JP3873753B2 - ガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気中の一酸化炭素や炭化水素の濃度を検出するガスセンサであり、特に耐久信頼性に優れた省電力量タイプのガスセンサを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一酸化炭素などに感応するガスセンサが提案されている。その一例としては、図10(a)に示すようなものがある。アルミナなどの非ガラス質基板1にガラス断熱層2を設け、この上部に酸化ルテニウムなどの膜状ヒータ3を形成した後、さらにオーバーコート用ガラス4をさらに積層し、その上部に酸化スズなどのガス感応部5を順々に積層している。そして、膜状ヒータ3には、電力供給源からパルス状の電力を供給している。
【0003】
図10(b)は供給電力の動作波形であり、電力(電圧と電流の積)はその値を一定としてパルス状に供給されている。図10(c)はガス感応部の温度過渡特性であり、温度は供給電力と連動してガス感応部の温度は上昇している。また、アルミナ等の耐熱絶縁性基板の片面に、酸化ルテニウムや白金等のヒータ膜と、酸化スズ等のガス感応部を設けた構成のガスセンサも知られている。
【0004】
一方、Sensors and Actuators B 65(2000)190−192に記載された酸化錫系ガスセンサに関する文献には、金属ケイ素基板ウエハー(以下、シリコンウエハーと記す)の上部に、下から順に膜厚470nmの酸化珪素と膜厚150nmの窒化珪素とからなる絶縁微薄膜を形成し、さらにその上部に、下から順に膜厚30nmの金属チタンと膜厚240nmの白金からなるヒータを積層する旨が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
350〜500℃等の高温で動作するガスセンサにおいて省電力量を実現するためには、センサのサイズを極力小型化し、内蔵しているヒータ膜に大電力を短時間に印加して動作温度まで短時間に昇温する必要がある。しかしながら、従来の電力制御技術を用いて省電力量を実現するためには、ガスセンサおよびそのヒータ膜は、その耐久信頼性確保を実現するために複雑な製膜技術と高度の品質管理技術を必要とする課題があった。これは、従来の電力制御は、一定値の電力値をパルス状に供給するため、ガス感応部の温度が急激に上昇し、この急激温度上昇によりガスセンサおよびそのヒータ膜が大きな熱衝撃を受け、従来の簡単な材料管理と製法で製造したガスセンサおよびそのヒータ膜は、その耐久信頼性が低下してしまうためである。例えば、従来の技術を組み合わせて、汎用な耐熱絶縁性基板の上部にチタンもしくはクロムと白金の積層膜からなるヒータ膜を形成しても、良好な耐久性は得られず、ヒータ膜はその抵抗が大きくなってしまう。これは、チタンもしくはクロムと白金等を積層してヒータ膜を形成する場合、耐久性を向上させるに最適な焼成条件があるためであり、ヒータ膜の焼成が最適焼成条件になる様に、ガスセンサを複雑な製膜技術を用いて製造しその品質を高度な品質管理技術で管理しないと、ヒータ膜は良好な耐久性は得られない。
【0006】
本発明は、前記する従来の課題を解決して、簡単な製膜技術と品質管理技術を用いて製造したガスセンサを、簡単な電力技術を用いることで耐久信頼性に優れた小型省電力量タイプとして提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明のガスセンサは、絶縁性耐熱基板の上部に下から順々に積層した発熱体薄膜、耐熱絶縁性薄膜、耐熱ガス感受膜を備えたセンサ素子と、前記発熱体薄膜に予め決められた間隔ごとに電力を予め決められた時間だけ供給する直流電源とを少なくとも備え、直流電源は、電力値を階段状に上昇させて供給するものとした。
【0008】
これにより、発熱体薄膜は、直流電源により予め決められた間隔ごとに予め決められた短時間だけ大電力を供給されるので、ガスセンサはこの大電力短時間印加で動作状態になり省電力量タイプとなる。しかも、直流電源が、電力値を階段状に上昇させて供給しているので、ガスセンサはその温度上昇を緩やかにしたステップ状で温度上昇して、熱衝撃が低減されその耐久信頼性が優れる。そのため、耐久信頼性に優れた小型省電力量タイプのガスセンサを、簡単な製膜技術と品質管理技術で提供できる。また、ヒータの耐久性が優れているので、センサ動作温度が変化することがなくセンサ出力が長時間安定する利点や、ヒータの抵抗変化検知や抵抗変化に伴うセンサ出力の変化防止対策に纏わる制御回路が簡素化できる利点がある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、絶縁性耐熱基板の上部に下から順々に積層した発熱体薄膜、耐熱絶縁性薄膜、耐熱ガス感受膜を備えたセンサ素子と、前記発熱体薄膜に予め決められた間隔ごとに電力を予め決められた時間だけ供給する直流電源とを少なくとも備え、前記直流電源は、電力値を階段状に上昇させて供給するようにした。
【0010】
これにより、発熱体薄膜は、直流電源により予め決められた間隔ごとに予め決められた短時間だけ大電力を供給されるので、ガスセンサはこの大電力短時間印加で動作状態になり省電力量タイプとなる。しかも、直流電源が、電力値を階段状に上昇させて供給しているので、ガスセンサはその温度上昇を緩やかにしたステップ状で温度上昇して、熱衝撃が低減されその耐久信頼性が優れる。そのため、耐久信頼性に優れた小型省電力量タイプのガスセンサを、簡単な製膜技術と品質管理技術で提供できる。
【0011】
また、直流電源は、各々の階段初期は電力値を緩やかに上昇させて供給するようにした。これにより、直流電源が、電力値を階段状に上昇させ、しかも各々の階段初期は電力値を緩やかに上昇させて供給するので、発熱体薄膜は、その温度上昇を一層緩やかにしたステップ状で温度上昇して熱衝撃が一層低減される。そのため、発熱体薄膜は耐久信頼性が一層優れる。
【0012】
また、直流電源は、第1階段の初期において電流値を徐々に大きくして供給し、それ以後は電流値を予め決められる変動範囲内で供給するようにした。これは、第1階段の初期において直流電源が、電流値を徐々に大きくして供給し、それ以後は電流値を予め決められた変動範囲内で供給するので、発熱体薄膜は、一層緩やかにしたステップ状で温度上昇して熱衝撃が一層低減され、その耐久信頼性が一層優れる。
【0013】
また、直流電源は、電圧値を階段状に上昇させ、しかも各々の階段初期はその値を緩やかに上昇させて供給するようにした。これにより、直流電源が、電圧値を階段状に上昇させ、しかも各々の階段初期は電圧値を緩やかに上昇させて供給するので、各々の階段初期における電流値は徐々に大きくなる挙動となる。このため、発熱体薄膜は、一層緩やかにしたステップ状で温度上昇して熱衝撃が一層低減され、その耐久信頼性が一層優れる。
【0014】
また、直流電源は、電圧値を2段階で供給し、前段の最終値の電圧値を、後段における最終値の電圧値の0.40〜0.95倍とした。これにより、センサ素子およびその発熱体は、1ステップ目で最終電圧値の約0.40〜0.95倍に相当する中間温度に到達した後、2ステップ目以降で最終動作温度に到達するため熱衝撃が一層低減され、センサ素子およびその発熱体はその耐久信頼性が一層優れる。また、設定される電圧が2段階であるため、直流電源の制御が簡単になる利点がある。
