JP3858892B2 - ポリイミドフィルム - Google Patents

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Description

本発明は電子部品の基材として好適な耐熱性と剛性に優れ、かつ加熱しながら各種機能層を積層してもカールによる不具合が発生しない熱変形安定性に優れたポリイミドフィルムに関する。
ポリイミドフィルムは、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度等において優れた特性を有することから、種々の分野で広く利用されている。特に優れた耐熱性と高い剛性を持つという特性を利用して、フレキシブルプリント配線用銅張基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして広く使用されている。
しかし、金属箔(通常は銅箔)とポリイミドフィルムとを接着剤で積層した積層体や金属をスパッタリングや蒸着して積層した積層体において、カールや歪みが生じることによる問題が指摘されている。例えば、TAB用途では寸法精度の要求が厳しいので、基材フィルムであるポリイミドフィルムにカールが発生し、高密度パターン化や半導体実装の際に、前記の位置合わせが困難になり、生産性が低くなるという問題点が指摘されている。
前記問題を解決するためにポリイミドフィルムの寸法安定性、膨張係数に着目して種々の改良がなされている。例えば、ポリイミドフィルムを低張力下に再熱処理して、寸法安定性の高いポリイミドフイルムを製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、ポリイミドフィルムの製造工程において、ゲルフィルムを二軸延伸することにより、フィルム表裏の配向の比を制御した二軸配向ポリイミドフィルムが提案されている(特許文献2参照)。すなわち、二軸配向ポリイミドフィルムでは二軸延伸により表裏の配向比を制御することにより、フィルム表裏の内部応力を近づけることで、見かけ上のカール発生を抑制していると考えられる。しかしながら、二軸延伸フィルムの場合、内部応力が大きいため、表裏の配向比を制御することのみではカールを完全に無くすことは困難であった。すなわち、二軸配向ポリイミドフィルムは配向性自体が高いため、表裏の配向比を制御したとしても、比較的大きな内部応力がフィルム内に潜在化することになる。そのため、二軸配向ポリイミドフィルムをフィルムの配向性に影響を及ぼすような高温(例えば、300℃以上)で処理すると内部応力が開放されてカールが発生するために、高温処理が必要なFPCやTABキャリアテープの製造において、生産効率が低下するという問題があった。
また、二軸延伸する工程は複雑であり、設備も高価であるという問題もあった。
一方、ポリイミドフィルムの弾性率を高くしたフィルムとしてベンゾオキサゾール環を主鎖に有したポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが提案されている(特許文献2参照)。また、高い剛性、高い強度、低い誘電率を持つポリイミドベンゾオキサゾールフィルムと該フィルムを誘電層とするプリント配線板が提案されている(特許文献4および5参照)。
ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは従来のポリイミドフィルムに比べて耐熱性も優れているので、熱加工する時に発生するカールは抑制される傾向にあるが、電子機器の小型化、配線の高密度化が進むに伴い、更なる改良が求められている。
特開昭61−264027号公報 特開2000−85007号公報 特開平6−56992号公報 特表平11−504369号公報 特表平11−505184号公報
本発明は、電子部品の基材フィルムとして好適な耐熱性と剛性に優れ、かつ加熱しながら各種機能層を積層してもカールによる不具合が発生しない、熱変形安定性に優れたポリイミドフィルムを提供することを課題とする。
かかる状況に鑑み、本発明者らは、カールの発生がポリイミドフィルムの両面の物性差に起因することに着目し、特にポリイミドフィルムの両面の厚み方向の分子配向(面配向性)を制御することによって、従来に無い高温処理後のカール量が少ないポリイミドフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類と重縮合してなり、当該ポリイミドフィルムの一方の面の表面面配向度と他方の面の表面面配向度の差が2以下であることを特徴とする無延伸ポリイミドフィルム。
(2)表面面配向度が高い方の面の表面面配向度が15以下である、上記(1)記載の無延伸ポリイミドフィルム。
(3)400℃で10分間熱風処理した後のカール度が5%以下である、上記(1)または(2)記載の無延伸ポリイミドフィルム。
本発明によれば、例えばポリアミド酸溶液からポリアミド酸フィルムを得る際の製造条件を制御してから該ポリアミド酸フィルムをイミド化することによって、ポリイミドフィルムの表裏の表面面配向度の差を小さくすると、カール度が5%以下である従来にない熱変形安定性の優れたポリイミドフィルムを得ることができる。また、同時に従来のポリイミドフィルムと同様に、高い剛性、強度、耐熱性も有するので、寸法精度の要求が厳しいフレキシブルプリント配線用銅貼基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして有用である。
また、係るポリイミドフィルムの製造方法においては、フィルム表面の表裏の表面面配向度の差を制御するために、二軸延伸などの煩雑な工程を要することなく製造することができるという利点がある。
