JP3870621B2 - 液圧ブレーキシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はバキュームブースタを備えた液圧ブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液圧ブレーキシステムにおいて、バキュームブースタを設け、ブレーキ操作力を倍力することは、例えば、特開平10−81212号公報に記載されているように広く知られている。バキュームブースタはブースタ負圧により作動してブレーキ操作力を助勢するのであるが、ブースタ負圧はエンジンの吸気側の負圧である吸気側負圧に基づいて得られる。バキュームブースタを備えた液圧ブレーキシステムにおいては、吸気側負圧あるいはブースタ負圧の大きさに応じて制御を変更する必要が生じる場合があり、そのためにブースタ負圧を取得することが必要となる。なお、ブースタの圧力は大気圧より絶対真空側の圧力であり、ゲージ圧では負の値となるが、本明細書においては、「負圧」と称する場合には正の値で表すこととする。絶対真空が1気圧ないし760mmHgの負圧であり、正の数値が大きいほど、負圧が強いこととなる。
【0003】
上記公報に記載の液圧ブレーキシステムにおいては、緊急制動時にバキュームブースタを電気的に作動させ、ブレーキ操作力である踏力を助勢するようにされており、そのためにエンジンの吸気側負圧が取得される。また、バキュームブースタにおいては、低圧室と変圧室との連通,遮断および変圧室と大気との連通,遮断を行う弁機構の切換えが、機械的に行われるのみならず電気的にも行われる。パワーピストンとオペレーティングロッドとの間に、弁座を有するプランジャが軸方向に相対移動可能に嵌合され、パワーピストンに設けられたソレノイドの励磁により、パワーピストンおよびオペレーティングロッドに対して前進させられる。それにより弁機構が切り換えられ、変圧室と低圧室との連通が遮断されるとともに、変圧室が大気に連通させられて踏力が助勢されるようになっているのである。
【0004】
通常の制動時には、ブレーキペダルの踏込みによるオペレーティングロッドの前進によって機械的に弁機構が切り換えられるが、緊急制動時には、ソレノイドが励磁され、プランジャがパワーピストンおよびオペレーティングロッドに対して前進させられることにより弁機構が切り換えられてパワーピストンが前進させられ、運転者の踏力が小さくても助勢により十分なブレーキシリンダ圧が得られる。減速度の微分値および減速度についてそれぞれしきい値が設定されており、そのしきい値との比較により緊急制動が検出される。これらしきい値は、トランスミッションのギヤの位置,エンジンの吸気側負圧,路面の摩擦係数等に基づいて設定される。エンジンの吸気側負圧がしきい値の設定に用いられることによって、ブースタ負圧を加味したソレノイドの励磁時期の決定が行われるのであり、しきい値は、ブースタ負圧が小さいほど早く助勢制御が開始されるように設定される。
【0005】
しかしながら、エンジンの吸気側負圧は、必ずしもブースタ負圧と1対1には対応しない。例えば、バキュームブースタに負圧を供給する負圧源の一種であるエンジンのインテークマニホルドとバキュームブースタとの間には、チェック弁や負圧を蓄えるタンクが設けられるのが普通であり、それらによってブースタ負圧はエンジンの吸気側負圧とは異なった大きさになるからであり、エンジンの吸気側負圧に基づいてしきい値を設定しても、助勢制御を精度良く行うことは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、以上の事情を背景とし、ブースタ負圧を推定することができる液圧ブレーキシステム、あるいはブースタ負圧に応じた制御が可能な液圧ブレーキシステムを提供することを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の液圧ブレーキシステムが得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
(1)エンジンの吸気側に接続されたバキュームブースタと、そのバキュームブースタにより倍力されたブレーキ操作力に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、そのマスタシリンダから供給される液圧により作動するブレーキシリンダとを含む液圧ブレーキシステムにおいて、
前記エンジン吸気側の負圧である吸気側負圧と当該液圧ブレーキシステムの作動状態とに基づいて、前記バキュームブースタの負圧であるブースタ負圧を推定するブースタ負圧推定装置を設けた液圧ブレーキシステム。
吸気側負圧は、センサにより検出された検出値でもよく、あるいはエンジンの回転数,スロットルバルブの開度,エンジン冷却水温,吸気温,燃焼状態,燃料の噴射量等の少なくとも1つに基づいて推定された推定値でもよい。
エンジン吸気側はバキュームブースタに負圧を供給する負圧源であり、ブースタ負圧の上限および下限は吸気側負圧に基づいて決まる。また、バキュームブースタは、ブースタ負圧に基づいてブレーキ操作部材の操作力を倍力するため、ブースタ負圧は液圧ブレーキシステムの作動に伴って減少する。したがって、吸気側負圧および液圧ブレーキシステムの作動状態に基づいてブースタ負圧を推定すれば、液圧ブレーキシステムの作動状態に応じたブースタ負圧の減少量を考慮したブースタ負圧であって、吸気側負圧よりも実際の大きさに近いブースタ負圧が得られる。
そのため、例えば、ブースタ負圧を検出するブースタ負圧センサを設けなくても、ブースタ負圧に基づく制御を行うことができる上、ブースタ負圧に基づく制御を、吸気側負圧を用いる場合より精度良く行うことができる。また、ブースタ負圧センサが設けられる場合には、そのブースタ負圧センサの異常を検出することが可能となる。
(2)当該液圧ブレーキシステムの作動状態を検出するブレーキ作動状態検出装置を含む(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
(3)前記ブレーキ作動状態検出装置が、前記マスタシリンダの液圧であるマスタシリンダ圧、そのマスタシリンダ圧の変化勾配であるマスタシリンダ圧勾配、前記ブレーキ操作部材の操作力であるブレーキ操作力、そのブレーキ操作力の変化勾配であるブレーキ操作力勾配、ブレーキ操作部材の操作ストロークであるブレーキ操作ストローク、そのブレーキ操作ストロークの変化勾配であるブレーキ操作ストローク勾配、ブレーキ操作部材の操作速度であるブレーキ操作速度、ブレーキ操作部材の操作開始後経過時間の少なくとも1
つに基づいて当該液圧ブレーキシステムの作動状態を検出するものである (2)項に記載の液圧ブレーキシステム。
マスタシリンダ圧等の少なくとも1つに基づいて液圧ブレーキシステムの作動状態、例えば、作動速度や作動量が検出される。
例えば、バキュームブースタによるブレーキ操作力の倍力の結果、得られるマスタシリンダ圧が大きいほど、ブースタ負圧の減少量も大きくなり、マスタシリンダ圧をブースタ負圧の推定に用いることができる。ブレーキ操作力,ブレーキ操作ストロークについても同じである。さらに、マスタシリンダ圧等の勾配を加味すれば、ブレーキの作動状態が更にきめ細かにわかり、ブースタ負圧をより精度良く推定することができる。マスタシリンダ圧勾配等、勾配のみに基づいてブースタ負圧を推定してもよい。
また、ブレーキ操作速度、ブレーキ操作部材の操作開始後経過時間も、バキュームブースタ作動時のブースタ負圧の減少量に関連するため、これらに基づいてブースタ負圧を推定することもできる。ブレーキ操作速度は、ブレーキ操作ストロークの変化勾配として検出することも可能であるが、例えば、ブレーキ操作部材の回動角速度を直接測定する回転速度センサや、ブレーキ操作部材の回動角加速度等の加速度を検出する加速度センサの出力の積分によっても検出することができる。
(4)前記ブレーキ作動状態検出装置が、前記ブレーキ操作部材としてのブレーキペダルの踏込開始時に出力信号の状態が変化するブレーキスイッチと、そのブレーキスイッチの出力信号の状態変化後の経過時間を計測する計時手段とを含む (3)項に記載の液圧ブレーキシステム。
(5)前記ブースタ負圧推定装置が、少なくとも前記吸気側負圧とバキュームブースタの作動速度であるブースタ作動速度とに基づいてブースタ負圧を推定する作動速度依拠ブースタ負圧推定手段を含む (1)項ないし (4)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
ブースタ作動速度は、バキュームブースタのパワーピストン等可動部材自体の作動速度を検出する速度センサによって検出することも可能であるが、前記マスタシリンダ圧勾配,ブレーキ操作力勾配等に基づいてブースタ作動速度を推定し、あるいはブレーキ操作速度をブースタ作動速度として使用することも可能である。あるいはブースタ負圧の推定を一定の時期、例えば、ブレーキペダルの踏込みが検出されてから設定時間が経過したときに行ってもよい。そのようにすれば、例えば、マスタシリンダ圧やブレーキ操作力を用いてブースタ負圧を推定するのであれば、それらはマスタシリンダ圧勾配やブレーキ操作力勾配の代わりとなり、ブースタ作動速度に基づいてブースタ負圧が推定されることとなる。
(6)前記ブースタ負圧推定装置が、前記吸気側負圧を検出する吸気側負圧センサの検出値と、前記エンジンの作動状態に基づいて吸気側負圧を推定する吸気側負圧推定装置の推定値とが不一致の場合に、前記吸気側負圧推定装置の推定値に基づいて前記ブースタ負圧の推定を行うものである (1)項ないし (5)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム(請求項1)。
検出値と推定値との不一致は、両者の差が予め定められた条件以上に大きくなることにより検出することができる。予め定められた条件は、例えば、設定値を越えることとすることや、検出値と推定値との少なくとも一方に対する設定比率を越えることとすることができる。
推定値は範囲で取得してもよい。この場合、推定範囲に含まれる無数の値をそれぞれ推定値と考える。検出値と推定値とが不一致であるということは、検出値が、推定範囲に含まれる推定値のいずれとも一致しないことであり、その不一致は、検出値が推定範囲から外れているか否かによって判定される。
以上は、 (7)項に記載の液圧ブレーキシステムにおけるブースタ負圧センサの検出値およびブースタ負圧推定装置による推定値に基づくブースタ負圧センサの故障推定についても同様である。
吸気側負圧推定装置と吸気側負圧センサとの少なくとも一方を液圧ブレーキシステムの構成要素としてもよく、両方とも液圧ブレーキシステムとは別に設けてもよい。
