JP3972237B2 - 新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体、当該誘導体を用いた感熱記録材料 - Google Patents
新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体、当該誘導体を用いた感熱記録材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子内にスルホニルアミノ基を有する新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体、並びに当該誘導体を用いた感熱記録材料に関して、発色感度、発色濃度を良好に保持しながら、地肌汚れが少なく、発色画像の保存安定性に優れたものを提供する。
【0002】
【発明の背景】
電子供与性の無色染料である発色剤と電子受容性の顕色剤との発色反応を利用した記録材料としては、感熱紙、ノーカーボン紙などがよく知られている。なかでも、感熱記録材料は比較的簡単な装置により鮮明な記録が得られるという優れた利点により、ファクシミリ、計測用記録計、コンピュータ−端末機、ラベル印刷機、乗車券等の発券機、プリンターなどの色々な分野で広範囲に使用されている。
これらの感熱記録材料は、基本的に、発色剤、顕色剤、発色感度向上用の増感剤、顔料などの構成成分を、接着剤を添加した系で別々に粒度制御した微粉砕の水分散液として調製した後に混合して、プラスチック、紙、合成紙などの支持体上に塗布乾燥し、感熱発色層として仕上げたものである。
【0003】
上記感熱記録材料は地肌が白く、低エネルギーでの発色感度と濃度が高いこと、さらには様々な環境下での画像の保存安定性に優れることが要求される。
上記感熱記録用の顕色剤としては、主に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)が汎用されている。この化合物は、増感剤を選択することにより充分な発色感度が付与されるが、その反面、経時、熱、プラスチック中の可塑剤、油、日光などによって、発色画像の安定性が損なわれ易いという欠点があるため、あまり保存性が要求されない分野で汎用されているのが実情である。
また、上記ビスフェノールAは製造コストが安いことから、プラスチックの工業原料として多量に使用されているが、近年、環境ホルモンの懸念があるため、当該見地からもこれに替わる新しい感熱記録用の顕色剤が望まれている。
【0004】
【従来技術】
上記ビスフェノールAに替わる感熱記録用の顕色剤としては、例えば、特開昭54−74762号公報(従来技術1)に、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸ブチル、p−オキシ安息香酸ヘプチル、p−オキシ安息香酸ベンジルなどのp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物が開示されている。
なかでも、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルは低エネルギーでの発色感度、発色濃度が高く、地かぶりが少ないという利点を有するが、上記ビスフェノールAと同様に、発色画像の保存安定性が不充分で、経時により退色、白ヌケ現象が起きることから、そのままでは使用できない。
【0005】
そこで、このp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物の構造の一部を変えることにより、発色画像の保存性を改善しようとするものに、次の従来技術がある。
(1)特開昭59−199286号公報(従来技術2)
HO−ph−CO−O−R−O−CO−ph−OH(RはC2〜C12アルキレン基である;phはフェニレン基である)の一般式で表される、グリコール−ビス−p−ヒドロキシ安息香酸エステルを顕色剤とする感熱記録紙が開示され、高速記録適性があり、記録画像の退色並びに白抜けが改善されることが記載されている。
【0006】
(2)特開平7−173108号公報(従来技術3)
感熱記録用の顕色剤として、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エステル誘導体が開示され、画像の保存安定性、特に耐熱性が優れていることが記載されている。
【0007】
(3)特開平11−322727号公報(従来技術4)
感熱記録用の顕色剤として、一般式(B)で表されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物が開示され、過酷な条件下で保存した後の発色部の消色、及び地肌部の変色が少なく各種保存安定性に優れていることが記載されている。
【化2】
【0008】
また、発色感度に優れる上記p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルに、他の成分を併用することにより、画像保存性の改善を図ろうとするものを挙げると、次の通りである。
(4)特開昭59−209192号公報(従来技術5)
p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルを使用した発色層の下面に、一般式(C)で表された化合物を含有するアンダーコート層を形成した感熱記録材料が開示され、画像部の耐熱消色性、ブリード性を改善できることが記載されている。
【化3】
(式(C)中、RはC2〜C5アルキレン基である。)
【0009】
(5)特開昭59−218891号公報(従来技術6)
p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルを顕色剤とし、テレフタル酸ジベンジルエステルを増感剤と発色助剤と保存安定助剤の3つの機能性剤として含有した感熱記録材料が開示され、記録後の退色防止、指紋付着による消色防止などの保存安定性が向上することが記載されている。