【0016】
絶縁性耐熱基板、耐熱絶縁性薄膜および耐熱ガス感受膜は、650℃以上の耐熱性を有する材料であるため、発熱体薄膜は650℃以上での焼成が可能である。チタンやジルコニウムさらにクロムの金属ヒータ補助微薄膜は、接合性と展性に優れた材料であり、650℃以上で焼成すると、ヒータ主材料である白金に良好に接合して展性を持つ発熱体薄膜が得られる。省電力実現のため大電力を短時間に印加すると、発熱体薄膜は短時間に動作温度まで温度上昇して熱膨張し、その上下に配置された絶縁性耐熱基板や耐熱絶縁性薄膜も同時に温度上昇して熱膨張するが、この積層型の発熱体薄膜は、この熱膨張に良好に追随して剥離を生じることがなく、優れた耐熱衝撃性を示し抵抗変化が発生しない。また、その上部に積層された耐熱ガス感受膜は、耐熱絶縁性薄膜の薄膜を介して発熱体薄膜で発生した熱が効果的に伝達され、短時間で動作状態となりガス濃度が検知可能となる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
(実施例1)
図1、図2は本発明の実施例1であるガスセンサを示している。ガスセンサは、図1(a)のように、センサ素子7と直流電源8を少なくとも備えている。センサ素子7は、絶縁性耐熱基板9と、この絶縁性耐熱基板9の上部に下から順々に積層した発熱体薄膜10と耐熱絶縁性薄膜11と耐熱ガス感受膜12を少なくとも備えた構成である。また、直流電源8は、発熱体薄膜10と電気的に導通しており、発熱体薄膜10に予め決められた間隔ごとに電力を予め決められた時間だけ供給するものである。また、発熱体薄膜10に供給する電力値を階段状に上昇させている。これを図1(b)に示している。
【0026】
そして、図2は電力値を階段状に上昇させる際の電流特性および電圧特性さらに発熱体薄膜の温度過渡特性を示している。
【0027】
ここで、本実施例におけるセンサ素子7を試作しその効果の確認を行った。
【0028】
絶縁性耐熱基板9は、石英硝子の板であり2mm角×厚み0.3mmの寸法を有する。その物性値は、熱膨張係数が0.5×10-6(1/deg)、熱伝導率が1.7W/mK、転移温度が1075℃、軟化点が1580℃である。石英硝子は、その組成は酸化珪素が99.99%で水酸基が0.01%弱含有されており、表面を研磨して中心線表面粗さが0.05〜0.2μmである。なお、特に言及しない限り以後はこの材質を使用した。
【0029】
発熱体薄膜10は、下部に配置したクロムとその上部に配置した白金の積層膜で構成されている。クロムは、スパッタ法を用いて膜厚約0.005μmを形成したものであり、その熱膨張係数は6.2×10-6(1/deg)である。白金は、スパッタ法を用いて膜厚約0.5μmの白金の抵抗膜を形成したものであり、その熱膨張係数が9×10-6(1/deg)、熱伝導率が69.5W/mKである。
【0030】
耐熱絶縁性薄膜11は、石英ガラスをスパッタ法により形成した2μm膜厚であり、発熱体薄膜10の上部に積層されている。その物性値は、熱膨張係数が0.5×10-6(1/deg)、熱伝導率が1.7W/mKである。石英ガラスの耐熱絶縁性薄膜11を発熱体薄膜10の上部に積層したのち、大気中で1000℃にて1時間焼成した。
【0031】
耐熱ガス感受膜12は、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13と、その上部同一面に形成されている通気性の第1電極薄膜14および第2電極薄膜15と、第1電極薄膜14に積層した通気多孔性の酸化触媒膜16で構成される。酸素イオン導電性固体電解質薄膜13は、酸化イットリウム8モル%と酸化ジルコニウム92モル%の固溶体である安定化ジルコニア体であり、スパッタ法を用いて形成された約2μm膜厚が耐熱絶縁性薄膜11に積層されている。その物性値は、熱膨張係数が10×10-6(1/deg)、熱伝導率が5W/mKである。第1電極薄膜14および第2電極薄膜15は、白金をスパッタして形成した白金の通気性多孔質薄膜であり、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13の上部同一表面に約0.5μmの膜厚で形成されている。酸化触媒膜16は、白金触媒をアルミナシリカ系接着材の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、第1電極薄膜14の上部に約20μmの膜厚で積層されている。
【0032】
最後に、耐熱ガス感受膜12および発熱体薄膜10に白金リード線を接続したのち、実装ケースに収納してセンサ素子7は完成である。発熱体薄膜10は、接続した白金リード線を介して直流電源8と電気的に導通しており、電圧電流の印加で加熱されるとともに、この発熱体薄膜10の加熱で耐熱ガス感受膜12から発せられるセンサ出力は、電圧計(記載せず)で測定する様にした。
【0033】
上記構成の耐熱ガス感受膜12は固体電解質型と称されており、その一酸化炭素ガスの検知メカニズムを説明する。まず、ガスセンサ素子7は、発熱体薄膜10により400℃まで加熱させる。酸化触媒膜16の表面では、一酸化炭素ガスはその触媒作用で酸素ガスと反応して二酸化炭素ガスとなり消耗して無くなるが、酸素濃度はその濃度が圧倒的に高いため略雰囲気濃度のままで第1電極薄膜14に到達する。一方、他方の第2電極薄膜15の表面では、その触媒作用で一酸化炭素ガスと酸素ガスが反応して二酸化炭素ガスとなり、表面における酸素ガス濃度が減少する。このため、酸素濃度に着目すると、第1電極薄膜14側の方が第2電極薄膜15より高濃度となり、第1電極薄膜14側より第2電極薄膜15に向かって、酸素ガスが酸素イオン導電性固体電解質薄膜13の中を酸素イオンとなって移動し、この酸素移動によって起電力が発生する。この起電力がセンサ出力であり、一酸化炭素ガス濃度の対数値に略比例した値が得られる。
【0034】
本発明の効果判定を行った。その結果を(表1)に示す。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、直流電源8が発熱体薄膜10に直流電圧電流を印加して動作温度400℃まで10ミリ秒で到達したのち、電源を切るON−OFF試験を10万回行った際の、実験前後の抵抗値より算出した値である。
【0035】
本発明では、直流電源8が発熱体薄膜10に供給する電力を、図1(b)に記載したように階段状に上昇させている。
【0036】
比較例は、供給する電力を穏やかに1段で上昇させている。従来例は、供給する電力を初期から末期まで同一値としている。
【0037】
【表1】
【0038】
本発明は、発熱体薄膜10の抵抗が増加しにくい。これは、直流電源8が電力値を階段状に上昇させて発熱体薄膜10に供給するので、ガスセンサはその温度上昇を緩やかにしたステップ状で温度上昇して、熱衝撃が低減される。そのため、発熱体薄膜10は耐久信頼性が一層優れる。なお、特に断らない限り、以後の検討はこの電力供給条件で行なった。
【0039】
