JP3952551B2 - 新規なチオ尿素化合物及びそれを用いた感熱記録体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なチオ尿素化合物及びこれを顕色剤として用いる感熱記録体に関するものである。本発明の感熱記録体は、記録部の画像保存性及び白紙部の耐熱地色安定性に優れており、記録画像の長期保存性が求められる用途や高温下での使用に有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、感熱記録体は、電子供与性化合物である無色あるいは淡色の染料前駆体と電子受容性化合物である顕色剤とを、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後、両者を混合し、バインダー、充填剤、増感剤、滑剤その他の助剤を添加して得た塗液を紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗布したもので、感熱ヘッド、ホットスタンプ、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色記録を得るものである。これらの感熱記録体は、計測用レコーダー、コンピュータの端末プリンター、ファクシミリ、自動券売機、バーコードラベルなど広範囲の分野に応用されている。
【0003】
しかし、近年における感熱記録体用記録装置の多様化、高性能化の進展に伴い、感熱記録体に対して要求される品質もより高度なものとなってきた。また、電子写真方式やインクジェット方式などの普通紙記録方式の普及に伴い、感熱記録方式もこれら普通紙記録と比較される機会が多くなっている。そのため、例えば、感熱記録体の記録部(画像)の安定性、あるいは非記録部(地色)の安定性などが、普通紙記録方式と同程度の品質に近づくことが求められている。特に記録画像の保存安定性の点から、耐光性、耐油性、耐水性、及び耐可塑剤性などに優れた感熱記録体が要求されている。
【0004】
特に耐油性、耐可塑剤性を向上させるために、感熱発色層中に特開平4−97887号公報記載のエポキシ化合物、特開平4−113888号公報記載のアジリジン化合物、特開昭63−22683号公報記載の各種金属塩を含有した例などが知られている。しかし、その効果は不十分である。
【0005】
また、従来から用いられてきたフェノール系顕色剤に代り、ヒドロキシ基を有さずに染料前駆体を発色せしめうる酸性雰囲気を呈した、いわゆる非フェノール系顕色剤が開発されている。これまで非フェノール系顕色剤として尿素やチオ尿素、リン酸、リン酸エステル、アミド、ウレタン等を用いた例が開示されており、これらを顕色剤として用いた場合、従来のフェノール系顕色剤と比較して記録部の画像保存性が向上することが知られている。
【0006】
例えば、特開平4−282291号公報記載のカルボニルスルホンアミド化合物、特開平6−99666号公報記載の有機リン酸化合物などが挙げられる。発色画像の消色原因の一つに染料と顕色剤との解離があるが、上記非フェノール系顕色剤は従来のフェノール系顕色剤よりも水、油、可塑剤等に溶けにくく、画像保存性が向上すると考えられる。しかし、多少の効果はあるものの、その程度は未だ十分なものではない。
【0007】
また、尿素又はチオ尿素化合物を顕色剤として用いる例に関しては、特開昭58−211496号公報等をはじめとして数多く出願されており、より画像保存性に効果的な顕色剤の開発のため、尿素及びチオ尿素誘導体の探索が行われている。例えば、特開昭59−184694号公報記載のフェニル尿素又はフェニルチオ尿素化合物、特開昭60−145884号公報記載のチオ尿素二量体化合物、特開昭61−211085号公報記載のハロゲン導入ジフェニルチオ尿素化合物、特開平5−185739号公報記載のベンジルチオ尿素化合物等が挙げられる。しかし、これらを用いて感熱記録紙を作製した場合、短期間の耐可塑剤性や耐油性試験では効果があるものの長時間試験では画像消失が見られ、画像保存性向上の効果は不十分である。さらに特開平5−147357号公報等にはスルホニル尿素化合物を顕色剤として用いた例が報告されている。これは優れた画像保存性を示すが、耐可塑剤性試験における地色発色の問題や耐水性にやや弱いという欠点がある。
【0008】
さらに、尿素又はチオ尿素化合物にスルホンアミド基を導入した例もあり、特開平7−304727号公報及び特開平8−59603号公報記載のジフェニル尿素スルホンアミド化合物、特開平8−25810号公報及び特開平8−132739号公報記載のジフェニルチオ尿素スルホンアミド化合物等が挙げられる。これらは優れた画像保存性を示すが、耐熱試験における地色発色という欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、記録部の画像保存性及び白紙部の耐熱地色安定性を改良した感熱記録体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本研究者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、新規なチオ尿素化合物の合成に成功するとともに、該化合物が感熱記録体の顕色剤として優れた機能を発揮することを見い出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は下記一般式(1)で表されるチオ尿素化合物、及びこれを用いた感熱記録体に関するものである。
【0011】
【化2】
(但し、R1、R2はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、電子吸引性基を表す。mは0〜5の整数を表す。nは0〜4の整数を表す。)
【0012】
ここで、R1、R2は該化合物を顕色剤として用いた場合に発色及び画像保存性を阻害しない置換基であれば良い。このうち顕色能力の安定性や発色感度の点から、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、電子吸引性基として塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子、ニトロ基が望ましい。
