JP3858337B2 - 橋桁架設方法並びにこれに用いられる支承及び橋桁並びに該方法によって架設された橋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋桁を橋脚又は橋台等の下部構造体に架設する橋桁架設方法並びにこれに用いられる支承及び橋桁並びに該方法によって架設された橋に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、プレキャストされた橋桁を、橋脚を介して次々に連結して橋を形成する際においては、橋桁は、当該橋桁と橋脚との間に配された免震支承又は反力分散ゴム支承のような少なくとも水平方向に可撓な支承を介して橋脚に支持される場合がある。
【0003】
かかる支承を介して橋桁を橋脚上に架設する場合、一つの工法では、橋脚上に固定されたシュー上に、橋桁との位置ずれを吸収し得るように水平移動自在に支承を仮載置し、この支承上に橋桁を、支承を移動して支承と橋桁との位置合わせを行いつつ載置し、位置合わせ完了後、まず支承と橋桁とを溶接などにより固定した後に、仮載置された支承をシューに同じく溶接などにより固定している。この工法によれば、橋脚上のスペースが狭い場合には、現場溶接作業が極めて困難であり、時間がかかり、また、溶融亜鉛メッキ処理を行うことができないなどの不都合がある。
【0004】
また上記のように支承を介して橋桁を橋脚上に架設する他の工法では、橋脚に形成されたアンカーボルト穴にシューのアンカーボルトを配置して、当該シューを橋脚上に載置し、次にシューに支承を載置して、溶接などによりまずシューと支承とを固定し、次にこの固定された支承上に橋桁を、橋脚に形成されるアンカーボルト穴の箱抜き後のクリアランスを用いて、支承を移動して支承と橋桁との位置合せを行いつつ載置し、位置合わせ完了後、支承と橋桁とを固定し、その後、該クリアランスにコンクリートを打ち込んで、シューを橋脚に固定している。この工法によれば、仮受けジャッキを多数用いるため、仮受けジャッキの設置に時間を要し、コスト高となる。
【0005】
更にその他のセンターポールジャッキを用いる工法は、ジャッキ反力ジグを必要とし、しかも支承自体の構造が複雑となり、これにおいてもコスト高となる虞がある。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、支承の水平方向の可撓性を利用して、架設後の多少の水平方向の支承の撓みを許容し、而して、支承と橋桁との位置合わせ調整を簡単に行い得、しかも架設時間を短縮することができ、著しいコスト低減を図ることのできる橋桁架設方法を提供することにある。
【0007】
また本発明の目的とするところは、上記の架設方法に用いられる支承及び橋桁並びに該方法によって架設された橋を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の橋桁架設方法は、上面及び下面を有しており、少なくとも水平方向に可撓な支承であって、先端に向かうに従って徐々に縮径された剪断キーの一端側が該上面から突出するようにして、当該剪断キーの他端側が上面側に嵌入されてなる支承を、その下面側において下部構造体に固定する段階と、支承の上面から突出する剪断キーの一端側の形状に相補的な形状を有した凹所を下面に有した橋桁を予め準備する段階と、この準備された橋桁を支承上に配する段階と、支承の上面から突出する剪断キーの一端側と橋桁の凹所とがほぼ対面するようにして、支承上に配された橋桁を下降させて、橋桁の下面を支承の上面に配する段階とを具備する。
【0009】
また本発明の方法は、下部構造体の上面に下側シューを固定する段階を具備し、支承の下面を下側シューの上面に固定して、これにより支承を下部構造体に固定しても、更に、橋桁の下面を支承の上面に配する段階の後に、支承を橋桁に固定する段階を具備し、これにおいて、橋桁が上側シューを具備する場合には、支承の上面を、上側シューの下面に固定し、これにより支承を橋桁に固定してもよい。また本発明の方法では、橋桁の下面を支承の上面に配する段階前に、剪断キーの一端側の表面及び橋桁の凹所表面の少なくとも一方に、滑りをよくするためのグリスなどの低摩擦剤を塗布する段階を具備する。
【0010】
本発明はまた、上記目的を達成するために、上記の橋桁架設方法に用いるための支承及びプレキャストされた橋桁並びに上記の橋桁架設方法によって架設された橋を提供する。
【0011】