発熱体薄膜10は、少量のロジウムやパラジウム等が20重量%以下で混合された白金の80重量%以上を主成分とする白金系金属、酸化ルテニウムを主成分とした金属酸化物、酸化ジルコニウムを主成分とした金属酸化物、ケイ化モリブデンを主成分とした無機材料、クロムを10〜25%含有し残部大半がニッケルであるニッケルクロム系合金、クロムを10〜30%含有し必要に応じてアルミニウムを1〜8%添加する場合もあり、残部大半が鉄である鉄クロム系合金などの発熱材料が有効であった。また、これら上記の発熱材料よりなるヒータ主薄膜17の下部に、その膜厚を薄くしてチタンもしくはジルコニウムまたはクロムの少なくとも1種の材料を主成分とする金属ヒータ補助微薄膜18を積層して発熱体薄膜10とすると、上記の発熱材料だけの発熱体薄膜と比較して上記検討実験での抵抗変化率が1/(100〜500)に減少しており、優れた耐久性を持っていた。また、これら発熱材料の中で特に白金および前述の白金系金属は、前述の金属ヒータ補助微薄膜18との組み合わせにおいて、最も優れた耐久性を持っており、パルス通電用として最適であった。
【0040】
絶縁性耐熱基板9は、硝子材、表面に結晶化硝子膜を配置した耐熱基板、アルミナや窒化珪素などのセラミック板が有効であった。パルス通電における消費電力量は、これら絶縁性耐熱基板9の中で硝子材が最も小さく、表面に結晶化硝子膜を配置した耐熱基板、セラミック板の順にその値が大きくなった。これは、絶縁性耐熱基板9の材料の熱伝導率と相関があり、熱伝導率が小さい硝子材ほど絶縁性耐熱基板9が加熱されにくいので消費電力量が小さく、熱伝導率が大きいセラミック板ほど絶縁性耐熱基板9が多く加熱されるので消費電力量が大きい傾向にあった。また、硝子材の中で石英硝子は、耐熱性に優れており、しかも熱伝導率および熱膨張係数が最も小さい理由から消費電力量が最も小さいので、パルス通電用の絶縁性耐熱基板9として最適であった。そして、さらに石英硝子の上部に、前述の金属ヒータ補助微薄膜18と白金系金属とを積層した発熱体薄膜10は、抵抗安定性に優れており最も優れた耐久性を示した。
【0041】
耐熱絶縁性薄膜11は、アルミナや窒化珪素などのセラミックおよび硝子の印刷膜、スパッタ膜、蒸着膜、ゾルゲル膜が有効である。
【0042】
ガス感受素子薄膜12は、酸化スズや酸化鉄さらに酸化タングステンなどの金属酸化物半導体膜、固体電解質型耐熱ガス感受膜が有効である。ガス感受素子薄膜12が固体電解質型の場合、酸素イオン導電性固体電解質薄膜は、酸化イットリウム3モル%と酸化ジルコニウム97モル%の部分安定化ジルコニア体に代表される各種ジルコニア系酸素イオン導電性固体電解質やセリア系酸素イオン導電性固体電解質のスパッタ膜、蒸着膜、ゾルゲル膜が有効である。第1電極薄膜14および第2電極薄膜15は、白金などの貴金属もしくは酸素イオン導電性金属酸化物の通気性印刷膜およびスパッタ膜もしくは蒸着膜が有効である。酸化触媒膜16は、結晶化硝子などの無機接着材に白金等の貴金属もしくは金属酸化物を混合させた通気性多孔質膜が有効である。
【0043】
(実施例2)
実施例2は、直流電源8が電力値を階段状に上昇させて発熱体薄膜10に供給する方法について検討した。その検討結果を(表2)に示す。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、前述と同じである。
【0044】
本発明は、直流電源8が発熱体薄膜10に供給する電力を、図1(b)に記載したように階段状に上昇させ、しかも各々の階段初期は電力値を緩やかに上昇させて供給している。
【0045】
比較例は、電力を階段状に上昇させているが、各々の階段において供給する電力を初期から末期まで同一値としている。
【0046】
【表2】
【0047】
本発明は、発熱体薄膜10の抵抗が増加しにくい。これは、直流電源8が発熱体薄膜10に電力値を階段状に上昇させ、しかも各々の階段初期は電力値を緩やかに上昇させて供給するので、ガスセンサはその温度上昇を一層緩やかにしたステップ状で温度上昇して、熱衝撃が一層低減される。そのため、発熱体薄膜10は耐久信頼性が一層優れる。
【0048】
(実施例3)
実施例3は、直流電源8が電力値を階段状に上昇させて発熱体薄膜10に供給するための電流供給方法について検討した。その検討結果を(表3)に示す。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、前述と同じである。
【0049】
本発明は、直流電源8が発熱体薄膜10に供給する電流を、図2(a)に記載したように第1階段の初期において電流値を徐々に大きくして供給し、それ以後は電流値を予め決められる変動範囲内で供給している。
【0050】
比較例は、第1階段の初期において電流値を徐々に小さくして供給し、それ以後は電流値を予め決めた変動範囲に制御して供給している。
【0051】
【表3】
【0052】
本発明は、発熱体薄膜10の抵抗が増加しにくい。これは、第1階段の初期において、直流電源8が発熱体薄膜10に電流値を徐々に大きくして供給し、それ以後は電流値を予め決められた変動範囲内で供給するので、流れる電流に起因する発熱体薄膜10の劣化が減少する。これとともに発熱体薄膜10は一層緩やかにしたステップ状で温度上昇して、熱衝撃が一層低減される。そのため、発熱体薄膜10は耐久信頼性が一層優れる。
【0053】
一方、比較例は、第1階段の初期において、電流値を徐々に小さくして供給するので、流れる電流に起因する発熱体薄膜10の劣化が幾分存在する。そのため、発熱体薄膜10は耐久信頼性が少し低下し、抵抗が増加している。
【0054】
(実施例4)
実施例4は、直流電源8が電力値を階段状に上昇させて発熱体薄膜10に供給するための電圧供給方法について検討した。その検討結果を(表4)に示す。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、前述と同じである。
【0055】
本発明は、図2(b)に記載したように、直流電源8が発熱体薄膜10に供給する電圧値を、階段状に上昇させしかも各々の階段初期はその値を緩やかに上昇させている。
【0056】
比較例は、電圧を階段状に上昇させているが、各々の階段において供給する電圧を初期から末期まで同一値としている。
【0057】
【表4】
【0058】
本発明は、発熱体薄膜10の抵抗が増加しにくい。これは、直流電源8が発熱体薄膜10に電圧値を階段状に上昇させ、しかも各々の階段初期は電圧値を緩やかに上昇させて供給するので、各々の階段初期における電流値は徐々に大きくなる挙動となる。従って、流れる電流に起因する発熱体薄膜10の劣化が減少するとともに、発熱体薄膜10が一層緩やかにしたステップ状で温度上昇して、熱衝撃が一層低減され、発熱体薄膜10は耐久信頼性が一層優れる。
【0059】
(実施例5)
実施例5は、直流電源8が電力値を階段状に上昇させて発熱体薄膜10に供給するための電圧供給方法についてさらに詳細に検討した。
【0060】
検討は、図2(b)に記載したように、直流電源8が発熱体薄膜10に供給する電圧値を2段階で上昇させ、しかも各々の階段初期はその値を緩やかに上昇させて供給する方法で行なった。そして、前段最終値の電圧値を、後段最終値の電圧値の何倍にすると、耐久信頼性が優れる発熱体薄膜が実現できるか、詳細に検討した。
【0061】
