JP3855579B2 - 車両用制振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、車両の振動部材における振動を低減する車両用制振装置に係り、例えば、自動車のサスペンションアーム,サブフレーム,ボデーパネル,エンジンユニット,マウントブラケット,排気系部材などの振動部材に適用されることにより有効な制振効果を発揮し得る、新規な構造の車両用制振装置と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、自動車等の車両において問題となる振動を低減する手法としては、(1)振動部材にマス材を固設するマスダンパや、(2)振動部材にバネ材を介してマス材を連結支持せしめるダイナミックダンパ、更に、(3)振動部材の表面にシート状弾性材を貼着した制振材が、知られている。ところが、上記(1)マスダンパと(2)ダイナミックダンパは、何れも、大きなマス材の質量が必要になることに加えて、有効な制振効果の発揮される周波数域が狭いという問題があった。また、上記(3)制振材は、広い貼着面積が必要になると共に、重量が嵩むという問題があった。更に、上記(2)ダイナミックダンパと(3)制振材は、制振効果の温度依存性が高いために、目的とする制振効果を安定して得ることが難しいという問題もあったのである。
【0003】
そこで、本出願人は、先の国際出願(PCT/JP98/05530)において、振動部材に固定されるハウジングに対して、隙間を隔てて非接着で相対変位可能に独立マス部材を配設せしめて、振動入力時に、かかる独立マス部材を、ゴム等の弾性材からなる当接面によって、ハウジングに当接させることにより、当接時における滑り摩擦と衝突によるエネルギ損失を利用して制振効果を得るようにした、新規な構造の車両用制振装置を提案した。このような構造の車両用制振装置においては、小さなマス質量によって、広い周波数域に亘る振動に対して有効な制振効果を得ることが出来るのである。
【0004】
ところで、かかる先の国際出願に記載された車両用制振装置において、発揮される制振効果は、独立マス部材の質量と、独立マス部材とハウジングの当接部位における反発係数と、独立マス部材とハウジングの当接面間の隙間寸法との影響を受けることから、有効な制振効果を得るためには、それらの諸元を精度良く設定することが必要となる。更に、かくの如き車両用制振装置において、有効な制振効果を得るためには、振動入力時に独立マス部材がハウジングに対して離隔と当接を繰り返して打撃を与えることが必要である。
【0005】
ところが、本発明者等が多数の実験を行なって検討したところ、独立マス部材の形状等によって、振動入力時におけるハウジングに対する離隔/当接状態にばらつきがあり、同一の質量や反発係数,対向面間の隙間寸法等の設定をした場合でも、発揮される制振効果に差異のある場合のあることが明らかとなった。
【0006】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、振動入力時に、独立マス部材がハウジングに対して離隔/当接状態となり易く、独立マス部材のハウジングに対する打撃作用に基づく制振効果が一層効果的に発揮され得る、新規な構造の車両用制振装置を提供することにある。
【0007】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様で採用される各構成要素は、何れも、可能な限り任意の組み合わせで採用することが出来る。また、本発明の態様および技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0008】
すなわち、本発明者等が多くの実験と検討を行った結果、平板形状の独立マス部材を採用することによって、球形状や円形ブロック形状等の独立マス部材を採用した場合に比して、振動入力時における独立マス部材のハウジングに対する打撃に基づく制振効果がより有効に生ぜしめられることが明らかとなったのであり、本発明は、かかる知見に基づいて、本発明者等が、更に詳細な実験と検討を加えた結果、完成されたものである。
【0009】
車両用制振装置に関する本発明の第一の態様は、剛性材により形成されて、振動部材に固定的に設けられたハウジングに対して収容空間を形成して、該収容空間には幅方向寸法よりも長手方向寸法が大きい矩形の平板形状の独立マス部材を非接着で飛び跳ね変位可能に収容配置することにより、該独立マス部材の板厚方向の両面を、それぞれ平坦面形状としたハウジング内面に対向位置せしめると共に、該独立マス部材の長手方向両端部分だけにショアD硬さ80以下のゴム弾性体からなる突出部分を板厚方向両側に突出形成して、これら板厚方向両側の突出部分の突出先端面を平坦面形状とし、該独立マス部材が該突出部分において該ハウジングに対して弾性的に当接せしめられるようにすると共に、該独立マス部材には幅方向中心軸まわりのピッチ変位や長手方向中心軸まわりのロール変位が生ぜしめられるようにして、かかるピッチ変位やロール変位によって該突出部分の外周縁部で部分的に該ハウジングに対して弾性的に当接せしめられるようにすると共に、該独立マス部材の突出部分の突出先端面と該ハウジングとの当接面における対向面間の隙間寸法を0.1〜0.8mmとした車両用制振装置を、特徴とする。
