JP3852002B2 - 感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エーテル結合を有するスルホンアミド誘導体を増感剤として用いた感熱記録材料に関して、発色感度、発色濃度に優れるとともに、耐熱地肌かぶり性、耐可塑剤性などの保存安定性にも優れたものを提供する。
【0002】
【発明の背景】
電子供与性の無色染料である発色剤と電子受容性の顕色剤との発色反応を利用した記録材料としては、感熱紙、ノーカーボン紙などがよく知られている。なかでも、感熱記録材料は比較的簡単な装置により鮮明な記録が得られるという優れた利点により、ファクシミリ、計測用記録計、コンピュータ−端末機、ラベル印刷機、乗車券等の発券機、プリンターなどの様々な分野で広範囲に使用されている。
これらの感熱記録材料は、基本的に、発色剤、顕色剤、発色感度向上用の増感剤、顔料などの構成成分を、接着剤を添加した系で別々に粒度制御した微粉砕の水分散液として調製した後に混合して、プラスチック、紙、合成紙などの支持体上に塗布乾燥し、感熱発色層として仕上げたものである。
【0003】
上記感熱記録材料は地肌が白く、低エネルギーでの発色感度と発色濃度が高いこと、さらには様々な環境下での画像の保存安定性に優れることが要求される。
増感剤はこれらの要求に応えるべく、顕色剤と共に感熱記録材料に含有されるが、一般に、増感剤は発色感度と濃度向上には大きく寄与するが、その反面、経時により記録画像の濃度低下や地肌かぶりが発生し易い一因にもなっている。
また、近年ではこれらの感熱記録材料にも環境保全への配慮が求められている。例えば、感熱記録用の顕色剤として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)がファクス用として主に使用されて来たが、環境ホルモンの懸念があるため、これに替わる顕色剤が要望されている。
その有力候補の一つが4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン(慣用名:ビスフェノールS)であり、環境への安全性と製造コストの点で有望である。しかしながら、ビスフェノールSは他の顕色剤に比べて融点が248.5℃と非常に高く、従来の増感剤によっても発色感度、記録の保存性の両立は充分とはいえない。このため、より増感効果の高い増感剤が求められており、特に、顕色剤がビスフェノールSのようなアリールスルホニル骨格を有する化合物である場合に優良な増感効果が得られる増感剤の開発が要請されている。
【0004】
【従来技術】
上記増感剤の役割は、一般に、電子供与性の無色染料であるロイコ染料(即ち、発色剤)と電子受容性の酸性物質である顕色剤を熱により発色反応させる際に、これらの融点より低い温度で溶け、溶融時の粘度が低く、発色剤と顕色剤を短時間のうちに溶解させることにより、迅速な発色感度と濃い画像形成を促進することにある。
この場合、増感剤の融点が低いと、発色感度、濃度が良好になる反面、地肌かぶりが起こり易く、逆に、増感剤の融点が高いと、耐熱地肌かぶり性が改善される反面、発色感度、濃度が低下する傾向が少なくなく、発色感度と耐熱地肌かぶり性の両方を円滑に改善することは容易でない。
【0005】
発色剤と任意の顕色剤からなる感熱記録材料に増感剤を含有する従来技術は次の通りである。
(1)特開昭64−1583号公報(従来技術1)
増感剤としてシュウ酸ジベンジルなどのシュウ酸エステルを含有した感熱記録材料が開示されている。
(2)特開昭60−82382号公報(従来技術2)
優れた熱応答性と高速記録の際の画像濃度の鮮明化を目的として、発色促進剤にベンジルビフェニル類、アルキルベンジルビフェニル類、或はこれらの水素化物を含有した感熱記録材料が開示されている。
(3)特開昭60−56588号公報(従来技術3)
発色度の低下を来たすことなく、記録感熱向上効果を奏する目的で、増感剤として、1−フェノキシ−4−ナフトキシ(2)−ブタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)−エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1,4−ジ(4−メチルフェノキシ)ブタンなどの特定の熱可融性物質を含有した感熱記録材料が開示されている。
(4)特開昭58−87094号公報(従来技術4)
発色濃度、発色感度を改善し、カブリを防止する目的で、増感剤として、1−ベンジルオキシナフタレン、2−ベンジルオキシナフタレン、2−p−クロロベンジルオキシナフタレン、2−ベンゾイルオキシナフタレンなどのナフトール誘導体を含有した感熱記録材料が開示されている。
(5)特開昭58−98285号公報(従来技術5)
発色速度の向上を目的として、テレフタル酸ベンジルエステル及びイソフタル酸ベンジルエステルの少なくとも一種を増感剤として含有した感熱記録材料が開示されている。
【0006】
一方、特開平11−157220号公報(従来技術6)には、ビスフェノールSを顕色剤に用いた感熱記録材料において、発色感度の高さを確保し、保存安定性を改善する目的で、ジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジメチルジフェニルスルホンなどの特定のジフェニルスルホン誘導体を増感剤とし、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4−ベンジルオキシ−4−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホンなどの特定化合物を保存安定剤として含有したものが開示されている。
また、特開2001−225554号公報(従来技術7)には、保存性と地肌かぶりの改善を目的として、発色剤と顕色剤に加えて、p−トリルスルホニルアミノベンジル、p−フェニルスルホニルアミノジベンジルなどの特定化合物を増感剤として含有する感熱記録材料が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、各種感熱記録用の顕色剤に対して、上記特定の増感剤を選択することにより、低エネルギーでの発色感度と濃度が向上し、実用に供することが期待できる。しかしながら、発色感度と画像の保存性の両立は容易でないという前述の記載からも推定できるように、これらの従来技術は、耐熱地肌かぶり性や耐可塑剤性などの画像の保存安定性の点では充分に満足し得る水準ではなく、さらなる改良が要求されている。