吸気側負圧センサの検出値と吸気側負圧推定装置の推定値とが一致するか否かの判定は、ブースタ負圧推定装置が行ってもよく、液圧ブレーキシステムのブースタ負圧推定装置とは別の部分が行ってもよく、液圧ブレーキシステムとは別に行われてもよい。ブースタ負圧推定装置が上記判定を行うのであれば、ブースタ負圧推定装置は、例えば、吸気側負圧センサおよび吸気側負圧推定装置からそれぞれ検出値および推定値を取得して、両者が不一致の場合に、吸気側負圧推定値に基づいてブースタ負圧の推定を行うものとされる。上記判定が液圧ブレーキシステムにおいて、あるいは液圧ブレーキシステムとは別に行われるのであれば、その判定を行うものが、吸気側負圧センサの検出値および吸気側負圧推定装置の推定値を取得して判定を行い、ブースタ負圧推定装置は、例えば、吸気側負圧センサが正常であれば、その検出値が供給されてブースタ負圧を推定するが、検出値と推定値とが不一致であるとの情報を受ければ、推定値の供給を促して推定値を取得し、推定値に基づいてブースタ負圧を推定するものとしてもよく、あるいは、吸気側負圧センサの検出値と吸気側負圧推定装置の推定値とが一致している場合には、吸気側負圧センサの検出値がブースタ負圧の推定に用いる値として提供され、不一致の場合には、吸気側負圧推定装置の推定値がブースタ負圧の推定に用いられる値として提供され、ブースタ負圧推定装置は提供された値に基づいてブースタ負圧を推定するものとしてもよい。
吸気側負圧センサの検出値と吸気側負圧推定装置の推定値とが不一致であれば、吸気側負圧センサが故障状態にあると推定される。吸気側負圧の推定により吸気側負圧センサの故障を推定し得るとともに、吸気側負圧センサが故障してもブースタ負圧の推定を行うことができる。
(7)前記バキュームブースタが、前記エンジンの吸気側に接続された低圧室と、制御弁により選択的に低圧室と大気とに連通させられる変圧室とを備え、当該液圧ブレーキシステムが前記低圧室の負圧を検出するブースタ負圧センサと、そのブースタ負圧センサの検出値と前記ブースタ負圧推定装置による推定値とが不一致の場合に、ブースタ負圧センサが故障状態にあると推定するブースタ負圧センサ故障推定装置とを含む (1)項または (6)項に記載の液圧ブレーキシステム(請求項2)。
ブースタ負圧の推定により、ブースタ負圧センサが故障状態にあることが推定される。それにより、例えば、ブースタ負圧センサの検出値に基づく制御等をやめることにより、間違った検出値に基づいて、ブースタ負圧に基づく制御等が行われることが回避される。あるいは、ブースタ負圧センサの検出値に代えて推定値を用いて制御等が行われるようにしてもよく、それにより、ブースタ負圧センサが故障しても、ブースタ負圧に基づく制御等を行うことができる。
(8)前記当該液圧ブレーキシステムの作動状態が、ブレーキ操作部材の操作力、ブレーキ操作部材の操作ストローク、前記マスタシリンダ液圧の少なくとも2つを含む(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム(請求項3)。
ブレーキ操作部材の操作力であるブレーキ操作力がバキュームブースタにより倍力され、その倍力されたブレーキ操作力に応じたマスタシリンダ圧が得られるため、ブースタ負圧の大小により、ブレーキ操作力に対して得られるマスタシリンダ圧が異なる。ブレーキ操作力およびマスタシリンダ圧に基づいてブースタ負圧を推定することができるのである。ブレーキ操作ストロークとマスタシリンダ圧とについても同じである。また、ブレーキ操作ストロークについては、ブレーキ操作部材が標準的な操作速度で操作されると仮定すれば、ブレーキ操作ストロークに対して得られるマスタシリンダ圧が決まるため、ブレーキ操作ストロークとブレーキ操作力との組合わせによっても、ブースタ負圧を推定することができる。
(9)エンジンの吸気側に接続されたバキュームブースタと、そのバキュームブースタにより倍力されたブレーキ操作力に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、そのマスタシリンダから供給される液圧により作動するブレーキシリンダとを含む液圧ブレーキシステムにおいて、
前記エンジン吸気側の負圧である吸気側負圧と当該液圧ブレーキシステムの作動状態とに基づいて、前記ブレーキシリンダに発生する液圧を制御する液圧ブレーキシステム。
ブースタ負圧は、吸気側負圧のみならず液圧ブレーキシステムの作動状態の影響も受けるため、吸気側負圧と液圧ブレーキシステムの作動状態との両方に基づいてブレーキシリンダに発生する液圧を制御すれば、実際のブースタ負圧に応じた制御を行うことができる。
(10)エンジンの吸気側に接続されたバキュームブースタと、そのバキュームブースタにより倍力されたブレーキ操作力に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、そのマスタシリンダから供給される液圧により作動するブレーキシリンダとを含む液圧ブレーキシステムにおいて、
前記エンジン吸気側の負圧である吸気側負圧と当該液圧ブレーキシステムの作動状態とに基づいて、前記ブレーキシリンダの液圧制御を行うブレーキシリンダ液圧制御装置を設けた液圧ブレーキシステム。
(11)前記ブレーキシリンダ液圧制御装置が、前記エンジン吸気側の負圧に基づいて決まる前記バキュームブースタの助勢限界への到達後に、前記ブレーキシリンダの液圧であるブレーキシリンダ圧を助勢限界前と変わりなく制御する助勢限界後制御部を含む(10)項に記載の液圧ブレーキシステム。
(12)前記助勢限界後制御部が、
前記エンジン吸気側の負圧と当該液圧ブレーキシステムの作動状態とに基づいて前記バキュームブースタの負圧であるブースタ負圧を推定するブースタ負圧推定部と、
そのブースタ負圧推定部により推定されたブースタ負圧に基づいて前記助勢限界後制御部に作動を開始させる作動開始制御部と
を含む(11)項に記載の液圧ブレーキシステム(請求項4)。
助勢限界後制御部を、さらに、助勢限界を推定する助勢限界推定部を含むものとすることもできる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、本実施形態の液圧ブレーキシステムの構成を概略的に説明する。
この液圧ブレーキシステムにおいては、図1に示すように、ブレーキ操作部材たるブレーキペダル10の踏力がバキュームブースタ12により倍力され、その倍力された踏力に応じた液圧が液圧源たるマスタシリンダ14に発生させられる。この液圧は、車輪に設けられたブレーキ16のブレーキシリンダ18に供給され、ブレーキシリンダ18が作動させられて車輪の回転が抑制される。また、ブレーキシリンダ18とマスタシリンダ14との間には、ブレーキシリンダ18の液圧を制御するアクチュエータである液圧制御ユニット20が設けられている。
【0008】
液圧制御ユニット20は、電子制御ユニット24(以下、ブレーキECU24と称する)により制御される。ブレーキECU24には、ブレーキペダル10の踏込みを検出するブレーキスイッチ26,マスタシリンダ14の液圧を検出するマスタシリンダ圧センサ28等が接続されている。ブレーキスイッチ26は、ブレーキペダル10が踏み込まれた状態と踏み込まれていない状態とで異なる信号を出力し、ブレーキペダル10の踏込開始時に出力信号の状態が変化するように構成されている。本実施形態においては、ブレーキペダル10が踏み込まれた状態ではON信号を出力し、非踏込位置に復帰した状態ではOFF信号を出力する。ブレーキペダル10の非踏込位置は、車体に設けられた図示しないストッパにより規定される。マスタシリンダ圧センサ28は、マスタシリンダ14の液圧を受けて作動し、マスタシリンダ14からブレーキシリンダ18に供給される液圧が連続的に変化するのに応じて連続して変化する電気信号をブレーキECU24へ出力する。
【0009】
バキュームブースタ12は、後述する低圧室においてエンジン30のインテークマニホルド32に接続されており、負圧が供給される。詳細には、バキュームブースタ12は、インテークマニホルド32の電子制御式スロットルバルブ34が設けられた部分と、インテークマニホルド32が複数のインテークバルブ側へエアを供給するために分岐させられた部分より電子制御式スロットルバルブ34側の部分との間の部分に接続されている。本実施形態においては、インテークマニホルド32がエンジンの吸気側である。電子制御式スロットルバルブ34は、スロットル駆動モータを有する駆動装置により、アクセルペダルの踏込量に応じた角度、開かれる。
【0010】
バキュームブースタ12とインテークマニホルド32との間には、チェック弁36が設けられている。チェック弁36は、インテークマニホルド32からバキュームブースタ12への負圧の供給(バキュームブースタ12の空気がインテークマニホルド32側へ吸引されること)は許容するが、バキュームブースタ12からインテークマニホルド32への負圧の流出(インテークマニホルド32内の空気がバキュームブースタ12へ吸引されること)は阻止するように設けられている。そのため、バキュームブースタ12側の負圧は、インテークマニホルド32側の負圧より、チェック弁36の開弁圧分、低く、すなわち大気圧に近くなる。また、チェック弁36とバキュームブースタ12との間にはタンク38が接続され、負圧を蓄えるようにされている。タンク38は容量の小さいものとされている。
【0011】
インテークマニホルド32にはまた、図示しないインジェクタにより燃料が噴射される。本実施形態では、複数のインジェクタによりそれぞれ、複数の気筒の各々について燃料が噴射される。電子制御式スロットルバルブ34の開度,インジェクタの燃料噴射量,タイミング等は、電子制御式燃料噴射装置の電子制御ユニット40(以下、EFI−ECU40と称する)により制御される。EFI−ECU40には、インテークマニホルド32の負圧を検出する吸気側負圧センサたるインテークマニホルド負圧センサ42,電子制御式スロットルバルブ34の開度を検出するスロットルポジションセンサ44,エンジン30の回転数を検出するエンジン回転数センサ46等が接続されており、それらの検出値に基づいて電子制御式スロットルバルブ34,インジェクタ等を制御する。インテークマニホルド負圧センサ42は、インテークマニホルド32の負圧であって、バキュームブースタ12が接続された部分近傍の負圧を検出する。
【0012】
EFI−ECU40にはまた、ブースタ負圧センサ48が接続されている。ブースタ負圧センサ48は、バキュームブースタ12の後述する低圧室の負圧を受けて作動し、その負圧の大きさが連続的に変化するのに応じて連続的に変化するブースタ負圧信号を出力する。EFI−ECU40とブレーキECU24とは、通信線により接続され、種々の情報を通信する。通信は、例えば、デジタル信号により、1本の通信線で多くの情報を相互通信し得るシリアルデータ通信とされる。本実施形態においては、これらエンジン30,EFI−ECU40,各種センサ42,44,46,48等がエンジンシステムを構成している。
