JP3867400B2 - ボロン酸基含有単量体およびその重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖類などの多価水酸基含有化合物と可逆的な共有結合を形成するボロン酸基を有する新規な単量体および該単量体に基づく構成単位を含有してなる重合体に関する。該重合体は人工臓器や、クロマトグラフィ−用担体などの各種機能材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
フェニルボロン酸誘導体は他の多価水酸基含有化合物と可逆的にコンプレックスを形成することが知られており、この性質を利用して液体クロマトグラフィ−用充填剤(特開昭59−223706号公報)、細胞凝集剤(BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS,第96巻,157−162頁(1980年))、癌治療薬(現代化学1991年8月号、55−60頁)、グルコース応答性薬物放出複合体(特開平3−204823号公報)等として利用できる事が知られている。
【0003】
フェニルボロン酸のボロン酸基は、化合物の置かれる環境のpHに応じて、−B(OH)2または−B(OH)- 3の状態をとり得る。このうち−B(OH)- 3のみが多価水酸基化合物と安定にコンプレックスを形成し得る。ボロン酸基のこの平衡を表わす値としてpKaがあり、様々なフェニルボロン酸誘導体のpKaが測定されている。
【0004】
例えば、フェニルボロン酸:pKa=8.86{J.Amer.Chem.Soc.,第56巻,937−941頁(1934年)、ポリアクリルアミド固定化フェニルボロン酸:pKa=9.2(JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY,第189巻,225−231頁(1980年)}、4−(N−メチル)カルボキシアミド−フェニルボロン酸:pKa=7.86{ANALYTICAL BIOCHEMISTRY,第178巻,125−134頁(1989年)}、4級アミノ化フェニルボロン酸:pKa=7.30{Carbohydrate Reserch,第43巻,215−224頁(1975年)}、3−アセタミド−6−ヘプタフルオロプロピルフェニルボロン酸:pKa=6.6{Chemistry Letters,1993,1799−1802頁(1993年)}等が知られている。一般にpKaが低いほど、低いpHで−B-(OH)3の比率が高くなることが知られている。
【0005】
さらに、重合可能な不飽和結合を有するフェニルボロン酸誘導体としては、メタクリルアミドフェニルボロン酸(特開平3−204823号公報)、3−アクリルアミド−6−ヘキサフルオロプロピルフェニルボロン酸(特開平5−301880号公報)、N−(4’−ビニルベンジル)−4−フェニルボロン酸カルボキサミド(特開平5−262779号公報)等が知られている。
【0006】
しかしながら、前記の従来から知られているフェニルボロン酸基誘導体は、何れも次に示す3つの条件を同時に満たしていなかった。
1)水溶性が高いこと。
2)生理的pH(pH=7.4)において多量の−B-(OH)3が存在し得る低いpKaを有していること。
3)重合可能な不飽和結合を有していること。
このため、溶媒として水を用いて重合すると、十分な量のフェニルボロン酸を重合体中に入れることができなかったり、あるいは重合した含水ゲルの疎水性が高く、下限臨界共溶温度(以下LCSTと略す)を利用した糖応答性ゲルとして十分な性能を発揮できなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は水溶性が高く、生理的pH(pH=7.4)で多量の−B-(OH)3が存在する低いpKaを有し、重合可能な不飽和結合を有している新規かつ有用なフェニルボロン酸基含有単量体を提供する。さらに、親水性が高く、LCSTを利用した糖応答性ゲルとして利用可能な該単量体に基づく構成単位を含有してなる重合体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のフェニルボロン酸基含有誘導体の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、新規なフェニルボロン酸基含有単量体を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の一般式(I)
【0009】
【化3】
【0010】
{式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−R4−O−(R3O)n−R4−で表される基(但し、R3は炭素数2〜4のアルキレン基、R4は−CH2CH2−または−CH2−CO−を示し、nは1〜200の整数を示す。)、または炭素数2〜8の2価の炭化水素基を示す。)
で表されるボロン酸基含有単量体である。
さらに、一般式(I)で表されるボロン酸基含有単量体を重合させ、または他の共重合可能なビニル単量体と共重合させて得られる重合体である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるボロン酸基含有単量体は、前記一般式(I)で表される。一般式(I)中で、R2で表される基のうち、炭素数2〜8の2価の炭化水素基としては、具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基が挙げられる。