本発明は、感熱記録材料において、発色感度と発色濃度を良好に確保しながら、さらに、耐熱地肌かぶり性や耐可塑剤性などの発色画像の保存安定性に優れた増感剤を開発することを技術的課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の中でも、特に従来技術6〜7には、増感剤として、特定のスルホン化合物、或はスルホンアミド化合物が開示されているが、本発明者らは、これらとは別種の化合物により上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、分子内にエーテル結合とスルホニルアミノ基の両方を含み、且つ、これらがアルキレン基を介して隣接状に位置した化合物、即ち、エーテル結合を有する特定のスルホンアミド誘導体を増感剤として、発色剤及び顕色剤よりなる感熱記録材料に含有すると、発色感度と発色濃度を良好に確保しながら、耐熱地肌かぶり性や耐可塑剤性という発色画像の保存安定性をも満足すべき水準に向上できること、さらには、アリールスルホニル骨格を有する化合物を顕色剤とする場合、これらの効果が増進され、とりわけ、顕色剤がビスフェノールSでは、より一層の増感効果が期待できることを見い出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明1は、無色染料である発色剤と顕色剤からなる感熱記録材料において、
下記の一般式(A)で表される分子内にエーテル結合を有するスルホンアミド誘導体
【化2】
(式(A)中、R1は無置換のベンゼン環、又はアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子の1種或は2種以上が1〜4個置換したベンゼン環である。但し、R1が当該置換ベンゼン環の場合、隣接する置換基同士が互いに結合してさらにベンゼン環又は脂環を形成しても良い;R2はC2〜C3アルキレン基である;R3はメチル基、ハロゲン原子であり、nは0〜2の整数である。)
を増感剤として含有することを特徴とする感熱記録材料である。
【0010】
本発明2は、上記本発明1の増感剤が、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、4−メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−プロピル)−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミドよりなる群から選ばれたエーテル結合を有するスルホンアミド誘導体の少なくとも一種であることを特徴とする感熱記録材料である。
【0011】
本発明3は、上記本発明1又は2において、顕色剤が、分子内にアリールスルホニル骨格を有する化合物であることを特徴とする感熱記録材料である。
【0012】
本発明4は、上記本発明3のアリールスルホニル骨格を有する化合物が、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホンであることを特徴とする感熱記録材料である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、分子中にエーテル結合を有するスルホンアミド誘導体を増感剤に用いた感熱記録材料である。
上記スルホンアミド誘導体は、上記一般式(A)で表され、基本的に、エーテル結合とスルホニルアミノ基がアルキレン基を介して隣接状に位置した構造を有する。
上式(A)のR1は無置換のベンゼン環、又は置換ベンゼン環である。
この置換ベンゼン環の場合、ベンゼン環に結合する置換基はアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子である。アルキル基としてはC1〜C4アルキルが、シクロアルキル基としてはC5〜C6シクロアルキルが、アルコキシル基としてはC1〜C4アルコキシルが各々好ましい。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。上記置換基の結合個数は1〜4個であり、置換基の個数が複数の場合、1種だけの置換基でベンゼン環に結合しても良いし、2種以上の置換基が結合しても良い。
また、置換ベンゼンの場合、隣接する置換基同士が互いに結合してさらにベンゼン環又は脂環を形成しても良く、例えば、R1は無置換又は置換のナフタレン環などを形成しても良いのである。
上式(A)のうち、エーテル結合の一端に位置するR2はエチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基である。
上記エーテル結合の他端に位置するベンジル基を構成するベンゼン環には、置換基R3が結合しても良いし、無置換でも良い(即ち、整数n=0である)。当該置換基R3はメチル基、ハロゲン原子であり、結合する個数nは1〜2個である。ハロゲンは塩素、臭素が好ましい。
【0014】
本発明の上記一般式(A)で表されるスルホンアミド誘導体の具体例としては、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−エチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−イソプロピル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−n−プロピル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−2,5−ジメチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−イソプロポキシ−ベンゼンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホン酸(2−ベンジルオキシ−エチル)−アミド、ナフタレン−2−スルホン酸(2−ベンジルオキシ−エチル)−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−スルホン酸(2−ベンジルオキシ−エチル)−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−スルホン酸(2−ベンジルオキシ−エチル)−アミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−クロロ−ベンゼンスルホンアミド、4−メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、2−メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、4−エチル−N−[2−(4−メチルベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、4−イソプロピル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、4−n−プロピル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、2,5−ジメチル−N−[2−(4−メチルベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、2,4,6−トリメチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、4−メトキシ−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