JP3840107B2 - 酸素センサ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺状の固体電解質基板の両主面に一対の電極を形成してなるセンサ部と、絶縁体中に発熱抵抗体を埋設してなるヒータ部を備えた酸素センサ素子に関し、特に早期起動と耐久性の改良に関する。
【0002】
【従来技術】
現在、自動車等の内燃機関においては、排出ガス中の酸素濃度を検出して、その検出値に基づいて内燃機関に供給する空気および燃料供給量を制御することにより、内燃機関からの有害物質、例えばCO、HC、NOxを低減させる方法が採用されている。
【0003】
このような酸素濃度を検出する酸素センサとして、図5に示すように酸素イオン導電性を有するジルコニアを主分とする固体電解質101に一対の白金電極102、103を形成し、固体電解質101内部にPt等の発熱抵抗体104を埋設した薄いセラミック絶縁層105からなるヒータ106を一体化した酸素センサ素子が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようなヒータ106を焼成一体化した図5の酸素センサ素子では、セラミック絶縁層105に用いるアルミナ等の絶縁材料とジルコニアからなる固体電解質101が、本質的に熱膨張率が異なるため、発熱抵抗体104に12Vを付与し白金電極面102を加熱する際、急激な昇温においてはセラミック絶縁層105と固体電解質101の界面から固体電解質101の外表面に向かってクラックが発生するという問題があった。そのため、発熱抵抗体104の昇温曲線を緩やかに上昇させる必要があり、その結果、センサの起動が遅いという欠点があった。
【0005】
また、従来の酸素センサ素子においては、通常、電極表面の温度分布としては、電極全面を均一に活性化させるために飽和状態で電極全体の温度差が小さくなるように設計されている。この点をさらに詳述するため、典型的な酸素センサ素子に対して、ガス気流のない大気中で、発熱抵抗体104に12Vの電圧を印加したときの白金電極102表面における昇温速度の測定結果を図6に示す。
【0006】
図6においては、電極102における電極先端部Aでの昇温曲線を実線Aで、また電極後端部Bでの昇温曲線を実線Bで示している。この図6に示すように、電極先端部Aおよび電極後端部Bの各部位が650℃に達する時間t1、t2は、せいぜいt1が25秒、t2が40秒であり、A−B間では25秒から40秒間で650℃に達することが推測できる。また、40秒経過後のAとBとの温度差Tは50℃程度と小さくなるように設定されている。
【0007】
エンジンにおいて、酸素センサを排気管に設置するとき、エンジンの始動直後は低温の排気ガス気流により、センサ表面温度が大気中での表面温度に比べ、150℃〜200℃、もしくはそれ以上低下するのが一般的であり、このためセンサを早期起動(活性化)するにはt1、t2をより小さくする必要があるが、従来のセンサ素子においては、t1,t2を上記よりも小さくするのも限界であり、これ以上の早期起動を図ることは非常に困難であった。
【0008】
従って、本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、電極の所定の温度到達までの時間を短縮し、活性化を向上させ早期起動が可能で、耐久性に優れた酸素センサ素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題について検討した結果、長尺状の固体電解質基板の先端付近における対向する両主面に測定電極および基準電極を形成してなるセンサ部と、該センサ部に対向する位置に配置された発熱抵抗体を絶縁体中に内蔵するヒータ部とを具備する酸素センサ素子において、前記発熱抵抗体がW−Moを主成分とし、該発熱抵抗体のシート抵抗が0.005〜0.03Ω/□の範囲にあることによって、センサ部の一部が急速加熱し、ネルンスト起電力を好適に発現せしめ、これまでにない活性化までの時間の短縮によって早期起動が可能となるとともに、優れた耐久性が得られることを見出した。
【0011】