その検討結果を図3に示す。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、前述と同じである。図3の様に、前段最終値の電圧値を、後段最終値の電圧値の0.40〜0.95倍にすると、発熱体薄膜10の抵抗が増加しにくく、耐久信頼性が優れる発熱体薄膜10が得られることがわかる。この理由は、発熱体薄膜10は、1ステップ目で最終電圧値の約0.40〜0.95倍に対応する中間温度に到達した後、2ステップ目以降で最終動作温度に到達するためであり、この電圧波形により熱衝撃が一層低減され、その耐久信頼性が一層優れる発熱体薄膜が得られる。
【0062】
一方、前段最終値の電圧値を、後段最終値の電圧値の0.40倍未満または0.95倍以上にすると、発熱体薄膜10の抵抗が増加して耐久信頼性に優れる発熱体薄膜が得られにくかった。
【0063】
(実施例6)
実施例6は、発熱体薄膜10の材質について検討した。
【0064】
検討は、石英硝子の絶縁性耐熱基板9を用い、その上部に構成および材質の異なる発熱体薄膜10を形成した後、さらにその上部に石英硝子からなる耐熱絶縁性薄膜11を積層して、最後に、前述の固体電解質型の耐熱ガス感受膜12を積層してガスセンサとしている。
【0065】
本発明1の発熱体薄膜10は、膜厚0.5μmの白金からなるヒータ主薄膜17と、このヒータ主薄膜17の下部に配置された膜厚0.005μmのチタンからなる金属ヒータ補助微薄膜18で構成されている。
【0066】
本発明2の発熱体薄膜10は、膜厚0.5μmの白金からなるヒータ主薄膜17と、このヒータ主薄膜17の下部に配置された膜厚0.005μmのジルコニウムからなる金属ヒータ補助微薄膜18で構成されている。
【0067】
本発明3の発熱体薄膜10は、膜厚0.5μmの白金からなるヒータ主薄膜17と、このヒータ主薄膜17の下部に配置された膜厚0.005μmのクロムからなる金属ヒータ補助微薄膜18で構成されている。
【0068】
従来例の発熱体薄膜は、膜厚0.5μmの白金からなるヒータ主薄膜だけである。
【0069】
各種の発熱体薄膜の検討結果を(表5)に示す。発熱体薄膜の抵抗変化率は、前述と同じである。
【0070】
【表5】
【0071】
本発明1〜3は、白金のヒータ主薄膜17と、白金薄膜より膜厚を薄くしてその下部に配置されたチタンもしくはジルコニウムもしくはクロムより選択した少なくとも1種材料を主成分とする金属ヒータ補助微薄膜18とで構成された発熱体薄膜10であり、優れた耐久性を持つことがわかる。この優れた耐久性は、次の理由による。白金は展性および耐熱性に優れた材料で、チタンやジルコニウムさらにクロムは接合性に優れ良好な展性を持つ材料である。これらは積層されると良好に接合して展性を持つ発熱体薄膜が得られ、この発熱体薄膜10は、絶縁性耐熱基板9や耐熱絶縁性薄膜11にも良好に接合する。これは、通電すると、発熱体薄膜10は短時間に動作温度まで温度上昇して熱膨張し、その上下に配置された絶縁性耐熱基板9や耐熱絶縁性薄膜11も同時に温度上昇して熱膨張するが、絶縁性耐熱基板9や耐熱絶縁性薄膜11の熱膨張に、積層膜とした発熱体薄膜は良好に追随して剥離や断線を生じることがないためである。また、本発明1〜3は、その上部の耐熱ガス感受膜12が、耐熱絶縁性薄膜11の薄膜を介して発熱体薄膜10で発生した熱が効果的に伝達されるので、10ミリ秒の通電で動作状態となって一酸化炭素ガス濃度が検知可能となり、その電力量は18mW秒であった。
【0072】
なお、ヒータ主薄膜17は、少量のロジウムやパラジウム等が20重量%以下で混合された白金の80重量%以上を主成分とする白金系金属が有効である。
【0073】
次に、耐久性の優れた発熱体薄膜10を得るための最適な焼成条件について検討した。まず、発熱体薄膜10の焼成方法について検討した。検討は、石英硝子の絶縁性耐熱基板9を用いて行った。まずその上部に、チタンもしくはジルコニウムもしくはクロムからなる金属ヒータ補助微薄膜18と、白金からなるヒータ主薄膜17を、順々に積層して発熱体薄膜10を形成した。そして、その上部に、石英硝子からなる耐熱絶縁性薄膜11を積層し、焼成温度を変えて焼成した。その結果、発熱体薄膜10は、600℃以上で焼成すると抵抗変化率が小さく、優れた耐久特性を有することが判明した。これは、600℃以上の焼成により絶縁性耐熱基板9や耐熱絶縁性薄膜11と良好に接合して展性を持つ発熱体薄膜10が得られるためである。特に600〜1050℃焼成は、最も耐久性の優れた発熱体薄膜が得られた。一方、550℃焼成は、絶縁性耐熱基板9や耐熱絶縁性薄膜11と良好に接合しないため、展性を持つ発熱体薄膜が得られにくく、抵抗変化率が少し大きくなっていた。また、チタンもしくはジルコニウムもしくはクロムからなる金属ヒータ補助微薄膜18の膜厚は、300〜20Åが適正であり、特に100〜30Åは最適であった。一方、白金からなるヒータ主薄膜17の膜厚は、0.3〜1.0μmが適正であり、特に0.4〜0.7μmは最適であった。
【0074】
さて、発熱体薄膜10の最適焼成温度が600℃以上であるという結果は、金属ヒータ補助微薄膜18として用いるチタンおよびジルコニウムもしくはクロムの材料物性から得られる結果であり、この材料を使用する限り、その値は大きく変化しない結果である。この優れた耐久性を実現する発熱体薄膜10の最適焼成温度600℃以上を実現するためには、ガスセンサを構成する絶縁性耐熱基板9と耐熱絶縁性薄膜11と耐熱ガス感受膜12は、この最適焼成温度600℃より充分に余裕のある耐熱性が必要であり、その耐熱温度条件を検討した結果、少なくとも650℃を越える耐熱性を必要であることが判明した。
【0075】
なお、比較のため、シリコンウエハーの表面に酸化珪素と窒化珪素とからなる絶縁微薄膜を形成した絶縁性耐熱基板9を使用し、その上部に下部から順々にチタンと白金を積層した従来型の発熱体薄膜を有するガスセンサを試作し、ON−OFF試験を行ったところ、この従来型の発熱体薄膜は1万回で断線してしまった。この原因は、このシリコンウエハー系の基板は、耐熱性がせいぜい300〜400℃前後であり、センサ製造における600℃の熱付与により、その表面に密着力の乏しい新たな酸化物を著しく生成させたため、パルス通電中に発熱体薄膜が剥離して断線したためである。このことより以後は、ガスセンサを構成する材料は、少なくとも650℃を越える耐熱性を必要であるとして検討を進めた。
【0076】
(実施例7)
実施例7は、絶縁性耐熱基板9に用いる硝子の物性について検討した。硝子は、熱伝導率が非常に小さい絶縁性耐熱基板であるため、発熱体薄膜10で発生した熱が絶縁性耐熱基板9に僅かしか伝達されず、その多くが耐熱ガス感受膜12に伝達されるので、動作温度400℃まで少ない電力で到達でき、消費電力量を低減したガスセンサが実現できる利点がある。また、硝子は、その材料組成の制約より熱膨張係数10×10-6(1/deg)が現在の技術ではその製造可能な上限値であり、大部分の硝子はこの値以下の熱膨張係数を有する。一方、発熱体薄膜10は白金を主成分とするため、その熱膨張係数は10×10-6(1/deg)である。発熱体薄膜10は発熱すると熱膨張するが、この発熱体薄膜10より熱膨張係数が小さい硝子からなる絶縁性耐熱基板9は僅かしか熱膨張せず、この結果、絶縁性耐熱基板9には圧縮応力がかかるが、硝子には圧縮応力に非常に強い性質があるので、絶縁性耐熱基板9は熱膨張に良好に追随して破損しない利点もある。しかしながら、硝子は、温度を上昇させるとその熱膨張係数に従がって一定割合で膨張する際に、或る温度を境にその体積が急激に膨張する性質がある。この体積が急激に膨張する温度を転移温度と言い、この体積急激膨張により、その上部に積層した発熱体薄膜10などが損傷されることが懸念されるので、この転移温度の影響について検討した。
