JP3851138B2 - 電力用半導体装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ制御やインバータなどに使用される電力用半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電力用半導体装置(以下、「半導体パワーモジュール」という。)は、半導体を利用して直流入力を任意の周波数の交流に変換して出力するもので、モータ制御や各種用途に応じたインバータ、あるいは無停電電源(UPS)などに使用されている。図9は、状来の半導体パワーモジュール50の平面図を示しており、図10はその内部構造を示す側面断面図である。図9に示すように、通常、半導体パワーモジュールは四辺形に形成され、以下に記す各種機能部品が四辺形の冷却用金属ベース51上に積み重ねられ、外部を樹脂ケース58で囲っている。
【0003】
図10において、冷却用金属ベース51に絶縁基板52が固着され、その表面に回路パターン53が固着されている。この回路パターン53には複数の半導体チップ54が実装されており、各半導体チップ54のある端子が電極板56aに、別の端子が電極板56bに接続され、さらに回路パターン53が電極板56cに接続されている。これらの各電極板56a、56b、56cは、相互に絶縁されて樹脂ケース58の外部に延び、それぞれ外部接続用主回路端子となる直流入力端子のP端子61とN端子62、及び交流端子63を形成する。樹脂ケース58の内部はシリコンゲルなどの充填材59が充填され、半導体チップ54他を保護している。半導体パワーモジュール50の四辺形の一辺の縁部には制御端子64が配列されている。図示の例では、冷却用金属ベース51の四辺形の各頂点部に、冷却用金属ベース51を外部にある他の冷却部材にボルトで締め付けるための取付けボルト用穴66が設けられている。
【0004】
以上のように構成された半導体パワーモジュール50の動作時には、P端子61からN端子62に流れる直流電流を、制御端子64からの指令に基づく半導体チップ54の作用によって交流電流に変換し、この交流電流を交流端子64から出力する。この際、半導体チップ54が大量の熱を発生する。この発熱による半導体チップ54の高温破壊を防ぐため、熱が絶縁基板52から冷却用金属ベース51に放熱され、さらに、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた部材で形成される放熱フィン(図示せず)などの外部の冷却部材に逃がされる。この放熱フィンへの放熱を行うため、冷却用金属ベース51は取付けボルト用穴66を介してボルトにより前記冷却フィンに取り付けられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような従来の技術による半導体パワーモジュールには問題があった。まず、図10に示すように、半導体チップ54が半導体パワーモジュール50の略中央部分に配置されているため、半導体チップ54の発熱が半導体パワーモジュールの中央部分で発生する。この発生した熱は絶縁基板52から冷却用金属ベース51に伝わり、さらに冷却用金属ベース51から前記放熱フィンに伝えられる。冷却用金属ベース51から放熱フィンへの熱の伝達は、そのほとんどが取付けボルト用穴66の位置でボルトにより締め付けられて両者が圧着した部位からとなる。取付けボルト用穴66の位置が前記中央部分にある発熱部位から距離的に離れていれば、十分な放熱を行うことができない。
【0006】
そのために、半導体パワーモジュール50の四辺形の各辺に沿って、1つあるいはそれ以上のボルト締め付け部を追加することが考えられる。しかしながらこの場合、上述のように発熱部が半導体パワーモジュール50の略中央部にあることから、放熱を効果的に行うために、前記追加の取付けボルト用穴66を前記四辺形の全ての辺に配置せざるを得ないという問題がある。
【0007】
次に、図9から明らかなように、従来の半導体パワーモジュール50では、P端子61、N端子62、交流端子63が半導体パワーモジュール50の中央部に1列に配置されている。しかも図10に示すように、これら各端子61、62、63は、冷却用金属ベース51を基準にして同じ高さに設けられている。通常は、P端子61とN端子62とがバスバーにより接続されるが、このバスバーは、図11に示すように、2枚の導電板71、72とその中間に挟まれる絶縁層73からなるラミネート構造のバスバー70が使用される。
【0008】