また、前記発熱抵抗体の断面部における最大径が2μm以上のボイド数が発熱抵抗体の断面0.004mm2あたり5個以下であることが望ましい。これは、ボイドの存在によって発熱抵抗体の使用時の酸化による劣化が生じるためで、発熱抵抗体中にボイドが多量に存在すると、酸化による劣化を受けヒータの耐久性が低下するためである。
【0012】
また、かかるセンサ素子においては、長尺状の固体電解質基板の先端付近における対向する両主面に一対の電極を形成してなるセンサ部を備えたセンサ基板と、長尺状の絶縁体の先端付近に発熱抵抗体を埋設してなるヒータ部を具備するヒータ基板とを積層一体化してなることによって、センサ部と発熱抵抗体を埋設する絶縁体との熱膨張差に起因する応力の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0013】
また、上記の構造の場合、前記センサ基板と前記ヒータ基板とは、前記センサ部およびヒータ部を除く領域で、無機接着材によって接合されてなることが耐久性を高める上で好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸素センサ素子の一例を図1に示す。この酸素センサ素子は、センサ基板1とヒータ基板2とから構成されている。
【0015】
センサ基板1は、一端が封止された大気導入孔3aを有する長尺で平板形状の固体電解質基板3と、該基板の一端側近傍における一方の外表面に排気ガスなどの被測定ガスと接触する測定電極5を、該測定電極5と対向する前記大気導入孔3a側内面に大気などの基準ガスと接触する基準電極4を有するセンサ部11とが形成されている。
【0016】
基準電極4および測定電極5はいずれも多孔質の白金電極からなることが望ましく、排気ガスによる電極の被毒を防止する観点から、測定電極5表面には電極保護層として、セラミック多孔質層6が形成されている。
【0017】
一方、ヒータ基板2は、上記のセンサ基板1と同様に、平板形状を有しており、セラミック絶縁体7中には、発熱抵抗体8が埋設され、ヒータ部12を形成している。また、セラミック絶縁体7内には、発熱抵抗体8に接続するリード部(図示せず)が埋設、形成されている。
【0018】
図1の本発明の酸素センサ素子においては、発熱抵抗体8に12Vの電圧を印加付与し、ヒータ部12、続いてセンサ部11が加熱されるとき、測定電極5の表面において電極先端部Aの昇温速度が最も早く、その表面温度が650℃に至るまでの所要時間t1を12秒以下とすることにより、電極先端部Aの直下近傍のセンサ部11の内部抵抗が効果的に低下し、ネルンスト起電力、すなわちセンサ出力が好適に発現する。
また、測定電極後端部の表面温度が650℃に至るまでの所要時間t2が22秒以下であることが望ましい。測定電極先端部の昇温時間が早く、測定電極後端部の昇温時間が遅ければヒータ部の先端発熱による熱応力により、ヒータの信頼性が著しく損なわれてしまうおそれがある。このためセンサ電極後端部の昇温時間もある程度早くするのがよい。
【0019】
ここで、到達温度を650℃とした理由は次の通りである。
理論空燃比センサ素子がエンジンの排気管に取り付けられた場合には、前述のようなエンジンの冷却を加味して、測定電極5の直下のセンサ部11の実効温度が約350℃〜400℃であれば起動には十分である。ところが、大気中で測定する場合、電極先端部Aと電極後端部Bの温度が、約350℃〜400℃の温度に到達する時間を測定すると、ヒータ部12が急激に加熱されているときなのでA、B点の測定値に対し、測定ばらつきが大きくデータの再現性にも乏しい。これに対して、650℃付近では、ヒータ部12の温度が飽和温度に移行する比較的緩やかな時期であるために、ばらつきが発生しにくく、再現性にも優れていることによる。
【0020】
そこで、酸素センサ素子の測定電極5の電極先端部Aの650℃到達時間t1と、該センサ素子のエンジン試験にて得られる活性化時間Sから、図2の相関関係を得た。図2において、t1=25秒の点は、図7に示した従来のセンサ素子のデータである。t1が早いほど、エンジン環境下での活性化時間Sも迅速になることが明確である。今後の排気ガス規制などをクリアする上でも、センサ素子がエンジン環境下での活性化時間は、おおむね10秒以下であることが要求されていることから、図2の結果からt1は12秒以下が必要であることがわかる。
【0021】