【0077】
検討は、材質を異ならせてその転移温度を変化させた絶縁性耐熱基板9を用いその上部に、クロムからなる金属ヒータ補助微薄膜18と白金からなるヒータ主薄膜17を順々に積層して発熱体薄膜10とし、石英硝子からなる耐熱絶縁性薄膜10をさらに積層して、最後に、前述の固体電解質型の耐熱ガス感受膜12を積層し、ガスセンサとした。
【0078】
図4は、硝子の材質を異ならせて転移温度を変化させ、発熱体薄膜10の抵抗変化率を測定したものであり、転移温度と抵抗変化率の相関特性である。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、実装ケースの端子に直流電圧電流を印加して発熱体薄膜10を動作温度400℃まで10ミリ秒で上昇させたのち、電源を切るON−OFF試験を10万回行った際の抵抗変化率である。
【0079】
本発明1の絶縁性耐熱基板9は、石英硝子であり、転移温度は1075℃、熱膨張係数は0.5×10-6(1/deg)である。
【0080】
本発明2の絶縁性耐熱基板9は、96%珪酸硝子であり、転移温度は890℃、熱膨張係数は0.8×10-6で(1/deg)である。
【0081】
本発明3の絶縁性耐熱基板9は、硼珪酸アルミナ硝子であり、転移温度は850℃、熱膨張係数は1.3×10-6で(1/deg)である。
【0082】
本発明4の絶縁性耐熱基板9は、結晶化硝子であり、転移温度は750℃、熱膨張係数は9.4×10-6で(1/deg)である。
【0083】
本発明5の絶縁性耐熱基板9は、アルミノ珪酸硝子であり、転移温度は650℃、熱膨張係数は4.2×10-6で(1/deg)である。
【0084】
比較例の絶縁性耐熱基板9は、ソーダ石灰硝子であり、転移温度は620℃、熱膨張係数は5.2×10-6で(1/deg)である。
【0085】
図4よりわかるように、発熱体薄膜10の抵抗変化率は、絶縁性耐熱基板9に用いる硝子材の転移温度が、650℃を境に変化することがわかる。本発明1〜5は、絶縁性耐熱基板9がその転移温度が650℃を越える硝子材であるため、最適焼成温度の600℃で発熱体薄膜を焼成しても、発熱体薄膜10は絶縁性耐熱基板9に良好に接着して優れた耐久特性が得られる。また、熱伝導率が非常に小さい硝子材の絶縁性耐熱基板9であるので、発熱体薄膜10で発生した熱は、絶縁性耐熱基板9に僅かしか伝達されず、その多くが耐熱ガス感受膜12に伝達される。そのため、動作温度まで少ない電力で到達でき、消費電力を一層低減したガスセンサが実現できる。また、発熱体薄膜10は、消費電力が小さいので印加される電圧電流値が小さくなり、一層優れた耐久特性が得られる効果が生じている。
【0086】
一方、比較例のように620℃の転移温度を有する硝子材を絶縁性耐熱基板9として使用すると、最適焼成温度600℃で発熱体薄膜を焼成しても、発熱体薄膜が絶縁性耐熱基板に良好に接着せず幾分の耐久性低下が観察される。これは、硝子材の転移温度620℃が、発熱体薄膜の焼成温度600℃に近い温度であるため、硝子材の転移(急激な体積変化が起こること)により発熱体薄膜の接着が阻害されるためである。
【0087】
なお、発熱体薄膜10として、白金系のヒータ主薄膜とその下部に少なくとも配置されたチタンやジルコニウムやクロムの金属ヒータ補助微薄膜を積層した構成を用いても、同様な効果が得られた。
【0088】
(実施例8)
前述の実施例7の結果より、絶縁性耐熱基板9に石英硝子を用いると優れた耐久特性を持つことがわかる。そこで、実施例8は、絶縁性耐熱基板9に用いる石英硝子の組成について検討した。石英硝子は、珪酸(SiO2)を主成分とする硝子であるが、水酸基(OH基と称す)を微量含有する。そこで、水酸基の含有量を異ならした石英硝子の絶縁性耐熱基板を用い、その影響の解析を行った。
【0089】
検討は、水酸基の含有量を異ならした石英硝子の絶縁性耐熱基板9を用いその上部に、チタンからなる金属ヒータ補助微薄膜18と白金からなるヒータ主薄膜17を順々に積層して発熱体薄膜10とし、石英硝子からなる耐熱絶縁性薄膜11をさらに積層して焼成し、最後に、前述の固体電解質型の耐熱ガス感受膜12を積層したガスセンサで行った。
【0090】
本発明1の絶縁性耐熱基板9は、0.01wt%の水酸基を含有する石英硝子であり、その安全使用温度は1050℃である。
【0091】
本発明2の絶縁性耐熱基板9は、0.04wt%の水酸基を含有する石英硝子であり、その安全使用温度は1000℃である。
【0092】
本発明3の絶縁性耐熱基板9は、0.12wt%の水酸基を含有する石英硝子であり、その安全使用温度は950℃である。
【0093】
本発明4の絶縁性耐熱基板9は、0.20wt%の水酸基を含有する石英硝子であり、その安全使用温度は900℃である。
【0094】
比較例の絶縁性耐熱基板は、0.25wt%の水酸基を含有する石英硝子であり、その安全使用温度は800℃である。
【0095】
図5は、石英硝子の水酸基の含有量を変化させ、発熱体薄膜の抵抗変化率を測定したものであり、石英硝子の水酸基含有量と抵抗変化率の相関特性である。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、実装ケースの端子に直流電圧電流を印加して発熱体薄膜10を動作温度400℃まで2ミリ秒で到達させ、そののち8ミリ秒保持させ、電源を切るON−OFF試験を10万回行った際の抵抗変化率である。
【0096】
ヒータの抵抗変化率は、石英硝子に含まれる水酸基が0.20wt%を境に変化することがわかる。本発明1〜4は、石英硝子に含まれる水酸基が0.20wt%以下であるため、チタンの金属ヒータ補助微薄膜が石英硝子に良好に接着して一層優れた耐久特性が得られる。また、熱膨張係数が非常に小さい石英硝子を絶縁性耐熱基板として使用しているので、発熱体薄膜の発熱に起因する絶縁性耐熱基板の熱膨張が小さくなり、これにともない発熱体薄膜は絶縁性耐熱基板に一層良好に接着して優れた耐久特性が得られる。さらに、熱伝導率が非常に小さい石英硝子の絶縁性耐熱基板であるので、発熱体薄膜で発生した熱は、絶縁性耐熱基板に僅かしか伝達されず、その多くが耐熱ガス感受膜に伝達される。そのため、動作温度まで少ない電力で到達でき、消費電力を一層低減したガスセンサが実現できる。また、発熱体薄膜10は、消費電力が小さいので印加される電圧電流値が小さくなり、一層優れた耐久特性が得られる効果が生じている。これに加え、石英硝子に含まれる水酸基が0.20wt%以下であると、その上部に積層される耐熱絶縁性薄膜11の形成に、高温処理を施こすことができ、欠陥の少ない耐熱絶縁性薄膜が生成されて優れた絶縁特性が確保できる。そのため、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13は、発熱体薄膜10の影響を受けることが少なく、適正動作温度400℃で良好な酸素イオン導電性を発揮する。この効果により、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13や電極薄膜14,15、そして酸化触媒膜16で構成される耐熱ガス感受膜12は、その下部に配置した発熱体薄膜10により短時間で加熱されて動作状態となり、極めて短時間に暖気される利点もある。
