少ないノボラック型フェノール樹脂を高収率で効率よく得ることができる製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)フェノール類とアルデヒド類とを、水溶性を有する有機ホスホン酸を用いて反応させてノボラック型フェノール樹脂を得る製造方法であって、フェノール類(P)に対するアルデヒド類(F)との反応モル比(F/P)を0.5〜0.95、有機ホスホン酸をフェノール類1モルに対して0.001〜0.1モルとし、フェノール類とアルデヒド類との反応後にアルカリ性物質を添加することを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法、
(2)アルカリ性物質の添加によりノボラック型フェノール樹脂のpHが4〜10となる第(1)項記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(3)フェノール類とアルデヒド類とを水溶性を有する有機ホスホン酸を触媒として反応する際の反応系中の水分量を20重量%以下、反応温度を100〜200℃とする第(1)項又は第(2)項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法、
(4)前記有機ホスホン酸が、一般式(I)で示されるものである第(1)項ないし第(3)項のいずれかに記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法、
R−PO(OH)2 (I)
(Rは、炭素原子を含み、かつ、−COOH及び又は−PO(OH)2 を含む基である)
である。
【0006】
本発明に用いるフェノール類は特に限定されないが、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラフェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシンなどのフェノール類から選ばれた少なくとも1種以上のフェノール類が挙げられ、通常、フェノール、クレゾールが多く用いられる。
【0007】
本発明に用いるアルデヒド類は特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン等あるいはこれらの混合物であり、これらのアルデヒド類の発生源となる物質あるいはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することも可能で、これらのアルデヒド類から選ばれた少なくとも1種以上のアルデヒド類が挙げられるが、通常はホルムアルデヒドが多く用いられる。
【0008】
フェノール類(P)とアルデヒド類(F)との仕込みモル比(F/P)については、0.5〜0.95であり、好ましくは、0.7〜0.9である。モル比が前記下限より小さいと、反応が十分に行われず未反応のフェノール類が残留し、樹脂への反応率が上がらないことがあり、前記上限より大きいと反応条件によってはゲル化するようになる。また、フェノール類とアルデヒド類とを反応させるときは、反応の開始時において、フェノール類とアルデヒド類を全量一括して仕込み触媒を反応させるか、また、反応初期の発熱を押さえるため、フェノール類と触媒を混合してからアルデヒド類を逐次添加して反応させてもよい。
【0009】
本発明において触媒として使用する水溶性を有する有機ホスホン酸は、ホスホン酸基−PO(OH)2 を含む有機化合物であり、水溶性を有するものであればいかなるものも使用可能であるが、一般式(I)で示されるホスホン酸が、未反応フェノール類が少なく高収率に効率よくノボラック型フェノール樹脂を得るために好ましい。
R−PO(OH)2 (I)
(Rは、炭素原子を含み、かつ、−COOH及び又は−PO(OH)2 を含む基である)
一般式(I)で示される有機ホスホン酸としては、アミノポリホスホン酸類であるエチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、β−アミノエチルホスホン酸−N,N−ジ酢酸、アミノメチルホスホン酸−N,N−ジ酢酸や、1−ヒドロキシエチリデン−1,1'−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等がある。これらの中でも本発明の目的からみて工業的に大量生産され安価であるアミノトリスメチレンホスホン酸や、1−ヒドロキシエチリデン−1,1'−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸が好ましい。
【0010】
この有機ホスホン酸の添加量については、フェノール類1モルに対して0.001〜0.1モルであり、好ましくは0.003〜0.05モルである。有機ホスホン酸の添加量が多いほど、未反応フェノール類が少なくフェノール樹脂を高収率で得るという本発明の効果は大きいが、触媒添加量が前記上限を越えると製造したノボラック型フェノール樹脂中に残留する有機ホスホン酸量が多くなっていくため、これにアルカリ性物質を添加した際に生成する塩の残留がフェノール樹脂の硬化性に影響することがある。また、前記下限未満では、触媒としての効果が充分に現れなくなる傾向がみられる。また、触媒として上記有機ホスホン酸とともに、本発明の目的を損なわない範囲内でシュウ酸、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの通常ノボラック型フェノール樹脂の製造で使用する酸の併用もできる。これらの酸は高分子領域で反応を促進する効果がある。