【0013】
液圧ブレーキシステムを図2に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の液圧ブレーキシステムは、4輪車両に設けられるダイヤゴナル2系統式のブレーキ装置であり、アンチロック制御機能およびブレーキ効き特性制御(以下、単に「効き特性制御」という。)機能を有する。ここで、「効き特性制御」とは、バキュームブースタ12に助勢限界があることを考慮し、車体減速度がブレーキ操作力(運転者がブレーキペダル10を踏む力)に対して理想的な勾配で(例えば、バキュームブースタ12の助勢限界の前後を問わず、ほぼ同じ勾配で)増加するようにそれらブレーキ操作力と車体減速度との関係であるブレーキの効き特性を制御することをいう。
【0014】
マスタシリンダ14は、ハウジングに2つの加圧ピストン60a,60bが互いに直列にかつ各々摺動可能に嵌合されることによってハウジング内に各加圧ピストン60a,60bの前方において2つの加圧室が互いに独立して形成されたタンデム型である。このマスタシリンダ14は、バキュームブースタ12を介してブレーキペダル10に連携させられており、そのブレーキペダル10の踏力であるブレーキ操作力がマスタシリンダ14の2つの加圧ピストン60a,60bのうちバキュームブースタ12の側の加圧ピストン60aにバキュームブースタ12により倍力されて伝達される。
【0015】
バキュームブースタ12は、図3に示すように、中空のハウジング64を備えている。ハウジング64内の空間は、パワーピストン66によりマスタシリンダ14の側の低圧室68とブレーキペダル10の側の変圧室70とに仕切られている。低圧室68は、負圧源としての前記インテークマニホルド32の、前記ブースタ負圧センサ48が接続された部分近傍に常時接続されている。低圧室68は、エンジン30の吸気側に接続されているのであり、本実施形態においては、低圧室68の負圧がブースタ負圧であり、ブースタ負圧センサ48は低圧室68の負圧を検出するものとされている。パワーピストン66は、マスタシリンダ14の側において、ゴム製のリアクションディスク72を介してブースタピストンロッド74と連携させられている。ブースタピストンロッド74はマスタシリンダ14の加圧ピストン60aに連携させられ、パワーピストン66の作動力を加圧ピストン60aに伝達する。
【0016】
低圧室68と変圧室70との間に弁機構76が設けられている。弁機構76は、ブレーキペダル10と連携させられているバルブオペレーティングロッド78とパワーピストン66との相対移動に基づいて作動するものであり、コントロールバルブ76aと、エアバルブ76bと、バキュームバルブ76cと、コントロールバルブスプリング76dとを備えている。エアバルブ76bは、コントロールバルブ76aと共同して変圧室70の大気に対する連通・遮断を選択的に行うものであり、バルブオペレーティングロッド78に一体的に移動可能に設けられている。コントロールバルブ76aは、バルブオペレーティングロッド78にコントロールバルブスプリング76dによりエアバルブ76bに着座する向きに付勢される状態で取り付けられている。バキュームバルブ76cは、コントロールバルブ76aと共同して変圧室70の低圧室68に対する連通・遮断を選択的に行うものであり、パワーピストン66に一体的に移動可能に設けられている。
【0017】
このように構成されたバキュームブースタ12においては、非作動状態では、コントロールバルブ76aが、エアバルブ76bに着座する一方、バキュームバルブ76cから離間し、それにより、変圧室70が大気から遮断されて低圧室68に連通させられる。したがって、この状態では、低圧室68も変圧室70も共に等しい高さの負圧(大気圧以下の圧力)とされる。これに対して、作動状態では、バルブオペレーティングロッド78がパワーピストン66に対して相対的に接近し、やがてコントロールバルブ76aがバキュームバルブ76cに着座し、それにより、変圧室70が低圧室68から遮断される。その後、バルブオペレーティングロッド78がパワーピストン66に対してさらに相対的に接近すれば、エアバルブ76bがコントロールバルブ76aから離間し、それにより、変圧室70が大気に連通させられる。この状態では、変圧室70が昇圧し、低圧室68と変圧室70との間に差圧が発生し、その差圧によってパワーピストン66が作動させられ、バキュームブースタ12により倍力されたブレーキ操作力に応じた液圧がマスタシリンダ14に発生させられる。
【0018】
図2に示すように、マスタシリンダ14の一方の加圧室には左前輪FLおよび右後輪RR用の第1ブレーキ系統が接続され、他方の加圧室には右前輪FRおよび左後輪RL用の第2ブレーキ系統が接続されている。それらブレーキ系統は互いに構成が共通するため、以下、第1ブレーキ系統のみを代表的に説明し、第2ブレーキ系統については説明を省略する。
【0019】
第1ブレーキ系統においては、マスタシリンダ14が主通路80により左前輪FLのブレーキシリンダ18と右後輪RRのブレーキシリンダ18とにそれぞれ接続されている。主通路80は、マスタシリンダ14から延び出た後に二股状に分岐させられており、1本の基幹通路84と2本の分岐通路86とが互いに接続されて構成されている。各分岐通路86の先端にブレーキシリンダ18が接続されている。各分岐通路86の途中には常開の電磁開閉弁である増圧弁90が設けられ、開状態でマスタシリンダ14からブレーキシリンダ18へ向かう作動液の流れを許容する増圧状態を実現する。各増圧弁90にはバイパス通路92が接続され、各バイパス通路92には作動液戻り用の逆止弁94が設けられている。各分岐通路86のうち増圧弁90とブレーキシリンダ18との間の部分からリザーバ通路96が延びてリザーバ98に至っている。各リザーバ通路96の途中には常閉の電磁開閉弁である減圧弁100が設けられ、開状態でブレーキシリンダ18からリザーバ98へ向かう作動液の流れを許容する減圧状態を実現する。
【0020】
リザーバ98は、作動液を付勢手段としてのスプリングによって圧力下に収容するものである。このリザーバ98はポンプ通路104により、ポンプ106の吸入側に接続されている。ポンプ106の吸入側には逆止弁である吸入弁108、吐出側には逆止弁である吐出弁110がそれぞれ設けられている。ポンプ106の吐出側と主通路80とを互いに接続する補助通路112には、絞りとしてのオリフィス114と固定ダンパ116とがそれぞれ設けられており、それらにより、ポンプ106の脈動が軽減される。ポンプ106は、アンチロック制御中、作動液をリザーバ98から汲み上げてブレーキ回路内において還流させる。また、後述するように、ブレーキ制御中、ポンプ106を利用して効き特性制御が行われる。
【0021】
前記主通路80には、補助通路112との接続点とマスタシリンダ14との間の部分に圧力制御弁120が設けられている。圧力制御弁120は、ポンプ106の非作動時には、マスタシリンダ14とブレーキシリンダ18との間の作動液の双方向の流れを許容し、ポンプ106の作動時には、ポンプ106からの作動液をマスタシリンダ14に逃がすとともに、その逃がすときのポンプ106の吐出圧の高さをマスタシリンダ14の液圧に基づいて変化させる。前記ブレーキECU24は、ブースタ負圧およびマスタシリンダ圧に基づき、運転者によるブレーキ操作中であって、マスタシリンダ14の液圧より高い液圧をブレーキシリンダ18に発生させることが必要である場合に、ポンプ106を作動させる。
【0022】
圧力制御弁120の構造を図4に基づいて詳細に説明する。
圧力制御弁120は、マスタシリンダ圧とブレーキシリンダ圧との関係を電磁的に制御する形式である。圧力制御弁120は具体的には、図4に示すように、図示しないハウジングと、主通路80におけるマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間の作動液の流通状態を制御する弁子130およびそれが着座すべき弁座132と、それら弁子130および弁座132の相対移動を制御する磁気力を発生させるソレノイド134とを有している。
【0023】
この圧力制御弁120においては、ソレノイド134が励磁されない非作用状態(OFF状態)では、スプリング136の弾性力によって弁子130が弁座132から離間させられ、それにより、主通路80においてマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間での双方向の作動液の流れが許容され、その結果、ブレーキ操作が行われれば、ブレーキシリンダ圧がマスタシリンダ圧と等圧で変化させられる。このブレーキ操作中、弁子130には、弁座132から離間する向きに力が作用するため、ソレノイド134が励磁されない限り、マスタシリンダ圧すなわちブレーキシリンダ圧が高くなっても、弁子130が弁座132に着座してしまうことはない。すなわち、圧力制御弁120は常開弁なのである。
【0024】
これに対し、ソレノイド134が励磁される作用状態(ON状態)では、ソレノイド134の磁気力によりアーマチュア138が吸引され、そのアーマチュア138と一体的に移動する可動部材としての弁子130が固定部材としての弁座132に着座させられる。このとき、弁子130には、ブレーキシリンダ圧とマスタシリンダ圧との差に基づく力F2 とスプリング136の弾性力F3 との和と、ソレノイド134の磁気力に基づく吸引力F1 とが互いに逆向きに作用する。力F2 の大きさは、ブレーキシリンダ圧とマスタシリンダ圧との差と、弁子130がブレーキシリンダ圧を受ける実効受圧面積との積で表される。
【0025】
ポンプ106の吐出圧、すなわちブレーキシリンダ圧が小さく、力F2 と弾性力F3 との和が吸引力F1 以下である間は、圧力制御弁120は閉じており、ポンプ106からの作動液がマスタシリンダ14に逃げることが阻止され、ポンプ106の吐出圧が増加し、ブレーキシリンダ18にマスタシリンダ圧より高い液圧が発生させられる。それに対し、ポンプ106の吐出圧、すなわちブレーキシリンダ圧が更に増加し、力F2 と弾性力F3 との和が吸引力F1 より大きくなれば、弁子130が弁座132から離間し、ポンプ106からの作動液がマスタシリンダ14に逃がされ、その結果、ポンプ106の吐出圧、すなわちブレーキシリンダ圧がそれ以上増加することが阻止される。このようにしてブレーキシリンダ18には、スプリング136の弾性力F3 を無視すれば、マスタシリンダ圧に対してソレノイド吸引力F1 に基づく差圧分、高い液圧が発生させられることになる。
【0026】