図11に示すような構造のバスバー70を、同一高さに形成されたP端子61、N端子62に接続するには、バスバー70を加工するなどの手間が必要となる。例えば図12に示すように、下側にある導電板72をN端子62に接続するとき、上側にある導電板71をP端子61に接続するには、下側の導電板72と絶縁層73の一部を取り除いて上側の導電板71を下方へ曲げる必要がある。さらに、通常交流端子63には個別の導電板74が接続されるが、交流端子63とバスバー70の下側の導電板72との短絡を回避するには、バスバー70全体を曲げて交流端子63から逃がすようにするか、あるいは図12に示すようにバスバー70に貫通孔76を設け、交流端子63に延長部77を取り付けて貫通孔76に貫通させた後、導電板74に延長部77を接続する、などの対策が必要である。
【0009】
すなわち、従来の半導体パワーモジュール50では、各端子61、62、63への導電板71、72、74の接続に当たっては追加の加工が必要となり、かつ煩雑な接続作業が要求されていた。さらに、バスバー70、導電板74を取り付けた半導体パワーモジュール50は嵩が高く、この半導体パワーモジュール50を含む装置全体が大きくなるという問題があった。
【0010】
したがって本発明は、上述のような従来の問題を解消し、放熱性が改善され、外部導電板との接続が容易になり、全体として小型化あるいは高容量化が可能な半導体パワーモジュールを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる半導体パワーモジュールでは、半導体チップを冷却用金属ベースの四辺形の一対の対向する辺に沿って配列し、当該一対の対向する辺の冷却用金属ベースの縁に冷却用金属ベースと放熱フィンとを締め付けるための取付けボルト用穴を配置して両者をボルトで締結することにより効率的な放熱を可能とし、また、各電極端子を半導体パワーモジュールの外部に突接して設けることによって外部導電板との接続を容易にし、上述した問題を解消するもので、具体的には以下の内容を含む。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、四辺形板状の冷却用金属ベースと、前記冷却用金属ベースに固着された絶縁基板と、前記絶縁基板に形成された回路パターンに実装された複数の半導体チップと、前記回路パターン、及び前記半導体チップの各端子が接続された複数の電極板と、前記絶縁基板、半導体チップ、電極板を囲んで前記冷却用金属ベースに固着されるケースと、前記各電極板から延びる複数の外部接続用主回路端子と、から構成される電力用半導体装置であって、前記複数の半導体チップが、前記冷却用金属ベースの四辺形の一対の対向する辺に沿って当該一対の対向する辺に隣接して配列され、前記冷却用金属ベースを外部の冷却部材に取付けるための取付けボルト用穴が、前記冷却用金属ベースの前記一対の対向する辺に沿った縁部に形成され、前記複数の電極板が、前記一対の対向する辺に沿って配列された前記半導体チップの2つの配列の中間に、前記一対の対向する辺とほぼ平行に延びるよう配置されていることを特徴とする電力用半導体装置に関する。放熱フィンを冷却用金属ベースに取付けるボルト用穴と半導体チップとを隣接して設けることにより、半導体チップの熱を効率よく外部へ放熱させるものである。
【0014】
請求項2に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記複数の電極板が、絶縁層を挟んで各電極板を順次積み重ねたラミネート構造に構成されていることを特徴としている。相互インダクタンスを低減させる効果を得るものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明は、前記複数の外部接続用主回路端子が、前記一対の対向する辺とほぼ平行に延びる前記電極板に沿って前記冷却用金属ベースから外部に突出して設けられていることを特徴とする電力用半導体装置に関する。外部接続用主回路端子を外部に突出し設けることにより、外部導電板との接続を容易にするものである。
【0016】
請求項4に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記複数の外部接続用主回路端子の内、直流用外部接続用主回路端子を構成するP端子とN端子が前記四辺形の1つの辺に、交流用外部接続主回路端子を構成する交流端子が前記1つの辺に対向する辺にそれぞれ外部に突出して設けられていることを特徴としている。直流入力側の電極端子と交流出力側の電極端子とを分けて配置することにより、入力側と出力側の双方の接続を容易にするものである。
【0017】
請求項5に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記P端子とN端子の各外部導電板取付け面が、一対の導電板とその中間に介在する絶縁層とのラミネート構造からなる外部導電板の内の一方の導電板の取付け面と他方の導電板の取付け面との高さに各々一致させ、前記冷却用金属ベースから前記P端子とN端子の前記各外部導電板取付け面までの高さの間に差を設けて配設されていることを特徴としている。電極端子への外部導電板の接続に当たり、外部導電板の不必要な加工を廃止するものである。