【0011】
本発明において、フェノール類とアルデヒド類とを有機ホスホン酸を触媒として反応する際の反応条件については特に限定しないが、未反応フェノール類が少ないノボラック型フェノール樹脂を効率よく得るためには、反応系中の水分量を反応系全体重量に対して20重量%以下とすることが好ましい。
【0012】
本発明において反応系中の水分量とは、仕込み原料中の水分量と反応で生成する縮合水量との合計量であり、また、水を蒸留して取り除きながら反応させる場合では、前記合計量から溜去した水分量を減じた水分量となる。
この反応系中の水分量は少ないほうが、原料類の樹脂への反応率を高くすることによる未反応フェノール類の低減効果が高いが、過少になると有機ホスホン酸が高粘度化若しくは固結し、触媒作用が低下することがあるため、結晶水を含むことができる程度の水分量は存在したほうが好ましい。水分量が20重量%を越えるとその効果がほとんど変わらなくなる。より好ましくは、0.5〜15重量%である。
【0013】
また、反応温度についても特に限定しないが、100〜200℃とすることが好ましい。100℃より低いと、上記のような水分の少ない条件下では、触媒である有機ホスホン酸が高粘度化若しくは固結し、触媒作用が低下しやすくなる。200℃を越えると有機ホスホン酸の分解及びノボラック型フェノール樹脂の分解が起こることがある。有機ホスホン酸、ノボラック型フェノール樹脂の分解は低温である方がより起こりづらく好ましいが、例えば前記水分量を0.5〜15重量%の条件で反応を行った場合では、有機ホスホン酸が高粘度化若しくは固結することなく、触媒作用を十分に有した状態であるための温度範囲としては、より好ましくは100〜160℃である。
【0014】
これらの条件は、特にフェノール類とアルデヒド類との反応後期に適用した方が効果が高いが特に限定しない。ここで言う反応後期とは、アルデヒド類の逐次添加反応の場合では、反応モル比でフェノール類1モルに対してアルデヒド類が0.4モルを越えた工程以降での反応であり、フェノール類とアルデヒド類と一括して仕込んで反応させた場合では、同様に反応系内の未反応アルデヒド類が減少して、フェノール類に1モル対してアルデヒド類が0.4モルが反応したと見なされる時間より後工程の反応である。
【0015】
本反応を常圧下で実施すれば、水分量が20重量%以下の範囲で還流温度はほぼ100〜200℃にあたり、温度及び水分のコントロール上、常圧反応は好ましい条件である。この他にも反応条件としては、ブタノール、プロパノール等非水溶剤を使用した溶剤還流脱水反応、高圧反応等が考えられる。
また、アルデヒド類を添加しながら、生成する縮合水を蒸留等で取り除きながら進める反応は、反応系中の水分量が一定となり好ましい条件である。この場合、未反応のフェノール類が水分と一緒に取り除かれやすくなることがあるので、未反応フェノール類が一定量以下となるまで、未反応のフェノール類が蒸留されないようにして反応を行い、次いで、蒸留により水分を取り除いた後あるいは取り除きながら、反応系中の水分量を20重量%以下、反応温度を100〜200℃として反応を続けることができる。
【0016】
反応溶媒としては、水が一般的であり好ましいが、有機溶媒中でもよく、非極性溶媒を用いて、非水系で行うこともできる。また、パラホルム等を用いて反応溶媒なしで行ってもよい。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等を用いることが出来る。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等、芳香族類としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0017】
またこのほかに、懸濁安定剤や水溶性中性塩を添加することもできる。本発明における反応ではフェノール類あるいはノボラック型フェノール樹脂中に触媒相が微分散している不均一反応であるため、水溶性中性塩はその相分離状態をより明確にする効果があり、懸濁安定剤は微分散を促進させる作用がある。また、この反応は不均一反応であるため、反応時の攪拌条件として、高速攪拌とすることが望ましいが特に限定しない。
【0018】
次に、本発明においては、フェノール類とアルデヒド類とを有機ホスホン酸の存在下で反応させた後、アルカリ性物質を添加することを特徴とする。このアルカリ性物質は特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物および酸化物、アミン、アンモニア等のアミン類、さらにその他のアルカリ触媒から選ばれた少なくとも1種以上のアルカリ性物質が挙げられ、単独あるいは併用する事ができる。通常、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、アンモニアが多く用いられる。
【0019】