さらに、本発明のポリイミドフィルムは、配向性自体は高くないため、フィルムの表裏の配向の絶対値差を容易に小さく制御することができる。したがって、フィルム内部に内在している応力も小さいため、配向性が影響される300℃を超えるような高温で処理したとしても、カールの発生を最小限に抑制することができるため、FPCやTABキャリアテープの製造に適するという利点を有する。
以下、本発明のポリイミドフィルムの実施の形態について詳細に説明する。
本発明のポリイミドフィルムは、芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合させて得られるポリイミドからなる略平板状のフィルムであり、カール度が5%以下であるという、従来にない優れた熱変形安定性を有する。
本発明において、フィルムのカール度とは、所定の熱処理を行った後のフィルムの面方向に対する厚さ方向への変形度合を意味し、具体的には、図1に示すように50mm×50mmの試験片を、400℃で10分間熱風処理した後に、平面上に試験片を静置し、四隅の平面からの距離(h、h、h、h:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、試験片の各頂点から中心までの距離(35.36mm)に対するカール量の百分率(%)で表される値である。
具体的には、次式によって算出される。
カール量(mm)=(h+h+h+h)/4
カール度(%)=100×(カール量)/35.36
本発明のポリイミドフィルムは、一方の面の表面面配向度と他方の面の表面面配向度の差が、2以下であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1以下である。
ポリイミドフィルムの表裏の表面面配向度の差が大きすぎる場合は、フィルム内に内在する応力の表裏の差が大きくなり、加熱処理等した場合にカールが発生しやすくなると考えられる。本発明においては、当該表面面配向度の差を2以下に制御することにより、ポリイミドフィルムのカール度が5%以下という、FPCやTAB用キャリアテープなどに適した熱変形安定性を達成することができることを見出した。
本発明において表面面配向度とは、フィルム表面から3μm程度の深さまでのポリイミド分子のイミド環面のフィルム面に対する配向度合を意味する。具体的には、FT−IR(測定装置:Digilab社製、FTS−60A/896等)により偏光ATR測定を、一回反射ATRアタッチメントをgolden gate MkII(SPECAC社製)、IREをダイアモンド、入射角を45°、分解能を4cm−1、積算回数128回の条件でフィルム表面について測定を行った場合の1480cm−1付近に現れるピーク(芳香環環振動)における各方向の吸収係数(Kx、KyおよびKz)を求め、次式により定義されるものである。(但し、KxはMD方向、KyはTD方向、Kzは厚み方向の吸収係数をそれぞれ示す。)
表面面配向度=(Kx+Ky)/2×Kz
一方の面の表面面配向度と他方の面の表面面配向度の差とは、本発明のポリイミドフィルムの表裏のそれぞれについて表面面配向度を測定し、その差の絶対値で表されるものである。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、表面面配向度が高い方の面の表面面配向度は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。本発明のポリイミドフィルムの表面面配向度が高い方の面の表面面配向度が15より大きくなる場合は、フィルム表裏の表面面配向度の差を所定の範囲に制御しにくくなるとともに、熱処理(例えば、300℃以上)による熱変形を受けやすくなる。
本発明のポリイミドフィルムの表面面配向度が高い方の面の表面面配向度の下限は特に限定されないが、フィルムの平面性の観点からは、好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは7.5以上である。
芳香族ジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類および上記芳香族ジアミン類の芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシ基で置換された芳香族ジアミン類等が挙げられる。
該芳香族ジアミン類は、単独であっても二種以上を用いることも可能である。
なかでも、耐熱性、強度、剛性が優れたポリイミドフィルムが得られることから、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類が好ましく、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
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これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。
本発明において用いられるテトラカルボン酸無水物は芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
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これらの芳香族テトラカルボン酸無水物類は単独でも二種以上を用いることも可能である。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。用いられる非芳香族テトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等である。これらの非芳香族テトラカルボン酸二無水物類は単独でも二種以上を用いることも可能である。
