JP5081135B2 - ブレーキシステム及びブースタ消費圧力推定方法 - Google Patents

ブレーキシステム及びブースタ消費圧力推定方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両のブレーキシステムと、そのブースタ消費圧力推定方法に関する。
運転者がブレーキペダルを踏み込む踏力(ブレーキ操作力)を、エンジンのインテークマニホールドに発生する負圧で倍力するブースタを備えた車両用のブレーキシステムが知られている。そして、ブースタ内部の圧力(ブースタ圧力)をブースタ圧力検出装置で常時検出し、ブースタ圧力が好適な負圧を維持するように、制御装置によって制御されている。
このようなブレーキシステムのブースタは、ブレーキ操作力を倍力するときにブースタ圧力が上昇して、ブースタ圧力の負圧が減少することから、例えば特許文献1には、ブレーキシステムの動作状態に応じたブースタ圧力の負圧の減少量(以下、ブースタ消費圧力と称する)の推定値を算出し、算出したブースタ消費圧力の推定値に基づいて、ブースタ圧力を推定する技術が開示されている。
しかしながら、例えば特許文献1に開示される技術では、運転者がブレーキペダルを踏み込むときの踏込み量、踏込み速度、及び踏込み開始時のブースタ圧力の大きさに基づいてブースタ消費圧力を算出し、インテークマニホールドから供給される負圧や大気圧が考慮されていない。したがって、ブースタ消費圧力の推定値の精度が低くなるという問題がある。
特開2001−080497号公報
そこで、本発明は、ブースタ消費圧力を高い精度で推定できるブースタ消費圧力推定方法と、算出したブースタ消費圧力を利用して、ブースタ圧力の推定値を高い精度で算出できるブレーキシステムを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、運転者がブレーキ操作部を操作するときのブレーキ操作力を、エンジンの吸気側に接続されたブースタによって倍力するブレーキシステムとした。そして、前記ブレーキ操作部の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記エンジンの吸気側の圧力を検出又は推定する吸気圧力検知手段と、前記ブレーキ操作部が操作されたときに発生する、ブースタ圧力の変化量であるブースタ消費圧力を前記ブレーキ操作部の操作量の変化量に基づいて推定するブースタ消費圧力推定手段と、前記エンジンの吸気側の圧力に基づいて、前記ブースタ消費圧力を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、大気圧検出手段を備えて、前記ブースタ消費圧力を前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて補正することを特徴とした。
この発明によると、補正手段は、ブースタ消費圧力推定手段が推定するブースタ消費圧力(ブースタ圧力の変化量)を、エンジン吸気側の圧力に基づいて補正できる。したがって、ブースタ消費圧力推定手段が推定するブースタ消費圧力の精度を向上できる。
また、補正手段は、ブースタ消費圧力を、大気圧に基づいて補正できる。したがって、ブースタ消費圧力推定手段が推定するブースタ消費圧力の精度を、さらに向上できる。
また、本発明は、前記ブースタ消費圧力推定手段は、所定のサンプリング時間間隔で単位ブースタ消費圧力を推定して、当該単位ブースタ消費圧力を積分した総和を前記ブースタ消費圧力の推定値として算出し、前記補正手段は、前記ブースタ消費圧力を前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて補正するとき、前記大気圧検出手段が検出する大気圧に対応してあらかじめ設定され、「1」より小さく、且つ、大気圧が小さいほど小さな値であり、さらに、大気圧と前記ブースタ圧力の差が大きいほど小さな値となるようにブースタ圧補正された大気圧係数を前記単位ブースタ消費圧力に積算することを特徴とした。
また、本発明は、前記補正手段は、前記ブレーキ操作部が操作される前の前記ブースタ圧力に基づいて、前記ブースタ消費圧力を補正することを特徴とした。
この発明によると、エンジン吸気側の圧力、大気圧に基づいて補正されたブースタ消費圧力を、ブレーキ操作部が操作される前のブースタ圧力に基づいて補正できる。したがって、ブースタ消費圧力推定手段が推定するブースタ消費圧力の精度を、さらに向上できる。
また、本発明は、前記ブースタのブースタ圧力の推定値を算出するブースタ圧力推定手段を更に設け、前記ブースタ圧力推定手段は、前記ブースタ消費圧力推定手段が推定して前記補正手段が補正した前記ブースタ消費圧力を前記ブレーキ操作部が操作される前の前記ブースタ圧力から減算して、前記ブースタ圧力の推定値を算出することを特徴とした。
この発明によると、精度の高いブースタ消費圧力に基づいてブースタ圧力の推定値を算出できる。したがって、ブースタ圧力の推定値を高い精度で算出できる。
また、本発明は、運転者がブレーキ操作部を操作するときのブレーキ操作力を、エンジンの吸気側に接続されたブースタによって倍力するブレーキシステムに、前記ブレーキ操作部の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記エンジンの吸気側の圧力を検出又は推定する吸気圧力検知手段と、前記ブレーキ操作部が操作されたときに発生する、ブースタ圧力の変化量であるブースタ消費圧力を前記ブレーキ操作部の操作量の変化量に基づいて推定するブースタ消費圧力推定手段と、大気圧検出手段を備えて前記ブースタ消費圧力を補正する補正手段と、を備えて前記ブースタ消費圧力を補正するブースタ消費圧力推定方法とした。そして、前記エンジンの吸気側の圧力に基づいて補正値を算出するステップと、前記ブースタ消費圧力推定手段が推定する前記ブースタ消費圧力に前記補正値を積算して、前記ブースタ消費圧力を補正するステップと、前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて前記ブースタ消費圧力を補正するステップと、を前記補正手段が実行することを特徴とした。
この発明によると、補正手段は、エンジンの吸気側の圧力に基づいて補正値を算出するステップと、ブースタ消費圧力推定手段が推定するブースタ消費圧力を、算出した補正値で補正するステップを実行することができる。したがって、ブースタ消費圧力推定手段が推定するブースタ消費圧力の精度を向上するように好適に補正できる。