【0010】
(6)特開昭58−211493号公報(従来技術7)
一般式(D)で表されるスルホアミド化合物を、p−ヒドロキシ安息香酸エステルなどの顕色剤と併用した感熱記録材料が開示され、画像保存性が向上することが記載されている。
【化4】
(式(D)中、R3、R4は夫々、水素、ハロゲン、アリール基、トリハロゲノメチル基、又はC1〜C30アルキル基である。)
【0011】
(7)特開昭58−87089号公報(従来技術8)
p−ヒドロキシ安息香酸エステルなどの顕色剤に、ヒンダ−ドフェノ−ル化合物を併用させた感熱記録紙が開示され、画像の熱、湿度による消色性を抑制できることが記載されている。
【0012】
(8)特開昭59−41296号公報(従来技術9)
p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステルを顕色剤とし、さらに、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛を併用する感熱記録シートが開示され、耐熱、耐湿熱、耐脂などの保存安定性が図れることが記載されている。
【0013】
(9)特公平2−26874号公報(従来技術10)
p−ヒドロキシ安息香酸エステルなどの顕色剤に、一般式(E)で表されるp−アルキル安息香酸金属塩、又はO−ベンゾイル安息香酸金属塩を併用させた感熱記録材料が開示され、発色画像が安定であり、高湿条件下でも地色の安定であることが記載されている。
【化5】
(式(E)中、R5は水素、C1〜C3アルキル基である;R6はR5が水素の場合、CO−C6H5、それ以外の場合には水素を示す;Mは多価金属を示す。)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、p−ヒドロキシ安息香酸エステルの高感度で発色濃度が濃く、地肌汚れが少ないという特徴は保持するが、その反面、発色画像の保存安定性の改善、白化防止の点では充分に満足し得る水準ではなく、さらなる改良が要求されるところである。
本発明は、前記ビスフェノールAや公知のp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物に代替し得る、地肌かぶりが少なく、発色感度と発色濃度が良いうえに、さらに発色画像の保存安定性に優れた新規の顕色剤を開発することを技術的課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべくp−ヒドロキシ安息香酸エステルを中心に鋭意研究した結果、分子内にスルホニルアミノ基を有する新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル系の化合物、より具体的には、p−ヒドロキシベンゾイロキシ基とスルホニルアミノ基がアルキレン基を介して隣接状に位置するp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体を感熱記録用の顕色剤に用いると、スルホニルアミノ基の存在により、発色感度、発色濃度を保持したまま、画像の保存安定性をも満足すべき水準に向上できることを見い出し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明1は、下記の一般式(A)で表される
【化6】
(式(A)中、R1はC 2 〜C 3 アルキレン基である;R2は無置換のベンゼン環、又はC 1 〜C 4 アルキル基、フェニル基、C 5 〜C 6 シクロアルキル基、C 1 〜C 4 アルコキシル基、ハロゲン原子の1種或は2種以上が1〜4個置換したベンゼン環である。)
分子内にスルホニルアミノ基を有する新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体である。
【0017】
本発明2は、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)エチルよりなる群から選ばれた新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体である。
【0018】
本発明3は、発色剤と顕色剤を含有する感熱記録材料において、
顕色剤が本発明1又は2のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体であることを特徴とする感熱記録材料である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、第一に、分子中にスルホニルアミノ基を含有する新規のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体であり、第二に、第一の新規誘導体に構造式が属するp−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチルなどの具体的な化合物であり、第三に、これらの化合物を顕色剤に用いた感熱記録材料である。
【0020】
本発明1の分子内にスルホニルアミノ基を有する新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体は、上記一般式(A)で表され、基本的に、p−ヒドロキシベンゾイロキシ基とスルホニルアミノ基がアルキレン基を介して隣接した構造を有する。
式(A)のR1はC 2 〜C 3 アルキレン基、即ち、エチレン基、プロピレン基であり、プロピレン基は、n−プロピレン基、イソプロピレン基の両方を含む概念である。
式(A)のR2は無置換のベンゼン環、又は置換ベンゼン環である。
