JP3850234B2 - エアバッグ用基布およびエアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突時に乗員の衝撃を吸収し、その保護を図るためのエアバッグ、及びそれに用いるエアバッグ用基布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の乗員を保護するための安全装置として、エアバッグの装着が進みつつある。エアバッグの中でも、特に運転席用のエアバッグは、通常ステアリングホイールやインスルメントパネルなどの狭い場所にインフレーターケースを含めたモジュールとして装着されることから、エアバッグの収納容積は小さいことが望ましい。従来より、エアバッグの収納容積をコンパクトにする目的で、基布の織物に細い繊度の繊維を使用することや、バッグの機密性保持の点から基布に被覆するエラストマーの種別を変更すること等が行われている。
【0003】
例えば、かつては織物の構成繊維は940dtexであったが、それが470dtexへ、そして被覆エラストマーもクロロプレンゴムの90〜120g/m2塗布からシリコーン樹脂の40〜60g/m2塗布に変更され、現在では470dtexの繊維で構成される織物のシリコーンコーティングタイプの基布が、更にはコーティングを省いたノンコートタイプの織物も使用されている。
【0004】
最近では、更にステアリングホイールの空隙スペースを大きくして速度パネル等の計器を見易くしたり、車内空間を大きくするために、折り畳み収納容積を極力小さくしてコンパクト性、風合いの柔らかさについて改良されたエアバッグを得るための織物基布が強く求められている。
このコンパクト性と風合いソフト化の要求に応えるためには、織物に使用するマルチフィラメント糸の繊度とそれを構成する単糸繊度を更に細くすることが必要である。
【0005】
エアバッグ用基布は、自動車の衝突事故の際、エアバッグを瞬間的に膨張させ、衝突時に乗員の顔面や前頭部を保護するという機能を満たすために、高強力で低通気性が要求されるので、通常の衣料用基布に比べて、高強力の糸を用いた高密度織物であることが必要である。
織物は高織密度にするほど、耳端部近傍が波打ち状態になるいわゆる耳弛み(以下、耳タルミという)が発生する。すなわちエアバッグの製袋では、基布の裁断片を縫製して袋体が作られるが、エアバッグ用基布を最大限有効に利用するために、通常、該基布を、耳部近傍まで製袋パターン片として裁断する設計が採用される。基布の耳端部近傍部に耳タルミが発生していると、特にレーザーカッター裁断では設計通りの形状に裁断されず、その後の縫製を困難にするばかりでなく、設計通りのエアバッグ形状が得られず、正常な機能を有するエアバッグの製袋が損なわれる。また、生機の耳タルミは、織機上の巻き取りロールへの巻き取りや、その後の精練、セットにおける耳部の折れ皺の発生、ひいては樹脂の均一なコーティングを損なう原因となる。
【0006】
製織に起因する耳タルミを防止するための種々の試みが、特開平6−322637号公報、特開平9−302549号公報、特開平9−302550号公報、特開平10−236253号公報等に開示されている。特開平6−322637号公報には経糸の最外端の耳糸と絡み糸との間に3本以上の絡み糸を挿入する方法、特開平9−302549号公報には耳部の織密度を地部の織密度よりも高くする方法、特開平9−302550号公報には耳部に増糸として加工糸を打ち込む方法、特開平10−236253号公報には織物の耳部経糸マルチフィラメント繊度が本体の経糸マルチフィラメント繊度より低い繊度にする方法が、それぞれ記載されている。これらの方法は、地糸が470〜350dtexの糸で構成される織物の耳形成に係わるものである。
【0007】