【0010】
本発明者等による実験に基づけば、平板形状の独立マス部材においては、振動入力時におけるハウジングに対する相対変位が発生し易く、独立マス部材のハウジングに対する打撃に基づく制振効果が効果的に発揮され得ることが明らかとなった。なお、理由は未だ十分に明らかでないが、平板形状の独立マス部材を、防振すべき主たる振動入力方向が板厚方向となる状態で配設した場合には、球形状等の独立マス部材に比して、振動入力方向に直角な面内での重量分布が広く、きれいに並進振動し難いことから、その変位形態として、振動入力方向(板厚方向)への並進的なバウンシング変位だけでなく、幅方向中心軸まわりのピッチ変位や、長手方向中心軸まわりのロール変位も生ぜしめられて、全体的に、入力振動に対応して動き易いことによるものと考えられる。
【0011】
そして、本態様においては、単に平板形状の独立マス部材を採用するだけでなく、独立マス部材とハウジングにおける対向面を、突出部分で部分的に当接させるようにしたことによって、振動入力時に、独立マス部材を一層動き易く為し得たのであり、それによって、一層優れた制振効果を得ることが可能となったのである。
【0012】
なお、本態様において、ハウジングは、例えば、防振対象である振動部材と別体形成されて該振動部材に固定的に取り付けられる金属等の剛性材で形成されたケース等として提供され得るが、その他、振動部材を中空構造として、振動部材自体でハウジングを構成したり、或いは振動部材をハウジングの一部に利用することも可能である。また、かかるハウジングは、例えば鉄,アルミニウム合金等の金属材や合成樹脂材等で形成することが可能であり、独立マス部材を支持するための剛性と制振効果を有利に確保するために、弾性率が5×104 MPa以上の剛性材が好適に採用される。また、独立マス部材は、その全体をゴム弾性体や合成樹脂材、或いはそれらの発泡材で形成したり、補強的に金属等の剛性材を固着することも可能であるが、その他、独立マス部材を金属や石等の高比重の剛性材で形成することも可能である。更に、弾性的な当接面を形成する突出部分は、当接音(打音)の軽減と制振効果の向上のために、ASTM規格D2240のショアD硬さが好ましくは80以下、より好ましくは20〜40とされる。また、独立マス部材とハウジングの弾性的な当接面は、打音の低減と制振効果の向上のために、弾性率が1〜104 MPa、より好ましくは1〜103 MPaで、損失正接(tanδ)が好ましくは10-3以上、より好ましくは0.01〜10とされる。更に、独立マス部材とハウジングの対向面間における隙間寸法は、当接音の軽減と制振効果の向上のために、0.1〜0.8mm、より好ましくは0.1〜0.5mmとされる。なお、本態様においては、ハウジングを、弾性率が5×103 〜5×104 MPaである合成樹脂材等の剛性材によって形成することも可能であり、例えば、打音の低減や制振特性のチューニングなどに有効である。また、そのような比較的剛性が低いハウジングを採用する場合には、独立マス部材とハウジングの弾性的な当接面における弾性率をハウジングの弾性率よりも低くすることが望ましく、より好適には、かかる当接面の弾性率が1〜102 MPaとされることとなり、それによって、ハウジングの強度や耐久性が有利に確保されると共に、例えば低周波数域の制振効果の向上等も可能となる。
【0013】
また、独立マス部材に突設される突出部分は、その突出高さや数、形状、大きさ等も特に限定されるものでないが、突出部分が形成された独立マス部材とハウジングの対向面においては、突出部分だけで独立マス部材とハウジングの当接が為され得て、突出部分以外の部分が当接しないように、その形状や突出高さ、位置等が、独立マス部材の形状や大きさ、質量等を考慮して適宜に設定される。更にまた、かかる突出部分の材質は特に限定されるものでなく、ゴム弾性体や合成樹脂等の弾性材で形成することが可能である。更に、かかる突出部分は、独立マス部材の板厚方向両側において、該独立マス部材とハウジングの対向面間にそれぞれ形成することが望ましいが、独立マス部材の板厚方向の何れか一方の側の当接面だけに突出部分を形成しても良い
【0014】