また本発明は、前記ブースタ消費圧力推定手段は、前記ブースタ消費圧力を前記ブレーキ操作部の操作量の変化量に基づいて所定のサンプリング時間間隔で推定される単位ブースタ消費圧力を積分して推定し、前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて前記ブースタ消費圧力を補正するステップは、前記大気圧検出手段が検出する大気圧に対応してあらかじめ設定され、「1」より小さく、且つ、大気圧が小さいほど小さな値であり、さらに、大気圧と前記ブースタ圧力の差が大きいほど小さな値となるようにブースタ圧補正された大気圧係数を前記単位ブースタ消費圧力に積算するステップであることを特徴とした。
本発明によれば、ブースタ消費圧力を高い精度で推定できるブースタ消費圧力推定方法と、算出したブースタ消費圧力を利用して、ブースタ圧力の推定値を高い精度で算出できるブレーキシステムを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において「負圧」は、大気圧より真空の側の圧力、すなわちゲージ圧における負の圧力を示し、大気圧に近い負圧を「小さな負圧」、真空に近い負圧を「大きな負圧」と表記する。
図1は、本実施形態に係るブレーキシステムの概略図である。図1に示すように、ブレーキシステム1は、運転者が踏み込み操作するブレーキペダル(ブレーキ操作部)4、運転者がブレーキペダル4を踏み込む力(ブレーキ操作力)を倍力してマスタシリンダ3に入力するブースタ2、及びブースタ2で倍力されたブレーキ操作力を油圧に変換し、ブレーキ装置Brの油圧系統に入力するマスタシリンダ3を含んで構成される。
なお、ブースタ2とマスタシリンダ3は一体に構成されていてもよい。
ブースタ2は、エンジン5の吸気側を形成するインテークマニホールド5aと、配管5bを介して連通している。そして、ブースタ2には、チェックバルブ6を介して、インテークマニホールド5aに発生する負圧(以下、インマニ負圧と称する)が供給され、ブースタ2のブースタ圧力は負圧に維持される。
ブースタ圧センサ2aはブースタ圧力を検出し、その検出値をブースタ圧力信号P1として制御装置7に入力する。
また、インマニ負圧センサ5cは、インマニ負圧を検出し、その検出値をインマニ圧力信号P2として制御装置7に入力する。
インマニ負圧は、エンジン5の吸気側の圧力であり、インマニ負圧センサ5cは、インマニ負圧を検出することから、本実施形態に係るインマニ負圧センサ5cは、請求項に記載の吸気圧力検知手段になる。
なお、インマニ負圧を検出するインマニ負圧センサ5cを備えず、例えばエンジン5の回転速度やスロットルバルブの開度等からインマニ負圧を推定する吸気圧力検知手段を備える構成としてもよい。
チェックバルブ6は1方向弁であり、ブースタ2のブースタ圧力の負圧がインテークマニホールド5aに発生するインマニ負圧より大きい場合、チェックバルブ6は閉じてブースタ圧力を大きな負圧に維持する。一方、ブースタ圧力の負圧がインマニ負圧より小さい場合、チェックバルブ6は開いてブースタ2にインマニ負圧を供給し、ブースタ圧力の負圧をインマニ負圧と同等に大きくする。
このように機能するチェックバルブ6を備えることで、ブースタ圧力を、より大きな負圧に維持できる。
そして、ブースタ2は、運転者がブレーキペダル4を操作するときのブレーキ操作力を、ブースタ圧力の負圧で倍力してマスタシリンダ3に入力する。
以下、運転者がブレーキペダル4を踏み込んだときのブレーキペダル4の動作を「進み動作」と称し、運転者がブレーキペダル4を解放したときにブレーキペダル4が戻る動作を「戻り動作」と称して区別する場合がある。
また、ブレーキペダル4が操作されない状態、すなわちブレーキペダル4が操作される前の状態を「無操作状態」と称する。
マスタシリンダ3は、ブースタ2から入力されるブレーキ操作力を油圧に変換してブレーキ装置Brの油圧系統に入力し、ブレーキ装置Brを動作する。
マスタシリンダ3からブレーキ装置Brに入力される油圧(以下、シリンダ油圧と称する)は液圧センサ3aによって検出され、その検出値はシリンダ圧力信号P3として制御装置7に入力される。
また、ブレーキシステム1には、大気圧センサ(大気圧検出手段)9が備わり、大気圧を検出してその検出値を大気圧信号P4として制御装置7に入力する。
制御装置7は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備えるコンピュータ及び周辺回路などを含んで構成される。そして、例えばROMに記憶されるプログラムを実行し、ブースタ2のブースタ圧力を好適な負圧に維持するように動作する。
ブースタ2はインテークマニホールド5aと連通し、インマニ負圧が供給されることでブースタ圧力を好適な負圧に維持することができ、運転者がブレーキペダル4を操作するときのブレーキ操作力を効果的に倍力できる。
図2は、ブースタの概略構造を示す断面図である。図2に示すように、ブースタ2は、中空のハウジング20を有する部材である。ハウジング20は、例えば正面形状が円形の薄い円盤状を呈し、ハウジング20の内部は、ブースタピストン21によって厚み方向に2つの部屋に区画されている。ブースタピストン21は、例えばダイヤフラム22を介して、往復動可能にハウジング20に取り付けられる。
ハウジング20をブースタピストン21が区画して形成する部屋の1つは、配管5bを介してエンジン5のインテークマニホールド5a(図1参照)と連通し、インマニ負圧が供給されて負圧に維持され、負圧室20aを形成する。
そして、負圧室20aとブースタピストン21を介して隣接する部屋には、作動室20bが形成される。作動室20bには、ハウジング20の円盤状の中心部が円筒状に突出して延長筒23が形成され、延長筒23の端部には、大気導入口24が形成される。
また、ブースタピストン21は、戻しばね25によって、作動室20bの側に付勢される。
ブースタピストン21の中心部には、シール部材26を介して延長筒23の内部に摺動自在に支持される筒部21aが形成され、筒部21aの端部は、大気導入口24から導入される空気を浄化するフィルタ27で閉塞される。
筒部21aには、ブレーキペダル4に連結された入力杆28がフィルタ27を貫通して挿入され、筒部21aの内部に構成されるエアバルブ28aに連結する。