エアバッグのコンパクト性とソフト化に応えるために、地糸として250dtex以下の細い糸を用いて織物基布を製織する場合、耳部近傍もそれにつれて繊度を細くすると共に、耳部での緯糸の締め付けを強くするために増糸や絡糸の製織張力を高くすると、製織時に単糸切れが発生して停台が起こり、製織性の低下を招き、また、張力を緩くすると耳タルミが起こるという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、折り畳み収納性と軽量性の優れたエアバッグの製造に有用なエアバッグ用基布であって、被覆コーティングなどの加工性と製袋性が改良されたエアバッグ用基布を提供することである。より具体的には、細繊度のマルチフィラメント糸で構成される高織密度織物に顕在しがちな耳タルミの発生が抑制されたエアバッグ用基布を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、織物の地部の経糸群の耳端部にモノフィラメント糸を挿入することにより、耳タルミのない織物を製織することができると共に、製織の効率が高められ、生機の後加工と、製袋加工における裁断性と縫製性が高められることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記の通りである。
1.地部が総繊度50〜250dtexのポリアミドマルチフィラメント糸で構成され、カバーファクターが2000〜2500である織物よりなり、該織物の耳端部にモノフィラメント糸の増糸が2本以上、更に最耳端部に絡糸が挿入されてなることを特徴とするエアバッグ用基布。
【0011】
2.耳端部の増糸であるモノフィラメント糸が10〜100dtexであることを特徴とする上記1記載のエアバッグ用基布。
3.耳端部のモノフィラメント増糸の地部側に、地部に用いる糸の20〜60%の総繊度を有する増糸が2〜10本挿入されてなることを特徴とする上記1または2記載のエアバッグ用基布。
【0012】
4.織物の地部におけるポリアミドマルチフィラメント糸を構成する単糸繊度が0.5〜4.5dtexであることを特徴とする上記1、2または3記載のエアバッグ用基布。
5.上記1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用基布を用いてなることを特徴とするエアバッグ。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエアバッグ用基布において、織物の地部を構成する繊維は、単糸繊度が好ましくは0.5〜4.5dtexの単糸で構成される総繊度50〜250dtex、好ましくは67〜180dtexのポリアミドマルチフィラメント糸である。
【0014】
該織物は、このように比較的繊度が小さいポリアミドマルチフィラメント糸を用いて構成されるので、基布の厚みが小さく、柔軟であり、それ故に、この基布を用いて、軽く、小さく折り畳める収納性に優れたエアバッグを製袋することができる。織物の組織は特に限定されないが、例えば、平織、斜子織り、格子織組織に織られた織物が代表的なものとして挙げられる。
【0015】
エアバッグ用基布として用いるためには、織物の機械特性が、エアバッグの膨張作動時に必要とされる耐圧機械特性を満足し得るレベルのものでなければならない。本発明では、前記した比較的繊度の小さいマルチフィラメント糸を高強力ポリアミド繊維で構成すると共に、カバーファクター(K)が2000〜2500で特定される高織密度の織物に織り上げることによって、所定の耐圧機械特性を満足する織物を得るものである。
【0016】
本発明で用いるポリアミドマルチフィラメント糸は、好ましくは引張強度が5.7cN/dtex以上、さらに好ましく引張強度が6.2cN/dtex以上、破断伸度が15〜30%のポリアミド繊維であり、所定のカバーファクターを満足する高密度織物としての製織性を損なわないものである。なお、前記したレベルの繊度のポリアミドマルチフィラメント糸が、その糸長方向で糸切れなく製造し得る上限の引張強度は、概ね9.7cN/dtex程度である。
【0017】
織物のカバーファクターは2000〜2500である。カバーファクターがこの範囲であると、引張機械特性が十分で、エアバッグ作動時の機械特性を満足する基布となり、また縫合の機械特性も優れている。
ここでいうカバーファクター(K)とは、織物を構成している糸の総繊度の平方根と1インチ(2.54cm)当たりの糸本数(織密度)との積の経と緯との和をいう。すなわち下記式(1)により算出される。
