JP3871917B2 - チップ型電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チップ型電子部品の製造方法に関し、特に、抵抗膜や電極膜などの電気的機能要素が形成された絶縁シートを、その上面及び裏面に形成された各分割溝に沿って分割することによってチップ型に成形されてなる、抵抗器やコンデンサなどの電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のチップ型電子部品のうち、チップ型抵抗器は次のように製造されている。
まず、図5にその様子を示すように、焼結後の絶縁シート1を、一方の面を上にしてパイロットピンなどの固定治具2によって固定する。次に、同図に示すように、絶縁シート1の側縁又は予め絶縁シート1に形成された孔(図示せず)を基準にして位置決めを行い、レーザ光により格子状の上面分割溝3を形成する。次に、図示しないが、絶縁シート1を裏返した状態で固定治具2により固定し、絶縁シート1の裏面の上面分割溝3に対向した位置にレーザ光により格子状の裏面分割溝4を形成する。ここでの位置決めは上述した上面分割溝3の場合と同様に、絶縁シート1の側縁又は予め絶縁シート1に形成された孔(図示せず)を基準にして行う。次に、絶縁シート1に抵抗膜や電極膜などの電気的機能要素を形成した後、上面分割溝3及び裏面分割溝4に沿った分割を行い、図5の斜線範囲1aを単位として区画された大きさのチップ型抵抗器が完成する。なお、その他のチップ型電子部品もこれとほぼ同様な工程を経て完成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法では、絶縁シート1を固定してレーザ光により分割溝3、4を形成する際に、固定治具2の機械的な位置合わせ誤差(図5参照)、又は絶縁シート1の寸法精度誤差に起因して、絶縁シート1の表裏に対向する分割溝3、4間で水平方向にズレが生じていた(図6参照)。このズレは一般的に約20μm以上と大きいため、分割時においてチップ基板1の端面において欠け(図7参照)やひびが生じやすく、分割精度は著しく低いものであった。このことは、製品歩留や実装歩留の低下を招き、コスト性を引き上げる原因になっていた。
【0004】
本発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、分割精度が良好で、製品歩留及び実装歩留がともに高く、コスト性に優れたチップ型電子部品の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、焼成後の絶縁シートを治具に固定してその上面に格子状の上面分割溝をレーザ光によって形成する工程と、前記絶縁シートを裏返して前記治具に固定し、その上面に前記上面分割溝に対向するように格子状の裏面分割溝をレーザ光によって形成する工程と、前記上面分割溝及び裏面分割溝が形成された前記絶縁シートに電気的機能要素を形成するとともに、前記上面分割溝及び裏面分割溝に沿ってチップ形状に分割する工程と、を含むチップ型電子部品の製造方法において、前記上面分割溝を形成する工程の前後に、前記上面分割溝と同一平面上の所定位置に少なくとも2以上の位置認識マークを形成し、前記裏面分割溝を形成する工程に先立って、前記位置認識マークを画像認識するとともに、前記位置認識マークに対する前記上面分割溝の相対的な位置関係を演算によって明らかにし、この位置関係に基づいて前記裏面分割溝の形成位置を決定するようにしたこと、を特徴とするチップ型電子部品の製造方法とした。
【0006】
上記のように、焼結後の絶縁シートを用いることにより、焼結時の絶縁シート収縮などにより発生する分割溝のゆがみを回避できるとともに、印刷ズレも抑制されるので、分割溝の分割精度が良好となり、生産歩留を向上させることができる。
また、画像認識された前記位置認識マークに対する前記上面分割溝の相対的な位置関係を演算によって明らかにし、この位置関係に基づいて前記裏面分割溝の形成位置を決定するようにしたので、絶縁シートを固定するための固定治具の精度、又は絶縁シートの寸法精度の如何にかかわらず、絶縁シート上面及び裏面に形成された各分割溝間のズレを少なくでき、分割精度の向上が図れる。具体的には、従来技術で約20μm以上あったズレを、約10μm以下とすることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のチップ型電子部品の製造方法において、前記位置認識マークは、前記絶縁シートの四隅、又は前記絶縁シートの対角、又は前記絶縁シートの片辺に形成されていることを特徴としている。