さらに、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従う構造とされた車両用制振装置において、板厚方向での前記ハウジング内面に対する対向面が平坦面とされた平板形状の金属マスと、該金属マスの表面に被着された弾性材層とによって、前記独立マス部材を構成すると共に、該弾性材層によって、前記突出部分を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、突出部分を備えた高比重な独立マス部材、即ちコンパクトで質量の大きい独立マス部材を容易に得ることが可能となる。なお、弾性材層は、特にゴム弾性体によって有利に形成され得、例えば、加硫成形型を用いて射出成形等で形成したり、液状ゴムを金属マスにコーティングして形成することによって、金属マスに対して固定的に形成することも可能であるが、金属マスに対して取外し可能なキャップ形状や外挿リング形状等をもって形成することも可能である。
【0015】
また、本発明に従う構造とされた車両用制振装置においては、矩形の平板形状の独立マス部材を採用して、その長手方向両端部分でハウジングに当接させることにより、振動入力時におけるマス部材のハウジングに対する飛び跳ね的な変位を一層有利に生ぜしめることが可能となるのである
【0016】
更にまた、独立マス部材の質量は、重量増加を抑えつつ、有効な制振効果を得るために、前記振動部材の質量の5〜10%に設定することが望ましい。
【0017】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0018】
先ず、図1〜2には、本発明の第一の実施形態としての自動車用制振装置10が、示されている。この制振装置10は、複数の独立した収容空所12を備えた箱体構造を有するハウジング14に対して、各収容空所12に独立マス部材16を収容配置せしめた構造とされている。そして、かかる制振装置10は、自動車のボデー等の防振すべき振動部材(図示せず)に対して、ハウジング14が固着されることによって、装着されるようになっている。なお、以下の説明において上下方向とは、原則として、図1中の上下方向をいうものとする。
【0019】
より詳細には、ハウジング14は、ハウジング本体18と複数の蓋体20,20によって構成されている。ハウジング本体18は、全体として厚肉の矩形平板形状を有しており、長手方向に矩形状の一定断面で貫通している貫通孔22が複数個(本実施形態では3個)形成されている。なお、これらの貫通孔22は、相互に平行に形成されており、一平面上に並設されている。また、ハウジング本体18の板幅方向両面には、それぞれ2つのL形ブラケット金具24がボルト26で固着されており、これら合計4つのL形ブラケット金具24によって、ハウジング14が、図示しない自動車の振動部材に対して固定的に取り付けられるようになっている。なお、本実施形態におけるハウジング本体18は、アルミニウム合金の押出成形品を押出方向で適当な長さに切断することによって製作されており、弾性率が5×104 以上の剛性をもって形成されている。
【0020】
また、蓋体20は、ハウジング本体18の貫通孔22の断面形状に対応した矩形平板形状を有しており、各貫通孔22の両側開口部に対して、それぞれ、蓋体20が圧入固定されている。そして、このように各貫通孔22の両側開口部に一対の蓋体20,20が圧入固定されて、各貫通孔22の両端部が閉塞されることにより、互いに独立した複数の収容空所12が、ハウジング14内に形成されている。なお、本実施形態における蓋体20は、鉄等の鋳造や合成樹脂の射出成形などによって製作されている。
【0021】
一方、独立マス部材16は、図3にも示されているように、マス金具28と当接ゴム弾性体30から構成されている。マス金具28は、矩形平板形状を有しており、高比重で剛性の大きい鉄系金属によって形成されている。そして、このマス金具28の長手方向両端部分において、それぞれ、一対の当接ゴム弾性体30,30が、両面に被着形成されている。これらの当接ゴム弾性体30は、一定厚さで広がる矩形平板形状を有しており、その平面形状は、マス金具28の幅方向の全面を覆うと共に、マス金具28の長手方向端部から略1/4の長さ部分だけを覆う大きさとされている。
【0022】
なお、このような独立マス部材16は、例えば、マス金具28と当接ゴム弾性体30を、予め別々に製作した後、マス金具28の表裏面に4枚の当接ゴム弾性体30を接着することによって形成することも可能であるが、その他、例えば、予め製作したマス金具28を、当接ゴム弾性体30の成形型の成形キャビティにセットして、所定のゴム材料を成形キャビティに射出充填した後、加硫処理を施すことによって、二対の当接ゴム弾性体30が、その成形と同時にマス金具28に加硫接着された一体加硫成形品として、形成され得る。また、当接ゴム弾性体30の材質としては、特に限定されるものでなく、天然ゴム等のジエン系ゴムや塩素系ゴム等の各種のゴム弾性材が採用可能であるが、特に、本実施形態では、、ショアD硬さが20〜40のゴム弾性材が採用されている。