【0018】
K=(D1)1/2×N1+(D2)1/2×N2 …(1)
式中、Kはカバーファクター、D1は経糸総繊度(dtex)、N1は経糸織密度(本/2.54cm)、D2は緯糸総繊度(dtex)、N2は緯糸織密度(本/2.54cm)を表す。
なお、経糸(または緯糸)の総繊度とは、織物の経方向(または緯方向)の織組織単位を構成する糸の合計繊度をいい、織組織の最小単位が一本の糸よりなるときはその1本の糸の繊度を、複数の糸の撚糸、合糸、引き揃え糸よりなるときはその構成糸の繊度の合計をいう。
【0019】
本発明において、織物の地部は、糸の総繊度が50〜250dtex、好ましくは67〜235dtexである。糸の総繊度がこの範囲であると、軽量性、コンパクト性に優れ、十分な機械特性を有するエアバッグが得られる。総繊度が細すぎると、糸強力が不足して織り密度を高めても、エアバッグ用基布としての引張や引裂機械特性が低くなるので、エアバッグ作動時の機械特性が満足されない基布となるおそれがある。
【0020】
糸の総繊度を構成する単糸の繊度は0.5〜4.5dtexとするのが好ましい。単糸繊度がこの範囲であると、基布が柔軟で収納性に優れ、また、マルチフィラメント糸は毛羽立ちが起こらず、高密度製織時に停台等による製織稼働率の低下が発生しない。
本発明において、織物の地部は、前述の理由で、総繊度50〜250dtexのマルチフィラメント糸を用いてカバーファクター2000〜2500の高密度織物に製織される。ところが、このような繊度の小さいマルチフィラメント糸を用いた高織密度の製織で、耳部も地部と同じ繊度やそれ以下の繊度の糸を単に使うと、織物の地部と耳部の間で発生する経糸張力の相違により経糸に毛羽が発生し易く、特に、耳部近傍の耳つり及び毛羽が発生し易く、製織における停台の原因となる。
【0021】
織物は、高密度織物になるほど、製織時の緯糸の張力が織物中央部が高く、耳端近傍で低くなるので、筬打ポイントでの緯糸両端部でだぶついて、筬打応力が耳端部近傍に集中して、耳端部近傍部の織組織が崩れて耳タルミが発生する。耳部近傍の組織崩れを防ぐためには、耳端部の緯糸の締めつけを大きくすることが必要になるが、締めつけを大きくするために耳端部の張力を大きくすると、単糸切れが発生して停台が起こるおそれがある。
【0022】
本発明においては、耳端部にモノフィラメント糸の増糸を2本以上、更に最耳端部に絡糸を挿入して製織することにより、耳タルミと耳部の単糸切れによる製織停台の問題を解決した。なお、増糸(力糸とも言う)とは、本体の地部とは別に、経糸として織機に供給されるものである。
耳端部の増糸は、高張力での糸切れ防止と経糸の剛性を利用して緯糸をはさみつけて緯糸のゆるみを防止するために、モノフィラメント糸が好ましく、さらに緯糸のはさみつけを高めるためには、地部よりも細い繊度の糸を用いることが好ましい。また、該モノフィラメント糸の繊度は、好ましくは10〜100dtex、さらに好ましくは22〜55dtexである。モノフィラメント糸の繊度がこの範囲であると、糸の強力が十分で張力に耐えることができ、剛性が適度で緯糸拘束力が十分であるため、耳タルミの発生がない。
【0023】
増糸の本数は、地部の織密度が高くなるほど多くする。地部のカバーファクターが2000以上では2本以上、好ましくは2〜4本であり、更にモノフィラメント糸の糸間隔はできるだけ狭くし、モノフィラメント同志が接触する程度とすることが望ましい。カバーファクターが2500近傍では4〜10本が好ましい。
【0024】
さらに、耳端部のモノフィラメント増糸の地部側に、地部に用いる糸の総繊度の、好ましくは20〜60%、さらに好ましくは30〜50%の総繊度を有する増糸(以下、細繊度増糸ともいう)を、好ましくは2〜10本、さらに好ましくは2〜6本挿入することが好ましい。細繊度増糸としては、特に限定されず、例えばモノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。細繊度増糸の総繊度および本数が上記の範囲であると、モノフィラメント増糸からの張力分散が適切に行われ、糸に掛かる張力が適度で糸切れの発生がなく、製織における停台も起こらず、糸繋ぎ節で樹脂コート斑による織物品位の低下がない。