この置換ベンゼン環の場合、ベンゼン環に結合する置換基はC 1 〜C 4 アルキル基、フェニル基、C 5 〜C 6 シクロアルキル基、C 1 〜C 4 アルコキシル基、ハロゲン原子である。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。上記置換基の結合個数は1〜4個であり、置換基の個数が複数の場合には1種だけでベンゼン環に結合しても良いし、2種以上が結合しても良い。
【0021】
上記一般式(A)のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−2−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−エチルベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−イソプロピルベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−n−プロピルベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−イソプロポキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(ベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(トルエン−4−スルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−2−スルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(4−エチルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−エチルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(4−イソプロピルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−イソプロピルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(4−n−プロピルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−n−プロピルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸3−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)プロピルなどが挙げられる。
本発明の新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体のなかでは、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−2−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)プロピルなどが好ましく、より好ましくは、本発明2に示すように、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)エチルである。
【0022】
本発明のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体の合成方法は、特に限定されず任意の方法で合成できる。
そこで、その具体的な合成方法を、p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチルに例をとって、以下に詳述する。
先ず、第一段階の反応として、氷冷下で攪拌しながらp−トルエンスルホニルクロリドに対して、約2倍当量の2−アミノエタノールと、当量の水酸化ナトリウムと、少量の水及びアセトンをフラスコに仕込んだ後、p−トルエンスルホニルクロリドのアセトン溶液を徐々に滴下する。この際、発熱を伴うので注意を要する。反応終了後、アセトンと水を除去し、塩化ナトリウムを析出させる。次いで、塩化ナトリウムが溶解する程度の水を加え、分液して、食塩水で数回洗浄する。その後、希硫酸で弱酸性になるように中和する。食塩水でもう一度洗浄し、洗浄液が弱酸性であることを確認する。
次いで、最初の反応で得られたp−トルエンスルホニルアミノエタノールにキシレンを溶媒にして適当な酸性触媒を少量添加し、p−ヒドロキシ安息香酸を加えて攪拌しながら昇温し、140〜160℃で縮合反応を行い、生成水をキシレンと共に共沸除去する。反応終了後、キシレン、イソプロピルアルコール混合溶液で晶析し、結晶をろ過、水洗、乾燥すると、目的物の結晶が得られる。
【0023】
上述のように、上記p−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体の合成には、原料として、p−ヒドロキシ安息香酸、アミノアルコール類、スルホニルハライド類を夫々使用するのである。
上記アミノアルコール類は、分子中に水酸基とアミノ基を共有する化合物であれば特に限定されず、具体例としては、2−アミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノールなどが挙げられ、特に、2−アミノエタノールが好ましい。
上記スルホニルハライド類の具体例としては、ベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、o−トルエンスルホニルクロリド、4−エチルベンゼンスルホニルクロリド、4−イソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、4−n−プロピルベンゼンスルホニルクロリド、2,5−ジメチルベンゼンスルホニルクロリド、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルクロリド、4−メトキシベンゼンスルホニルクロリド、4−イソプロポキシベンゼンスルホニルクロリド、1−ナフタレンスルホニルクロリド、2−ナフタレンスルホニルクロリド、4−シクロヘキシルベンゼンスルホニルクロリド、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−スルホニルクロリド、5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−スルホニルクロリドなどが挙げられる。また、当該塩化物の代わりに臭化物、ヨウ化物などが使用でき、その他、スルホニルハライド基を有する化合物であれば特に制約されることはない。
