JP3870568B2 - 発電制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の動力伝達経路に、発電機および流体式動力伝達装置が設けられている発電制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンが搭載された車両においては、エンジンの内部で燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、この熱エネルギを機械エネルギ(動力)に変換して車両を走行させている。エンジンは、その燃焼効率が良く、かつ、高動力が得られる運転領域が比較的狭い回転数の範囲に限定されている。そこで、エンジンを動力源とする車両においては、エンジン回転数およびエンジン動力を、走行条件に応じて変更する変速機が搭載されている。
【0003】
一方、近年では、エンジンを駆動させる燃料の節約と、エンジンの回転による騒音の低減と、燃料の燃焼により発生する排気ガスの低減とを目的として、エンジンおよび電動機とを搭載したハイブリッド車が提案されている。このハイブリッド車においては、車両の走行状態に基づいてエンジンまたは電動機を制御して、車両を走行させるように構成されている。
【0004】
具体的には、エンジンを、その燃焼効率の良い回転領域で運転させる一方、エンジンの燃焼効率の低下する運転領域においては、エンジンを停止して、電動機の出力により車両を走行させることが可能である。また、この電動機は、幅広い回転数領域での円滑な回転が可能である。したがって、上記ハイブリッド車においては、変速機を設けることなく車両を走行させることも可能である。しかしながら、車両の発進時や登坂時などにおいては、低速であっても大きな動力を必要とするので、電動機の動力を大きくするためには電動機を大型化しなければらならない。そこで、電動機の大型化を抑制するために電動機と車輪との間の動力伝達経路に変速機を設ける構成が採用されている。
【0005】
上記のハイブリッド車においては、電動機に電流を供給するためのバッテリが搭載されている。しかしながら、バッテリの充電量が低下した場合に、車両とは別に独立して設置されている充電システムによりバッテリの充電をおこなうのでは、充電作業自体が面倒である。また、充電システムの存在しない場所においては、バッテリの充電をおこなうことができないという不都合がある。
【0006】
そこで、上記電動機として、発電機能をも兼備したモータ・ジェネレータが使用されている。このモータ・ジェネレータを使用すれば、エンジンの動力、または車輪から入力される動力をモータ・ジェネレータに入力することにより、このモータ・ジェネレータを発電機として機能させ、発生した電気エネルギをバッテリに充電することが可能であり、前述した不都合を解消できる。
【0007】
一方、エンジンの動力変動や振動が変速機に伝達されることを抑制するため、エンジンと変速機との間の動力伝達経路に、流体式動力伝達装置を配置することがある。この流体式動力伝達装置は、エンジンの出力軸に接続された第1回転部材と、変速機の入力軸に接続された第2回転部材とを備えている。また、流体式動力伝達装置のケーシングの内部には、作動流体が封入されている。そして、第1回転部材の回転が流体を介して第2回転部材に伝達される。この流体式動力伝動装置においては、動力の伝達時に第1回転部材と第2回転部材とが流体によって滑りが生じる。このため、エンジンの動力変動が生じた場合でも、上記滑りにより、動力変動や振動が変速機に伝達されにくいという利点がある。
【0008】
そして、エンジンと車輪との間に形成されている動力伝達経路に、モータ・ジェネレータと流体式動力伝達装置とが設けられている動力制御装置の一例が、特開平8−168104号公報に記載されている。
【0009】
この公報に記載された動力制御装置は、エンジン(動力源)の出力軸に、電動機または発電機として機能するモータ・ジェネレータが設けられている。また、エンジンの出力軸は、直結クラッチを有するトルクコンバータ(流体式動力伝達装置)を介して変速機に連結されている。上記モータ・ジェネレータは、エンジンとトルクコンバータとの間に配置されている。また、モータ・ジェネレータには、インバータを介してバッテリが接続されている。
【0010】
そして、モータ・ジェネレータを電動機として機能させる場合は、バッテリからの直流電圧を交流電圧に変換してモータ・ジェネレータに供給し、モータ・ジェネレータから出力されたトルクが変速機に伝達される。また、バッテリの充電量が低下した場合には、モータ・ジェネレータを発電機として機能させてバッテリの充電をおこなう。具体的には、エンジンから出力される動力を増大させて、この動力をモータ・ジェネレータに入力して発電させ、その電気エネルギをバッテリに充電する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された動力制御装置においては、バッテリへの充電を目的としてエンジン動力を増大させた場合に、トルクコンバータに入力される動力も増大する。その結果、トルクコンバータの回転部材同士の滑り量が増大し、トルクコンバータの作動流体の温度が上昇してしまう問題があった。
【0012】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、発電機による発電に際して、流体式動力伝達装置の流体温度の上昇を抑制することの可能な発電制御装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力伝達経路を経由させて車輪に動力を伝達する動力源と、前記動力伝達経路に入力される動力により発電する発電機と、流体を介して動力を伝達する複数の回転部材を有する流体式動力伝達装置とが連結されている発電制御装置において、前記流体の温度を認識する流体温度認識手段と、この流体温度認識手段により認識される前記流体の温度が所定値以上である場合は、前記発電機の発電量を低減させる発電制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
