JP3051220B2 - 酸素センサ素子及びその製造方法 - Google Patents

酸素センサ素子及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄型で消費電力が小さ
く、検出出力(限界電流値)のバラツキが少ない限界電
流式酸素センサ素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】いわゆ
る酸素センサ素子と言われているものには、大きく分け
てガルバニ式、濃淡電池式、限界電流式の3つのタイプ
がある。このなかで、限界電流式の酸素センサ素子は濃
淡電池式で用いられるような基準エアが不要であり、ま
たガルバニ式のような定期的な校正も不要である点で使
用しやすく、近年では、家電製品等の一部にも装着され
るようになってきた。
【0003】従来の限界電流式の酸素センサ素子は、酸
素イオンの伝導体である固体電解質の基板の両面に電極
を設けるとともに、酸素ガスが一方の電極に到達するの
を構造的に制限しておき、この電極間に電圧を印加して
酸素ガスのイオン電流を生じさせ、電極間に流れる電流
値(限界電流値)を測定することにより酸素ガスの濃度
を測定するものであり、代表的には図6に示す構造を有
する。図6に示す酸素センサ素子10においては、固体
電解質基板12の両面に多孔質の電極13a、13bが
設けられており、電極13aを陰極とするように電源に
接続されている。陰極13a側には、上記の固体電解質
基板12と封止板15とスペーサ14とにより内部室1
7が形成されている。この内部室17は、多孔質の電極
13a、13bの気孔及び固体電解質基板12に設けら
れた微小の拡散孔18により、外部に連通している。こ
の拡散孔18はいわゆる酸素拡散律速状態をつくる。固
体電解質のイオン伝導度は高温になるにつれて大きくな
るので、イオン伝導度を高める目的で酸素センサ素子自
体を400℃程度に加熱するために、封止板15上にヒ
ータ16が設けられている。なお、固体電解質基板12
はジルコニア系の材料(たとえばジルコニア/イットリ
ア)から形成され、また電極13a、13bは、白金系
の材料から形成されるのが一般的であるが、電極性能改
善のため、PtにZrOを添加することも可能であ
る。
【0004】上記の構造とすると、センサ素子の外部か
ら多孔質の電極13b及び拡散孔18を通過した酸素ガ
スは、電極13a内を拡散するとともに多孔質の電極1
3aを貫通して内部室17にも流入するが、多孔質の電
極13a内を拡散して固体電解質基板12の表面に到達
すると、電極13aと固体電解質基板12との界面でイ
オン化されて酸素イオンとなる。電極13a、13b間
に電圧が印加されているので(電極13aが陰極であ
る)、酸素イオンは電極13bに向かって移動する。そ
して電極13bで酸素イオンが再び酸素分子となり、電
極13bの気孔を通過して外部に放出される。
【0005】このように、酸素のイオン化及び酸素イオ
ンのガス化に伴う電荷の移動が生じるので、電源とセン
サ素子を接続した回路に電流が流れる。回路に流れる電
流は、印加電圧を大きくするとそれに伴い増大するが、
固体電解質基板12に設けた拡散孔18からの酸素ガス
の流入速度よりも陰極における酸素分子のイオン化速度
の方が大きいので、流入するガス量が制限される(酸素
拡散律速になる)。このため、電極に印加する電圧を大
きくしていっても、ある特定の電圧値以上では回路を流
れる電流値が実質的に変わらなくなる。この状態は限界
電流状態と呼ばれるが、この限界電流状態における電流
値(限界電流値)は酸素ガスの分圧(濃度)を反映した
ものであり、この限界電流値を測定することで酸素ガス
の分圧(濃度)を検知することができる。
【0006】ところで、酸素センサ素子では低消費電力
化が重要であるが、上記タイプの酸素センサ素子では、
その構造から、素子の熱容量をそれほど小さくすること
ができず、消費電力が大きい。そこで消費電力を小さく
するには、作動温度を下げる他に手がないが、そのため
には固体電解質のイオン伝導度を大幅に増大させるか、
電極の性能を増大させるかの改善をしなければならな
