JP3871226B2 - アスファルト組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ストレートアスファルトに特定構造の芳香族ビニル化合物と共役ジエンとのブロック共重合体を配合してなる、低温伸度、タフネス、テナシティのバランスに優れ、かつ溶解時間が短く、加工・取り扱いに優れたアスファルト組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ストレートアスファルトは、安価で入手が容易であり、道路舗装用、防水シート、防音シート、制振材などの用途に広く用いられている。
しかしながら、ストレートアスファルトは、タフネス、テナシティ、軟化点、伸度などに劣るため、これらの特性を改良する目的で種々の共重合体組成物を添加した改良アスファルトの検討が多く試みられている。これらの種々の共重合体組成物の具体例としては、従来よりスチレン−ブタジエンランダム共重合体ラテックス(SBRラテックス)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などが使用されている。しかしながら、これらの共重合体の添加で、タフネス、テナシティおよび低温伸度はある程度改良されるものの不充分であり、さらなる改良が求められている。
【0003】
さらに、近年、芳香族ビニル化合物と共役ジエンとのブロック共重合体(SBブロック共重合体)を添加して、アスファルトを改質することが試みられている。例えば、アスファルトの諸物性を改良する目的として、ミクロ構造制御剤として種々のエーテル化合物あるいは第3級アミン化合物を用い、有機リチウム化合物を重合開始剤とした、特定の構造を有するブロック共重合体を添加したアスファルト組成物が種々提案されている。すなわち、特公昭47−17319号公報、特公昭59−36949号公報には、A−B−A型線状ブロック共重合体、(A−B)nX型ラジアルブロック共重合体の単独使用あるいは併用によるアスファルト改質が開示されている。しかしながら、これらの開示例では、伸度とタフネス、テナシティとのバランスが取れているとは言い難い。
【0004】
この状況に対し、近年、特開平1−254768号公報、特公平5−420号公報に開示されるように、芳香族ビニル化合物の含量をある一定範囲内に限定したブロック共重合体が、伸度、タフネス、テナシティなどの特性バランスに優れたアスファルト組成物が得られるとの報告がなされている。しかしながら、これらの開示例においても、いまだ低温下での耐久性、すなわち低温伸度、タフネス、テナシティなどの特性バランスが充分とはいえず、種々の環境条件下で容易に使用可能なアスファルト組成物の開発が望まれている。
【0005】
現在のところ、一般にはブロック共重合体の高分子量化やアスファルトへの添加量増加によって、タフネス、テナシティを高め、低温伸度とのバランスを確保する方法が用いられている。しかしながら、この方法では、ブロック共重合体のアスファルトへの溶解時間が著しく長くなり、さらには得られるアスファルトの溶融粘度が著しく高くなって加工性が損なわれるという問題が生じる。
従って、上述のようなSBブロック共重合体を使用してアスファルトを改質しようとする試みも、いまだに満足できる結果は得られておらず、アスファルトのタフネス、テナシティ、および低温伸度のバランスのよい改質用共重合体はこれまで見出されていないのが現状であり、さらなる改善が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、タフネス、テナシティ特性と低温伸度とがバランスし、かつアスファルトへの溶解性の良い、道路舗装用や防水シートなどに使用可能なアスファルト組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、(A)(イ)アルカリ金属の有機スルホン酸塩の存在下で(ロ)有機リチウム化合物を重合開始剤として追加添加することなく用い、芳香族ビニル化合物を重合させ、次いで共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物を重合させ、再度、芳香族ビニル化合物を重合させて得られる(ハ)一般式(I);A1−B−A2で表されるブロック共重合体、ならびに(イ)アルカリ金属の有機スルホン酸塩の存在下で(ロ)有機リチウム化合物を重合開始剤として追加添加することなく用い、芳香族ビニル化合物を重合させ、次いで共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物を重合させ、再度、芳香族ビニル化合物を重合させて得られるブロック共重合体リビングアニオンに、さらに2官能性カップリング剤を添加することによって得られる(ニ)一般式(II);(A1−B−A2)2Xで表されるブロック共重合体〔一般式(I)〜(II) 中、A1、A2は重量平均分子量5,000〜20,000の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック、Bは共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックであって、Bブロック中の共役ジエン/芳香族ビニル化合物の重量比が90/10〜70/30である共重合体ブロック、A1−B−A2は重量平均分子量が100,000〜300,000の共重合体ブロック、Xはカップリング剤残基を示し、かつ全結合芳香族ビニル化合物含量が10〜30重量%である〕を、(ハ)成分/(ニ)成分の重量比が20〜100/80〜0で含有されてなるブロック共重合体成分と、(B)ストレートアスファルトとを、(A)成分/(B)成分(重量比)=2〜15/98〜85の割合で含むことを特徴とするアスファルト組成物を提供するものである。