ブースタピストン21には、負圧室20aの側に突出して出力杆29が備わり、出力杆29はブースタピストン21と一体に往復動する。
出力杆29は負圧室20aを貫通し、その端部は、例えばブースタ2と一体に形成されるマスタシリンダ3と連結する。
エアバルブ28aは入力杆28に連動して、負圧室20aと作動室20bを連通・遮断するとともに、作動室20bと大気導入口24を連通・遮断する機能を有する。
運転者がブレーキペダル4を操作せず、ブレーキペダル4が無操作状態にあるとき、エアバルブ28aは、作動室20bと大気導入口24を遮断するとともに、負圧室20aと作動室20bを遮断した状態を維持する。
運転者がブレーキペダル4を操作して(踏み込んで)ブレーキペダル4が進み動作をするとき、入力杆28は負圧室20aの側に動作してブースタピストン21を負圧室20aの側に押し出すとともにエアバルブ28aを動作し、負圧室20aと作動室20bを遮断して、作動室20bと大気導入口24を連通する。作動室20bには大気導入口24から大気が導入して作動室20bの圧力が大気圧まで上昇する。そして、負圧室20aの負圧がブースタピストン21を吸引し、ブースタピストン21は負圧室20aの側に移動する。さらに、出力杆29はブースタピストン21と一体に動作し、マスタシリンダ3の側に押し出される。
一方、運転者がブレーキペダル4を解放して、ブレーキペダル4が戻り動作をするとき、入力杆28は作動室20bの側に引かれてエアバルブ28aを動作し、作動室20bと大気導入口24を遮断して、負圧室20aと作動室20bを連通する。作動室20bに導入されている大気は、負圧室20aと配管5bを経由してインテークマニホールド5a(図1参照)に吸引され、作動室20bは負圧室20aと同等の負圧になる。すなわち、インテークマニホールド5aから負圧が供給される。
そして、ブレーキペダル4が無操作状態の位置まで戻って入力杆28の動作が停止すると、エアバルブ28aは負圧室20aと作動室20bを遮断する。したがって、作動室20bは負圧室20aと同等の負圧に維持される。
なお、ブースタ2に構成されるエアバルブ28aは公知の技術であり、詳細な図示は省略している。
このように、ブースタ2(図2参照)はインテークマニホールド5a(図1参照)から供給される負圧によって入力杆28(図2参照)の動作を補助し、運転者がブレーキペダル4(図2参照)を操作するときのブレーキ操作力を倍力することから、負圧室20aの内部圧力(ブースタ圧力)を好適な負圧に維持することが必要になる。
そのため、図1に示すように、ブースタ2にブースタ圧センサ2aを備えて、ブースタ圧力を検出し、負圧室20a(図2参照)の内部を好適な負圧に維持するように制御装置7が動作する。
具体的に、制御装置7(図1参照)は、ブースタ圧力の負圧が小さいときには、例えばエアコン動作を抑制してエンジン回転速度が低下することを抑制する、など、エンジン制御装置8(図1参照)に適切な指令を与えて、インマニ負圧が小さくならないように制御する。そして、負圧室20a(図2参照)にインマニ負圧を供給して、ブースタ圧力を好適な負圧に維持する。
しかしながら、例えばブレーキペダル4が進み動作するときの動作速度が所定値より速いと、ブースタピストン21が負圧室20aの側に動作する速度が速く、負圧室20aの容積が速く減少する。このとき、負圧室20aへのインマニ負圧の供給が追いつかないと、負圧室20aの内部圧力が上昇する。すなわち、ブースタ圧力の負圧が小さくなる。
このようにブースタ圧力の負圧が小さくなることを、ブースタ圧力が消費すると称する。そして、ブースタ圧力が消費されるときのブースタ圧力の負圧の減少量がブースタ消費圧力Pbになる。
例えば制御装置7(図1参照)が、インマニ負圧に基づいてブースタ圧力の推定値を算出することは広く実施されているが、ブレーキペダル4(図1参照)が動作しているときのブースタ圧力の推定値を算出する場合に、ブースタ消費圧力Pbを考慮しないと、制御装置7は、実際のブースタ圧力より高い推定値を算出することになる。
したがって、例えばブレーキペダル4(図1参照)が動作をしているとき、制御装置7(図1参照)は、インマニ負圧に基づいてブースタ消費圧力Pbを算出し、ブースタ圧力の負圧の上限値からブースタ消費圧力Pbを減算してブースタ圧力の推定値を算出する構成が好適である。
なお、ブースタ圧力の負圧の上限値は、例えばインマニ負圧に基づいて算出されるブースタ圧力であり、ブレーキペダル4が無操作状態にあるときのブースタ圧力などが用いられる。
以下、ブレーキペダル4が無操作状態にあるときのブースタ圧力を「ブースタ圧力初期値」と称する場合がある。
ブースタ消費圧力Pbは、図2に示す負圧室20aの容積が減少することに伴って発生する負圧室20aの気圧上昇(ブースタ圧力の変化量)であり、単位時間あたりに負圧室20aの容積が減少する割合(容積減少率)が大きいほど、ブースタ消費圧力Pbは大きくなる。負圧室20aの容積減少率は、ブレーキペダル4が進み動作をするときの動作速度と正の相関関係を有することから、従来、制御装置7(図1参照)は、インマニ負圧やブースタ圧力初期値やブレーキペダル4の動作速度に基づいてブースタ消費圧力Pbを算出し、算出したブースタ消費圧力Pbを利用してブースタ圧力の推定値を算出している。
図3は、シリンダ油圧変化量と所定のサンプリング時間あたりのブースタ消費圧力(単位ブースタ消費圧力)の関係を示すグラフで、横軸はシリンダ油圧変化量ΔPcを示し、縦軸は単位ブースタ消費圧力Pbを示す。
所定のサンプリング時間は、限定される値ではなく、例えば10msecなど、ブレーキペダル4(図1参照)の動作を好適に追従できる時間とすればよい。そして、制御装置7(図1参照)は、所定のサンプリング時間間隔で、ブースタ圧力の推定値を算出する構成とすればよい。
マスタシリンダ3(図1参照)のシリンダ油圧は、ブレーキペダル4(図1参照)の動作によって変化することから、シリンダ油圧変化量ΔPcは、ブレーキペダル4の操作量の変化量、すなわち、ブレーキペダル4の動作速度に対応している。
図3は、ブレーキペダル4が進み動作をするときの動作速度をプラスとして、そのときのシリンダ油圧変化量ΔPcを原点Oから正の方向に記載している。そして、ブレーキペダル4が進み動作をするときのシリンダ油圧変化量ΔPcと単位ブースタ消費圧力Pbの関係を直線Sに示す。
一方、ブレーキペダル4が戻り動作をするときの動作速度をマイナスとして、そのときのシリンダ油圧変化量ΔPcを原点Oから負の方向に記載している。そして、ブレーキペダル4が戻り動作をするときのシリンダ油圧変化量ΔPcと単位ブースタ消費圧力Pbの関係を直線Sに示す。