【0097】
一方、比較例のように石英硝子に含まれる水酸基が0.20wt%を超えると、チタンの金属ヒータ補助微薄膜が石英硝子に接着しにくくなり、幾分の耐久性低下が観察された。
【0098】
なお、発熱体薄膜10として、白金のヒータ主薄膜9に、その下部もしくは上部に少なくとも配置されたチタンやジルコニウムやクロムの金属ヒータ補助微薄膜を積層した構成を用いても、同様な効果が得られた。
【0099】
(実施例9)
実施例9は、絶縁性耐熱基板9の中心線表面粗さについて検討した。検討は、中心線表面粗さを変化させた石英硝子の絶縁性耐熱基板9の上部に、チタンからなる金属ヒータ補助微薄膜18と白金からなるヒータ主薄膜17を順々に積層して発熱体薄膜10とし、石英硝子からなる耐熱絶縁性薄膜11をさらに積層して焼成し、最後に、前述の固体電解質型の耐熱ガス感受膜12を積層したガスセンサで行った。
【0100】
中心線表面粗さを変化させた絶縁性耐熱基板9を用いたガスセンサのON−OFF通電試験を行い、発熱体薄膜10の抵抗変化率を測定した。図6は、中心線表面粗さと抵抗変化率の相関特性を整理した特性図である。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、実装ケースの端子に直流電圧電流を印加して発熱体薄膜10を動作温度400℃まで10ミリ秒で到達させ、そののち電源を切るON−OFF試験を10万回行った際の抵抗変化率である。
【0101】
図6からわかるように、抵抗変化率は、中心線表面粗さが0.05μmおよび1μmを境に大きく変化することがわかる。本発明は、中心線表面粗さが0.05〜1μmであるため、焼成により発熱体薄膜が絶縁性耐熱基板に良好に接着して優れた耐久特性が得られる。
【0102】
一方、中心線表面粗さが0.05μm未満および1μmを超える絶縁性耐熱基板にすると、焼成しても発熱体薄膜10が絶縁性耐熱基板9に良好に接着せず幾分の耐久性低下が観察される。
【0103】
なお、上記結果は、絶縁性耐熱基板として、転移温度720℃で軟化温度900℃で熱膨張係数6.8×10-6deg-1の物性を有する結晶化硝子膜(膜厚70μm)をアルミナ製の耐熱板の上部に積層した基板、コージェライト基板などのセラミック基板を用いても同様であった。また、耐熱絶縁性薄膜11として、アルミナや窒化珪素などのセラミックおよび各種硝子を用いても、同様な効果が得られた。さらに、発熱体薄膜10として、白金のヒータ主薄膜に、その下部に少なくとも配置されたチタンやジルコニウムやクロムの金属ヒータ補助微薄膜を積層した構成を用いても、同様な効果が得られた。
【0104】
(実施例10)
実施例10は、耐熱絶縁性薄膜11を構成する材料について検討した。
【0105】
硝子は、前述の実施例7に記載したように、この発熱体薄膜10より熱膨張係数が小さい特性を本来的に有している。そのため、硝子は、耐熱絶縁性薄膜11として用いると、発熱体薄膜10が発熱して熱膨張しても、極めて僅かしか熱膨張せず、硝子の持つ圧縮応力に非常に強い性質とかみ合って、熱膨張に良好に追随して破損せず、優れた耐久特性を有する発熱体薄膜10が実現できる可能性がある。しかしながら、硝子は、温度を上昇させるとその熱膨張係数に従がって一定割合で膨張する際に、或る温度を境にその体積が急激に膨張する性質がある。この体積が急激に膨張する温度を転移温度と言い、この体積急激膨張により、その上部に積層した発熱体薄膜10などが損傷されることが懸念されるので、この転移温度の影響について検討した。
【0106】
検討は、石英硝子の絶縁性耐熱基板9の上部に、チタンからなる金属ヒータ補助微薄膜18と白金のヒータ主薄膜17をスパッタ法を用いて順々に0.6μm積層して発熱体薄膜10とし、転移温度が異なる硝子の耐熱絶縁性薄膜11をさらに約2μm積層したのち、最後に、前述の固体電解質型の耐熱ガス感受膜12を形成して積層したガスセンサで行った。
【0107】
図7は、硝子の材質を異ならせて転移温度を変化させ、発熱体薄膜の抵抗変化率を測定したものであり、転移温度と抵抗変化率の相関特性である。発熱体薄膜10の抵抗変化率は、実装ケースの端子に直流電圧電流を印加して発熱体薄膜10を動作温度400℃まで10ミリ秒で上昇させたのち、電源を切るON−OFF試験を10万回行った際の抵抗変化率である。
【0108】
本発明1の耐熱絶縁性薄膜11は、石英硝子であり、転移温度は1075℃、熱膨張係数は0.5×10-6(1/deg)である。
【0109】
本発明2の耐熱絶縁性薄膜11は、96%珪酸硝子であり、転移温度は890℃、熱膨張係数は0.8×10-6で(1/deg)である。
【0110】
本発明3の耐熱絶縁性薄膜11は、硼珪酸アルミナ硝子であり、転移温度は850℃、熱膨張係数は1.3×10-6で(1/deg)である。
【0111】
本発明4の耐熱絶縁性薄膜11は、アルミノ珪酸硝子であり、転移温度は750℃、熱膨張係数は4.4×10-6で(1/deg)である。
【0112】
本発明5の耐熱絶縁性薄膜11は、アルミノ珪酸硝子であり、転移温度は650℃、熱膨張係数は4.2×10-6で(1/deg)である。
【0113】
比較例の耐熱絶縁性薄膜は、ソーダ石灰硝子であり、転移温度は620℃、熱膨張係数は5.2×10-6で(1/deg)である。
【0114】
図7よりわかるように、発熱体薄膜の抵抗変化率は、耐熱絶縁性薄膜11に用いる硝子材の転移温度が、650℃を境に変化することがわかる。本発明1〜5は、耐熱絶縁性薄膜11がその転移温度が650℃を越える硝子材であるため、最適焼成温度の600℃で発熱体薄膜を焼成しても、発熱体薄膜は耐熱絶縁性薄膜に良好に接着して優れた耐久特性が得られる。一方、比較例のように620℃の転移温度を有する硝子材を耐熱絶縁性薄膜として使用すると、最適焼成温度600℃で発熱体薄膜を焼成しても、発熱体薄膜が耐熱絶縁性薄膜に良好に接着せず幾分の耐久性低下が観察される。これは、硝子材の転移温度620℃が、発熱体薄膜の焼成温度600℃に近い温度であるため、硝子材の転移(急激な体積変化が起こること)により発熱体薄膜の接着が阻害されるためである。
【0115】
なお、上記結果は、発熱体薄膜10として、白金のヒータ主薄膜17の下部に配置されたチタンやジルコニウムさらにクロムの金属ヒータ補助微薄膜18を積層した構成を用いても、同様な効果が得られた。
【0116】
(実施例11)
実施例11は、耐熱絶縁性薄膜11の材料についてさらに詳細に検討した。
【0117】
検討は、前述の実施例10と同じであり、その結果を(表6)に示す。
【0118】
本発明1の耐熱絶縁性薄膜11は、石英硝子膜を2.0μm形成した膜である。
【0119】
比較例1の耐熱絶縁性薄膜は、発熱体薄膜の側に石英硝子膜を1.5μm形成し、その上部にアルミナ膜を0.5μm積層した積層膜である。
【0120】