この圧力制御弁120には図2に示すように、バイパス通路142が設けられており、そのバイパス通路142の途中に逆止弁144が設けられている。万が一、ブレーキペダル10の踏込み時に圧力制御弁120内の可動部材に生ずる流体力によって圧力制御弁120が閉じることがあっても、マスタシリンダ14からブレーキシリンダ18へ向かう作動液の流れが確保されるようにするためである。圧力制御弁120にはさらに、それに並列にリリーフ弁146も設けられている。ポンプ106による吐出圧が過大となることを防止するためである。
【0027】
ポンプ106は、アンチロック制御中,効き特性制御中に作動し、効き特性制御の実行中には、リザーバ98から作動液を汲み上げ、その作動液を各ブレーキシリンダ18に吐出することによって各ブレーキシリンダ18が増圧される。しかし、アンチロック制御が実行されていない場合には、リザーバ98に汲み上げるべき作動液が存在しないのが普通であり、効き特性制御の実行を確保するためには、アンチロック制御の実行の有無を問わず、リザーバ98に作動液を補給することが必要となる。そのため、本実施形態においては、基幹通路84のうちマスタシリンダ14と圧力制御弁120との間の部分から延びてリザーバ98に至る補給通路148が設けられている。
【0028】
補給通路148の途中に流入制御弁150が設けられている。流入制御弁150は、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の補給が必要であるときには開状態となり、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の流れを許容し、一方、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の補給が必要ではないときには閉状態となり、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の流れを阻止し、マスタシリンダ14による昇圧を可能とする。本実施形態においては、流入制御弁150が常閉の電磁開閉弁とされている。
【0029】
また、ポンプ通路104のうち補給通路148との接続点とリザーバ通路96との接続点との間の部分に、補給通路148からリザーバ98に向かう作動液の流れを阻止し、その逆向きの流れを許容する逆止弁152が設けられている。そのため、主通路80のうち、圧力制御弁120より上流側の部分内の高圧の作動液は、リザーバ98により低圧にされずに、ポンプ106により応答性良く、汲み上げられる。本実施形態においては、増圧弁90,減圧弁100,リザーバ98,ポンプ106等がアンチロック制御用液圧制御機構部を構成し、圧力制御弁120,流入制御弁150,リザーバ98,ポンプ106等がブレーキ効き特性制御用液圧制御機構部を構成し、これらが液圧制御ユニット20を構成している。両液圧制御機構部は、リザーバ98およびポンプ106を共用しているのである。
【0030】
図5には、本実施形態の液圧ブレーキシステムの電気的構成が示されている。前記ブレーキECU24は、PU(プロセッシングユニット),ROM,RAM,I/O回路,それらを接続するバスを含むコンピュータを主体として構成されている。ブレーキECU24の入力側に前記ブレーキスイッチ26,マスタシリンダ圧センサ28,EFI−ECU40に加えて、車輪速センサ158が接続されている。車輪速センサ158は、各輪毎に設けられ、各輪の車輪速を規定する車輪速信号を出力する。一方、ブレーキECU24の出力側には、前記ポンプ106を駆動するポンプモータ160が接続され、そのポンプモータ160の駆動回路162にモータ駆動信号が出力される。ブレーキECU24の出力側にはさらに、前記圧力制御弁120のソレノイド134の駆動回路164、流入制御弁150,増圧弁90および減圧弁100の各ソレノイド166の各駆動回路168(図には複数のソレノイド166,駆動回路168がそれぞれまとめて図示されている)も接続されている。ソレノイド134の駆動回路164には、ソレノイド134の磁気力をリニアに制御するための電流制御信号が出力され、一方、流入制御弁150等の各ソレノイド166の各駆動回路168にはそれぞれ、ソレノイド166をON/OFF駆動するためのON/OFF駆動信号が出力される。EFI−ECU40は、ブレーキECU24の出力側にも接続されている。図5においてブレーキECU24の出力側についての接続は、第1ブレーキ系統について代表的に図示されており、第2ブレーキ系統については図示を省略する。
【0031】
コンピュータのROMには、図6,図7および図8にそれぞれフローチャートで表すブレーキ効き特性制御ルーチンおよび流入制御弁制御ルーチンの他、アンチロック制御ルーチン等が記憶されており、これらルーチンがPUによりRAMを使用しつつ実行されることにより、効き特性制御,アンチロック制御等がそれぞれ実行される。アンチロック制御は、車輪速センサ158により各輪の車輪速および車体の走行速度を監視しつつ、増圧弁90は開状態、減圧弁100は閉状態とする増圧状態,増圧弁90も減圧弁100も閉状態とする保持状態および増圧弁90は閉状態、減圧弁100は開状態とする減圧状態を選択的に実現することにより、車両制動時に各輪がロックすることを防止するように行われる。さらに、アンチロック制御ルーチンは、アンチロック制御中、ポンプモータ160を作動させ、ポンプ106によりリザーバ98から作動液を汲み上げて主通路104に戻す。アンチロック制御は、本発明とは直接関係がないため、更なる説明は省略する。また、コンピュータのRAMには、図9に示すように、インテークマニホルド負圧推定値メモリ170等がワーキングメモリと共に設けられている。
【0032】
以下、圧力制御弁120を用いたブレーキECU24による効き特性制御、マスタシリンダ圧の助勢限界値を得るためのブースタ負圧の取得を説明するが、まず、効き特性制御を概略的に説明する。
バキュームブースタ12は、ブレーキ操作力がある値まで増加すると、変圧室70の圧力が大気圧まで上昇し切ってしまい、助勢限界に達する。助勢限界後は、バキュームブースタ12はブレーキ操作力を倍力することができないから、何ら対策を講じないと、図10にグラフで表されているように、ブレーキの効き、すなわち、同じブレーキ操作力Fに対応するブレーキシリンダ圧PB の高さが助勢限界がないと仮定した場合におけるブレーキシリンダ圧PB の高さより低下する。かかる事実に着目して効き特性制御が行われるのであり、具体的には、図11にグラフで表されているように、バキュームブースタ12が助勢限界に達した後には、ポンプ106を作動させてマスタシリンダ圧PM より差圧ΔPだけ高い液圧をブレーキシリンダ18に発生させ、それにより、バキュームブースタ12の助勢限界の前後を問わず、ブレーキの効きを安定させる。ここに、差圧ΔPとマスタシリンダ圧PM との関係は例えば、図12にグラフで表されるものとされる。
【0033】
したがって、効き特性制御を行うためには、バキュームブースタ12が助勢限界に達したか否かを判定することが必要になるが、バキュームブースタ12が助勢限界に達したときのブレーキ操作力Fおよびマスタシリンダ圧PM は常に一定であるとは限らず、車両の状態、例えば、運転者による加速操作の有無,その加速操作の強さ,エンジンの負荷等や、液圧ブレーキシステムの作動状態、例えば、運転者によるブレーキペダル10の踏込速度の大きさ等によってブースタ負圧が変動すればそれに伴って変化する。ブースタ負圧が絶対真空側にシフトするほど、すなわち負圧傾向が強まり、大気圧との差が大きくなるほど、バキュームブースタ12が助勢限界に達したときのブレーキ操作力Fおよびマスタシリンダ圧PM が大きくなるのである。
【0034】
そのため、ブースタ負圧の変動を考慮しないでブレーキ操作力Fまたはマスタシリンダ圧PM がある値まで増加したときにバキュームブースタ12が助勢限界に達したと判定し、ポンプ106を作動させてブレーキシリンダ圧PB を差圧ΔPだけ増圧したのでは、ブースタ負圧の変動に伴い、同じブレーキ操作力Fに対応するブレーキシリンダ圧PB の高さが変動し、ブレーキの効きが安定しない。そこで、本実施形態においては、ブースタ負圧である低圧室68の圧力PC に基づいて、バキュームブースタ12が助勢限界に達したときのマスタシリンダ圧(以下、助勢限界値PM0と称する)を取得し、実際のマスタシリンダ圧が助勢限界値PM0に達したときに効き特性制御がポンプ106を作動させるようにされている。また、ブースタ負圧センサ48が設けられていて、ブースタ負圧が検出されるが、吸気側負圧であるインテークマニホルド32の負圧と、液圧ブレーキシステムの作動状態の一種であるマスタシリンダ圧とに基づいてブースタ負圧が推定され、検出値と推定値との比較により、ブースタ負圧センサ48が故障状態にあるか否かが推定されるとともに、故障状態であると推定されれば、ブースタ負圧の推定値を用いて効き特性制御が行われるようにされている。
【0035】
以下、ブレーキ効き特性制御ルーチンに基づいて、ブレーキ効き特性制御、特にブースタ負圧の取得を詳細に説明する。
まず、ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同じ。)においてブレーキスイッチ26がONであるか否かの判定が行われる。ブレーキペダル10が踏み込まれておらず、踏み込まれていても、ブレーキスイッチ26がONでなければ、S1の判定結果はNOになってS2が実行され、フラグがリセットされるとともにメモリ170等がクリアされるとともに、終了処理が行われてルーチンの実行は終了する。終了処理は、例えば、圧力制御弁120および流入制御弁150の各ソレノイド134,166のOFF、ポンプモータ160のOFFである。
【0036】
ブレーキスイッチ26がONになれば、S1の判定結果がYESになってS3が実行され、フラグがセットされているか否かの判定が行われる。このフラグは、セットにより、マスタシリンダ圧の助勢限界値PM0が取得されたことを記憶し、図示しない初期設定においてリセットされている。S3が初めて実行され、あるいはマスタシリンダ圧の助勢限界値PM0が取得されていなければ、フラグはセットされておらず、S3の判定結果はNOになってS4が実行され、ブレーキスイッチ26がONになってから設定時間が経過したか否かの判定が行われる。ブレーキスイッチ26がONになってから設定時間が経過した状態でブースタ負圧の推定を行うため、S4の判定が行われるのであり、この判定結果は当初はNOである。設定時間は、例えば、コンピュータのPUに設けられたタイマを用いて計測される。
【0037】