【0013】
本発明の化合物は、分子内にヒドロキシ基を持たないが染料前駆体を発色させる顕色能を有する、いわゆる非フェノール系顕色剤である。本発明の化合物は、N,N’−ジフェニルチオ尿素を中心にして左右同じ位置にフェニルスルファモイル基を導入した対称型チオ尿素化合物である。チオ尿素構造は染料を発色させる顕色能を有しているが、それだけでは画像保存性を向上させる効果に乏しい。そこでフェニルスルファモイル基を2個導入することで大幅な画像保存性の向上を図った。本発明はこれを用いることにより画像保存性が向上するだけでなく、感熱記録体の白紙部の耐熱地色安定性が向上することを見い出すことによってなされたものである。
【0014】
本発明で用いられる化合物の具体例として以下の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のチオ尿素化合物は、アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド化合物を従来公知の方法(例えばD.C.Schroeder,Chem.Rev.,55,181(1955)に記載の方法)でチオ尿素化することにより合成することができる。具体的には、(a)二硫化炭素とアニリンを反応させることによりイソチオシアネートを経由して目的とするチオ尿素化合物を合成する方法が挙げられる。この場合、反応を促進するために幾つか改良法が考案されている。例えば、(a−1)少量の硫黄を添加する方法(S.Hunig et al.,Ann.,579,77(1953))や(a−2)過酸化水素水を添加する方法(J.v.Braum,Chem.Ber.,33,2726(1900))、(a−3)エタノール等の水溶性溶媒を用いて水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを添加する方法(N.A.Lange and W.R.Reed,J.Am.Chem.Soc.,48,1069(1926))、(a−4)アニリン2モルに対してよう素1モルとピリジン4モルを加える方法(H.S.Fry,Am.Chem.Soc.,35,1539(1913))等がある。特に(a−4)の方法は適用範囲が広く様々なチオ尿素化合物が合成可能である。さらに(a)以外には、(b)チオホスゲンとアミンを反応させる方法(G.M.Dyson,J,Chem.Soc.,1934,174)等がある。
【0020】
上記チオ尿素化合物の原料となるアミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド化合物は以下の方法で合成できる。まず、アセトアミドベンゼンスルホニルクロライド化合物とアニリン化合物を反応させてアセトアミド−N−フェニルベンゼンスルホンアミド化合物を合成する。次にアルカリ加水分解反応によりアセチル基を脱離してアミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド化合物に導く。
【0021】
本発明の感熱記録体を製造するには、従来公知の種々の製造方法を利用することができる。具体的には、以下の様な方法で製造することができる。即ち、チオ尿素化合物、染料前駆体、増感剤をそれぞれボールミル、アトライター、サンドグラインダー等の粉砕機あるいは乳化機で微粒化し、各種填料及び各種添加剤を加え、水溶性バインダーの水溶液中で分散して塗料とし、これをエアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター等の各種コーター等で任意の支持体に塗工すると感熱記録体が得られる。チオ尿素化合物は単独又は2種類以上混合して使用しても良い。
【0022】
本発明の感熱記録体に使用する染料前駆体としては、従来公知のものを使用することができる。以下に染料前駆体を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、またこれらを2種類以上混合して使用しても良い。
【0023】
3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド<商品名:CVL>、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン<ODB>、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン<ODB−2>、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン<S−205>、3−ジエチルアミノ−7−m−トリフルオロメチルアニリノフルオラン<Black−100>、3−ジブチルアミノ−7−o−クロロアニリノフルオラン<TH−107>、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン<PSD−150>、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン<Green−2>、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド<MGL>、トリス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メタン<LCV>、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド<インドリルレッド>、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン<OR−55>、3,3−ビス[2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,5,6,7−テトラクロロフタリド<NIR−Black>、1,1,5,5−テトラキス(p−ジメチルアミノフェニル)−3−メトキシ−1,4−ペンタジエン、1,1,5,5−テトラキス(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,4−ペンタジエン。
【0024】