比較例2の耐熱絶縁性薄膜は、発熱体薄膜の側にアルミナ膜を0.5μm形成しその上部に石英硝子膜を1.5μm積層した積層膜である。
【0121】
【表6】
【0122】
本発明は、石英硝子を用いた耐熱絶縁性薄膜であり、その抵抗変化率は、(表6)に記載したように他材料構成より小さく、優れた耐久特性である。これは、ヒータ主薄膜が石英硝子製の絶縁性耐熱基板に良好に接着して優れた耐久特性が得られるためである。
【0123】
なお、上記結果は、発熱体薄膜10として、白金のヒータ主薄膜17の下部に配置されたチタンやジルコニウムさらにクロムの金属ヒータ補助微薄膜18を積層した構成を用いても、同様な効果が得られた。
【0124】
(実施例12)
実施例12は、耐熱ガス感受膜12として固体電解質型ガス感受膜を用いる際の、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13の熱伝導率について検討した。
【0125】
検討は、石英硝子の絶縁性耐熱基板9の上部に、チタンからなる金属ヒータ補助微薄膜18と白金のヒータ主薄膜17を順々に積層して発熱体薄膜10とし、石英硝子からなる耐熱絶縁性薄膜11をさらに積層して焼成したのち、最後に、後述の固体電解質型の耐熱ガス感受膜12を積層したガスセンサで行った。
【0126】
固体電解質型の耐熱ガス感受膜12は、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13と、その同一面に形成された通気性の第1電極薄膜14および第2電極薄膜15と、第1電極薄膜14に積層した酸化触媒膜16で構成される。第1電極薄膜14および第2電極薄膜15さらに酸化触媒膜16は、次の2種類の材料を用いて検討を行なった。材料(I)は、第1電極薄膜14および第2電極薄膜15が、白金をスパッタして形成した通気性の薄膜であり、熱膨張係数が9×10-6(1/deg)で熱伝導率が69.5W/mKの物性値を持つ。酸化触媒膜16は、白金触媒をシリカアルミナ系結晶化硝子の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が1W/mKの物性値を持つ。材料(II)は、第1電極薄膜14および第2電極薄膜15が、ペロブスカイト型金属酸化物であるランタンコバルト系複合酸化物を酸化ビスマスの3%と混合して厚膜印刷した通気性の薄膜である。酸化触媒膜16は、白金触媒をアルミナ系結合材の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が25W/mKの物性値を持つ。
【0127】
比較例1の酸素イオン導電性固体電解質薄膜は、セリウム添加のイットリウム系部分安定化ジルコニアであり、結晶粒径をナノオーダまで微細化しているのでその熱伝導率は0.8W/mK、組成はZrO296モル%とY2O33モル%とCeO21モル%の固溶体である。
【0128】
本発明1の酸素イオン導電性固体電解質薄膜13は、スカンジウム添加のセリア系ジルコニアであり、結晶粒径をナノオーダまで微細化しているのでその熱伝導率は1.0W/mK、組成はZrO290モル%とCeO210モル%とSc2O310モル%の固溶体である。
【0129】
本発明2の酸素イオン導電性固体電解質薄膜13は、イットリウム系部分安定化ジルコニアであり、熱伝導率は3.0W/mKとなり、その組成はZrO297モル%とY2O33モル%の固溶体である。
【0130】
本発明3の酸素イオン導電性固体電解質薄膜13は、イットリウム系安定化ジルコニアであり、熱伝導率は5.0W/mKとなり、その組成はZrO292モル%とY2O38モル%の固溶体である。
【0131】
本発明4の酸素イオン導電性固体電解質薄膜13は、イットリアをドープしたセリア系材料であり、熱伝導率は6.5W/mKとなり、その組成は(CeO2)1-0.7(YO1.5)0.3である。
【0132】
本発明5の酸素イオン導電性固体電解質薄膜13は、サマリウムをドープしたセリア系材料であり、熱伝導率は7.0W/mKとなり、組成は(CeO2)0.8(SmO1.5)0.2である。
【0133】
比較例2の酸素イオン導電性固体電解質薄膜は、イットリウム系酸化ビスマスであり、その熱伝導率は10W/mK、組成はBi2O396モル%とY2O34モル%の固溶体である。
【0134】
熱伝導率が異なる酸素イオン導電性固体電解質薄膜を用いたガスセンサのON−OFF通電試験を行い、発熱体薄膜の抵抗変化率を測定した。図8は、酸素イオン導電性固体電解質薄膜の熱伝導率と抵抗変化率の相関特性を整理した特性図である。発熱体薄膜の抵抗変化率は、実装ケースの端子に直流電圧電流を印加して発熱体薄膜6を動作温度400℃まで10ミリ秒で昇温させたのち、電源を切るON−OFF試験を10万回行った際の抵抗変化率である。
【0135】
図8からわかるように、抵抗変化率は、酸素イオン導電性固体電解質薄膜の熱伝導率が1W/mK未満および7W/mKを越えると、大きく変化することがわかる。本発明1〜5は、熱伝導率が1〜7W/mKであるため、酸素イオン導電性固体電解質薄膜が良好に放熱し、発熱体薄膜はその温度上昇が抑制され優れた耐久特性が得られる。
【0136】
一方、比較例1のように熱伝導率が1W/mK未満であると、酸素イオン導電性固体電解質薄膜からの放熱が悪いため、発熱体薄膜はその温度が上昇し幾分の耐久性低下が観察された。また、比較例2のように熱伝導率が7W/mKを越えると、酸素イオン導電性固体電解質薄膜からの放熱が良いため、発熱体薄膜はその温度を保持しようと大きな電流が流れて幾分の耐久性低下が観察された。
【0137】
なお、上記結果は、発熱体薄膜10として、白金のヒータ主薄膜の下部に配置されたチタンやジルコニウムさらにクロムの金属ヒータ補助微薄膜を積層した構成を用いても、同様な効果が得られた。
【0138】
(実施例13)
実施例13は、耐熱ガス感受膜12として固体電解質型ガス感受膜を用いる際における、酸化触媒膜16の熱伝導率について検討した。
【0139】
検討は、石英硝子の絶縁性耐熱基板9の上部に、チタンからなる金属ヒータ補助微薄膜18と白金のヒータ主薄膜17を順々に積層して発熱体薄膜10とし、石英硝子からなる耐熱絶縁性薄膜11をさらに積層して焼成したのち、最後に後述の固体電解質型の耐熱ガス感受膜12を積層したガスセンサで行った。固体電解質型の耐熱ガス感受膜12は、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13と、その同一面に形成された通気性の第1電極薄膜14および第2電極薄膜15と、第1電極薄膜14に積層した酸化触媒膜16で構成される。酸素イオン導電性固体電解質薄膜13と、第1電極薄膜14および第2電極薄膜15は、次の2種類の材料を用いて検討を行なった。材料(I)は、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13が、イットリウム系安定化ジルコニアであり、熱伝導率は5W/mKで組成はZrO292モル%とY2O38モル%の固溶体である。第1電極薄膜14および第2電極薄膜15が、白金をスパッタして形成した通気性の薄膜であり、熱膨張係数が9×10-6(1/deg)で熱伝導率が69.5W/mKの物性値を持つ。材料(II)は、酸素イオン導電性固体電解質薄膜13が、サマリウムをドープしたセリア系材料であり、熱伝導率は7.0W/mKで組成は(CeO2)0.8(SmO1.5)0.2である。第1電極薄膜14および第2電極薄膜15が、ペロブスカイト型金属酸化物であるランタンコバルト系複合酸化物を酸化ビスマスの3%と混合して厚膜印刷した通気性の薄膜である。