ブレーキスイッチ26がONになってから設定時間が経過すれば、S4の判定結果はYESになってS5が実行され、エンジン30の吸気側、すなわちインテークマニホルド32の負圧が推定される。この推定は、本実施形態においては、スロットルポジションセンサ44により検出された電子制御式スロットルバルブ34の開度およびエンジン回転数センサ46により検出されたエンジン回転数を用いて行われる。これら開度および回転数は、通信により、ブレーキECU24からEFI−ECU40への要求に基づいて、EFI−ECU40から供給され、空気の絞り量および流量が得られ、インテークマニホルド32の負圧が推定される。この推定は、よく知られているため、詳細な説明は省略する。本実施形態では、インテークマニホルド32の負圧は値で推定され、推定値は1つであり、インクテークマニホルド負圧推定値メモリ170に記憶される。
【0038】
次いでS6が実行され、インテークマニホルド負圧センサ42が正常であるか否かの判定が行われる。この判定時には、通信により、ブレーキECU24からEFI−ECU40への要求により、EFI−ECU40からブレーキECU24へのインテークマニホルド負圧センサ42の検出値が供給され、S5において推定された推定値と一致するか否かが判定される。この判定は、本実施形態においては、推定値に設定値を加減することにより得られる範囲内に検出値があるか否かにより行われる。検出値と推定値とが一致していれば、インテークマニホルド負圧センサ42は正常であると判定され、S6の判定結果はYESになってS7が実行され、ブースタ負圧推定用インテークマニホルド負圧メモリ172に検出値が記憶される。
【0039】
それに対し、インテークマニホルド負圧センサ42の検出値が推定値と一致していなければ、インテークマニホルド負圧センサ42が故障状態にあると推定され、S6の判定結果がNOになってS8が実行され、ブースタ負圧推定用インテークマニホルド負圧メモリ172にインテークマニホルド負圧の推定値が記憶される。S8においてはまた、インテークマニホルド負圧センサ42の故障が、報知装置の一種であるランプの点灯によって報知されるとともに、通信により、EFI−ECU40に報知される。ブースタ負圧推定用インテークマニホルド負圧メモリ172への検出値あるいは推定値の記憶の後、S9が実行され、ブースタ負圧の推定が行われる。インテークマニホルド負圧の検出値を用いても、推定値を用いてもブースタ負圧の推定は同様に行われるため、以下のブースタ負圧の推定の説明において、単にインテークマニホルド負圧と称する。
【0040】
ブースタ負圧の推定は、インテークマニホルド負圧と、液圧ブレーキシステムの作動状態、本実施形態においてはマスタシリンダ圧とに基づいて行われる。具体的には、インテークマニホルド負圧に基づいて得られることが予想されるブースタ負圧の最大値から、ブレーキペダル10の踏込み、すなわちバキュームブースタ12の作動によるブースタ負圧の変動量である減少量をひくことにより、ブースタ負圧が範囲で推定される。ブースタ負圧の減少量には、ブレーキペダル10の踏込みが開始されてから、ブレーキスイッチ26がONになるまでのブースタ負圧の減少量およびブレーキスイッチ26がONになってから設定時間が経過するまでのブースタ負圧の減少量が含まれる。
【0041】
バキュームブースタ12に得られ得るブースタ負圧は、インテークマニホルド負圧によって決まる。インテークマニホルド負圧は、図13に示すように、絶対真空にはならず、また、エンジン30が作動している限り、大気圧にもならない。インテークマニホルド負圧には上限および下限があり、この範囲内のいずれかにあるはずなのである。ブースタ負圧にも上限および下限があり、下限は、図13に破線で示すように、インテークマニホルド負圧が大きくなるほど大きくなるが、チェック弁36が設けられているため、実線で示すように、インテークマニホルド負圧より、チェック弁36が設けられることによる圧力損失分、すなわちチェック弁36の開弁圧分、小さくなる。また、ブースタ負圧の上限は、インテークマニホルド負圧の上限値より、圧力損失分、小さい値となる。そして、インテークマニホルド負圧が増大すれば、低圧室68内の空気の吸引により、ブースタ負圧も増大するが、インテークマニホルド負圧が低下してもチェック弁36があるため、ブースタ負圧が低下するとは限らず、少なくとも数秒間、ブレーキペダル10が踏み込まれておらず、安定した状態においてブースタ負圧は、図13のグラフに斜線を施した範囲にあると考えられる。本実施形態においては、この範囲がテーブル化されてコンピュータのROMに記憶されている。インテークマニホルド負圧に対してあり得るブースタ負圧の下限値が、インテークマニホルド負圧毎に記憶されているのである。ブースタ負圧の上限値は、インテークマニホルド負圧の大きさに関係なく、同じであるため、全部のインテークマニホルド負圧に共通に記憶されている。ブースタ負圧の下限値は、テーブルの他、例えば、式により表し、その式を用いて演算されるようにしてもよい。
【0042】
そして、ブレーキペダル10が踏み込まれれば、マスタシリンダ圧が変動するのに伴ってブースタ負圧も変動する。ブレーキペダル10が踏み込まれ、パワーピストン66が前進するのに伴って低圧室68の容積が減少する。バキュームブースタ12の低圧室68にタンク38が接続されているが、小さいため、低圧室68の容積の減少によりブースタ負圧の減少が生ずる。低圧室68内の空気が加圧され、負圧が低下するのである。図14のグラフに示すように、マスタシリンダ圧の増加量が大きいほど、ブースタ負圧が小さくなってブースタ負圧の減少量が大きくなり、さらに、二点鎖線で示すように、ブースタ負圧の減少にはばらつきがあることが実験によりわかっている。このばらつきは、ブレーキペダル10の踏込速度や踏込み開始時のブースタ負圧の大きさの違い等により生じ、マスタシリンダ圧増加量に対するブースタ負圧の減少範囲(上限値および下限値)は、実験により取得されている。
【0043】
したがって、マスタシリンダ圧の増加量に対するブースタ負圧の減少量にもばらつきがあり、ブレーキペダル10が踏み込まれ、ブレーキスイッチ26がONになった後のマスタシリンダ圧の増加量に対するブースタ負圧の減少量は、図15のグラフに示すように、マスタシリンダ圧の増加量が大きくなるほど、ブースタ負圧の減少量が大きくなるとともに、その減少量にはばらつきがある。マスタシリンダ圧の変化量に対するブースタ負圧の減少量の範囲は、例えば、ブレーキペダル10の踏込速度やブレーキペダル10が踏み込まれていない状態でのブースタ負圧の大きさ等を考慮して、実験により取得され、本実施形態においては、マスタシリンダ圧の減少量に対してブースタ負圧の減少量の範囲の下限値がテーブル化されてコンピュータのROMに記憶されている。なお、テーブルに代えて、例えば、マスタシリンダ圧の増加量に対する上記下限値を式により表し、下限値が式により演算されるようにしてもよい。
【0044】
ブースタ負圧の推定時には、ブースタ負圧推定用インテークマニホルド負圧メモリ172に記憶されたインテークマニホルド負圧およびインテークマニホルド負圧に対してあり得るブースタ負圧の下限値を規定するテーブルに基づいて、ブースタ負圧の下限値が取得される。また、マスタシリンダ圧センサ28の検出信号に基づいて得られるマスタシリンダ圧およびマスタシリンダ圧に対してブースタ負圧の減少量の下限値を規定するテーブルに基づいて、ブースタ負圧の減少量の下限値が取得される。
【0045】
そして、図13に示すように、ブースタ負圧の上限値から、ブースタ負圧の減少量の下限量を表す下限値と、ブレーキペダル10が踏み込まれてから、ブレーキスイッチ26がONになるまでの間のブースタ負圧の下限量とが引かれ、それにより得られる値が、ブレーキスイッチ26がONになってから設定時間が経過した状態におけるブースタ負圧の上限値とされる。ブースタ負圧の下限値はインテークマニホルド圧に基づいてテーブルから得られた値のままであり、ブースタ負圧は、この上限値と下限値との間にあると推定される。そして、このブースタ負圧の推定範囲を規定する上限値および下限値が、ブースタ負圧センサ故障推定範囲メモリ173に記憶されるとともに、上限値と下限値との中間値(平均値)が演算されてブースタ負圧の推定値に決定され、ブースタ負圧推定値メモリ174に記憶される。
【0046】
ブースタ負圧の減少量を得るためのマスタシリンダ圧は、ブレーキスイッチ26がONになってから、設定時間、例えば、秒単位で設定される時間の経過後に得られる値であり、ブレーキペダル10の踏込速度が大きいほどマスタシリンダ圧は大きく、ブースタ負圧は、実質的にマスタシリンダ圧勾配やブレーキペダル10の踏込速度、すなわちバキュームブースタ12ないし液圧ブレーキシステムの作動速度を考慮して推定されることとなる。なお、ブースタ負圧の上限値から、ブースタ負圧の減少量の下限値を引いた値が、ブースタ負圧の下限値より小さくなった場合には、ブースタ負圧の下限値がブースタ負圧であると推定され、ブースタ負圧センサ故障推定範囲メモリ173,ブースタ負圧推定値メモリ174に記憶される。ブースタ負圧の推定値が、ブースタ負圧センサ故障推定範囲の下限値であり、上限値であることとなる。
【0047】
ブースタ負圧の推定後、S10が実行され、ブースタ負圧センサ48が正常であるか否かの判定が行われる。この判定は、ブースタ負圧センサ48の検出値が、ブースタ負圧センサ故障推定範囲メモリ173に記憶されたブースタ負圧の推定量(範囲)の上限値と下限値との間にあるか否かにより行われる。ブースタ負圧センサ48の検出値は、通信により、EFI−ECU40から供給され、ブースタ負圧の推定範囲の上限値および下限値とそれぞれ比較される。検出値が上限値以下であるか否か、下限値以上であるか否かが判定されるのである。なお、この際、誤差およびばらつきを考慮し、上限値および下限値にはそれぞれ範囲が設定される。ブースタ負圧の検出値がブースタ負圧の推定範囲内にあれば、すなわち検出値が上限値以下であり、かつ、下限値以上であれば、ブースタ負圧センサ48は正常と判定され、S10の判定結果がYESになってS11が実行され、検出値がブレーキ効き特性制御用ブースタ負圧メモリ176に記憶される。検出値が推定範囲内になければ、検出値は正しくなく、ブースタ負圧センサ48は故障状態にあると推定され、S10の判定結果がNOになってS12が実行され、ブレーキ効き特性制御用ブースタ負圧メモリ176には、ブースタ負圧推定値メモリ174に記憶された推定値が記憶される。S12においてはまた、報知装置の一種であるランプの点灯により、ブースタ負圧センサ48の故障が報知されるとともに、EFI−ECU40にブースタ負圧センサ48が故障状態にあると推定されることが報知される。
【0048】