また、後述する実施例の結果から、t1が12秒以下であるとき、常にt2が22秒以下となる。即ち、このことは活性化に当たって、電極内での温度の均一化は必ずしも必要ではなく、少なくとも電極先端部Aにおける急速昇温化が最も重要であるという知見による。
【0022】
本発明においては、このような安定した昇温特性を形成するための要件として、発熱抵抗体8の材質と、そのシート抵抗が大きな要素であることに着目し検討した結果、発熱抵抗体8は、W−Moを主成分とすること、また発熱抵抗体のシート抵抗が0.005〜0.03Ω/□であることが重要である。
【0023】
一般に、発熱抵抗体にはW、Mo、W−Re等が用いられるが、本発明に基づき、金属成分をW−Moの混合系を主成分とすることによって、抵抗体組織が緻密化され急速昇温に対して熱応力の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0024】
特に、WとMoとの混合比率によってシート抵抗などを調整することが可能であり、W:Moは、10:90〜90:10、特に30:70〜70:30の比率で配合される。また、この発熱抵抗体8には、W−Mo以外に、セラミック絶縁体7と同組成のセラミック成分を上記金属成分100質量部あたり、3〜15質量部の割合で添加して抵抗を制御することもできる。
【0025】
また、該発熱抵抗体のシート抵抗を0.005〜0.03Ω/□とすることにより、発熱抵抗体の初期抵抗値を小さくすることが可能となり、急速昇温に適したヒータ基板を得られる。
【0026】
これに対して、発熱抵抗体における金属成分がWからなるヒータではt1が12秒以下の急速昇温に耐えられず、W−Reからなるヒータでは、シート抵抗が高く、本発明には適さない。
【0027】
なお、上記図1の酸素センサ素子においては、ヒータ部12は、ヒータ基板2として別に形成されているが、このヒータ部12は、アルミナセラミックスなどの絶縁体7中に発熱抵抗体8を埋設したものをセンサ部11が形成された固体電解質基板2の内部または表面に同時焼成によって一体化したり、積層面全面を接着材で接着することもできる。しかし、センサ素子の耐久性の点では、図1に示したように、センサ部とヒータ部とをそれぞれ別体として形成し、それらの一部を無機系の接着剤で接合固定することが望ましい。この構造によれば、熱膨張差が異なる場合においても、両者の接合面が互いにフリーとなっているために、焼成時や昇温時に発生する熱膨張差に起因する応力によってクラックや剥離が発生するのを防止することができる。
【0028】
そこで、図1の酸素センサ素子についてさらに詳細に説明する。図1のセンサ素子では、センサ基板1とヒータ基板2のセンサ部11及びヒータ部12が形成された部分以外の部分で両基板をガラス接合層9を介して接合固定されている。それによってヒータ部による熱が接合部に直接付与されることを防止するとともに接合部の温度が高くなるの防止することもできる。
【0029】
また、センサ基板1およびヒータ基板2を接合しているガラス接合層9の厚みvは0.05〜0.5mm、特に0.1〜0.4mmであることが望ましく、厚みvが0.05mmよりも小さいと接合力が小さく、また、0.5mmよりも大きいと、センサ部11とヒータ部12を形成した部分での両基板の隙間が大きくなり加熱効率が低下し、また、センサ基板1とヒータ基板2との熱膨張差によってガラス接合層9にクラックが発生しやすくなる。
【0030】
さらに、ガラス接合層9の長手方向の長さmは、センサ基板1、ヒータ基板2の全長の0.2〜0.8倍、特に0.3〜0.7倍であることが望ましい。このmが0.2倍よりも小さいと、接合固定力が不十分となり外れやすく、0.8倍よりも長いと、熱膨張差に起因する応力が大きくなり、クラック等が発生しやすくなる。
【0031】