本発明においては、チオ尿素化合物と従来使用されている既知の顕色剤の1種又は2種以上を併用することができる。以下に顕色剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,7−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノールなどのビスフェノール類、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸ノルマルプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチルなどの4−ヒドロキシ安息香酸エステル類、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシフタル酸ジイソプロピル、4−ヒドロキシフタル酸ジベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジヘキシルなどの4−ヒドロキシフタル酸ジエステル類、フタル酸モノベンジルエステル、フタル酸モノシクロヘキシルエステル、フタル酸モノフェニルエステル、フタル酸モノメチルフェニルエステルなどのフタル酸モノエステル類、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチル−5−エチルフェニル)スルフィドなどのビスヒドロキシフェニルスルフィド類、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ノルマルプロポキシジフェニルスルホンなどの4−ヒドロキシフェニルアリールスルホン類、4−ヒドロキシフェニルベンゼンスルホナート、4−ヒドロキシフェニル−p−トリルスルホナート、4−ヒドロキシフェニル−p−クロルベンゼンスルホナートなどの4−ヒドロキシフェニルアリールスルホナ−ト類、1,3−ジ[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ジ[2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−プロピル]ベンゼンなどの1,3−ジ[2−(ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン類、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸ノルマルプロピル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸ブチルなどの4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸エステル類、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2−ヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルスルホン、ビス(3−クロル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスヒドロキシフェニルスルホン類、p−tert−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−ベンジルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどのフェノール類、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、3−sec−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸などの芳香族カルボン酸の金属塩。
【0026】
染料前駆体と顕色剤を発色成分とする感熱記録体においては、発色感度を上げるために通常増感剤が使用される。以下に増感剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、またこれらを2種類以上混合して使用しても良い。
【0027】
ステアリン酸、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸、エチレンビスステアロアミド、ヤシ脂肪酸アミド、モンタン系ワックス、ポリエチレンワックス、フェニル−α−ナフチルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、ジフェニルカーボネート、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、p−ベンジルビフェニル、m−ターフェニル、トリフェニルメタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビスフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ビスフェノキシブタン、1,4−ビスフェノキシブテン、2−ナフチルベンジルエ−テル、1,4−ジエトキシナフタリン、1,4−ジメトキシナフタリン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチルエステル、2−ナフトエ酸フェニルエステル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニル−2−プロパノール、1,3−ジフェノキシ−2−プロパノール、p−(ベンジルオキシ)ベンジルアルコール、ノルマルオクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、ノルマルオクタデシルカルバモイルベンゼン。
【0028】
本発明においては、記録画像の安定性を向上させるため、各種助剤を添加してもよい。以下に助剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、p−クロロ安息香酸金属塩(Zn、Ca)、p−ニトロ安息香酸金属塩(Zn、Ca)、フタル酸モノベンジルエステル金属塩(Zn、Ca)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチル)フェノール。