図3に示す直線S、Sは、例えば実験等によってシリンダ油圧変化量ΔPcと単位ブースタ消費圧力Pbの関係を計測することで求めることができる。
また、シリンダ油圧変化量ΔPcが小さいとき、すなわち、ブレーキペダル4(図1参照)の動作速度が小さいとき、負圧室20a(図2参照)の容積減少率が小さく、負圧室20aにはインマニ負圧が充分に供給されることから、ブースタ圧力の負圧が小さくならない。すなわち、原点Oを中心にした所定の範囲内(幅)には、単位ブースタ消費圧力Pbが0になる不感帯が設けられる。
この不感帯の幅は、ブレーキシステム1(図1参照)やブースタ2(図2参照)の構成によって決定される。
本実施形態に係る制御装置7(図1参照)は、液圧センサ3a(図1参照)から入力されるシリンダ圧力信号P3に基づいて、所定のサンプリング時間ごとにシリンダ油圧変化量ΔPcを算出する。例えば、サンプリング時間が10msecの場合、制御装置7は、10msec間隔でシリンダ油圧変化量ΔPcを算出する。さらに、制御装置7は、算出したシリンダ油圧変化量ΔPcに対応する単位ブースタ消費圧力Pbを10msec間隔で算出する。
ブレーキペダル4(図1参照)が進み動作をするとき、制御装置7(図1参照)は、サンプリング時間の間隔でシリンダ油圧変化量ΔPcを算出し、図3に示す直線Sに基づいてシリンダ油圧変化量ΔPcに対応する単位ブースタ消費圧力Pbを算出する。
すなわち、制御装置7は単位ブースタ消費圧力Pbを推定する。
例えば、任意の時刻におけるシリンダ油圧変化量がΔPcのとき、制御装置7は直線Sに基づいて単位ブースタ消費圧力PbS1を算出する。
そして、サンプリング時間(例えば10msec)が経過した後、シリンダ油圧変化量がΔPcであれば、制御装置7は直線Sに基づいて単位ブースタ消費圧力PbS2を算出する。
このように、制御装置7(図1参照)は、所定のサンプリング時間間隔で、シリンダ油圧変化量ΔPcを算出し、単位ブースタ消費圧力Pbを推定する。
そして、例えば単位ブースタ消費圧力Pbを積分して算出される単位ブースタ消費圧力Pbの総和が、ブレーキペダル4(図1参照)が動作を開始してからのブースタ消費圧力Pbの推定値になる。
このように推定したブースタ消費圧力Pbをブースタ圧力の負圧の上限値から減算すると、ブースタ圧力の推定値を算出できる。
以上のように、制御装置7はブースタ消費圧力Pbを推定することから、請求項に記載のブースタ消費圧力推定手段の機能を備える。
しかしながら、ブースタ消費圧力Pbは、インマニ負圧の大きさによって変化することがわかっている。すなわち、ブレーキペダル4(図1参照)が動作している間であっても負圧室20a(図2参照)にはインマニ負圧が供給されることから、ブースタ消費圧力Pbはインマニ負圧の大きさによって変化する。
例えばブレーキペダル4(図1参照)が進み動作をしているとき、負圧室20a(図2参照)の容積の減少に伴ってブースタ消費圧力Pbが発生するが、その間もインマニ負圧が供給されることから、ブースタ消費圧力Pbは供給されるインマニ負圧に対応して小さくなる。
したがって、インマニ負圧に対応してブースタ消費圧力Pbを補正することによって、制御装置7(図1参照)が算出するブースタ圧力の推定値の精度を向上できる。
このとき、インマニ負圧が大きいほど負圧室20aに充分なインマニ負圧が供給されるため、ブースタ消費圧力Pbが小さくなる。したがって、インマニ負圧が大きいほどブースタ消費圧力Pbが小さくなるように補正することが好適である。
また、インマニ負圧は、ブレーキペダル4(図1参照)の動作速度によって変化する。したがって、インマニ負圧でブースタ消費圧力Pbを補正するための補正値(以下、インマニ係数と称する)を、インマニ負圧ごとにブレーキペダル4の動作速度に対応させて、予め実験等で求めておき、例えば制御装置7が有する図示しない記憶装置に、マップとして記憶しておく構成が好適である。
そして、制御装置7(図1参照)は、ブースタ消費圧力Pbを算出した後、インマニ負圧センサ5c(図1参照)から入力されるインマニ圧力信号P2に基づいてインマニ負圧を算出し、算出したインマニ負圧に対応するインマニ係数をブースタ消費圧力Pbに積算して補正する構成が好適である。
このように、インマニ係数を積算してブースタ消費圧力Pbを補正することを、インマニ圧補正と称する場合がある。
そして、制御装置7がブースタ消費圧力Pbを補正することから、制御装置7は請求項に記載の補正手段になる。
図3の直線SPa(破線)は、任意のインマニ負圧におけるインマニ係数の一例を示している。図3に示すように、シリンダ油圧変化量がΔPcのとき、インマニ圧補正をしない場合、制御装置7(図1参照)は、直線Sに基づいて単位ブースタ消費圧力PbS1を算出するが、インマニ圧補正をすると、制御装置7は直線SPaに基づいて単位ブースタ消費圧力PbSaを算出する。
すなわち、インマニ負圧によって単位ブースタ消費圧力Pbが(PbS1−PbSa)に相当する量だけ小さくなっていることを示す。
なお、インマニ係数とブレーキペダル4(図1参照)の動作速度の関係は直線に限らず、曲線となる場合もある。
このように本実施形態においては、インマニ負圧に基づいて単位ブースタ消費圧力Pbを補正することから、制御装置7(図1参照)は、単位ブースタ消費圧力Pbを高い精度で算出できる。したがって、単位ブースタ消費圧力Pbを例えば積分して算出されるブースタ消費圧力Pbの精度も高くなるという優れた効果を奏する。
また、ブレーキペダル4(図1参照)が進み動作をするときの単位ブースタ消費圧力Pbは、大気圧の大きさに伴って変化することがわかっている。具体的に、大気圧が低いほど単位ブースタ消費圧力Pbが小さくなることから、単位ブースタ消費圧力Pbをより高い精度で算出するためには、単位ブースタ消費圧力Pbを大気圧に基づいて補正することが好ましい。
前記したように、ブレーキペダル4(図1参照)が進み動作をするとき、負圧室20a(図2参照)の容積が減少する。したがって、インマニ負圧の供給を考えないと負圧室20aの気圧は上昇する。
ブレーキペダル4(図1参照)が進み動作をしているときの任意の時刻における負圧室20aの容積をVt0、気圧をPt0とし、サンプリング時間が経過した後の負圧室20aの容積をVt1、気圧をPt1とすると、気体の状態方程式からPt0×Vt0=Pt1×Vt1が成立する。