特に、固体電解質基板がジルコニアを主成分とするセラミックスからなり、ヒータ基板2のセラミック絶縁基板7が、Al2O3を主成分とするセラミックスからなり、前記発熱抵抗体が、W−Moの導体からなる場合において、この構造体の熱膨張差に起因する応力を低減し、繰り返し熱サイクルに対する耐久性を高める上で、接合層を形成するガラスの室温〜600℃の熱膨張係数が9〜11×10-6/℃であることが望ましい。特に、このようなガラスとしては、BaOを45〜56重量%、SiO2を36〜45重量%、Al2O3およびZrO2を0.1〜20重量%の割合で含有するバリウム珪酸系ガラスであることが好適である。このガラスは、結晶化ガラスであり、2BaO・SiO2の結晶を生成する。また、Al2O3およびZrO2の組成比および添加量を調整することにより、熱膨張率を9〜11×10-6/℃の範囲に調整することができる。
【0032】
また、本発明においては、センサ部11を効率良く加熱するために、発熱抵抗体8からヒータ基板2表面までの厚さSが100〜600μmであることが好ましい。この厚さSが100μmより薄いとヒータ基板2の耐熱性、耐熱衝撃性が悪くなり、また、厚さSが600μmを超えるとヒータ基板2からセンサ部11への熱の伝達が悪くなり、その結果、センサ素子のガス応答性が低下する傾向があるからである。発熱抵抗体8からヒータ基板2表面までの厚さSとしては、特に200〜400μmが望ましい。
【0033】
また、センサ基板1の全体厚さt1としては、酸素センサ素子の強度と熱伝達の観点から0.6〜1.5mm、特に0.8〜1.2mmの大きさが好ましい。また、ヒータ基板2の全体厚さt2としては0.7〜2mm、特に1〜1.5mmが強度の観点から好ましい。ヒータ基板2の厚さt2が0.7mmより薄くなると基板の強度が低くなり、2mmを超えるとヒータ基板2およびそれに隣接するセンサ基板1を加熱するため大きな電気量が必要になるためである。
【0034】
図1の酸素センサ素子において用いられる固体電解質基板3は、ZrO2を含有するセラミックスからなり、安定化剤として、Y2O3およびYb2O3、Sc2O3、Sm2O3、Nd2O3、Dy2O3等の希土類酸化物を酸化物換算で1〜30モル%、好ましくは3〜15モル%含有する部分安定化ZrO2あるいは安定化ZrO2が用いられている。また、ZrO2中のZrを1〜20原子%をCeで置換したZrO2を用いることにより、イオン導電性が大きくなり、応答性がさらに改善されるといった効果がある。さらに、焼結性を改善する目的で、上記ZrO2に対して、Al2O3やSiO2を添加含有させることができるが、多量に含有させると、高温におけるクリープ特性が悪くなることから、Al2O3およびSiO2の添加量は総量で5重量%以下、特に2重量%以下であることが望ましい。
【0035】
固体電解質基板3の表面に被着形成される基準電極4、測定電極5は、いずれも白金、あるいは白金と、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金の群から選ばれる1種との合金が用いられる。また、センサ動作時の電極中の金属の粒成長を防止する目的と、応答性に係わる金属粒子と固体電解質と気体との、いわゆる3相界面の接点を増大する目的で、上述のセラミック固体電解質成分を1〜50体積%、特に10〜30体積%の割合で上記電極中に混合してもよい。また、電極形状としては、四角形でも楕円形でもよい。また、電極の厚さは、3〜20μm、特に5〜10μmが好ましい。
【0036】
一方、発熱抵抗体8を埋設するセラミック絶縁体7としては、アルミナセラミックスからなる相対密度が80%以上、開気孔率が5%以下の緻密質なセラミックスによって構成されていることが望ましく、焼結性を改善する目的でMg、Ca、Siを酸化物換算による総和で1〜10質量%含有していてもよいが、Na、K等のアルカリ金属は、マイグレーションしてヒータ基板2の電気絶縁性を悪くするため酸化物換算で0.1質量%以下に制御することが望ましい。また、相対密度を上記の範囲とすることによって、基板強度が高くなる結果、酸素センサ自体の機械的な強度を高めることができるためである。
【0037】
また、測定電極5の表面に形成されるセラミック多孔質層6は、厚さ10〜800μmで、気孔率が10〜50%のジルコニア、アルミナ、γ−アルミナおよびスピネルの群から選ばれる少なくとも1種によって形成されていることが望ましい。この多孔質層6の厚さが10μmより薄いか、あるいは気孔率が50%を超えると、電極被毒物質P、Si等が容易に電極に達して電極性能が低下する。それに対して、多孔質層6の厚さが800μmを超えるか、あるいは気孔率が10%より小さくなるとガスの多孔質層6中の拡散速度が遅くなり、電極のガス応答性が悪くなる。特に、多孔質層6の厚さとしては気孔率にもよるが100〜500μmが適当である。