【0030】
本発明の感熱記録体に使用するバインダーとしては、従来、感熱記録の分野で公知のものを使用することができる。以下にバインダーを例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
重合度が2000以下の完全ケン化ポリビニールアルコール、部分ケン化ポリビニールアルコール、カルボキシ変性ポリビニールアルコール、アマイド変性ポリビニールアルコール、スルホン酸変性ポリビニールアルコール、その他の変性ポリビニールアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン、酢酸ビニール、アクリルアミド、アクリル酸エステル等の重合体及び共重合体、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂、その他を挙げることができる。これら天然及び合成高分子物質は水またはアルコール等の有機溶剤に溶解して使用するほか、水等の媒体に乳化またはペースト状に分散した状態で使用できる。また、これらを2種類以上使用することもできる。
【0032】
本発明の感熱記録体に使用する填料としては、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカ、水酸化マグネシウム、酸化チタン、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、その他の天然または合成の無機または有機填料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらを2種類以上使用することもできる。
【0033】
添加剤としては、紫外線吸収剤、消泡剤、蛍光増白剤、耐水化剤、滑剤等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の感熱記録体に使用する染料前駆体及び顕色剤の量、その他の各種成分の種類及び量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され特に限定されるものではないが、通常、染料前駆体1部に対して、顕色剤1〜8部、填料1〜20部が好ましく、バインダーは全固形分中10〜25%が好ましい。
【0035】
本発明の感熱記録体に使用される支持体としては、上質紙、中質紙、コート紙等の紙や、合成紙、プラスチックフィルム等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
さらに保存性を高める目的で、高分子物質等のオーバーコート層を感熱発色層上に設けることもできる。また、保存性及び感度を高める目的で、有機填料又は無機填料を含有するアンダーコート層を発色層と支持体の間に設けることもできる。
【0037】
【実施例】
下記に実施例として本発明のチオ尿素化合物の合成例、ならびにその製造に適した出発物質及び中間物質の合成例、及びそれらを顕色剤として用いた感熱記録体の製造例を例示し本発明を具体的に説明する。また、反応物質やその他の使用成分は代表例として呈示したものであり、本発明の範囲内で上記に説明したように各種の変更が可能である。
【0038】
−チオ尿素化合物の合成−
[合成例1−1]4−アセトアミド−N−フェニルベンゼンスルホンアミドの合成
4−アセトアミドベンゼンスルホニルクロライド9.23gをピリジン50mlに溶解した。ここにアニリン3mlを添加して、室温で3時間反応させた。2N−塩酸を加えて酸性にして酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。エバポレータで溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルとn−ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、4−アセトアミド−N−フェニルベンゼンスルホンアミドのピンク色固体を7.85g(収率82%)得た。
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3290,3239,3190,3116,3063,1673,1592,1541,1496,1470,1403,1371,1333,1317,1269,1165,1092,832,767,730,702,683,618,561
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
2.06(3H,s,Ac),6.99(1H,t,J=7Hz,ArH),7.08(2H,d,J=8Hz,ArH),7.19(2H,d,J=8Hz,ArH),7.64-7.70(4H,m,ArH),10.08(1H,s,NH),10.23(1H,s,NH)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
23.97,118.34,119.85,123.63,127.68,128.78,132.97,137.76,142.96,168.73
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
291(M+H)+
【0039】
[合成例1−2]4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミドの合成
4−アセトアミド−N−フェニルベンゼンスルホンアミド7.5gに2N−水酸化カリウムのエタノール溶液50mlを加え、3時間加熱還流して反応させた。反応終了後、2N−塩酸を加えて酸性にすると多量の固体が生成した。これを濾取して酢酸エチルとn−ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミドの薄茶色固体を6.02g(収率92%)得た。
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3420,3349,3294,3246,1638,1596,1495,1465,1435,1394,1319,1301,1220,1152,1093,1072,918,891,831,751,691,561