ブレーキペダル4(図1参照)が一定の動作速度で進み動作をする場合、負圧室20aの容積減少率(Vt1/Vt0)は一定であることから、負圧室20aの圧力変動比(Pt0/Pt1)は一定になる。
このことは、ブレーキペダル4が一定の動作速度で進み動作をする場合、ブースタ圧力は一定の圧力変動比に沿って上昇することを示す。
圧力変動比をKとし、無操作状態にあるブレーキペダル4を運転者が踏込み操作してブレーキペダル4が進み動作を開始する場合、負圧室20a(図2参照)の容積が減少してブースタ圧力が、ブースタ圧力初期値PからPに上昇したとき、圧力変動比Kは一定であることから、K=P/Pが成立する。
このとき、ブースタ圧力はブースタ圧力初期値PからPに上昇し、ブースタ圧力の上昇量ΔPuはP−Pで示される。したがって、次式(1)が成立する。
ΔPu=(1/K)・P−P=P・(1−K)/K ・・・(1)
このように算出されるブースタ圧力の上昇量ΔPuは、単位ブースタ消費圧力Pbの一部であり、ブースタ圧力の上昇量ΔPuが小さくなると、単位ブースタ消費圧力Pbも小さくなる。
また、ブレーキペダル4(図1参照)の進み動作の動作速度が大きいほど、負圧室20a(図2参照)の容積減少率が大きく、ブースタ圧力の上昇量ΔPuが大きくなる。
そこで、例えば、大気圧で単位ブースタ消費圧力Pbを補正するための補正値(以下、大気圧係数と称する)を、大気圧ごとにブレーキペダル4の動作速度に対応させて、予め実験等で求めておき、例えば制御装置7(図1参照)が有する図示しない記憶装置に、マップとして記憶しておく構成が好適である。
そして、制御装置7(図1参照)は、単位ブースタ消費圧力Pbを算出した後、大気圧センサ9(図1参照)から入力される大気圧信号P4に基づいて大気圧を算出し、算出した大気圧に対応する大気圧係数を単位ブースタ消費圧力Pbに積算して補正する構成が好適である。
このように、大気圧係数を積算して単位ブースタ消費圧力Pbを補正することを、大気圧補正と称する場合がある。
なお、大気圧係数は1より小さな値であり、且つ大気圧が小さいほど小さな値であるとともに、大気圧とブースタ圧力の圧力差が大きいほど小さな値であることが好ましいことがわかっている。
そこで、本実施形態においては、ブースタ圧係数を設定して、大気圧係数を補正する構成とする。
ブースタ圧係数は、ブースタ圧力に対応した係数であって1より小さく、ブースタ圧力の負圧が大きいほど、すなわちブースタ圧力が低いほど小さい値とする。ブースタ圧力の負圧が大きいほど大気圧とブースタ圧力の圧力差が大きくなることから、大気圧係数にブースタ圧係数を積算することで、大気圧係数を、大気圧とブースタ圧力の圧力差が大きいほど小さな値に補正できる。
この構成のため、ブースタ圧力に対応したブースタ圧係数を例えば実験等で求め、制御装置7に備わる図示しない記憶部にマップとして記憶しておけばよい。
このように、大気圧係数にブースタ圧係数を積算する補正を、ブースタ圧補正と称する場合がある。
図3の直線SPb(一点鎖線)は、任意の大気圧における大気圧係数の一例を示している。図3に示すように、大気圧補正をしない場合、シリンダ油圧変化量がΔPcのとき制御装置7(図1参照)は直線SPaに基づいて単位ブースタ消費圧力PbSaを算出するが、大気圧補正をすると、制御装置7は直線SPbに基づいて単位ブースタ消費圧力PbSbを算出する。
すなわち、単位ブースタ消費圧力Pbは、大気圧の影響によって上昇量ΔPu(PbSa−PbSb)に相当する量だけ小さくなっていることを示す。
なお、大気圧係数とブレーキペダル4(図1参照)の動作速度の関係は直線に限らず、曲線となる場合もある。
このように、本実施形態においては、大気圧に基づいて単位ブースタ消費圧力Pbを補正することから、制御装置7(図1参照)は、精度の高い単位ブースタ消費圧力Pbを算出できるという優れた効果を奏する。
なお、単位ブースタ消費圧力Pbの大気圧補正は、負圧室20a(図2参照)が閉じられた空間となるとき、すなわち、ブレーキペダル4(図2参照)が進み動作をするときのみ必要な補正である。したがって、ブレーキペダル4が戻り動作をするとき、制御装置7(図1参照)は、単位ブースタ消費圧力Pbを、図3の直線SMa(破線)に示すようにインマニ圧補正だけする。
以上のように、ブレーキペダル4(図1参照)が動作しているとき、制御装置7(図1参照)は、必要に応じて単位ブースタ消費圧力Pbをインマニ圧補正、大気圧補正、及びブースタ圧補正する。そして補正された単位ブースタ消費圧力Pbを積分してブースタ消費圧力Pbを推定し、ブースタ圧力の負圧の上限値(例えば、ブースタ圧力初期値P)から推定したブースタ消費圧力Pbを減算して、ブースタ圧力の推定値を算出する。
図4は、制御装置がブースタ圧力の推定値を算出する手順を示すフローチャートである。以下、図4を参照して、制御装置7(図1参照)がブースタ圧力の推定値を算出する手順を説明する(適宜、図1〜図3参照)。
以下、制御装置7がブースタ圧力の推定値を算出する手順を「推定手順」と称する。
そして、推定手順は、例えば制御装置7が実行するプログラムにサブルーチンとして組み込まれ、割り込み処理などによって、所定のサイクル時間で定期的に制御装置7が実行する構成とすればよい。
この場合、制御装置7が推定手順を実行する所定のサイクル時間は、例えば、制御装置7がシリンダ油圧変化量ΔPcを算出するサンプリング時間に同期した時間とすればよい。すなわち、制御装置7がシリンダ油圧変化量ΔPcを算出するサンプリング時間が10msecの場合、制御装置7は、10msec間隔で推定手順を実行する構成になる。
1サイクル前の推定手順の実行が終了してから所定のサイクル時間が経過したら、制御装置7は推定手順の実行を開始し、インマニ負圧センサ5cから入力されるインマニ圧力信号P2によって、インマニ負圧を取得する(ステップS1)。
制御装置7は、1サイクル前に推定手順を実行したときに算出したブースタ圧力の推定値を基準推定値として、取得したインマニ負圧と、基準推定値を比較する(ステップS2)。
基準推定値の負圧がインマニ負圧より大きいとき、すなわち、基準推定値がインマニ負圧以下のとき(ステップS2→No)、制御装置7は、ブースタ2にインマニ負圧が供給されないと判定し、基準推定値をそのまま利用する。
なお、制御装置7が最初に推定手順を実行する場合など、基準推定値が存在しない場合は、例えば、取得したインマニ負圧を基準推定値とすればよい。