、4−イソプロポキシ−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホン酸[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、ナフタレン−2−スルホン酸[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−スルホン酸[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−スルホン酸[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、4−クロロ−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、4−メチル−N−[2−(2−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、2−メチル−N−[2−(2−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2,5−ジメチル−ベンジルオキシ)−エチル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(3,4−ジメチル−ベンジルオキシ)−エチル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2,5ジメチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(3,4−ジメチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−エチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−イソプロピル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−プロピル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−2,5−ジメチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホン酸[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、ナフタレン−2−スルホン酸[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−スルホン酸[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−スルホン酸[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、4−クロロ−N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−エチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−イソプロピル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−プロピル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−2,5−ジメチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホン酸[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、ナフタレン−2−スルホン酸[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−スルホン酸[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−スルホン酸[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−アミド、4−クロロ−N−[2−(2−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2,4−ジクロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(3,4−ジクロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(2,4−ジクロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(3,4−ジクロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−プロピル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−プロピル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−プロピル)−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、4−メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミド、2-メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−プロピル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0015】
本発明のスルホンアミド誘導体のなかでは、特に、本発明2に示すように、下記の化合物が好ましい。
(1)構造式(a)で表されるN−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4-メチル−ベンゼンスルホンアミド
【化3】
(2)構造式(b)で表されるN−(2−ベンジルオキシ−エチル)−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド
【化4】
(3)構造式(c)で表される4−メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド
【化5】
(4)構造式(d)で表されるN−(2−ベンジルオキシ−プロピル)−ベンゼンスルホンアミド
【化6】
(5)構造式(e)で表されるN−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミド
【化7】
【0016】
本発明のスルホンアミド誘導体の合成方法は、特に限定されず任意の方法で合成できる。
そこで、その具体的な合成方法を、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドに例をとって、以下に詳述する。