当該スルホニルハライド化合物の中では、特に、p−トルエンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、4−クロロベンゼンスルホニルクロリドが好ましい。
【0024】
本発明3の感熱記録材料は、基本的に、無色染料である発色剤と、上記p−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体よりなる顕色剤を必須成分として含有したものであり、その他、増感剤などの各種添加剤を含有できることは勿論である。
上記発色剤は、トリアリールメタン系化合物、ジアリールメタン系化合物、ローダミン−ラクタム系化合物、フルオラン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ジビニルフタリド系化合物、ピリジン系化合物、スピロ系化合物、フルオレン系化合物、チアジン系化合物などがある。
これらの中でもフルオラン系化合物が好ましく、とりわけ、ジ−n−ブチルアミノ−7−(2′−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2′−メトキシエチル)−N−イソブチルアミノ−6−メチルー7−アニリノフルオラン、3−N−(3′−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチルー7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3′−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオランなどが好ましい。
【0025】
また、発色性能及び画像の耐熱性、耐湿性、耐可塑剤性などの保存性を更に調整する必要がある場合には、他の公知の顕色剤を一種以上使用することもできる。上記公知の顕色剤は特に制限されず任意のものが使用できるが、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルフィド、4,4′−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N−(p−トルエンスルホニル)カルバモイル酸−p−クミルフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシ−フェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−2′,5′−ジメチル−ジフェニルスルホン、2−メチル−4−ヒドロキシ−ジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、2,4−ビス(p−メチルフェニルスルホニル)フェノール、2,4−ビス(フェニルスルホニル)−m−クレゾールなどが挙げられる。
【0026】
本発明の新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体からなる顕色剤は単用又は併用しても良く、また、この誘導体に上記他の公知の顕色剤の1種又は2種以上を併せて使用することもできる。一方、前記発色剤は単用しても、必要に応じて2種以上併用しても良い。
感熱記録材料における発色剤と顕色剤の混合割合は、発色剤100重量部に対して、顕色剤総量で50〜800重量部、好ましくは100〜500重量部である。
【0027】
他方、発色感度をさらに向上させる必要がある場合には、増感剤を添加使用できる。
上記増感剤としては、ベヘニン酸、カプリン酸、オクチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、(核置換)安息香酸、(核置換)サリチル酸などの一塩基酸の亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、及び当該一塩基酸のアミド化合物、及び当該一塩基酸のアニリド化合物、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミド、β−ナフチルベンジルエーテル、4−ベンジロキシ安息香酸ベンジル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸−ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸−ジ−p−クロロベンジル、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、p−ベンジルビフェニル、m−ターフェニル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、ジフェニルスルホン、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、p−ベンジロキシビフェニル、ジフェニルカーボネート、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸ベンジル、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸フェニル、メチレンベンゾエート、アセト酢酸アニリド、1,4−ビス(2−ビニロキシエトキシ)ベンゼン、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、テレフタル酸ジベンジル、ジベンゾイルメタン、トシルアニリド、ベンゼンスルホン酸アニリド、4−メチルフェノキシ−p−ビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ビス(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1−(2−ナフチルオキシ)−2−フェノキシエタンなどが挙げられる。