【0018】
請求項6に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記半導体チップを含む回路パターンの動作を制御するための制御端子が、前記四辺形の内前記外部接続用主回路端子が設けられていない辺の縁部に設けられていることを特徴としている。制御端子の配線を容易にするものである。
【0019】
請求項7に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記複数の外部接続用主回路端子の少なくとも1つの電極端子に、外部導電板を取り付ける複数の取付け穴が設けられていることを特徴としている。複数のボルトで取付けることにより、接触面積を高めるものである。
【0020】
請求項8に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記少なくとも1つの電極端子に設けられる複数の取付け穴が、前記冷却用金属ベースを外部の冷却用部材に締結するために使用されるボルトと同一のボルトが使用できる穴に形成されていることを特徴としている。ボルトの共通化により、取付け作業性を改善するものである。
【0021】
請求項9に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記少なくとも1つの電極端子に設けられる複数の取付け穴の内、少なくとも1つの穴の径がその他の穴の径と異なることを特徴としている。他の構成部品、回路を接続する際に利用可能にするものである。
【0022】
請求項10に記載の本発明にかかる電力用半導体装置は、前記P端子とN端子にそれぞれ設けられた前記径の異なる穴を使用し、前記P端子とN端子との間にコンデンサを取り付けたことを特徴としている。
【0024】
請求項11に記載の本発明は、上述したいずれか一に記載の電力用半導体装置の複数基を並列に配し、各電力用半導体装置の対応する各外部接続用主回路端子どうしをバスバーで接続して組み合わせたことを特徴とする組合せ電力用半導体装置に関する。以上の各請求項に記載の電力用半導体装置は外部導電板との取付けが容易であり、これを利用して複数の電力用半導体装置を効率よく組み合わせるものである。
【0025】
そして、請求項12に記載の本発明にかかる組合せ電力用半導体装置は、前記バスバーに単数もしくは複数のコンデンサを取り付けたことを特徴としている。外部接続用主回路端子に隣接してコンデンサを配置し、インダクタンスを低減するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる半導体パワーモジュールの第1の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール10の内部構造を示している。図において、本実施の形態に係る半導体パワーモジュール10は、冷却用金属ベース1に絶縁基板2が固着され、絶縁基板2の表面に回路パターン3が固着されている。回路パターン3には複数の半導体チップ4が半田などで接続され、実装されている。図示のように半導体チップ4は、四辺形形状の冷却用金属ベース1の図の縦方向に延びる一対の対向する辺に沿ってそれぞれ配列されており、積層電極板6が、前記一対の対向する辺と平行に、半導体チップ4の2つの配列の中間に配置されている。
【0027】
図2は、側方から見た積層電極板6の構造と半導体チップ4との接続状態を示している。積層電極板6は3層の電極板6a、6b、6cから構成され、各電極板6a、6b、6cには、半導体チップ4の各端子と、回路パターン3とがそれぞれ接続される。各電極板6a、6b、6cは、それらの下に配置された絶縁層7a、7b、7cと共にラミネート構造を形成しており、これら絶縁層7a、7b、7cによって相互に絶縁されている。
【0028】
各電極板6a、6b、6cは樹脂ケース(図示せず)の外部に延び、図9に示すものと同様、例えば半導体パワーモジュール10の上面でそれぞれ外部接続用主回路端子であるP端子、N端子、交流端子を形成する。なお、樹脂ケースに囲まれた内部の空間はシリコンゲルなどの充填材が充填されており、この点は従来の半導体パワーモジュール50と同様である。
【0029】
図1に示す本実施の形態に係る半導体パワーモジュール10は、図の縦方向に延びる一対の対向する辺の縁部に、冷却用金属ベース1を外部の冷却部材である放熱フィンなどに締め付けるための取付けボルト用穴16をそれぞれ4つずつ備えている。この取付けボルト用穴16の数は、半導体チップ4の発熱量ほかの諸条件に応じ、任意に選択することができる。また、前記一対の対向する辺には、制御端子14も設けられている。