【0023】
そして、このような構造とされた独立マス部材16は、ハウジング14の各収容空所12に対して、それぞれ一つずつ収容配置されており、かかる収容状態下、独立マス部材16と収容空所12の周壁面の間には、独立マス部材16の全周囲にわたって隙間32が形成されている。即ち、独立マス部材16の幅寸法が、収容空所12の幅寸法より僅かに小さくされていると共に、独立マス部材16の高さ寸法、換言すれば表裏両側の当接ゴム弾性体30,30の表面間寸法が、収容空所12の高さ寸法より僅かに小さくされており、更に、独立マス部材16の長さ寸法が、収容空所12の長さ寸法より僅かに小さくされている。それによって、独立マス部材16を収容空所12の中央に位置せしめた状態下で、独立マス部材16の幅方向両側と長手方向両側に、それぞれ所定の隙間:d1,d2が形成されると共に、独立マス部材16の各当接ゴム弾性体30の表面が収容空所12の上下壁面に対して、それぞれ、隙間寸法:2δの半分の大きさの隙間寸法:δを隔てて対向位置せしめられるようになっている。なお、ハウジング14の静置状態下では図1に示されているように、重力の作用で独立マス部材16が収容空所12内の下端に位置せしめられて、独立マス部材16の上方に隙間寸法:2δの隙間が生ぜしめられることとなる。
【0024】
特に、本実施形態では、ハウジング14の板厚方向の振動に対して有効な制振効果を得るために、独立マス部材16の板厚方向の隙間寸法:2δが、2δ=0.1〜0.8mm、好ましくは0.1〜0.5mmに設定されており、独立マス部材16を収容空所12の高さ方向中央に位置せしめた状態下で、独立マス部材16の板厚方向両側において、半分の大きさの隙間(δ=0.05〜0.4mm)が生ぜしめられるようになっている。また、本実施形態では、防振すべき振動入力方向である上下方向において、各独立マス部材16のハウジング14に対する当接面積、即ち独立マス部材16における長手方向両側の当接ゴム弾性体30,30の表面積の合計値が、独立マス部材16の上下方向の投影面積の1/2以下、より好ましくは1/3以下となるように、当接ゴム弾性体30の大きさが設定されている。更に、独立マス部材16の質量は、全ての独立マス部材16の総計値が、振動部材の質量の5〜10%となるように設定されている。
【0025】
このような構造とされた制振装置10においては、振動入力時に独立マス部材16がハウジング14に対して相対変位せしめられて、独立マス部材16がハウジング14に打ち当たることにより、滑り摩擦作用や打撃作用によって制振効果が発揮されるのである。また、このような独立マス部材16のハウジング14に対する打ち当たりに基づく制振効果は、明確な共振作用に基づくものでないことから、広い周波数域にわたって有効な制振効果を得ることが出来ると共に、温度による特性変化も抑えられて安定した制振効果を得ることが出来る。
【0026】
そこにおいて、上述の如き制振装置10においては、独立マス部材16が、防振すべき主たる振動の入力方向となる上下方向に対して直交する平面内で広がる矩形平板形状とされていることから、収容空所12に収容されてハウジング14で支持せしめられた状態下で、振動入力方向に直角な水平面内での重量分布が広くされている。これにより、上下方向の振動入力時に、独立マス部材16には、振動入力方向へのバウンシング変位に加えて、幅方向中心軸まわりのピッチ変位や、長手方向中心軸まわりのロール変位が生ぜしめられて、全体的に、飛び跳ね変位が効率的に生ぜしめられることとなる。従って、振動入力時に、独立マス部材16がハウジング14に対して効率的に打ち当たることとなり、以て、優れた制振効果が発揮され得るのである。
【0027】
また、特に本実施形態の制振装置10では、防振すべき主たる振動の入力時に、独立マス部材16は、長手方向両端部分に被着された両側の当接ゴム弾性体30の表面のみで、ハウジング14に当接されることとなり、主たる振動入力方向において、独立マス部材16のハウジング14に対する当接面が、それらの対向面の一部分だけに設定されていることから、振動入力時における独立マス部材16の飛び跳ね変位がより積極的に生ぜしめられて、独立マス部材16のハウジング14への当接に基づく制振効果の更なる向上が図られ得るのである。
【0028】
さらに、本実施形態では、独立マス部材が複数に分割されて、各独立マス部材16の単体での質量が小さくされていることによっても、振動入力時における独立マス部材16の飛び跳ね変位が一層生ぜしめられ易くされて、更なる制振効果の向上が図られている。
【0029】
