JP3869219B2 - ヒートシンクを備えた冷却装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱源からの熱を消散するヒートシンクを備えた冷却装置に関するものであり、特にCPU等の電子部品を冷却するのに好適な冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータに用いられるCPU等の電子部品から発生する熱量は、その高性能化に伴って益々増大する傾向にある。実公平3−15982号公報には、基板の表面に放射状に複数枚の放熱フィンを配置したヒートシンクの上に冷却用ファンを配置し、冷却用ファンから吐出された空気を基板の中心部に当て、その後空気を放射状に配置された複数枚の放熱フィンの間を通して外部に排出する構造の冷却装置が開示されている。また米国特許第5629834号公報(日本国特許第2765801号、特開平7−111302号)及び米国特許第5782292号(特開平9−102566号公報)には、複数枚の放熱フィンをファンのインペラから径方向に流れ出る空気の流れに沿うように配置したヒートシンクを用いる冷却装置が示されている。この冷却装置では、ファンのインペラの一部を囲むように複数枚の放熱フィンを配置している。また米国特許第5785116号公報(特開平9−219478号公報)には、ファンのインペラを囲むように基板の上に配置された複数枚の放熱フィンを備え、複数枚の放熱フィンをファンの中心を通る中心線に対して傾けたヒートシンクを用いる冷却装置が示されている。この公知技術では、筒体にこの筒体の中心線に対して傾いた向きの切削加工を施すことにより傾斜した複数枚の放熱フィンを備えたヒートシンクを形成している。そしてこの装置で、十分な冷却性能を得るためには、放熱フィンの角度とファンのブレードの角度の関係を予め定めた精密な関係にしなければならない。そしてファンのモータはヒートシンクに取り付けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一番目及び二番目の冷却装置は、高発熱量の冷却には不向きである。三番目の公知の冷却装置は、今のところ、最近の高発熱量のCPUを冷却するのに適している。しかしながら三番目の冷却装置では、ヒートシンクを製造するための加工費用が高くなる問題がある上、高い加工精度を必要とする。またファンのインペラを複数枚の放熱フィンで囲む構造であるため、冷却装置の径方向寸法が大きくなる問題がある。さらにファンのモータをヒートシンクに固定する構造では、ヒートシンク側からモータに熱が伝わりモータの寿命が低下する問題も発生する。
【0004】
本発明の目的は、冷却性能が高く、寿命が長く、しかも装置の径方向寸法を小さくすることができるヒートシンクを備えた冷却装置を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、上記目的に加えて安価に製造できるヒートシンクを備えた冷却装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、製造が容易なヒートシンクを備えた冷却装置を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、放熱フィンの数を増やして冷却性能を高めることが容易なヒートシンクを備えた冷却装置を提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、大量生産が容易なヒートシンクを備えた冷却装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱源からの熱を消散するヒートシンクを備えた冷却装置を改良の対象とする。ヒートシンクは、表面と熱源が接触する裏面とを備えた熱伝導性の良い基板と、基板の表面と垂直な方向に延びる仮想の中心線と、この中心線を中心にして放射方向及び前記表面と垂直な方向のそれぞれに延び且つ中心線を中心にした仮想円の周方向に間隔をあけて仮想された複数の仮想垂直平面と、基板の表面に対して熱伝達可能に取付けられ、中心線を中心にして中心線を囲むように配置された複数枚の放熱フィンを含む放熱フィンユニットとを具備する。冷却用ファンは、複数枚のブレードを有しモータによって回転させられるインペラを備えて、ヒートシンクの放熱フィンユニットの上方にインペラが位置するようにヒートシンクに対して取付けられる。
【0010】