【0030】
以上のように構成された半導体パワーモジュール10の動作時は、P端子61からN端子62に流れる直流電流が、制御端子14からの指令に基づく半導体チップ4の作用によって交流電流に変換され、この交流電流が交流端子63(各端子61、62、63は図9参照)から出力される。この際、半導体チップ4が大量の熱を発生するが、発生した熱は絶縁基板2から冷却用金属ベース1に伝えられ、さらにその熱は取付けボルト用穴16を介してボルトで締結される放熱フィンなどの外部冷却部材に放熱される。
【0031】
本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール10による有利な点は以下の通りである。まず、図1に示す半導体パワーモジュール10において、発熱の要因となる複数の半導体チップ4が、四辺形からなる冷却用金属ベース1の一対の対向する辺に沿ってこれに隣接して配列され、当該一対の対向する辺の縁部に複数の(図示の例では各4つの)取付けボルト用穴16が設けられている。上述のように、冷却用金属ベース1を放熱フィンにボルトで締め付けて圧着させる箇所が有効な放熱部位となるが、本実施の形態ではこの取付けボルト用穴16が熱源である半導体チップ4に沿って隣接して設けられている。このため、放熱効果が高く、必要な取付けボルト用穴16の数(すなわち、締め付け用ボルトの数)を減らすことができ、また、高い放熱効果を利用して大電流に対応できる半導体パワーモジュールを実現することが可能となる。
【0032】
加えて、本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール10では、積層電極板6が、半導体チップ4の2つの配列の中間で前記一対の対向する辺と平行に、半導体パワーモジュール10の中央部を横切るように配置されている。このため、半導体パワーモジュール10の中央部分に発熱する部材が存在せず、したがって、中央部分で発生する熱を外部に放出するための取付けボルト用穴16を半導体パワーモジュールの全辺にわたってほぼ均等に設ける必要がない。この結果、冷却用金属ベース1を放熱フィンに締め付けるための取付けボルト用穴16を、半導体チップ4の配列に隣接する一対の対向する辺の縁部にのみ必要な数だけ設けることで、十分な放熱が可能となる。このことは、当該一対の対向する辺以外の辺(図1の例では上下に位置する一対の対向する辺)には取付けボルト用穴16を設ける必要がなくなることを意味し、これら取付けボルト用穴のない辺は、後の実施の形態に示すように他の目的に有効に使用することを可能とする。
【0033】
なお、冷却用金属ベース1の四辺形の各頂点部には取付けボルト用穴16がそれぞれ設けられている(図1では16xで示す)。本明細書において、当該頂点部にあるこれら取付けボルト用穴16xは、その他の取付けボルト用穴16が設けられている一対の対向する辺と同じ辺に属しているものと解釈する。したがって取付けボルト用穴16が設けられていない辺という場合には、この頂点部にある取付けボルト用穴16xを除いた部分の各辺を意味するものとする。
【0034】
本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール10内部構造の更なる利点は、積層電極板6をラミネート構造としたことにより、各電極板6a、6b、6c間の相互インダクタンスを極力小さくすることが可能になったことである。この結果、半導体パワーモジュール10の起動時や遮断時、もしくは電圧変動時における逆誘導起電力に基づく障害を極力抑制する効果を得ることができる。
【0035】
次に、本発明にかかる第2の実施の形態の半導体パワーモジュールについて図面を参照して説明する。図3は、本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20の平面図を示している。以下、先の実施の形態で使用したものと同一の構成要素に対しては同一の符号を用いるものとする。図3において、本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20は、四辺形の冷却用金属ベース1の一対の対向する辺の縁に取付けボルト用穴16がそれぞれ4つ設けられ、樹脂ケース8で覆われた内部には、図1に示す構造と同様に積層電極板6、並びに半導体チップ4が配置されている。また、図1に示すような半導体チップ4の2つの配列に隣接した一対の対向する辺の縁部に前記の取付けボルト用穴16が配置されている。したがって、当該一対の対向する辺を除く四辺形の他の辺には取付けボルト用穴16を設けるまでもなく十分な放熱効果を得ることができる。
【0036】