本発明のポリイミドフィルムは、まず、(a)芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを溶媒中で縮合してポリアミド酸溶液を得て(以下、工程(a)ともいう。)、次いで、(b)ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して自己支持性がでる程度、具体的には乾燥後の全重量に対する残留溶媒量が25〜50重量%になる条件で乾燥することによりグリーンフィルムを得て(以下、工程(b)ともいう。)、次いで、(c)グリーンフィルムを最高温度100〜500℃で熱処理して、イミド化反応させる(以下、工程(c)ともいう。)ことにより製造される。
上記工程(a)〜(c)において、必要によりフィルム(グリーンフィルムを含む。)の延伸処理を行ってもよいが、その場合の面積倍率は、好ましくは9以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは2以下であり、なおさらに好ましくは延伸処理を行わない無延伸フィルムとするのが好ましい。ここで、無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによって機械的外力を意図的に加える延伸を行わずに得られるフィルムをいう。面積倍率が高すぎる場合には、ポリイミドフィルムの表面面配向度が高くなりすぎ、フィルム表裏の表面面配向度の差を所定の範囲に制御しにくくなるとともに、熱処理(例えば、300℃以上)による配向性変化の影響を受けやすくなるため好ましくない。
以下、本発明のポリイミドフィルムの製造方法(以下、単に本発明の製造方法という。)について詳説する。
<工程(a)>
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等が挙げられる。これらの溶媒は,単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるような量が挙げられる。
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜80時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、加圧したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封鎖剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封鎖剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
<工程(b)>
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラムまたはベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
工程(b)においてはグリーンフィルムを自己支持性が出る程度にまで乾燥する際に、溶媒の揮発する方向が空気に接する面に限られるためにグリーンフィルムの空気に接している面(以下、A面ともいう。)の表面面配向度が、支持体に接する面(以下、B面ともいう。)の表面面配向度より高くなる傾向にあるが、フィルムの表裏の表面面配向度の差が2以下であるポリイミドフィルムを得るためには、表裏の表面面配向度の差の小さいグリーンフィルムを得ることが重要であり、そのために、例えば、ポリアミド酸溶液を支持体上にコーティングし、乾燥して自己支持性となったグリーンフィルムを得る際の乾燥条件を制御することで、表裏面の表面面配向度の差の小さいグリーンフィルムを得ることができる。
係るグリーンフィルムの表裏面の表面面配向度の差は、好ましくは1.7以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1以下である。グリーンフィルムの表裏面の表面面配向度の差が1.7を超えると、ポリイミドフィルムの表裏面の表面面配向度の差を2以下に制御出来ない場合がある。
グリーンフィルムを自己支持性が出る程度に乾燥する際に、乾燥後の全重量に対する残留溶媒量を制御することにより表裏面の表面面配向度の差が所定の範囲のグリーンフィルムを得ることができる。具体的には、乾燥後の全重量に対する残留溶媒量は、好ましくは25〜50重量%であり、より好ましくは35〜50重量%である。当該残留溶媒量が25重量%より低い場合は、グリーンフィルムA面の表面面配向度が相対的に高くなり、表裏面の表面面配向度の差の小さいグリーンフィルムを得ることが困難になるばかりか、分子量低下により、グリーンフィルムが脆くなりやすい。また、50重量%を超える場合は、自己支持性が不十分となり、フィルムの搬送が困難になる場合がある。
乾燥後の全重量に対する残留溶媒量が所定の範囲であるグリーンフィルムを得るための乾燥条件としては、例えば、N−メチルピロリドンを溶媒として用いる場合は、乾燥温度は、好ましくは70〜130℃、より好ましくは75〜125℃であり、さらに好ましくは80〜120℃である。乾燥温度が130℃より高い場合は、分子量低下がおこり、グリーンフィルムが脆くなりやすい。また、グリーンフィルム製造時にイミド化が一部進行し、イミド化工程時に所望の物性が得られにくくなる。また70℃より低い場合は、乾燥時間が長くなり、分子量低下がおこりやすく、また乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥時間としては乾燥温度にもよるが、好ましくは10〜90分間であり、より好ましくは15〜80分間である。乾燥時間が90分間より長い場合は、分子量低下がおこり、フィルムが脆くなりやすく、また10分間より短い場合は、乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥効率の向上または乾燥時の気泡発生の抑制のために、70〜130℃の範囲で温度を段階的に昇温して、乾燥してもよい。
そのような条件を達成する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。