い。しかしながら、これらを実現するのは実際には種々
の困難が伴う。
【0007】そこで、センサ素子のサイズを小さくして
消費電力を小さくすることが試みられており、具体的に
は、素子の薄膜化が検討されている。センサ素子を薄膜
型にすれば生産コストの大幅な低減も期待され、さら
に、固体電解質基板の薄肉化によりインピーダンスを小
さくすることができ、よって検出電流値も大きくするこ
とができるという利点を有する。
【0008】このような理由から、薄膜型の酸素センサ
素子が多方面から研究開発されており、多くの提案がな
されている。
【0009】その中の代表的な例として、図7に示すよ
うな薄膜型の酸素センサ素子がある。この酸素センサ素
子20では、多孔質の基板22上に、陰極となる多孔質
の電極23aと、緻密な固体電解質層24と、陽極とな
る多孔質の電極23bとが順に形成されており、陰極2
3aは緻密な固体電解質層24により覆われている。ま
た、多孔質の基板22の反対側の面にヒータ26が形成
されている。この酸素センサ素子20では、酸素ガスの
流入(陰極23aへの酸素ガスの流入)の律速状態は、
多孔質の基板22の細孔により達成される。
【0010】また、図8に示すような薄膜型の酸素セン
サ素子30も提案されている。ここで酸素センサ素子3
0は、多孔質の基板32上に陽極となる多孔質の電極3
3bと、緻密な固体電解質層34と、陰極となる多孔質
の電極33aとが順に形成されており、多孔質の陽極3
3bは緻密な固体電解質層34により覆われている。さ
らに、陰極33aと、緻密な固体電解質層34と、陽極
33bとがなす積層部分は、多孔質の保護膜層37によ
り覆われており、この多孔質の保護膜層37により、陰
極33aへの酸素ガス流の律速状態が達成される。な
お、ヒータ36は多孔質の基板32の反対側の面に形成
されている。
【0011】上記した2つの酸素センサ素子において
は、いずれも多孔質の電極間に緻密な固体電解質層が形
成されているが、薄型の酸素センサ素子とするには、電
極に挟まれる固体電解質層を薄膜化することが必要であ
る。通常、ある基板上に薄膜を形成する場合に、PVD
やCVDが主として採用されるが、多孔質の基板上にP
VDやCVDにより緻密な薄膜を形成するのは、一般に
困難である。図7及び図8に示す酸素センサ素子20及
び30を製造する場合、多孔質の基板22、32上にま
ず多孔質の薄い電極(酸素センサ素子20では電極23
a、酸素センサ素子30では電極33b)を形成し、そ
の上に緻密な固体電解質薄層24、24を形成しなけれ
ばならないが、上記したように、PVDやCVDではこ
の緻密な固体電解質薄層を規格通りに形成するのは困難
である。また、PVDやCVDによらずに他の方法によ
り固体電解質層を形成しようとすると、固体電解質層は
かなり厚くなってしまい、センサ素子の薄型化を達成す
ることができなくなる。
【0012】また、特に図7に示す酸素センサ素子20
においては、多孔質の基板22の細孔が酸素の拡散律速
を与えることになるが、酸素センサ素子の量産を考えた
場合、基板となるような比較的厚い多孔質板において
は、その多孔度、細孔の径の分布、基板の厚さ等にある
程度のバラツキが生じることは否めない。多孔質の基板
にこのようなバラツキが存在すると、当然のことながら
酸素センサ素子における限界電流値にもバラツキが生じ
ることになり、好ましくない。
【0013】さらに、図7及び図8に示す酸素センサ素
子20及び30では、多孔質基板22、32の一方の面
に、素子加熱用のヒータ26、36を形成するが、多孔
質の基板上に抵抗値のそろった薄膜状のヒータを形成す
るのは極めて難しい。というのは、基板の凹凸がヒータ
薄膜の膜構造に反映し、ヒータ抵抗値のバラツキが生じ
るからである。
【0014】このように、現状の薄膜酸素センサ素子に
おいては、まだ構造的にいっても解決されるべき問題は
多かった。本発明者らは、これらの問題に鑑みて、緻密
な絶縁性基板を使用した積層膜構造の酸素センサ素子を
開発し、先に出願した(特願平3−155205号)。
図9にその薄膜酸素センサ素子の断面構造を示す。緻密
な絶縁性基板2上に多孔質の電極(陰極)3aが形成さ