一方、基準推定値の負圧がインマニ負圧より小さいとき、すなわち、基準推定値がインマニ負圧より大きいとき(ステップS2→Yes)、制御装置7は、ブースタ2にはインマニ負圧が供給されると判定し、基準推定値にインマニ負圧を加算して2で除算した値を、基準推定値とする(ステップS3)。
インマニ負圧がブースタ2に供給されるときには所定の遅れが生じることから、制御装置7がインマニ負圧を取得した時点で、ブースタ2に全てのインマニ負圧が供給されていない。したがって、制御装置7は、インマニ負圧の半分が供給されているとみなして、実際のブースタ圧力との誤差を小さくしている。
制御装置7は、液圧センサ3aから入力されるシリンダ圧力信号P3によって、シリンダ油圧を取得する(ステップS4)。そして、1サイクル前に推定手順を実行したときに取得したシリンダ油圧との差であるシリンダ油圧変化量ΔPcを算出し(ステップS5)、シリンダ油圧変化量ΔPcが所定値以下のとき(ステップS6→No)、制御装置7はブースタ圧力が消費されないと判定する。具体的に、制御装置7は、単位ブースタ消費圧力Pb=0とする(ステップS8)。
なお、制御装置7が、ブースタ圧力が消費されないと判定するためのシリンダ油圧変化量ΔPcの所定値は、図3に示す不感帯の幅に相当する値であり、前記したようにブレーキシステム1やブースタ2の構成によって決定される値である。すなわち、シリンダ油圧変化量ΔPcが、図3に示す不感帯の範囲内にあるとき、制御装置7は、ブースタ圧力が消費されないと判定する。
一方、シリンダ油圧変化量ΔPcが所定値より大きいとき(ステップS6→Yes)、制御装置7は、例えば図3に示すグラフを参照して、シリンダ油圧変化量ΔPcに対応する単位ブースタ消費圧力Pbを算出する(ステップS7)。
前記したように、シリンダ油圧変化量ΔPcは、ブレーキペダル4の操作量の変化量に対応していることから、制御装置7は、ブレーキペダル4の操作量の変化量に基づいて、単位ブースタ消費圧力Pbを算出することになる。
そして制御装置7は、ブレーキペダル4が進み動作をしているか否かを判定する(ステップS9)。具体的に制御装置7は、マスタシリンダ3のシリンダ油圧が上昇しているとき、ブレーキペダル4が進み動作をしていると判定し(ステップS9→Yes)、シリンダ油圧が下降しているときブレーキペダル4が進み動作をしていない(ステップS9→No)、すなわち、ブレーキペダル4が戻り動作をしていると判定する。
ブレーキペダル4が進み動作をしている場合(ステップS9→Yes)、制御装置7は大気圧センサ9から入力される大気圧信号P4によって大気圧を算出し、算出した大気圧に対応する大気圧係数を算出する。また、制御装置7は、取得したインマニ負圧に対応するインマニ係数を算出する。さらに制御装置7は、基準推定値に対応するブースタ圧係数を算出する(ステップS10)。
そして、制御装置7は、単位ブースタ消費圧力Pbに大気圧係数とインマニ係数を積算して、単位ブースタ消費圧力Pbを大気圧補正するとともにインマニ圧補正する。
さらに制御装置7は、大気圧補正とインマニ圧補正がなされた単位ブースタ消費圧力Pbにブースタ圧係数を積算する(ステップS13)。
そして、制御装置7は、大気圧係数とインマニ係数とブースタ圧係数が積算されて補正された単位ブースタ消費圧力Pbを基準推定値から減算して、ブースタ圧力の推定値を算出し(ステップS14)、推定手順を終了する。
すなわち、推定手順がサブルーチンで実行されている場合、制御装置7は、メインルーチンの実行に戻る。
また制御装置7は、ステップS9でブレーキペダル4が戻り動作をしていると判定したとき(ステップS9→No)、単位ブースタ消費圧力Pbを大気圧補正、ブースタ圧補正しない。したがって、大気圧係数及びブースタ圧係数を1に設定する(ステップS11)。さらに、制御装置7は、取得したインマニ負圧に対応するインマニ係数を算出する(ステップS12)。そして、制御をステップS13に進める。
このように、本実施形態に係る制御装置7は、ブレーキペダル4が動作を開始してから、所定のサイクル時間間隔で連続して単位ブースタ消費圧力Pbを算出する。そして、制御装置7は、1サイクル前に算出したブースタ圧力の推定値を基準推定値とし、基準推定値から単位ブースタ消費圧力Pbを減算してブースタ圧力の推定値を算出する。
したがって、制御装置7が最初に推定手順を実行するときの基準推定値を、ブースタ圧力初期値Pとすると、制御装置7は、推定した単位ブースタ消費圧力Pbの総和であるブースタ消費圧力Pbを、ブースタ圧力初期値Pから減算してブースタ圧力の推定値を算出することになる。換言すると、ブレーキペダル4が操作される前のブースタ圧力から、推定されたブースタ消費圧力Pbを減算してブースタ圧力の推定値を算出することになる。
以上のように、制御装置7(図1参照)が推定手順を実行して算出するブースタ圧力の推定値は、インマニ負圧、大気圧及びブースタ圧力に基づいて補正されていることから、実際のブースタ圧力に近似したブースタ圧力の推定値となる。すなわち、制御装置7は、高い精度でブースタ圧力の推定値を算出できる。
このように、本実施形態に係る制御装置7は、ブースタ圧力の推定値を、所定のサンプリング時間間隔で、高い精度で算出できる。
そして、ブースタ圧センサ2a(図1参照)から入力されるブースタ圧力信号P1に基づいて算出するブースタ圧力と、推定手順の実行で算出されるブースタ圧力の推定値とに大きな差がある場合、制御装置7は、ブースタ圧センサ2aに故障が発生したと判定できる。
すなわち、本実施形態に係るブレーキシステム1(図1参照)は、精度よくブースタ圧センサ2aの故障を検出できるという優れた効果を奏する。
或いは、本実施形態に係るブレーキシステム1(図1参照)においては、制御装置7(図1参照)がブースタ圧力の推定値を高い精度で算出できることから、例えばブースタ圧センサ2a(図1参照)を備えないブレーキシステム1(図1参照)を構成することができ、ブレーキシステム1のコストを削減できるという優れた効果を奏する。
また、本実施形態においては、図4に示す推定手順のステップS13、ステップS14に示すように、制御装置7(図1参照)は、ブレーキペダル4(図1参照)の操作量の変化量に基づいて求められた単位ブースタ消費圧力Pbに対して、大気圧係数、インマニ係数、ブースタ圧係数を積算することで、実際の値に近似したブースタ圧力を推定しているが、制御装置7が、ブースタ圧センサ2a(図1参照)から入力されるブースタ圧力信号P1に基づいて算出するブースタ圧力を利用して、例えば大気圧を推定することもできる。