本発明で用いるヒートシンクは、複数枚の放熱フィンが、それぞれ基板側に位置する下側端縁と、下側端縁とは反対側に位置する上側端縁と、下側端縁と上側端縁との間に位置する放熱面とを有している。そして複数枚の放熱フィンは、それぞれ下側端縁が対応する1つの仮想垂直平面と基板の表面との交線に沿うように前記表面に対して直接または間接的に固定され且つ放熱面と仮想垂直平面との間に所定の傾斜角θを形成するように仮想垂直平面に対して同じ方向に(仮想円の周方向の一方側に)傾斜している。その上で、放熱フィンユニットと冷却用ファンとは、冷却用ファンの複数枚のブレードと複数枚の放熱フィンの上側端縁とが対向する位置関係を有しており、冷却用ファンは放熱フィンユニットの複数枚の放熱フィンに冷却用の空気を流すように動作する。冷却用の空気を流すために、冷却ファンは放熱フィンに向かって空気を吹き付けるように動作しても、放熱フィン側から空気を吸い込むように動作してもよい。
【0011】
冷却用ファンのインペラとヒートシンクとが近接して配置された場合、ファンの複数枚のブレードと対向しないヒートシンクの部分(即ちインペラの複数枚のブレードが固定されるカップ部材と対向するヒートシンクの部分)には、ファンからの空気は殆ど直接当たることがない。またインペラが回転して発生する空気流はモータの軸線方向に直進せずに、インペラの回転方向に流れる。そのため複数枚の放熱フィンを単純に放射状に配置しただけでは放熱フィンが抵抗となって冷却性能を上げることに限界がある。またいわゆる軸線方向に空気を流す軸流ファンを用いて径方向に積極的に空気を流し、この空気流でインペラの外側に位置する複数枚の放熱フィンの周囲に空気を流して各放熱フィンを冷却する構造にも限界がある。しかしながら本発明のように、複数枚の放熱フィンを配置して,放熱フィンユニットの上から冷却用ファンによりモータの軸線方向に流れる空気を放熱フィンに直接吹き付けると、高い冷却性能が得られる。この効果の理論的な裏付けは十分になされていない。しかしながら本発明で採用する放熱フィンの配置形状が、冷却用ファンから吐出される空気に対する抵抗を少なくして、しかも各放熱フィンの放熱面に沿う速い空気の流れを生み出すことが、冷却性能を向上させているものと推測する。いずれにしても本発明によれば、装置の径方向寸法を大きくすることなく、しかもモータの寿命を短くすることなく、従来冷却性能が高いと言われている高価な冷却装置とほぼ同様の冷却性能を得ることができる。
【0012】
理想的には、複数の仮想垂直面を仮想円の周方向に等しい間隔をあけて仮想する。このようにすると各放熱フィンをほぼ均等に冷却することができ、基板を偏りなく冷却することができるので、冷却効率をより高めることができる。
【0013】
放熱フィンユニットは、例えば、一枚の熱伝導性に優れた金属板に折り曲げ加工を施して形成すれば、安価に且つ簡単に作ることができる。
【0014】
さらに製造を簡単にして、しかも大量生産を可能にするためには、放熱フィンユニットの構造を次のようにするのが好ましい。基板の表面に接合される一枚のフィン取付用金属板を用意し、複数枚の放熱フィンをそれぞれ平板状の金属板により形成する。そして複数枚の放熱フィンの下側端縁をフィン取付用金属板に固定して放熱フィンユニットを構成する。このようにすると放熱フィンユニットだけを、予め大量生産することが可能になる。放熱フィンのフィン取付用金属板への取付方法は任意である。例えば、複数枚の放熱フィンの下側端縁にフィン取付用金属板の表面に沿う方向に延び且つフィン取付用金属板の表面に固定される固定用フランジを一体に設ける。このような固定用フランジを用意すれば、固定作業が大幅に容易になる。
【0015】
またより大量生産を可能にするためには、フィン取付用金属板に中心線を中心にして放射方向に延び且つ周方向に所定の間隔をあけて複数のスリットを形成する。また複数枚の放熱フィンの下側端縁にそれぞれ複数のスリットに嵌合される嵌合用突出部を一体に形成する。そして複数枚の放熱フィンをそれぞれの嵌合用突出部が対応する複数のスリットに嵌合した状態で、フィン取付用金属板に接合する。このようにすると放熱フィンのフィン取付用金属板への位置決めが容易になるだけでなく、放熱フィンを傾斜させた状態でフィン取付用金属板に接合する場合の作業も容易になる。
【0016】