この発明においては、動力源から発電機に入力される動力、または車輪から発電機に入力される動力のいずれにおいても、発電機による発電が可能である。また発電機の発電状態には、発電機に対する動力の入力状態と、発電機の回転数とが含まれる。さらにこの発明において、流体の温度を認識する制御には、温度センサなどにより直接流体の温度を検出する制御と、流体の温度以外のデータに基づいて間接的に流体温度を推定する制御とが含まれる。
【0015】
請求項1の発明によれば、流体式動力伝達装置の流体温度が所定値以上になった場合に、発電機の発電量を低減することにより、回転部材同士の滑り(相対回転)量が抑制される。したがって、流体式動力伝達装置の流体の温度上昇が抑制される。
【0016】
請求項2の発明は、動力伝達経路を経由させて車輪に動力を伝達する動力源と、前記動力伝達経路に入力される動力により発電する発電機と、流体を介して動力を伝達する複数の回転部材を有する流体式動力伝達装置とが連結され、前記流体式動力伝達装置の出力側に、係合圧を増減可能な摩擦係合装置を有する変速機が設けられている発電制御装置において、前記発電機で発電し、かつ、車両が停止している場合に、前記流体の温度を認識する流体温度認識手段と、この流体温度認識手段により認識される前記流体の温度が所定値以上である場合は、前記摩擦係合装置の係合圧を低下させる変速機制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2の発明によれば、動力源から発電機に入力されている動力により発電している場合には、従動側回転部材の回転を妨げる負荷が軽減される。また、車輪から変速機を介して発電機に入力される動力により発電している場合には、回転部材同士により伝達するべき動力が抑制される。したがって、いずれの場合にも、回転部材同士の滑りが抑制されて流体の温度上昇が抑制される。
【0018】
請求項3の発明は、動力伝達経路を経由させて車輪に動力を伝達する動力源と、前記動力伝達経路に入力される動力により発電する発電機と、流体を介して動力を伝達する複数の回転部材を有する流体式動力伝達装置とが連結されているとともに、前記回転部材同士を機械的に接続するために係合されるクラッチ機構が設けられ、前記流体式動力伝達装置の出力側に、係合圧を制御可能な摩擦係合装置を有する変速機が設けられている発電制御装置において、前記発電機での発電中に前記流体の温度を認識する流体温度認識手段と、この流体温度認識手段により検出される前記流体の温度が所定値以上である場合は、前記摩擦係合装置の係合圧を低下させ、かつ、前記クラッチ機構の係合圧を高める複合制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項3の発明によれば、動力源から発電機に入力されてる動力により発電している場合、または車輪から変速機を介して発電機に入力される動力により発電している場合のいずれにおいても、クラッチ機構により伝達される動力が増大する一方、回転部材同士により伝達される動力が減少する。したがって、回転部材同士の滑りが抑制されて流体の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図を参照してより具体的に説明する。図2は、この発明を適用したハイブリッド車のシステム構成を示すブロック図である。車両の動力源であるエンジン1としては、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジンまたはガスタービンエンジンまたはジェットエンジン等の内燃機関が用いられる。この実施例のエンジン1は、燃料噴射装置および吸排気装置ならびに点火装置等を備えた公知の構造のものである。
【0023】
また、エンジン1の吸気管には電子スロットルバルブ1Bが設けられており、電子スロットルバルブ1Bの開度が電気的に制御されるように構成されている。エンジン1から出力されるトルクの伝達経路には、トルクコンバータ2およびモータ・ジェネレータ3ならびに歯車変速機構4が直列に配置されている。モータ・ジェネレータ3は、例えば交流同期型のものが適用される。
【0024】
このモータ・ジェネレータ3は、永久磁石を有する回転子と、コイルが巻き付けられた固定子とを備えている。そして、コイルの3層巻き線に3層交流電流を流すと回転磁界が発生し、この回転磁界を回転子の回転位置および回転速度に合わせて制御することにより、回転子に配置された永久磁石が回転磁界に吸引されてトルクが発生する。発生するトルクは電流の大きさにほぼ比例し、回転数は交流電流の周波数により制御される。さらに、モータ・ジェネレータ3は、機械エネルギと電気エネルギとの間で相互に変換をおこなう機能、つまり、電動機としての機能と、発電機としての機能とを兼備している。なお、この実施例においては、エンジン1とトルクコンバータ2との間にモータ・ジェネレータ3が配置され、モータ・ジェネレータ3と歯車変速機構4との間にトルクコンバータ2が配置されている。
【0025】
図3は、トルクコンバータ2および歯車変速機構4の構成を示すスケルトン図である。このトルクコンバータ2および歯車変速機構4を有する自動変速機の内部には、作動流体としてのオートマチック・トランスミッション・フルード(図示せず)が封入されている。このオートマチック・トランスミッション・フルードは、エンジン1によって駆動されるオイルポンプ(図示せず)により輸送されるもので、オートマチック・トランスミッション・フルードは、歯車変速機構4の摩擦係合装置を作動させる作動油としての機能と、トルクコンバータ2の作動流体としてトルクを伝達する機能と、自動変速機の内部に設けられている部品の潤滑および冷却をおこなう機能とを備えている。
【0026】