れており、この電極3aの上に多孔質な固体電解質薄膜
4が成膜され、さらにその上に多孔質電極膜3bが形成
されている。この電極3bは陽極として接続されるが、
もちろん、陰極3aとは導通があってはならない。
【0015】特願平3−155205号における素子構
造においては上述のような問題はなく、積層成膜で最初
にくる陰電極の多孔度を制御してやればよい。これは、
スパッタリング法で成膜する場合もちろん緻密基板の表
面粗さでも制御はできるだろうし、成膜時のスパッタリ
ング条件でも制御できる。スパッタリング条件では、特
に、ガス圧力、基板温度、スパッタパワーで膜の多孔度
は制御できる。通常、スパッタリング法ではガス圧を1
0〜50mmTorrの間で成膜してやれば膜の多孔度
は相当に制御できる。このように第一層目の膜の多孔度
が制御できれば第二層目、第三層目の多孔度は、ほぼ第
一層目の多孔度と同様のものができあがる。
【0016】その構造による酸素濃度検知原理は次のよ
うになる。大気中の酸素分子はまず多孔質の陽極3bの
細孔より入り、多孔質の固体電解質膜4の細孔を経て陰
極3bに到達するが、陰極3bも多孔質であるので、流
入酸素分子は陰極3b中にすみやかに拡散し、O2−
オンとなる。次に、固体電解質膜4中を通過して陽極3
bに至り、そこにおいてOにもどり、大気中に放出さ
れる。図10にこの様子を模式的に示す。
【0017】上記の通り、図7、図8に示すような従来
の薄膜酸素センサ素子では、多孔質な基板上に多孔質な
電極を形成し、さらにその上に緻密な固体電解質膜を形
成しているため、種々の問題点があったが、特願平3−
155205号の酸素センサ素子では緻密な基板上に電
極及び固体電解質の薄膜を層状に形成しているため、従
来技術の問題は解消されている。ところが、基板が緻密
なために密着性に問題があることがわかった。
【0018】したがって、本発明の目的は、基板との密
着性が良好で検出出力(限界電流値)のバラツキが小さ
く、薄型で消費電力が小さい限界電流式酸素センサ素子
を提供することである。
【0019】本発明のもう1つの目的は、このような限
界電流式酸素センサ素子の薄膜の多孔度を制御すること
により検出出力(限界電流値)のバラツキができるだけ
小さいように製造することができる方法を提供すること
である。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者は、緻密な絶縁性基板の一方の面上に
微細な突起を形成した後で、多孔質薄膜状陰極と、多孔
質薄膜状固体電解質と、多孔質薄膜状陽極とを順に積層
した構造の酸素センサ素子とすれば、各薄膜の多孔度を
容易にコントロールできるとともに、基板と積層膜との
密着性を向上することができ、もって薄型で、検出出力
(限界電流値)のバラツキのない良好な限界電流式酸素
センサ素子とすることができることを発見し、本発明を
完成した。
【0021】すなわち、本発明の限界電流式酸素センサ
素子は、緻密な絶縁性基板の一方の面上に微細な突起が
形成されており、その上に、多孔質の薄膜状陰極と、酸
素イオン伝導性を有するとともに酸素ガスが拡散しうる
多孔質の固体電解質薄膜と、酸素ガスが拡散しうる多孔
質の薄膜状陽極とが順に積層されていることを特徴とす
る。
【0022】また、本発明の限界電流式酸素センサ素子
の製造方法は、緻密な絶縁性基板の一方の面上にアルミ
ニウムの薄膜を形成し、それを温水処理することにより
得られる微細突起を有するベーマイト薄膜を酸化性雰囲
気中で焼成し、アルミナの微細突起薄膜とすることを特
徴とする。
【0023】
【作用】緻密な基板上に酸素拡散律速膜(電極及び固体
電解質膜)を成膜積層する構造の酸素センサ素子におい
て、2層目以降の固体電解質膜及び陽極の多孔度や細孔
径をコントロールするためには、最初に成膜する陰極の
多孔度や細孔径を制御してやればよい。第一層目の膜の
多孔度や細孔径が制御できれば、第二層目及び第三層目
の多孔度や細孔径は、ほぼ第一層目の多孔度や細孔径と
同様のものとなる。なお、多孔質基板を使用した薄膜セ
ンサ素子に比べると酸素拡散律速膜は非常に薄いので、
