JP3845281B2 - ポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、打設されたコンクリート等によって形成される壁面等に石積み模様等の凹凸意匠を付与するためのポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠に関し、特に、型枠材のポリスチレン系樹脂発泡体を容易にリサイクルすることができる化粧型枠に関する。
【0002】
【技術背景】
例えば、海岸や河川等の護岸工事、あるいはビル建築等において、コンクリートを使用して自然景観に近い状態、例えば自然石を積み上げたような景観にするために、合成樹脂発泡体からなる化粧型枠を使用する技術が知られている。
この一般的な方法は、石積み模様等の凹凸意匠面を有する化粧型枠を現場で組み上げ、この型枠内にコンクリートを打設し、そのまま養生し、固化させた後、枠組みを解体し、コンクリート面から化粧型枠を剥離して、化粧型枠の意匠面をコンクリート面に転写させる方法である。
【0003】
この化粧型枠の材料として、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂等の各種合成樹脂の発泡体やエラストマーが、軽量で安価であるため、施工性の面やコストの面等から、多用されている。
【0004】
一方、近年、循環型社会形成推進基本法が施行され、廃棄物の適正処理およびリサイクルの推進として、資源の有効利用促進法等も拡充整備されつつあり、リデュース、リユース、リサイクルを配慮した素材、製品、使用が要求されている。
【0005】
このような要求の下、上記のような各種の合成樹脂を材料とする化粧型枠については、ポリウレタンエラストマー製のものは複数回使用されるものであって、多いものでは50回以上もの使用がなされているが、一方ポリスチレン系樹脂発泡体製のものは1回の使い捨てタイプであり、上記法律に則したポリスチレン系樹脂発泡体製の化粧型枠の開発が急務となっている。
しかし、ポリスチレン系樹脂発泡体製の化粧型枠は、一度使用すると、コンクリート片やコンクリートの素材である砂利等が付着してしまったり、型崩れが生じたりする等して複数回の使用が不可能である。
しかも、使用済み型枠に限らず、一般あるいは産業廃棄物として回収されるポリスチレン系樹脂発泡体も異物の混入が多く、化粧型枠の材料として再利用することは極めて困難であり、これまでは、埋め立てるか、燃料として使用し熱を回収するか、高炉の還元剤として使用する等、限られた範囲での利用しかなされていなかった。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、以上の諸点を考慮し、産業廃棄物として回収される使用済みのポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠を材料として再利用することができるポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠を提供することを目的とする。
【0007】
【発明の概要】
本発明者等は、上記目的を達成するために検討を重ねる途上で、本発明者等による先提案の合成樹脂発泡体製の意匠型枠として、型枠内面(意匠が施された面と4側面)を、凹凸意匠が施された熱可塑性樹脂製のカバーシートにより、非接着状態で被覆するもの(特願2000−102143、同2000−257163)に着目した。
これらの化粧型枠では、型枠内に打設されたコンクリートは、カバーシートに接触し、型枠自体とは直接接触することがないため、コンクリート等の異物が混入することがない状態で、型枠をコンクリートから剥離することができ、リサイクル利用がし易いことを見出した。
但し、1回使用したものをそのまま化粧型枠として再使用する場合は、型枠表面の平滑性が不足して、打設コンクリート成形品の表面が外観的に満足するものにはならないことに加え、該再使用型枠の意匠立ち上がり部分の強度が劣化し、型枠全体として高品質のものとはならず、更なる検討を要した。
【0008】