次に、図4〜6には、それぞれ、上記第一の実施形態において採用され得る独立マス部材の別の実施形態が示されている。なお、これらの独立マス部材は、第一の実施形態と同様なハウジングに組付けられることにより、目的とする制振装置を構成するものであることから、ハウジングについては、図示および説明を省略する。また、以下の実施形態において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0030】
すなわち、図4に示された第二の実施形態としての独立マス部材34は、第一の実施形態の独立マス部材と同じ矩形平板形状のマス金具28を有していると共に、かかるマス金具28の長手方向両端部分に、弾性キャップ部材36,36が取り付けられている。この弾性キャップ部材36は、全体として矩形袋形状を有しており、マス金具28の端部形状に対応した中空穴38を備えている。また、弾性キャップ部材36の周壁部は、全体に亘って略一定の肉厚寸法とされており、特に、マス金具28の表裏板面に重ね合わされた部分は、一定厚さの平板形状とされていることによって、それぞれ平坦な当接面40,40が形成されている。
【0031】
換言すれば、本実施形態の弾性キャップ部材36は、第一の実施形態においてマス金具28の表裏両面に被着された一対の当接ゴム弾性体30,30における各外周縁部を、マス金具28の外周面において板厚方向で相互に一体的に連結せしめた構造とされている。
【0032】
そして、このような本実施形態の弾性キャップ部材36を備えた独立マス部材34も、第一の実施形態と同様なハウジングに収容配置されることによって制振装置を構成し得るのであり、板厚方向の振動に対して、飛び跳ね変位に基づくハウジングへの当接によって、有効な制振効果を発揮し得るのである。
【0033】
また、特に本実施形態の独立マス部材34においては、弾性キャップ部材36をマス金具28と別体形成してマス金具28に後から装着することも出来るのであり、それ故、例えば、弾性キャップ部材36だけを交換することも可能となる。
【0034】
次に、図5に示された第三の実施形態としての独立マス部材42は、薄肉板部44と厚肉板部46,46からなるマス金具48を備えている。かかるマス金具48は、平面形状は第一の実施形態と同じ長手矩形形状とされているが、その厚さ寸法が長手方向で異ならされており、中央部分が薄肉板部44とされていると共に、長手方向両端部分が厚肉板部46,46とされている。これらの厚肉板部46,46は、薄肉板部44から表裏両面に突出せしめられており、また、それら各厚肉板部46の表裏両面は、板厚方向に直交する平坦面とされている。
【0035】
また、マス金具48の表面には、その全体に亘って当接ゴム層50が被着されており、マス金具48の全体が当接ゴム層50によって覆われている。また、この当接ゴム層50は、厚さ寸法が全体に亘って略一定とされている。
【0036】
これにより、独立マス部材42には、長手方向両端部において、一対の厚肉板部46,46と、それら厚肉板部46,46の表面に被着形成された当接ゴム層50によって、独立マス部材42の板厚方向に突出してハウジングに当接せしめられる突出部分が構成されている。また、かかる突出部分のハウジングへの当接面は、当接ゴム層50によって、ショアD硬さが20〜40とされている。
【0037】
従って、このような本実施形態の独立マス部材42も、第一の実施形態と同様なハウジングに収容配置されることによって制振装置を構成し得るのであり、板厚方向の振動に対して、飛び跳ね変位に基づくハウジングへの当接によって、有効な制振効果を発揮し得るのである。
【0038】
また、特に本実施形態の独立マス部材42は、マス金具48の長手方向両端部分が厚肉とされていることから、第一の実施形態の独立マス部材に比して、独立マス部材のサイズを変更することなく、質量を大きく確保することが可能となる。
【0039】
さらに、図6に示された第三の実施形態としての独立マス部材52は、第一の実施形態の独立マス部材と同じ矩形平板形状のマス金具28を有していると共に、かかるマス金具28における長手方向両端部分の表裏面には、それぞれ、当接ゴム弾性体54が被着形成されている。
【0040】
これらの当接ゴム弾性体54は、何れも、全体的には第一の実施形態と同様な一定厚さの矩形平板形状を有しているが、その中央部分において、板幅方向に連続して乃至は不連続に延びる凹所形態の切欠溝56が形成されている。
【0041】
そして、このような本実施形態の当接ゴム弾性体54を備えた独立マス部材52も、第一の実施形態と同様なハウジングに収容配置されることによって制振装置を構成し得るのであり、板厚方向の振動に対して、飛び跳ね変位に基づくハウジングへの当接によって、有効な制振効果を発揮し得るのである。
【0042】