形成する多孔質薄膜の細孔径はサブミクロン程度にしな
ければならない。この場合の拡散は、クヌーセン拡散の
領域(気体分子の拡散のような気体分子同志の衝突に支
配されるものではなく、気体分子と拡散孔の壁との衝突
に支配される領域)に入るものである。
【0024】本発明では、基板上に微細突起が形成され
ているので、基板が緻密であるにもかかわらずその上に
多孔質の薄膜を密着性よく形成することができる。その
上、基板の微細突起の多孔度によりその上の薄膜の多孔
度がコントロールされるので、検出出力(限界電流値)
のバラツキが小さい酸素センサ素子を得ることができ
る。
【0025】
【実施例】以下、本発明を添付図面を参照して詳細に説
明する。
【0026】図1は本発明の一実施例による酸素センサ
素子を示す概略断面図である。酸素センサ素子1は、緻
密で電気絶縁性の高い材料からなるセンサ素子基板2
と、その一方の面上に形成された酸素ガスが拡散しうる
孔径を有する多孔質の薄膜状電極3aと、酸素ガスが拡
散しうる孔径を有する多孔質の薄い固体電解質層4と、
多孔質の電極3bとを有する。ここで、多孔質の電極3
aが陰極に、多孔質の電極3bが陽極となるように結線
されており、両電極は外部電源及び電流計(ともに図示
せず)に接続されている。図1からわかるように、陰極
3aと陽極3bとは多孔質の薄い固体電解質層4により
離隔されている。
【0027】また、センサ素子基板2の他方の面上に
は、蛇行する形状の薄肉のヒータ6が形成されており、
外部電源(図示せず)に接続している。
【0028】センサ素子の基板2は、緻密でかつ電気絶
縁性の高い材料により形成する。基板を完全に絶縁性の
ものとするのは、ZrO/Y等からなる固体電
解質膜4に約2V以上の直流電圧がかかると還元されて
しまい、特性が大きく劣化するからである。このため、
センサ素子の基板16としては、Al2Oあるいは
SiO等のセラミックスを用いるのが好ましい。特
に、アルミナはコスト性能の面から好ましく、この場
合、アルミナと同材質の微細突起を基板2上に形成する
のが基板2と微細突起との密着性からいって非常に好ま
しい。これは、単に膨張係数が同じというだけでなく、
結晶格子のマッチングも合うからである。
【0029】電極の形成面と反対側の面には、ヒータ6
を抵抗値のバラツキが少ないように形成することができ
る。
【0030】なお、緻密な絶縁性基板2の厚さは使用す
る材質により異なるが、基本的にはセンサ素子部を支持
するのに十分な強度があればできるだけ薄いほうが好ま
しく、例えばアルミナ材を使用した場合では、約50〜
300μmであればよい。
【0031】上述のように、固体電解質膜4及び電極膜
3bの微細孔で酸素拡散律速を行わせるため、これらの
薄膜の多孔度や細孔径を精確に制御しなければならな
い。そのために、基板2の表面に微細突起を設けるだけ
でなく、その突起サイズを精確にコントロールすること
が必要である。一般に、基板表面を粗面化する場合、機
械的な研磨や酸液による化学エッチングを利用可能であ
るが、これらの方法では、表面粗さが通常過大となり、
また粗さの精密な制御は困難であるという問題がある。
そこで、基板の上にアルミニウムの薄膜を形成し、それ
を酸化処理することにより微細突起薄膜とするのが好ま
しい。
【0032】従って、平滑な表面を持つ緻密な基板上に
アルミニウムを成膜する。このアルミニウム薄膜5の厚
みは、この後の温水処理によるベーマイト突起サイズに
直接影響するので、精確にコントロールしなければなら
ない。アルミニウム薄膜5の厚みとしては、500〜3
00Åの範囲が良い。実際には、この上に形成される固
体電解質膜4及び電極膜3a、3bの厚みとの兼ね合い
により決定する。
【0033】次に、このAl薄膜5が酸化されないうち
に素早く温水処理を施してやると、A1の水酸化物(ベ
ーマイト)が微細な突起を伴って形成される。何故突起
を形成するのか不明な点はあるが、傾向として低温度側
で長時間かけて、ゆっくり処理すると突起サイズは小さ
くなる。温度処理の温度としては、80〜100℃、処
理時間としては5〜30分が適当である。
【0034】このようにして作られたベーマイト突起