本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20では、上述の取付けボルト用穴16が設けられていない一対の対向する辺の内、一方の辺に直流用外部接続用主回路端子であるP端子21とN端子22が、また、これと対向する他の辺には交流用外部接続用主回路端子、すなわち交流端子23が、それぞれ冷却用金属ベース1の外部に突出して設けられている。但し、これら端子21、22、23の配置は単なる1例であり、目的に応じて任意に配置変換できる。取付けボルト用穴16が設けられた一対の対向する辺には、制御端子14がそれぞれ設けられている。
【0037】
図4は、図3に示すように構成された半導体パワーモジュール20の使用状態を示している。図において、半導体パワーモジュール20のP端子21には第1の導電板26が、N端子22には第2の導電板27が、また、交流端子23には第3の導電板28が、それぞれボルト31によって取り付けられている。図示の例では、第1の導電板26と第2の導電板27とが個別に設けられているが、図11に示すようなラミネート構造のバスバー70がP端子21及びN端子22に接続されてもよい。制御端子14には制御用配線29が接続され、また、各取付けボルト用穴16にはボルト32が差し込まれ、上述した冷却用金属ベース1を外部の冷却部材である放熱フィンなどに締め付けている。
【0038】
以上のような構成にかかる半導体パワーモジュール20の動作は、先の実施の形態に記した内容と同様であり、P端子21からN端子22に流れる直流電流が半導体チップ4の作用で任意の周波数の交流電流に変換され、交流端子23から当該交流電流を導電板28に出力する。この際に半導体チップ4で発生する熱は、冷却用金属ベース1からボルト32で締結された冷却部材(放熱フィン)に伝えられ、外部へ放出される。
【0039】
図3、図4に示すように、本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20では、取付けボルト用穴16(ボルト32)が設けられる一対の対向する辺以外の辺を利用して各端子21、22、23を突出して設けることができるため、各端子21、22、23への導電板26、27、28の取付け、接続が極めて容易となる。また、作業性が良好であることから、確実なボルトの締め付け、接続を得ることができる。
【0040】
従来の半導体パワーモジュール50(図9参照)でこのような各端子21、22、23の配置をしようとした場合、放熱性を考慮して放熱フィン締め付け用のボルト32の数を増加するときを想定すると、熱源が中央部にあることから、ボルト32の取付けボルト用穴16を例えば図4の破線で示す取付けボルト用穴16aの位置を含めた半導体パワーモジュールの全周にわたって設ける必要がある。この状態で取付けボルト用穴16aにボルト32を締結すると、当該ボルト32が導電板26、27に極めて接近するために絶縁距離が不足となり、絶縁破壊するなどの問題が生じ得る。これはラミネート構造のバスバー70を使用したときも同様で、ボルト32の直上をバスバー70が覆うことから絶縁距離が不足し、絶縁破壊が起こり得る。
【0041】
この場合に必要な絶縁距離は、例えば出力電圧が1200Vの場合、約8mmである。絶縁破壊を避けようとすれば、従来ではP端子21とN端子22との距離を離すこと、導電板26、27のサイズを縮小すること、もしくはバスバー70をボルト32に対して絶縁距離以上離して配置すること、などの対応が必要があり、結果として設計の自由度を低下させ、半導体パワーモジュールの大型化につながり得た。
【0042】
本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20では、各端子21、22、23は、取付けボルト用穴16が設けられた一対の対向する辺以外の辺に配置されていることから、例えば破線で示す取付けボルト用穴16aの位置にボルト32が配置されることはなく、したがって上述のような絶縁破壊の問題がない。
【0043】
なお、本実施の形態にかかる、半導体パワーモジュールの四辺形の外部に各外部接続用主回路端子21、22、23を突出して設ける構成は、例えば、図9に示すような従来技術による半導体パワーモジュール50であっても、放熱フィン締結ボルトの取付けボルト用穴66が四辺形の各頂点部のみに配置されている構造のものに対して全く同様に適用することができる。取付けボルト用穴(16、66)が四辺形の各頂点部のみであれば、いずれの辺においても前記各端子21、22、23を突出させるスペースを得ることができ、また、必要な放熱もなされていることから、取付けボルト用穴追加による上述の絶縁破壊の虞がない。
【0044】