これらの増感剤は単用又は併用でき、その添加割合は発色剤100重量部に対して20〜800重量部、好ましくは50〜400重量部である。
【0028】
その他、本発明の感熱記録材料には、必要に応じて、画像の保存安定性を調整する目的で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光性安定剤、耐水性向上剤などの添加剤を発色剤100重量部に対して、0.05〜10重量部使用できる。
また、必要に応じて、他の性能調整を目的とした各種添加剤も使用できる。
【0029】
感熱記録材料は、形態的には、本発明のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体からなる顕色剤と発色剤を必須成分とする感熱発色層を、シート状の支持体表面に形成したものである。上記支持体としては、天然繊維を湿式抄造した通常の紙、合成紙、天然繊維と合成繊維の混抄紙、各種プラスチックシート、樹脂コーティング紙などが挙げられるが、特に紙が好ましい。即ち、感熱記録材料の好適例は感熱記録紙である。
上記感熱記録材料は公知の方法で製造でき、具体的には、通常、本発明の顕色剤と発色剤を必須成分として、その外、他の公知の顕色剤、増感剤、各種添加剤などを加え、或はさらに必要に応じて、顔料、金属セッケン類、アミド類、ワックス類、分散剤、消泡剤などを加え、これらの各成分を微粉砕して、水溶性又は水分散性バインダーを含む水溶媒中に分散して、この分散液をシート状の支持体上に塗布、乾燥して製造される。当該各成分の微粉砕は、基本的に、アトライター、ボールミル、サンドミルなどを用いて0.5〜3μmの粒径に粉砕することにより行われる。
上記分散方法としては、各成分を個々に分散せしめたものを混合する方法、一括分散する方法などがあり、特に拘束はされないが、顕色剤と発色剤を個々に分散せしめたものを混合する方法が好ましい。
【0030】
また、上記バインダーは、支持体上に感熱発色層を形成するに際して、構成成分を支持体に結合させて剥離防止を目的とするもので、具体的には、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ポリアクリルアマイド、変性ポリアクリルアマイド、澱粉類、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどのポリマーを水に溶解させたもの、或は分散させたものが使用できる。
上記顔料は、感熱記録層の白色度向上、増量目的のために添加され、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、シリカ、酸化チタン、タルク、クレー、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、有機ポリマービーズなどが挙げられる。
上記金属セッケン類としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの脂肪酸の金属塩が挙げられる。
上記アミド類としては、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミドなどが挙げられる。
上記ワックス類としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、サソールワックス、カルナバワックス、モンタンワックスなどが挙げられる。
上記分散剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキル燐酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリカルボン酸型高分子活性剤などのアニオン型界面活性剤が挙げられるが、その他、公知のノニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤を使用することもできる。
【0031】
以上のように、上記感熱記録材料は、感熱発色層を構成する分散液を、シートの表面に塗工、乾燥させて得られる。
シートへの塗工方法は、感熱発色層からなる分散液をシートに塗布する方法が基本であるが、シートを分散液中に浸漬する含浸方法でも良いし、スプレーなどを用いた噴霧方法でも良い。上記塗布方法は特に限定されず、従来公知の技術、例えば、エアーナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなどが使用できる。シートへの塗布量も特に限定されないが、2〜10g/m2程度が好ましい。
一方、感熱記録材料は、発色感度を良くするために、感熱発色層を形成する前に、支持体上に下塗り層を施しても良い。また、保存性を高め、外観を良くするために、感熱記録層の表面に保護層を設けることもできる。さらに、必要に応じて、感熱発色層の表面に印刷層を設けたり、感熱発色層を形成した支持体の裏面に、天然ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体等の合成ゴム系粘着剤などの粘着層を設けることもできる。
【0032】
【発明の効果】