トルクコンバータ2は、流体式トルク伝達装置の一種であり、トルク増幅機能を備えている。このトルクコンバータ2は、駆動側回転部材の回転を流体を介して従動側回転部材にトルクを伝達するものである。このトルクコンバータ2は、ポンプインペラ7に一体化させたフロントカバー8と、タービンランナ9を一体に取付けたハブ10と、ロックアップクラッチ11とを有している。ロックアップクラッチ11は係合・解放可能に構成されており、ロックアップクラッチ11が解放されている場合は、ポンプインペラ7とタービンランナ9との間で、流体の運動エネルギによりトルクの伝達がおこなわれる。また、ロックアップクラッチ11が係合された場合は、フロントカバー8とハブ10とが機械的に接続される。
【0027】
フロントカバー8はクランクシャフト12に連結されている。また、ポンプインペラ7およびタービンランナ9の内周側には、ステータ13が設けられている。このステータ13は、ポンプインペラ7からタービンランナ9に伝達されるトルクを増幅するためのものである。さらに、ハブ10には入力軸14が接続されている。したがって、エンジン1のクランクシャフト12からトルクが出力されると、このトルクが作動流体またはロックアップクラッチ11を介して入力軸14に伝達される。
【0028】
これとは逆に、入力軸14のトルクを、作動流体またはロックアップクラッチ11を介してエンジン1に伝達することも可能である。このように、入力軸14のトルクをエンジン1に伝達する状態としては、車輪の回転をエンジン1に伝達してエンジンブレーキ力を作用させる場合が例示される。
【0029】
前記歯車変速機構4は、副変速部15および主変速部16から構成されている。副変速部15は、オーバドライブ用の遊星歯車機構17を備えており、遊星歯車機構17はピニオンギヤ17Aを有する。このピニオンギヤ17Aはキャリヤ18により保持されており、キャリヤ18に入力軸14が連結されている。この遊星歯車機構17を構成するキャリヤ18とサンギヤ19との間には、多板クラッチC0 と一方向クラッチF0 とが設けられている。この一方向クラッチF0 は、サンギヤ19がキャリヤ18に対して相対的に正回転、つまり、入力軸14の回転方向に回転した場合に係合するようになっている。そして、副変速部15の出力要素であるリングギヤ20が、主変速部16の入力要素である中間軸21に接続されている。また、サンギヤ19の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。
【0030】
したがって、副変速部15は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態で遊星歯車機構17の全体が一体となって回転する。このため、中間軸21が入力軸14と同速度で回転し、低速段となる。また、ブレーキB0 を係合させてサンギヤ19の回転を止めた状態では、リングギヤ20が入力軸14に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0031】
他方、主変速部16は、三組の遊星歯車機構22,23,24を備えており、三組の遊星歯車機構22,23,24を構成する回転要素が、以下のように連結されている。すなわち、第1遊星歯車機構22のサンギヤ25と、第2遊星歯車機構23のサンギヤ26とが互いに一体的に連結されている。また、第1遊星歯車機構22のリングギヤ27と、第2遊星歯車機構23のピニオンギヤ28を保持したキャリヤ29と、第3遊星歯車機構24のピニオンギヤ30を保持したキャリヤ31とが連結されている。さらに、キャリヤ31に出力軸32が連結されている。そして、車輪32がトルク伝達装置(図示せず)を介して車輪32Aに接続されている。さらにまた、第2遊星歯車機構23のリングギヤ33が、第3遊星歯車機構24のサンギヤ34に連結されている。
【0032】
この主変速部16の歯車列においては、後進側の1つの変速段と、前進側の4つの変速段とを設定することができる。このような変速段を設定するための摩擦係合装置、つまりクラッチおよびブレーキが、以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、リングギヤ33およびサンギヤ34と、中間軸21との間に第1クラッチC1 が設けられている。また、互いに連結されたサンギヤ25およびサンギヤ26と、中間軸21との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0033】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構22のサンギヤ25、および第2遊星歯車機構23のサンギヤ26の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ25,26とケーシング35との間には、第1一方向クラッチF1 と、多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されている。第1一方向クラッチF1 はサンギヤ25,26が逆回転、つまり入力軸14の回転方向とは反対方向に回転しようとする際に係合するようになっている。
【0034】
第1遊星歯車機構22はピニオンギヤ36を備えており、このピニオンギヤ36がキャリヤ37により保持されている。そして、キャリヤ37とケーシング35との間に、多板ブレーキである第3ブレーキB3 が設けられている。そして第3遊星歯車機構24はリングギヤ38を備えており、リングギヤ38の回転を止めるブレーキとして、多板ブレーキである第4ブレーキB4 と、第2一方向クラッチF2 とが設けられている。第4ブレーキB4 および第2一方向クラッチF2 は、ケーシング35とリングギヤ38との間に相互に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ38が逆回転しようとする際に係合するように構成されている。さらに、歯車変速機構4の入力回転数を検出する入力回転数センサ(タービン回転数センサ)4Aと、歯車変速機構4の出力軸32の回転数を検出する出力回転数センサ(車速センサ)4Bとが設けられている。