この更なる検討の結果、ポリスチレン系樹脂発泡体製の化粧型枠においては、(1)使用済み化粧型枠のポリスチレン系樹脂発泡体(本発明では「リサイクル発泡体」と記すこともある)は、粉砕してリサイクル発泡体片とし、この発泡体片を、新規材料(ポリスチレン系樹脂性発泡粒子)による新たな化粧型枠を成形する際に、混合して使用することができること、
(2)このときの新規なポリスチレン系樹脂発泡性粒子(本発明では「バージン発泡性粒子」と記すこともある)に使用する発泡剤を特定のものとすれば、リサイクル発泡体片の混合量を増加させても、意匠立ち上がり部分の強度を向上させることができ、コンクリート成形品の外観仕上がりを良好なものとすることができること、
を見出した。
【0009】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、ポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠本体に、該本体の意匠面と同じ凹凸意匠に付形された上面と4側面とを有するカバーシートが、非接着状態で被覆されて使用されるポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠において、該型枠本体を構成するポリスチレン系樹脂発泡体が、使用済みの該型枠本体リサイクル発泡体片と未使用のポリスチレン系樹脂発泡性粒子とからなり、かつ該リサイクル発泡体片と該未使用の発泡性粒子との合計量中リサイクル発泡体片を10〜60重量%混合したものであり、
前記未使用の発泡性粒子は、イソ系炭化水素発泡剤を20〜70重量%含む発泡剤を使用したものであることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠を要旨とする。
また、このリサイクル発泡体片は、平均粒径が1.0〜5mm、好ましくは1.5〜3mmのものが適している。
【0010】
本発明の化粧型枠は、図1の断面図に示すように、例えば、自然石が積み重ねられた状態の凹凸意匠面Dを有し、この意匠面Dと4側面(図1では上下の2側面11,12のみが見えている)に沿って付形されたカバーシート2により、本体1が非接着状態で被覆されたものである。
この化粧型枠は、本体1の裏面(凹凸意匠面Dと反対側面)に、例えば合板3を取り付け、ビルB等の壁面外側に配置して使用され、このビルB等の壁面と本体1を非接着状態で被覆しているカバーシート2との間に形成されるキャビティーC内に、図示しないコンクリートが打設され、コンクリートの外面(ビルBの外観)に自然石が積み重ねられた模様を形作るものである。
【0011】
本発明においては、このようにして使用される化粧型枠本体1を、バージン発泡性粒子を予備発泡させたものとリサイクル発泡体片を混合し、成形して得られるものとし、このときのリサイクル発泡体片の混合割合を10〜60重量%とするものである。
本発明におけるリサイクル発泡体片とバージン発泡性粒子は、どのようなポリスチレン系樹脂製のものであってもよく、スチレンの単独ポリマーの他に、スチレンと他の共重合可能なモノマー例えばエチレン、プロピレン等との任意の割合での共重合体製のものが挙げられる。
【0012】
本発明では、これらのポリスチレン系樹脂からなるバージン発泡性粒子に、これらのポリスチレン系樹脂からなるリサイクル発泡体片を上記割合で混合したものを使用するものである。
この場合、混合するバージン発泡性粒子とリサイクル発泡体片のポリスチレン系樹脂の種類は、同種のものでも、異種のものでよいが、高品質の化粧型枠を得るためには、同種のものを混合するのが好ましい。
同種のものの混合、異種のものの混合のいずれの場合も、リサイクル発泡体片の混合割合が多くなるのに伴い、型枠の収縮率が大きくなり、特に意匠立ち上がり部分に大きな収縮が発生し、逆に少なすぎれば、リサイクル発泡体片を混合する意義が消失する。従って、本発明では、リサイクル発泡体片を、リサイクル発泡体片とバージン発泡性粒子との合計量(すなわち、型枠を構成するポリスチレン系樹脂発泡体の全材料)中、10〜60重量%、好ましくは10〜45重量%含まれるようにするものである。
【0013】