先ず、第一段階の反応として、氷冷下で攪拌しながらp−トルエンスルホニルクロリドに対して、約2倍当量の2−アミノエタノールと、当量の水酸化ナトリウムと、少量の水及びアセトンをフラスコに仕込んだ後、p−トルエンスルホニルクロリドのアセトン溶液を徐々に滴下する。この際、発熱を伴うので注意を要する。反応終了後、アセトンと水を除去し、塩化ナトリウムを析出させる。次いで、塩化ナトリウムが溶解する程度の水を加え、分液して、食塩水で数回洗浄する。その後、希硫酸で弱酸性になるように中和する。再度、水でもう一度洗浄し、洗浄液が弱酸性であることを確認した後、エバポレータ−で脱水し、中間体のN−(2−ヒドロキシ−エチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドを得るのである。
次いで、上記中間体と等モルの水酸化ナトリウム、少量のジメチルスルホキシドとを反応器に入れ、氷冷下で攪拌しながら塩化ベンジルを少しずつ滴下により加える。氷冷下で4時間反応後昇温し、さらに70〜90℃で1時間反応させ、得られた反応混合物を50℃まで冷却し、水200gを加え1時間攪拌、結晶を析出させる。次いで結晶を濾過し、水洗浄後、90℃で乾燥して目的のN−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドの白色結晶物を得る。このものをさらにエタノールで再結晶し高純度の目的物を得る。
【0017】
上述のように、本発明のスルホンアミド誘導体の合成には、原料として、アミノアルコール類、芳香族系スルホニルハライド類、ベンジルハライド類を夫々使用するのである。
上記アミノアルコール類は、分子中に水酸基とアミノ基を共有する化合物であれば特に限定されず、具体例としては、2−アミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノールなどが挙げられる。
上記芳香族系スルホニルハライド類の具体例としては、ベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、o−トルエンスルホニルクロリド、4−エチルベンゼンスルホニルクロリド、4−イソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、4−n−プロピルベンゼンスルホニルクロリド、2,5−ジメチルベンゼンスルホニルクロリド、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルクロリド、4−メトキシベンゼンスルホニルクロリド、4−イソプロポキシベンゼンスルホニルクロリド、1−ナフタレンスルホニルクロリド、2−ナフタレンスルホニルクロリド、4−シクロヘキシルベンゼンスルホニルクロリド、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−スルホニルクロリド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−スルホニルクロリドなどが挙げられる。また、当該塩化物の代わりに臭化物、沃化物などが使用でき、その他スルホニルハライド基を有する化合物であれば特に制約されることはない。この芳香族系スルホニルハライド類の中では、特に、p−トルエンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、o−トルエンスルホニルクロリドが好ましい。
上記ベンジルハライド類は、無置換のベンジルハライドか、ベンゼン環にメチル基又はハロゲン原子が1〜2個結合したベンジルハライドであり、特に、ベンジルクロリド、p−メチルベンジルクロリドが好ましい。また、当該塩化物の代わりに臭化物を使用することもできる。
【0018】
本発明の感熱記録材料は、基本的に、無色染料である発色剤と、無色染料を発色させる顕色剤と、増感剤としての上記特定のスルホンアミド誘導体を必須成分として含有したものであり、また、必要に応じてその他の各種添加剤を使用できる。
上記発色剤は、トリアリールメタン系化合物、ジアリールメタン系化合物、ローダミン−ラクタム系化合物、フルオラン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ジビニルフタリド系化合物、ピリジン系化合物、スピロ系化合物、フルオラン系化合物、チアジン系化合物などがある。
これらの中でもフルオラン系化合物が好ましく、とりわけ、ジ−n−ブチルアノ−7−(2′−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−
6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2′−メトキシエチル)−N−イソブチルアミノ−6−メチルー7−アニリノフルオラン、3−N−(3′−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチルー7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3′−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオランなどが好ましい。
【0019】
上記顕色剤としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルフィド、4,4′−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N−(p−トルエンスルホニル)カルバモイル酸−p−クミルフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシ−フェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−2′,5′−ジメチル−ジフェニルスルホン、2−メチル−4−ヒドロキシ−ジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、2,4−ビス(p−メチルフェニルスルホニル)フェノール、2,4−ビス(フェニルスルホニル)−m−クレゾール、2,2′−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
本発明の増感剤は、分子内にアリールスルホニル骨格が含まれる化合物を顕色剤とする場合に増感効果が優れ、特に顕色剤がビスフェノールSである場合、発色感度と耐熱保存性が一層向上する。
本発明の感熱記録材料においては、品質を損なわない範囲で、本発明の増感剤の外に、さらに公知の増感剤を一種以上併用することができる。