【0035】
上記のように構成された歯車変速機構4においては、各クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を、図4の動作図表に示すように係合・解放することにより、前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図4において○印は摩擦係合装置が係合することを示し、◎印は、エンジンブレーキ時に摩擦係合装置が係合することを示し、△印は摩擦係合装置が係合・解放のいずれでもよいこと、言い換えれば、摩擦係合装置が係合されてもトルクの伝達には無関係であることを示し、空欄は摩擦係合装置が解放されることを示している。
【0036】
また、この実施例では、シフトレバー4Cのマニュアル操作により、図5に示すようなシフトレバーポジションを設定することが可能である。すなわち、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションの各ポジションを設定可能になっている。ここで、PポジションおよびNポジションは非走行ポジションであり、Rポジション、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションは走行ポジションである。また、走行ポジションのうち、Rポジションは後進ポジションであり、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションは前進ポジションである。
【0037】
また、図2に示された油圧制御装置39により、歯車変速機構4における変速段の設定または切り換え制御、ロックアップクラッチ11の係合・解放やスリップ制御、油圧回路のライン圧の制御、摩擦係合装置の係合圧の制御などがおこなわれる。この油圧制御装置39は電気的に制御されるもので、歯車変速機構4の変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 と、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4 とを備えている。
【0038】
さらに、油圧制御装置39は、油圧回路のライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLTと、歯車変速機構4の変速過渡時におけるアキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLNと、ロックアップクラッチ11や所定の摩擦係合装置に作用する油圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUとを備えている。このように、歯車変速機構4および油圧制御装置39により、いわゆる有段式の自動変速機が構成されている。
【0039】
図6は、モータ・ジェネレータ3の制御系統を示すブロック図である。モータ・ジェネレータ3はクランクシャフト12に接続されており、モータ・ジェネレータ3は、インバータ40を介してバッテリ41に接続されている。インバータ40は、直流電流と交流電流との変換を行う電力変換装置である。モータ・ジェネレータ3が電動機として機能する場合は、バッテリ41からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ・ジェネレータ3に供給する。モータ・ジェネレータ3が発電機として機能する場合は、エンジン1から入力されるトルク、または車輪32Aから歯車変速機構4およびトルクコンバータ2を介して入力されるトルクにより回転子が回転し、回転子の回転により発生した誘導電圧をインバータ40により直流電圧に変換してバッテリ41に出力する。
【0040】
さらにまた、インバータ40およびバッテリ41にはコントローラ42が接続されている。なお、バッテリ41には補機41Aが接続されており、バッテリ41から供給される電流により補機41Aが作動するように構成されている。補機41Aとしては、エアコンプレッサ、照明装置、デフォッガ等が例示される。このコントローラ42は、バッテリ41からモータ・ジェネレータ3に供給される電流値と、モータ・ジェネレータ3により発電される電流値とを検出する機能を備えている。また、コントローラ42は、モータ・ジェネレータ3の回転数を制御する機能と、バッテリ41の充電状態(SOC:state of charge)を検出および制御する機能とを備えている。
【0041】
図7は、図2および図6に示されたシステムの制御回路を示すブロック図である。電子制御装置(ECU)58は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入力・出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0042】
この電子制御装置58には、エンジン回転数センサ59の信号、エンジン水温センサ60の信号、イグニッションスイッチ61の信号、バッテリ41の充電状態、およびモータ・ジェネレータ3の電流値を示すコントローラ42の信号、エアコンスイッチ62の信号、車速センサ4Bの信号、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度を検出する油温センサ63の信号、シフトレバー4Cの操作位置を検出するシフトポジションセンサ64の信号等が入力されている。
【0043】
また、電子制御装置58には、運転者の停車意図を検出するパーキングブレーキスイッチ65の信号、運転者の減速意図または制動意図を検出するフットブレーキスイッチ66の信号、排気管(図示せず)の途中に設けられた触媒温度センサ67の信号、アクセルペダル1Aの踏み込み量を示すアクセル開度センサ68の信号、エンジン1の電子スロットルバルブ1Bの開度を示すスロットル開度センサ69の信号、タービン回転数センサ4Aの信号、モータ・ジェネレータ3の回転数センサ(レゾルバ)70の信号等が入力されている。