次に、本発明にかかる第3の実施の形態の半導体パワーモジュールについて図面を参照して説明する。図5は、図3に示す構造の半導体パワーモジュール20のP端子21とN端子22にバスバー70を取付けた状況を示している。半導体パワーモジュール20の主要部は図の手前側に位置しており、図面ではP端子21とN端子22以外は省略されている。P端子21はバスバー70の上側の導電板71に接続され、N端子22は絶縁層73を挟んで下側の導電板72に接続されている。
【0045】
図からも明らかなように、本実施の形態にかかるP端子21とN端子22の各外部導電板取付け面は、冷却用金属ベース1からの高さが異なり、それぞれに接続されるバスバー70の各導電板71、72の高さと一致するよう設けられている。具体的に、両端子21、22の外部導電板取付け面の高さの差Δhは、上側の導電板71の下面と下側の導電板72の下面との差dに一致させている。
【0046】
半導体パワーモジュール20のP端子21、N端子22をこのように高さを変えて配置することにより、バスバー70を曲げることなく各端子21、22に接続できる。なお、交流端子23は、冷却用金属ベース1の対向する他の辺に設けられていることから、バスバー70に貫通孔(図12に符号76で示す孔)を設ける必要がなくなり、この観点からも接続作業を容易に行うことができる。
【0047】
次に、本発明にかかる第4の実施の形態の半導体パワーモジュールについて図面を参照して説明する。図6は、本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20aを示している。本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20aは、P端子21a、N端子22a、交流端子23aのそれぞれに、導電板取付け用の穴が3つあけられている。その他の構成、及び動作は、第2もしくは第3の実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20と同様である。この半導体パワーモジュール20aの各端子21a、22a、23aに取り付けられる導電板26a、27a、28aも同様にそれぞれ3つの穴が空けられており、各端子と導電板とを各3本のボルト31aで締結している。図面では、N端子22aに設けられる取付け穴33が見えるよう、N端子22aに接続される導電板27aが省略されている。
【0048】
以上のように構成された半導体パワーモジュール20aでは、各端子21a、22a、23aにおいて各3本のボルト31aを用いて導電板26a、27a、28aを締め付け、接続するため、各端子と導電板との接触面積が大きくなり、接触面での電圧降下が小さく、電圧降下による電送ロスを小さくすることができる。図4に示すような各端子で1本のボルト31を使用して大電流に対応しようとすると、ボルト31の径が大きくなり、これに伴って各電極21、22、23も大きくせざるを得ず、結果的に半導体パワーモジュール20も大型化することとなった。また、ボルト31を締め付けるためのトルクも増大する。
【0049】
図6に示すように、3本のボルト31aを使用して各導電板を取り付けることにより、各端子21a、22a、23aを小型のままで十分な接触面を得ることができ、さらには大径のボルト31で締結するほどの大トルクを必要としないため、取り付け作業も容易である。また、このとき使用するボルト31aを冷却用金属ベース1締結用のボルト32と共通化できれば、両ボルト31a、32間での区別の必要がなくなり、締結用のレンチも同一のものを使用できるなど、取り付け作業が効率的となる。
【0050】
なお、図6では、各電極端子21a、22a、23aに3つの取付け穴33を設けることとしているが、この数は要求に応じて2つ、あるいは任意の数とすることができる。また、この数は使用するボルト31aの大きさとの関係で選択することもできる。さらに各電極端子21a、22a、23aに設けられる取付け穴33の数は同一に揃える必然性はなく、必要に応じて電極端子各個に任意の数を選択することができる。
【0051】
図7は、本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20aの他の態様を示したもので、ここではP端子21b、N端子22bに空けられた複数の取付け穴の内、1つの穴の径を変え、その穴を利用してコンデンサ35をボルト34で両端子21b、22bの間に取付けるものとしている。その他の構成は図6に示す半導体パワーモジュール20aと同様であり、細部を省略している。
【0052】
従来の半導体パワーモジュールでは、上面にあるP端子、N端子を覆って導電板もしくはバスバー70が配置されるためこのようなコンデンサ35などの他の部品を取り付けるのは極めて困難であった。各端子21b、22bが冷却用金属ベース1から外部へ突出して設けられる本実施の形態においては、このようなコンデンサなどの小物部品や別の電子回路の取付けを極めて容易となる。