本発明の橋桁架設方法に用いるための支承及びプレキャストされた橋桁並びに上記の橋桁架設方法によって架設された橋において、剪断キーの一端側は、半球状、円錐状又は截頭円錐状に形成されており、また、剪断キーの少なくとも一端側及び橋桁の凹所の少なくとも一方の表面には、当該表面の滑りをよくするために、低摩擦材により当該表面が被覆される等の表面処理が施されている。
【0012】
本発明の橋桁は、コンクリート製の橋桁本体と、この橋桁本体の下面に、下面が露出して埋設、固定された上側シューと、橋桁本体内に埋設されたガイド部材、好ましい例では、円筒状のガイド部材とを具備しており、凹所は、上側シュー及びガイド部材のそれぞれに、それぞれ互いに連通されて形成された貫通孔からなり、また、橋桁は、現場施工時間を低減するために好ましくは工場においてプレキャストされてなるものが用いられる。
【0013】
本発明の支承としては、免震支承又は反力分散ゴム支承を用いることができるが、その他の支承であってもよい。なお、下部構造体としては、橋脚又は橋台のいずれであってもよいが、好ましくは、橋脚である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何等限定されないのである。
【0015】
【実施例】
図1において、本発明方法によって構築された本例の連結構造の橋1は、下部構造体としてのコンクリート製の橋脚2と、橋脚2に埋め込まれたアンカーボルト3により橋脚2の上面4に固定された下側シュー5と、下側シュー5上に載置、固定された少なくとも水平方向に可撓な支承としての免震支承6と、免震支承6上に載置、固定された橋桁7と、免震支承6に対する橋桁7の相対的な水平方向Hの移動を阻止する剪断キー8とを具備している。
【0016】
本例の免震支承6は、厚肉鋼板からなる下側フランジ10と、下側フランジ10上に固定された支承本体11と、支承本体11上に固定された上側フランジ12とを具備しており、支承本体11は、それぞれが剛性鋼板からなる複数の薄肉補強板15と、薄肉補強板15と共に少なくとも水平方向Hに撓み得る積層体を構成するように薄肉補強板15に対して交互に配されて各薄肉補強板15に加硫接着された、ゴム、好ましくは振動に対する高減衰ゴムからなる複数のゴム層16と、最下部のゴム層16に、下面が露出して埋め込まれて且つ加硫接着され、剛性鋼板からなる下側厚肉補強鋼板17と、最上部のゴム層16に、上面が露出して埋め込まれて且つ加硫接着され、剛性鋼板からなる上側厚肉補強鋼板18とを具備している。
【0017】
下側フランジ10は、一方では、その上面でボルト21により下側厚肉補強鋼板17の下面に固着されており、他方では、その下面22でボルト23により下側シュー5の上面24に固着されている。上側フランジ12は、一方では、その下面でボルト25により上側厚肉補強鋼板18の上面に固着されており、他方では、その上面26でボルト27により橋桁7の上側シュー28の下面29に固着されている。
【0018】
免震支承6は、橋脚2に対する橋桁7の水平方向Hの相対的な変位で、弾性を具備するゴム層16の機能により、同じく水平方向H、換言すれば剪断方向に弾性的に撓み得るように、すなわち弾性的に可撓となっている。なお、支承としては、上記の免震支承6に代えて、その他の支承、例えば反力分散ゴム支承であってもよく、また、支承本体11に一個又は複数個の鉛支柱(鉛プラグ)が埋め込まれた免震支承であってもよい。
【0019】
免震支承6に固定、支持された本例の橋桁7は、コンクリート製の橋桁本体31と、橋桁本体31の下面32に、下面29が露出して埋設、固定された上記の上側シュー28と、橋桁本体31内に埋設された鋼製のガイド部材33と、免震支承6の上面26から突出する剪断キー8の一端側34の形状に相補的な形状を有した凹所35とを具備している。上側シュー28は、橋桁本体31に埋め込まれたアンカーボルト36により橋桁本体31に固定されている。本例の凹所35は、上側シュー28及びガイド部材33のそれぞれに、それぞれ互いに連通されて形成された貫通孔37及び38からなる。なお、橋桁本体31内に埋め込まれて貫通孔38の一端を閉鎖した蓋板39は、橋桁7のプレキャストの際に、貫通孔38にコンクリートが流れ込まないようにするために用いられたものであり、これを用いないで橋桁7をプレキャストし得る場合には、蓋板39は必要でない。橋桁7は、通常、好ましくは、工場等においてプレキャストされて製造され、その後、橋1の構築現場に搬入される。
【0020】