前記アルカリ性物質の添加量については特に限定しないが、添加後のノボラック型フェノール樹脂のpHが4〜10となる範囲内で行うのが好ましい。さらに好ましくは5〜8である。pHが前記下限を下回ると、ノボラック型フェノール樹脂を溶融状態とした時に、熱による分解を起こしやすくなる。また、pHが前記上限を上回ると、ノボラック型フェノール樹脂の硬化性に影響することがある。なお、ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との反応終了後、アルカリ性物質の添加を行わずに150℃以上の高温で長時間保持すると、熱による分解が生じ、フェノール類量の増加と分子量の増大が起こることがあるので、アルカリ性物質の添加はフェノール類とアルデヒド類との反応終了後に速やかに行うことが望ましい。
本発明における、前記pHの測定方法については特に限定されないが、一例を挙げると、アルカリ性物質を添加した後の樹脂を同容量のメタノールで希釈し、さらにこれを樹脂の2倍容量の純水で希釈し、充分撹拌を行い均一に分散させたものを試料として、pHメーターを使用して測定する方法などがある。
【0020】
反応終了後、必要により、水や有機溶剤、さらには未反応のフェノール類を除去するため、常圧蒸留や、減圧蒸留、水蒸気蒸留等を行うこともできる。これらの工程は、通常ノボラック型フェノール樹脂の溶融した150℃以上の温度で行うため、前記アルカリ性物質の添加後に行った方が好ましい。
【0021】
本発明のノボラック型フェノール樹脂は、成形材料、摩擦材、砥石、封止材等のバインダーとして使用する際、通常、硬化剤を使用し加熱等により硬化して使用することができる。硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミンや、エポキシ樹脂、また、レゾール樹脂、アルデヒド類等があるが特に限定しない。また、バインダーとして使用する際、有機、無機のフィラーや、他の樹脂を混合して使用することもできる。
【0022】
本発明において有機ホスホン酸を触媒として用い、樹脂への反応率を高くすることにより未反応フェノール類が少ないノボラック型フェノール樹脂を高収率に効率よく得ることができる理由は、以下のように考えられる。
本発明で用いられる有機ホスホン酸は、非常に水溶性が高く水和しやすい。そして、フェノール類には溶解性が小さく、ノボラック型フェノール樹脂には分子量増大とともに更に溶解性が小さくなる性質を有している。このため反応時には、アルデヒド類や触媒である有機ホスホン酸を多量に含んだ水相と、フェノール類、ノボラック型フェノール樹脂からなる、触媒がほとんど存在しない有機相とに相分離した状態となる。フェノール類は比較的水相に溶出しやすく、溶出した部分はアルデヒド類と反応するが、反応して2核体以上となると溶出が遅くなり反応が進みにくくなる。
この様にして、低分子領域と高分子領域の反応速度差が生じるため、樹脂への反応率を高くすることにより未反応フェノール類が少ないノボラック型フェノール樹脂を高収率に効率よく得る事が可能となる。
【0023】
本発明においては、触媒として有機ホスホン酸を用い、好ましくは、反応条件として、反応系中の水分量を20重量%以下、反応温度を100〜200℃とすることで、本発明の製造方法によるフェノール類の樹脂への反応率を更に高くする効果がある。その理由は、以下のように考えられる。
反応温度を100〜200℃とすることにより、有機相のフェノール類が水相へ溶出されやすく、また水相での反応が容易に進む。そして、水分が少なく水相中のイオン濃度が高い状態で維持される。このため、水相の酸性度が高く反応が容易に進み、水相と有機相の界面がより明確に分離するようになるので、有機相側の反応は進行しにくい。また、有機ホスホン酸は高濃度であると粘度を高めたり固結したりする性質があるが、高温であるため溶融した状態となり触媒機能を失うことを防止できる。これらの効果から、フェノール類の樹脂への反応率が高まり、未反応フェノール類が少ない樹脂を高収率に効率よく得る効果が高まる。
【0024】
また、本発明においてアルカリ性物質を添加する理由は、以下のように考えられる。ノボラック型フェノール樹脂は、酸性下では温度が高くなるに従って、再配列反応と呼ばれる分解反応が起こる。これによりノボラック型フェノール樹脂は分子量が増大するとともに、フェノール類モノマーが多くなる。アルカリ性物質を適当量添加する事によって、この事を防止できる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ここで記載されている「部」及び「%」は全て「重量部」及び「重量%」を示す。
【0026】
《実施例1》
3Lの三口フラスコ中にフェノール1000部と、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸60%水溶液(フェリオックス115、(株)ライオン製)を30部添加し、120℃に昇温し、92%パラホルムアルデヒド225部を90分間かけて還流逐次添加し反応させた。反応終了時、反応系内の水分が12%であった。ついで常圧蒸留を行い、140℃に昇温して水分を2%の状態とした。140℃常圧蒸留反応下で92%パラホルムアルデヒド60部60分かけて逐添させながら反応させた。反応終了後、30分還流反応させた。反応組成物をサンプリングしガスクロマトグラフィーを用いて未反応フェノール量を測定した。その後、水酸化カルシウム9.7部と水20部を混合した液をゆっくりと添加した。その後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で減圧蒸留を行って150℃まで昇温し、ノボラック型フェノール樹脂Aを1102部得た。