公知の増感剤としては、ベヘニン酸、カプリン酸、オクチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、(核置換)安息香酸、(核置換)サリチル酸などの一塩基酸の亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、及び当該一塩基酸のアミド化合物、及び当該一塩基酸のアニリド化合物、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミド、β−ナフチルベンジルエーテル、4−ベンジロキシ安息香酸ベンジル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸−ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸−ジ−p−クロロベンジル、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、p−ベンジルビフェニル、m−ターフェニル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、ジフェニルスルホン、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、p−ベンジロキシビフェニル、ジフェニルカーボネート、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸ベンジル、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸フェニル、アセト酢酸アニリド、1,4−ビス(2−ビニロキシエトキシ)ベンゼン、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、テレフタル酸ジベンジル、ジベンゾイルメタン、トシルアニリド、ベンゼンスルホン酸アニリド、4−メチルフェノキシ−p−ビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ビス(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1−(2−ナフチルオキシ)−2−フェノキシエタンなどが挙げられる。
【0021】
本発明の感熱記録材料を構成する前記発色剤、顕色剤は単用又は併用できる。同様に、本発明のスルホンアミド誘導体からなる増感剤も単用又は併用でき、さらに、上述のように、このスルホンアミド誘導体に公知の増感剤を1種又は2種以上併せて使用することもできる。
これらの増感剤の添加割合は、発色剤100重量部に対して増感剤総量で30〜500重量部、好ましくは50〜300重量部である。
上記顕色剤の添加割合は、発色剤100重量部に対して顕色剤総量で50〜800重量部、好ましくは100〜500重量部である。
【0022】
さらに本発明の感熱記録材料には、画像の保存安定性を調整する目的で保存性改良剤を併用することができる。
上記保存性改良剤としては、1.1.3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1.1.3−トリス(2−メチル−4―ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2′−チオビス(4メチル−6−t−ブチルフェノール)、4−ベンジルオキシ−4′−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホンなどが挙げられる。
上記保存安定剤の使用量は特に限定されないが、染料100重量部に対して10〜400重量部程度の割合で使用できる。
その他、本発明の感熱記録材料には必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐光性安定剤、耐水性向上剤などの添加剤を使用でき、さらに、他の性能調整を目的とした各種添加剤も使用できる。
【0023】
感熱記録材料は、形態的には、本発明の増感剤と公知の発色剤と顕色剤を必須成分とする感熱発色層を、シート状の支持体表面に形成したものである。上記支持体としては、天然繊維を湿式抄造した通常の紙、合成紙、天然繊維と合成繊維の混抄紙、各種プラスチックシート、樹脂コーティング紙などが挙げられるが、特に紙が好ましい。即ち、感熱記録材料の好適例は感熱記録紙である。
上記感熱記録材料は公知の方法で製造でき、具体的には、通常、本発明の増感剤と公知の発色剤と顕色剤を必須成分として、その外、場合により他の公知の増感剤を併用し、各種添加剤などを加え、或はさらに必要に応じて、顔料、金属セッケン類、アミド類、ワックス類、分散剤、消泡剤などを加え、これらの各成分を微粉砕して、水溶性又は水分散性バインダーを含む水溶媒中に分散して、この分散液をシート状の支持体上に塗布、乾燥して製造される。当該各成分の微粉砕は、基本的に、アトライター、ボールミル、サンドミルなどを用いて0.5〜3μmの粒径に粉砕することにより行われる。
上記分散方法としては、各成分を個々に分散せしめたものを混合する方法、一括分散する方法などがあり、特に拘束はされないが、発色剤と顕色剤を個々に分散せしめたものを混合する方法が好ましい。
【0024】
また、上記バインダーは、支持体上に感熱発色層を形成するに際して、構成成分を支持体に結合させて剥離防止を目的とするもので、具体的には、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ポリアクリルアマイド、変性ポリアクリルアマイド、澱粉類、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどのポリマーを水に溶解させたもの、或は分散させたものが使用できる。
上記顔料は、感熱記録層の白色度向上、増量目的のために添加され、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、シリカ、酸化チタン、タルク、クレー、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、有機ポリマービーズなどが挙げられる。
上記金属セッケン類としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの脂肪酸の金属塩が挙げられる。
上記アミド類としては、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミドなどが挙げられる。
上記ワックス類としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、サソールワックス、カルナバワックス、モンタンワックスなどが挙げられる。
上記分散剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキル燐酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリカルボン酸型高分子活性剤などのアニオン型界面活性剤が挙げられるが、その他、公知のノニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤を使用することもできる。
【0025】
以上のように、上記感熱記録材料は、感熱発色層を構成する分散液を、シートの表面に塗工、乾燥させて得られる。