は、水酸化物であるので、大気中にて焼成することによ
り、安定なAlに変えてやる必要がある。普通、
1000〜1500℃、例えば約1300℃位で、例え
ば約1時間も焼成すれば完全にAlに変化する
が、突起サイズはほとんど変化しない。このようにして
作られた微細突起状のアルミニウム薄膜5上に、電極膜
(陰極)3a、固体電解質膜4、及び電極膜(陽極)3
bを順次積層するが、この方法によると、基板2と積層
膜との密着性は格段に向上する。
【0035】緻密な基板2上に設けられる陰極3a、及
び固体電解質層4の上に設けられる陽極3bは、Pt、
Pd、Ag、Rh、In等の金属材料、もしくはこれら
の合金材料、又はシンタリングを防止するためにこれら
の金属材料のうちの少なくとも1種と、ジルコニアや窒
化硼素等の難焼結材との混合物を用いるのが好ましい。
特にPt、又はPtとジルコニアの混合物を用いるのが
好ましい。
【0036】各電極は、前述の通り、スパッタリング法
により形成することができる。スパッタリングで多孔質
電極3aを成膜する場合には、上記した緻密な基板2の
表面粗さをあらかじめ所望の粗さに調節してやること
で、その多孔度を調節することができる。また、成膜時
のスパッタリングの条件(特に、ガス圧、基板の温度、
スパッタの出力)を調節することによっても、さらに多
孔度を調節することができる。なお、スパッタリング法
では、ガス圧を10mTorr〜50mTorr程度に
制御しておけば、一層望ましい多孔度を有する多孔質膜
(電極)を容易に形成することができる。
【0037】固体電解質層4を形成する材料としては、
酸素イオン伝導体であるジルコニア系セラミックスを用
いる。このとき、ジルコニアに安定化剤としてイットリ
ア、カルシア、セリア等の少なくとも1種を5〜10モ
ル%添加したものを用いるのがよい。
【0038】本発明では、上述の通り多孔質の陰極3a
上に多孔質の固体電解質層4と、多孔質の陽極3bとを
順に積層した構造とするが、一旦、所望の多孔度を有す
る陰極3aを緻密な基板2上に形成すれば、その上に
は、スパッタリング法により、陰極3aと同等の多孔度
を有する固体電解質層4を容易に形成することができ
る。同様にして、この固体電解質層4の上に、同様な多
孔度を有する陽極3bを容易に形成することができる。
【0039】なお、両電極及び固体電解質層における平
均の細孔径は、サブミクロンの大きさとするが、この程
度の大きさの細孔内を酸素分子が拡散する場合には、そ
の拡散はいわばクヌッセン拡散となる。クヌッセン拡散
では、拡散の状態は気体分子同士の衝突に支配されるの
ではなく、気体分子と多孔質層における細孔壁との衝突
に支配されることになる。
【0040】酸素拡散律速状態は固体電解質膜と陽電極
膜の合計の厚さ及び固体電解質層の細孔径によるので、
適正な限界電流値を得るように、電極と固体電解質膜の
厚み及び細孔径を所望のレベルに設定しなければならな
い。このうち厚さについては、各電極の厚さを、0.0
1〜0.5ミクロンとし、また固体電解質膜4の厚さを
0.5〜10ミクロン、好ましくは1〜5ミクロンとす
る。また細孔径については、アルミニウムの薄膜の厚さ
によりコントロールする。
【0041】酸素センサ素子の温度を所望の高温(30
0〜500℃程度)に保ち、固体電解質層4のイオン伝
導度を良好にするために基板裏側に設けられるヒータ6
については、面伏または蛇行した線状に形成するのがよ
く、白金ペーストを用いたスクリーン印刷やフォトリソ
グラフィー等の方法で形成することができる。
【0042】なお、電極3a、3b及びヒータ6に接続
するリード線としては、白金線等を用いることができ
る。
【0043】以上に示した酸素センサ素子1による酸素
濃度の検知原理を、先に示した図1及び図2により説明
する。
【0044】まず、大気中の酸素は陽極3b及び固体電
解質層4の細孔を通過して陰極3aに到達する。陽極3
b及び固体電解質層4はともに多孔質であるので、大気
中の酸素分子は容易に陰極3aに到達することができ
る。陰極3aに到達した酸素分子はそこでイオン化され
る。両電極間には電圧が印加されているので、イオン化
