JP3858382B2 - レーザ加工用シート保持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミックグリーンシートにレーザを用いて穴加工や切断加工を行なう場合に、セラミックグリーンシートを安定に保持するためのレーザ加工用シート保持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セラミックグリーンシートのような薄く、柔らかいシート状加工物をレーザを用いてレーザ加工する場合、集光レンズと加工物表面との相対距離が変化すると、加工物表面でのビーム径が変化し、加工穴径が変化してしまう。そこで、多数の吸引穴を有するシート保持プレートの上に加工物を吸着保持してレーザ加工を行なう方法が一般に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
シート保持プレートとしては、レーザ光で加工されない材料で形成する必要がある。そこで、金属製のシート保持プレートを用いると、レーザ光が加工物を貫通した後、プレートで反射されるため、再度加工物に照射されて加工穴径が大きくなったり、加工物の裏面に熱影響を与えたりする不具合がある。
また、レーザ光の反射をなくすために、レーザ光の波長に対して吸収性の高い材料(CO2 レーザ加工の場合にはアクリル板など)でシート保持プレートを製作することもあるが、レーザ光が吸収されたことによってプレート表面に熱が発生し、加工物裏面に熱影響を与える。また、プレートが融点(液相)を持つ場合には、溶融物が加工物の裏面に付着するという問題がある。
さらに、加工物の裏面をシート保持プレートで直接支持すると、レーザ加工による飛散物が上方に飛び散り、加工物の表面に多く付着したり、穴詰まりを発生させるという問題もある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記のような問題点を解消したレーザ加工用シート保持装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、シート保持プレート上にセラミックグリーンシートを載置し、このセラミックグリーンシートにレーザを照射して穴加工または切断加工を行なう装置であって、上記シート保持プレートはその表面に載置された物体を吸着保持する真空吸引手段を持ち、上記シート保持プレートとセラミックグリーンシートとの間には補助シートが介装され、上記補助シートは、レーザ加工時に液相を持たず、セラミックグリーンシートの加工温度より低い酸化燃焼点温度を有し、かつレーザ光に対して90%以上の吸収率を持ち、さらに通気性を有する紙または布で形成されていることを特徴とするレーザ加工用シート保持装置を提供する。
【0006】
すなわち、補助シートがレーザ光に対して高い吸収率を有し、かつ酸化燃焼点が加工物の加工温度より低いので、加工穴を通過してきたレーザ光を吸収し、容易に加工される。そのため、加工物の裏面に補助シートの厚み分の空洞が形成され、飛散物や溶融物の逃げ場を確保できる。また、補助シートは加工時に液相を殆ど持たないので、補助シートにレーザ光が吸収されて発生した熱が加工物を加工するまでには至らず、溶融物が付着することもない。つまり、加工物裏面への熱影響を小さくできる。
なお、レーザ光に対する吸収率を90%以上としたのは、補助シートの上の加工物に溶融物が付着せず、下のシート保持プレートに加工影響をできるだけ及ぼさないようにするためである。上記吸収率とは、JIS(日本工業規格)でいう吸収率のことであり、
反射率+吸収率+透過率=1
である。
【0007】
シート保持プレート上に補助シートを介して加工物を吸着保持するために、シート保持プレートはその表面に載置された物体を吸着保持する真空吸引手段を持ち、補助シートは通気性を有する材料で形成されていることが望ましい。この場合には、真空吸引手段によって加工物の飛散物や溶融物を吸引し、補助シートで吸収するので、飛散物や溶融物の加工物表面への付着や穴詰まりを防止できる効果がある。
【0008】
補助シートは、加工物より低い熱伝導率を有する材料が望ましく、例えば紙または布を用いるのが望ましい。つまり、補助シートの熱伝導率が低いので、加工時にシート保持プレートの一部が発熱しても、その熱が加工物に伝わりにくい。補助シートとして紙や布を用いた場合、紙や布は柔らかく多孔質であるから、シート保持プレートによく馴染み、シート保持プレートを介して吸引することで、補助シートを介してその上の加工物を水平に吸着保持できる。紙や布は安価であるから、加工物と同量だけ消費しても、コスト上昇を抑制できる利点もある。
【0009】
シート保持プレートは、加工物の加工温度より高い融点もしくは分解点を有する材料、例えばアルミナセラミックスで形成するのが望ましい。すなわち、加工物および補助シートを通過したレーザ光がシート保持プレートに到達しても、プレートは溶融しないので、溶融物が加工物の裏面に付着することがないからである。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明にかかるレーザ加工装置の一例を示す。
1は可動テーブルであり、図示しない駆動装置によって、NCプログラムにしたがってX軸方向およびY軸方向に移動可能である。テーブル1の上面にはシート保持プレート2が載置され、ボルト3によって固定されている。シート保持プレート2は、中央部に凹部5を有するプレート本体4と、この凹部5の上面を覆う多孔質材料よりなるカバー部材6とで構成され、プレート本体4とカバー部材6との間に空洞7を形成したものである。空洞7は真空吸引装置(図示せず)と配管8を介して接続されており、空洞7の内部が−200〜−700mmHg程度の負圧に保たれている。なお、この実施例では、カバー部材6の材質として、後述するCO2 レーザ光に対する吸収率が高く、かつ耐熱性に優れたアルミナセラミックスを用いている。また、カバー部材6の表面を、レーザ光が散乱しやすくするため、粗面に形成しておくのが望ましい。
【0012】