【0044】
この電子制御装置58からは、エンジン1の点火装置72を制御する信号、エンジン1の燃料噴射装置73を制御する信号、コントローラ42を介してモータ・ジェネレータ3を制御する信号、油圧制御装置39を制御する信号、エンジン1の作動状態を示すインジケータ74への表示信号、電子スロットルバルブ1Bの開度を制御するアクチュエータ75への制御信号などが出力されている。
【0045】
このようにして、電子制御装置58に入力される各種の信号に基づいて、エンジン1の動作およびモータ・ジェネレータ3の動作ならびに歯車変速機構4の動作が制御される。より具体的には、エンジン1の始動・停止、エンジン回転数、エンジントルクの制御は、シフトポジションセンサ64の信号、イグニッションスイッチ61の信号、アクセル開度センサ68の信号、バッテリ41の充電状態を示す信号、自動変速機の変速比、油温センサ63Aの信号などに基づいておこなわれる。
【0046】
ここで、エンジン回転数、エンジントルクは、電子スロットルバルブ1Bの開度による吸入空気量の制御、点火装置72による点火時期制御、燃料噴射装置73による燃料噴射量制御により増減することが可能である。また、バッテリ41の充電状態、またはオートマチック・トランスミッション・フルードの温度に基づいて、モータ・ジェネレータ3の発電状態(具体的には、トルクの入力状態)が制御される。さらに、車両に必要なパワーに基づいて、モータ・ジェネレータ3を電動機として機能させる制御がおこなわれる。
【0047】
つぎに、電子制御装置58による歯車変速機構4および油圧制御装置39ならびにロックアップクラッチ11の制御内容を具体的に説明する。電子制御装置58には、歯車変速機構4の変速比を制御する変速線図(変速マップ)が記憶されている。この変速線図には、車両の走行状態、例えばアクセル開度と車速とをパラメータとして、所定の変速段から他の変速段に変速(アップシフトまたはダウンシフト)するための変速点が設定されている。
【0048】
そして、この変速線図に基づいて変速判断がおこなわれ、この変速判断が成立した場合は、電子制御装置58から制御信号が出力され、この制御信号が油圧制御装置39に入力される。その結果、所定のソレノイドバルブが動作し、所定の摩擦係合装置の係合・解放がおこなわれて変速が実行される。そして、変速を実行する摩擦係合装置の係合・解放のタイミング、および摩擦係合装置に作用する油圧が、エンジントルクに基づいて制御される。
【0049】
また、この実施例においては、アクセル開度および車速に基づく変速比の制御、あるいはシフトレバー4Cの設定ポジションに関わりなく、摩擦係合装置の係合・解放状態、もしくは係合圧を制御することが可能である。具体的には、シフトレバー4Cが走行ポジションに設定されている場合に、係合状態にある第1クラッチC1 または第2クラッチC2 を強制的に解放させる、いわゆるニュートラル制御をおこなうことが可能である。また、摩擦係合装置を解放させずに、係合されている摩擦係合装置の係合圧を低下させてスリップさせる制御をおこなうことも可能である。
【0050】
さらに、ロックアップクラッチ11の動作は、通常は、アクセル開度、車速、変速比(変速段)等の条件に基づいて制御される。このため、電子制御装置58には、アクセル開度および車速をパラメータとして、ロックアップクラッチ11を係合またはスリップあるいは解放する領域を設定したロックアップクラッチ制御マップが記憶されている。
【0051】
また、この実施例においては、ロックアップクラッチマップおよび変速段に関わりなく、ロックアップクラッチ11の係合圧(トルク容量)を制御することが可能である。具体的には、モータ・ジェネレータ3の発電機能によりバッテリ41に対して充電中に、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度に基づいて、ロックアップクラッチ11の係合圧を制御することが可能である。
【0052】
上記ハイブリッド車の制御内容を簡単に説明する。イグニッションスイッチ61がスタート位置に操作されると、モータ・ジェネレータ3のトルクがエンジン1に伝達され、かつ、燃料噴射装置73による燃料噴射制御がおこなわれ、エンジン1が始動する。そして、エンジン水温が所定値になり、かつ、バッテリ41の充電が不要な場合は、所定時間後にエンジン1が自動的に停止される。
【0053】
そして、アクセルペダル1Aが踏み込まれると、モータ・ジェネレータ3のトルクがトルクコンバータ2を介して歯車変速機構4に伝達されるとともに、このトルクが車輪32Aに伝達されて車両が発進する。車両の発進時および低速走行時のように、エンジン効率が低下する領域においては、燃料噴射装置73による燃料噴射をおこなわず、モータ・ジェネレータ3の出力のみにより車両が走行する。また通常走行時には、自動的にエンジン1が始動され、エンジン出力により車両が走行する。高負荷走行時には、エンジン1の出力およびモータ・ジェネレータ3の出力により車両が走行する。
【0054】
車両の走行に必要なパワーは、アクセル開度および車速に基づいて演算される。そして、予め電子制御装置58に記憶されている最適燃費線に基づいてエンジン回転数が演算される。さらに、電子スロットルバルブ1Bの開度制御をおこなうとともに、歯車変速機構4の変速比に基づいてモータ・ジェネレータ3の回転数を求め、エンジン回転数を制御する。これと同時に、必要な駆動力に対して、モータ・ジェネレータ3が分担するトルクが演算される。
【0055】