なお基板に、中心線を中心にして放射方向に延び且つ周方向に所定の間隔をあけて複数のスリットを直接形成してもよい。そして複数枚の放熱フィンの下側端縁にはそれぞれ設けた嵌合用突出部を基板に形成した複数のスリットに直接嵌合するようにしてもよい。このようにすると製品コストは多少高くなるが、部品点数を減らすことができる。また前述の固定用フランジ付きの放熱フィンを、基板の表面に直接固定するようにしてもよい。
【0017】
複数枚の放熱フィンの形状を同じ形状にすれば、放熱フィンの生産コストが下がるため、結果として装置の価格を下げることができる。一枚の大きな金属板から多数枚の放熱フィンを打ち抜く場合に廃棄する材料を少なくするためには、なるべく放熱フィンの主要部分の形状を概ね矩形形状にするのが好ましい。このような主要部分が矩形形状の放熱フィンを用いて放熱フィンユニットを形成すると、放熱フィンユニットは中心部に中心線を中心とし、基板側に向かうに従って径寸法が小さくなるほぼ切頭円錐形の空間を有することになる。
【0018】
放熱フィンの傾斜角θは、基本的には放熱フィンの枚数によって変えることになる。放熱フィンの枚数が多くなると、傾斜角θは小さくなり、放熱フィンの枚数が少なくなると傾斜角θは大きくなる。しかし放熱フィンの傾斜角θは、45°より小さくするのが好ましい。この傾斜角を45°以上にすると、放熱フィンの枚数が少なくなって冷却性能が低下するからである。好ましくは、この傾斜角θを45°より小さく15°より大きい値にする。この角度範囲内の角度であれば、放熱フィンの枚数をある程度多くすることができて、満足できる冷却性能を得ることができる。
【0019】
冷却用ファンは、いわゆる軸流ファンが好ましい。そしてインペラに設けられる複数枚のブレードは、複数枚の放熱フィンの傾斜方向と同じ方向に傾斜しているものを用いるのが好ましい。この場合において、複数枚の放熱フィンが傾斜する方向にインペラを回転するように冷却用ファンが動作すると、その逆の場合よりも冷却性能はアップする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るヒートシンクを備えた冷却装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の冷却装置の第1の実施の形態の概略分解斜視図であり、図2は放熱フィンユニットの斜視図である。また図3乃至図5は、この実施の形態で用いる放熱フィンユニットの製造方法を説明するために用いる図である。
【0021】
図1に示されるように、この冷却装置は、ヒートシンク1と冷却用ファン3とから構成されている。ヒートシンク1は、表面5aと熱源が接触する裏面5bとを備えた基板5と放熱フィンユニット7とから構成されている。基板5は、熱伝導性に優れ加工が容易な、例えばアルミニウム合金または銅合金に代表される金属材あるいは内部にヒートパイプ機能を持つ板状構造体、またあるいはカーボンシートのような非金属材などにより構成することができる。基板5の四隅には4つの貫通孔8が形成されている。
【0022】
放熱フィンユニット7は、図2に示すように、基板5の表面5aと垂直な方向に延びる仮想の中心線CLを中心にして中心線CLを囲むように配置された複数枚の放熱フィン9を備えている。複数枚の放熱フィン9の形状及び基板5に対する姿勢を特定するために、図2に示すように、中心線CLを中心して放射方向及び基板5の表面5aと垂直な方向のそれぞれに延び且つ中心線CLを中心にした仮想円Cの周方向に等しい間隔をあけて仮想された複数の仮想垂直平面Pを仮想する。複数枚の放熱フィン9は、中心線CLを中心にして中心線CLを囲むように配置されている。図6に示すように、複数枚の放熱フィン9は、それぞれ基板側に位置する下側端縁9bと、下側端縁9bとは反対側に位置する上側端縁9aと、下側端縁9bと上側端縁9aとの間に位置する放熱面9cとを有している。そして複数枚の放熱フィン9は、それぞれ下側端縁9bが対応する1つの仮想垂直平面Pと基板5の表面5aに接触する放熱フィン取付部11との交線に沿うように基板5の表面に対して固定されている。この実施の形態の放熱フィン9は、後に説明するように金属板を折り曲げて形成されるため、1枚の放熱フィン9は2枚のプレート10によって構成される。複数枚の放熱フィン9は、それぞれ放熱面9cと仮想垂直平面Pとの間の角度θ(即ち傾斜角θ)が、45°より小さい角度になるように傾斜している。具体的には、複数枚の放熱フィン9は、それぞれ対応する仮想垂直平面Pに対して同じ方向に(仮想円Cの周方向の一方側に)傾斜している。