【0008】
本発明に使用される(A)ブロック共重合体成分は、(イ)アルカリ金属の有機スルホン酸塩の存在下で、(ロ)有機リチウム化合物を重合開始剤として追加添加することなく用いて共重合させて得られる、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA1、A2と共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックBとが、(ハ)A1−B−A2、および必要に応じて(ニ)(A1−B−A2)2Xのように配列されたブロック共重合体からなる。
【0009】
ここで、(イ)アルカリ金属の有機スルホン酸塩は、共重合体ブロックBのミクロ構造、すなわち▲1▼共役ジエン部分のビニル結合含量の調節、▲2▼共役ジエンとその他のモノマー成分との共重合性を調節する役割を有し、これによりタフネス、テナシティおよび低温伸度をバランスよく発現させる共重合体成分の提供が可能となる。
【0010】
この(イ)成分には、有機スルホン酸中の炭素数が6〜30までの1価あるいは多価の有機スルホン酸のアルカリ金属塩を用いることができ、好ましくは炭素数7〜25の範囲内の1価あるいは多価の有機スルホン酸のアルカリ金属塩である。有機スルホン酸中の炭素数が6未満あるいは30を超える場合、得られる共重合体のモノマー成分への溶解性が低く、上述の重合制御機能を発現しない。
(イ)成分を構成するアルカリ金属は、Na、Kに代表されるアルカリ金属、およびBe、Mg、Caに代表されるアルカリ土類金属が挙げられるが、好ましくはNa、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、さらに好ましくはNa、K、Rb、Mg、Ca、Sr、特に好ましくはKである。
【0011】
この(イ)成分の具体例としては、ヘキサンスルホン酸カリウム、オクタンスルホン酸カリウムなどのアルキルスルホン酸塩、フェニルスルホン酸カリウム、フェニルスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸カリウム、オクチルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、4−(4′−アミノフェニル)ベンゼンスルホン酸カリウム、N,N−ジメチルアミノ−ベンゼンスルホン酸カリウムなどのアミノアルキルスルホン酸塩が挙げられ、好ましくはオクタンスルホン酸カリウムなどのアルキルスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
【0012】
(イ)成分の使用量は、モノマー100重量部あたり0.005〜0.1重量部、好ましくは0.01〜0.08重量部の割合で使用される。
なお、共重合体のミクロ構造制御剤として、種々のエーテル化合物あるいは第3級アミン化合物などの1種あるいは2種以上を、(イ)成分と併用して使用することができる。このエーテル化合物の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられ、第3級アミン化合物の具体例としては、テトラメチルエチルジアミン、ピリジン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
【0013】
次に、(ロ)有機リチウム化合物は、(ハ)〜(ニ)成分のブロック共重合体の重合開始剤であり、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物が用いられる。この(ロ)有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、i−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルリチウム、イソプレニルリチウムなどが挙げられる。(ロ)有機リチウム化合物の使用量は、モノマー100重量部あたり、0.04〜0.12重量部、好ましくは0.05〜0.11重量部の割合で用いられる。
【0014】
次に、(ハ)〜(ニ)成分であるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA1 、A2 と共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックBとが、(ハ)A1 −B−A2 、(ニ)(A1 −B−A2 )2 Xのように配列されたブロック共重合体である。
【0015】
ここで、(ハ)〜(ニ)成分を得るために用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0016】
また、(ハ)〜(ニ)成分を得るために用いられる共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどが挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンであり、特に好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0017】