次いでS13が実行され、助勢限界時のマスタシリンダ圧である助勢限界値圧PM0が取得される。助勢限界値PM0は、ブレーキ効き特性制御用ブースタ負圧メモリ176に記憶されたブースタ負圧に基づいて取得される。ブースタ負圧と助勢限界値PM0との間には予め定められた関係があり、その関係は、例えば式により表され、あるいはテーブル化されてROMに記憶されている。この関係に従って、ブースタ負圧の実際値に対応する助勢限界値PM0が演算され、あるいは取得される。その予め定められた関係は、ブースタ負圧が大きいほど(負圧傾向が強いほど)、助勢限界値PM0が増加する関係であり、グラフで表せば、例えば図16に示すものとなる。得られた助勢限界値PM0は助勢限界値メモリ178に記憶される。また、フラグがセットされて、助勢限界値PM0が取得されたことが記憶される。ブースタ負圧センサ46が故障状態になければ、助勢限界値PM0はブースタ負圧センサ46の検出値に基づいて取得され、故障状態にあれば、推定値に基づいて取得される。ブースタ負圧センサ46の検出により得られる値は推定値より精度が高く、検出値に基づいて助勢限界値PM0を設定した場合、ブレーキ効き特性制御をより精度良く行うことができる。
【0049】
次いで図7に示すS14が実行され、マスタシリンダ圧が助勢限界値PM0以上であるか否かの判定が行われる。マスタシリンダ圧センサ28により検出されるマスタシリンダ圧が読み込まれ、助勢限界値メモリ178に記憶された助勢限界値PM0と比較されるのである。マスタシリンダ圧が助勢限界値PM0以上でなければ、S14の判定結果はNOになり、S20,S21,S22が実行されて、圧力制御弁120のソレノイド134,流入制御弁150のソレノイド166およびポンプモータ160がそれぞれOFFにされる。現在のマスタシリンダ圧が小さい間はブレーキ効き特性制御は行われないのである。
【0050】
助勢限界値PM0が得られれば、フラグがセットされることにより、S3の判定結果がYESになってS4〜S13がスキップされる。一旦、助勢限界値PM0が取得されれば、ブレーキペダル10の踏込みが解除され、次にブレーキペダル10が踏み込まれるまで更新されないのである。
【0051】
マスタシリンダ圧が助勢限界値PM0以上になれば、S14の判定結果はYESになってS15が実行され、現在のマスタシリンダ圧に基づき、マスタシリンダ圧とブレーキシリンダ圧との差圧ΔPの目標値が演算される。マスタシリンダ圧の実際値の、助勢限界値PM0からの増分IPM と、目標差圧ΔPとの関係がROMに記憶されており、その関係に従って現在のマスタシリンダ圧に対応する目標差圧ΔPが決定されるのである。その関係は例えば、図17にグラフで表されているように、増分IPM が増加するにつれて目標差圧ΔPが0からリニアに増加する関係とされる。
【0052】
次いでS16が実行され、圧力制御弁120のソレノイド134の、その目標差圧ΔPに応じた電流値Iが演算される。目標差圧ΔPとソレノイド電流値Iとの関係もROMに記憶されており、その関係に従って目標差圧ΔPに対応するソレノイド電流値Iが演算されるのである。演算後、S17において電流値Iで励磁電流がソレノイド134に供給されるようにソレノイド134の駆動回路164に駆動制御信号が出力され、圧力制御弁120が制御される。
【0053】
その後、S18が実行され、流入制御弁150の制御が行われる。この制御は、図8に示す流入制御弁制御ルーチンに基づいて行われる。簡単に説明すれば、アンチロック制御中でなければ、流入制御弁150が開かれ(S31,S34)、アンチロック制御中であって、リザーバ98に作動液があれば、流入制御弁150は開かれず(S31〜S33,S35)、リザーバ98に作動液がなければ、流入制御弁150が開かれる(S31〜S34)。なお、アンチロック制御中であるか否かは、例えば、アンチロック制御ルーチンにおいて、アンチロック制御の開始によってフラグがセットされ、アンチロック制御の実行が記憶されるようにすることによりわかる。リザーバ98における作動液の残量推定演算は、例えば、増圧弁90が増圧状態にある時間と減圧弁100が減圧状態にある時間とに基づいて行われる。
【0054】
S18の実行後、S19が実行されてポンプモータ160の駆動回路162にモータ駆動信号が出力され、ポンプモータ160に駆動電流が供給され、ポンプ106によりリザーバ98から作動液が汲み上げられる。この作動液が各ブレーキシリンダ18に吐出され、これにより各ブレーキシリンダ18に、マスタシリンダ圧より、そのマスタシリンダ圧に応じた目標差圧ΔPだけ高い液圧が発生させられる。
【0055】
マスタシリンダ圧が助勢限界値PM0以上である間は、上記のようにブレーキシリンダ18に高い液圧が発生させられる。その後、ブレーキペダル10の踏込みが緩められ、それに伴ってマスタシリンダ圧が助勢限界値PM0より小さくなれば、S14の判定結果がNOになってS20〜S22が実行され、ブレーキシリンダ圧の電気的な助勢制御が終了される。そして、ブレーキペダル10の踏込みが解除されれば、S1の判定結果がNOになってS2が実行され、フラグがリセットされるとともに、メモリ170等がクリアされる。
【0056】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、液圧ブレーキシステムの作動速度がブレーキ作動状態であり、ブレーキECU24のS4を実行する部分が計時手段を構成し、ブレーキスイッチ26およびマスタシリンダ圧センサ28と共にブレーキ作動状態検出装置を構成している。計時手段,ブレーキスイッチ26およびマスタシリンダ圧センサ28は、ブースタ作動速度取得装置を構成していると考えることもできる。ブレーキECU24のS9を実行する部分が作動速度依拠ブースタ負圧推定手段を含むブースタ負圧推定部を構成し、このブースタ負圧推定部を含むブレーキECU24がブースタ負圧推定装置を構成している。また、ブレーキECU24のS10を実行する部分がブースタ負圧センサ故障推定部を構成し、ブースタ負圧センサ故障推定部を含むブレーキECU24がブースタ負圧センサ故障推定装置を構成している。さらに、ブレーキECU24のS5を実行する部分が吸気側負圧推定部を構成し、この吸気側負圧推定部を含むブレーキECU24が吸気側負圧推定装置を構成し、ブレーキECU24のS6を実行する部分が吸気側負圧センサ故障推定部を構成し、吸気側負圧センサ故障推定部を含むブレーキECU24が吸気側負圧センサ故障推定装置を構成している。また、ブレーキECU24のS9を実行する部分がブースタ負圧推定部を構成し、S13を実行する部分が助勢限界推定部を構成し、S14を実行する部分が作動開始制御部を構成し、これらがS15〜S19を実行する部分と共に助勢限界後制御部を構成し、助勢限界後制御部は、前記ブレーキ効き特性制御用液圧制御機構部と共にブレーキシリンダ液圧制御装置を構成している。
【0057】
本発明の別の実施形態を説明する。本実施形態は、液圧ブレーキシステムの作動状態として、マスタシリンダ圧に加えてマスタシリンダ圧勾配を用いてブースタ負圧を推定するようにしたものである。マスタシリンダ圧およびマスタシリンダ圧勾配に対するブースタ負圧の減少量は実験により範囲で取得され、マスタシリンダおよびマスタシリンダ圧勾配に対するブースタ負圧の減少量の下限値(下限量)がテーブル化されてブレーキECUのコンピュータのROMに記憶されている。この下限値は式により表し、式により演算されるようにしてもよい。その他の構成は、図示は省略するが、前記実施形態と同じであり、ブレーキペダル,ブレーキスイッチ,マスタシリンダ圧センサ等は、前記実施形態と同様に構成されている。
【0058】
ブレーキECUのコンピュータのROMには、図18にフローチャートで表すブレーキ効き特性制御ルーチンが記憶され、RAMは図19に示すように構成されている。ブレーキ効き特性制御ルーチンに基づいてブースタ負圧の推定を説明する。本実施形態のブレーキ効き特性制御ルーチンは、マスタシリンダ圧勾配を取得し、マスタシリンダ圧およびマスタシリンダ圧勾配を用いてブースタ負圧を推定するとともに、ブレーキペダルが踏み込まれている間、ブースタ負圧の推定が繰返し行われるように構成されている。前記実施形態のブレーキ効き特性制御ルーチンとは、異なる部分を説明し、同じ部分については説明を省略する。
【0059】
ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキスイッチがONになれば、S41の判定結果がYESになってS43が実行され、マスタシリンダ圧センサの検出信号に基づいて得られるマスタシリンダ圧の検出値が読み込まれ、今回マスタシリンダ圧メモリ180に記憶される。この際、現に今回マスタシリンダ圧メモリ180に記憶されている値は前回マスタシリンダ圧メモリ182に移されて前回マスタシリンダ圧とされ、読み込まれたマスタシリンダ圧が今回マスタシリンダ圧メモリ180に記憶されて今回マスタシリンダ圧とされる。
【0060】
次いでS44が実行され、マスタシリンダ圧勾配が演算される。この演算は、本実施形態では、今回マスタシリンダ圧から前回マスタシリンダ圧を引いた値を、本ルーチンの実行時間間隔で割ることにより行われる。得られたマスタシリンダ圧勾配は、今回マスタシリンダ圧勾配メモリ184に記憶される。この記憶に先立って、今回マスタシリンダ圧勾配メモリ184および前回マスタシリンダ圧勾配メモリ186にそれぞれ記憶されている値は各々、前回マスタシリンダ圧勾配メモリ186および前々回マスタシリンダ圧勾配メモリ188に移される。連続して演算される3つのマスタシリンダ圧勾配が記憶されるのである。
【0061】
次いで、S45〜S48が前記S5〜S8と同様に実行され、インテークマニホルド負圧の推定およびインテークマニホルド負圧センサの故障推定が行われた後、S49においてブースタ負圧の推定が行われる。ブースタ負圧の推定は、マスタシリンダ圧およびマスタシリンダ圧勾配を用いて、ROMに記憶されたテーブルからブースタ負圧の減少量の下限値を取得し、その下限値を用いて、前記実施形態におけると同様に行われる。マスタシリンダ圧は、今回マスタシリンダ圧メモリ180に記憶された値が用いられ、マスタシリンダ圧勾配は、3つのマスタシリンダ圧勾配メモリ184〜188にそれぞれ記憶されたマスタシリンダ圧勾配の平均値が用いられる。このようにマスタシリンダ圧に加えてマスタシリンダ圧勾配を用いれば、ブレーキの作動状態がよりきめ細かにわかり、ブースタ負圧の減少量の範囲がより精度良く得られ、ブースタ負圧をより精度良く推定することができる。ブレーキペダルが踏み込まれている間、S43〜S53が繰返し実行され、ブースタ負圧の推定が繰返し行われるとともに、助勢限界値が更新される。マスタシリンダ圧勾配を用いてブースタ負圧がより精度良く推定されるため、ブースタ負圧の推定が繰返し行われ、より精度の良い助勢限界値が得られる。