これにより、固定治具に起因する位置合わせ誤差の修正範囲が広くなる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のチップ型電子部品の製造方法において、前記上面分割溝及び前記裏面分割溝のそれぞれの深さは、一方が他方よりも深く形成されていることを特徴としている。これにより、絶縁シート分割時における欠けやひびの発生が抑えられ、分割精度が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をチップ型抵抗器の製造に適用した場合の一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、絶縁シート1の上面に形成された上面分割溝3及び位置認識マークの態様を示した平面図である。すなわち、まず焼結形成されたアルミナセラミックなどの絶縁シート1を用意し、その一方の面を上にしてパイロットピンなどの固定治具2により絶縁シート1を固定する。
【0011】
次に、絶縁シート1の側縁や角又は孔などを基準にして、上面分割溝3を形成するための始点と方向を決定し、これらの条件及び予め設定された格子間隔の条件に従って、直交する2方向にレーザ光を走査し、格子状の上面分割溝3を形成する。
【0012】
次に、十字形状の位置認識マーク5を、絶縁シート1の四隅に形成する。
なお、本実施形態では、画像認識の容易さから、位置認識マーク5の形状を十字形状としたが、この形状に限るものではなく、正確な認識が可能であるなら、微小な丸などの形状でもよい。また、本実施形態では、固定治具に起因する位置合わせ誤差の修正範囲が広ことから、位置認識マーク5の形成位置を絶縁シート1の四隅としたが、この位置に限るものではなく、絶縁シート1の対角や片辺に2つ形成するようにしても良い。
【0013】
次に、図示しないが、絶縁シート1を裏返した後、固定治具2により絶縁シート1を固定する。このとき、絶縁シート1の側縁又は予め絶縁シート1に形成された孔を基準に裏面分割溝4を形成するための始点又は方向を決定して次工程につなげても良いし、実質的にこれらと同じ作業を次工程に含ませても良い。
【0014】
次に、図2に示すように、CCDカメラなどを備えた画像認識手段6によって位置認識マーク5を画像認識するとともに、所定の演算手段によって位置認識マーク5に対する上面分割溝3の相対的な位置関係を明らかにし、この位置関係に基づいて裏面分割溝4の形成位置を決定し、上面分割溝3と同様に、直交する2方向にレーザ光を走査して格子状の裏面分割溝4を形成する。
ここで、直前の工程において、絶縁シート1の側縁又は孔によって裏面分割溝4の始点又は方向を決定した場合は、これらと前記相対的な位置関係との差異を勘案して前記始点又は方向を修正する。
【0015】
次に、図4にチップ型抵抗器単体での態様を示すように、絶縁シート1の上面分割溝3又は裏面分割溝4をまたぐようにして上面電極膜7を形成する。この上面電極膜7は導電性ペーストを印刷・焼成することによって得られる。
【0016】
次に、図4にチップ型抵抗器単体での態様を示すように、対向する上面電極膜7を接続するようにして抵抗膜8を形成する。この抵抗膜8は抵抗ペーストを印刷・焼成することによって得られる。
【0017】
次に、図示しないが、前記抵抗膜の抵抗値を調整するためのトリミング溝を、レーザにより刻設し、上面電極膜7の一部と抵抗膜8を被覆するように保護膜を形成する。この保護膜は、硼珪酸鉛ガラスを印刷・焼成、又は樹脂を硬化して得られる。なお、図示しないが、上面電極膜7に重ねて、もう一層、上面電極膜を重ねて形成してもよい。
【0018】
次に、図4にチップ型抵抗器単体での態様を示すように、絶縁シート1を上面分割溝3及び裏面分割溝4によって規定される一方の方向に沿って短冊状に分割した後、導電性材料によって、塗布・焼成、塗布・硬化、スパッタ等で端面電極(図示せず)を形成し、さらに、その短冊状の絶縁シート1を他方の方向の分割溝に沿ってチップ状に分割した後、端面電極の露出部などを覆うようにめっき膜(図示せず)を形成し、図1の斜線範囲1aを単位として区画された大きさのチップ型抵抗器が完成する。
【0019】
以上のようにチップ型抵抗器を製造することにより、絶縁シート1を固定するための固定治具2の精度、又は絶縁シート1の寸法精度の如何にかかわらず、絶縁シート1上面及び裏面に形成された分割溝3−4間のズレを少なくでき、分割精度の向上が図れる。具体的には、従来技術で約20μm以上あったズレを、約10μm以下とすることができる。
【0020】