シートへの塗工方法は、感熱発色層からなる分散液をシートに塗布する方法が基本であるが、シートを分散液中に浸漬する含浸方法でも良いし、スプレーなどを用いた噴霧方法でも良い。上記塗布方法は特に限定されず、従来公知の技術、例えば、エアーナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなどが使用できる。シートへの塗布量も特に限定されないが、2〜10g/m2程度が好ましい。
一方、感熱記録材料は、発色感度を良くするために、感熱発色層を形成する前に、支持体上に下塗り層を施しても良い。また、保存性を高め、外観を良くするために、感熱記録層の表面に保護層を設けることもできる。さらに、必要に応じて、感熱発色層の表面に印刷層を設けたり、感熱発色層を形成した支持体の裏面に、天然ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体等の合成ゴム系粘着剤などの粘着層を設けることもできる。
【0026】
【発明の効果】
前述したように、発色感度や濃度と発色画像の保存安定性とを両立させることは容易でなく、公知の顕色剤であるビスフェノールAや4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンに公知の増感剤を使用した感熱記録材料では、高感度で発色濃度が濃いという利点がある反面、顕色剤にビスフェノールAを使用した感熱記録材料では発色画像の耐可塑剤性が悪く、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンを使用した感熱記録材料では熱により地肌かぶりし易いという問題がある。
しかしながら、本発明のエーテル結合を有するスルホンアミド誘導体を増感剤に用いた感熱記録材料では、ビスフェノールS、ビスフェノールA、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンなどの顕色剤の種類を問わず、発色感度や発色濃度を良好に確保しながら、耐熱地肌かぶり性や耐可塑剤性などの画像の保存安定性にも優れる。
特に、顕色剤がアリールスルホニル骨格を有する化合物である場合、上記発色時の性能と保存安定性の両方の効果が円滑に増進され、なかでも、顕色剤がビスフェノールSの場合、さらなる増感効果が得られる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明のスルホンアミド誘導体の合成例、当該誘導体を含有する感熱記録紙の製造実施例、当該感熱記録紙の発色性能試験例を順次説明する。実施例、試験例中に示された「%」、「部」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0028】
《スルホンアミド誘導体の合成例》
(1)合成例1
第一段階の反応工程として、モノエタノールアミン122g、水酸化ナトリウム40g、少量の水及びアセトンをフラスコに仕込んだ。このフラスコ内の混合溶液を氷冷下で攪拌しながら、アセトンに溶解したp−トルエンスルホニルクロリド190gを徐々に滴下した。3時間反応した後、エバポレーターでアセトンと水を除去して、塩化ナトリウムを析出させた。その後、塩化ナトリウムが溶解する程度の水を加え、分液して、食塩水で2回洗浄した後、希硫酸で弱酸性になるように中和した。分液して水でもう一度洗浄し、洗浄液が弱酸性であることを確認した。
次いで、第2段階の反応工程として、第一段階の生成物N−(2−ヒドロキシ−エチル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド108gに水酸化ナトリウム20g、ジメチルスルホキシド20gを反応器に入れ、氷冷下で攪拌しながら塩化ベンジル63gを滴下により加えた。氷冷下で4時間反応した後に昇温し、70〜90℃で5時間反応させた。得られた反応物を50℃まで冷却し、水200gを加え、1時間攪拌して、結晶を析出させた。結晶物をろ過し、水100gで洗浄した後、90℃で乾燥し、粗生成物142gを得た。この粗生成物をエタノールで再結晶し、乾燥して、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドの精製結晶物131gを得た。
JIS K 0064に従って、得られた結晶の融点を測定したところ、104.6℃であった。
【0029】
(2)合成例2
上記合成例1を基本としながら、反応物としてのアミノアルコール類は合成例1と同様のモノエタノールアミンを使用し、同じく芳香族系スルホニルクロリド類は合成例1のp−トルエンスルホニルクロリドに替えてo−トルエンスルホニルクロリドを使用し、同じくベンジルクロリド類は合成例1と同様の塩化ベンジルを使用し、それ以外の条件を合成例1と同様に操作して、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−2−メチル−ベンゼンスルホンアミドの精製結晶物を得た。この結晶の融点は88.0℃〜88.5℃であった。
【0030】
(3)合成例3
上記合成例1を基本としながら、アミノアルコール類は合成例1と同様のモノエタノールアミンを使用し、芳香族系スルホニルクロリド類は合成例1と同様のp−トルエンスルホニルクロリドを使用し、ベンジルクロリド類は合成例1の塩化ベンジルに替えてp−メチルベンジルクロリドを使用し、それ以外の条件を合成例1と同様に操作して、4−メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミドの精製結晶物を得た。
この結晶の融点は79.5℃〜81.0℃であった。
【0031】
(4)合成例4
上記合成例1を基本としながら、アミノアルコール類は合成例1のモノエタノールアミンに替えて1−アミノ−2−プロパノールを使用し、芳香族系スルホニルクロリド類は合成例1のp−トルエンスルホニルクロリドに替えてベンゼンスルホニルクロリドを使用し、ベンジルクロリド類は合成例1と同様の塩化ベンジルを使用して、それ以外の条件を合成例1と同様に操作して、N−(2−ベンジルオキシ−プロピル)−ベンゼンスルホンアミドの精製結晶物を得た。
この結晶の融点は91.3℃〜91.6℃であった。
【0032】
(5)合成例5
上記合成例1を基本としながら、アミノアルコール類は合成例1のモノエタノールアミンに替えて1−アミノ−2−プロパノールを使用し、芳香族系スルホニルクロリド類は合成例1のp−トルエンスルホニルクロリドに替えてベンゼンスルホニルクロリドを使用し、ベンジルクロリド類は合成例1の塩化ベンジルに替えてp−メチルベンジルクロリドを使用して、それ以外の条件を合成例1と同様に操作して、N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミドの精製結晶物を得た。
この結晶の融点は112.8℃〜113.0℃であった。
【0033】
そこで、上記合成例で得られた各スルホンアミド誘導体を増感剤に用いた感熱記録紙の製造実施例を順次述べる。