車両の減速時または制動時には、車輪32Aから入力されたトルクが歯車変速機構4をおよびトルクコンバータ2を介してモータ・ジェネレータ3に伝達される。すると、このトルクによりモータ・ジェネレータ3が発電機として機能し、回収した電気エネルギをバッテリ41に充電する。また、バッテリ41は、充電量が所定の範囲になるように制御されており、充電量が少なくなった場合は、エンジン出力を増大させ、その一部をモータ・ジェネレータ3に伝達して発電させる。なお、車両の停車時には自動的にエンジン1が停止される。
【0056】
ここで、この実施例の構成と、この発明との対応関係を説明する。すなわち、エンジン1がこの発明の動力源に相当し、クランクシャフト12および入力軸14ならびに出力軸32がこの発明の動力伝達経路に相当する。また、モータ・ジェネレータ3がこの発明の発電機に相当し、フロントカバー8、ポンプインペラ7、タービンランナ9、ハブ10が、この発明の回転部材に相当し、トルクコンバータ2がこの発明の流体式動力伝達装置に相当する。さらに歯車変速機構4がこの発明の変速機に相当し、歯車変速機構4の各種のクラッチやブレーキがこの発明の摩擦係合装置に相当する。
【0057】
つぎに、この発明の制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、図5に示された各種のセンサやスイッチの信号が電子制御装置58に入力され、電子制御装置58によりこれらの信号が処理される(ステップ1)。ついで、エンジントルクによりモータ・ジェネレータ3が発電機として機能して、バッテリ41に対する充電がおこなわれているか否かが判断される(ステップ2)。ステップ2で否定判断された場合は、ロックアップクラッチ11の滑りによるオートマチック・トランスミッション・フルードの温度上昇の可能性が少ないため、格別の制御をおこなうことなくリターンされる。
【0058】
また、ステップ2で肯定判断された場合は、車速センサ4Bにより検出される車速が、基準車速Va以下であるか否かが判断される(ステップ3)。この基準車速Vaは電子制御装置58に予め記憶されているもので、実質的に車両停止を判断する。ステップ3で否定判断された場合は、車両が走行中であり、ポンプインペラ7とタービンランナ9との相対回転が少ないので、格別の制御をおこなうことなくリターンされる。
【0059】
ステップ3で肯定判断された場合は、車両が停車中であること、またはきわめて低車速であることを意味している。このような場合、ロックアップクラッチマップに基づく制御においては、ロックアップクラッチ11が解放されることになる。すなわち、トルクコンバータ2のポンプインペラ7とタービンランナ9とに滑りが生じ、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が上昇する可能性がある。
【0060】
そこで、ステップ3で肯定判断された場合は、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が所定値Toil 以上であるか否かが判断される(ステップ4)。このオートマチック・トランスミッション・フルードの温度は、油温センサ63の信号により直接検出する手法と、バッテリ41に対する充電状態に基づいて、間接的に判断する手法とが例示される。すなわち、バッテリ41に対する所定量の充電が、所定時間継続しておこなわれていることを基準として、オートマチック・トランスミッション・フルードの油温が所定値Toil 以上になっていると推定することが可能である。ステップ4で否定判断された場合は、バッテリ41に対する充電状態を継続し(ステップ5)、リターンされる。
【0061】
ステップ4で肯定判断された場合は、シフトレバー4CがPポジションまたはNポジションに設定されているか否かが判断される(ステップ6)。ステップ6で肯定判断された場合は、バッテリ41に対する充電量を低下させる制御がおこなわれる(ステップ7)。具体的には、エンジントルクを低下させることにより、モータ・ジェネレータ3に入力されるトルクを低下させる。エンジントルクを低下させるための制御としては、アクチュエータ75による電子スロットルバルブ1Bの開度制御が考えられる。同時に、燃料噴射装置73による燃料噴射量の制御と、点火装置72による点火時期制御とが例示される。同時に、モータ・ジェネレータ3による充電量を低下させる制御がおこなわれる。このモータ・ジェネレータ3による充電量の低下は、その電流値をコントローラ42により制御することにより達成される。
【0062】
上記エンジントルクの低下により、フロントカバー8に伝達されるトルクが低下する。このため、ポンプインペラ7とタービンランナ9との間で伝達されるトルクが低下し、ポンプインペラ7とタービンランナ9との滑りが抑制される。したがって、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度上昇が抑制され、その耐久性の低下を防止することができる。
【0063】
ついで、ロックアップクラッチ11の係合圧を高める制御が行なわれ(ステップ8)、リターンされる。つまり、ロックアップクラッチ11が解放されていた場合は、ロックアップクラッチ11を完全に係合することにより、フロントカバー8とハブ10とが機械的に直結された状態になるため、ポンプインペラ7とタービンランナ9との滑りが確実に防止され、フロントカバー8のトルクがロックアップクラッチ11を介してハブ10に伝達される。したがって、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度上昇が一層抑制される。
【0064】
なお、ステップ8においては、解放されているロックアップクラッチ11をスリップさせて係合圧を高める制御、またはスリップしているロックアップクラッチ11を、スリップ状態を維持しながら係合圧を高める制御、さらには、スリップしているロックアップクラッチ11の係合圧を高めて完全係合させる制御をおこなうことも可能である。
【0065】