そして、このような割合でリサイクル発泡体片を含有する素材から得られる化粧型枠本体の密度は、本発明の化粧型枠内へのコンクリートの打設による側圧に耐えることができて、良好な意匠面を有するコンクリート成形体を得るために、15〜50kg/m3、好ましくは20〜25kg/m3とすることが適している。
密度がこれより小さいと、コンクリートの打設による側圧に耐えることができず、これより大きくても、この側圧に耐える効果が飽和するばかりか、本発明の化粧型枠の製造コストを高騰させることになり、経済的に不利である。
【0014】
また、本発明では、リサイクル発泡体片と共に使用するバージン発泡性粒子は、イソ系炭化水素発泡剤を20〜70重量%含む発泡剤を含浸したものである。
このイソ系炭化水素発泡剤としては、イソペンタン、イソブタン等が挙げられる。
これらイソ系炭化水素発泡剤と混合使用する他の発泡剤は、化粧型枠の材料として使用するポリスチレン系樹脂を発泡させることができるものであればどのようなものでもよく、具体的には、n−ペンタン、n−ブタン等のノルマル系炭化水素発泡剤のような通常のポリスチレン系樹脂発泡性粒子に使用されるものが挙げられる。
【0015】
イソ系炭化水素発泡剤の使用割合を20〜70重量%とする理由は、次の通りである。
リサイクル発泡体は、そのまま粉砕して使用するため、リサイクル発泡体片中の発泡剤は実質上ゼロである(従って、このリサイクル発泡体片に使用されていた発泡剤はどのような種類のものであってもよい)。
一方、ポリスチレン系樹脂発泡体は、一般には、発泡剤を含むポリスチレン系樹脂発泡性粒子を所望の密度に予備発泡して、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子(本発明では、これを「バージン予備発泡粒子」と記すこともある)とし、この予備発泡粒子を成形型(金型)内に投入し、加熱して相互に融着させて得られるものであり、この粒子同士の融着は、発泡剤が多い程、促進される傾向にある。そして、ポリスチレン系樹脂発泡体(成形品)は、通常、経時的に収縮し、寸法変化を生じるが、発泡剤全体に占めるイソペンタンやイソブタン等のイソ系炭化水素発泡剤の割合が多い程、経時的な寸法変化は小さくなる。この経時的な寸法変化は、粒子内の発泡剤が逸散するにつれて発泡体全体が収縮して生じるものである。
従って、収縮による寸法変化を極力抑えるには、発泡剤全体に対するイソ系炭化水素発泡剤の割合は、少なくとも20重量%を必要とし、また70重量%を超えても、この寸法変化の抑制効果は殆ど向上しない上、成形直後の寸法変化が大きくなり、型内養生時間が長くなり、成形サイクルを悪化させる。
【0016】
イソ系炭化水素発泡剤を上記の割合で含む発泡剤を使用することにより、実質的に発泡剤を含まないリサイクル発泡体片を10〜60重量%混合していても、バージン発泡性粒子に使用する発泡剤の一般的な量の使用で、リサイクル発泡体片を含むバージン予備発泡粒子の十分な融着速度を得ることができ、しかも寸法変化を極力小さくすることができ、成形品(化粧型枠)の最終的な寸法を所望の寸法に調整することが極めて容易となる。
【0017】
本発明では、上記のバージン予備発泡粒子にリサイクル発泡体片を混合したものを金型内に投入するが、このとき、予備発泡粒子とリサイクル発泡体片とは、均一に混合した状態で、しかも金型内での充填が十分に行われる必要がある。
これらを充足するためには、金型内に投入する予備発泡粒子の見かけ密度と、リサイクル発泡体片の粒径とは近似していることが望ましい。
本発明では、バージン発泡性粒子(ひいてはバージン予備発泡粒子)は化粧型枠に通常使用されているものをそのまま使用するため、リサイクル発泡体片の平均粒径を、化粧型枠における意匠面のベース厚さが5〜15mm程度の場合に、1.0〜5mm、好ましくは1.5〜3mm程度とすることが適している。
なお、化粧型枠における意匠の立ち上がり部の長さと幅に応じて、上記を目安にして好ましい範囲の粒径を決定すればよい。
【0018】
リサイクル発泡体片の平均粒径が5mmを超えると、化粧型枠の凹凸意匠部の立ち上がり部に充填不良が起き易くなり、カバーシートを使用しても、コンクリートへの意匠の転写性に問題のある型枠となってしまう。