された酸素分子は固体電解質層4を通って陽極3b側に
移動し、陽極3bに到達した時点で再び酸素分子とな
り、大気中に放出される。このときの酸素ガス及び酸素
イオンの移動は図2に示す通りであるが、全体的には、
図10に示すのと同じである。
【0045】上述した通り、陽極3b及び固体電解質層
4の細孔により酸素分子の拡散律速が達成されるので、
通常の限界電流式センサ素子と同様にして、両電極間に
流れる電流値を測定することにより酸素濃度が測定でき
る。
【0046】以上、本発明を添付図面を参照して説明し
たが、本発明はこれに限定されず、本発明の思想を逸脱
しない限り、種々の変更を施すことができる。たとえ
ば、固体電解質層4及び陰極3aの側面部からの酸素の
流入を防止する目的で、固体電解質層4と陰極3aの外
周部全体に、電気的絶縁性を有するとともに、酸素を透
過させない緻密な層を設けた構造とすることもできる。
【0047】以下に、本発明の実施例を詳細に説明す
る。実施例1 2mm×2mm×0.2mmのアルミナ基板(密度9
9.99%以上)2上に、まずRFスパッタリングによ
り純アルミニウムの薄膜を約500Åの厚さに成膜し、
そのアルミニウム薄膜の表面が酸化しないうちに沸騰純
水中に浸し、ベーマイト(アルミの水酸化物)膜とし
た。形成されたベーマイト膜の表面は、平均表面粗さ約
100Åと、非常に微細な突起を有していた。これを1
300℃で1時間大気中で焼成して、微細突起を有する
アルミナ膜5を得た。
【0048】この微細突起膜5の上に、RFスパッタリ
ング法により第一層としてPt薄膜電極(陰極)3a
を、厚さ200Åに成膜した。その時のスパッタリング
条件は、スパッタ出力3.8W/cm、基板温度30
0℃、ガス圧力25mmTorrとした。
【0049】その上に酸素イオン伝導体であるZrO
/Y(Y:8mol%)の固体電解質薄膜
を第一層目の成膜時のArガス圧力に合わせて、Ar/
混合ガスを使用して、厚さ3.2μmに形成した。
【0050】続いて、厚さ1500ÅのPt薄膜電極
(陽極)3bを同様にして成膜した。その後、膜歪の除
去とZrO/Yの酸素安定化を目的として、大
気中で800℃にて熱処理を行った。この一連の成膜工
程中において、膜の剥離はまったく見られなかった。
【0051】図3に、得られた酸素センサ素子の電極印
加電圧と出力(限界電流値)との関係(V−I特性大気
中)を示す。図3に見られるように、電極印加電圧が
0.7V以上では、出力はプラトー域に入り、限界電流
が得られることがわかる。
【0052】実施例2 アルミニウム薄膜の厚みを変えた以外実施例1と同様に
して、酸素センサ素子を作成した。この場合、アルミニ
ウム薄膜の厚さにより形成されるベーマイト突起のサイ
ズは大きく変わる。アルミニウム薄膜から得られたアル
ミナ薄膜の上に積層される電極膜及び固体電解質膜の多
孔度はこの突起サイズに依存するので、アルミニウム薄
膜の厚さをコントロールすることにより酸素ガス拡散律
速の度合いを制御することができる。
【0053】図4にアルミニウム薄膜の膜厚と限界電流
値(400℃の大気中)との関係を示す。図4から明ら
かなように、突起サイズが(アルミニウム薄膜の厚さに
比例)大きくなるに従って、限界電流値はほぼ二次曲線
的に増大する。これは、突起サイズが大きくなると、そ
の上に形成されるガス拡散律速層の各々の結晶粒間隙面
積が二次曲線的に増大することに起因すると考えられ
る。
【0054】実施例3 実施例1と同様な成膜方法により、酸素センサ素子を作
成した。この酸素センサ素子の限界電流値を、酸素濃度
を0〜90%に変えた雰囲気で測定した。結果を図5に
示す。限界電流値は、ほぼ全域にわたって酸素濃度に比
例することがわかる。これは、酸素拡散律速が非常に微
細な膜の細孔によるクヌーセン拡散に起因するからであ
ると考えられる。
【0055】実施例4 本発明による膜密着性の改善の効果を見るため、実施例
1と同様の方法で微細突起基板を作製し、Pt陰極膜を
形成した。この上に固体電解質膜をスパッタリング法に
より成膜する工程において、固体電解質膜の剥離に対す
る基板温度及びスパッタ電力の影響を調べた。
