JP3870993B2 - オイルダンパ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄道及び産業用オイルダンパに関し、特に、横据付型ダンパにおけるエア抜きの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道及び産業用オイルダンパは、主に内外筒、前後蓋等からなり、内外筒と前後蓋とに囲まれてリザーバ室が形成され、また、内筒内にはピストンロッドに締結されたピストンが摺動自在に嵌挿し、油室A,Bを区画している。ピストンロッドは、内筒から前蓋に設けたシール部材、軸受部材を介して前蓋より摺動自在に突き出ている。内筒の一端に設けた底板には、リザーバ室から油室Bへ一方向に油の流れのみを許すチェック弁と油室Bからリザーバ室への方向の流れに減衰力を発生する減衰弁とが配設してあり、また、ピストンロッドに係合してピストンに設けた連通路には油室Aから油室Bへ一方向の油の流れに減衰力を発生する減衰弁とリリーフ弁とが配設されている。前蓋には、リザーバ室と油室Bとを連通する通路にリザーバ室から油室Aへ一方向の油の流れのみを許すチェック弁が配設されている。
【0003】
そして、図6に示すように、内筒1の上側端1bに油室Bとリザーバ室Rとを連通するようにエア抜き孔兼減衰力発生用オリフィス1fが穿設してあり、このエア抜き孔1fは、内筒1の油室B内に籠もったエア(気泡)をリザーバ室Rに排出するようにするとともに減衰力をも発生するように設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来例のオイルダンパにおけるエア抜き孔は、内筒の上側端に油室とリザーバ室とを連通するエア抜き孔を穿設してあり、ロッドの圧縮行程にあっては、油室に籠もっている気泡は、油室からエア抜き孔を介してリザーバ室に排出されるが、ロッドの伸び行程では、エアがリザーバ室よりエア抜き孔を介して再度油室に吸い込まれてしまい、次の圧縮行程では依然として油室内に吸い込まれたエアが混入していて、このため、圧縮行程での所定の減衰特性が得られないと言う問題があった。
そこで、この発明は、ピストンロッドの伸縮行程において、油室よりリザーバ室に排出したエアが再度内筒の油室内へ吸い込まれるのを防止して、安定した減衰特性が得られるよう信頼性の向上を図ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため,本発明の手段は、外筒と、外筒内に嵌合する蓋体により同芯的に配設される内筒と、内外筒との間に形成されるリザーバ室と、内筒内に摺動自在に嵌挿しロッド側油室と反ロッド側油室とを区画するピストンを締結するピストンロッドと、油室から油室への流れに減衰力を発生するようピストンに設けられた減衰弁とリリーフ弁と、内筒端に係合する底板に設けられリザーバ室から油室へのみ油の流れを許すチェック弁と油室からリザーバ室への油の流れに減衰力を発生する減衰弁と、油室とリザーバ室とを連通するよう蓋体に設けられる連通路中にリザーバ室から油室へのみ油の流れを許すチェック弁とを備え、内筒の上側両端に上記各油室をそれぞれリザーバ室に連通する二つのエア抜き孔兼減衰力発生用オリフィスを穿設した複筒式横据付型オイルダンパにおいて、前記エア抜き孔兼減衰力発生用オリフィスに連通する環状の凹溝を内筒の外周に成形し、当該環状の凹溝の開口部を上記内筒1の外径より小さい内径であって上記凹溝の横巾より線径が大きいC型形状した弾性線材からなるリング部材で覆い、上記リング部材と上記環状の凹溝とで隔成された断面C形状の通路を介して上記各油室を上記リザーバ室の下方油浸側に連通させたことを特徴とするものである。
【0006】