本実施形態においては、液圧ブレーキシステムの作動速度がブレーキ作動状態であり、ブレーキECUのS44を実行する部分がブースタ作動速度取得部たるマスタシリンダ圧勾配取得部を構成し、マスタシリンダ圧センサ28と共にブレーキ作動状態検出装置を構成している。また、ブレーキECUのS49を実行する部分が作動速度依拠ブースタ負圧推定手段を含むブースタ負圧推定部を構成し、このブースタ負圧推定部を含むブレーキECUがブースタ負圧推定装置を構成している。
【0062】
本発明の更に別の実施形態を説明する。本実施形態は、ブレーキスイッチがONになった後の時間を用いてブースタ負圧の減少量を求め、それによりブースタ負圧を推定するようにしたものである。図22のグラフに示すように、ブレーキペダルが踏み込まれてからやや時間をおいてブレーキスイッチがONになり、その間、パワーピストンの前進によりブースタ負圧は、例えば、数10mmHg減少する。そして、ブレーキペダルの踏込みに伴ってブースタ負圧は減少するとともに、減少量が増大し、ブレーキペダルの踏込みが停止されれば、減少は停止する。図22のグラフには、ブレーキペダルが標準的な速度で踏み込まれた場合における時間とブースタ負圧の減少量との関係が示されている。この関係は、予め実験によって得られており、本実施形態においてはテーブル化されてコンピュータのROMに記憶されている。上記時間とブースタ負圧の減少量との関係を式により表し、その式によりブースタ負圧の減少量が演算されるようにしてもよい。
【0063】
本実施形態においてブレーキECUのROMには、図20に示すブレーキ効き特性制御ルーチンが記憶され、そのルーチンを実行するためのRAMは、図21に示すように構成されている。ブースタ負圧の推定は、ブレーキペダルが踏み込まれている間、繰返し行われる。ブレーキペダルが踏み込まれ、ブレーキスイッチがONになれば、S61の判定結果はYESになってS63が実行され、フラグがセットされているか否かの判定が行われる。このフラグは、前記実施形態のフラグとは異なるフラグであって、セットにより、ブレーキスイッチがOFFからONになったことを記憶するが、初期設定においてリセットされており、ブレーキスイッチがOFFからONになった後、初めてS63が実行されるときにはS63の判定結果はNOになってS64が実行され、ブレーキスイッチがONになったときの時間がブレーキスイッチON時時間メモリ190に記憶される。コンピュータのPUに設けられたタイマの時間が記憶されるのである。次いでS65が実行されてフラグがセットされ、ブレーキスイッチがOFFからONになったことが記憶される。
【0064】
S66〜S69においてインテークマニホルド負圧の推定等が前記実施形態のS5〜S8と同様に行われた後、S70が実行され、ブースタ負圧が推定される。この推定は、S70が実行されるときの時間、すなわちコンピュータのPUのタイマが示す時間が読み込まれ、その時間から、ブレーキスイッチON時時間メモリ190に記憶された時間がひかれて、ブレーキスイッチ26がONになってからブースタ負圧の推定が実行されるまでの時間が求められる。そして、この時間を用いて、ブレーキスイッチ26がONになった後の時間とブースタ負圧の減少量との関係を規定するテーブルから、ブースタ負圧の減少量が取得され、この減少量を用いて、前記各実施形態におけると同様に、ブースタ負圧が推定されるとともに、ブースタ負圧センサ故障推定のためのブースタ負圧の推定範囲が取得される。
【0065】
そして、ブースタ負圧センサの故障推定が行われた後(S71〜S73)、マスタシリンダ圧の助勢限界値が取得される(S74)。ブレーキペダル10が踏み込まれたままであれば、次にS63が実行されるとき、その判定結果はYESになってS64,S65がスキップされ、インテークマニホルド負圧の推定,ブースタ負圧の推定等が行われる。ブレーキペダルの踏込時間が長いほど、ブースタ負圧の減少量が多くなり、それに応じてブースタ負圧が推定される。ブレーキペダルの踏込みが解除されれば、S61の判定結果がNOになってS62が実行され、フラグのリセット等が行われる。
本実施形態においては、液圧ブレーキシステムの作動量がブレーキ作動状態であり、ブレーキECUのS64を実行する部分が計時手段を構成し、ブレーキスイッチと共にブレーキ作動状態検出装置を構成し、ブレーキECUのS70を実行する部分がブースタ負圧推定部を構成し、このブースタ負圧推定部を含むブレーキECUがブースタ負圧推定装置を構成している。
【0066】
上記各実施形態においては、インテークマニホルド負圧と液圧ブレーキシステムの作動状態とに基づいてブースタ負圧を推定するようにされていたが、ブレーキ操作力、ブレーキ操作ストローク、マスタシリンダ圧の少なくとも2つに基づいてブースタ負圧を推定するようにしてもよい。
【0067】
ブレーキ操作力であるブレーキペダルの踏力と、マスタシリンダ圧とに基づいてブースタ負圧を推定する例を図23および図24に基づいて説明する。
本実施形態の液圧ブレーキシステムにおいては、図示は省略するが、ブレーキ操作量の一種であるブレーキ操作力たるブレーキペダルの踏力を検出するブレーキ操作量検出センサの一種であるブレーキ操作力センサたる踏力センサが設けられている。踏力センサは、例えば、ブレーキペダルの踏力を歪みゲージ等により検出する形式のセンサとされる。また、ブースタ負圧の取得のためにはインテークマニホルド負圧センサおよびブースタ負圧センサは設けられていない。ブレーキECUのROMには、図23に一部をフローチャートで表すブレーキ効き特性制御ルーチンが記憶されている。
【0068】
ブレーキペダルの踏力,マスタシリンダ圧およびブースタ負圧の間には、図24に示すように、マスタシリンダ圧は踏力が大きいほど大きくなるが、踏力が同じであれば、ブースタ負圧が大きいほど大きいマスタシリンダ圧が得られ、マスタシリンダ圧が同じであれば、ブースタ負圧が大きいほど踏力が小さい関係があることが実験により得られている。それに基づいて踏力およびマスタシリンダ圧からブースタ負圧を取得するテーブルあるいは式が設けられてコンピュータのROMに記憶されている。
【0069】
ブレーキ効き特性制御ルーチンの実行時には、ブレーキペダル10が踏み込まれ、ブレーキスイッチがONになれば(S81)、マスタシリンダ圧センサにより検出されるマスタシリンダ圧が読み込まれるとともに(S83)、踏力センサにより検出される踏力が読み込まれた(S84)後、ブースタ負圧が推定される(S85)。この推定は、検出されたマスタシリンダ圧および踏力に基づいてテーブルからブースタ負圧を取得することにより行われる。、推定後、ブースタ負圧の推定値を用いてマスタシリンダ圧の助勢限界値が取得される(S86)。ブースタ負圧の推定および助勢限界値の取得は、ブレーキスイッチがONの間、繰返し行われる。
本実施形態においては、ブレーキECUのS85を実行する部分が、ブースタ負圧推定部を構成し、このブースタ負圧推定部を含むブレーキECUがブースタ負圧推定装置を構成している。
【0070】
ブレーキ操作量たるブレーキ操作ストロークの一種である踏込ストローク,マスタシリンダ圧およびブースタ負圧との間にも、踏力,マスタシリンダ圧およびブースタ負圧との間におけると同様の関係があり、踏力に代えて踏込ストロークを用いて同様にブースタ負圧を推定することができる。
【0071】
踏力と踏込ストロークとに基づいてブースタ負圧を推定してもよい。その例を図25および図26に基づいて説明する。図示は省略するが、液圧ブレーキシステムには、踏力センサおよびブレーキペダルの踏込ストロークを検出する踏込ストロークセンサが設けられ、ブレーキECUには、図25に一部をフローチャートで表すブレーキ効き特性制御ルーチンが記憶されている。踏込ストロークセンサは、ブレーキ操作量センサの一種であるブレーキ操作ストロークセンサであり、例えば、ブレーキペダルの回動角をロータリポテンショメータにより検出する形式のセンサとされる。
【0072】
ブレーキ効き特性制御の実行時には、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキスイッチがONになれば(S91)、踏込ストロークセンサおよび踏力センサの各検出値が読み込まれ(S93,S94)、それらに基づいてブースタ負圧が推定される(S95)。ブレーキペダルが標準的な踏込速度で踏み込まれると仮定すれば、踏込ストロークに対して得られるマスタシリンダ圧が決まるため、踏込ストロークとマスタシリンダ圧との関係は予め得ることができ、また、マスタシリンダ圧,踏力およびブースタ負圧の関係も予め得ることができ、踏込ストローク,踏力およびブースタ負圧の間に図26に示す関係が得られる。踏込ストロークが同じであれば、ブースタ負圧が大きいほど、踏力が小さくて済むのであり、この関係は、テーブルあるいは式により規定されてコンピュータのROMに記憶されている。ブースタ負圧は、このテーブルあるいは式を使用し、踏込ストロークおよび踏力に基づいて推定され、推定されたブースタ負圧に基づいてマスタシリンダ圧の助勢限界値が取得される(S96)。
本実施形態においては、ブレーキECUのS95を実行する部分がブースタ負圧推定部を構成し、このブースタ負圧推定部を含むブレーキECUがブースタ負圧推定装置を構成している。
【0073】
踏力およびマスタシリンダ圧に基づくブースタ負圧の推定および助勢限界値の取得あるいは踏力および踏込ストロークに基づくブースタ負圧の推定および助勢限界値の取得は、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキスイッチの検出信号がOFFからONになった後に1回行うのみでもよい。例えば、ブレーキスイッチがONになった後、設定時間経過後に行うのである。
【0074】
また、上記各実施形態の一部においては、インテークマニホルド負圧およびブースタ負圧をそれぞれ検出するセンサが設けられていたが、インテークマニホルド負圧センサを省略し、ブースタ負圧センサのみを設けてもよい。インテークマニホルド負圧センサがなくても、前述のように、エンジンの作動状態、例えば電子制御式スロットルバルブの開度およびエンジンの回転数に基づいてインテークマニホルド負圧が推定により得られ、推定値がブースタ負圧の推定に用いられる。ブースタ負圧の推定値を用いてブースタ負圧センサが故障しているか否かを推定することは、上記実施形態におけると同じである。
【0075】
さらに、ブースタ負圧センサを設けることは不可欠ではなく、省略し、インテークマニホルド負圧センサのみを設けてもよい。この場合、インテークマニホルド負圧の推定値に基づいて、インテークマニホルド負圧センサの故障を推定することができる。そして、インテークマニホルド負圧センサが正常であれば検出値を用いて、故障していると推定されれば、推定値を用いてブースタ負圧が推定され、推定されたブースタ負圧を用いて助勢限界値が取得される。