【0056】表1に本発明品(実施例4)と従来品(微
細突起薄膜5を有さない以外同じ積層構造を有する)と
の比較結果を示す。
【0057】
【0058】表1から明らかなように、従来品は、限ら
れた条件でしか正常な膜は得られないが、本発明品で
は、すべての条件で密着性の良い膜が得られている。
【0059】
【発明の効果】以上の構成を有する本発明は以下の効果
を有する。
【0060】基板とその上に積層される電極膜及び固
体電解質膜との密着性が格段に向上している。
【0061】基板上に形成されるアルミニウムの薄膜
の厚さを変えるだけで、その上に成膜される電極及び固
体電解質膜の多孔度及び細孔径をコントロールすること
ができるので、限界電流値を精度良く制御することが可
能となる。この場合、スパッタリング条件が多少変動し
ても、ガス拡散律速層の多孔度に影響を与えないので、
成膜工程の管理が容易にである。
【0062】このような特徴を有する本発明の酸素セン
サ素子は、一般家庭用のルームモニタから、工業用の酸
欠モニタ、酸素濃度制御用の酸素濃度検知装置等に幅広
く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による酸素センサ素子を示す
概略断面図である。
【図2】図1に示す酸素センサ素子の酸素検知原理を説
明する模式図である。
【図3】実施例1における印加電圧と出力電流値の関係
を示すグラフである。
【図4】アルミニウム薄膜の膜厚と限界電流値との関係
を示すグラフである。
【図5】本発明の限界電流式酸素センサ素子における酸
素濃度と限界電流値との関係を示すグラフである。
【図6】従来の限界電流式ガス検知素子の一例を示す概
略断面図である。
【図7】従来の限界電流式ガス検知素子のもう一つの例
を示す概略断面図である。
【図8】従来の限界電流式ガス検知素子の別な例を示す
概略断面図である。
【図9】特願平3−155205号の限界電流式ガス検
知素子を示す概略断面である。
【図10】図9に示す酸素センサ素子の酸素検知原理を
説明する模式図である。
【符号の説明】
1 酸素センサ素子 2 緻密な絶縁性基板 3a、3b 電極 4 固体電解質薄膜 5 微細突起アルミナ薄膜 6 ヒータ

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 限界電流式の酸素センサ素子において、
    緻密な絶縁性基板の一方の面上に微細な突起が形成され
    ており、その上に、多孔質の薄膜状陰極と、酸素イオン
    伝導性を有するとともに酸素ガスが拡散しうる多孔質の
    固体電解質薄膜と、酸素ガスが拡散しうる多孔質の薄膜
    状陽極とが順に積層されていることを特徴とする酸素セ
    ンサ素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の酸素センサ素子におい
    て、前記緻密な絶縁性基板がアルミナ製であり、前記絶
    縁性基板上に微細な突起を有するアルミナの薄膜が形成
    されていることを特徴とする酸素センサ素子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の酸素センサ素子
    において、前記基板の他方の面上にヒータが形成されて
    いることを特徴とする酸素センサ素子。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の酸素センサ素子を製造
    する方法において、緻密な絶縁性基板の一方の面上にア
    ルミニウムの薄膜を形成し、それを温水処理することに
    より得られる微細突起を有するベーマイト薄膜を酸化性
    雰囲気中で焼成し、アルミナの微細突起薄膜とすること
    を特徴とする方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の酸素センサ素子を製造
    する方法において、前記絶縁性基板として、アルミナを
    使用することを特徴とする方法。
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