重合体ブロックA1 、A2 は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックであり、50重量%未満の共役ジエンを共重合したものであってもよい。
また、重合体ブロックA1 、A2 は、均等でもあるい不均等でも構わない。
重合体ブロックA1 、A2 の重量平均分子量は、5,000〜20,000、好ましくは7,000〜18,000である。重量平均分子量が、5,000未満ではアスファルトへの溶解時間が短く、加工・取り扱いが容易であるが、タフネス、テナシティ、低温伸度が著しく低下し、一方20,000を超えると、タフネス、テナシティ、低温伸度は充分大きくなるが、アスファルトへの溶解時間が著しく長くなり、実用性に問題が生じる。
【0018】
また、共重合体ブロックBは、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックであって、共役ジエン/芳香族ビニル化合物重量比が90/10〜70/30、好ましくは88/12〜75/25である共重合体ブロックであり、共重合体ブロックB中に存在する芳香族ビニル化合物は、(イ)成分によってその分布が制御される。
【0019】
さらに、(ハ)〜(ニ)成分中のブロックA1 −B−A2 の重量平均分子量は、100,000〜300,000、好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量が、100,000未満では、得られるアスファルト組成物のタフネス、テナシティ、低温伸度のバランスが不充分であり、また流動性の低下も大きくなる。一方、300,000を超えると、タフネス、テナシティ、低温伸度は充分大きくなるが、アスファルトへの溶解時間が著しく長くなり、しかもアスファルト組成物の溶融粘度も著しく上昇し、加工・取り扱いが困難となる。
【0020】
さらに、(ハ)〜(ニ)成分中の芳香族ビニル化合物の合計結合含量は、10〜30重量%、好ましくは12〜28重量%である。この合計結合含量が、10重量%未満ではタフネス、テナシティ、低温伸度のバランスが低下し、一方30重量%を超えると、アスファルト組成物の針入度が小さく硬くなり、低温伸度が著しく低下する。
【0021】
本発明に使用される(ハ)〜(ニ)成分は、例えば不活性炭化水素溶媒中において、(イ)〜(ロ)成分の存在下で、かつ(ロ)成分を追加添加することなく用い、重合反応温度20〜120℃、好ましくは30〜100℃の範囲内において、まず芳香族ビニル化合物を重合させ(重合体ブロックA1)、次いで共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物を重合させ(共重合体ブロックB)、再度、芳香族ビニル化合物を重合させた(重合体ブロックA2)のち、2官能性カップリング剤を反応させることによって製造することができる。
【0022】
上記不活性炭化水素溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素溶媒の1種または2種以上の併用が可能であるが、好ましくはn−ヘキサン、イソペンタン、シクロヘキサンである。
【0023】
このようにして得られるブロック共重合体リビングアニオンに、さらに2官能性カップリング剤を添加することによって、重合体分子量鎖が延長された(ニ)ブロック共重合体が得られる。
(ハ)〜(ニ)成分は、(ハ)ブロック共重合体の製造時に、当量未満の2官能性カップリング剤を添加して、(ハ)〜(ニ)成分が同時に存在する組成物として得ることもできるし、(ハ)成分あるいは(ニ)成分を別途作製し、混合してもよい。
【0024】
この際の2官能性カップリング剤としては、例えばジブロモメタン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、メチレンクロライド、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ジクロロブタンなどのジハロゲン化アルカン;ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、モノエチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、モノブチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、モノヘキシルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジブロモシラン、モノメチルジブロモシラン、ジメチルジブロモシランなどのハロゲン化ケイ素化合物;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジブロモスズ、モノヘキシルジクロロスズなどのハロゲン化スズ化合物;そのほか酢酸エチル、1,4−クロルメチルベンゼン、トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
(ニ)ブロック共重合体製造時の2官能性カップリング剤の使用量は、(ロ)有機リチウム化合物に対して、約0.1〜0.4モル比で用いられる。
【0025】
なお、(ハ)〜(ニ)成分中の芳香族ビニル化合物の結合含量は、各段階における重合時のモノマーの供給量で調節され、必要に応じて調整される共役ジエンのビニル結合含量は、上記のミクロ構造制御剤の成分を変量することにより調節される。