【0025】
最耳端部の絡糸には、好ましくは仮撚加工糸が用いられ、通常2本絡みで1本以上挿入される。絡糸は、打ち込まれた緯糸を絡糸でしばりつけて強固に把持するために、地部に用いる経糸繊度の70%以下の繊度の合繊マルチフィラメント糸もしくは仮撚加工糸を用いることが好ましく、単糸繊度は好ましくは7dtex以下、さらに好ましくは1.0〜5.0dtexである。増糸のモノフィラメント糸及び絡糸として用いられる合繊マルチフィラメント糸は、素材種に制限はなく、ポリエステルでもナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などナイロンホモポリマーもしくはナイロンコポリマー等の糸でもよいが、これら増糸や絡糸は、バッグ縫製時点では使用されないので、廃棄のリサイクルを考慮すれば、基布と同じ素材のポリアミド糸であることが好ましい。
【0026】
なお、モノフィラメント中に各種の添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、艶消剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、 顔料等を含んでもよい。
本発明のエアバッグ用基布を構成するポリアミド繊維は、ポリヘキサメチレンアジパミド繊維(ナイロン66繊維)とポリカプラミド繊維(ナイロン6繊維))が代表例として挙げられる。ポリヘキサメチレンアジパミド繊維は、ヘキサメチレンアジパミド単位を80モル%以上含むポリアミド繊維であって、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン66/6I、ナイロン6系などの他のポリアミド形成性のコモノマーからなるコポリアミド繊維を含む。エアバッグの展開時にインフレータから高温ガスがエアバッグ内に噴出するので、繊維は、耐熱性の点で、融点が215℃以上を有するポリヘキサメチレンアジパミド系のポリアミド繊維を使用することが好ましい。
【0027】
ポリアミド繊維の硫酸相対粘度(ηr)は、2.5〜3.3であることが望ましい。ηrがこの範囲であると、高粘性によるゲル化進行を伴う紡糸性不良がないので、高強度の優れた強伸度物性をもつ繊維を安定して製造することが出来る。なお、繊維の硫酸相対粘度(ηr)の測定方法は、95.5%硫酸100ccに、油剤が付着していない繊維1gを溶解して、25℃恒温槽内でオストワルド粘度計にて測定したものである。
【0028】
ポリアミド繊維は、高温、高湿、オゾン等の長期間暴露されたときの性能低下を抑制するために、繊維中の銅含有率が、銅原子換算で10〜200ppmであることが好ましい。なお、銅含有率は、繊維中の銅成分を原子吸光や比色法で測定したものである。
本発明のエアバッグ用基布は、生機のまま、生機に熱セットもしくは精練、熱セットするか、あるいはコーティング加工した態様でエアバックの製袋に使用される。
【0029】
被覆コーティング用樹脂には、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが用いられる。樹脂には、増粘剤、難燃剤、顔料、酸化防止剤などが必要に応じて添加されてもよい。樹脂のコーティングは、ナイフコータ、グラビアコータ、リバースコータ、キスロール等を用いて行われ、樹脂固形分で5〜30g/m2の塗膜を形成することが、軽量でコンパクトな収納性を有するエアバッグを製造する上で好ましい。
【0030】
本発明のエアバッグ用基布を用いたエアバッグは、運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグなど、その種類、形状は任意の態様とすることができ、既知汎用の裁断、縫製を含む製袋方法によって製作することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