この傾斜角θは、45°より小さく15°より大きい値にするのが好ましい。この角度範囲内の角度であれば、放熱フィン9の枚数をある程度多くすることができて、満足できる冷却性能を得ることができる。放熱フィン9の傾斜に関しては、放熱フィン取付部11との間の角度λを用いて定義することもできる。この場合の好ましい角度範囲は、45°<λ<85°である。この角度範囲であれば、空気流の圧力損失が低減し、λ=90度の場合と比べて、2枚の放熱フィン9,9間を流れる空気流の流速が速くなり、排出空気流量が増大するため、冷却効率を高くすることが可能となる。角度θ及びλの最適値は、後に説明する冷却用ファン3のインペラの回転方向及び回転速度、複数枚のブレードの角度、ブレードとの対向面積に応じて決定する。また放熱フィン9の傾斜方向は、図7に示すように逆方向でもよいのは勿論である。
【0023】
放熱フィンユニット7は、全ての放熱フィン9の総放熱面積をFとし、基板5の表面5aの面積をSとしたときに、その比率C=F/Sが、10<C<40になるようにするのが実用的である。しかしこの条件は、本発明において必須の条件ではない。
【0024】
上記の構造の放熱フィンユニットを製造する場合には、例えば図3に示すように細長い板状の金属薄板(例えば厚みが1mm以下)13を用意し、この薄板13に谷線14a,14bと山線15とを記載する。そして図5に示すように谷線14a,14bと山線15とに沿って薄板13を繰り返し曲げて、薄板13の両端を接合すると図2に示すように環状の放熱フィンユニットが完成する。図3に示す谷線14a,14bは薄板13上で直接交わっているが、図4に示すように薄板13の外部で谷線14a,14bの延長線が交わるようにしてもよい。加工が終わった状態で山線15の両側に位置する2本の谷線14a,14bどうしが、放熱フィン9の下側端縁9bを構成する。
【0025】
図3及び図4のいずれの場合も、谷線14a,14bは平行ではなく、角度θ´で傾いている。この角度θ´の大きさは、放熱フィン9の傾斜角度θまたはλを決定する。
【0026】
基板5と放熱フィンユニット7との接合は、基板5からの熱を効率的に放熱フィンユニット7に伝導する必要があるので、熱伝導性接着剤、半田付け、ろう付けあるいは溶接、またあるいは超音波溶接等を用いて行うのが望ましい。
【0027】
図1に戻って冷却用ファン3は、インペラ16を備えている。このインペラ16は、複数枚のブレード17を有し、モータ19によって回転させられる。図1には図示していないが、モータ19のハウジングは図示しない複数本のウエブによってケーシング21に支持されている。ケーシング21の下面の四隅には、4本のピラー23が一体に設けられている。4本のピラー23の下側端部には、基板5の四隅に設けられた貫通孔8に基板5の裏面5b側から表面5a側に挿入されるネジのネジ部が螺合されるネジ孔が形成されている。冷却用ファン3は、ピラー23を基板5の表面5aに当接させた状態で、貫通孔8に挿入される図示しないネジにより基板5に対して固定される。これにより放熱フィンユニット7と冷却用ファン3とは、冷却用ファン3の複数枚のブレード17と複数枚の放熱フィン9の上側端縁9aとが対向する位置関係が得られる。ブレード17と上側端縁9aとの間の間隙寸法は、例えば5mm乃至10mm程度である。この例では、冷却用ファン3は放熱フィンユニット7の複数枚の放熱フィン9に向かって空気を吹き付けるように、ブレード17の角度が定められている。
【0028】
冷却用ファン3から放熱フィンユニット7に吹き付けられた空気は、複数枚の放熱フィン9の隣接する二枚の放熱フィン9,9のそれぞれの上側端縁9a,9a間に形成される開口部から隣接する2枚の放熱フィン9,9間に形成される隙間に入り、これらの隙間を通って放熱フィンユニット7の径方向外側に出る。
【0029】
図8に示すように、冷却用ファン3のインペラ16が図面右手方向に回転移動する場合、ブレード17の上部から吸引された空気はインペラ16の回転方向の成分を持ち、空気の流れ25に沿って排出される。また圧力損失の低減によって、より高密度でフィンの配置が可能になるため、冷却効率をさらに高くすることが可能となる。
上記の実施の形態に基づいて、50mm×50mm×15mmの寸法で、λ=55°(θ=45°)、C=17.4のアルミ製ヒートシンクを作製し、軸流式のファンのインペラの回転速度を4000回転/分とし、ヒートシンクの基体の裏面の中心に34Wの発熱源を接触させて、冷却性能を試験したところ、ヒートシンクの冷却ファンユニットの外周面からの排出空気流の速度は2.8m/sとなり、発熱源の温度上昇が42℃になることを確認した。