【0027】
《実施例2》
3Lの三口フラスコ中にフェノール1000部と、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸60%水溶液(フェリオックス115、(株)ライオン製)を100部添加し、120℃に昇温し、92%パラホルムアルデヒド225部を90分間かけて還流条件下で逐次添加し反応させた。反応終了時、反応系内の水分が14%であった。ついで常圧蒸留を行い、140℃に昇温して水分を3%の状態とした。140℃常圧蒸留反応下で92%パラホルムアルデヒド52部60分かけて逐添させながら反応させた。反応終了後、30分還流反応させた。反応組成物をサンプリングしガスクロマトグラフィーを用いて未反応フェノール量を測定した。その後、50%水酸化ナトリウム水溶液70部をゆっくりと添加した。その後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で減圧蒸留を行って150℃まで昇温し、ノボラック型フェノール樹脂Bを1124部得た。
【0028】
《実施例3》
3Lの三口フラスコ中にフェノール1000部と、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸60%水溶液(フェリオックス115、(株)ライオン製)を20部添加し、120℃に昇温し、92%パラホルムアルデヒド225部を90分間かけて還流条件下で逐次添加し反応させた。反応終了時、反応系内の水分が12%であった。ついで常圧蒸留を行い、140℃に昇温して水分を2%の状態とした。140℃常圧蒸留反応下で92%パラホルムアルデヒド69部60分かけて逐添させながら反応させた。反応終了後、30分還流反応させた。反応組成物をサンプリングしガスクロマトグラフィーを用いて未反応フェノール量を測定した。その後、トリエタノールアミン26部をゆっくりと添加した。その後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で減圧蒸留を行って150℃まで昇温し、ノボラック型フェノール樹脂Cを1108部得た。
【0029】
《実施例4》
3Lの三口フラスコ中にフェノール1000部と、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸60%水溶液(フェリオックス115、(株)ライオン製)を100部添加し、100℃に昇温し、37%ホルムアルデヒド水溶液690部を30分間かけて還流条件下で逐次添加し反応させた。反応終了時、反応系内の水分が35%であった。反応終了後、30分還流反応させた。反応組成物をサンプリングしガスクロマトグラフィーを用いて未反応フェノール量を測定した。その後、水酸化カルシウム32.5部と水70部を混合した液をゆっくりと添加した。その後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で減圧蒸留を行って220℃まで昇温し、ノボラック型フェノール樹脂Dを1121部得た。
【0030】
《実施例5》
3Lの三口フラスコ中にフェノール1000部と、アミノトリスメチレンホスホン酸50%水溶液(ディクエスト2000、ソルーシア・ジャパン(株)製)を120部添加し、120℃に昇温し、92%パラホルムアルデヒド225部を90分間かけて還流条件下で逐次添加し反応させた。反応終了時、反応系内の水分が約15%であった。ついで常圧蒸留を行い、120℃に昇温して水分を約5%の状態とした。120℃常圧蒸留反応下で92%パラホルムアルデヒド52部60分かけて逐添させながら反応させた。反応終了後、30分還流反応させた。反応組成物をサンプリングしガスクロマトグラフィーを用いて未反応フェノール量を測定した。その後、50%水酸化ナトリウム水溶液80部をゆっくりと添加した。その後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で減圧蒸留を行って150℃まで昇温し、ノボラック型フェノール樹脂Eを1125部得た。
【0031】
《実施例6》
3Lの三口フラスコ中にフェノール1000部と、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸50%水溶液(PBTC、城北化学(株)製)を120部添加し、120℃に昇温し、92%パラホルムアルデヒド225部を90分間かけて還流条件下で逐次添加し反応させた。反応終了時、反応系内の水分が約15%であった。ついで常圧蒸留を行い、140℃に昇温して水分を約3%の状態とした。140℃常圧蒸留反応下で92%パラホルムアルデヒド52部60分かけて逐添させながら反応させた。反応終了後、30分還流反応させた。反応組成物をサンプリングしガスクロマトグラフィーを用いて未反応フェノール量を測定した。その後、50%水酸化ナトリウム水溶液71部をゆっくりと添加した。その後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で減圧蒸留を行って150℃まで昇温し、ノボラック型フェノール樹脂Fを1121部得た。