なお、上面分割溝3及び裏面分割溝4のそれぞれの深さは、製造するチップ部品のサイズにより異なるが、例えば、厚さ約0.2mmの0603サイズチップ部品用では、一方の面の分割溝Lを約50μm、他方の面の分割溝Sを約25μmとするのが好ましい。これらの態様を図3に示す。
このように一方を他方よりも深く形成することとしたのは、両者を等しく形成するよりも絶縁シート1の分割時における欠けやひびの発生が抑えられ、分割精度が向上するからである。
【0021】
また、上面分割溝3及び裏面分割溝4のそれぞれの格子間隔は、製造するチップ部品サイズにより異なるが、例えば、1005サイズチップ部品用では、短辺を約0.5mm以下、長辺を約1.0mm以下とするのが好ましく、0603サイズチップ部品用では、短辺を約0.6mm以下、長辺を約0.3mm以下とするのが好ましい。上記格子による区画単位を図1の斜線範囲1aで示す。
【0022】
上記の実施形態はチップ型抵抗器の製造に適用した場合であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばチップ型コンデンサなど、他のチップ型電子部品の製造にも適用できる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明のチップ型電子部品の製造方法は、焼成後の絶縁シート上に上面分割溝を形成する工程の前後に、前記上面分割溝と同一平面上の所定位置に少なくとも2以上の位置認識マークを形成し、前記裏面分割溝を形成する工程に先立って、前記位置認識マークを画像認識するとともに、前記位置認識マークに対する前記上面分割溝の相対的な位置関係を演算によって明らかにし、この位置関係に基づいて前記裏面分割溝の形成位置を決定するようにしたことを特徴としているので、絶縁シートを固定するための固定治具の精度の如何にかかわらず、分割精度が良好で、製品歩留及び実装歩留がともに高く、コスト性に優れたチップ型電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るチップ型電子部品の製造方法により絶縁シート上に形成した上面分割溝及び位置認識マークの態様を示した平面図である。
【図2】同チップ型電子部品の製造方法により絶縁シート上に裏面分割溝を形成するときの様子を概略的に示した斜視図である。
【図3】同チップ型電子部品の製造方法により絶縁シート上に形成した上面分割溝及び裏面分割溝の態様を示した絶縁シートの断面図である。
【図4】同チップ型電子部品の製造方法により製造されたチップ型抵抗器を概略的に示した斜視図である。
【図5】従来技術に係るチップ型電子部品の製造方法により上面分割溝及び位置認識マークの態様を示した平面図である。
【図6】同チップ型電子部品の製造方法により上面分割溝及び裏面分割溝の態様を示した絶縁シートの断面図である。
【図7】同チップ型電子部品の製造方法により製造されたチップ型抵抗器を概略的に示した斜視図である。
【符号の説明】
1 絶縁シート
1a 絶縁シートの区画単位
2 固定治具
3 上面分割溝
4 裏面分割溝
5 位置認識マーク
6 画像認識手段
7 上面電極膜
8 抵抗膜
Claims (3)
- 焼成後の絶縁シートを治具に固定してその上面に格子状の上面分割溝をレーザ光によって形成する工程と、前記絶縁シートを裏返して前記治具に固定し、その上面に前記上面分割溝に対向するように格子状の裏面分割溝をレーザ光によって形成する工程と、前記上面分割溝及び裏面分割溝が形成された前記絶縁シートに電気的機能要素を形成するとともに、前記上面分割溝及び裏面分割溝に沿ってチップ形状に分割する工程と、を含むチップ型電子部品の製造方法において、
前記上面分割溝を形成する工程の前後に、前記上面分割溝と同一平面上の所定位置に少なくとも2以上の位置認識マークを形成し、
前記裏面分割溝を形成する工程に先立って、前記位置認識マークを画像認識するとともに、前記位置認識マークに対する前記上面分割溝の相対的な位置関係を演算によって明らかにし、この位置関係に基づいて前記裏面分割溝の形成位置を決定するようにしたこと、
を特徴とするチップ型電子部品の製造方法。 - 前記位置認識マークは、前記絶縁シートの四隅、又は前記絶縁シートの対角、又は前記絶縁シートの片辺に形成されていることを特徴とする請求項1記載のチップ型電子部品の製造方法。
- 前記上面分割溝及び前記裏面分割溝のそれぞれの深さは、一方が他方よりも深く形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のチップ型電子部品の製造方法。
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