【0030】
そして同寸法の基板で、放熱フィンの傾斜角θを0°(λ=90°)とした比較用のヒートシンク用いて同じ試験をしたところ、最も冷却性能が良いものは、λ=90°,C=8.2であり、そのときの排出空気流の速度は2.1m/sであり、温度上昇は48℃であった。
【0031】
図9乃至図11は、本発明の第2の実施の形態のヒートシンクを備えた冷却装置の、平面図、右側面図及び正面図である。また図12及び図13は、この実施の形態で用いるヒートシンクの概略平面図及び正面図であり、図14乃至図16は図12及び図13のヒートシンクの製造方法を説明するために用いる図である。これらの図には、図1乃至図8に示した第1の実施の形態の構成部分と同様の部分に、図1乃至図8に付した符号に100の数を付した数を符号として付してある。第2の実施の形態は、第1の実施の形態と根本的に異なるのは、ヒートシンク101の構造及びその製造方法である。第1の実施の形態のヒートシンク1で用いる放熱フィンユニットは、一枚の金属薄板を折り曲げて放熱フィンユニット7を構成している。しかし第2の実施の形態では、金属薄板からプレスで打ち抜いた平板状の金属板からなる複数枚の放熱フィン109の下側端縁109b(図14)をフィン取付用金属板108に一枚一枚接合して放熱フィンユニット107を製造している。
【0032】
図14乃至図16を参照して、放熱フィンユニット107の製造方法について説明する。図14に示すように、放熱フィン109は、下側端縁109bと、下側端縁109bとは反対側に位置する上側端縁109aと、下側端縁109bと上側端縁109aとの間に位置する放熱面109cとを有している。放熱フィン109の下側端縁109bには嵌合用突出部109dが一体に設けられている。図15に示すように、円板状の熱伝導性の良いフィン取付用金属板108には、中心線CLを中心にして放射方向(径方向)に延び且つ仮想円Cの周方向に所定の間隔をあけて複数のスリットSが形成されている。中心線CLを中心して放射方向及び表面と垂直な方向のそれぞれに延び且つ中心線CLを中心にした仮想円Cの周方向に間隔をあけて仮想した複数の仮想垂直平面Pに、各スリットSが含まれている。複数のスリットSの幅寸法は、放熱フィン109の厚み寸法よりも大きく、スリットSに嵌合用突出部109dが嵌合された状態で、放熱フィン109が仮想円Cの周方向に所定の角度θを持って傾斜させることができる寸法に定められている。
【0033】
放熱フィン109の嵌合用突出部109dをスリットSに嵌合した後、仮想円Cの周方向の一方向(図15では時計回り方向)に放熱フィン109を傾斜させ、その下側端縁109bをフィン取付用金属板108に対して熱伝達可能に接合する。この接合には、熱伝導性の良い接着剤を用いてもよく、また半田等を用いることができる。複数枚の放熱フィン109を順次フィン取付用金属板108に対して接合してもよいが、フィン取付用金属板108の表面に予め熱硬化性の接着剤を塗布しておき、全てのスリットSに複数枚の放熱フィン109の嵌合用突出部109dを嵌合させて複数枚の放熱フィン109を同時に一方向に傾斜させて、熱硬化性接着剤を硬化させるようにすれば、簡単且つ安価に放熱フィンユニット107を作ることができる。なおスリットSを利用すると、放熱フィン109の位置決めとフィン取付用金属板108への接合作業が容易になる。
【0034】
このようにして製造した放熱フィンユニット107を基板105の表面に熱伝導性の良い接合手段を用いて接合すると、複数枚の放熱フィン109が、それぞれの下側端縁109bが対応する1つの仮想垂直平面Pと基板105の表面105aとの交線に沿うようにこの表面105aに対して間接的に固定され且つ放熱面109cと仮想垂直平面Pとの間に所定の傾斜角θを形成するように仮想垂直平面Pに対して同じ方向に(仮想円Cの周方向の一方側に)傾斜したヒートシンク構造を得ることができる。なおこの実施の形態では、基板105及び放熱フィンユニット107を銅合金材料により形成している。
【0035】
図12から判るように、主要部分が矩形形状の放熱フィン109を用いて放熱フィンユニット107を形成すると、この放熱フィンユニット107は中心部に中心線CLを中心とし、基板5側に向かうに従って径寸法が小さくなるほぼ切頭円錐形の空間SPが形成される。
【0036】