この場合、断面C型形状の通路がリザーバ室の下側油浸側に開口しているのが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明するに、前記従来例と同一の構成要素に対しては同一の名称、符号を付して説明する。
この実施の形態に関わるオイルダンパは、従来と同じく、外筒2と、外筒2内に嵌合する蓋体3,12 a により同芯的に配設される内筒1と、内外筒との間に形成されるリザーバ室Rと、内筒内に摺動自在に嵌挿しロッド側油室Aと反ロッド側油室Bとを区画するピストン7を締結するピストンロッド6と、油室Aから油室Bへの流れに減衰力を発生するようピストン7に設けられた減衰弁RV2とリリーフ弁PVと、内筒端に係合する底板12に設けられリザーバ室Rから油室Bへのみ油の流れを許すチェック弁CV1と油室Bからリザーバ室Rへの油の流れに減衰力を発生する減衰弁RV1と、油室Aとリザーバ室Rとを連通するよう蓋体3に設けられる連通路3 a 中にリザーバ室Rから油室Aへのみ油の流れを許すチェック弁CV2とを備え、内筒1の上側両端に上記各油室A,Bをそれぞれリザーバ室Rに連通する二つのエア抜き孔兼減衰力発生用オリフィス1f,1fを穿設した複筒式横据付型オイルダンパである。
そして、本発明では、前記エア抜き孔兼減衰力発生用オリフィス1f,1fに連通する環状の凹溝1c,1dを内筒の外周に成形し、当該環状の凹溝1c,1dの開口部を上記内筒1の外径Dより小さい内径dであって記凹溝1c,1dの横巾hより線径Hが大きいC型形状した弾性線材からなるリング部材13で覆い、上記リング部材13と上記環状の凹溝1c,1dとで隔成された断面C形状の通路mを介して上記各油室A,Bを上記リザーバ室Rの下方油浸側に連通させている。
以下更に詳しく説明する
図1に示すように、主に内外筒1,2、前後蓋3,4等からなり、外筒2内に結合した前後蓋体3,4には内筒1が同芯的にシール部材5でシールされて、支承されており、内外筒1,2と前後蓋3,4とで囲まれてリザーバ室Rが形成されている。
【0008】
また、内筒1内にはピストンロッド6に締結されたピストン7がシール部材8でシールされて摺動自在に嵌挿し、油室A,Bを区画している。
【0009】
ピストンロッド6は、内筒1から前蓋3に設けたオイルシール9、シール部材10、軸受部材11を介して前蓋3より摺動自在に突出している。
【0010】
内筒1の一端に設けた底板12には、リザーバ室Rから油室Bへ一方向に油の流れのみを許すチェック弁CV1と油室Bからリザーバ室Rへの流れに減衰力を発生する減衰弁RV1とが配設してあり、通路12a介してリザーバ室に連通している。
【0011】
また、ピストン7に成形した連通路7aに減衰弁RV2と連通路7bにリリーフ弁PVとが油室Aから油室Bへ一方向の油の流れに減衰力を発生するように配設されている。
【0012】
前蓋3には、リザーバ室Rと油室Aとを連通する連通路3aが設けられ、この連通路3a中にリザーバ室Rから油室Aへ一方向の油の流れを許すチェックCV2が配設されている。
【0013】
内筒1には、図2に示すように、内筒1の上側両端1a,1bに油室A,Bとリザーバ室Rとを連通するエア抜き孔兼減衰力発生用オリフィス(以下エア抜き孔という)1fが穿設してあり、このエア抜き孔1fに連通するように内筒1の外周に環状の凹溝1c,1dが成形してある。
【0014】
この環状の凹溝1c,1dには、図3(a),(b)、図4に示すように、環状の凹溝1c,1dの巾hより大きい径Hを有し、しかも、内筒1の外径Dより小さい内径dを有し、一部切り欠きのあるC型形状したバネ鋼,ピアノ線等の弾性線材からなるリング部材13が、環状の凹溝1c,1dを覆い、一部に開口部eをリザーバ室Rの下方油侵側に形成している。
【0015】