【0032】
《比較例1》
3Lの三口フラスコ中にフェノール1000部、シュウ酸を10部添加し、100℃に昇温し、37%ホルムアルデヒド水溶液707部を60分間かけて還流条件下で逐次添加し、100℃で1時間還流させながら反応させた。反応終了時、反応系内の水分が35%であった。反応終了後、反応組成物をサンプリングしガスクロマトグラフィーを用いて未反応フェノール量を測定した。その後、常圧蒸留を行い130℃まで昇温し、5000Paの減圧下で減圧蒸留を行って250℃まで昇温し、ノボラック型フェノール樹脂Eを995部得た。
【0033】
実施例1〜6と比較例1で得られたノボラック型フェノール樹脂の特性について表1に示す。
【表1】
【0034】
《測定方法》
1.数平均分子量、及び重量平均分子量:液体クロマトグラフィーで測定
・液体クロマトグラフィー:
東ソー製GPCカラム(G1000HXL:1本、G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量1.0ml/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で示差屈折計を検出器として用いてGPC測定し、分子量は標準ポリスチレンにより換算。
2.未反応フェノール量:ガスクロマトグラフィーで測定した。
・ガスクロマトグラフィー:JIS K0114に準じ、2,5−キシレノールを内部標準として内部標準法で測定した。
3.軟化点:JIS K2531にて測定した。
4.50%エタノール溶液の動粘度:50重量%のエタノール溶液を25℃でキャノンフェンスケを用いて測定した。
5.アルカリ性物質添加後の樹脂のpH:樹脂50gをサンプリングし、これを50gのメタノールで希釈したのち、100gの純水を加えて均一に分散させたものを試料とし、pHメーターを用いて測定を行った。
【0035】
表1の結果より、実施例1〜3ではいずれも、本発明のフェノール類とアルデヒド類とを有機ホスホン酸を用いて反応させ、反応後にアルカリ性化合物を添加するノボラック型フェノール樹脂の製造方法を用いており、反応条件も前記請求項記載の範囲であるので、反応終了時に未反応フェノールが少なく、原材料の樹脂への反応率が高い樹脂が得られた。実施例4も同様であるが、反応系中の水分量が20重量%より多かったため、反応終了時の未反応フェノール量が多いものとなった。また、実施例5,6は、実施例1〜4とは異なる種類の有機ホスホン酸を用いたが、実施例1〜3同様、原材料の樹脂への反応率が高い樹脂が得られた。
一方比較例は、触媒として有機ホスホン酸を用いない従来の方法によるものであり、反応終了後の未反応フェノール量がかなり多いものとなり、最終未反応フェノール量を少なくするために高温下での蒸留操作が必要となった。
【0036】
【発明の効果】
以上説明の通り、本発明は、フェノール類とアルデヒド類とを、有機ホスホン酸を用いて反応させてノボラック型フェノール樹脂を得る方法であって、フェノール類とアルデヒド類との反応後にアルカリ性化合物を添加することを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法であり、樹脂への反応率を高めて未反応フェノール類を取り除く工程を削減もしくは無くすことで、未反応フェノール類が少ないノボラック型フェノール樹脂を高収率に効率よく得る事ができる。
Claims (4)
- フェノール類とアルデヒド類とを、水溶性を有する有機ホスホン酸を用いて反応させてノボラック型フェノール樹脂を得る製造方法であって、フェノール類(P)に対するアルデヒド類(F)との反応モル比(F/P)を0.5〜0.95、有機ホスホン酸をフェノール類1モルに対して0.001〜0.1モルとし、フェノール類とアルデヒド類との反応後にアルカリ性物質を添加することを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
- アルカリ性物質の添加によりノボラック型フェノール樹脂のpHが4〜10となる請求項1記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
- フェノール類とアルデヒド類とを水溶性を有する有機ホスホン酸を触媒として反応する際の反応系中の水分量を20重量%以下、反応温度を100〜200℃とする請求項1又は2に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
- 前記有機ホスホン酸が、一般式(I)で示されるものである請求項1ないし3のいずれかに記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
R−PO(OH)2 (I)
(Rは、炭素原子を含み、かつ、−COOH及び又は−PO(OH)2 を含む基である)
Priority Applications (1)
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