図9乃至図11に示される冷却用ファン103は、合成樹脂により一体に成形されたケーシング121を備えている。このケーシング121は、インペラ116の周囲の少なくとも一部を囲む風洞部121aと風洞部121aを備えたケーシング本体121bと、モータ119のハウジングをケーシング本体121bに支持させる3本のウエブ122と、一端がケーシング本体121bに取付けられ他端が基板105に係止される4本のピラー123とを備えている。またケーシング本体121bには、放熱フィンユニット107の外面と接触して、ケーシング121の横方向への移動を防止する複数の接触部124を備えている。4本のピラー123の他端には、フック(係止部)が形成されている。そして基板105には、四隅に4本のピラーのフックが係止される貫通孔108(被係止部)が設けられている。
【0037】
この実施の形態では、図8に示した第1の実施の形態におけるインペラ16のブレード17と複数枚の放熱フィン9との関係とは異なって、インペラ116に設けられる複数枚のブレード117は、複数枚の放熱フィン109の傾斜方向と同じ方向に傾斜しているものを用いている。そして複数枚の放熱フィン109が傾斜する方向にインペラ107を回転するように冷却用ファン103を動作させる。このようにすると、その逆の場合よりも冷却性能はアップする。
【0038】
なお第2の実施の形態においても、放熱フィン109の傾斜角θ等の好ましい条件は、第1の実施の形態と同じである。
【0039】
上記第2の実施の形態では、フィン取付用金属板108に放熱フィン109を固定しているが、図17に示すように基板205に複数のスリットSを形成し、これらのスリットSに放熱フィン109の嵌合用突出部109dを嵌合させてヒートシンクを構成するようにしてもよい。
【0040】
また図18に示すように、放熱フィン209を、その下側端縁209bに固定用フランジ209eを備えた形状にしてもよい。放熱面209cと固定用フランジ209eとの間の角度を90°+θとすれば、各放熱フィン209の傾斜角度θを確実に得ることができる。このような放熱フィン209を、スリットを有しないフィン取付用金属板に固定して放熱フィンユニットを製造してもよい。また図19及び図20に示すように、この放熱フィンの固定用フランジ209eを基板105の表面105aに直接固定するようにしてもよい。
【0041】
また図21に示すような、単純な形状の放熱フィン309を、図22に示すように基板105上に直接接合してもよいのは勿論である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、冷却装置の径方向寸法を大きくすることなく、しかもモータの寿命を短くすることなく、従来冷却性能が高いと言われている高価な冷却装置とほぼ同様の冷却性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の冷却装置の第1の実施の形態の概略分解斜視図である。
【図2】 第1の実施の形態で用いる放熱フィンユニットの斜視図である。
【図3】 放熱フィンユニットを製造する方法の一例を説明するために用いる図である。
【図4】 放熱フィンユニットを製造する方法の一例を説明するために用いる図である。
【図5】 放熱フィンユニットの製造途中の状態を示す斜視図である。
【図6】 放熱フィンの傾斜角度を示すための概略拡大断面図である。
【図7】 放熱フィンの傾斜角度を示すための概略拡大断面図である。
【図8】 放熱フィンとブレードの関係の一例を示す図である。
【図9】 本発明の冷却装置の第2の実施の形態の平面図である。
【図10】 本発明の冷却装置の第2の実施の形態の右側面図である。
【図11】 本発明の冷却装置の第2の実施の形態の正面図である。
【図12】 第2の実施の形態で用いる放熱フィンユニットの平面図である。
【図13】 第2の実施の形態で用いる放熱フィンユニットの正面図である。
【図14】 第2の実施の形態で用いる放熱フィンの平面図である。
【図15】 第2の実施の形態で用いる放熱フィンユニットの製造過程の途中の状態における平面図である。
【図16】 第2の実施の形態で用いる放熱フィンユニットの製造過程の途中の状態における正面図である。
【図17】 別の放熱フィンユニットの製造過程の途中の状態における平面図である。
【図18】 (A)は別の放熱フィンの側面図であり、(B)はこの放熱フィンの正面図である。