環状の凹溝1c,1dとリング部材13とで環状の連通路mが形成され、開口部e、環状の連通路m、エア抜き孔1fを介して内筒1内の油室A,Bとリザーバ室Rとを連通するようになっている。
【0016】
次にその作用について説明する。今、仮に、ピストンロッド6が伸側方向(図中左方向)に作動すると、油室A内の油はチェック弁CV2により前蓋3に設けた通路3aを閉塞する一方、ピストン7に設けた通路7aより減衰弁RV2、通路7bよりリリーフ弁PVを介して減衰力を発生させて油室Aから油室Bへ流れる一方、エア(気泡)を含んだ油は、図5に示すように、内筒1に成形したエア抜き孔1fから環状の凹溝1cとリング部材13とで形成される環状の連通路m、開口部eを介して、内筒1の油室Aからリザーバ室Rの下方油侵側へ流出して減衰力を発生するとともに、気泡は、リザーバ室Rの上方側に浮上し、油はリザーバ室に留まり、気泡と油とが分離される。
【0017】
そして、ピストン7が圧側方向(図中右方向)に作動すると、油室B内の油は、底板12に設けた減衰弁RV1により減衰力を発生し、油室Bからリザーバ室Rへ流出する一方、エア(気泡)を含んだ油は、内筒1に設けたエア抜き孔1fから環状の凹溝1dとリング部材13とで形成される環状の連通路m、開口部eを介して、油室Bからリザーバ室Rへ流出して減衰力を発生させるとともに、気泡は、リザーバ室Rの上方側に浮上し、油はリザーバ室Rに留まり、気泡と油とが分離される。
【0018】
その際、油室Aには、前蓋3に設けたチェック弁CV2を介してリザーバ室Rの油が内筒1の油室A内に流入する一方、開口部e、環状の凹溝1cとリング部材13とで形成される環状の連通路m,エア抜き孔1fを介して、リザーバ室Rの気泡を含まれない油が油室Aに吸い込まれるために、内筒1の油室A,Bに混入している気泡は、ピストン7が伸縮を繰り返すことで、除々にリザーバ室Rの上方側へと分離され、内筒1内の油室A,Bには気泡がなくなり、油だけとなって、エア抜きが行われる。
【0019】
このように、内筒1の上側端1a,1bに内筒1内の油室A,Bとリザーバ室Rとを連通するエア抜き孔1fを穿設した複筒式横据付型オイルダンパにおいて、前記エア抜き孔1fに連通するように内筒1の外周に環状の凹溝1c,1dを成形し、この環状の凹溝1c,1dをC型形状したリング部材13で覆い、一部に開口部eをリザーバ室の下方油侵側に形成し、開口部e、リング部材13と環状の凹溝1c,1dとで形成する環状の通路m介してリザーバ室Rと油室A,Bとを連通するようにしたので、ピストンロッド6の伸縮行程において、油室内に混入されている気泡は、油室A,Bよりリザーバ室Rに排出され、排出された気泡が再度内筒1内の油室A,Bへ吸い込まないようになり、常に安定した減衰特性が得られるようになり、信頼性の向上に役立てることができる。
【0020】
また、C型形状したリング部材13の内径dを内筒1の外径Dより僅かに小さくして(D>d)、内筒1に成形した環状の凹溝1c.1dに係合するような弾性線条部材にしてあり、内筒1の環状の凹溝1c,1dにリング部材13を係合させるのに特別に係合手段を必要とせず、線状部材の弾性を利用して環状の凹溝1c,1dに簡単に係合するさせるだけで組付ができ、組付け調整工数を要さずに、安価にできる。
【0021】
【発明の効果】
各請求項の発明によれば、内筒の上側両端に各油室をそれぞれリザーバ室に連通する二つのエア抜き孔兼減衰力発生用オリフィスを穿設した複筒式横据付型オイルダンパにおいて、前記エア抜き孔兼減衰力発生用オリフィスに連通する環状の凹溝を内筒の外周に成形し、当該環状の凹溝の開口部をリング部材で覆い、上記リング部材と上記環状の凹溝とで隔成された断面C形状の通路を介して上記各油室を上記リザーバ室の下方油浸側に連通させたので、ピストンロッドの伸縮行程において、油室内に混入されている気泡は、油室よりリザーバ室に排出され、排出された気泡が再度内筒内の油室へ吸い込まないようになり、常に安定した減衰特性が得られるようになり、信頼性の向上に役立てることができる。