【0076】
また、ブースタ負圧センサおよびインテークマニホルド負圧センサの両方を省略してもよい。この場合、インテークマニホルド負圧はエンジンの作動状態に基づいて推定され、その推定値とブレーキシステムの作動状態とに基づいてブースタ負圧が推定される。
【0077】
さらに、上記各実施形態において、インテークマニホルド負圧の推定およびインテークマニホルド負圧センサの故障推定は、ブレーキECU24等において行われていたが、インテークマニホルド負圧の推定をEFI−ECU40において行い、インテークマニホルド負圧センサの検出値と推定値との両方をブレーキECU24等に供給するようにしてもよい。インテークマニホルド負圧推定装置をエンジンシステムに設けるのである。EFI−ECU40においてインテークマニホルド負圧センサが故障しているか否かを推定し、故障していないと推定されれば検出値を、故障していると推定されれば、推定値をブレーキECU24等に供給するようにしてもよい。インテークマニホルド負圧センサ故障推定装置をエンジンシステムに設けるのである。
【0078】
また、ブースタ負圧センサをブレーキECU24等に接続し、ブースタ負圧センサの検出値がブレーキECU24等に直接供給されるようにしてもよい。また、インテークマニホルド負圧センサ,スロットルバルブ開度センサ,エンジン回転数センサをブレーキECU24等に接続し、インテークマニホルド負圧の検出値等が直接入力されるようにしてもよい。
さらに、ブレーキECU24等により行われる制御と、EFI−ECU40により行われる制御とを、共通の、すなわち1つの電子制御ユニットにより行うようにしてもよい。
【0079】
また、ブースタ負圧を推定するために用いられるブースタ負圧の減少量は、減少量の範囲の下限の減少量に限らず、例えば、上限の減少量と下限の減少量との中間の減少量(平均の減少量)としてもよい。
【0080】
さらに、ブースタ負圧からインテークマニホルド負圧を推定し、例えば、燃料噴射制御に用いてもよい。ブースタ負圧の検出値と、エンジンの作動状態とに基づいてインテークマニホルド負圧を推定するのである。
【0081】
また、インテークマニホルド負圧からスロットルバルブの開度,エンジン回転数等のエンジン作動状態を推定し、例えば、燃料噴射制御に用いてもよい。
【0082】
さらに、インテークマニホルド負圧を用いて、配管等の機械的な故障を検出することができる。例えば、ブレーキ操作部材が操作されておらず、ブレーキ操作力の助勢に十分なインテークマニホルド負圧が得られている状態において、ブースタ負圧が小さい場合には、ブースタ負圧センサが故障しているか、あるいはブースタの低圧室とインテークマニホルドとを接続する配管が外れていると判断することができる。
【0083】
また、液圧ブレーキシステムが、吸気側負圧センサの検出値と吸気側負圧推定装置の推定値とに基づいて吸気側負圧センサの故障を推定し、故障時には、ブースタ負圧推定装置が検出値に代えて推定値を用いてブースタ負圧を推定するようにされていたが、液圧ブレーキシステムにおいて吸気側負圧センサの故障推定は行わず、吸気側負圧の検出値と推定値とのうち、ブースタ負圧の推定に用いられる値が供給されるようにしてもよい。
【0084】
さらに、本発明は、ブレーキ効き特性制御においてマスタシリンダ圧の助勢限界値を取得するためにブースタ負圧が推定される液圧ブレーキシステムに限らず、ブースタ負圧を必要とする液圧ブレーキシステムに適用することができる。
【0085】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である液圧ブレーキシステムをエンジンシステムと共に概略的に示す図である。
【図2】上記液圧ブレーキシステムを示す回路図である。
【図3】上記液圧ブレーキシステムを構成するバキュームブースタを示す側面断面図である。
【図4】上記液圧ブレーキシステムを構成する圧力制御弁の構造および作動を説明するための正面断面図である。
【図5】上記液圧ブレーキシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】上記液圧ブレーキシステムを構成するブレーキECUのコンピュータのROMに記憶されたブレーキ効き特性制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図7】上記ブレーキ効き特性制御ルーチンの残りを示すフローチャートである。
【図8】上記コンピュータのROMに記憶された流入制御弁制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】上記コンピュータのRAMのうち、本発明に関連の深い部分を示すブロック図である。
【図10】上記液圧ブレーキシステムにおけるブレーキ操作力とブレーキシリンダ圧との関係を示すグラフである。
【図11】ブレーキ効き特性制御を説明するためのグラフである。
【図12】上記ブレーキ効き特性制御におけるマスタシリンダ圧と、マスタシリンダとブレーキシリンダとの差圧との関係を示すグラフである。
【図13】上記液圧ブレーキシステムにおけるブースタ負圧の推定を説明するためのグラフである。
【図14】上記液圧ブレーキシステムにおけるマスタシリンダ圧増加量とブースタ負圧との関係を示すグラフである。
【図15】上記液圧ブレーキシステムにおけるマスタシリンダ圧増加量とブースタ負圧の減少量との関係を示すグラフである。
【図16】上記液圧ブレーキシステムにおけるブースタ負圧とマスタシリンダ圧の助勢限界値との関係を示すグラフである。
【図17】上記液圧ブレーキシステムにおけるマスタシリンダ圧の実際値の助勢限界値からの増分と上記差圧との関係を示すグラフである。
【図18】本発明の別の実施形態である液圧ブレーキシステムを構成するブレーキECUのコンピュータのROMに記憶されたブレーキ効き特性制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図19】図18に示すブレーキ効き特性制御ルーチンを実行するためのRAMの構成を示すブロック図である。
【図20】本発明の更に別の実施形態である液圧ブレーキシステムを構成するブレーキECUのコンピュータのROMに記憶されたブレーキ効き特性制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図21】図20に示すブレーキ効き特性制御ルーチンを実行するためのRAMの構成を示すブロック図である。
【図22】図20に示すブレーキ効き特性制御ルーチンが実行される液圧ブレーキシステムにおいて、ブレーキスイッチがONになった後の時間とブースタ負圧減少量との関係を示すグラフである。
【図23】本発明の更に別の実施形態である液圧ブレーキシステムを構成するブレーキECUのコンピュータのROMに記憶されたブレーキ効き特性制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図24】図23に示すブレーキ効き特性制御ルーチンにおけるブースタ負圧推定のためのマスタシリンダ圧と踏力との関係を示すグラフである。
【図25】本発明の更に別の実施形態である液圧ブレーキシステムを構成するブレーキECUのコンピュータのROMに記憶されたブレーキ効き特性制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図26】図25に示すブレーキ効き特性制御ルーチンにおけるブースタ負圧推定のための踏込ストロークと踏力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10:ブレーキペダル 12:バキュームブースタ 14:マスタシリンダ 24:ブレーキECU 26:ブレーキスイッチ 28:マスタシリンダ圧センサ 40:EFI−ECU 42:インテークマニホルド負圧センサ 48:ブースタ負圧センサ
Claims (4)
- エンジンの吸気側に接続されたバキュームブースタと、そのバキュームブースタにより倍力されたブレーキ操作力に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、そのマスタシリンダから供給される液圧により作動するブレーキシリンダとを含む液圧ブレーキシステムにおいて、
前記エンジン吸気側の負圧である吸気側負圧と当該液圧ブレーキシステムの作動状態とに基づいて前記バキュームブースタの負圧であるブースタ負圧を推定するブースタ負圧推定装置を設けるとともに、そのブースタ負圧推定装置を、前記吸気側負圧を検出する吸気側負圧センサの検出値と、前記エンジンの作動状態に基づいて吸気側負圧を推定する吸気側負圧推定装置の推定値とが不一致の場合に、前記吸気側負圧推定装置の推定値に基づいて前記ブースタ負圧の推定を行うものとしたことを特徴とする液圧ブレーキシステム。 - 前記バキュームブースタが、前記エンジンの吸気側に接続された低圧室と、制御弁により選択的に低圧室と大気とに連通させられる変圧室とを備え、当該液圧ブレーキシステムが、前記低圧室の負圧を検出するブースタ負圧センサと、そのブースタ負圧センサの検出値と前記ブースタ負圧推定装置による推定値とが不一致の場合に前記ブースタ負圧センサが故障状態にあると推定するブースタ負圧センサ故障推定装置とを含むことを特徴とする請求項1に記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記当該液圧ブレーキシステムの作動状態が、ブレーキ操作部材の操作力、ブレーキ操作部材の操作ストローク、前記マスタシリンダ液圧の少なくとも2つを含む請求項1または2に記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記バキュームブースタの助勢限界への到達後に前記ブレーキシリンダの液圧であるブレーキシリンダ圧を助勢限界前と変わりなく制御する助勢限界後制御部と、前記ブースタ負圧推定装置により推定されたブースタ負圧に基づいて前記助勢限界後制御部に作動を開始させる作動開始制御部とを含む請求項1ないし3のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
Priority Applications (1)
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JP25733399A JP3870621B2 (ja) | 1999-09-10 | 1999-09-10 | 液圧ブレーキシステム |
Publications (2)
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