一方、リサイクル発泡体片の平均粒径が1mm未満であると、該発泡体片内のセルが破壊された状態となり、成形体としての基本的な物性が低下する。また、金型に充填する際に、充填シリンダーにこの微粉砕のリサイクル発泡体片が付着し、これが繰り返し行われる成形の熱で溶融し、固化して、充填シリンダーの筒周囲等に付着し、充填作業に支障を来す可能性が大きくなる。更には、金型への投入用ホッパーの金網から飛び出して、作業環境を劣悪なものとする虞れもある。
また、平均粒径が0.1〜5mmであっても、その範囲外の粒径のものが含まれると上記と同様の問題が発生する可能性が大きくなる。
従って、リサイクル発泡体片は、1.0mm未満のものや、5mmより大きい粒径のものが混在しないよう、予め、分級しておくことが好ましい。
【0019】
なお、上記のリサイクル発泡体片の混合割合が多くなるに伴い、化粧型枠の5%圧縮強度は低下する傾向になる。
本発明の化粧型枠においては、コンクリート打設時の側圧による変形を防止するために、5%圧縮強度が0.08Mpa以上であることが望ましい。
0.08Mpa以上の5%圧縮強度を有していれば、リサイクル発泡体片の混合によって万一意匠面にピンホールが発生しても、この意匠面に合致した形状に付形されたカバーシートを併用するため、この程度の大きさのピンホールであれば、打設したコンクリート成形品の意匠面には何ら悪影響を及ぼさない。
また、5%圧縮強度を必要以上に高めることは、製造コスト等の上昇を招くため好ましくなく、本発明における5%圧縮強度の上限は、化粧型枠の所望の密度によって適宜決定することができ、例えば、化粧型枠本体の密度が50kg/m3で0.44Mpa程度であればよい。
【0020】
上記のカバーシートにおいては、その厚さが厚い程、化粧型枠の意匠面に比較的大きな孔(意匠以外の成形不良による凹部)が開いていても吸収することができるものの、厚すぎると、付形(型枠本体の意匠面と4側面に合致した形状への付形)性が低下して、付形時の作業効率を低下させる上、正確で複雑な意匠の転写性を低下させる虞れがあり、逆に薄すぎると、化粧型枠の孔を吸収し難いばかりか、付形時に破れ易くなったり、コンクリート打設後の剥離性を低下させる等の不具合が生じるため、0.2〜1mm程度が望ましい。
【0021】
カバーシートの材質は、(1)カバーシートの上記付形を真空成形や熱プレス等によって行うため、これらの付形加工が可能な熱可塑性を有し、(2)打設コンクリートに直接接触するため、コンクリートのアルカリ性に耐えると共に、コンクリート固化後は、コンクリートから容易に剥離でき、かつ(3)非接着状態で被覆しているリサイクル発泡体片混入の化粧型枠本体に、コンクリートの打設による側圧によっても密着せず、該本体から容易に剥離できるものであることが必要であり、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が使用できる。
また、カバーシートは、引っ張り強度が低いと、コンクリートからの剥離時に破れ易い上、付形性も低下し易く、高すぎても、付形性が低下する虞れがあるばかりか、コスト高となるため、本発明では、200〜600kgf/cm2程度の引っ張り強度を有するものが好ましく、伸び率は、低すぎると、付形性が低下する上、コンクリートからの剥離時に破れて剥離作業を困難にする虞れがあり、高すぎると、コンクリートからの剥離時に伸びてしまい、やはり剥離作業が悪化するため、本発明では、2〜50%程度の伸び率を有するものが好ましい。
【0022】
上記のような材質を有し、上記のような特性を有するカバーシートは、更に、使用後の上記化粧型枠本体との剥離性を容易にするために、カバーシートの側面が型枠本体の側面部に密着しないような形状、すなわち図1の一部を示す図2に示すように、型枠本体1の側面(図2では、上下側面11,12のみを示す)を被覆する部分21と型枠本体1の側面11,12との間の角度Rが0°以上とすることが好ましい。
密着するような形状であると、カバーシート2と型枠本体1との剥離が困難になる場合があるのみならず、型枠本体1へのカバーシート2の被覆も困難になる場合がある。
【0023】