【0022】
同じく、環状の凹溝の開口部を内筒の外径より小さい内径であって上記凹溝の横巾より線径が大きいC型形状した弾性線材からなるリング部材で覆ったので、内筒の外周に設けた環状の凹溝にリング部材を係合させるのに特別に係合手段を必要とせず、線材の弾性を利用して環状の凹溝に簡単に係合させることができ、組付け調整工数を要さずに、安価にできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すオイルダンパの正面断面図である。
【図2】同じく図1における内筒の拡大断面図である。
【図3】(a)同じく図2におけるA−A矢視断面図である。
(b)同じく図2(a)におけるE部拡大断面図である。
【図4】(a)同じくリング部材の拡大正面図である。
(b)同じく図4(a)におけるA−A矢視断面図である。
【図5】同じくリング部材と環状の凹溝とで形成する環状の連通路の油の流れを示す説明面図である。
【図6】(a)従来例のオイルダンパの要部断面図である。
(b)同じく図6(a)におけるF部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 内筒
1a,1b 内筒の端
1c,1d 環状の凹溝
1f エア抜き孔
2 外筒
3 前蓋
3a 通路
4 後蓋
5 シール部材
6 ピストンロッド
7 ピストン
7a,7b ピストン通路
8 シール部材
9 オイルシール
10 シール部材
11 軸受部材
12 底板
12a 通路
13 リング部材
A,B 油室
CV1,CV2 チェック弁
PV リリーフ弁
RV1,RV2 減衰弁
R リザーバ室
D 内筒の外径
d リング部材の内径
e 開口部
h 環状の凹溝の巾
H リング部材の線径
m 環状の連通路

Claims (2)

  1. 外筒2と、外筒2内に嵌合する蓋体3,12aにより同芯的に配設される内筒1と、内外筒との間に形成されるリザーバ室Rと、内筒内に摺動自在に嵌挿しロッド側油室Aと反ロッド側油室Bとを区画するピストン7を締結するピストンロッド6と、油室Aから油室Bへの流れに減衰力を発生するようピストン7に設けられた減衰弁RV2とリリーフ弁PVと、内筒端に係合する底板12に設けられリザーバ室Rから油室Bへのみ油の流れを許すチェック弁CV1と油室Bからリザーバ室Rへの油の流れに減衰力を発生する減衰弁RV1と、油室Aとリザーバ室Rとを連通するよう蓋体3に設けられる連通路3a中にリザーバ室Rから油室Aへのみ油の流れを許すチェック弁CV2とを備え、内筒1の上側両端に上記各油室A,Bをそれぞれリザーバ室Rに連通する二つのエア抜き孔兼減衰力発生用オリフィス1f,1fを穿設した複筒式横据付型オイルダンパにおいて、前記エア抜き孔兼減衰力発生用オリフィス1f,1fに連通する環状の凹溝1c,1dを内筒の外周に成形し、当該環状の凹溝1c,1dの開口部を上記内筒1の外径Dより小さい内径dであって記凹溝1c,1dの横巾hより線径Hが大きいC型形状した弾性線材からなるリング部材13で覆い、上記リング部材13と上記環状の凹溝1c,1dとで隔成された断面C形状の通路mを介して上記各油室A,Bを上記リザーバ室Rの下方油浸側に連通させたことを特徴とする複筒式横据付型オイルダンパ。
  2. 断面C型形状の通路mがリザーバ室Rの下側油浸側に開口している請求項1に記載の複筒式横据付型オイルダンパ。
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