図5は、制御装置が大気圧を推定する手順を示すフローチャートである。以下、図5を参照して、制御装置7(図1参照)が大気圧を推定する手順を説明する(適宜、図1〜図3参照)。
以下、制御装置7が大気圧を推定する手順を「大気圧推定手順」と称する。
そして、大気圧推定手順は、例えば図4に示す推定手順の代わりに、制御装置7が実行するプログラムにサブルーチンとして組み込まれ、割り込み処理などによって、所定のサイクル時間で定期的に制御装置7が実行する構成とすればよい。
1サイクル前の大気圧推定手順の実行が終了してから所定のサイクル時間が経過したら、制御装置7は大気圧推定手順の実行を開始し、液圧センサ3aから入力されるシリンダ圧力信号P3によってシリンダ油圧を取得して(ステップS20)、さらに、1サイクル前に大気圧推定手順を実行したときに取得したシリンダ油圧との差であるシリンダ油圧変化量ΔPcを算出する(ステップS21)。
そして、制御装置7は、シリンダ油圧変化量ΔPcに基づいてシリンダ油圧が減少していると判定したとき、ブレーキペダル4が進み動作をしていないで戻り動作をしていると判定し(ステップS22→No)、大気圧推定手順を終了する。
前記したように、ブレーキペダル4が進み動作をするときに、単位ブースタ消費圧力Pbが大気圧の大きさに伴って変化することから、大気圧推定手順は、ブレーキペダル4が進み動作をするときのみ実行する構成が好適である。
そのため、ブレーキペダル4が戻り動作をしているときは、大気圧推定手順を終了する。
一方、制御装置7は、シリンダ油圧変化量ΔPcに基づいてシリンダ油圧が上昇していると判定したとき、ブレーキペダル4が進み動作をしていると判定する(ステップS22→Yes)。
さらに、制御装置7は、シリンダ油圧変化量ΔPcが所定値以下のとき(ステップS23→No)、ブースタ圧力が消費されないと判定する。具体的に、制御装置7は、単位ブースタ消費圧力Pb=0とする(ステップS24)。
なお、制御装置7が、ブースタ圧力が消費されないと判定するためのシリンダ油圧変化量ΔPcの所定値は、図3に示す不感帯の幅に相当する値であり、前記したようにブレーキシステム1やブースタ2の構成によって決定される値である。すなわち、シリンダ油圧変化量ΔPcが、図3に示す不感帯の範囲内にあるとき、制御装置7は、ブースタ圧力が消費されないと判定する。
一方、シリンダ油圧変化量ΔPcが所定値より大きいとき(ステップS23→Yes)、制御装置7は、例えば図3に示すグラフを参照して、シリンダ油圧変化量ΔPcに対応する単位ブースタ消費圧力Pbを算出する(ステップS25)。
前記したように、シリンダ油圧変化量ΔPcは、ブレーキペダル4の操作量の変化量に対応していることから、制御装置7は、ブレーキペダル4の操作量の変化量に基づいて単位ブースタ消費圧力Pbを算出することになる。
そして制御装置7は、インマニ負圧センサ5cから入力されるインマニ圧力信号P2によって、インマニ負圧を取得する(ステップS26)。
さらに、制御装置7は、ブースタ圧センサ2aから入力されるブースタ圧力信号P1によってブースタ圧力を取得し(ステップS27)、1サイクル前に大気圧推定手順を実行したときに取得したブースタ圧力から今回取得したブースタ圧力を減算して、1サイクルの間のブースタ消費圧力(単位ブースタ消費圧力)Pb’を算出する(ステップS28)。
以下、制御装置7がブースタ圧力に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力をPb’と表記し、制御装置7がブレーキペダル4の操作量の変化量に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力Pbと区別する。
図4のステップS13、ステップS14に示すように、制御装置7がブースタ圧力に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力Pb’は、制御装置7がブレーキペダル4の操作量の変化量に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力Pbに、大気圧係数、インマニ係数、ブースタ圧係数を積算した値とみなせることから、例えば、インマニ係数とブースタ圧係数がわかれば、制御装置7は、大気圧係数を算出できる。
そこで、制御装置7は、取得したインマニ負圧に対応するインマニ係数を算出し、さらに、取得したブースタ圧力に対応するブースタ圧係数を算出する(ステップS29)。
そして制御装置7は、大気圧係数を算出する(ステップS30)。
前記したように、制御装置7がブースタ圧力に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力Pb’は、制御装置7がブレーキペダル4の操作量の変化量に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力Pbに、大気圧係数、インマニ係数、ブースタ圧係数を積算した値とみなせることから、下式(2)が成立する。
Pb’=Pb×大気圧係数×インマニ係数×ブースタ圧係数 ・・・(2)
したがって、制御装置7は、ブースタ圧力に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力Pb’を利用した式(2)の逆算によって、大気圧係数を算出できる。
そして、制御装置7は、大気圧係数に基づいて、大気圧の推定値を算出する(ステップS31)。すなわち、大気圧を推定する。
前記したように、大気圧係数は、大気圧とブレーキペダル4の動作速度に対応した係数であることから、制御装置7は、大気圧係数とブレーキペダル4の動作速度に基づいて大気圧の推定値を算出できる。
なお、ブレーキペダル4の動作速度は、制御装置7が算出するシリンダ油圧変化量ΔPcに基づいて容易に算出できる。
以上のように、本実施形態に係るブレーキシステム1における制御装置7(図1参照)は、ブレーキペダル4(図1参照)の操作量の変化量に基づいて算出する単位ブースタ消費圧力Pbと、ブースタ圧センサ2a(図1参照)から入力されるブースタ圧力信号P1によって取得できるブースタ圧力から推定する単位ブースタ消費圧力Pb’を利用して、大気圧の推定値を算出できる。すなわち、大気圧を推定できる。