剪断キー8は、免震支承6の上面26から突出して、上方の先端51に向かうに従って徐々に縮径された、本例では截頭円錐形の一端側34と、上側フランジ12及び上側厚肉補強鋼板18のそれぞれに、それぞれ互いに連通して穿たれた貫通孔53及び穴54からなる免震支承6の上面側の凹所55に嵌入された他端側56とを具備している。剪断キー8において、凹所55に嵌入された他端側56と、上側シュー28の貫通孔37を貫通する部位57とは、円柱状に形成されている。なお、剪断キー5の一端側34は、本例のように截頭円錐形であってもよいが、これに代えて、半球状又は円錐状などの他の形状であってもよい。また、免震支承6を介在させて橋桁7を橋脚2に架設する際に、凹所35と一端側34との嵌合を容易にするために、剪断キー5の少なくとも一端側34の截頭円錐の表面58及び橋桁7の凹所35の表面61の少なくとも一方に、滑りをよくする低摩擦材からなる被覆を形成しておいてもよい。
【0021】
以上のような橋1は、図2及び図3をも参照して以下のようにして、免震支承6を介在させて橋桁7が橋脚2に架設されて、構築される。
【0022】
すなわち、まず、上面26及び下面22を有し、少なくとも水平方向Hに可撓な免震支承6であって、先端51に向かうに従って徐々に縮径された剪断キー8の一端側34が該上面26から突出するようにして、当該剪断キー8の他端側56が上面26側の凹所55に嵌入されてなる免震支承6を準備する。
【0023】
この準備された免震支承6の下面22を、アンカーボルト3により橋脚2の上面4に固定された下側シュー5の上面24にボルト23により固定し、これにより、免震支承6をその下面22側において橋脚2に固定する。なお、この固定の際にボルト23を用いる代わりに、溶接により免震支承6の下面22を下側シュー5の上面24に固定してもよい。この固定においてボルト23を用いる場合には、下側シュー5にボルト螺合孔を、下側フランジ10にボルト挿通孔を夫々予め形成しておく。
【0024】
一方、免震支承6の上面26から突出する剪断キー8の一端側34の形状に相補的な形状を有した凹所35を下面32に有した橋桁7を、プレキャストにより製造して準備する。
【0025】
この準備された橋桁7を、図2に示すように、クレーンなどにより免震支承6上に配し、免震支承6の上面26から突出する剪断キー8の一端側34と橋桁7の凹所35とがほぼ対面するようにして、免震支承6上に配された橋桁7を下降させて、図3に示すように、橋桁7の下面32を免震支承6の上面26に配する。
【0026】
橋桁7の下面32を免震支承6の上面26に配する前に、剪断キー8の一端側34の表面58及び橋桁7の凹所35の表面61の少なくとも一方に、グリスなどの低摩擦剤を塗布しておいてもよい。
【0027】
その後、上側フランジ12の上面26をボルト27により橋桁7の上側シュー28の下面29に固着し、これにより免震支承6の上面26を、上側シュー28の下面29に固定して、免震支承6を橋桁7に固定する。ボルト27による固定ができるように、上側シュー28にボルト螺合孔を、上側フランジ12にボルト挿通孔を予め形成しておく。なお、この固定の際にボルト27を用いる代わりに、溶接により免震支承6の上面26を上側シュー28の下面29に固定してもよい。以上の架設方法により、図1に示す橋1を構築することができる。
【0028】
以上の架設方法では、免震支承6の支承中心71と橋桁7の支点中心72とにおいて水平方向の若干の誤差Δ、例えば±10mm程度の誤差Δがあっても、剪断キー8の一端側34の橋桁7の凹所35への嵌合において、橋桁7の支点中心72が免震支承6の支承中心71に一致するように、橋桁7が水平方向Hに移動されて、橋桁7の支点中心72の位置が調整される。なお、調整後には、図3に示すように、免震支承6には、橋桁7の自重に従う水平方向H(剪断方向)の撓みが生じる。免震支承6及び橋桁7等の大きさ、自重にもよるが、上記のような若干の誤差Δに基づく場合には、この撓みは問題とならない。
【0029】
本架設方法によれば、橋桁7の架設前に免震支承6を橋脚2に固定し得るため、この固定作業を広いスペースで行うことができ、ボルト締め作業、場合により溶接作業を極めて簡単、容易且つ迅速に行うことができ、また溶融亜鉛メッキ処理などをも容易に行うことができる。更に、多数の仮受けジャッキ、ジャッキ反力ジグ等を用いることなしに橋桁7を橋脚2に架設することができるので、時間短縮、コスト低下を大幅に達成することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、支承の水平方向の可撓性を利用して、架設後の多少の水平方向の支承の撓みを許容し、而して、支承と橋桁との位置合わせを簡単に行い得、しかも架設時間を短縮することができ、著しいコスト低減を図ることのできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施例の架設方法を用いて構築された橋の断面図である。