一方、前記ステップ6で否定判断された場合は、入力軸14と出力軸32との間で伝達されるトルクを低下させる制御をおこなう(ステップ9)。すなわち、シフトレバー4Cが前進ポジションに設定されていた場合は、第1クラッチC1 を解放するニュートラル制御、または半係合状態にする制御がおこなわれる。また、シフトレバー4CでRポジションが設定されていた場合は、第2クラッチC2 を解放、または半係合状態にする制御がおこなわれる。ステップ9の制御がおこなわれた場合は、入力軸14の回転を妨げようとする負荷が軽減されるためにポンプインペラ7とポンプインペラ9との相対回転、つまり滑りが抑制される。したがって、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度上昇を抑制することができる。
【0066】
ついで、ステップ10において、バッテリ41の充電量を低下させる制御がおこなわれた後、ステップ11において、ロックアップクラッチ11の係合圧を高める制御がおこなわれ、リターンされる。ステップ10の制御内容は、ステップ7の制御内容と同様であり、ステップ11の制御内容はステップ8の制御内容と同様である。したがって、ステップ10の制御においても、ステップ7の制御と同様の効果を得られ、ステップ11の制御においても、ステップ8と同様の効果を得られる。なお、ステップ7またはステップ10においては、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が所定値Toil に低下するまで、バッテリ41の充電量が低下される。この場合に、電子制御装置58により演算されている必要最低限の発電量(バッテリ41の電圧)を確保する必要性があることは勿論である。
【0067】
図8は、図1のフローチャートのステップ6で否定されるルーチンを経由した場合における、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度と、ロックアップクラッチ11の状態と、モータ・ジェネレータ(MG)3のトルクと、第1クラッチC1 に作用する油圧と、エンジントルクとの関係を示すタイムチャートである。
【0068】
まず、エンジントルクがほぼ一定に維持されており、モータ・ジェネレータ3が発電機として機能し、バッテリ41に対して充電されている。すなわち、モータ・ジェネレータ3のトルクが負の状態でほぼ一定に維持されている。また、ロックアップクラッチ11が解放されているとともに、シフトレバー4Cが前進ポジションに設定されており、第1クラッチC1 に所定の油圧が作用して第1クラッチC1 が係合されている。
【0069】
そして、ポンプインペラ7とポンプインペラ9との滑りにより、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が上昇し、時間t1において、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が所定値Toil 以上になったことが判断される。すると、エンジントルクを低下させる制御と、モータ・ジェネレータ3による充電量を低下させる制御とがおこなわれ、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度上昇が抑制されてほぼ一定に維持される。そして、時間t2においてニュートラル制御がおこなわれ第1クラッチC1 に作用する油圧が低下する。さらに、時間t3以後は、エンジントルクおよびモータ・ジェネレータ3による充電量がほぼ一定に制御され、ついで、第1クラッチC1 が完全に解放される。
【0070】
その後、時間t4においてロックアップクラッチ11の係合圧を高める制御がおこなわれると、ポンプインペラ7とタービンランナ9との滑りが抑制され、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が低下していく。そして、時間t5において、ロックアップクラッチ11が完全に係合され、かつ、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が所定値Toil 以下になる。以後、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度が徐々に低下することになる。
【0071】
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。ステップ4がこの発明の流体温度認識手段に相当し、ステップ7,10がこの発明の発電制御手段に相当する。またステップ9がこの発明の変速機制御手段に相当し、ステップ8,11がこの発明のクラッチ機構制御手段に相当する。さらに、ステップ9,11がこの発明の複合制御手段に相当する。
【0072】
なお、図1のフローチャートのステップ6で否定判断された場合に、ステップ7の制御およびステップ8の制御を同時に実行することも可能である。また、ステップ6で否定判断された場合に、ステップ7の制御またはステップ8の制御のいずれか一方をおこなってリターンすることも可能である。
【0073】
さらに、ステップ6で肯定判断された場合に、ステップ9の制御ないしステップ11の制御を同時に実行することも可能である。また、ステップ6で肯定判断された場合に、ステップ9の制御ないしステップ11の制御のいずれか1つまたは2つを選択しておこなうことも可能である。
【0074】
なお、図1に示すフローチャートによりオートマチック・トランスミッション・フルードの温度が所定値まで低下したことが検出された場合に、バッテリ41の充電量、または、ロックアップクラッチ11の係合圧、あるいは摩擦係合装置の係合圧を元に復帰させる制御をおこなうことも可能である。また、モータ・ジェネレータ3の発電状態を制御するために、その回転数を制御することも可能である。
【0075】