【0140】
比較例1の酸化触媒膜は、白金触媒をコージライト系結晶化硝子の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が0.7W/mKの物性値を持つ。
【0141】
本発明1の酸化触媒膜16は、白金ロジウム触媒をシリカアルミナ系結晶化硝子の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が1.0W/mKの物性値を持つ。
【0142】
本発明2の酸化触媒膜16は、白金パラジウム触媒をシリカアルミナ硼素系結晶化硝子の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が2.5W/mKの物性値を持つ。
【0143】
本発明3の酸化触媒膜16は、白金触媒をアルミナジルコニア系結合材の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が7.0W/mKの物性値を持つ。
【0144】
本発明4の酸化触媒膜16は、白金触媒をアルミナシリカ系結合材の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が12.5W/mKの物性値を持つ。
【0145】
本発明5の酸化触媒膜16は、白金触媒をアルミナ系結合材の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が25W/mKの物性値を持つ。
【0146】
比較例2の酸化触媒膜は、白金触媒を炭化珪素系結合材の表面に担持させた通気性の多孔質膜であり、熱伝導率が40W/mKの物性値を持つ。
【0147】
熱伝導率が異なる酸化触媒膜を用いたガスセンサのON−OFF通電試験を行い、発熱体薄膜の抵抗変化率を測定した。図9は、酸化触媒膜の熱伝導率と抵抗変化率の相関特性を整理した特性図である。発熱体薄膜の抵抗変化率は、実装ケースの端子に直流電圧電流を印加して発熱体薄膜10を動作温度400℃まで10ミリ秒で到達させたのち、電源を切るON−OFF試験を10万回行った際の抵抗変化率である。
【0148】
図9からわかるように、抵抗変化率は、酸化触媒膜の熱伝導率が1W/mK未満および25W/mKを越えると、大きく変化することがわかる。本発明1〜5は、熱伝導率が1〜25W/mKであるため、酸化触媒膜が良好に放熱し、発熱体薄膜はその温度上昇が抑制され優れた耐久特性が得られる。
【0149】
一方、比較例1のように熱伝導率が1W/mK未満であると、酸化触媒膜からの放熱が悪いため、発熱体薄膜はその温度が上昇し幾分の耐久性低下が観察される。一方、比較例2のように熱伝導率が25W/mKを越えると、酸化触媒膜からの放熱が良いため、発熱体薄膜はその温度を保持しようと大きな電流が流れて幾分の耐久性低下が観察される。
【0150】
なお、上記結果は、発熱体薄膜10として、白金のヒータ主薄膜の下部に配置されたチタンやジルコニウムさらにクロムの金属ヒータ補助微薄膜を積層した構成を用いても、同様な効果が得られた。
【0151】
【発明の効果】
以上のように、本発明のガスセンサは、発熱体薄膜は、直流電源により予め決められた間隔ごとに予め決められた短時間だけ大電力を供給されるので、ガスセンサはこの大電力短時間印加で動作状態になり省電力量タイプとなる。しかも、直流電源が、電力値を階段状に上昇させて供給しているので、ガスセンサはその温度上昇を緩やかにしたステップ状で温度上昇して、熱衝撃が低減されその耐久信頼性が優れる。そのため、耐久信頼性に優れた小型省電力量タイプのガスセンサを、簡単な製膜技術と品質管理技術で提供できる。また、ヒータの耐久性が優れているので、センサ動作温度が変化することがなく、センサ出力が長時間安定する利点や、ヒータの抵抗変化検知や抵抗変化に伴うセンサ出力の変化防止対策に纏わる制御回路が簡素化できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施例におけるセンサ素子の断面図
(b)同実施例における直流電源からセンサ素子に供給する電力波形図
【図2】(a)本発明のセンサ素子に供給する電流波形図
(b)同センサ素子の電圧波形図
(c)同センサ素子における発熱体薄膜の温度過渡特性図
【図3】同実施例における前段最終電圧値と後段最終電圧値の比率と発熱体薄膜の抵抗変化率の相関図
【図4】同実施例における絶縁性耐熱基板に用いる硝子材の転移温度と発熱体薄膜の抵抗変化率の相関図
【図5】同実施例における石英硝子中の水酸基含有量と発熱体薄膜の抵抗変化率の相関図
【図6】同実施例における絶縁性耐熱基板の中心線表面粗さと発熱体薄膜の抵抗変化率の相関図
【図7】同実施例における耐熱絶縁性薄膜に用いる硝子材の転移温度と発熱体薄膜の抵抗変化率の相関図
【図8】同実施例における酸素イオン導電性固体電解質薄膜の熱伝導率と発熱体薄膜の抵抗変化率の相関図
【図9】同実施例における酸化触媒膜の熱伝導率と発熱体薄膜の抵抗変化率の相関図
【図10】(a)従来のガスセンサのセンサ素子を示す断面図
(b)同センサ素子の供給電力の動作波形図
(c)同センサ素子のガス感応部の温度過渡特性図
【符号の説明】
7 センサ素子
8 直流電源
9 絶縁性耐熱基板
10 発熱体薄膜
11 耐熱絶縁性薄膜
12 耐熱ガス感受膜
13 酸素イオン導電性固体電解質薄膜
14 第1電極薄膜
15 第2電極薄膜
16 酸化触媒膜
17 ヒータ主薄膜
18 金属ヒータ補助微薄膜
Claims (3)
- 絶縁性耐熱基板の上部に下から順々に積層した発熱体薄膜、耐熱絶縁性薄膜、耐熱ガス感受膜を備えたセンサ素子と、前記発熱体薄膜に予め決められた間隔ごとに電力を予め決められた時間だけ供給する直流電源とを少なくとも備え、前記直流電源は、電力値を階段状に上昇させて供給するとともに第1階段の初期において電流値を徐々に大きくして供給し、それ以後は電流値を予め決められる変動範囲内で供給するガスセンサ。
- 絶縁性耐熱基板の上部に下から順々に積層した発熱体薄膜、耐熱絶縁性薄膜、耐熱ガス感受膜を備えたセンサ素子と、前記発熱体薄膜に予め決められた間隔ごとに電力を予め決められた時間だけ供給する直流電源とを少なくとも備え、前記直流電源は、電力値を階段状に上昇させて供給するとともに各々の階段初期はその値を緩やかに上昇させて供給するガスセンサ。
- 絶縁性耐熱基板の上部に下から順々に積層した発熱体薄膜、耐熱絶縁性薄膜、耐熱ガス感受膜を備えたセンサ素子と、前記発熱体薄膜に予め決められた間隔ごとに電力を予め決められた時間だけ供給する直流電源とを少なくとも備え、前記直流電源は、電力値を階段状に上昇させて供給するとともに、電圧値を2段階で供給し、前段の最終値の電圧値を、後段における最終値の電圧値の0.40〜0.95倍とするガスセンサ。
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