また、(ハ)〜(ニ)成分の重量平均分子量は、(ロ)成分の添加量で調節される。
さらに、本発明においては、共役ジエンと芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体〔(ハ)〜(ニ)成分〕の共役ジエン部分の二重結合を、水素添加により飽和してもよい。
【0026】
本発明の(A)ブロック共重合体成分中の(ハ)〜(ニ)成分の重量比(ハ)/(ニ)は、20〜100/80〜0、好ましくは40〜100/60〜0である。(ハ)成分の重量比が、20未満ではアスファルトへの溶解時間が長くなり、しかもアスファルト組成物の溶融粘度が著しく上昇し、加工・取り扱いが困難となる。
【0027】
次に、本発明に用いられる(B)ストレートアスファルトは、アスファルト基原油を常圧蒸留および水蒸気または真空蒸留にかけたのち、残留物として得られるものである。ストレートアスファルトは、本発明の(A)ブロック共重合体成分を溶解させ易いため、加工・取り扱いが容易である。なお、ブローンアスファルト(半アスファルト基原油を上記と同様にして得られた残留物に熱い状態で空気を吹き込み、酸化重合させて得られるアスファルト)では、本発明のブロック共重合体(ハ)〜(ニ)を溶解させ難いので好ましくない。
(B)ストレートアスファルトは、針入度40〜200のものが好ましい。針入度が40未満では、アスファルトへの(A)ブロック共重合体成分の溶解時間が長くなり、また伸度も小さくなる傾向にあり、一方200を超えると、タフネス、テナシティが低下する傾向にある。
【0028】
また、本発明のアスファルト組成物の(A)成分〔(ハ)〜(ニ)成分〕と(B)成分の重量比、(A)/(B)は、2〜15/98〜85、好ましくは3〜13/97〜87である。(A)成分の重量比が、2未満ではアスファルトの改質効果が見られず、タフネス、テナシティ、低温伸度が不充分であり、一方15を超えるとタフネス、テナシティ、低温伸度は充分であるが、アスファルトへの溶解時間が著しく長くなり、しかもアスファルト組成物の溶融粘度が著しく上昇し、加工・取り扱いが困難となる。
【0029】
本発明の(A)成分は、通常、ベール、再乳化ラテックス、他の重合体とのブレンドからなるペレット、または粉体などの形状で使用することができる。
また、本発明のアスファルト組成物は、通常、140〜190℃に溶融された攪拌下の(B)ストレートアスファルトに、上記(A)成分〔(ハ)〜(ニ)成分〕を投入し混合することにより製造される。
【0030】
なお、本発明のアスファルト組成物には、必要に応じてシリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤、顔料、老化防止剤、架橋剤、難燃剤などの添加剤を配合することができる。また、道路舗装用として使用する場合には、砂利などを添加することも可能である。
さらに、本発明のアスファルト組成物には、他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂、例えばスチレン−ブタジエンゴムラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アタクチックポリプロピレン、1,2−ポリブタジエン、あるいはエチレン−プロピレンゴムなどの他の重合体を併用することが可能である。この場合、あらかじめ本発明の(A)成分〔(ハ)〜(ニ)成分〕と上記他の重合体や熱可塑性樹脂とを、任意の割合で混練りしたのち、ペレット化して使用することもできる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。
また、実施例中に各種評価は、次のようにして求めたものである。
【0032】
ブロック共重合体の特性
▲1▼重量平均分子量(Mw)
GPC装置〔東ソー(株)製、HLC−8020型を使用し、カラムはデュポン社製のZORBAX 1000Sを3本と同300Sを1本使用〕で測定し、標準ポリスチレンで換算した重量平均分子量である。
▲2▼結合スチレン含量
赤外分光分析装置(パーキンエルマー1600型)を用い、690cm-1の吸収強度より求めた。
【0033】
アスファルト組成物の特性
▲3▼溶解時間
溶解時間は、アスファルト組成物の調製の際、混合中に内容物を少量採取し、ポリエステル(テトロン)シート上に塗布して観察し、ブロック共重合体の固形粒が認められなくなるまでの時間とした。
▲4▼タフネス、テナシティ
「舗装試験法便覧」(昭和63年11月、社団法人日本道路協会刊行)3−5−17 タフネス・テナシティ試験方法の準じた。
▲5▼針入度、伸度、軟化点
JIS K2207に準拠して測定した。
▲6▼溶融粘度
B型粘度計により、140℃で測定した。
【0034】
実施例1
ブロック共重合体;(A)成分の調製
ジャケットと攪拌機の付いた内容積100リットルのステンレス製重合容器を充分にチッ素ガスで置換したのち、シクロヘキサン50kg、スチレン0.8kgを仕込み、ジャケットに温水を通して内容物を60℃とした。
次いで、(イ)成分としてドデシルベンゼンスルホン酸カリウムの25%シクロヘキサン溶液8.0g、および(ロ)成分としてsec−ブチルリチウムの10%シクロヘキサン溶液100gを添加して重合を開始した。スチレンの重合完了後、内容物温度が80℃となるようにジャケットに温水を通しながら、1,3−ブタジエン2.4kg、スチレン0.4kgをゆっくりと添加した。1,3−ブタジエンおよびスチレンの重合が完了したのち、先と同様の方法で1,3−ブタジエン2.4kg、スチレン0.4kgを2回、合計1,3−ブタジエン4.8kg、スチレン0.8kgを重合した。1,3−ブタジエンおよびスチレンの重合完了後、さらにスチレン0.8kgを添加して重合を継続し、ほぼ完全に重合させたのち、カップリング剤としてジメチルジクロロシランの15%シクロヘキサン溶液60gを添加し、30分間反応させた。