【0053】
図8は、図6に示す本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20aを横方向に複数基並列配置し、より大きな電流への対応を可能にする組み合わせ式の半導体パワーモジュールの構成を示している。図において、各半導体パワーモジュール20aのP端子21a、N端子22a(それぞれバスバー70の下側に位置する)には、この複数の半導体パワーモジュール20aをつなぐバスバー70が接続されている。この際、各半導体パワーモジュール20aのP端子21a、N端子22aとの間には、図5に示すような高さの差を設けることで、バスバー70の接続部を曲げ加工することなく締め付けが可能となり、効率的な取付けが可能となる。制御端子14には各半導体パワーモジュール20aをまたぐようにして制御用配線29が接続されている。また、バスバー70には多数の平滑用コンデンサ36が取り付けられている。
【0054】
本実施の形態にかかる半導体パワーモジュール20aによれば、各端子21a、22a、23aが半導体パワーモジュール20aの外部に突出して設けてあるため、バスバー70を半導体パワーモジュール20aから離して配置することが可能となり、接続が容易となるほか、コンデンサ36の取り付けや制御用配線29の配置も極めて容易となる。また、コンデンサ36を図示のようにP端子21a、N端子22aから近い距離に配置できるため、インダクタンスを低減させる効果を得ることもできる。従来の半導体パワーモジュール50(図9参照)では、バスバー70は半導体パワーモジュール50の上部を覆うように配置する必要があり、このためP端子61、N端子62、交流端子63への接続に煩わしさがあると同時に、複数基配置する場合の制約となっていた。
【0055】
なお、図8に示す例では、各端子に3つのボルトで締め付ける形式の半導体パワーモジュール20aを表示しているが、これは図4に示すような1つのボルト31で締め付ける形式の半導体パワーモジュール20であっても勿論同様に複数基の配置が可能である。
【0056】
また、図では2つの半導体パワーモジュール20aをつなぐ状態を示しているが、必要に応じこの半導体パワーモジュールの数をさらに増やすこともできる。交流端子23aに対してもバスバーを利用する接続が可能であり、このように交流用外部接続用主回路端子である交流端子23aと、直流用外部接続用主回路端子であるP端子21a、N端子22aとを互いに異なる辺に配置したことにより、直流入力ばかりでなく交流端子23aからの出力の取り出しも容易にすることができる。
【0057】
【発明の効果】
請求項1から請求項3に記載の本発明によれば、半導体チップで発生する熱を少ないボルト数によっても有効に冷却用金属ベースから外部の冷却部材へ放熱することができる電力用半導体装置を提供することができる。
【0058】
請求項4から請求項12に記載の本発明によれば、外部接続用主回路端子を冷却用金属ベースの四辺形の外部に突出して設けることにより、直流入力用導電板、及び交流出力用導電板を効率的に配置することができ、これら導電板の前記各端子への取付けを容易に行うことができる電力用半導体装置を提供することができる。
【0059】
請求項13及び請求項14に記載の本発明によれば、電力用半導体装置を簡単な構成で複数器並列につないだ高容量の組み合わせ電力用半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる1つの実施の形態の半導体パワーモジュールを示す平面図である。
【図2】 図1に示す半導体パワーモジュールの内部構造を示す部分側面断面図である。
【図3】 本発明にかかる他の実施の形態の半導体パワーモジュールを示す平面図である。
【図4】 図3に示す半導体パワーモジュールの使用状態を示す平面図である。
【図5】 本発明にかかる更に他の実施の形態の半導体パワーモジュールとバスバーの接続状態を示す斜視図である。
【図6】 本発明にかかる更に他の実施の形態の半導体パワーモジュールを示す平面図である。
【図7】 図6に示す半導体パワーモジュールの他の態様を示す平面図である。
【図8】 図6に示す半導体パワーモジュールを複数基配置した組合せ半導体パワーモジュールを示す平面図である。
【図9】 従来技術による半導体パワーモジュールを示す平面図である。
【図10】 従来技術による半導体パワーモジュールの内部構造を示す部分断面図である。
【図11】 外部導電板(バスバー)のラミネート構造を示す斜視図である。
【図12】 図11に示す外部導電板が半導体パワーモジュールに接続された状態を示す断面ずである。
【符号の説明】