【図19】 別の放熱フィンユニットの製造過程の途中の状態における平面図である。
【図20】 別の放熱フィンユニットの製造過程の途中の状態における正面図である。
【図21】 更に別の放熱フィンの平面図である。
【図22】 別の放熱フィンユニットの製造過程の途中の状態における正面図である。
【符号の説明】
1,101 ヒートシンク
3,103 冷却用ファン
5,105 基板
7,107 放熱フィンユニット
9,109 放熱フィン
16,116 インペラ
17,117 ブレード
CL 中心線
P 仮想垂直平面
Claims (18)
- 熱源からの熱を消散するヒートシンクを備えた冷却装置であって、
表面と熱源が接触する裏面とを備えた熱伝導性の良い基板と、
前記基板の前記表面と垂直な方向に延びる仮想の中心線と、
前記中心線を中心して放射方向及び前記表面と垂直な方向のそれぞれに延び且つ前記中心線を中心にした仮想円の周方向に間隔をあけて仮想された複数の仮想垂直平面と、
前記基板の表面に対して熱伝達可能に取付けられ、前記中心線を中心にして前記中心線を囲むように配置された複数枚の放熱フィンを含む放熱フィンユニットとを具備するヒートシンクと、
複数枚のブレードを有しモータによって回転させられるインペラを備え、前記ヒートシンクの前記放熱フィンユニットの上方に前記インペラが位置するように前記ヒートシンクに対して取付けられた冷却用ファンとを具備し、
前記複数枚の放熱フィンは、それぞれ前記基板側に位置する下側端縁と、前記下側端縁とは反対側に位置する上側端縁と、前記下側端縁と前記上側端縁との間に位置する放熱面とを有し、
前記複数枚の放熱フィンは、それぞれ前記下側端縁が対応する1つの前記仮想垂直平面と前記表面との交線に沿うように前記表面に対して固定され且つ前記放熱面と前記仮想垂直平面との間に所定の傾斜角θを形成するように前記仮想垂直平面に対して同じ方向に傾斜しており、
前記放熱フィンユニットと前記冷却用ファンとは、前記冷却用ファンの前記複数枚のブレードと前記複数枚の放熱フィンの前記上側端縁とが対向する位置関係を有しており、
前記冷却用ファンは前記放熱フィンユニットの前記複数枚の放熱フィンに冷却用空気を流すように動作することを特徴とする冷却装置。 - 前記複数の仮想垂直面は前記周方向に等しい間隔をあけて仮想されている請求項1に記載の冷却装置。
- 前記放熱フィンユニットは、一枚の熱伝導性に優れた金属板が折り曲げられて構成されている請求項1に記載の冷却装置。
- 前記放熱フィンユニットは、前記基板の前記表面に接合される一枚のフィン取付用金属板を備え、前記複数枚の放熱フィンはそれぞれ平板状の金属板により形成され、前記複数枚の放熱フィンの前記下側端縁が前記フィン取付用金属板に固定されて構成されている請求項1に記載の冷却装置。
- 前記複数枚の放熱フィンの前記下側端縁には前記フィン取付用金属板の表面に沿う方向に延び且つ前記フィン取付用金属板の表面に固定される固定用フランジを一体に備えている請求項4に記載の冷却装置。
- 前記フィン取付用金属板には、前記中心線を中心にして放射方向に延び且つ前記周方向に所定の間隔をあけて複数のスリットが形成されており、
前記複数枚の放熱フィンの前記下側端縁にはそれぞれ前記複数のスリットに嵌合される嵌合用突出部が一体に形成され、
前記複数枚の放熱フィンはそれぞれの前記嵌合用突出部が対応する前記複数のスリットに嵌合された状態で、前記フィン取付用金属板に接合されている請求項1に記載の冷却装置。 - 前記基板には、前記中心線を中心にして放射方向に延び且つ前記周方向に所定の間隔をあけて複数のスリットが形成されており、
前記複数枚の放熱フィンの前記下側端縁にはそれぞれ前記複数のスリットに嵌合される嵌合用突出部が一体に形成されており、
前記複数枚の放熱フィンはそれぞれの前記嵌合用突出部が対応する前記複数のスリットに嵌合された状態で、前記基板に直接接合されている請求項1に記載の冷却装置。 - 前記複数枚の放熱フィンの前記下側端縁には前記基板の前記表面に沿う方向に延び且つ前記表面に固定される固定用フランジを一体に備えている請求項1に記載の冷却装置。
- 前記放熱フィンユニットは中心部に前記中心線を中心とし、前記基板側に向かうに従って径寸法が小さくなるほぼ切頭円錐形の空間を有している請求項1に記載の冷却装置。
- 前記複数枚の放熱フィンは、同じ形状を有している請求項1に記載の冷却装置。
- 前記フィン取付用金属板及び前記複数枚の放熱フィンは銅または銅合金の金属板により形成されている請求項10に記載の冷却装置。