なお、織物基布に顕れる耳タルミ欠点の評価は、織物基布10mを平面台上で移動させながら、耳端(両耳端対象)から10cmの織物基布面に観察される高さ約3mm以上、波長約数cm〜10cmで波うつ弛みについて、下記の基準により目視判定で評価した。
【0032】
(耳タルミ評価基準)
目立たない :◎
ほとんど目立たない:○
やや目立つ :△
著しく目立つ :×
(実施例1)
95.5%硫酸相対粘度(ηr)が2.95で、ポリマー中に銅として65ppm含有するポリヘキサメチレンアジパミドのマルチフィラメント糸(総繊度155dtex/48f、強度6.9cN/dtex、伸度25%、沸水収縮率7.3%、交絡数34ケ/m、油剤付着率0.9wt%)を、地部本体部分の経糸ならびに緯糸に使用して、織密度(経×緯)が89×89(本/2.54cm)でカバーファクターが2216のタフタ(平織)を、エアジェット織機を用いて製織した。
【0033】
この織物の耳部には、増糸として33dtexのナイロン6モノフィラメント糸(MF糸)(強度3.9cN/dtex、伸度36%)4本をタフタ組織で構成して、最外部に56dtex/17f(強度4.4cN/dtex、伸度32%)のナイロン66糸の仮撚加工糸を絡糸として2本絡みで1本打ち込んだ。
得られた生機1000mを20m/分の速度で76mmφ紙管に巻き返し、170℃で1分間セットを行い、織密度(経×緯)91×91(本/2.54cm)、カバーファクター2266のエアバッグ用基布を得た。
【0034】
得られた基布は、厚みが120μm、目付が123g/m2であり、エアバッグ用基布として標準的に用いられている織物基布(経糸、緯糸の繊度が470dtex/70f、織密度(経×緯)が55×55(本/2.54cm)、厚み250μm、目付225g/m2)と比べると、軽量でコンパクトな収納性を有するエアバッグが製作できる基布であった。
【0035】
以上の結果および製織時の耳部停台状況及び耳タルミ評価の結果を表1に示す。
(実施例2、3)
地部本体のタフタ組織の織密度と増糸の本数を表1に示すように変化させたこと以外は実施例1と同様にして、エアジェット織機で製織した。この生機を、織密度を実施例1と同様の仕上と生機変化率で加工したこと以外は、実施例1と同様の加工条件で加工した。
【0036】
エアバッグ用基布の織密度、カバーファクター、製織時の耳部停台状況及び耳タルミ評価等の結果を表1に示す。
(実施例4)
耳部の細繊度増糸として78dtex/24fのナイロン6糸(強度4.6cN/dtex、伸度42%、沸水収縮率11.8%)2本を、タフタ組織でモノフィラメント糸の地部側に打ち込んだこと以外は、実施例1と同様にして生機を得、さらに実施例1と同様の加工条件で加工した。
【0037】
エアバッグ用基布の織密度、カバーファクター、製織時の耳部停台状況及び耳タルミ評価の結果を表1に示す。
(実施例5)
95.5%硫酸相対粘度(ηr)が2.95で、ポリマー中に銅として65ppm含有するポリヘキサメチレンアジパミドのマルチフィラメント糸(総繊度235dtex/80f、強度8.5cN/dtex、伸度23%、沸水収縮率6.4%、交絡数33ケ/m、油剤付着率0.9wt%)を、地部本体部分の経糸ならびに緯糸に使用して、織密度(経×緯)が73×73(本/2.54cm)でカバーファクターが2238のタフタ(平織)を、エアジェット織機を用いて製織した。
【0038】
この織物の耳部には、経増糸のモノフィラメント糸、細繊度増糸(78dtex/24f)、最外部の絡糸と織組織、使用本数、加工条件を、いずれも実施例4と同様にして実施した。
エアバッグ用基布の織密度、カバーファクター、製織時の耳部停台状況及び耳タルミ評価等の結果を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
耳端部に増糸として地部と同じ糸を4本を用い、更に、絡糸として56dtex/17f(強度4.4cN/dtex、伸度32%)のナイロン66糸の仮撚加工糸2本絡みとして1本挿入したこと以外は、実施例1と同様にしてエアジェット織機で製織した。この生機を実施例1と同様の加工条件、織密度で加工した。
【0040】