前述したように、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ビスフェノールAなどの公知の顕色剤を使用した感熱記録材料では、高感度で発色濃度が濃いという利点がある反面、発色画像の保存性が悪く、白化、褪色を起こし易いという問題があるが、後述の試験例でも明らかなように、本発明のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体を感熱記録用の顕色剤として使用すると、詳しいメカニズムは明らかではないが、基本のp−ヒドロキシ安息香酸エステル骨格に加えて、分子内にスルホニルアミノ基が存在することにより、上述の公知の顕色剤と遜色のない発色感度、発色濃度を保持しながら、地肌かぶりが少なく、耐熱性、耐可塑剤性などの画像の保存安定性にも優れる。
即ち、本発明の新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体は、従来公知の顕色剤に比べて、画像の保存安定性という点で顕著な優位性があり、感熱記録用顕色剤としての実用性は高い。
また、本発明のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体は、生分解性を具備することが期待でき、環境汚染の少ない感熱記録用顕色剤として有望である。さらに、本発明のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体は、p−ヒドロキシ安息香酸骨格を有することから、殺菌剤としての用途も期待できる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体の合成例、当該誘導体を含有する感熱記録紙の製造実施例、当該感熱記録紙の発色性能試験例を順次説明する。実施例、試験例中に示された「%」、「部」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0034】
《p−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体の合成例》
(a)合成例1
第一段階の反応工程として、モノエタノールアミン122g、水酸化ナトリウム40g、少量の水及びアセトンをフラスコに仕込んだ。氷冷下で攪拌しながら、アセトンに溶解したトシルクロリド190gを徐々に滴下した。3時間反応後、エバポレーターでアセトンと水を除去して、塩化ナトリウムを析出させた。
次いで、塩化ナトリウムが溶解する程度の水を加え、分液して、食塩水で2回洗浄した後、希硫酸で弱酸性になるように中和した。分液して食塩水でもう一度洗浄し、洗浄液が弱酸性であることを確認した。
次いで、第2段階の反応工程として、第一段階の生成物にキシレンと、触媒としてのp−トルエンスルホン酸を少量添加し、p−ヒドロキシ安息香酸69gを加えて攪拌しながら昇温し、150℃で縮合反応を行って、生成水をキシレンと共に共沸除去した。8時間反応終了後、キシレンとイソプロピルアルコールを加えて、晶析後、ろ過、水洗した。乾燥後、白色結晶103gを得た。
【0035】
得られた結晶について、融点、IR、NMRを測定したところ、次の通りであった。
(1)融点
122.8℃〜123.3℃
尚、融点はJIS K 0064に従って測定した。
(2)IR(KBR)(cm-1)
3392,3299,1922,1705,1608,1592,1514,1445,1390,1279,1215,1158,1093,1033,950,853,817,771,670,550.
特に、3392,3299cm-1はヒドロキシル基、スルホニルアミノ基、1324,1158cm-1はスルホニルアミノ基の各吸収ピークとみられる。
(3)13C−NMR((CD3)2SO)δ値(ppm)
21.0,41.7,63.0,115.3,120.3,126.5,129.7,131.8,137.9,142.7,162.1,165.5.
以上の結果から、得られた化合物はp−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチルであることが確認できた。
【0036】
(b)合成例2
第一段階の反応として、モノエタノールアミン122g、水酸化ナトリウム40g、少量の水およびアセトンをフラスコに仕込んだ。氷冷下で攪拌しながら、ベンゼンスルホニルクロリド176gを徐々に滴下した。3時間反応後、エバポレーターでアセトンと水を除去して、塩化ナトリウムを析出させた。次いで、塩化ナトリウムが溶解する程度の水を加え、分液して、食塩水で2回洗浄した。その後、希硫酸で弱酸性になるように中和した。分液して、食塩水でもう一度洗浄し、洗浄液が弱酸性であることを確認した。
次いで、第2段階の反応工程として、第一段階反応物にキシレンと、触媒としてのp−トルエンスルホン酸を少量添加し、p−ヒドロキシ安息香酸69gを加えて攪拌しながら昇温し、150℃で縮合反応を行い、生成水をキシレンと共に共沸除去した。8時間反応終了後、キシレンとイソプロピルアルコールを加えて、晶析後、ろ過、水洗した。乾燥後、白色結晶77gを得た。
【0037】
得られた結晶について、融点、IR、NMRを測定したところ、次の通りであった。
(1)融点
152.5℃〜153.2℃
(2)IR(KBR)(cm-1)
3321,3262,1681,1607,1588,1514,1430,1392,1314,1291,1224,1159,1133,1091,1027,968,850,770,754,727,595,569.
特に、3321,3262cm-1はヒドロキシル基、スルホニルアミノ基、1314,1159cm-1はスルホニルアミノ基の各吸収ピークとみられる。
(3)13C−NMR((CD3)2SO)δ値(ppm)
41.6,62.9,115.2,120.1,126.4,129.2,131.7,132.4,140.7,162.0,165.4.