また、本発明の化粧型枠は、ビル等の壁面に複数個が連続して取り付けられ、コンクリート打設用の型枠として使用されるが、このとき、型枠本体を非接着状態で被覆しているカバーシートの周縁部(型枠本体の側面に位置するカバーシートの側面の周縁端部)が型枠本体側面の裏面側の周縁端部に沿って綺麗にトリミングされていないと、側面部から外側にはみ出す部分や、切断端部が曲がった状態になる部分が生じ、これらの部分が隣接する化粧型枠の側面間に介在して、各化粧型枠間に隙間を発生し易くする。
このような隙間が発生すると、この隙間にコンクリートがはみ出して、コンクリート固化後の脱型はもとより、型枠本体とカバーシートの剥離をも困難なものとする。
そこで、本発明の化粧型枠では、各化粧型枠の少なくとも意匠面側の側面では隙間なく隣接させ、裏面側に、カバーシートのはみ出し部分や曲がり状態部分を逃げ込ませる隙間を設けるようにすることもできる。
【0024】
すなわち、図3に示すように、型枠本体1,1の側面11,12のうち、意匠面Dとは反対の裏面側に、隙間eを形成するためのテーパ部tを全周に渡って形成し、カバーシート2端部のはみ出し部分mが隙間eに逃げ込むことができるようにしている。
これにより、カバーシート2のはみ出し部分m(あるいは、図示はしないが、このはみ出し部分eの曲がり状態部分)に起因する型枠本体1,1の側面11,12間に隙間が生じると言う不具合が解消され、型枠本体1,1の意匠面D,D同士を容易に密着させることができる。
また、この隙間eに代えて、凹溝や切り欠き等(図示省略)を設けてもよい。
【0025】
更に、本発明では、図4に示すように、型枠本体1の裏面側に複数の凹部1aを形成することもできる。
この凹部1aは、コンクリートの打設、養生、固化の後に、化粧型枠を脱型する際に使用するもので、図4では、矩形状の型枠本体1の周囲4辺の略中央部に4か所設けてあり、2か所の脱型用凹部1aに手を差し込んで型枠本体1を掴むことができる。
しかも、4辺に設けてあるため、化粧型枠1を縦向き、横向きのいずれの方向で取り付ける場合であっても、脱型の際には、化粧型枠1本体を同じ方向で掴むことができる。
【0026】
以上説明した本発明の化粧型枠1は、実際のコンクリートKの打設施工に際して、例えば、図5に示すように、化粧型枠1を貫通するセパレータ4により、ビルB等の壁面に取り付けられたバタ材5に固定して使用される。
このセパレータ4の取付け孔hは、特願2000−257163号で提案したように、合板3側からドリル等の孔明け工具(図示省略)でカバーシート2に達するまでの孔明け作業を行い、この後、カバーシート2の表面側からこの孔hに向けて孔明け作業を行うことで設けてもよいが、本発明の化粧型枠1の場合、この方法で孔明け作業を行うと、孔hの周囲が美麗に切削できないことがある。
そこで、本発明の化粧型枠1においては、機械的な孔明け手段ではなく、熱溶融による孔明け手段を採用することが望ましく、この熱溶融により設けられた孔hは、セパレータ4との嵌合も良好で、コンクリートKが孔hに侵入してしまう不具合が生じることもない。
【0027】
また、本発明の化粧型枠1の上記のような使用態様において、本発明の化粧型枠1の複数枚がビルB等の壁面に固定されるが、このとき、化粧型枠1同士のつなぎ目からコンクリートKが侵出することがある。
これを防止するために、特願2000−257163号で提案したように、カバーシート2の寸法を大きくして、化粧型枠1の周囲からはみ出させ、該カバーシート2により化粧型枠1同士のつなぎ目を包み込む手法を採用することが好ましい。
【0028】
更に、上記複数枚の化粧型枠1のうち、壁面Bの端部に位置するものは、壁面Bの寸法に合わせて、一部を切断して使用することもあり、この切断部分は、上記のようにカバーシート2で包み込んでコンクリートKの侵出を防止すると言うことはできず、この部分に使用された後の化粧型枠1をリサイクルすることは不可能になる。
そこで、本発明では、この切断部分における化粧型枠本体1とカバーシート2のそれぞれに5〜20mmの幅で、コンクリートの侵出を防止でき、しかも容易に剥離する接着剤、例えばゴム系接着剤を塗布したり、あるいは両面粘着テープで仮固定する等を行うことが望ましい。
【0029】