下記の実施例1〜10のうち、実施例1〜5はビスフェノールSを顕色剤として、増感剤を合成例1〜5に変化させた例、実施例6〜10は増感剤として合成例5を使用し、顕色剤の種類をビスフェノールS以外のものに変化させた例である。但し、実施例10はビスフェノールAを顕色剤とした例であり、それ以外の実施例はいずれもアリールスルホニル骨格を有する顕色剤を用いた例である。
また、比較例1〜5のうち、比較例1〜3はビスフェノールSを顕色剤として、公知の増感剤を用いた例、比較例4はビスフェノールS以外のアリールスルホニル骨格を有する顕色剤を用いて、公知の増感剤を用いた例、比較例5はビスフェノールAを顕色剤として、公知の増感剤を用いた例である。
【0034】
《実施例1》
(1)塩基性染料分散液の調製
3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20gを、濃度5%ポリビニルアルコール(クラレ社製;商品名PVA−117)の水溶液80g中で、ボールミルを用いて20時間微粉砕して、平均粒径1.0μmの塩基性染料分散液(即ち、発色剤分散液)を調製した。
(2)顕色剤分散液の調製
ビスフェノールSの80gを、メチルセルローズ6g及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1gを含有した水溶液120gに湿潤させ、ボールミルで10時間微粉砕して、平均粒子径が1.0μmの顕色剤の水分散液を調製した。
(3)増感剤の調製
上記合成例1のスルホンアミド誘導体60gを、濃度5%ポリビニルアルコール(上記PVA−117)の水溶液140g中で、ボールミルを用いて20時間微粉砕して、平均粒径が1.0μmの増感剤分散液を調製した。
(4)滑剤分散液の調製
滑剤としてのステアリン酸亜鉛80gを、メチルセルローズ6g及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1gを含有した水溶液320gに湿潤させ、回転数3,000rpmのホモジナイザーで2時間撹拌して、平均粒子径5.5μmのステアリン酸亜鉛分散液を調製した。
(5)感熱発色層塗布液の調製
上記の塩基性染料分散液3g、顕色剤分散液3g、増感剤分散液4g、濃度60%の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;商品名TP−123CS)の分散液3.5g、ステアリン酸亜鉛分散液3.0g、及び水7.4gを混合して、感熱発色層塗布液を得た。
(6)感熱記録紙の製造
上質紙上に、乾燥後の感熱発色層の塗布量が5g/m2となるように、ワイヤーバーを用いて上記感熱発色層塗布液を塗布し、60℃のオーブン中で乾燥後、平滑度200秒(ベック法)となるようにカレンダー処理し、実施例1の感熱記録紙を作成した。
【0035】
《実施例2》
上記実施例1の製造方法を基本として、増感剤を合成例1から合成例2のスルホンアミド誘導体に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0036】
《実施例3》
上記実施例1の製造方法を基本として、増感剤を合成例1から合成例3のスルホンアミド誘導体に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0037】
《実施例4》
上記実施例1の製造方法を基本として、増感剤を合成例1から合成例4のスルホンアミド誘導体に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0038】
《実施例5》
上記実施例1の製造方法を基本として、増感剤を合成例1から合成例5のスルホンアミド分散液に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0039】
《実施例6》
上記実施例5の製造方法を基本として、顕色剤をビスフェノールSから4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンに変更した以外は、実施例5と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0040】
《実施例7》
上記実施例5の製造方法を基本として、顕色剤をビスフェノールSから2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンに変更した以外は、実施例5と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0041】
《実施例8》
上記実施例5の製造方法を基本として、顕色剤をビスフェノールSからビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンに変更した以外は、実施例5と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0042】
《実施例9》
上記実施例5の製造方法を基本として、顕色剤をビスフェノールSから2,2′−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテルに変更した以外は、実施例5と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0043】
《実施例10》
上記実施例5の製造方法を基本として、顕色剤をビスフェノールSからビスフェノールAに変更した以外は、実施例5と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0044】
《比較例1》
上記実施例1の製造方法を基本として、増感剤を合成例1のスルホンアミド誘導体からβ−ナフチルベンジルエーテルに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0045】
《比較例2》
上記実施例1の製造方法を基本として、増感剤を合成例1のスルホンアミド誘導体から1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタンに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0046】
《比較例3》
上記実施例1の製造方法を基本として、増感剤を合成例1のスルホンアミド誘導体からジフェニルスルホンに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0047】
《比較例4》
上記実施例1の製造方法を基本として、顕色剤をビスフェノールSから4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンに変更し、増感剤を合成例1のスルホンアミド誘導体からβ−ナフチルベンジルエーテルに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0048】
《比較例5》