上記カバー部材6の上面には補助シート10を介してシート状加工物11が吸着保持されている。補助シート10としては、次のような性質を持つものが望ましい。第1に加工時に液相を持たずまたは微小時間しか液相を持たないこと、第2に加工物の加工温度より低い酸化燃焼点温度を有すること、第3にレーザ光に対して90%以上の吸収率を持つこと、第4に通気性を有すること、第5に加工物より低い熱伝導率を有することなどである。この実施例では、補助シート10が濾紙で形成されているが、その他にフィルター紙,模造紙,布などを使用してもよい。補助シート10が通気性を有することで、カバー部材6の吸引孔から作用した負圧が補助シート10を介して加工物11に作用し、加工物11および補助シート10をカバー部材6上に安定に吸着保持できる。。
加工物11は、例えばグリーンシート12とその底面に貼着されたキャリアフィルム13とで構成されている。加工物11の厚みは例えば0.5mm以下であり、補助シート10の厚みは例えば0.03〜0.2mm程度である。
【0013】
上記テーブル1の上方には、パルスレーザを加工物11に向かって照射するレーザ発生装置20が配置されている。レーザ発生装置20は、周知のようにパルスレーザ光を出力するレーザ発振器21、レーザ光の光路を変更するミラー22、レーザ光を集光するレンズ23、アシストガスをレーザ光に沿って吹き出すレーザヘッド24などを備えている。この実施例ではエネルギー密度の高いCO2 レーザを用いている。
【0014】
ここで、上記構成のレーザ加工装置を用いて加工物11に穴加工を行なう方法を説明する。
まず、シート保持プレート2上に補助シート10を載せ、かつその上に加工物11を載せた状態で、空洞7を真空吸引することで、補助シート10および加工物11をシート保持プレート2上に吸着保持する。特に、補助シート10を紙のような柔軟な材料とした場合には、シート保持プレート2に馴染みやすく、加工物11を水平に保持できる。そして、テーブル1をX,Y方向に1ピッチずつ移動させながら、移動の度にレーザ発生装置20によりパルスレーザ光を加工物11に照射し、例えばφ0.2mmの丸穴11aを多数個加工する。
穴加工後、真空吸引を中止することで、シート保持プレート2から補助シート10および加工物11を簡単に取り外すことができる。
【0015】
図2はレーザ加工部分の詳細を示す。
レーザ光Lを加工物11に照射し、穴11aを加工すると、穴11aを通過してきたレーザ光Lは補助シート10で吸収され、同じく補助シート10にも穴10aを開ける。そのため、加工物11の裏面に補助シート10の厚み分の空洞10aが形成され、飛散物や溶融物Sの逃げ場が確保される。しかも、補助シート10が多孔質であるから、シート保持プレート2からの吸引力を利用して加工物11の飛散物や溶融物Sを補助シート10が吸着する。そのため、飛散物や溶融物Sの加工物11の表面への付着や、穴詰まりを防止できる。
【0016】
さらに、レーザ光Lの一部は加工物11および補助シート10を通ってシート保持プレート2にまで到達するが、シート保持プレート2の吸着面にはレーザ光に対する吸収率の高いアルミナ製カバー部材6が使用され、かつ吸着面がレーザ光を散乱させる粗面に形成されていることから、加工物11への反射光を殆ど発生させず、加工穴11aが大きくなる恐れがない。
なお、シート保持プレート2の吸着面をアルミナのような高融点材料で形成することで、レーザ光によって損傷を受けず、シート保持プレート2は多数回の使用に耐えることができる。
【0017】
本発明で用いるレーザ光はパルスレーザに限るものではない。したがって、レーザ加工の種類は、穴加工の他、切断加工やスクライビングなど、如何なる加工にも用いることが可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、シート保持プレートとセラミックグリーンシートとの間に、加工時に液相を持たずまたは微小時間しか液相を持たない材料で、加工物の加工温度より低い酸化燃焼点温度を有し、かつレーザ光に対して90%以上の吸収率を持つ通気性を有する紙または布よりなる補助シートを介在させたので、セラミックグリーンシートの穴を通過してきたレーザ光によって補助シートが容易に加工され、セラミックグリーンシートの裏面に補助シートの厚み分の空洞が形成される。そのため、飛散物や溶融物の逃げ場を確保でき、飛散物や溶融物がセラミックグリーンシートに付着するのを少なくできる。
また、補助シートは液相を殆ど持たず、かつ酸化燃焼点がセラミックグリーンシートの加工温度より低いので、補助シートにレーザ光が吸収されて発生した熱がセラミックグリーンシートを加工するまでには至らず、溶融物が付着することもない。したがって、セラミックグリーンシート裏面への熱影響を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるレーザ加工用シート保持装置の一例の構造図である。
【図2】図1に示すレーザ加工部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 テーブル
2 シート保持プレート
6 多孔質カバー部材
10 補助シート
11 加工物
11a 加工穴
20 レーザ発生装置

Claims (3)

  1. シート保持プレート上にセラミックグリーンシートを載置し、このセラミックグリーンシートにレーザを照射して穴加工または切断加工を行なう装置であって、
    上記シート保持プレートはその表面に載置された物体を吸着保持する真空吸引手段を持ち、
    上記シート保持プレートとセラミックグリーンシートとの間には補助シートが介装され、
    上記補助シートは、レーザ加工時に液相を持たず、セラミックグリーンシートの加工温度より低い酸化燃焼点温度を有し、かつレーザ光に対して90%以上の吸収率を持ち、さらに通気性を有する紙または布で形成されていることを特徴とするレーザ加工用シート保持装置。
  2. 上記セラミックグリーンシートの裏面にはキャリアフィルムが貼着されており、上記レーザによってセラミックグリーンシートと共にキャリアフィルムも加工されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工用シート保持装置。
  3. 上記シート保持プレートの表面は、レーザ光を散乱させる粗面であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工用シート保持装置。
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