以上の結果から、得られた化合物はp−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチルであることが確認できた。
【0038】
(c)合成例3
第一段階の反応として、モノエタノールアミン122g、水酸化ナトリウム40g、少量の水及びアセトンをフラスコに仕込んだ。氷冷下で攪拌しながら、アセトンに溶解した4−クロロベンゼンスルホニルクロリド211gを徐々に滴下した。3時間反応後、希硫酸で弱酸性になるように中和した。その後、エバポレーターでアセトンを除去して、一段目反応物を析出させ、結晶をろ別した。
次いで、第2段階の反応工程として、ろ別した結晶にキシレンと、触媒としてのp−トルエンスルホン酸を少量添加し、p−ヒドロキシ安息香酸69gを加えて攪拌しながら昇温し、150℃で縮合反応を行い、生成水をキシレンと共に共沸除去した。8時間反応終了後、キシレンとイソプロピルアルコールを加えて、晶析後、ろ過、水洗した。乾燥後、白色結晶133gを得た。
【0039】
得られた結晶について、合成例1と同様に、融点、IR、NMRを測定したところ、次の通りであった。
(1)融点
149.5℃〜150.5℃
(2)IR(KBR)(cm-1)
3263,1914,1685,1610,1588,1514,1473,1461,1334,1283,1232,1155,1089,1012,991,904,850,829,768,755,698,623,559.
特に、3263cm-1はヒドロキシル基、スルホニルアミノ基、1334,1155cm-1はスルホニルアミノ基の各吸収ピークとみられる。
(3)13C−NMR((CD3)2SO)δ値(ppm)
41.6,62.8,115.2,120.1,128.3,129.3,131.6,137.3,139.6,162.0,165.4.
以上の結果から、得られた化合物はp−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)エチルであることが確認できた。
【0040】
そこで、上記合成例1〜3で得られた各p−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体を顕色剤に用いた感熱記録紙の製造実施例を順次述べる。
《実施例1》
(1)塩基性染料分散液の調製
3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20gを、濃度5%ポリビニルアルコール(クラレ社製;商品名PVA−117)の水溶液80g中で、ボールミルを用いて20時間微粉砕して、平均粒径1.0μmの塩基性染料分散液(即ち、発色剤分散液)を調製した。
(2)顕色剤分散液の調製
上記合成例1のp−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチル80gを、メチルセルローズ6g及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1gを含有した水溶液120gに湿潤させ、ボールミルで10時間微粉砕して、平均粒子径が1.0μmの顕色剤の水分散液を得た。
(3)増感剤の調製
β−ナフチルベンジルエーテル60gを、濃度5%ポリビニルアルコール(上記PVA−117)の水溶液140g中で、ボールミルを用いて20時間微粉砕して、平均粒径が1.0μmの増感剤分散液を調製した。
(4)滑剤分散液の調製
滑剤としてのステアリン酸亜鉛80gを、メチルセルローズ6g及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1gを含有した水溶液320gに湿潤させ、回転数3,000rpmのホモジナイザーで2時間撹拌して、平均粒子径5.5μmのステアリン酸亜鉛分散液を調製した。
(5)感熱発色層塗布液の調製
上記の塩基性染料分散液3g、顕色剤分散液3g、増感剤分散液4g、濃度60%の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;商品名TP−123CS)の分散液3.5g、ステアリン酸亜鉛の分散液3.0g、及び水7.4gを混合して、感熱発色層塗布液を得た。
(6)感熱記録紙の製造
上質紙上に、乾燥後の感熱発色層の塗布量が5g/m2となるように、ワイヤーバーを用いて上記感熱発色層塗布液を塗布し、60℃のオーブン中で乾燥後、平滑度200秒(ベック法)となるようにカレンダー処理し、実施例1の感熱記録紙を作成した。
【0041】
《実施例2》
上記実施例1の製造方法を基本として、合成例1に代えて、合成例2のp−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチルを顕色剤に用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0042】
《実施例3》
上記実施例1の製造方法を基本として、合成例1に代えて、合成例3のp−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)エチルを顕色剤に用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0043】
《実施例4》