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
5.92(2H,s,NH2),6.52(2H,d,J=9Hz,ArH),6.96(1H,t,J=7Hz,ArH),7.06(2H,d,J=8Hz,ArH),7.18(2H,t,J=8Hz,ArH),7.38(2H,d,J=8Hz,ArH),9.82(1H,s,NH)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
112.50,119.36,123.18,124.43,128.62,128.83,138.44,152.73
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
249(M+H)+
【0040】
[合成例1−3]4,4’−ジフェニルスルファモイル−N,N’−ジフェニルチオ尿素(A−01)の合成
4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド6.0gをピリジン30mlに溶解した。ここに窒素雰囲気下で、よう素3.03gを二硫化炭素40mlに溶解した溶液を滴下し、5時間加熱還流して反応させた。反応終了後、2N−塩酸を加えて酸性にして酢酸エチルで抽出し、チオ硫酸ナトリウム水溶液さらに水で洗浄した。エバポレータで溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルで再結晶を行い、4,4’−ジフェニルスルファモイル−N,N’−ジフェニルチオ尿素(A−01)の白色固体を4.42g(収率68%)得た。
<分解点>
180−182℃
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3255,3197,3137,3092,3020,1590,1529,1493,1401,1337,1260,1218,1157,1092,1027,924,894,844,738,696,554
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
7.00(2H,t,J=8Hz,ArH),7.11(4H,d,J=8Hz,ArH),7.21(4H,d,J=8Hz,ArH),7.66-7.72(8H,m,ArH),10.22(2H,s,NH),10.30(2H,s,NH)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
119.66,122.20,123.73,127.31,128.98,134.38,137.74,143.20,176.41
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
539(M+H)+
【0041】
−感熱記録体の製造−
[実施例]
下記組成物からなる感熱記録体を作製した。即ち、まず下記配合の染料分散液(A液)と顕色剤分散液(B液)を各々サンドグラインダーにて平均粒子径1μmまで磨砕した。
次いで、下記の割合でA液とB液及びカオリンクレーの分散液を混合して感熱塗料とした。
A液:染料分散 9.2部
B液:顕色剤分散液 36.0部
カオリンクレー(50%分散液) 12.0部
この感熱塗料を50g/m2の基紙の片面に塗布量6.0−6.5g/m2になる様に塗布乾燥し、このシートをスーパーカレンダーで平滑度が500−600秒になる様に処理し、感熱記録体を作製した。
【0042】
[比較例1]
顕色剤分散液(B液)において、本発明の化合物(A−01)に代えて4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン(B−01)を用いた以外は、実施例と同様にして感熱記録体を作製した。
【0043】
[比較例2]
顕色剤分散液(B液)において、本発明の化合物(A−01)に代えてN,N’−ジフェニルチオ尿素(B−02)を用いた以外は、実施例と同様にして感熱記録体を作製した。
【0044】
−感熱記録体の評価−
[発色方法]
作製した感熱記録体をUBIプリンター201(UBI社製)を使用し、印加エネルギー450mj/mm2で、作製した感熱記録体に記録を行った。次いで、その記録部及び白紙部の画像濃度をマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルターを使用)により測定した。これを試験サンプルとし、以下の試験を行った。
[耐可塑剤性試験]:試験サンプルを塩化ビニルフィルム(三菱樹脂(株)製ダイアラップ300G)に接触させ、40℃で4時間放置し、記録部の画像残存濃度をマクベス濃度計で測定した。
[耐油性試験]:試験サンプルをサラダ油に1時間浸し、油を拭き取り、24時間室温に放置し、記録部の画像残存濃度をマクベス濃度計で測定した。
[耐水性試験]:試験サンプルを水道水に24時間浸し、30℃で2時間乾燥し、記録部の画像残存濃度をマクベス濃度計で測定した。
[白紙部の耐熱地色試験]:試験サンプルを100℃で30分放置し、白紙部の濃度をマクベス濃度計で測定した。
画像記録部の画像保存性試験の結果を表1に、白紙部の耐熱地色試験の結果を表2に示す。
【0045】
【表1】
表1.画像保存性試験の結果
【0046】
【表2】
表2.耐熱地色試験の結果
【0047】
表1及び2の結果から明らかなように、本発明の化合物を顕色剤として用いた実施例は、従来のフェノール系顕色剤やフェニルスルファモイル基を持たないチオ尿素系顕色剤を用いた比較例に比べて、耐油性や耐可塑剤性が格段に向上しているのみならず耐水性も良好であり、かつ白紙部の耐熱地色安定性にも優れている。
【0048】
【発明の効果】
本発明のチオ尿素化合物は、染料前駆体を発色せしめるに十分な能力を持っている。また、該化合物を顕色剤として用いた感熱記録体は、記録部の画像保存性及び白紙部の耐熱地色安定性に非常に優れているため、極めて有用なものである。
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