そこにおいて、特に本実施形態の独立マス部材52においては、当接ゴム弾性体54に切欠溝56が適当な形状や大きさで形成されていることから、かかる切欠溝56の形状や大きさ、数、位置等を適宜に調節することにより、独立マス部材52のハウジングに対する当接部の弾性特性や飛び跳ね特性を容易に変更調節することが出来るのであり、それ故、制振装置の制振効果の周波数特性等を容易にチューニングすることが可能となるのである。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0044】
例えば、前記実施形態では、一つのハウジングに対して複数の独立マス部材が組み付けられていたが、一つのハウジングに単一の独立マス部材を組み付けることも可能であり、また、一つの振動部材に対して、一つの制振装置を装着する他、複数の制振装置を装着しても良い。
【0045】
また、独立マス部材の配設領域は、必ずしも外部空間から密閉状に仕切る必要はない。
【0046】
更にまた、前記実施形態では、何れも、矩形平板形状の独立マス部材を採用した場合について説明したが、本発明においては、その他、多角形平板形状や円形平板形状等、各種の平面形状を有する平板状のマス部材を採用することが可能である。
【0047】
さらに、前記実施形態では、独立マス部材とハウジングの間の隙間寸法は、当接音(打音)の低減のために独立マス部材の全周囲において0.1〜0.8mmに設定されることが望ましいが、本発明において、防振すべき振動入力方向以外における独立マス部材とハウジングの間の隙間寸法は、0.8mm以上であっても、特に問題ない。
【0048】
加えて、前記実施形態では、何れも、本発明を自動車用制振装置に適用したものの具体例を示したが、本発明は、自動車以外の各種車両用制振装置にも適用可能である。
【0049】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0050】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた車両用制振装置においては、平板形状の独立マス部材を採用すると共に、該独立マス部材のハウジングに対する対向面を、突出部分で部分的に当接させるようにしたことにより、振動入力時に、独立マス部材が有利に飛び跳ね変位せしめられるのであり、それによって、一層優れた制振効果が発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としての自動車用制振装置を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面に相当する斜視図である。
【図3】図1に示された制振装置を構成する独立マス部材の斜視図である。
【図4】本発明の第二の実施形態としての独立マス部材を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態としての独立マス部材を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第四の実施形態としての独立マス部材を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 自動車用制振装置
12 収容空所
14 ハウジング
16,34,42,52 独立マス部材

Claims (3)

  1. 剛性材により形成されて、振動部材に固定的に設けられたハウジングに対して収容空間を形成して、該収容空間には幅方向寸法よりも長手方向寸法が大きい矩形の平板形状の独立マス部材を非接着で飛び跳ね変位可能に収容配置することにより、該独立マス部材の板厚方向の両面を、それぞれ平坦面形状としたハウジング内面に対向位置せしめると共に、該独立マス部材の長手方向両端部分だけにショアD硬さ80以下のゴム弾性体からなる突出部分を板厚方向両側に突出形成して、これら板厚方向両側の突出部分の突出先端面を平坦面形状とし、該独立マス部材が該突出部分において該ハウジングに対して弾性的に当接せしめられるようにすると共に、該独立マス部材には幅方向中心軸まわりのピッチ変位や長手方向中心軸まわりのロール変位が生ぜしめられるようにして、かかるピッチ変位やロール変位によって該突出部分の外周縁部で部分的に該ハウジングに対して弾性的に当接せしめられるようにすると共に、該独立マス部材の突出部分の突出先端面と該ハウジングとの当接面における対向面間の隙間寸法を0.1〜0.8mmとしたことを特徴とする車両用制振装置。
  2. 板厚方向での前記ハウジング内面に対する対向面が平坦面とされた平板形状の金属マスと、該金属マスの表面に被着された弾性材層とによって、前記独立マス部材を構成すると共に、該弾性材層によって、前記突出部分を形成した請求項1に記載の車両用制振装置。
  3. 前記独立マス部材の質量が、前記振動部材の質量の5〜10%とされている請求項1又は2に記載の車両用制振装置。
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