なお、この構成の場合、ブースタ圧センサ2aが請求項に記載のブースタ圧力検出手段になり、制御装置7(図1参照)が請求項に記載の大気圧推定手段になる。
このような構成によって、制御装置7(図1参照)は、実際のブースタ消費圧力Pbに影響を与えるインマニ負圧に基づいて大気圧を推定することができるため、実際の大気圧に近似した精度の高い大気圧の推定値を算出することができる。
また、制御装置7は、大気圧センサ9(図1参照)から入力される大気圧信号P4に基づいて、大気圧センサ9が検出する大気圧を算出できる。
したがって、推定した大気圧と、大気圧センサ9が検出する大気圧の差が大きいとき、制御装置7は、大気圧センサ9が故障したと判定できる。
また、制御装置7(図1参照)が推定した大気圧を、大気圧センサ9(図1参照)が検出する大気圧の代わりとすることで、大気圧センサ9を備えないブレーキシステム1(図1参照)を構成することができ、ブレーキシステム1のコストを削減できる。
本実施形態に係るブレーキシステムの概略図である。 ブースタの概略構造を示す断面図である。 シリンダ油圧変化量と単位ブースタ消費圧力の関係を示すグラフである。 制御装置がブースタ圧力の推定値を算出する手順を示すフローチャートである。 制御装置が大気圧を推定する手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 ブレーキシステム
2 ブースタ
2a ブースタ圧センサ(ブースタ圧力検出手段)
3 マスタシリンダ
3a 液圧センサ(ブレーキ操作量検出手段)
4 ブレーキペダル(ブレーキ操作部)
5 エンジン
5a インテークマニホールド(エンジンの吸気側)
5c インマニ負圧センサ(吸気圧力検知手段)
7 制御装置(ブースタ圧力推定手段、ブースタ消費圧力推定手段、補正手段、大気圧推定手段)
9 大気圧センサ(大気圧検出手段)

Claims (6)

  1. 運転者がブレーキ操作部を操作するときのブレーキ操作力を、エンジンの吸気側に接続されたブースタによって倍力するブレーキシステムにおいて、
    前記ブレーキ操作部の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
    前記エンジンの吸気側の圧力を検出又は推定する吸気圧力検知手段と、
    前記ブレーキ操作部が操作されたときに発生する、ブースタ圧力の変化量であるブースタ消費圧力を前記ブレーキ操作部の操作量の変化量に基づいて推定するブースタ消費圧力推定手段と、
    前記エンジンの吸気側の圧力に基づいて、前記ブースタ消費圧力を補正する補正手段と、を備え
    前記補正手段は、大気圧検出手段を備えて、前記ブースタ消費圧力を前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて補正することを特徴とするブレーキシステム。
  2. 前記ブースタ消費圧力推定手段は、所定のサンプリング時間間隔で単位ブースタ消費圧力を推定して、当該単位ブースタ消費圧力を積分した総和を前記ブースタ消費圧力の推定値として算出し、
    前記補正手段は、前記ブースタ消費圧力を前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて補正するとき、前記大気圧検出手段が検出する大気圧に対応してあらかじめ設定され、「1」より小さく、且つ、大気圧が小さいほど小さな値であり、さらに、大気圧と前記ブースタ圧力の差が大きいほど小さな値となるようにブースタ圧補正された大気圧係数を前記単位ブースタ消費圧力に積算することを特徴とする請求項1に記載のブレーキシステム。
  3. 前記補正手段は、
    前記ブレーキ操作部が操作される前の前記ブースタ圧力に基づいて、前記ブースタ消費圧力を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレーキシステム。
  4. 前記ブースタのブースタ圧力の推定値を算出するブースタ圧力推定手段を更に設け、
    前記ブースタ圧力推定手段は、
    前記ブースタ消費圧力推定手段が推定して前記補正手段が補正した前記ブースタ消費圧力を前記ブレーキ操作部が操作される前の前記ブースタ圧力から減算して、前記ブースタ圧力の推定値を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
  5. 運転者がブレーキ操作部を操作するときのブレーキ操作力を、エンジンの吸気側に接続されたブースタによって倍力するブレーキシステムに、
    前記ブレーキ操作部の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
    前記エンジンの吸気側の圧力を検出又は推定する吸気圧力検知手段と、
    前記ブレーキ操作部が操作されたときに発生する、ブースタ圧力の変化量であるブースタ消費圧力を前記ブレーキ操作部の操作量の変化量に基づいて推定するブースタ消費圧力推定手段と、
    大気圧検出手段を備えて前記ブースタ消費圧力を補正する補正手段と、を備えて前記ブースタ消費圧力を補正するブースタ消費圧力推定方法であって、
    前記エンジンの吸気側の圧力に基づいて補正値を算出するステップと、
    前記ブースタ消費圧力推定手段が推定する前記ブースタ消費圧力に前記補正値を積算して、前記ブースタ消費圧力を補正するステップと、
    前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて前記ブースタ消費圧力を補正するステップと、
    を前記補正手段が実行することを特徴とするブースタ消費圧力推定方法。
  6. 前記ブースタ消費圧力推定手段は、前記ブースタ消費圧力を、前記ブレーキ操作部の操作量の変化量に基づいて所定のサンプリング時間間隔で推定される単位ブースタ消費圧力を積分して推定し、
    前記大気圧検出手段が検出する大気圧に基づいて前記ブースタ消費圧力を補正するステップは、
    前記大気圧検出手段が検出する大気圧に対応してあらかじめ設定され、「1」より小さく、且つ、大気圧が小さいほど小さな値であり、さらに、大気圧と前記ブースタ圧力の差が大きいほど小さな値となるようにブースタ圧補正された大気圧係数を前記単位ブースタ消費圧力に積算するステップであることを特徴とする請求項5に記載のブースタ消費圧力推定方法。
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