【0038】
ヒータ基板2における絶縁体7中に埋設される発熱抵抗体8は、前述した通り、耐熱性と熱応力による信頼性から金属成分がW−Moを主成分、即ち50質量%以上含有するものであり、WとMoの比率によって発熱抵抗体8のシート抵抗を調整すればよい。また、発熱抵抗体8には、リード部(図示せず)によって電力供給されるが、この場合、発熱抵抗体8の抵抗H1とリード部の抵抗H2の抵抗比は室温において、H1/H2が9以上となるように制御することが好ましい。H1/H2を9以上とすることにより、発熱抵抗体がリード部に比べて集中的に電力を消費するようになるので、昇温特性が向上し、t1、t2を上記の条件に効果的に設定できる。
【0039】
なお、ヒータ基板2における発熱抵抗体8の発熱パターンとしては、後述する図3に示されるようなミアンダ構造のみならず、長手方向に伸び、長手方向の端部で折り返した構造であってもよい。
【0040】
次に、本発明の酸素センサの製造方法について、図1の酸素センサの製造方法を図3の分解斜視図をもとに説明する。
【0041】
まず、センサ基板1の作製方法について説明する。まず、ジルコニアのグリーンシート20を作製する。このグリーンシート20は、ジルコニアの酸素イオン導電性を有するセラミック固体電解質粉末に対して、適宜、成型用有機バインダーを添加してドクターブレード法や、押出成形、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス成型などの周知の方法により作成される。次にグリーンシート20の両面に、それぞれ測定電極5および基準電極4となるパターン21やリードパターン22などを例えば、白金を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で印刷形成する。なお、この時に測定電極5となるパターンの表面に、多孔質層6となるパターン30を多孔質スラリーを用いて印刷塗布形成してもよい。さらには、測定電極5を形成するパターン21に接続するリードパターン22上には、リード保護層としてパターン31を印刷塗布形成してもよい。
【0042】
次に、上記パターン21、22を印刷したグリーンシート20に対して、大気導入孔23を形成したグリーンシート24、さらにグリーンシート25を、ジルコニア粉末を添加または無添加のアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させるか、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着することによりセンサ基板の積層体を作製する。その後、このセンサ基板用の積層体を大気中または不活性ガス雰囲気中、1300℃〜1500℃の温度範囲で1〜10時間焼成することによってセンサ基板を作製することができる。
【0043】
次に、ヒータ基板2の作製法について説明する。アルミナ組成物に、適宜、成形用有機バインダーを添加してドクターブレード法や、押出成形や、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス形成などの周知の方法によりアルミナグリーンシート26、27を作製する。そして、図3に示すようにグリーンシート27の表面に、W−Moからなる導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で発熱抵抗体28や、Wからなる導電性ペーストを用いてリード部29を印刷塗布した後、アルミナ組成物粉末を添加または無添加のアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させてグリ−ンシート26、27を接着させるか、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着することによりヒータ基板の積層体を作製し、これを発熱抵抗体8の酸化を防止する観点から水素等と含有するフォーミング等の還元ガス雰囲気中、1400℃〜1600℃の温度範囲で5〜10時間焼成することによってヒータ基板2を作製することができる。