またR2は−R4−O−(R3O)n−R5−で表される基が挙げられ、ここでR4は−CH2CH2−または−CO−CH2−であり、R5は−CH2CH2−または−CH2−CO−である。
(R3O)nはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、ブチレンオキシ基等が挙げられる。R3は直鎖であっても分岐していてもよい。R3Oで示される基はnの数だけ繰り返されるが、この場合同じ基の繰り返しであってもよいし、2種類以上の異なる基の組み合わせであってもよく、その数nは1〜200の整数である。
【0012】
一般式(I)で表されるボロン酸基含有単量体は、次のような方法により容易に合成し得る。まず、一般式(III)
【0013】
【化4】
【0014】
で示されるカルボキシフェニルボロン酸に塩化チオニルを反応させ、一般式(IV)
【0015】
【化5】
【0016】
で示される酸クロリド化合物を合成する。
【0017】
この反応でカルボキシフェニルボロン酸と塩化チオニルの仕込みモル比は、カルボキシフェニルボロン酸1モルに対して塩化チオニル1モル以上、好ましくは2モル以上とするのが望ましい。この反応は溶媒を用いても行う事ができるが、溶媒を使用しない方が好ましい。また、この反応はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。この反応の条件としては、温度は、−20〜100℃、好ましくは20〜80℃、時間は、1〜100時間、好ましくは、5〜50時間とするのが好ましい。反応後は減圧乾燥を行うことで塩化チオニルを除くことができる。
【0018】
次に、1段階目の反応で得られた中間体、すなわち酸クロリド化合物(IV)に一般式(V)
【0019】
【化6】
【0020】
{但し、式中、R2は、−R4−O−(R3O)n−R5−で表される基(但し、R3は炭素数2〜4のアルキレン基、R4は−CH2CH2−または−CO−CH2−、R5は−CH2CH2−または−CH2−CO−を示し、nは1〜200の整数を示す。)
で示されるジアミンを反応させて、一般式(VI)
【0021】
【化7】
【0022】
で示される化合物を合成する。
【0023】
この反応で中間体(IV)と一般式(V)で示される化合物の仕込みモル比は、中間体(IV)1モルに対して一般式(V)で示される化合物5モル以上、好ましくは10モル以上とするのがよい。この反応は溶媒を用いても行うことができるが、溶媒を使用しない方が好ましい。また、この反応はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。この反応の条件としては、温度は、−50〜50℃、好ましくは−20〜30℃、時間は、0.1〜20時間、好ましくは1〜5時間とするのが好ましい。反応後は減圧乾燥を行うことで一般式(V)で示される化合物を除いてもよいし、過剰のアミンを中和後、ろ過により、副生成物の塩を除去後、減圧乾燥を行ってもよい。
【0024】
次に、2段階目の反応で得られた中間体(VI)に一般式(VII)
【0025】
【化8】
【0026】
(ただし、式中R1は水素原子またはメチル基を示す。)で示される酸クロリドと重合可能な不飽和結合を有する単量体を反応させ、前記一般式(I)で示されるボロン酸基含有単量体を得ることができる。
【0027】
この反応は溶媒を使用する必要が無い場合もあるが、中間体(VI)と一般式(VII)で示される化合物の溶解性を考慮して溶媒を選択することが望ましい。溶媒としては、例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたは水などを適宜選択する必要がある。この反応で中間体(VI)と一般式(VII)で示される化合物の仕込みモル比は、使用する溶媒にも依存するが、中間体(VI)1モルに対して一般式(VII)で示される化合物1モル以上、好ましくは10モル以上とするのがよい。また、この反応はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。この反応の条件は、温度−50〜50℃、好ましくは−20〜30℃、時間0.1〜20時間、好ましくは1〜5時間とするのがよい。反応後は減圧乾燥を行うことで一般式(I)で示される化合物を濃縮することができるが、通常の精製方法で一般式(I)で示される化合物を精製することができ、例えば2相分離系溶媒を用いて生成物を精製したり、溶媒を選択して再結晶化を行ったりすることができる。
【0028】
一般式(II)で表されるボロン酸基含有単量体は前記一般式(I)で表されるボロン酸基含有単量体の合成法に準じて合成することができる。
【0029】
本発明の重合体は、一般式(I)、または一般式(II)で表されるボロン酸基含有単量体を単独重合させるか、あるいは一般式(I)、または一般式(II)で表されるボロン酸基含有単量体と該単量体と共重合可能な他の単量体とを共重合することにより得られる。
【0030】