上記のようにして本発明の化粧型枠がビルB等の壁面外側に取り付けられて、本体1を非接着状態で被覆しているカバーシート2とビルB等の壁面との間に形成されるキャビティーC内に、コンクリートKが打設される。この打設による側圧でカバーシート2と型枠本体1とが密着し、コンクリートKは、キャビティーC内で、養生し、固化する。
この後、本発明の化粧型枠が脱型されるが、脱型された型枠本体1には、コンクリートのはみ出し等の付着はなく、上記のように、化粧型枠本体用のリサイクル発泡体片として容易に利用することができる。
【0030】
そして、カバーシート2を上記のような材質製のものとし、しかも上記のような形状にすると、このカバーシート2は、打設・養生中のコンクリートKによるアルカリ性で劣化することはないし、固化後のコンクリートKとの剥離は容易であり、またコンクリートKの側圧で型枠本体1と完全に密着することがないため型枠本体1からの剥離も容易であり、セパレータ4の箇所で一部破れるものの殆ど破れずに剥離することができる。
従って、型枠本体1は、リサイクル利用が容易ものとなり、粉砕してリサイクル発泡体片とし、バージン発泡性粒子と混合して再び型枠本体に成形して再利用することができる。
【0031】
【実施例】
例1〔寸法変化の把握試験例〕
バージン発泡性粒子のみで成形された化粧型枠を、カバーシートと併用して、図1,図2の態様でコンクリート打設を行い、使用後の化粧型枠をリサイクル発泡体として用い、以下の要領の試験を行った。
リサイクル発泡体を、粉砕装置に掛けて粉砕し、約2mm程度の直径のリサイクル発泡体片とした。
このリサイクル発泡体片(密度:22kg/m3)と、バージン発泡性粒子を密度20kg/m3に予備発泡させたバージン予備発泡粒子との混合成形品の、リサイクル発泡体片混合割合による寸法変化を把握するため、300×300×50mmの寸法の金型に、表1〜3の割合でリサイクル発泡体片とバージン予備発泡粒子とを混合し、充填装置で充填し、加熱成形して、直方体成形品(平均密度:20kg/m3)を得た。
なお、上記のバージン発泡性粒子に使用した発泡剤の組成は、イソ系炭化水素発泡剤(イソペンタン使用)を含まないもの(表1)、20重量%含ませたもの(表2)、50重量%含ませたもの(表3)とし、イソ系炭化水素発泡剤以外の発泡剤はn−ペンタンとした。
【0032】
上記の直方体成形品を、上記の金型に入れたままで放置し、7日後、14日後、21日後における金型寸法に対する収縮率を測定した。
この結果を表1〜3に合わせて示す。
なお、表1〜3中の判定は、21日後で収縮率が0.70%以下で表面状態が良好なもの(ピンホールの発生もないもの)を◎、0.75%以上で表面状態が比較的良好のもの(ピンホール等の発生がある程度見られるもの)を○、0.75%以上で表面状態がやや悪いもの(ピンホール等の発生が多く見られるもの)を△、0.75%以上で表面状態が劣るもの(ピンホールと共に径が10mm程度の比較的大きい孔の発生が見られるもの)を×とした。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表1〜3から明らかなように、リサイクル発泡体片を混合させる場合は、バージン発泡性粒子に使用する発泡剤として、イソ系炭化水素発泡剤を併用しないと、成形品の寸法収縮率が大きくなって化粧型枠として使用することが難しいのに対し、イソ系炭化水素発泡剤の混合割合を増加させるにつれて、リサイクル発泡体片の混合割合を増加させても、成形品の寸法収縮率は低下し、化粧型枠として良好な使用ができることが判る。
【0037】
また、イソ系炭化水素発泡剤として、イソペンタンに代えて、イソブタンを使用し、イソ系炭化水素発泡剤以外の発泡剤としてn−ブタンを使用した以外は、例1と同様にして寸法変化の把握試験を行ったところ、例1と同様の結果が得られた。
【0038】
例2〔化粧型枠調製例〕
例1で得たリサイクル発泡体片を、例1で使用したものと同じバージン予備発泡粒子と共に、表4に示す割合で、石積み模様の凹凸意匠面を有する900×900mmの金型内に、例1と同じ圧縮強度で充填し、加熱発泡して、石積み模様の凹凸意匠面を有する化粧型枠(図1,図3,図4に示す態様の化粧型枠本体1)を得た。