【0044】
この後、別体で作製した上記センサ基板1とヒータ基板2とを位置合わせして積層し、ガラスなどの無機接着剤によって接合固定することによって、本発明の酸素センサを作製することができる。
【0045】
【実施例】
図1に示す酸素センサを図3に基づき、以下のようにして作製した。まず、市販のSi、Mg、Caを5重量%含むアルミナ粉末と、Siを1.1重量%含む5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末と、8モル%のイットリアからなるジルコニア粉末を30体積%含有する白金粉末ペーストと、W粉末ペーストおよび5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末と0.2〜1μmの樹脂ビーズからなるセラミック多孔質層ペースト、5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末ペーストをそれぞれ準備した。
【0046】
まず、5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末にポリビニルアルコール溶液を添加して坏土を作製し、押出成形により焼結後厚さが0.4mmになるようにジルコニアのグリーンシート20を作製した。その後、グリーンシート20の両面にジルコニア粉末を含有する白金粉末ペーストをスクリーン印刷して、測定電極と基準電極のパターン21、リードパターン22、さらに測定電極21上には測定電極21を埋設するようにセラミック多孔質層のパターン30、また測定電極21に接続するリードパターン22上には5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末ペーストを用いてリード被覆層のパターン31をそれぞれ印刷形成した後、大気導入孔23を形成したグリーンシート24およびグリーンシート25を5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末をアクリル樹脂と混合したセラミック密着剤により積層した。その後、この積層体を大気中1500℃で1時間焼成して、全長が55mmのセンサ基板を作製した。
【0047】
なお、測定電極、および基準電極の長手方向の長さaについては、いずれも8mmとした。
【0048】
一方、アルミナ粉末にポリビニルアルコール溶液を添加して坏土を作製し、厚さが焼成後0.5mmの厚さに成るように押出し成形で種々アルミナのグリーンシート26、27を作製した。このグリーンシート27に、所定の位置、所定の長さの発熱抵抗体8となるべく、シート抵抗0.005〜0.03Ω/□(以下、□は配線幅の二乗)のW−Mo粉末ペースト、シート抵抗が0.008Ω/□のW粉末ペースト、シート抵抗が0.06Ω/□のW−Re粉末ペーストを約20〜30μmの厚さでスクリーン印刷した。なお、発熱抵抗体8の長手方向の設置位置は、最終的に前記センサ基板とヒータ基板を無機接着材で固定した時、前記センサ基板の測定電極21の先端部を基点とし、測定電極の長さと同じ長さとした。
【0049】
該グリーンシート27は、発熱抵抗体を埋設するように、グリーンシート26を、アルミナ粉末をアクリル樹脂と混合したセラミック密着剤を用いて積層され、ヒータ基板のグリーン積層体を形成した。このグリーン積層体を1500℃、10時間、水素を10%含む窒素ガス中で焼成し、全長が55mmのヒータ基板を作製した。この時、発熱抵抗体の抵抗は、室温で1.92〜4.3Ωであった。
【0050】
この後、センサ基板およびヒータ基板のリード側端部に、長さ20mmでSiO240重量%、BaO51重量%、Al2O33.5重量%、ZrO25.5重量%の組成からなる室温〜600℃の熱膨張係数が10×10-6/℃のバリウム珪酸ガラスを配置し、1000℃で加熱して、センサ基板とヒータ基板とを接合固定した。なお、ガラス接合層の厚みは0.16mmとした。
【0051】
このようにして得られた各酸素センサにおいて、セラミック多孔質層30の表面のうち、測定電極21の電極先端部と電極後端部に相当する部位にφ0.1mmの熱電対を取り付け、発熱抵抗体28を通電加熱するべく直流12Vを印加した時の各部位の650℃到達時間t1、t2、t3を測定した。いずれも測定結果を表1に示す。