上記実施例1の製造方法を基本としながら、増感剤として、実施例1で用いたβ−ナフチルベンジルエーテルに代えて、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタンを用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0044】
《実施例5》
上記実施例1の製造方法を基本としながら、増感剤として、実施例1で用いたβ−ナフチルベンジルエーテルに代えて、シュウ酸−ジ−p−メチルベンジルを用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0045】
《実施例6》
上記実施例1の製造方法を基本としながら、増感剤として、実施例1で用いたβ−ナフチルベンジルエーテルに代えて、p−ベンジルビフェニルを用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0046】
《実施例7》
上記実施例1の製造方法を基本としながら、増感剤として、実施例1で用いたβ−ナフチルベンジルエーテルに代えて、m−ターフェニルを用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0047】
《比較例1》
上記実施例1の製造方法を基本として、合成例1に代えて、公知の顕色剤であるp−ヒドロキシ安息香酸ベンジルを用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0048】
《比較例2》
上記実施例1の製造方法を基本として、合成例1に代えて、公知の顕色剤である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感熱記録紙を作成した。
【0049】
そこで、上記実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた各感熱記録紙を用いて、発色時の印字濃度及び地肌濃度を測定するとともに、耐熱性、耐可塑剤性の保存安定性試験を行った。
《感熱記録紙の発色性能試験例》
実施例1〜7及び比較例1〜2の各感熱記録紙を熱傾斜試験機(東洋精機社製)にかけ、熱プレート温度140℃、印字時間0.5秒の条件で発色を行い、発色時の印字濃度と地肌濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。
また、耐熱性試験として、発色後の感熱記録紙を60℃、48時間の条件で夫々放置し、画像濃度と地肌濃度をマクベス濃度計で測定して、発色時と比較した地肌よごれ、画像濃度の経時変化を調べた。
さらに、耐可塑剤試験として、ガラスビンの外周に発色後の感熱記録紙を巻き付け、その上に軟質塩化ビニル樹脂フィルム(三井化学社製;商品名ハイラップV−450)を3重に巻き付け、40℃、3時間の条件で放置した後、保存後の画像濃度をマクベス濃度計で測定し、可塑剤に対する耐久性を評価した。
【0050】
図1はその結果を示す。
本発明の新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体を使用した実施例1〜7は発色時の印字濃度の点で、公知の顕色剤を使用した比較例1〜2に比べても遜色のないレベルを保持していた。
印字部の耐熱保存性を見ると、比較例1〜2の加熱放置後の濃度は発色時に比べてほぼ半減していたのに対して、実施例1〜7の濃度低下は小さく、高レベルの印字濃度を確保していた。地肌部の耐熱保存性を見ても、比較例1〜2に比べて実施例1〜7は地肌汚れがほとんどないことが判った。
また、耐可塑剤性については、比較例1〜2の印字濃度が0.5前後なのに対して、実施例1〜7は全て0.7以上であり、特に、実施例1、4〜7は0.8を越える高レベルを示した。
以上のように、本発明のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体を顕色剤に使用すると、p−ヒドロキシ安息香酸エステルやビスフェノールAなどの公知の顕色剤に比べても発色濃度や発色感度に遜色がなく、地肌汚れも少ないうえ、公知の顕色剤では問題が多い耐熱性や耐可塑剤性などの保存安定性を顕著に改善できることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜7及び比較例1〜2の各感熱記録紙の発色性能試験結果を示す図表である。
Claims (3)
- p−ヒドロキシ安息香酸2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(ベンゼンスルホニルアミノ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(4−クロロベンゼンスルホニルアミノ)エチルよりなる群から選ばれた新規なp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体。
- 発色剤と顕色剤を含有する感熱記録材料において、
顕色剤が請求項1又は2に記載のp−ヒドロキシ安息香酸エステル誘導体であることを特徴とする感熱記録材料。
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