【0035】
反応後、メタノール10mlを添加して、10分間攪拌したのち、内容物を重合容器から取り出し、酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を50g添加した。この重合溶液を、スチームストリッピングし、得られた含水ポリマーをクラッシャーにてクラム状に粉砕してから、80℃で熱風乾燥して、表1に示すスチレン−ブタジエンブロック共重合体(1)を得た。
【0036】
アスファルト組成物;(A)/(B)成分の調製
(B)成分として針入度70のストレートアスファルト〔共同石油(株)製、60/80〕を380gと、(A)成分として上記ブロック共重合体(1)20gとを、180℃で加熱しながら攪拌機〔特殊機化工業(株)製、TKホモミキサー、10,000rpm〕で混合し、アスファルト組成物を調製した。表4に、各特性の評価結果を示す。
【0037】
実施例2〜6、比較例1〜11
(イ)成分、(ロ)成分の種類、およびスチレン、1,3−ブタジエン、ジメチルジクロロシランの仕込み量を変更する以外は、ブロック共重合体(1)と同様にして、表1〜3に示すブロック共重合体(2)〜(15)を得た。
また、(A)成分の種類、(A)/(B)重量比を表4〜6に示すように変更し、実施例1と同様にしてアスファルト組成物を調製し、その性能を評価した。結果を表4〜6に示す。
【0038】
表4〜6から、本発明で規定するアスファルト組成物(実施例1〜6)は、アスファルトへの溶解時間が短く、しかも良好なタフネス、テナシティ、低温伸度を示し、かつそのバランスも良好であることが分かる。
これに対し、比較例1〜9は、(A)成分の調製条件が本発明の範囲下限未満あるいは上限を超える場合であり、溶解時間は短いが、タフネス、テナシティ、低温伸度のバランスが不充分となり、あるいはタフネス、テナシティ、低温伸度のバランスが充分でも溶解時間が長くなり、加工・取り扱いに困難を生じる。また、比較例10〜11では、本発明の適性範囲内で調製したブロック共重合体(1)を用い、(B)成分との混合比の範囲下限未満あるいは上限を超える条件で調製した場合である。この場合も、上記比較例1〜9の結果と同様に、溶融粘度、タフネス、テナシティ、低温伸度のバランスが不充分となる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【発明の効果】
本発明のアスファルト組成物は、低温伸度、タフネス、テナシティが充分高く、かつそのバランスに優れ、さらには溶解時間も短いため、加工・取り扱いに優れた特徴を有しているから、道路舗装用、特に寒冷地道路での使用あるいは防水シートなどに好適な組成物を提供することができる。
Claims (1)
- (A)(イ)アルカリ金属の有機スルホン酸塩の存在下で(ロ)有機リチウム化合物を重合開始剤として追加添加することなく用い、芳香族ビニル化合物を重合させ、次いで共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物を重合させ、再度、芳香族ビニル化合物を重合させて得られる(ハ)一般式(I);A1−B−A2で表されるブロック共重合体、ならびに(イ)アルカリ金属の有機スルホン酸塩の存在下で(ロ)有機リチウム化合物を重合開始剤として追加添加することなく用い、芳香族ビニル化合物を重合させ、次いで共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物を重合させ、再度、芳香族ビニル化合物を重合させて得られるブロック共重合体リビングアニオンに、さらに2官能性カップリング剤を添加することによって得られる(ニ)一般式(II) ;(A1−B−A2)2Xで表されるブロック共重合体〔一般式(I)〜(II) 中、A1、A2は重量平均分子量5,000〜20,000の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック、Bは共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックであって、Bブロック中の共役ジエン/芳香族ビニル化合物の重量比が90/10〜70/30である共重合体ブロック、A1−B−A2は重量平均分子量が100,000〜300,000の共重合体ブロック、Xはカップリング剤残基を示し、かつ全結合芳香族ビニル化合物含量が10〜30重量%である〕を、(ハ)成分/(ニ)成分の重量比が20〜100/80〜0で含有されてなるブロック共重合体成分と、(B)ストレートアスファルトとを、(A)成分/(B)成分(重量比)=2〜15/98〜85の割合で含むことを特徴とするアスファルト組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP25726894A JP3871226B2 (ja) | 1994-09-28 | 1994-09-28 | アスファルト組成物 |
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