上記実施例1の製造方法を基本として、顕色剤をビスフェノールSからビスフェノールAに変更し、増感剤を合成例1のスルホンアミド誘導体からβ−ナフチルベンジルエーテルに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0049】
そこで、上記実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた各感熱記録紙を用いて、発色時の印字濃度及び地肌濃度を測定するとともに、耐熱性、耐可塑剤性の保存安定性試験を行った。
《感熱記録紙の発色性能試験例》
実施例1〜10及び比較例1〜5の各感熱記録紙をシャープのファクシミリ(型式UX−F41CL)にかけ、発色時の印字濃度と地肌濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。
また、耐熱地肌かぶり性の試験として、発色させた感熱記録紙、未発色の感熱記録紙を60℃、24時間で夫々放置し、画像濃度と地肌濃度をマクベス濃度計で測定した。
さらに、耐可塑剤性試験として、ガラスビンの外周に発色後の感熱記録紙を巻き付け、その上に軟質塩化ビニル樹脂フィルム(三井化学社製;商品名ハイラップV−450)を3重に巻き付け、40℃、3時間の条件で放置した後、保存後の画像濃度をマクベス濃度計で測定して、可塑剤に対する耐久性を評価した。
【0050】
図1はその試験結果を示す。
一般に、感熱記録紙の発色感度及び濃度、保存安定性は、顕色剤の種類によってかなりの影響を受けるため、以下では、同種の顕色剤を使用した実施例と比較例の間で対比考察することを評価の基本方針とした。
(1)ビスフェノールSを顕色剤とした点で共通し、増感剤の種類が異なる実施例1〜5及び比較例1〜3を対比考察すると、比較例1〜3では発色時の印字濃度が低い傾向にあるが、実施例1〜5では発色時の印字濃度は濃く、発色濃度、感度は良好であった。また、60℃の耐熱性を見ると、ビスフェノールSに公知の増感剤を組み合わせた比較例1〜3では地肌かぶりがなかったが、実施例1〜5もこの比較例1〜3と遜色がない水準で熱による地肌カブのないことが確認できた。即ち、実施例1〜5では、発色濃度、感度に優れるうえ、耐熱地肌かぶり性も良好に確保でき、発色濃度及び感度と保存安定性とを両立できることが明らかになった。また、耐可塑剤性は比較例1〜3では大きく劣化していたのに対して、実施例1〜5では良好であったが、これは、実施例1〜5と比較例1〜3の間における発色時の印字濃度の優劣が、そのまま当該耐可塑剤性の差異となって顕現したものと思われる。
【0051】
(2)ビスフェノールAを顕色剤に使用すると、発色濃度及び感度、耐熱地肌かぶり性は良好である反面、耐可塑剤性が大きく損なわれる傾向がある。
そこで、ビスフェノールAを顕色剤とした点で共通する実施例10と比較例5を対比考察すると、発色濃度及び感度、耐熱地肌かぶり性は、実施例と比較例の間であまり差はなかった。しかしながら、耐可塑剤性は比較例5では0.25とかなり悪いのに対して、実施例10では0.50と大きく改善しており、本発明の増感剤の優位性が明らかになった。
ちなみに、合成例5のスルホンアミド誘導体を増感剤に用いた点で共通する実施例10と実施例5を対比すると、ビスフェノールSを顕色剤とした実施例5の方が、ビスフェノールAを顕色剤とする実施例10より発色時の感度及び濃度、耐熱性、耐可塑剤性ともに、より良好な数値を示すことから、本発明の増感剤は、ビスフェノールSのようなアリールスルホニル骨格を有する化合物を顕色剤とする方が、ビスフェノールAの場合より一層有効な増感効果が得られることが確認できた。
【0052】
(3)4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンを顕色剤とした点で共通する実施例6と比較例4を対比考察すると、本来的に当該顕色剤も発色濃度及び感度、耐熱地肌かぶり性は良好なため、実施例と比較例の間であまり差はなかった。しかしながら、耐可塑剤性は比較例4では0.80の低い数値であったのに対して、実施例6では0.99と改善しており、本発明の増感剤の優位性が明らかになった。
ちなみに、冒述の従来技術7に記載された分子内にスルホニルアミノ基を含む化合物を増感剤とした感熱記録紙の耐可塑剤性は、同公報の表1に示すように、ビスフェノールSなどを顕色剤とした場合には◎の評価であるが、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンを顕色剤とした(従来技術7の)実施例4では、耐可塑剤性の評価は△である。一方、上述のように、本発明の実施例6では耐可塑剤性の数値は0.99を示し、これは、同従来技術7での評価基準のうち、「記録部分がはっきり読み取れる」水準である◎に相当するものと思われる。従って、本発明のエーテル結合を有する特定のスルホンアミド誘導体は、顕色剤がビスフェノールSである場合のみならず、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホンの場合にも、増感剤として耐可塑剤性の改善への寄与は大きい。
【0053】
(4)実施例7〜9は公知のアリールスルホニル骨格を有する顕色剤を用いた例であるが、これらの発色時の濃度及び感度、耐熱性、耐可塑剤性は共に、ビスフェノールSを顕色剤とする実施例1〜5と同様の水準を保持することから、本発明の増感剤においては、顕色剤としてビスフェノールSを用いた場合のみならず、それ以外のアリールスルホニル骨格を有する各種の化合物(また、前記実施例6の顕色剤も同骨格を有する)を用いた場合にも、増感効果がより有効に発揮されることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜10及び比較例1〜5の各感熱記録紙に含有される顕色剤と増感剤の種類、並びに当該記録紙の発色性能試験結果を示す図表である。
Claims (4)
- 請求項1に記載の増感剤が、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−エチル)−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、4−メチル−N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ベンジルオキシ−プロピル)−ベンゼンスルホンアミド、N−[2−(4−メチル−ベンジルオキシ)−プロピル]−ベンゼンスルホンアミドよりなる群から選ばれたエーテル結合を有するスルホンアミド誘導体の少なくとも一種であることを特徴とする感熱記録材料。
- 顕色剤が、分子内にアリールスルホニル骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱記録材料。
- 請求項3に記載のアリールスルホニル骨格を有する化合物が、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホンであることを特徴とする感熱記録材料。
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