前記の共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、各種アルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸モノグリセロール、アクリロニトリル、スチレン、各種マクロモノマー、ビニルベンジルアミン、アミノスチレン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、N−メチル−2−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド各種四級塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート各種四級塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート各種四級塩、酢酸ビニル、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル](メタ)アクルアミド、イタコン酸、メタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、ビニルベンジルアミン等が挙げられる。
【0031】
なお、本発明で「(メタ)アクリル」の表示は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。これらの他の単量体を共重合することで、重合体の親水性、疎水性等を調整することができる。
【0032】
また、上記以外の他の単量体としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシ)フェニル〕プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−メチレンビス((メタ)アクリルアミド)、アリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジビニルベンゼン等の多官能単量体などが挙げられる。これらの多官能単量体を共重合した場合、得られる共重合体は架橋型となり、これらの多官能単量体を共重合することで、重合体の強度、膨潤性などを調整することができる。
【0033】
従って、用途に応じて共重合する他の単量体を選択することで、共重合体の物性を調整することができる。前記共重合する他の単量体の1種以上を混合して用いることもでき、一般式(I)、または一般式(II)で表されるボロン酸基含有単量体は全不飽和単量体中、100〜2モル%の範囲で用いられる。好ましくは100〜5モル%、より好ましくは50〜10モル%の範囲で用いるのがよい。この場合、一般式(I)、または一般式(II)で表されるボロン酸基含有単量体が2モル%より少ないと、この単量体が有する多価水酸基含有化合物とのコンプレックス形成が十分発現することができない。
【0034】
前記の単量体の重合体または共重合体は、公知のラジカル重合法、例えば溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法などにより得ることができる。重合反応では、重合開始剤を使用するのが好ましく、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチルアミド二水和物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ターシャリブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリブチルペルオキシピバレート、ターシャリブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらを単独で用いても、あるいは各種レドックス開始剤系などを併用して用いても良い。また、これらの重合開始剤は1種または2種以上を用いることができる。重合開始剤の使用量は、全不飽和単量体に対して0.01〜5重量%が好ましい。
【0035】
前記重合または共重合の条件としては、適宜重合系を不活性ガス、例えば窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等で置換ないし、雰囲気下にし、重合温度は0〜100℃の範囲で、重合時間としては10分〜7日間程度である。ラジカル重合により得られる本発明の重合体の分子量は、重合温度、開始剤使用量、単量体濃度などによって異なるが、多官能単量体を含まない系では、重量平均分子量で、5,000〜800,000の範囲のものが得られる。
【0036】
【発明の効果】
本発明のフェニルボロン酸誘導体は、重合可能な不飽和結合を有する新規な化合物であり、水溶性が高く、生理的pH(pH=7.4)で多量の−B(OH)- 3が存在する低いpKaを有している。該単量体に基づく構成単位を含有する重合体は含水ゲルを形成することができ、LCSTを利用した糖応答性ゲルとして利用可能である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。次に用いた測定方法を示した。
1.pKaの測定;
機種;pH計(φ;50 pH Meter、Deckmen製)電導率計(DS−8F、堀場)
測定条件;25℃
測定方法;5×10-7molの試料に49.2mlの蒸留水及び0.8mlの0.1N−NaOH水溶液を加えて試料を溶解した。次いで、この溶液にpH計及び電導度計の電極をいれ0.01N−HClの水溶液で滴定した。
2.質量分析;
機種;JMS−700{日本電子(株)製}を用いて行った。
3.水溶性の評価;
試料2gを100mlの水に投入し、60℃で加温して、目視で、水溶性の評価を行った。
【0038】
実施例1