熱風乾燥を行う場合は、グリーンフィルムを自己支持性が出る程度に乾燥する際に、グリーンフィルムの表裏面の表面面配向度の差を所定以下にするために、支持体の上面/下面の温度差を10℃以下、好ましくは5℃以下に制御するのが好ましく、上面/下面の熱風温度を個別にコントロールすることにより、当該温度差を容易に制御することができる。
<工程(c)>
工程(b)で得られた表裏面の表面面配向度の差が所定の範囲のグリーンフィルムをイミド化することで表裏面の表面面配向度の差の小さいポリイミドフィルムが得られる。その具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができるが、表裏面の表面面配向度の差の小さいポリイミドフィルムを得るためには、熱閉環法が好ましい。
熱閉環法の加熱最高温度は、100〜500℃が例示され、好ましくは200〜480℃である。加熱最高温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンシート、フィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、後述するプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、通常1〜150μm、好ましくは3〜50μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明の製造方法によって得られるポリイミドフィルムは、表面面配向度がB面より大きい傾向にあるA面を巻内にして管状物に巻き取ることで、更にカール度の小さいポリイミドフィルムを得ることができる。
A面を巻内にして管状物に巻き取る場合、その曲率半径は30mmから300mmの範囲とすることが好ましい。曲率半径がこの範囲を超えるとポリイミドフィルムのカール度が大きくなる場合がある。
次に、上述したポリイミドフィルムを用いたプリント配線基板用ベース基板を説明する。
ここで、「プリント配線基板用ベース基板」とは、絶縁板の少なくとも片面に金属層を積層してなる構成の略平板状の基板である。積層される金属層は、エッチング等の加工によって回路を形成することが意図される回路用の金属層であってもよいし、特に後加工をせずに絶縁板と一緒になって放熱等の目的に用いられる金属層であってもよい。
「プリント配線基板用ベース基板」の用途としては、FPC、TAB用キャリアテープ、COF用基材、CSP用基材等が、カール度が小さいという本発明のポリイミドフィルムの特徴を活かすことができるため好ましい。
ポリイミドフィルムの少なくとも片面に積層される金属は特に限定はなく、好ましくは銅、アルミニウム、ステンレス鋼などである。積層手段は特に問わず、以下のような手段が例示される。
・接着剤を用いて、ポリイミドフィルムに金属板を貼り付ける手段、
・ポリイミドフィルムに蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの真空コーティング技術を用いて金属層を形成する手段、
・無電解めっき、電気めっきなどの湿式メッキ法により金属層をポリイミドフィルムに形成する手段。
これらの手段を単独で、あるいは組み合わせることによってポリイミドフィルムの少なくとも片面に金属層を積層することができる。
なかでも、金属層を積層する方法としては、スパッタリングにより下地金属層を形成し、電気めっきにて厚付けする方法が好ましい態様として挙げられる。
この場合、下地金属としてはCu、Ni、Cr、Mo、Zn、Ti、Ag、Au、Fe等の単体または合金を用いることができる。また、下地金属の上に導電化層としてCu等の良導体をさらにスパッタリングにて付着させてもよい。
下地層および導電化層の厚みは、好ましくは100〜5000Åである。
電気めっきする金属としては、Cuが好ましい。
金属層の厚さは特に制限はないが、当該金属層を回路用(導電性)とする場合には、その金属層の厚さは好ましくは1〜175μmであり、より好ましくは3〜105μmである。金属層を貼合わせたポリイミドフィルムを放熱基板として用いる場合には、金属層の厚さは、好ましくは50〜3000μmである。この金属層のポリイミドと接着される表面の表面粗さについては特に限定されないが、JIS B 0601(表面粗さの定義と表示)における、中心線平均粗さ(以下Raと記載する)および十点平均粗さ(以下Rzと記載する)で表示される値が、Raについては0.1μm以下、Rzについては1.00μm以下であるものがフィルムと金属層との接着性向上の効果が大きく好ましい。その中でも特にこれらの条件を同時に満足するものが好ましい。なお、RaおよびRzは小さいほど好ましいが、入手・加工の容易さからRaの下限は0.0001μm、Rzの下限は0.001μmが例示される。
本発明で使用する金属層の表面には、金属単体や金属酸化物などといった無機物の塗膜を形成してもよい。また金属層の表面を、カップリング剤(アミノシラン、エポキシシランなど)による処理、サンドプラスト処理、ホ−リング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。同様に、ポリイミドフィルムの表面をホ−ニング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.ポリイミドフィルムのフィルム厚さ
フイルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
3、ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで測定し、引張弾性率、引張強度及び破断伸度を求めた。
4.ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)