エアバッグ用基布の織密度、カバーファクター、製織時の耳部停台状況及び耳タルミ評価等の結果を表1に示す。
(比較例2)
織密度(経×緯)72×72(本/2.54cm)、カバーファクター1793で、増糸はなく、絡糸として56dtex/17f(強度4.4cN/dtex、伸度32%)のナイロン66糸の仮撚加工糸を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてエアジェット織機で製織した。この生機を実施例1と同様の加工条件で加工して、織密度(経×緯)74×74(本/2.54cm)、カバーファクター1843のエアバッグ用基布を得た。
【0041】
エアバッグ用基布の織密度、カバーファクター、製織時の耳部停台状況及び耳タルミ評価等の結果を表1に示す。
比較例1は、カバーファクターが高い高密度織物で、耳部にモノフィラメントの増糸を使用しない場合であるが、製織時の耳部停台があり、また製品の耳部ダブリも大きく、これにより折れシワがあるために、この基布をシリコーン樹脂でドクターナイフコーティングするとシワ部がそのまま残り、外観検査で格外の基布となった。
【0042】
比較例2のように、カバーファクターが低い織物の場合は、耳部にモノフィラメントの増糸を使用しないでも、製織時の耳部停台もなく、製品に耳タルミが発生しなかったが、高密度織物でないため、エアバッグ用基布としては、本発明のものに比べて不満足であった。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明のエアバッグ用基布は、製織途上、加工、製袋において、耳タルミが発現しない細繊度ポリアミド繊維のマルチフィラメント糸で構成された高織密度織物よりなる基布である。
下記(1)、(2)は、本発明による効果の具体例である。
【0045】
(1)基布の耳タルミに起因するシワによる不均一な被覆コーティンが起こらず、加工ロスを少なくできる。
(2)生機、精練、セット基布に耳タルミがないので、裁断ロス、縫製不良の発生を軽減することができる。
したがって、本発明により、コンパクトな折り畳み収納性と軽量性を兼ね備えた信頼性の高いエアバックを、安価に提供することができる。
Claims (7)
- 地部が総繊度50〜250dtexのポリアミドマルチフィラメント糸で構成され、カバーファクターが2000〜2500である織物よりなり、該織物の耳端部に10〜100dtexで、かつ地部よりも細い繊度を有するモノフィラメント糸の増糸が2〜10本挿入され、更に最耳端部に絡糸が挿入されてなることを特徴とするエアバッグ用基布。
- 耳端部のモノフィラメント増糸の地部側に、地部に用いる糸の20〜60%の総繊度を有するマルチフィラメント糸が2〜10本挿入されてなることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用基布。
- 織物の地部におけるポリアミドマルチフィラメント糸を構成する単糸繊度が0.5〜4.5dtexであることを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ用基布。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用基布を用いてなることを特徴とするエアバッグ。
- 地部が総繊度50〜250dtexのポリアミドマルチフィラメント糸であり、カバーファクターが2000〜2500である織物を織成するに際し、織物の耳端部に10〜100dtexで、かつ地部よりも細い繊度を有するモノフィラメント糸の増糸を2〜10本挿入し、さらに耳端部に絡糸を挿入することを特徴とするエアバッグ用基布の製織方法。
- コーティング用途であることを特徴とする請求項5記載のエアバッグ用基布の製織方法。
- 耳端部のモノフィラメント増糸の地部側に、地部に用いる糸の20〜60%の総繊度を有するマルチフィラメント糸が2〜10本挿入されてなることを特徴とする請求項5または6記載のエアバッグ用基布の製織方法。
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