30.86mmolの4−カルボキシフェニルボロン酸(以下CPBAと略す)に80mlの塩化チオニルを加え、アルゴン気流下で、80℃で、50時間還流した。この溶液を減圧乾燥後、100mlのエチレンジアミンを加え、氷冷下で20時間攪拌した。沈殿物をろ過によって取り除き、110mlの1N水酸化ナトリウムを加え、凍結乾燥を行った。この固体に蒸留水30mlを加えて溶解し、氷冷下でアセチルクロリド10mlを滴下し、一晩攪拌した。次に、生成した白色沈殿物をろ別し、減圧乾燥を行った。更に、この白色沈殿物約2gを100mlの水で溶解し、60℃に加温し、冷却後、0℃で一晩放置し、結晶化を行った。生成物の1H−NMR分析、質量分析の結果を次に示した。
1H−NMR分析の結果(δ(ppm)、DMSO−d6/TMS);
3.1 ;−CH2CH2−
5.8−6.3 ;CH2=CH−
7.7 ;フェニル基
ピーク強度比4:3:4であった。
また、質量分析の結果は319[M++グリセリン−2H2O]+の値であった。
結果より、得られた結晶が4−(1’,6’−ジオキソ−2’,5’−ジアザ−7’−オクテニル)−フェニルボロン酸(以下、DODAOPBAと略す)であることを確認した。
【0039】
参考例1
DODAOPBAの電導度滴定を前記の方法で行った結果、pKa=7.5であった。
このDODAOPBAが低いpKaを有することが確認された。
【0040】
参考例2
2gのDODAOPBAを用いて水溶性の評価を前記の方法にしたがって行なった。その結果、DODAOPBAは完全に溶解することが確認された。
【0041】
比較参考例1
参考例2で用いた2gのDODAOPBAの代わりに、2gの4−ヘプタフルオロプロピル−3−アクリルアミドフェニルボロン酸(特開平5−301880号公報中、実施例3の化合物)を用いて同様に水溶性の評価を行った。
その結果、4−ヘプタフルオロプロピル−3−アクリルアミドフェニルボロン酸は、この濃度では完全に溶解されなった。
参考例1、および比較参考例1より、本発明の単量体の水溶性が高いことが確認された。
【0042】
実施例2
0.26gのDODAOPBAおよび1.02gのN−イソプロピルアクリルアミド(以下、NIPAAmと略する)を7mlのベンゼンおよび3mlのエタノ−ルからなる混合溶媒に溶解し、25mgの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトル)を加え、脱気封管後40℃で45分間重合した。得られた重合体はジエチルエーテルによって洗浄を行い、真空乾燥を行った結果、360mgの重合物が得られた。収率は28%であった。
【0043】
生成物の1H−NMR測定を行い、組成モノマ−由来のピ−クを比較することで、重合体の組成を算出した。さらに、得られた重合体をゲルろ過タイプの高速液体クロマトグラフィ−で分析し、ポリエチレングリコールの標準サンプルから重量平均分子量を求めた。また、生成物の電導度滴定を行うことで重合後のボロン酸基のpKaを測定した。これらの結果を次に示す。
1H−NMR分析の結果(δ(ppm)、DMSO−d6/TMS);
1.0 ;−CH3
1.2−1.7 ;−CH2−(主鎖)
1.9−2.1 ;−CH−(主鎖)
3.1−3.5 ;−CH2−(側鎖)
3.7−3.9 ;−CH−(側鎖)
7.8 ;フェニル基
8.2 ;−B(OH)2
また、組成比はDODAOPBA:NIPAAm=13:87であった。
重量平均分子量分析の結果は45,000であり、pKaは7.4であった。
以上の結果よりポリ(4−(1’,6’−ジオキソ−2’,5’−ジアザ−7’−オクテニル)−フェニルボロン酸−co−N−イソプロピルアクリルアミド)共重合体が得られたことを確認した。
【0044】
参考例3
10.53gのリン酸水素2ナトリウム12水和物、1.654gのリン酸2水素ナトリウム2水和物、16gの塩化ナトリウム、0.4gの塩化カリウム、2gのアジ化ナトリウムを1.8リットルの水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を加えることでpHを7.4に合わせ、さらに水を加えて、最終体積を2リットルとすることで、イオン強度0.15のリン酸緩衝生理食塩水を作製した。次にこの生理食塩水にグルコースを加えることで、各種濃度(0,1,3,5,10g/リットル)のグルコースを含むリン酸緩衝生理食塩水を調製した。これらの溶液3mlに3mgの実施例2の重合体を溶解し、15℃に保温し、500nmにおける透過率を測定した。
その結果、0,1,3g/リットルのグルコース濃度では透過率ほぼ100%であり、重合体が溶解していたのに対して、5,10g/リットルのグルコース濃度では、透過率がそれぞれ80%、15%と極端に低下し(白濁状態)、重合体が沈殿状態であることが確認された。
このことから、本重合体はLCSTを利用した糖応答性ゲルとして利用可能であることがわかる。
Claims (6)
- 請求項1記載の一般式(I)で表されるボロン酸基含有単量体に基づく構成単位を含有してなる重合体。
- 請求項2記載の一般式(II)で表されるボロン酸基含有単量体に基づく構成単位を含有してなる重合体。
- 重量平均分子量で5,000〜800,000である請求項3記載の一般式(I)で表されるボロン酸基含有単量体に基づく構成単位を含有してなる重合体。
- 重量平均分子量で5,000〜800,000である請求項4記載の一般式(II)で表されるボロン酸基含有単量体に基づく構成単位を含有してなる重合体。
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