また、減速時または制動時に、車輪32Aから入力されるトルクによりモータ・ジェネレータ3を発電機として機能させてバッテリ41に充電している状態において、前述した各種の制御をおこなうことも可能である。すなわち、この状態で歯車変速機構5の摩擦係合装置の係合圧を低下させる制御をおこなった場合は、入力軸14に入力されるトルクが低下する。このため、ポンプインペラ7とタービンランナ9との滑りが抑制されて、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度上昇を抑制することができる。
【0076】
さらに、上記状態でロックアップクラッチ11の係合圧を高める制御をおこなった場合においても、ポンプインペラ7とタービンランナ9との滑りが抑制されて、オートマチック・トランスミッション・フルードの温度上昇を抑制することができる。さらにまた、上記状態において、歯車変速機構5の摩擦係合装置の係合圧を高める制御をおこない、かつ、クラッチ機構の係合圧を高める制御をおこなうことも可能である。
【0077】
また、図2および図3においては、エンジン1とトルクコンバータ2との間にモータ・ジェネレータ3が配置されているが、トルクコンバータ2と歯車変速機構4との間にモータ・ジェネレータ3が配置されている構成の車両に対して、この発明を適用することが可能である。さらに、この発明の流体式動力伝達装置には、トルク増幅機能のないフルードカップリングも含まれる。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、流体式動力伝達装置の流体温度が所定値以上になった場合に、発電機に入力される動力を低減することにより、回転部材同士の滑り量が抑制される。したがって、流体式動力伝達装置の流体の温度上昇が抑制される。
【0079】
請求項2の発明によれば、動力源から発電機に入力されている動力により発電している場合には、従動側回転部材の回転を妨げる負荷が軽減される。また、車輪から変速機を介して発電機に入力される動力により発電している場合には、回転部材同士により伝達するべき動力が抑制される。したがって、いずれの場合にも、回転部材同士の滑りが抑制されて流体の温度上昇が抑制される。
【0080】
請求項3の発明によれば、動力源から発電機に入力されている動力により発電している場合、または車輪から変速機を介して発電機に入力される動力により発電している場合のいずれにおいても、クラッチ機構により伝達される動力が増大する一方、回転部材同士により伝達される動力が減少する。したがって、回転部材同士の滑りが抑制されて流体の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明にかかる発電制御装置の制御例を示すフローチャートである。
【図2】 この発明が適用されたハイブリッド車のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】 図2に示された歯車変速機構およびトルクコンバータの構成を示すスケルトン図である。
【図4】 図3に示された歯車変速機構で各変速段を設定するための摩擦係合装置の作動状態を示す図表である。
【図5】 図2に示された歯車変速機構を手動操作するシフトレバーのシフトポジションを示す説明図である。
【図6】 図2に示されたモータ・ジェネレータと、他のハード構成との関係を示すブロック図である。
【図7】 この発明が適用されたハイブリッド車の制御系統を示すブロック図である。
【図8】 図1のフローチャートに対応するタイムチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…トルクコンバータ、 3…モータ・ジェネレータ、 4…歯車変速機構、 7…ポンプインペラ、 8…フロントカバー、 9…タービンランナ、 10…ハブ、 11…ロックアップクラッチ、 12…クランクシャフト、 14…入力軸、 32…出力軸、 32A…車輪、 58…電子制御装置。

Claims (3)

  1. 動力伝達経路を経由させて車輪に動力を伝達する動力源と、前記動力伝達経路に入力される動力により発電する発電機と、流体を介して動力を伝達する複数の回転部材を有する流体式動力伝達装置とが連結されている発電制御装置において、
    前記流体の温度を認識する流体温度認識手段と、この流体温度認識手段により認識される前記流体の温度が所定値以上である場合は、前記発電機の発電量を低減させる発電制御手段とを備えていることを特徴とする発電制御装置。
  2. 動力伝達経路を経由させて車輪に動力を伝達する動力源と、前記動力伝達経路に入力される動力により発電する発電機と、流体を介して動力を伝達する複数の回転部材を有する流体式動力伝達装置とが連結され、前記流体式動力伝達装置の出力側に、係合圧を増減可能な摩擦係合装置を有する変速機が設けられている発電制御装置において、
    前記発電機で発電し、かつ、車両が停止している場合に、前記流体の温度を認識する流体温度認識手段と、この流体温度認識手段により認識される前記流体の温度が所定値以上である場合は、前記摩擦係合装置の係合圧を低下させる変速機制御手段とを備えていることを特徴とする発電制御装置。
  3. 動力伝達経路を経由させて車輪に動力を伝達する動力源と、前記動力伝達経路に入力される動力により発電する発電機と、流体を介して動力を伝達する複数の回転部材を有する流体式動力伝達装置とが連結されているとともに、前記回転部材同士を機械的に接続するために係合されるクラッチ機構が設けられ、前記流体式動力伝達装置の出力側に、係合圧を制御可能な摩擦係合装置を有する変速機が設けられている発電制御装置において、
    記発電機での発電中に前記流体の温度を認識する流体温度認識手段と、
    この流体温度認識手段により検出される前記流体の温度が所定値以上である場合は、前記摩擦係合装置の係合圧を低下させ、かつ、前記クラッチ機構の係合圧を高める複合制御手段とを備えていることを特徴とする発電制御装置。
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