下記条件で伸縮率を測定し、30〜300℃までを15℃間隔で分割し、各分割範囲の伸縮率/温度の平均値より求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
5.ポリイミドフィルムの融点、ガラス転位温度
試料を下記条件でDSC測定し、融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tmg)をJIS K 7121に準拠して下記測定条件で求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
6.ポリイミドフィルムの熱分解温度
熱分解温度は、充分に乾燥した試料を下記条件でTGA測定(熱天秤測定)して、5%重量減をもって規定した。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
7.ポリイミドフィルムの表面面配向度の差
表面面配向度は偏光ATRを用い、入射角45°、分解能4cm−1、積算回数128回で測定を行った。1480cm−1付近に現れるピーク(芳香環環振動)におけるMD方向の吸収係数(Kx)、TD方向の吸収係数(Ky)および厚み方向の吸収係数(Kz)をポリイミドフィルムの表裏それぞれについて求め、次式により表面面配向度を算出した。
表面面配向度=(Kx+Ky)/2×Kz
また、本発明のポリイミドフィルム表裏の表面面配向度の差は次式に示すように、空気面側(A面)と支持体側(B面)との表面面配向度の差の絶対値により算出される。
表面面配向度の差=|A面の表面面配向度−B面の表面面配向度|
装置名;FT−IR(Digilab社製、FTS−60A/896)
一回反射ATRアタッチメント;golden gate MKII(SPECAC社製)
IRE;ダイアモンド
入射角;45°
8.ポリイミドフィルムのカール度
50mm×50mmの試験片をアルミナ・セラミック製の平板に設置し、400℃で10分間熱風処理した後の四隅のセラミック板からの距離(h、h、h、h:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、次式からカール度を算出した。なお、用いたセラミック板自体のカール量は、0.1mm以下である。
カール量(mm)=(h+h+h+h)/4
カール度(%)=100×(カール量mm)/35.36mm
(実施例1)
<重合およびフィルムの製造例1>
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500重量部を仕込んだ。次いで,N−メチル−2−ピロリドン5000重量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物485重量部を加え,25℃の反応温度で15時間攪拌すると,褐色で粘調なポリアミド酸溶液が得られた。このもののηsp/Cは4.0であった。
続いてこのポリアミド酸溶液をステンレスベルトにスキージ/ベルト間のギ ャップを650μmとしてコーティングし、3つの熱風式乾燥ゾーンにて90℃×20分、90℃×20分、90℃×20分間乾燥した。
乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離し厚み40μmのグリーンフィルムを得た。得られたグリーンフィルムを、連続式の乾燥炉に通し、170℃にて3分間熱処理した後、450℃まで、約20秒間にて昇温し、450℃にて7分間熱処理し、5分間かけて室温まで冷却、厚み25μmの褐色のポリイミドフィルム(フィルム1)を得た。
得られたポリイミドフィルムの特性値を表1に示す。
(実施例2、3、比較例1〜4)
ポリアミド酸溶液をステンレスベルトにコーティングした後に、3つの熱風式乾燥ゾーンの温度×時間を表1に示したとおりにした以外は、実施例1と同様にしてグリーンフィルムを得て、更に実施例1と同様に熱処理してポリイミドフィルムを得た。
実施例2および3のポリイミドフィルムの特性値を表1に、比較例1〜4のポリイミドフィルムの特性値を表2に示す。
Figure 0003858892
Figure 0003858892
表裏の表面面配向度の差を2以下に制御した、実施例1〜3のポリイミドフィルムは、カール度を5%未満であったが、比較例1〜4においてはカール度が大きく、また、強度や伸度も低いものであった。
本発明のポリイミドフィルムは、カール度が5%以下である従来にない熱変形安定性の優れたポリイミドフィルムであり、かつ従来のポリイミドフィルムと同様に、高い剛性、強度、耐熱性をも有するので、寸法精度の要求が厳しいフレキシブルプリント配線用銅貼基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして好適に使用される。
ポリイミドフィルムのカール度を測定方法を示した模式図である。(a)は上面図であり、(b)は熱風処理前の(a)におけるa−aで示される断面図であり、(c)は熱風処理後の(a)におけるa−aで示される断面図である。
符号の説明
1 ポリイミドフィルムの試験片
2 アルミナ・セラミック板

Claims (3)

  1. ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類と重縮合してなり、
    当該ポリイミドフィルムの一方の面の表面面配向度と他方の面の表面面配向度の差が2以下であることを特徴とする無延伸ポリイミドフィルム。
  2. 表面面配向度が高い方の面の表面面配向度が15以下である、請求項1記載の無延伸ポリイミドフィルム。
  3. 400℃で10分間熱風処理した後のカール度が5%以下である、請求項1または2記載の無延伸ポリイミドフィルム。
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