- 前記傾斜角θが45°より小さい請求項1に記載の冷却装置。
- 前記傾斜角θが45°より小さく15°より大きい請求項12に記載の冷却装置。
- 前記冷却用ファンの前記複数枚のブレードは、前記複数枚の放熱フィンの傾斜方向と同じ方向に傾斜しており、
前記冷却用ファンは前記複数枚の放熱フィンが傾斜する方向に前記インペラを回転するように動作することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。 - 前記冷却用ファンから前記放熱フィンユニットに吹き付けられた空気は、前記複数枚の放熱フィンの隣接する二枚の前記放熱フィンのそれぞれの前記上側端縁間に形成される開口部から隣接する二枚の前記放熱フィン間に形成される隙間に入り、これらの隙間を通って前記放熱フィンユニットの径方向外側に出ることを特徴とする請求項1または14に記載の冷却装置。
- 前記冷却用ファンのケーシングは、前記インペラの周囲の少なくとも一部を囲む風洞部と前記風洞部を備えたケーシング本体と、前記モータのハウジングを前記ケーシング本体に支持させる複数本のウエブと、一端が前記ケーシング本体に取付けられ他端が前記基板に係止される複数本のピラーとを備えており、
前記基板には前記複数本のピラーの前記他端が係止される複数の被係止部が設けられている請求項1に記載の冷却装置。 - 熱源からの熱を消散するヒートシンクを備えた冷却装置であって、
前記ヒートシンクは、
表面と熱源が接触する裏面とを備えた熱伝導性を有する基板と、
前記基板の前記表面と垂直な方向に延びる仮想の中心線と、
前記中心線を中心して放射方向及び前記表面と垂直な方向のそれぞれに延び且つ前記中心線を中心にした仮想円の周方向に間隔をあけて仮想された複数の仮想垂直平面と、
前記基板の表面に対して熱伝達可能に取付けられ、前記中心線を中心にして前記中心線を囲むように配置された複数枚の放熱フィンを含む放熱フィンユニットとを具備し、
前記複数枚の放熱フィンは、それぞれ前記基板側に位置する下側端縁と、前記下側端縁とは反対側に位置する上側端縁と、前記下側端縁と前記上側端縁との間に位置する放熱面とを有し、
前記複数枚の放熱フィンは、それぞれ前記下側端縁が対応する1つの前記仮想垂直平面と前記表面との交線に沿うように前記表面に対して固定され且つ前記放熱面と前記仮想垂直平面との間に所定の傾斜角θを形成するように前記仮想垂直平面に対して同じ方向に傾斜していることを特徴とする冷却装置。 - 熱源からの熱を消散するヒートシンクを備えた冷却装置であって、
表面と熱源が接触する裏面とを備えた熱伝導性の良い基板と、
前記基板の前記表面と垂直な方向に延びる仮想の中心線と、
前記中心線を中心して放射方向及び前記表面と垂直な方向のそれぞれに延び且つ前記中心線を中心にした仮想円の周方向に間隔をあけて仮想された複数の仮想垂直平面と、
前記基板の表面に対して熱伝達可能に取付けられ、前記中心線を中心にして前記中心線を囲むように配置された複数枚の放熱フィンを含む放熱フィンユニットとを具備するヒートシンクと、
複数枚のブレードを有しモータによって回転させられるインペラを備え、前記ヒートシンクの前記放熱フィンユニットの上方に前記インペラが位置するように前記ヒートシンクに対して取付けられた冷却用ファンとを具備し、
前記複数枚の放熱フィンは、それぞれ前記基板側に位置する下側端縁と、前記下側端縁とは反対側に位置する上側端縁と、前記下側端縁と前記上側端縁との間に位置する放熱面とを有し、
前記複数枚の放熱フィンは、それぞれ前記下側端縁が対応する1つの前記仮想垂直平面と前記表面との交線に沿うように前記表面に対して固定され且つ前記放熱面と前記仮想垂直平面との間に所定の傾斜角θを形成するように前記仮想垂直平面に対して同じ方向に傾斜しており、
前記放熱フィンユニットと前記冷却用ファンとは、前記冷却用ファンの前記複数枚のブレードと前記複数枚の放熱フィンの前記上側端縁とが対向する位置関係を有しており、
前記フィンの放熱面と前記仮想垂直平面との間の角度90°−λを、45°<λ<85°とし、
前記フィンの総放熱面積Fと前記基板の面積Sとの比率C=F/Sを、10<C<40に設定し、
前記冷却用ファンは前記放熱フィンユニットの前記複数枚の放熱フィンに冷却用空気を流すように動作することを特徴とする冷却装置。
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