【0052】
なお、表1中の試料No.6について昇温曲線を図4に示した。
【0053】
また、耐久試験として、それぞれの試料に最高発熱部の温度が1100℃になるような電圧を印加して、1100℃で連続5000時間発熱させた後の抵抗変化を測定し、初期抵抗からの変化が5%以下のものを○、5〜10%のものを△、10%よりも大きいものを×とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から、発熱抵抗体組成がWである試料No.1はヒータの耐久性が劣ることが判明した。また、発熱抵抗体組成がW−Reからなる試料No.9では、シート抵抗が0.06Ω/□であるため、発熱抵抗体28の電力密度(入力電力量の発熱抵抗体面積比)が大幅に低下し、その結果、t1およびt2が非常に遅い結果を生じた。
【0056】
これに対して、発熱抵抗体のシート抵抗が0.005〜0.03Ω/□である試料、すなわちNo.3〜7はt1が12秒以下で、さらにはt2が22秒以下であり、センサ部の活性化が早いことが判った。
【0057】
また、本発明の範囲内において、センサ基板加熱用のヒータ基板のヒータ耐久性のバラツキがあり、これらのヒータ基板を調査分析した結果、発熱抵抗体中のボイドが起因していることが判明した。そこで、表1のNo.3の酸素センサにおいて、発熱抵抗体のボイドの分布を調査しボイド数を数えた。測定では、前記発熱抵抗体の断面部の走査型電子顕微鏡写真から、ルーゼックス画像解析によって各ボイドの最大径をもとめ、発熱抵抗体の断面0.004mm2あたりのボイドの分布を調べた。
【0058】
【表2】
【0059】
表2の結果からヒータ基板における最大径が2μm以上のボイド数が発熱抵抗体の断面0.004mm2あたり5個以下である場合、発熱抵抗体の耐久性が優れていることがわかった。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、固体電解質の対向する両主面に一対の電極を形成してなるセンサ部と、前記センサ部を加熱するための発熱抵抗体を絶縁層中に内蔵するヒータ部を有する酸素センサ素子において、前記発熱抵抗体に12Vの電圧を印加直後における前記センサ部の電極先端部の昇温速度が最も早く、その表面温度が650℃に至るまでの所要時間t1が12秒以下とすることにより、測定電極の表面の一部を急速に加熱する、言い換えれば、センサ部の一部を急速に加熱することで、ネルンスト起電力を好適に発現せしめ、早期の起動性に優れ、且つ耐久性に優れた酸素センサ素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセンサ素子の一例を説明するための概略断面図である。
【図2】図1のセンサ素子の電極先端部が650℃に到達する時間と、エンジン中でのセンサ素子の起動時間の関係を説明するための図である。
【図3】図1のセンサ素子を製造する方法を説明するための分解斜視図である。
【図4】実施例における試料No.4の酸素センサ素子の昇温曲線を示す。
【図5】従来のセンサ素子の一例を示す概略断面図である。
【図6】従来のセンサ素子の電極表面での昇温速度を説明するための図である。
【符号の説明】
1 センサ基板
2 ヒータ基板
3 固体電解質基板
4 基準電極
5 測定電極
7 セラミック絶縁体
8 発熱抵抗体
9 ガラス接合層
11 センサ部
12 ヒータ部
Claims (2)
- 長尺状の固体電解質基板の先端付近における対向する両主面に測定電極および基準電極を形成してなるセンサ部と、該センサ部に対向する位置に配置された発熱抵抗体を絶縁体中に内蔵するヒータ部とを具備する酸素センサ素子において、前記発熱抵抗体がW−Moを主成分とし、該発熱抵抗体のシート抵抗が0.005〜0.03Ω/□の範囲にあること特徴とする酸素センサ素子。
- 前記発熱抵抗体の断面部における最大径が2μm以上のボイド数が、発熱抵抗体の断面0.004mm2あたり5個以下であることを特徴とする請求項1記載の酸素センサ素子。
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