1 冷却用金属ベース、 2 絶縁基板、 3 回路パターン、 4 半導体チップ、 6 積層電極板、 6a、6b、6c 電極板、 7a、7b、7c 絶縁層、 8 樹脂ケース、 10 半導体パワーモジュール、 14 制御端子、 16 取付けボルト用穴、 20、20a 半導体パワーモジュール、 21 P端子、 22 N端子、 23 交流端子、 31 ボルト、 32 ボルト、 70 バスバー。

Claims (12)

  1. 四辺形板状の冷却用金属ベースと、
    前記冷却用金属ベースに固着された絶縁基板と、
    前記絶縁基板に形成された回路パターンに実装された複数の半導体チップと、
    前記回路パターン、及び前記半導体チップの各端子が接続された複数の電極板と、
    前記絶縁基板、半導体チップ、電極板を囲んで前記冷却用金属ベースに固着されるケースと、
    前記各電極板から延びる複数の外部接続用主回路端子と、から構成される電力用半導体装置において、
    前記複数の半導体チップが、前記冷却用金属ベースの四辺形の一対の対向する辺に沿って当該一対の対向する辺に隣接して配列され、
    前記冷却用金属ベースを外部の冷却部材に取付けるための取付けボルト用穴が、前記冷却用金属ベースの前記一対の対向する辺に沿った縁部に形成され
    前記複数の電極板が、前記一対の対向する辺に沿って配列された前記半導体チップの2つの配列の中間に、前記一対の対向する辺とほぼ平行に延びるよう配置されていることを特徴とする電力用半導体装置。
  2. 前記複数の電極板が、絶縁層を挟んで各電極板を順次積み重ねたラミネート構造に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電力用半導体装置。
  3. 前記複数の外部接続用主回路端子が、前記一対の対向する辺とほぼ平行に延びる前記電極板に沿って前記冷却用金属ベースから外部に突出して設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の電力用半導体装置。
  4. 前記複数の外部接続用主回路端子の内、直流用外部接続用主回路端子を構成するP端子とN端子が前記四辺形の1つの辺に、交流用外部接続主回路端子を構成する交流端子が前記1つの辺に対向する辺にそれぞれ外部に突出して設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の電力用半導体装置。
  5. 前記P端子とN端子の各外部導電板取付け面が、一対の導電板とその中間に介在する絶縁層とのラミネート構造からなる外部導電板の内の一方の導電板の取付け面と他方の導電板の取付け面との高さに各々一致させ、前記冷却用金属ベースから前記P端子とN端子の前記各外部導電板取付け面までの高さの間に差を設けて配設されていることを特徴とする、請求項4に記載の電力用半導体装置。
  6. 前記半導体チップを含む回路パターンの動作を制御するための制御端子が、前記四辺形の内前記外部接続用主回路端子が設けられていない辺の縁部に設けられていることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の電力用半導体装置。
  7. 前記複数の外部接続用主回路端子の少なくとも1つの電極端子に、外部導電板を取り付ける複数の取付け穴が設けられていることを特徴とする、請求項3から請求項6のいずれか一に記載の電力用半導体装置。
  8. 前記少なくとも1つの電極端子に設けられる複数の取付け穴が、前記冷却用金属ベースを外部の冷却用部材に締結するために使用されるボルトと同一のボルトが使用できる穴に形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の電力用半導体装置。
  9. 前記少なくとも1つの電極端子に設けられる複数の取付け穴の内、少なくとも1つの穴の径がその他の穴の径と異なることを特徴とする、請求項7に記載の電力用半導体装置。
  10. 前記P端子とN端子にそれぞれ設けられた前記径の異なる穴を使用し、前記P端子とN端子との間にコンデンサを取り付けたことを特徴とする、請求項9に記載の電力用半導体装置。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか一に記載の電力用半導体装置の複数基を並列に配し、各電力用半導体装置の対応する各外部接続用主回路端子同士をバスバーで接続して組み合わせたことを特徴とする組合せ電力用半導体装置。
  12. 前記バスバーに単数もしくは複数のコンデンサを取り付けたことを 特徴とする、請求項11に記載の組合せ電力用半導体装置。
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