【図2】図1に示す橋の構築に用いられる架設方法の説明図である。
【図3】図1に示す橋の構築に用いられる架設方法の説明図である。
【符号の説明】
2 橋脚
7 剪断キー
6 橋桁
8 免震支承
Claims (6)
- 下部構造体の上面に下側シューを固定する段階と、上面及び下面を有しており、少なくとも水平方向に可撓な支承であって、先端に向かうに従って徐々に縮径されていると共に円錐状又は截頭円錐状に形成されている剪断キーの一端側が該上面から突出するようにして、当該剪断キーの他端側が上面側に嵌入されてなる支承の下面を下側シューの上面に固定して、当該支承をその下面側において下部構造体に固定する段階と、コンクリート製の橋桁本体、この橋桁本体の下面に、下面が露出して埋設、固定された上側シュー及び橋桁本体内に埋設されたガイド部材を具備する橋桁であって、支承の上面から突出する剪断キーの一端側の形状に相補的な形状を有すると共に上側シュー及びガイド部材に互いに連通されて形成された貫通孔からなる凹所を下面に有する橋桁を予め準備する段階と、この準備された橋桁を支承上に配する段階と、支承の上面から突出する剪断キーの一端側と橋桁の凹所とがほぼ対面するようにして、支承上に配された橋桁を下降させて、橋桁の下面を支承の上面に配する段階と、その後、支承の上面を上側シューの下面に固定し、支承を橋桁に固定する段階を具備しており、剪断キーの少なくとも一端側の表面及び橋桁の凹所の表面の少なくとも一方は、低摩擦材により被覆されている橋桁架設方法。
- 下部構造体の上面に下側シューを固定する段階と、上面及び下面を有しており、少なくとも水平方向に可撓な支承であって、先端に向かうに従って徐々に縮径されていると共に円錐状又は截頭円錐状に形成されている剪断キーの一端側が該上面から突出するようにして、当該剪断キーの他端側が上面側に嵌入されてなる支承の下面を下側シューの上面に固定して、当該支承をその下面側において下部構造体に固定する段階と、コンクリート製の橋桁本体、この橋桁本体の下面に、下面が露出して埋設、固定された上側シュー及び橋桁本体内に埋設されたガイド部材を具備する橋桁であって、支承の上面から突出する剪断キーの一端側の形状に相補的な形状を有すると共に上側シュー及びガイド部材に互いに連通されて形成された貫通孔からなる凹所を下面に有する橋桁を予め準備する段階と、この準備された橋桁を支承上に配する段階と、支承の上面から突出する剪断キーの一端側と橋桁の凹所とがほぼ対面するようにして、支承上に配された橋桁を下降させて、橋桁の下面を支承の上面に配する段階と、その後、支承の上面を上側シューの下面に固定し、支承を橋桁に固定する段階を具備しており、橋桁の下面を支承の上面に配する段階前に、剪断キーの一端側の表面及び橋桁の凹所の表面の少なくとも一方に、低摩擦剤を塗布する段階を具備する橋桁架設方法。
- 橋桁は、プレキャストされてなる請求項1又は2に記載の橋桁架設方法。
- 支承は、免震支承又は反力分散ゴム支承である請求項1から3のいずれか一項に記載の橋桁架設方法。
- 下部構造体は、橋脚又は橋台である請求項1から4のいずれか一項に記載の橋桁架設方法。
- 橋脚又は橋台と、橋脚又は橋台の上面に固定された下側シューと、上面及び下面を有していると共に少なくとも水平方向に可撓な支承と、先端に向かうに従って徐々に縮径された円錐状又は截頭円錐状の一端側が支承の上面から突出するようにして、他端側が支承の上面側に嵌入されてなる剪断キーと、コンクリート製の橋桁本体、この橋桁本体の下面に、下面が露出して埋設、固定された上側シュー、橋桁本体内に埋設されたガイド部材並びに支承の上面から突出する剪断キーの一端側の形状に相補的な形状を有すると共に上側シュー及びガイド部材に互いに連通されて形成された貫通孔からなり、且つ橋桁本体の下面に設けられていると共に剪断キーの一端側が嵌入された凹所を有している橋桁とを具備しており、支承は、その下面で下側シューの上面に固定されてその下面側において橋脚又は橋台に固定されており、その上面で上側シューの下面に固定されて橋桁に固定されており、剪断キーの少なくとも一端側の表面は、低摩擦材により被覆されている橋。
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