なお、上記のバージン発泡性粒子に使用した発泡剤の組成は、イソ系炭化水素発泡剤(イソペンタン)を含まないもの(例2の1)と、50重量%含ませたもの(例2の2)とし、イソ系炭化水素発泡剤以外の発泡剤は、n−ペンタンとした。
【0039】
上記の化粧型枠本体1は、ベース厚さL1が10mm程度、模様部分の厚さL2が20mm程度、L3が40mm程度のものであった。
この化粧型枠本体1について、例1と同様にして14日後のリサイクル発泡体片の混合率による寸法変化を測定すると共に、14日後における次のような観察を行った。
意匠立ち上がり部の外観を目視観察し、金型の意匠と同様の立ち上がりを示しているものを◎、比較的同様と判断される立ち上がりを示しているものを○、やや異なると判断される立ち上がりを示しているものを△、殆ど異なると判断される立ち上がりを示しているものを×とした。
意匠立ち上がり部の変形度合いと表面状態を目視観察し、化粧型枠調製直後に比較して、同様と判断されるものを◎、略同様と判断されるものを○とし、これ以外は変形が小さいものと、変形があるものとに分けて評価した。
全体的な判定は、以上を総合して行った。
これらの結果を表4に合わせて示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表4から明らかなように、例2−1のバージン発泡性粒子としてイソ系炭化水素発泡剤を使用しないをものを混合する場合には、寸法収縮率が大きくなり、リサイクル発泡体片の混合割合が15%で変形が生じ、30%や45%では反りが大きくなり、カバーシートを併用しても、化粧型枠としての機能を満足するものではないことが判る。
また、化粧型枠の厚みは、上記のようにベース厚みL1が10mm程度、最も厚い部分L3でも40mm程度と薄いため、金型内への充填、特に意匠立ち上がり部分における充填が困難であり、製品型枠の該立ち上がり部分で収縮と変形が生じ易くなる。これに対し、本発明で、バージン発泡性粒子にイソ系炭化水素発泡剤を混合した発泡剤を使用した場合には、リサイクル発泡体片の混合率を15重量%含有させたもので全く見劣りがせず、30重量%含有させたものでも略同様の高品質のものとなり、45重量%含有させたものではやや見劣りがするもののカバーシートの併用により十分実用できるものであることが判る。
【0042】
例3
図1,図3,図4の態様で、例2で得た化粧型枠本体1と、この本体1の凹凸意匠面に沿って付形し、図2の形状を有するようにしたカバーシート2とを併用し、ビルB等の壁面に代えて図5に示すようなバタ材5のみを用いて、このバタ材5とカバーシート2間のキャビティーC内にコンクリートKを打設し、養生、固化後のコンクリートの表面状態を観察した。
カバーシート2を併用しない場合についても同様のコンクリート打設試験を行い、養生、固化後のコンクリートの表面状態を観察した。
これらの結果を表5に示す。
【0043】
なお、表5において、コンクリートの表面状態が、化粧型枠の石積み意匠の転写が極めて良好で、色調の変化も全くなく、高品質な壁面としての使用が可能な場合を◎、意匠転写、色調変化とも十分満足行く場合を○、色調変化が僅かに見られる場合を△、意匠転写も不十分で、色調変化も見られる場合を×とした。
更に、上記のコンクリート打設試験を行った後の化粧型枠本体1をリサイクル発泡体として、そのまま粉砕装置に掛けて粉砕できるものを◎、できないもの(コンクリートが付着して、粉砕装置に掛けるのに先立ってコンクリートの除去作業が必要なもの)を×とした。
【0044】
【表5】
【0045】
表5から明らかなように、バージン発泡性粒子がイソ系炭化水素発泡剤を含有しておらず、しかもカバーシートを使用しない場合は、リサイクル発泡体片の混合率が15重量%においてコンクリートの表面に僅かな色調変化が見られるものの壁面としての使用は可能と判断されるが、リサイクル発泡体片の混合率が30重量%以上になると、化粧型枠としての実用的な使用は不可能となるばかりか、化粧シートのリサイクルも実質的に不可能となる。
カバーシートを使用する場合においても、バージン発泡性粒子がイソ系炭化水素発泡剤を含有していないと、リサイクル性は満足するものの、表面状態ひいては意匠転写性はリサイクル発泡体片の混合率が増加するに伴って低下するが、45重量%でも問題なく使用できることが判る。
【0046】
これに対し、バージン発泡性粒子がイソ系炭化水素発泡剤を含有するものの、カバーシートを使用しない場合は、リサイクル性は劣るものの、意匠転写性はリサイクル発泡体片の混合率が15重量%において高品質なものが得られ、45重量%でも十分実用できるものが得られることが判る。
カバーシートを使用する場合は、リサイクル性、表面状態(意匠転写性)共に、極めて優れた品質のものを得ることができることが判る。
【0047】
なお、リサイクル発泡体片の混合率を60重量%まで上げても、問題なく使用することができることが確認されている。
これに対し、リサイクル発泡体片の混合率を65重量%にして、例3と同様の試験を行ったところ、金型内でのリサイクル発泡体片とバージン予備発泡粒子との充填が十分に行われず、実用できる化粧型枠を得ることができなかった。
また、バージン発泡性粒子として、イソ系炭化水素発泡剤(イソペンタンまたはイソブタン)の含有量が0重量%、50重量%、70重量%のもの(イソ系炭化水素発泡剤以外の発泡剤はイソペンタンの場合はn−ペンタン、イソブタンの場合はn−ブタン)を使用して、化粧型枠の経時変化を観察したところ、イソ系炭化水素発泡剤の量が多いもの程、カバーシートと化粧型枠本体の隙間発生が減少し、化粧型枠同士の接合部の寸法も合い、十分満足できることが判った。
【0048】
【発明の効果】
以上のように、本発明の化粧型枠においては、化粧型枠として使用した場合には高品質のコンクリート成形体を得ることができ、またこのような使用の後に、粉砕して再び化粧型枠の素材として使用することができる。
従って、本発明の化粧型枠は、化粧型枠自体に求められる機能を、バージン発泡性粒子100%使用の場合に比して、何ら遜色無く保持できると共に、従来、廃棄するか、熱回収する等の極く限られた範囲でのリサイクルしかできなかった使用済み型枠を、高品質の化粧型枠の素材として極めて良好に再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧型枠を説明するための断面図である。
【図2】本発明の化粧型枠に使用されるカバーシートの好ましい実施態様例を説明するための断面図である。
【図3】本発明の化粧型枠の他の実施態様例を説明するための断面図である。
【図4】本発明の化粧型枠の更に他の実施態様例を説明するための断面図である。
【図5】本発明の化粧型枠の使用態様を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 化粧型枠本体
11,12 化粧型枠本体の側面
2 カバーシート
3 合板
4 セパレータ
5 バタ材
B ビル等の壁面
C キャビティ
D 意匠面
L1,L2,L3 化粧型枠本体の厚さ
K コンクリート
h セパレータ4の取付け孔
Claims (2)
- ポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠本体に、該本体の意匠面と同じ凹凸意匠に付形された上面と4側面とを有するカバーシートが、非接着状態で被覆されて使用されるポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠において、
該型枠本体を構成するポリスチレン系樹脂発泡体が、使用済みの該型枠本体リサイクル発泡体片と未使用のポリスチレン系樹脂発泡性粒子とからなり、かつ該リサイクル発泡体片と該未使用の発泡性粒子との合計量中リサイクル発泡体片を10〜60重量%混合したものであり、
前記未使用の発泡性粒子が、イソ系炭化水素発泡剤を20〜70重量%含む発泡剤を使用したものであることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠。 - リサイクル発泡体片の平均粒径が、1.0〜5mmであることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体製化粧型枠。
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